(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スラストカバーが前記ハウジングに前記接着剤により固定される前の状態において、前記第1凹部及び第1凸部がそれぞれ前記第2凸部及び第2凹部に対向した状態で、前記スラストカバーは前記開口への通過が許容される、請求項1の駆動装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施例の送風装置Aの外観図である。
図2は、送風装置Aの断面図である。送風装置Aは、上ケース10、下ケース20、ファン80等を含む。上ケース10、下ケース20は、互いにファン80の軸方向から組み付けられ固定されている。上ケース10、下ケース20は、協働で単一のスクロール状のケースを画定する。上ケース10、下ケース20は、合成樹脂製である。上ケース10は、周壁部12、上壁部14、突出壁部18を含む。周壁部12は、ファン80の外周部を包囲し、略円筒形状である。上壁部14は、周壁部12に連続しファン80よりも軸方向上側に位置する。上壁部14には、ファン80の軸方向上側に位置する。尚、軸方向とは、ファン80の回転の中心軸の方向を意味する。上壁部14には、ファン80の回転により空気が通過する開口15aが形成されている。開口15aからはファン80の上部が露出している。上壁部14には、開口15aから露出したファン80を保護するための3つの桟部16が、開口15aの中心から径方向外側に延びるように設けられている。突出壁部18は、周壁部12及び上壁部14から部分的に径方向外側に延びている。
【0011】
下ケース20は、周壁部22、底壁部24、突出壁部28を含む。周壁部22は、ファン80の外周部を包囲し、略円筒形状である。周壁部12、22は、互いに固定されている。底壁部24は、周壁部22に連続してファン80よりも軸方向下側に位置する。底壁部24の略中心には、開口25が形成されている。開口25は、地板100により塞がれている。地板100の略中心には、開口101が形成されている。開口101は、ハウジング60及びスラストカバー110により塞がれている。地板100は、ファン80、ファン80を回転させるモータMを支持している。底壁部24からは、モータMに導通したケーブルCBが引き出されている。即ち、上ケース10、下ケース20内に、ファン80、モータMが収納されている。突出壁部28は、周壁部22及び底壁部24から部分的に径方向外側に延びている。突出壁部18、28は互いに固定されている。突出壁部18、28には、単一の開口15bを画定する。
【0012】
ファン80が回転することにより、開口15a、15bの一方から空気が吸引され、上ケース10、下ケース20内を空気が周り開口15a、15bの他方から排出される。このようにして、ファン80が回転することにより開口15a、15bを空気が通過する。
【0013】
送風装置Aは、例えば、ハイブリット車両に搭載されたバッテリを冷却するために用いられる。このバッテリはハイブリット車両のエンジンによって駆動される発電機によって生成された電力を蓄えるために使用される。尚、送風装置Aはこのような用途に限定されない。また、ファン80が回転することにより、開口15aから空気が吸引され開口15bから空気が排出されるが、これに限定されない。開口15bから空気を吸引し開口15aから排出するように使用してもよい。
【0014】
ファン80は、ドーム部84、フランジ部86、羽根部88、リング部89を含む。ファン80は、合成樹脂製である。ドーム部84は、径方向外側に延び、径方向外側に延びるにつれて下側に延びている。ドーム部84は、断面視で階段状に形成されている。
【0015】
フランジ部86は、ドーム部84の下端部から径方向外側に延びている。フランジ部86は、径方向外側に延びるに従って若干軸方向下側に傾斜している。羽根部88は、フランジ部86の外周端部から略円筒状に延びて形成され、複数の羽根から構成されている。隣接する羽根の間に空気が通過するように所定の間隔を空けて、複数の羽根が円状に設けられている。羽根は軸方向に延びている。上ケース10の周壁部12、下ケース20の周壁部22は羽根部88の外周に位置する。リング部89は、羽根部88の上側の外周側に設けられており各羽根の上端部が接続されている。ファン80が回転することにより、開口15aを介して羽根部88を通過して上ケース10、下ケース20内に空気が導入され、周壁部12、22の内側に沿って空気が流れ、開口15bから排出される。
【0016】
モータMについて説明する。モータMは、コイル30、ロータ40、ステータ50、ハウジング60、プリント基板PB、スラストカバー110等を有している。ステータ50は略環状であり金属製である。ステータ50は、ハウジング60の外周面に固定されている。ハウジング60は、地板100の内底面に固定されている。ハウジング60内には、回転軸42を回転可能に保持する軸受70が圧入されている。軸受70は、径方向よりも軸方向の長さが長く形成されている。
【0017】
ステータ50には、インシュレータIを介して複数のコイル30が巻回されている。コイル30は、プリント基板PBと電気的に接続されている。プリント基板PBは、剛性を有した絶縁性の基板上に導電パターンが形成されたものである。プリント基板PBは、地板100の内面側に固定されて支持され、ハウジング60が貫通した開口PB1が形成されている。プリント基板PBには、コイル30に電力を供給するための電子部品が実装されている。電子部品は、例えばコイル30の通電状態を制御するためのFET等の出力トランジスタ(スイッチング素子)やコンデンサ等である。また、電子部品は、例えばロータ40の回転によって出力が変化する磁気センサであってもよい。プリント基板PBには、ケーブルCBが導通接続されている。コイル30が通電されることにより、ステータ50が励磁される。
【0018】
ロータ40は、回転軸42、ヨーク44、1つまたは複数の永久磁石46、を有している。回転軸42は、軸受70により回転可能に支持されている。回転軸42の下方側の先端部は、スラスト受けSを介してスラストカバー110により支持されている。回転軸42の、軸受70から下方に突出した先端部には、ダンパーワッシャーDWが取り付けられている。ダンパーワッシャーDWと軸受70の下端部との間には、回転軸42が貫通した状態でワッシャーWが取り付けられている。回転軸42の、ハウジング60から上方に突出した先端部には、ヨーク44が固定されており、ヨーク44は回転軸42と共に回転する。ヨーク44は、略円筒状であり金属製である。ヨーク44の上側にファン80が固定されている。ヨーク44の内周側面には、1つまたは複数の永久磁石46が固定されている。永久磁石46は、ステータ50の外周面と対向している。コイル30が通電されることにより、ステータ50が励磁される。従って、永久磁石46とステータ50との間に磁気的吸引力、反発力が作用する。この磁力の作用により、ヨーク44、即ち、ロータ40はステータ50に対して回転する。このように、モータMはロータ40が回転するアウターロータ型のモータである。ロータ40が回転することにより、ファン80が回転する。
【0019】
図3は、
図2の部分拡大図である。軸受70は、内周面70a及び外周面70bを有し、内周面70a側に回転軸42が配置され、外周面70b側にハウジング60が配置されている。詳しくは後述するが、軸受70の内周面70aの一部分は、回転軸42の外周面に摺接する。軸受70は、上方側から下方側に、テーパ部71及び基部73が形成されている。テーパ部71は、基部73よりも外径が小さく、上方側に向かってその外径が小さくなるように形成されている。基部73の外径は略一定である。テーパ部71及び基部73の内径については詳しくは後述する。尚、上方側とは、上ケース10の空気が通過する開口15aが形成された側である。下方側とは、空気を通過させるための開口は形成されていない地板100側である。
【0020】
ハウジング60は、内周面60a及び外周面60bを有し、内周面60a側に軸受70が配置され、外周面60b側にステータ50等が配置されている。ハウジング60は、上方側から下方側に、頂部61、上段筒部63、小段部65、中段段部66、下段筒部67、下段段部68、及び脚部69が形成されている。ハウジング60は、一枚の金属板を絞り加工することにより、上方側から下方側に径が拡大した略円筒状に成形されている。
【0021】
頂部61は、軸方向に垂直な円板状であり、回転軸42が貫通する開口61aが形成されている。上段筒部63は、頂部61の外縁側から連続した円筒状である。小段部65は、上段筒部63の下方側に形成されている。小段部65は、上方側から下方側にかけて、上段筒部63よりも僅かに内径及び外径が拡大するように段状に形成されている。中段段部66は、小段部65の下方側近傍に形成され、上方側から下方側にかけて、小段部65よりも内径及び外径が大きく拡大するように段状に形成されている。
【0022】
下段筒部67は、中段段部66の外縁側から連続した円筒状である。下段段部68は、下段筒部67の下方側から径方向外側に延びて段状に形成され、下段段部68の内面側にスラストカバー110が固定されている。脚部69は、下段段部68の外縁側から更に径方向外側に延びた円形状であり、開口101を囲うように地板100の内底面に固定されている。上段筒部63及び小段部65の一部分は軸受70に当接し、小段部65の一部分はステータ50の内周面51に当接し、中段段部66の一部分はステータ50の底面53に当接している。ステータ50の底面53は、地板100側にあるステータ50の面である。小段部65、中段段部66、及び下段段部68は、軸方向を含む断面でハウジング60を見た場合に段状に形成されている。
【0023】
下段段部68は、回転軸42の軸方向に略直交した環状の内環面68a、軸方向に略平行であり微小な高さの円柱状の内側面68a´を含む。内環面68aは、スラストカバー110の上方側の面の外縁側に接触している。内側面68a´は、スラストカバー110の外縁に対向している。スラストカバー110は、ハウジング60の下方側の開放端を塞ぐように下段段部68の内側に接着剤BDにより固定されている。
図3では、接着剤BDを点線のハッチングにより示している。接着剤BDは、地板100の開口101を塞ぐように、スラストカバー110とハウジング60と地板100に囲まれた空間内に充填されている。このように、スラストカバー110とハウジング60との固定は、ねじなどの部品を用いずに接着剤BDにより固定されているため、部品点数の増大が抑制されて製造コストの増大も抑制されている。尚、スラストカバー110の上方側の面には、スラスト受けSが嵌合する窪み部114が形成されている。また、地板100及びモータMは、駆動装置に相当する。
【0024】
次に、スラストカバー110や地板100の開口101の形状について説明する。
図4(A)は、スラストカバー110を下方側から見た図である。
図4(B)は、ハウジング60を下方側から見た図である。
図4(C)は、ハウジング60内にスラストカバー110を配置した場合の図である。スラストカバー110は、略円形の板状である。スラストカバー110の外縁は、スラストカバー110の径方向内側に向けて窪んだ凹部110a、スラストカバー110の径方向外側に向けて突出した凸部110b、を有している。凹部110a及び凸部110bは、それぞれ3つ形成されており、周方向に交互に形成され、略等角度間隔に形成されている。
【0025】
凹部110a及び凸部110bは、下段段部68の内側面68a´と対向している。ここで、下段段部68の内側面68a´の内径は一定であるため、
図3に示すように、凸部110bと内側面68a´との径方向での隙間GHbは、凹部110aと内側面68a´との径方向での隙間GHaよりも狭くなっている。このような隙間GHa及びGHbに接着剤BDが介在することにより、スラストカバー110はハウジング60に固定されている。隙間GHaは、第1隙間の一例である。尚、スラストカバー110の凹部110aの半径は、下段段部68の内環面68aの半径よりも大きく形成されている。これにより、スラストカバー110は、ハウジング60の下方側の開放端を塞ぐことができ、ハウジング60内への異物の進入などが防止されている。凹部110a及び凸部110bは、それぞれ第2凹部及び第2凸部の一例である。
【0026】
図5は、地板100を下方側から見た図である。開口101は略円形状であるが、開口101の内縁は、開口101の径方向外側に向けて窪んだ凹部101b、開口101の径方向内側に向けて突出した凸部101a、を有している。凸部101a及び凹部101bは、それぞれ3つ形成されており、周方向に交互に形成され、略等角度間隔毎に形成されている。凹部101b及び凸部101aは、それぞれ第1凹部及び第1凸部の一例である。
【0027】
次に、地板100に固定されたハウジング60へのスラストカバー110の固定方法について説明する。
図6(A)及び
図6(B)は、スラストカバー110の固定方法の説明図である。ハウジング60は、軸受70が圧入された状態で地板100に固定されている。この状態で、
図6(A)に示すように、開口101内にスラストカバー110を挿入する。ここで、スラストカバー110の外縁と開口101の内縁とは、相補形状に形成されている。即ち、凹部110a及び凸部110bのそれぞれは凸部101a及び凹部101bのそれぞれと、数や大きさ、形状と略一致している。詳細には、凹部110a及び凸部101aの径及び周方向の長さは略一致し、凸部110b及び凹部101bの径及び周方向の長さも略一致している。また、凹部110a、凸部110b、凸部101a、及び凹部101bの周方向の長さも略一致している。従って、凹部110a及凸部101aが互いに対向し凸部110b及び凹部101bが互いに対向した状態で、開口101へのスラストカバー110の通過が許容される。これにより、スラストカバー110は地板100の内底面とハウジング60の内周面60aとの間に配置できる。
【0028】
次に、
図6(B)に示すように、回転軸42の軸方向から見て、凹部101bと凹部110aとが対向し凸部101aに凸部110bが重なるように、開口101に対してスラストカバー110を回転させる。凸部101aに凸部110bが重なることにより、開口101へのスラストカバー110の通過は規制される。従って、地板100とハウジング60との間の空間から開口101を介して外部にスラストカバー110が脱落することが規制される。このように、スラストカバー110の回転位置に応じて、開口101への通過が許容又は規制される。軸方向から見て凸部101aに凸部110bが重なっておりスラストカバー110を内環面68aに接触させた状態で、開口101を介して地板100とハウジング60とスラストカバー110とによって囲まれた空間内に、接着剤BDを注入する。これにより、スラストカバー110はハウジング60に固定される。
【0029】
ここで、軸方向から見て互いに重なった凸部101aと凸部110bとの軸方向での隙間GAにも、
図3に示すように接着剤BDが充填される。このため、接着剤BDの硬化後は、スラストカバー110の軸方向の移動が規制されるように固定される。隙間GAは、第2隙間の一例である。また、上述したように凹部110aと内側面68a´との隙間GHaにも接着剤BDが充填され、この隙間GHaに充填された接着剤BDは、凹部110aと内側面68a´と内環面68aとに固定される。これにより、接着剤BDの硬化後はスラストカバー110の回転や軸方向に直交する方向での移動が規制されるように固定される。以上のように接着剤BDは、スラストカバー110とハウジング60と地板100との3つの部材に付着して硬化している。従って、接着剤BDがこれらの部材から剥離することが抑制され、ハウジング60からのスラストカバー110の脱落が抑制される。尚、本実施例では、凸部110bと内側面68a´との間の狭い隙間GHbにも接着剤BDが充填されているが、この隙間GHbに充填されていなくても、隙間GHaに充填されていれば、スラストカバー110の回転を規制できる。
【0030】
また、上述したようにスラストカバー110を接着剤により固定する前の状態では、凹部110a及び凸部110bのそれぞれを凸部101a及び凹部101bに対応させた状態で、スラストカバー110は開口101への通過が許容され、地板100とハウジング60との間にスラストカバー110を配置できる。このように、スラストカバー110の組み付けも容易である。
【0031】
なお、本実施例では接着剤はHenkel社の熱可塑性ポリアミド樹脂のMacromelt(商標登録)OM673を用いた。本接着剤は硬化後であれば、送風装置Aが想定される使用条件下であれば上記のようにスラストカバー110、ハウジング60および地板100の相互の位置関係を固定化し、スラストカバー110の脱落を防止することができる。また、工具などを用いれば人力で容易に取り去ることも可能である。そのため、モータMに不良が生じた際の解析のための分解や、リサイクルや破棄する際のモータMの解体作業が容易であるという利点もある。また、可撓性(微弾性)を備えているため、ファンの回転などにより微振動が発生する送風装置に用いるとスラストカバー110の脱落をより抑制し、かつ振動と騒音を防ぐことが出来るため好適である。
【0032】
上記実施例では、アウターロータ型のモータMを用いた送風装置Aについて説明したが、このような送風装置に採用されるモータは、インナーロータ型であってもよい。次に、インナーロータ型のモータM1を採用した場合の送風装置Bについて説明する。
図7は、インナーロータ型のモータM1を採用した場合の送風装置Bの部分断面図である。
図7は、
図3に対応した図面である。尚、同一の部分については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0033】
モータM1は、コイル30、ロータ40´、ステータ50´、ハウジング60´、プリント基板PB、スラストカバー110等を有している。ステータ50´の中心には、ロータ40´のヨーク44´が配置されている。ヨーク44´の外周面には少なくとも一つ以上の永久磁石46が固定されており、ステータ50´の内周側と対向している。ヨーク44´は、回転軸42に固定されており、回転軸42は、軸受70´により回転可能に支持されている。軸受70´の下方側の部分が径方向に突出しており、この径方向に突出した部分がハウジング60´の内周面に嵌合して保持されている。ハウジング60´は、地板100に固定されており、ヨーク44´との接触を回避するように上述したハウジング60よりも軸方向の長さが短く形成されている。ステータ50´は、板金120の内周面側に固定されており、板金120は、不図示の部分で地板100に固定されている。
【0034】
インナーロータ型のモータM1においても、スラストカバー110とハウジング60´と地板100とは、接着剤BDにより固定されており、接着剤BDは、隙間GHa、GHb、及びGAに充填されている。これにより、接着剤BDがこれらの部材から剥離することが抑制され、ハウジング60´からのスラストカバー110の脱落が抑制される。
【0035】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0036】
上記実施例においては、モータM及びM1をそれぞれ含む駆動装置は、それぞれ送風装置A及びBに用いたがこれに限定されない。例えば、駆動装置は、電化製品、乗物、遊戯機器、工作機器、繊維機器、印刷機械等に用いることができる。また、駆動装置が用いられる装置は、業務用、家庭用を問わない。
【0037】
凹部110a及び101bや凸部110b及び101aの形状、数、大きさについては、上記実施例に限定されない。また、スラストカバー110の外縁と開口101の内縁との形状は、相補形状に限定されない。例えば、両者は相補形状ではなく、凹部101bは凸部110bよりも径が大きくてもよい。凸部101aは凹部110aよりも径が大きくてもよい。凹部101bは凸部110bよりも周方向に長くてもよい。凸部101aは、凹部110aよりも周方向の長さが短くてもよい。この場合も、スラストカバー110を開口101に通過させることができるからである。また、スラストカバー110の回転位置に応じて、軸方向から見て凸部101aと凸部110bとが重なりスラストカバー110の開口101への通過を規制できればよい。