【文献】
平田 重敏,迫る 電子記録債権の時代,月刊金融ジャーナル VOL.52 NO.5 MONTHLY KINYU JOURNAL,金融ジャーナル社,2011年 5月 1日,第52巻,p.24-27
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記電子記録債権コントローラが、前記支払企業と仕入先企業間で電子記録債権を使用する契約に際して、当該支払企業及び仕入先企業に関するデータを前記データベースに登録する事前登録部を備え、
この事前登録部が、前記データベースに前記決済仮口座番号を登録する際に、当該仕入先企業ごとに発番された仕入先企業に唯一の口座番号を当該仕入先企業の決済仮口座番号として事前登録する、
ことを特徴とする請求項3記載の決済支援システム。
前記電子記録債権コントローラが、前記支払企業と仕入先企業間で電子記録債権を使用する契約に際して、当該支払企業及び仕入先企業に関するデータを前記データベースに登録する事前登録部を備え、
この事前登録部が、前記データベースに前記決済仮口座番号を登録する際に、前記支払企業と前記仕入先企業の組み合わせごとに発番された当該支払企業と仕入先企業の一対一の組み合わせに唯一の口座番号を当該仕入先企業の決済仮口座番号として事前登録する、
ことを特徴とする請求項3記載の決済支援システム。
【背景技術】
【0002】
<売掛金の決済>
支払企業は、多数の仕入先企業から物品やサービスを仕入、支払企業の顧客向けの製品を製造し、サービスを提供している。
仕入先企業は、納入企業であり、製品の部品・材料などの物品や、工事に関する役務などを提供し、支払企業に対して対価を請求する。仕入先企業は支払企業に対して売掛金が発生し、支払企業は仕入先企業に対する買掛金が発生する。
支払企業は、多数の仕入先企業からの請求を整理して、支払を行う。この支払は、従来、現金手渡し、口座振込(内国為替)、手形の振出などによる。支払の実行により、売掛金・買掛金が決済され、売掛金は現金や預金となる。
【0003】
支払企業と取引のある金融機関は、支払企業の要請に応じて、金種別の現金を届け、多数の仕入先企業宛の振込データを受信して口座振込を処理し、手形を発行し、また手形を割引くなど、決済に関する多様なサービスを提供している。
約束手形は、将来の支払を約束した手形法上の有価証券である。約束手形を使用することで、支払企業は支払期日まで期間(サイト)を設定することができる。一方、仕入先企業は、必要があれば約束手形を金融機関で割り引くことで支払期日前に現金化できる。約束手形を受け取った仕入先企業は、自社の支払に受け取った手形を利用できる。
【0004】
<一括ファクタリング>
支払企業の支払事務の合理化と、仕入先企業の資金調達の多様化を実現する仕組み(スキーム)として、一括ファクタリングがある。一括ファクタリングでは、仕入先企業と支払企業とを仲介するファクター(仲介人)が関与する。仲介人であるファクタリング会社は、仕入先企業が支払企業に対して持つ売掛債権を一括して買い取り、仕入先企業への支払を行う。仕入先企業への支払は、前払か、期日支払である。
一括ファクタリングを導入すると、支払企業はファクタリング会社に一括した支払をするだけで良く、多数の仕入先企業への支払事務を個別にする必要がなくなる。一方、仕入先企業は、必要に応じてファクタリング会社から前払を受けることができる。
【0005】
特許文献1には、納入企業(仕入先企業)が支払企業に対して持つ売掛債権を、ファクタリング業者へ譲渡する仕組みが開示されている。この特許文献1には、一括ファクタリングをコンピュータシステムで実現するデータ構造として、支払企業と納入企業の組み合わせごとに、定期割引日、割引金額が全額か一部かの指定、そして割引金額を有するテーブルが開示されている(特許文献1の
図5)。
個別の債権ごとのデータ構造としては、期日前支払の有無として、全部、一部及び金額を有する(特許文献1の
図6)。また、売掛債権による前払(割引)ごとに、債権の指定が金額又は債権か、割引区分が随時又は定期か、金額指定が全額又は一部か、などの項目を管理している(特許文献1の
図7)。
この特許文献1には、債権を金額で指定する際には、2以上の債権から割引可能債権金額の合計を算出し、割引の希望金額がこの可能金額を超えていたら、当該債権を特定する手法が開示されている(特許文献1の
図16、ステップE5,E6等)。
【0006】
<電子記録債権法>
上述した約束手形による支払(決済)では、手形(有価証券)が紙媒体であるため、紙媒体自体の盗難や紛失のリスクがあり、さらに、手形の作成・交付・保管のコストがかかる、という問題点がある。
また、売掛債権の一括ファクタリングは、指名債権の譲渡であるが、この指名債権の性格上、譲渡の対象となる債権が存在するかどうか、その帰属の主体が誰か、などについて個別に確認しなければならず、譲渡に手間とコストを要してしまう。さらに、指名債権では、同一の債権が二重譲渡されるリスクや、譲渡人に対する人的抗弁が譲受人に対して主張されるリスクがあるなどの問題がある(非特許文献1第9頁)。
このため、指名債権の一括ファクタリングは、事務負担が大きく高コストとなり、そのため、手形ほど利用者層を広げられていない。一方、約束手形という紙媒体の利用では、決済事務の合理化に限界がある。
【0007】
これらの問題点に対して、2003年から、電子的な手段による債権譲渡の導入が推進されている。
2005年に法務省・金融庁・経済産業省により「電子債権に関する基本的な考え方」が取りまとめられた。2006年には法制審議会に電子債権法部会が設置され、パブリックコメントが実施され、2007年に要綱案が示された。金融審議会においても、電子登録債権の管理機関のあり方について考え方がとりまとめられた。
2007年第166回通常国会に「電子記録債権法案」が提出され、同年、平成19年法律第102号として成立した(非特許文献1第1頁から第2頁)。
この要綱案・立法では、電子記録債権法による電子記録債権は、指名債権の電子化ではなく、ジュネーブ統一手形法条約に基づく約束手形の無券面化でもない、新しい類型で特有の性質をもつ金銭債権と整理されることとなった(非特許文献1第9頁)。
【0008】
<電子記録債権の特徴>
売掛債権等の指名債権は、当事者の合意によってのみ発生するが、電子記録債権は、電子債権記録機関の記録原簿への電子記録により発生する(電子記録債権法第15条、第16条等)。電子記録債権の譲渡についても、譲渡記録をしなければ、その効力を生じない(同法第17条)。
この電子記録の請求と記録について、電子債権記録機関は、同一の電子記録債権に関し二以上の電子記録の請求があったときは、当該請求の順序に従って電子記録をしなければならない(同法第8条第1項)。これにより、電子記録債権では、二重譲渡のリスクが低減されている。
また、同時に矛盾する請求があるときには、いずれの請求も登録されない(同法第8条第2項)。そして、「請求の順序」は、現実の請求の日時であり、先日付で記録を請求する際の先日付の前後ではない(同法第8条3項,非特許文献1第51頁から52頁)。
電子記録債権には、善意取得(同法第19条)、人的抗弁の切断(同法第20条)などの仕組みが導入され、取引の安全が図られている。
【0009】
電子記録債権法などの施行後、大手金融機関は電子債権記録機関を自ら設立し、この自行型の記録機関を使用して、取引先に電子記録債権による支払や前払などのサービスを提供している。
2013年には、一般社団法人全国銀行協会の全額出資による電子債権記録機関が設立され、でんさいネット(登録商標)の通称でサービスが開始されている。でんさいネット(登録商標)は、全銀行参加型で、既存の銀行間の決済システムの利用による自動的な口座間送金決済が採用されている。
【0010】
<電子記録債権の一括ファクタリング>
特許文献2に、電子記録債権を利用した一括ファクタリングの手法が開示されている。特許文献2の
図1及び
図2を参照すると、銀行システム4の中に、一括ファクタリングサーバ、記録機関システム、電子記録債権データベース、そして仮記録部31を有している。
従って、特許文献2に記載の手法は、全銀行参加型ではなく、単一の金融機関による自行型の記録機関である。自行型として特別の工夫がされており電子記録債権の発生と同時に譲渡の記録を行うことができる請求データが生成され、先日付が発生記録日になるまで仮記録部で請求データを保管し(特許文献2の段落0039)、発生記録データおよび譲渡記録データを、同時に電子記録債権データベースに記録することで、債権の発生と譲渡とを同時に行う手法が開示されている(同段落0044)。
【0011】
特許文献2の自行型の電子債権記録機関の活用について、特許文献3には、支払企業、仕入先企業、電子記録債権を買い取るSPCが、すべて同一の銀行システムにアクセスするため、一括決済サービスを利用できる企業が極めて限られてしまう、という不都合が記載されている(特許文献3の段落0016)。
特許文献3には、いずれの当事者も新たな金融機関との取引を開始することなく、でんさいネット(登録商標)を利用した一括決済サービスの利用を可能とするために、譲渡記録を代行する代行者を活用する手法が開示されている(特許文献3の段落0037から0038)。この特許文献3記載の手法では、支払企業と仕入先企業は、一時的に電子記録債権を保有する代行者と取引をするため、新たな金融機関と口座開設等の取引を開始する必要がない(同段落0038,0047等)、とされている。
【0012】
<でんさいの決済口座番号の活用>
電子記録債権は、仕入先企業の資金調達を多様化することが期待されている。
特許文献4には、電子記録債権を担保とする資金化を実現するために、担保の対象とする電子記録債権の決済口座番号を、通常とは異なる特殊決済用の口座番号とする手法が開示されている。この特殊決済用の口座は、質権設定されており、支払企業から特殊決済用の口座番号宛てに振込があると、その入金は質権の対象となる(特許文献4の段落0039,
図3・
図6)。
この特許文献4記載の手法では、決済口座番号を特殊決済用とすることで、金融機関を譲受人とする譲渡記録請求を必要としない資金化を図っている。
【0013】
また、事務負担軽減として、例えば、特許文献5には、仕入先企業の決済口座番号の採番を工夫する手法が開示されている。特許文献5記載の手法では、決済口座番号の工夫として、仕入先企業の振込専用の口座番号を用意する。そして、この振込専用の口座へ振込があった際には、振込専用口座の口座番号を付加しつつ、取りまとめ口座に入金することで、振込対象とされた電子記録債権を特定しやすくしている(段落0005,0056)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明を実施するための形態は、決済仮口座番号54を使用する実施例1と、実施例1の構成を前提に多様な前払を実現する実施例2と、実施例1及び実施例2の構成を前提に、ファクシミリデータを使用する実施例3とを有する。
実施例1、2及び3を含めて「本実施形態」という。本実施形態で「当行」は、支払企業と取引のある金融機関Xをいい、「他行」は一部の仕入先企業が主に使用する預金口座がすでに開設されている金融機関Y、Zをいう。
本実施形態による決済システムを導入する金融機関が、本実施形態での「当行」である。
【実施例1】
【0031】
<決済仮口座を使う決済システムの構成>
図1を参照すると、決済支援システム101は、電子記録債権コントローラ10と、データベース30とを備えている。
データベース30は、当行と取引のある支払企業に関するデータと、当行又は他行と取引のある仕入先企業に関するデータと、当該仕入先企業が当該支払企業に対して持つ金銭債権に関するデータを管理する。
一般に、支払企業の社数は、仕入先企業の社数よりも1桁以上少ない。「企業」とあるが、個人事業主であっても良い。以下、支払企業と仕入先企業の関係に個別に言及する際に、支払企業A,B,C等、仕入先企業α,β,γ,π等、当行X、他行Y,Z等の符号を付す。
【0032】
図1に示すデータベース30は、決済支援サービスを提供するために、支払企業を債務者とする電子記録債権の記録に使用する当該支払企業の利用者番号56と、仕入先企業を債権者とする電子記録債権の記録に使用する当該仕入先企業の利用者番号58とを有している。利用者番号56,58は、全銀行参加型の電子債権記録機関82(たとえば、でんさいネット(登録商標))で支払企業と仕入先企業をそれぞれ唯一に識別する番号として使用することができる。
【0033】
また、データベース30は、仕入先企業の前記電子記録債権を裏付けとして当行から当該仕入先企業へ前払をする際に、当該前払の種別を予め特定する前払区分60を有している。前払区分60は、前払の利用有無、前払をする時期、前払額の定め方などに関する契約内容の識別区分である。
電子記録債権を裏付けとするには、当行が仕入先企業から電子記録債権を譲り受ける手法や、当行の関連先となる特別目的会社(SPC)を譲受人とする手法や、当行が電子記録債権に質権を設定する手法などがある。
【0034】
本実施形態では特に、データベース30は、仕入先企業が電子記録債権の記録に使用する決済口座番号50であって、当該前払に関係して当行に開設された仮の決済仮口座番号54と、当行又は他行に開設された仕入先企業の決済口座番号50であって、電子記録債権の決済金額が実際に入金される決済実口座番号52とを備えている。
決済実口座番号52は、仕入先企業が他行で開設し従前より使用をしている口座の口座番号である。仕入先企業が当行と取引がある場合、当行に従前から開設している口座の口座番号とすることができる。
決済仮口座番号54は、前払を利用する仕入先企業が当行に新たに開設する口座の口座番号であり、電子記録債権の譲渡記録の請求などで使用することで、当行と取引がなかった仕入先企業についても、この決済仮口座番号54を当行に開設することで、全銀行参加型の電子債権記録機関に対して、当行が窓口金融機関になることができる。決済仮口座番号54の口座は、実際には入金されないため、仕入先企業の経理上、口座の管理負担は増加しない。
【0035】
電子記録債権コントローラ10は、支払企業の仕入先企業に対する金銭債権を電子記録債権として発生させるための記録請求データ26を生成する。そのために、電子記録債権コントローラ10が、番号特定部12と、決済口座選定部14と、記録請求データ生成部16とを備えている。
【0036】
番号特定部12は、支払企業から金銭債権に関する支払データ24が送信された際に、当該支払データ24に応じて当該支払企業の利用者番号56を特定する。このため、支払データ24には、利用者番号56は不要である。
決済口座選定部14は、支払データ24に応じて仕入先企業の利用者番号58を特定すると共に、決済口座番号50として、前払区分60が前払利用無しの際には決済実口座番号52を選定する一方、前払利用有りの際には決済仮口座番号54を選定する。このため、支払データ24には、仕入先企業の利用者番号58は不要である。
仕入先企業のうち、前払区分60で前払利用有りの前払利用先、前払利用無しの先を前払利用無し先ともいう。
【0037】
記録請求データ生成部16は、支払企業の利用者番号56と、仕入先企業の利用者番号58と、選定された仕入先企業の決済口座番号50(決済実口座番号52又は決済仮口座番号54)とを使用して、仕入先企業が支払企業に対してもつ金銭債権を電子記録債権として登録するための記録請求データ26を生成する。
【0038】
このように、番号特定部12が、支払データ24から利用者番号56,58を特定し、決済口座選定部14が、前払利用の有無に応じて決済口座番号50として決済実口座番号52または決済仮口座番号54の一方を選択し、記録請求データ生成部16が、利用者番号56,58、決済口座番号50などの電子債権記録機関82で必要な番号を支払データ24の情報に追加して、記録請求データ26を生成する。
このため、本実施形態では、支払企業及び仕入先企業は、電子債権記録機関82を使用するためのデータ項目を煩雑な管理なしに、電子記録債権を利用することができる。
そして、支払企業は、従前から使用していた振込依頼のために金融機関に送信しているデータや、一括ファクタリングのために金融機関に送信しているデータに必要最低限の項目を追加するだけで、電子記録債権による支払を実施することができ、決済事務を合理化することができる。
本実施形態では、さらに、仕入先企業の決済口座番号50として、決済仮口座番号54と、決済実口座番号52とを有するデータ構造を採用し、両者を使い分けている。
決済実口座番号52は、仕入先企業が資金管理で継続して使用している他行の預金口座の口座番号とすることができる。電子記録債権の利用開始前に、仕入先企業が支払企業社に対する代金支払いの振込先として指定している銀行口座番号を、そのまま電子記録債権についての資金が振り込まれる口座として使用することができる。
【0039】
この決済仮口座番号54は、前払に関係して開設する。決済仮口座番号54は、他行と取引をしている仕入先企業が、電子記録債権を利用するために当行に新たに開設する口座である。この決済仮口座番号54を使用することで、譲渡等の電子記録債権の記録に際して、当行が仕入先企業の窓口金融機関となることができる。当行を新たに窓口金融機関に任命しつつ、当行からの前払額や期日決済の振込先を決済実口座番号52にすることで、仕入先企業は、電子記録債権の利用を開始しても、当行に開設する決済仮口座番号54の口座ではなく、従前から使用をしている他行にある口座を継続して使用することができる。
このように、本実施形態では、仕入先企業は、電子記録債権を利用するための契約等は必要となるが、電子記録債権の利用開始後であっても、支払企業への売掛金が入金される口座を変更することなく、電子記録債権の利用を開始することができる。このため、電子記録債権の利用開始をするハードルを低め、電子利用債権を利用する仕入先企業の比率を高めることができる。
手形を利用していた仕入先企業が1社でも多く電子記録債権に移行すると、それは支払企業の決済事務負担の軽減となる。つまり、仕入先企業が電子記録債権を使いやすくするために、決済実口座番号52と決済仮口座番号54とを使い分けることは、仕入先企業の電子記録債権への加入率を高め、仕入先企業の加入率を高めることが、支払企業の総合的な決済事務負担の軽減となる。
【0040】
上述のように本実施形態では、前払をどのような仕組みで実現する場合であっても、他行と取引のある仕入先企業は、電子記録債権の利用のために当行に新たに開設した口座(決済仮口座番号54)ではなく、当該仕入先企業が現に使用している他行に開設した口座(決済実口座番号52)を電子記録債権による前払に継続して利用することができる。
【0041】
再度
図1を参照すると、決済支援システム101は、中継システム80を介して電子債権記録機関82と接続されている。電子債権記録機関82は、銀行システムの内部にある記録機関ではなく、複数の銀行と接続された全銀行参加型の電子債権記録機関82とすると良い。全銀行参加型の電子債権記録機関82としては、例えばでんさいネット(登録商標)がある。
中継システム80は、電子記録債権を利用する銀行等の金融機関と電子債権記録機関82とを接続するシステムであり、発生記録請求や、譲渡記録請求などのAPIを提供する。
電子記録債権コントローラ10は、支払企業から支払データ24を受信すると、データベース30に格納されたデータを参照して電子記録債権の記録請求データ26を生成し、中継システム80を介して電子債権記録機関82に発生記録を請求する。
当行から仕入先企業への前払を実現するには、事前契約に応じて、発生した電子記録債権を当行に譲渡する譲渡記録や、当行に関連するSPCへ電子記録債権を譲渡する譲渡記録や、担保融資のための電子記録債権への質権設定の記録など、電子記録債権を前払(担保融資を含む)の裏付け資産とするための手続きが必要となる。
【0042】
電子記録債権を裏付け資産とするには、記録請求データ26の生成と同様、譲渡や質権を記録するための記録請求が必要となる。例えば譲渡の記録請求を電子債権記録機関82にするには、電子記録債権コントローラ10が、個別に譲渡記録請求データを生成するようにしても良いし、譲渡対象の記録請求データ26に譲渡フラグ62を付加しておき、中継システム80にて譲渡記録請求データ26を自動生成するようにしてもよい。
【0043】
図2(A)を参照すると、支払企業Aと、仕入先企業αとの間には、物品やサービスの納品に伴い、売掛・買掛の関係が発生する。仕入先企業αが支払企業Aに対して持つ売掛金は、電子記録債権の記録により電子記録債権に変化する。支払企業が仕入先企業に対して負う買掛金は、電子記録債務となる。
支払企業Aは、日常的に、当行Xと取引関係を持つ。一方、仕入先企業αは、他行Yと取引関係を持つ。このような場合、自行型の電子債権記録機関82を使用することが難しい。この点、本実施形態では、支払企業と当行の取引関係を中心として、他行と取引のある仕入先企業αが参加しやすい仕組みの実現が図られている。
仕入先企業αは、取引のある他行Yに開設している口座を、決済実口座52(α1)とする。仕入先企業αは、通常、支払企業に対する請求ではこの決済実口座52を使用する。決済実口座52は、例えば、Y銀行○○支店XXX番である。
【0044】
仕入先企業αは、電子記録債権を当行Xに譲渡するために、当行を窓口金融機関として、電子債権記録機関82に譲渡記録の請求をする。この場合、仕入先企業αは、当行Xに口座を有していなければならない。この電子債権記録機関82に記録するための口座を、本実施形態では、決済仮口座番号54の口座とする。図式的には、売掛金は決済実口座52に対応するが、電子記録債権は決済仮口座54に対応させるのである。
なお、電子記録債権を使用するために、支払企業も当行Xも決済のための口座番号を電子債権記録機関82に登録する必要がある。本実施形態では、支払企業及び当行が電子記録債権の決済のために使用する口座番号も、決済口座番号50という。仕入先企業の決済口座番号50は、決済実口座番号52である場合と、決済仮口座番号54である場合とがある。
【0045】
図2(B)を参照すると、電子記録債権は、前払の裏付け資産とするために、仕入先企業αから当行Xに譲渡された。支払企業Aが電子記録債務を負い、当行Xが電子記録債権を持つ。電子債権記録機関82には、仕入先企業の決済仮口座番号54ではなく、当行自身の口座番号が登録される。この電子記録債権の譲渡に伴い、仕入先企業αと当行Xとの間には、債権・債務関係が発生する。この債権・債務は、当行から仕入先企業αへの前払や、期日払いにより解消する。本実施形態では、この当行Xが仕入先企業αに対して負う債務の解消のための振込に、決済実口座番号52を宛先とする。このため、仕入先企業αは、電子記録債権を使用するために、当行に口座を開設するが、この決済仮口座番号54の口座には入金されず、日常的に使用している決済実口座番号52の口座に入金される。このため、電子記録債権の利用を開始する際に、事務的に口座開設をする必要があるが、管理すべき銀行口座は増加せず、仕入先企業αが使用をしている口座を継続して使用することができる。
【0046】
電子記録債権(売掛金)を裏付け資産とするファイナンスでは、支払企業が有する信用格付に応じて極度額が定まる。当行と他行が異なる地域を基盤とする地方銀行である場合、支払企業を電子記録債務者とする電子記録債権の割引(前払)は、他行よりも、支払企業と取引関係を有する当行が行う方が、より鮮度の高い良質な情報による与信(割引)を行うことができる。
手形の割引では、支払企業と取引のない他行が、仕入先企業αから持ち込まれる支払企業の振り出した手形を割り引くが、信用リスク管理及び事務処理の最適化の観点からは、支払企業をよりよく知る当行が一括して割引をする仕組みが優れている。
事務的にも、支払企業の信用リスク管理をすると、支払企業に納入する多数の仕入先企業に対する前払を実現することができる。この点、仕入先企業からの持ち込みに応じて約束手形を割り引く際には、手形の振り出し先は多数あるため、振り出し先(支払企業)の信用リスクの調査を多数の金融機関が重複して行わなければならなくなる。
本実施形態の仕組みにより、支払企業と当行の関係で電子記録債権の仕組みを導入していくと、信用リスク管理に要する金融機関の事務負担を全国の金融機関で総合的に低減し、最適化し、売掛金の早期現金化のためのコストを下げ、より低コストでより良質の資金サービスを提供することができる。
【0047】
<ハードウエア資源>
図3を参照すると、本実施形態による決済システム101は、ハードウエア資源として、演算装置90と、主記憶装置92と、外部記憶装置94とを備え、勘定系システム46と接続されている。また、好ましい実施形態では、FAXサーバ96を備える。
【0048】
演算装置90は、CPUなどの情報処理装置であり、データの比較、計算、分岐処理などの情報処理を行う。主記憶装置92は、揮発性の半導体メモリであり、演算装置90によって直接に使用される記憶装置である。外部記憶装置94は、半導体メモリによるキャッシュや、SSDや、ハードディスクなどである。外部記憶装置94等は、外部のデータセンターとしても良い。
外部記憶装置94は、各種マスターやテーブルなどのデータを記憶するほか、決済支援システムを実行するためのプログラムデータを記憶する。
図3に示すハードウエア資源は、リレーショナル・データーベース・マネジメント・システムを実行できるサーバー装置や、メインフレームで実現することができる。
【0049】
本実施形態による決済支援システム用プログラムを演算装置90で実行すると、
図3に示す演算装置90は、
図1等に示す電子記録債権コントローラ10として機能する。また、各種のマスターやテーブルは、外部記憶装置94または主記憶装置92への記憶で実現することができる。
【0050】
勘定系システム46は、当行の口座情報や、顧客情報をリアルタイムで管理する。口座情報としては、入出金の取引明細や、残高明細、融資明細などを管理する。顧客情報としては、CIF番号ごとに、顧客の社名、代表者名、住所、電話番号、FAX番号、給与振込などの契約の有無を管理する。本実施形態による決済支援サービス(でんさいの一括ファクタリングサービス)の契約がある場合、勘定系システム46にも契約がある旨が管理される。
勘定系システム46は、全銀ネット(登録商標)と接続され、振込データに基づいて、他行への振込(内国為替)を実行することができる。
決済支援システム101は、前払や期日に際して、振込データを生成し、勘定系システム46に送信することで、他行への振込による送金を実現することができる。
【0051】
FAXサーバ96は、電話回線やインターネット回線を介して支払企業のファクシミリ装置やパーソナルコンピュータと接続されている。本実施形態による決済支援システム101は、電子記録債権の発生、譲渡、分割、質権設定、前払の申し込みや確認、前払振込予定の通知、期日の振り込み予定の通知などの連絡にFAXサーバ96を使用しても良い。ファクシミリで送信する主要な様式例を、実施例として
図17から
図27に示す。電子記録債権の発生・譲渡や、前払の予定をファクシミリで通知する仕組みとすることで、ファクシミリ装置を有するか、または、ファクシミリデータ98をPDFとした電子メールの受信が可能であれば、電子記録債権の利用を開始することができる。
仕入先企業αは、新たにエレクトロニック・バンキング(EB)や、インターネット・バンキングの契約などをすることなく、そして、金融機関ごとに異なるEBの使い方を新たに覚える必要もなく、電子記録債権を利用できるため、電子記録債権の利用率を高めることができる。仕入先企業αの電子記録債権の利用率が高まると、手形の利用率が下がるため、支払企業の決済事務を統一し、決済事務の負担を総合的に軽減することができる。
【0052】
<決済支援方法>
実施例1では、電子記録債権コントローラ10が、利用者番号56,58の特定と、決済口座番号50の選定とを実行する。
図4を参照すると、電子記録債権コントローラ10は、まず、支払企業から支払データ24をオンラインまたはオフラインで受信する(ステップS1)。すると、電子記録債権コントローラ10の番号特定部12は、支払データ24に含まれる予め定められたコードから、支払企業の利用者番号56を特定する(ステップS2)。例えば、支払データ24に、支払企業の社名や、支払企業の決済口座番号50や、支払企業を特定できる契約種別コードや、電話番号など、支払企業を特定できるコードを予め取り決めて、当該支払データ24の支払企業を特定する。
【0053】
決済口座選定部14は、受信した支払データ24に応じて、まず、仕入先企業の利用者番号58を特定する(ステップS3)。例えば、支払データ24に含まれる仕入先企業の社名や、電話番号や、決済実口座番号52や、支払企業が採番して使用している仕入先企業を識別するための仕入先コードなどを使用して、仕入先企業を特定する。
【0054】
決済口座選定部14は、仕入先企業を特定すると、この仕入先企業の前払区分60を参照して、前払利用の有無を確認する(ステップS4)。決済口座選定部14は、決済口座番号50として、前払利用有りの際には決済仮口座番号54を選定する(ステップS5)。一方、前払区分60が前払利用無しの際には決済実口座番号52を選定する(ステップS6)。
【0055】
続いて、記録請求データ生成部16は、支払企業の利用者番号56と、仕入先企業の利用者番号58と、選定された仕入先企業の決済口座番号50とを使用して、仕入先企業が支払企業に対してもつ金銭債権を電子記録債権として登録するための記録請求データ26を生成する。この記録請求データ26は、発生日を先日付とする発生記録予約請求データとしても良い。
【0056】
番号選定部12が、支払企業の利用者番号56を特定し、決済口座選定部14が、仕入先企業の利用者番号58を特定するとともに、前払利用の有無に応じて決済口座番号50を選定するため、記録請求データ生成部16は、最小限の項目を有する支払データ24から、電子記録債権の発生に必要な記録請求データ26を生成することができる。
【0057】
図4に示す他、決済支援方法は、本実施形態のフローチャートのステップを備えることで、各フローチャートの実行により得られる効果を奏することができる。
【0058】
<決済支援用プログラム>
図3及び
図4を参照すると、本実施形態による決済支援用プログラムは、
図3に示すハードウエア資源を使用して、
図4に示す情報処理を実現する。
この決済支援用プログラムは、支払企業から金銭債権に関する支払データ24が送信された際に、
図3の演算装置90に、当該支払データ24に応じて当該支払企業の利用者番号を特定させることで、番号特定部12(ステップS1,S2)を実現する。
さらに、決済支援用プログラムは、演算装置90に、支払データ24に応じて仕入先企業の利用者番号58を特定させると共に、決済口座番号50として、前払区分60が前払利用無しの際には決済実口座番号52を選定させる一方、前払利用有りの際には決済仮口座番号54を選定させる(決済口座選定部14,ステップS3からS6)。
そして、決済支援用プログラムは、支払企業の利用者番号56と、仕入先企業の利用者番号58と、選定された仕入先企業の決済口座番号50とを使用して、仕入先企業が支払企業に対してもつ金銭債権を電子記録債権として登録するための記録請求データ26を生成させる(記録請求データ生成部16,ステップS7)。
【0059】
決済支援用プログラムは、
図4に示す各ステップを実行させる他、本実施形態の他のフローチャートの各ステップを実行させるプログラムを備えることで、各フローチャートの実行により得られる効果を奏することができる。
【0060】
上述したように、本実施形態では、仕入先企業への送金先として決済実口座52を使用しつつ、電子債権記録機関82の登録にのみ決済仮口座54を使用することで、他行と取引のある仕入先企業に幅広く電子記録債権の利用を促すことができる。
仕入先企業が電子記録債権に移行する際の事務負担を小さくできると、多数の仕入先企業による電子記録債権の利用の開始を見込むことができ、電子記録債権の加入率の向上を図ることができる。電子記録債権への加入率が向上すればするほど、支払企業の決済事務負担を軽減することができる。
【0061】
このように、仕入先企業の取引銀行によらず、全銀行参加型のでんさいネット(登録商標)を幅広く利用することができ、かつ、決済実口座52は、仕入先企業が現に使用している口座を継続使用できる。電子記録債権の使用開始時に、決済仮口座54を当行に開設する必要であるが、決済仮口座54に入金されることはないため、経理上管理する必要がなく、電子記録債権の利用開始によって管理すべき預金口座は増加しない。
支払企業の支払事務負担の軽減への貢献としては、第1に、電子記録債権で利用可能な利用者番号56,58や、決済仮口座番号54は、電子記録債権コントローラ10が自動的に付加するため、支払企業は電子記録債権を利用するために電子債権記録機関82で使用する利用者番号56,58を新たに管理する必要なく、従前から使用をしている振込データと同程度の項目を用意すれば良いため、電子記録債権の利用開始時のシステム開発負担が小さく、運用時の事務処理負担も小さい。
第2に、前払を利用する仕入先企業が、電子記録債権を当行または当行関連のSPCに譲渡する仕組みでは、個別の前払があってもなくても、満期期日の決済での口座間送金先は当行または当行関連のSPCの口座で変化ないため、前払の有無によって決済の事務負担が増加することがない。
第3に、上述の効果により仕入先企業の電子記録債権への加入率の向上を見込むことができ、手`の使用比率を低下させ、手形という紙媒体の発行や、割引や譲渡に伴う振込先の変更という事務負担の軽減を図り、多数の仕入先企業への支払方法を統一し、手形の振り出しや割引きへの対応などの事務負担を軽減することで、総合的な支払事務負担の軽減を図ることができる。
そして、決済仮口座番号54は、特許文献5の振込専用口座と異なり、実際には入金の宛先とならない口座番号であるため、支払企業にとっても、仕入先企業にとっても、経理事務負担を増加させることはない。
また、決済仮口座番号54は、仕入先企業の口座を特定する口座番号であるが、特許文献4の特殊口座のように仕入先企業と融資の取引のある金融機関でなければ使えない番号ではなく、仕入先企業と取引がなく、全国に存在する金融機関(他行)と取引のある仕入先企業を幅広く対象とすることができる。
【0062】
<決済実口座番号52を検索キーに>
再度
図1を参照すると、データベース30は、仕入先企業マスタ34を備えている。この仕入先企業マスタ34は、仕入先企業の利用者番号58と、決済実口座番号52と、決済仮口座番号54を関連させて記憶する。この仕入先企業マスタ34は、仕入先を唯一に特定する仕入先コードを主キーとして、仕入先企業ごとに、利用者番号58等を有すると良い。仕入先企業が複数の支払企業A,Bと取引があっても、仕入先企業マスタ34は唯一の構成とすると良い。一方、
図1に示す前払区分60は、仕入先企業ごととしても良いし、支払企業と仕入先企業の契約ごととしても良い。
【0063】
図5を参照すると、番号特定部12は、支払企業から支払データ24を受信すると、支払データ24中の仕入先企業ごとの決済実口座番号52をそれぞれ特定する(ステップS11)。番号特定部12は、続いて、決済実口座番号52を検索キーとして仕入先企業マスタ34を参照し(ステップS12)、当該決済実口座番号52を有する仕入先企業を特定する(ステップS13)。決済実口座番号52は、仕入先企業に唯一の番号であるため、決済実口座番号52を特定できると、仕入先企業を唯一に特定することができる。
【0064】
さらに、番号特定部12は、当該特定された仕入先企業の決済仮口座番号54を特定する(ステップS13)。仕入先企業を特定できると、仕入先企業の決済仮口座番号54は予め定められているため、仕入先企業マスタ34を参照することで、仕入先企業に唯一の決済仮口座番号54を特定することができる。
【0065】
番号特定部12が、
図5に示す情報処理を実行するため、支払企業は、支払データ24に仕入先企業ごとの決済実口座番号52を含めておくことで、電子記録債権の記録請求データ26の生成に必要な決済仮口座番号54を自動的に特定できるため、支払企業の支払データ24の生成負担を軽減し、その結果、支払企業の事務負担を軽減することができる。
特に、決済実口座番号52を支払データ24に含めるのは、支払企業が当行に送信する振込データに振込先口座番号を含めるという要件と同一であるため、支払企業が電子記録債権の利用を開始する際のシステム開発負担を軽減することができる。
そして、決済実口座番号52を活用すると、企業名や部署名や定義の不明確で混乱しがちな番号ではなく、誰にでも分かりやすく、チェックも容易な番号で間違えなく特定できる。このように、決済実口座番号52の利用により、不整合の発生による事務処理負担の増加を有効に抑止することができる。
【0066】
<振込データの生成>
再度
図1を参照すると、電子記録債権コントローラ10は、振込データ生成部18を備えている。振込データ生成部18は、前記前払区分60が前払利用有りの前記仕入先企業を債権者として発生した電子記録債権との関係で、前記前払区分60で予め定められた計算方法による前払額を振込額とし、前記決済実口座番号52を振込先口座番号とする振込データを生成する。
【0067】
実施例1では、仕入先企業が支払企業に対して持つ電子記録債権を裏付け資産として、当行または当行関連のSPCが前払を行う。電子記録債権を裏付け資産とする手法としては、実施例2で開示する当行への電子記録債権の譲渡と、当行関連SPCへの譲渡と、当行を質権者・仕入先企業を質権設定者とする電子記録債権への質権設定などがある。当行が地域密着型の金融機関である場合、当行自身による譲受とする仕組みが最もシンプルで導入しやすい。
【0068】
振込データ生成部18は、当行または当行関連SPCによる前払に際して、前記前払区分60で予め定められた計算方法による前払額を計算し、この前払額を振込額とする。前払額は、例えば、事前の契約内容を示す前払区分60に応じて、譲受の電子記録債権の全額、電子記録債権の額面額以内で、予め定められた一定額、電子記録債権の額面額に対する一定比率の金額などである。
そして、振込データ生成部18は、前払額の振込先として、仕入先企業の決済実口座番号52を振込先口座番号とする。これにより、電子債権記録機関82にて、発生時に使用をした仕入先企業の決済仮口座番号54ではなく、仕入先企業が日常的に使用をしている決済実口座番号52への入金とすることができる。仕入先企業が他行と取引を有する場合、決済実口座は、Y銀行○○支店XXX番号などである。仕入先企業が当行と取引がある場合、仕入先企業が日常的に使用する当行に開設された口座番号とすると良い。
【0069】
このように、本実施形態では、仕入先企業への振込データの生成にて、振込先口座番号を決済実口座番号52とするため、仕入先企業は他の経理で使用をしている口座をそのまま使用することができ、また、電子記録債権を利用するために管理すべき銀行口座を他に増加させる必要がない。この簡便性を仕入先企業に提供することで、電子記録債権への加入率を高め、加入率の向上により、支払企業の決済事務負担を軽減することができる。
【0070】
さらに、本実施形態では、支払企業は、最小限の項目による支払データ24を生成するのみで、従来から生成していた振込データに支払期日などを追加するだけで、電子記録債権を利用することができ、支払企業が企業活動に伴い毎月行わなければならない支払のための事務負担を軽減することができる。
【0071】
そして、本実施形態では、支払企業と取引のある当行が支払企業の経理に関する事務負担の軽減を図る目的で電子記録債権の導入を図るものであり、仕入先企業と取引のある金融機関が仕入先企業ごとの資金調達は二次的・付随的である。
当行は、支払企業に関する財務分析や地域密着の情報交換を電子記録債権の導入以前にすでに行っていることが通例であり、当行の追加の情報収集なしに、支払企業に関する極度額の範囲で、多数の仕入先企業に対する前払を実行することができる。
支払企業の1社に対して、仕入先企業は2桁から3桁の社数があることが通例であり、その所在地も日本全国に分布しているため、支払企業社との取引をきっかけに電子記録債権を導入する方が、金融業界全体として合理的である。
つまり、本実施形態は、支払企業社と取引のある金融機関を当社Xとして電子記録債権を導入し、当社Xの地域密着営業の一環として入手している支払企業社に関する信用リスクの範囲内で、多数の仕入先企業に対して一括して電子記録債権を裏付けとする前払をしようとする。この点、従来の約束手形が仕入先企業との取引のある金融機関が割り引きによる期日前の資金化を提供する仕組みと相違するが、本実施形態のように支払企業との取引のある金融機関が仕入先企業に対する早期資金化を提供する方が信用リスク管理のために収集できる情報量も多く、金融業界全体での重複した信用リスク管理がなく、合理的である。
約束手形という紙媒体でなく、本実施形態による電子記録債権を導入することで、この本来最も合理的である売掛債権の早期資金化を金融業界全体として低コストで提供することができる。
そして、全銀行参加型の電子債権記録機関82を使用して、一括ファクタリングを実現しようとしても、単一の金融機関が、すべての支払企業及び仕入先企業と取引をするか、または、特許文献3の代行者との契約により電子債権記録機関82の窓口金融機関になる必要があった。この点、本実施形態は、取引のない仕入先企業で、前払の利用先に、実際には入金されない決済仮口座番号54の開設を促すのみで、前払及び期日決済の入金は従前より利用している他行の預金口座を決済実口座番号52にて継続して変更なく使用することができ、当行も仕入先企業の双方にとって事務負担の少ない仕組みとなっている。
また、支払企業が仕入先企業に電子記録債権の仕組みを利用する際にも、現在使用中の預金口座に入金される仕組みの場合、仕入先企業からの質問も少なく説明に必要な時間や文書量を少なくすることができる。
【0072】
このように、仕入先企業が導入しやすい電子記録債権の仕組みを提案できると、手形の利用を必須とする仕入先企業の比率を最大限低下させることができ、支払企業は、仕入先企業への支払方法の一本化に向けた態勢を構築しやすくなる。手形の使用比率を低下させることができると、電子記録債権による支払と、振込による支払となるが、電子記録債権の支払データ24で、実施例1の好ましい例では、決済実口座番号52を仕入先企業を特定するためのキーとすることができ、すると、振込のための振込データのデータ項目に、電子記録債権の場合の満期期日を追加する程度の変更で対応することができる。また、全銀行参加型の電子債権記録機関82を利用するために必要な仕入先企業ごとの利用者番号58も、本実施形態のシステムで管理し、支払データ24に含める必要がないため、本実施形態による決済支援システムを使用した電子記録債権の利用では、電子記録債権に関する支払のみでなく、支払企業のすべての支払事務の事務負担を軽減し、支払事務の全体を合理化することができる。
【0073】
<決済仮口座番号54の採番>
再度
図1を参照すると、電子記録債権コントローラ10は、事前登録部19を備えている。事前登録部19は、支払企業と仕入先企業間で電子記録債権を使用する契約に際して、当該支払企業及び仕入先企業に関するデータをデータベース30に登録する。
この事前登録部19は、データベース30に決済仮口座番号54を登録する際に、当該仕入先企業ごとに発番された仕入先企業に唯一の口座番号を当該仕入先企業の決済仮口座番号54Aとして事前登録すると良い。仕入先企業ごとの番号となる。
【0074】
また、事前登録部19は、データベース30に決済仮口座番号54を登録する際に、支払企業と仕入先企業の組み合わせごとに発番された当該支払企業と仕入先企業の一対一の組み合わせに唯一の口座番号を当該仕入先企業の決済仮口座番号54Bとして事前登録するようにしても良い。支払企業と仕入先企業の契約ごとの番号となる。
【0075】
図6を参照すると、支払企業Aは、支払企業コードが500番、支払企業の窓口となる当行の支店番号が300番であり、仕入先企業α,β,γ,πとの取引がある。
支払企業Bは、支払企業コードが501番、支払企業の窓口となる当行の支店番号が301番であり、仕入先企業α,δ,εとの取引がある。
支払企業Cは、支払企業コードが500番、支払企業の窓口となる当行の支店番号が302番であり、仕入先企業β,δ,θ,λとの取引がある。
図6等に示す数値は、説明用に簡略化しており、例えば、実際の口座番号等の桁数とは異なる。
【0076】
仕入先企業ごとに決済仮口座番号54を発番する際には、
図6に示す例では、支払企業の窓口となる当行の店番と、固有番号の組み合わせとすると良い。
支払企業が仕入先企業の意向をとりまとめて電子記録債権への切り替えをうながす事例では、支払企業の当行の担当支店が相談・契約の窓口となる。この場合、決済仮口座番号54Aの発番では、仕入先企業の本店住所等とは無関係に、支払企業の窓口となる支店の口座とすると事務負担が小さい。
図6に示す例では、支払企業Aについての仕入先企業α,β,γ,πへの決済仮口座番号54Aは、支払企業の窓口となる当行の店番300と6001からの連番となった。当行の店番300の支店では、通常の普通預金口座の開設処理に、若干の追加的な作業があるのみで、決済仮口座番号54を発番することができる。
支払企業Bでは、仕入先企業αについては、決済仮口座番号54A(300 6001)がすでに発番されているため、新たな番号とせず、既存の番号とする。仕入先企業δについて新たに発番している。
また、一方、支払企業Cについての仕入先企業の発番では、仕入先企業β,δは既存の番号とし、仕入先企業θ,λに新たな番号を発番する。
【0077】
仕入先企業ごとに決済仮口座番号54Aを採番すると、決済仮口座番号54Aから仕入先企業を唯一に特定することができる。また、でんさいネットの使用料は、口座番号単位であるため、仕入先企業ごとに決済仮口座番号54Aを新たに採番すると、本サービスによる際の手数料を独自に設定し、手数料の割引きなどを実現することができる。
【0078】
支払企業と仕入先企業の契約ごとに、仕入先企業の決済仮口座番号54Bを発番する例では、支払企業を特定する支払企業コードと、連番の組み合わせとすると良い。
例えば、
図6に示す例では、支払企業Aへの仕入先企業α,β,γ,πには、支払企業コード500番と連番の組み合わせとし、仕入先企業αは500 001番、仕入先企業βは500 002番とする。この例では、契約ごとに異なる決済仮口座番号54Bとするため、支払企業Bと仕入先企業αの契約では、仕入先企業αには、500 001番とは別に、501 001番が与えられる。
【0079】
このように、仕入先企業の決済仮口座番号54Bを支払企業と仕入先企業の契約ごととすると、決済仮口座番号54Bで契約の相手先を唯一に特定することができる。このため、振込データに当該決済仮口座番号54Bを付加すると、決済仮口座番号54Bにより取引の相手先を唯一に特定することができるため、各企業の会計処理負担を軽減することができる。
特に、電子記録債権の一覧を表示する帳票や印刷出力のレイアウト上、相手先企業の企業名まで表示されない場合であっても、この決済仮口座番号54Bがあれば、双方の相手先を特定することができる。
【0080】
この決済仮口座番号54を、決済実口座番号52とは別に発番することで、
図6に示すように各仕入先企業の決済実口座54を使用しつつ、当行Xを電子債権記録機関82の窓口金融機関とすることができる。
また、本実施例では、
図6に示すように、仕入先企業γ,π,θのように当行Xと取引のある場合も、決済仮口座番号54A,54Bを採番することで、当行Xでの情報処理を統一することができる。
【0081】
上述したように実施例1によると、決済仮口座番号54と決済実口座番号52を使用することで、仕入先企業の電子記録再建への加入率を向上させることができ、これにより、手形の振り出しを減らし、仕入先企業への支払方法の統一を効果的に図り、これらによって、支払企業の事務負担を軽減することができる。また、振込データと同レベルの簡易な項目の支払データ24のみで、電子記録債権の発生等の事務を引き受けることができるため、支払企業の支払事務の負担トータルで軽減することができ、仕入先企業の改名や住所変更への対応も容易となる。
【実施例2】
【0082】
実施例2では、前払利用先の電子記録債権について、発生の直後に当行が仕入先企業から全額譲受し、当行から仕入先企業に前払または期日に振り込みをする例を開示する。<利用先全件の全額譲渡と任意前払>
図7を参照すると、実施例1と同様に、実施例2及び実施例3の決済支援システム102は、電子記録債権コントローラ10と、データベース30とを有している。
電子記録債権コントローラ10は、実施例1と同様、番号特定部12と、決済口座選定部14と、記録請求データ生成部16と、事前登録部19とを有している。
【0083】
実施例2では特に、電子記録債権コントローラ10が、譲渡制御部20と、前払データ管理部22とを備えている。
譲渡制御部20は、支払データ24の各金銭債権につき、前払区分60にて前払利用有りの際には、当該金銭債権の記録請求データ26によって発生する電子記録債権について、当行が全件かつ全額を譲り受ける譲渡フラグ62をオンにする。実施例2では、決済支援システムが譲渡記録請求データを生成するのではなく、記録請求データ26に譲渡フラグ62をオンにするのみで、譲渡記録請求データは別のシステムで生成する。
図7に示す例では、中継システム80が、記録請求データ26の譲渡フラグ62を参照して、譲渡フラグ62がオンの際に、記録請求データ26により記録される電子記録債権の譲渡記録データを生成する。
【0084】
前払データ管理部22は、当該譲渡フラグ62のオンに応じて当行が全額を譲り受けた債権額の残高の範囲内で、随時又は定期に任意額での仕入先企業への前払を制御する。前払データ管理部22は、譲受により買い取った電子記録債権の内容を管理し、買取の電子記録債権の範囲内で仕入先企業への前払を実行し、前払されなかった残高は期日に送金をする。
【0085】
前払データ管理部22により管理する前払の態様としては、前払の申し込みを随時とするか定期(自動前払)とするかの区分と、定期の場合の実行日の指定と、定期の場合の前払額の指定と、前払額が定額の場合の金額とを管理する。前払で、債権指定の前払は、電子記録債権の全額を前払の対象とする指定である。前払で、金額指定の前払は、電子記録債権の額面以内で、事前に指定された金額を前払額とする。
随時では、当行が仕入先企業から譲り受けた電子記録債権の残高内の金額で随時のタイミングで前払の申し込みを受信し、申し込まれた金額を前払額とする。
前払区分60は、これら前払の態様と、指定日や指定金額を予め記録した区分である。
【0086】
前払の利用契約がある仕入先企業の電子記録債権について、記録請求データ26の生成時に譲渡フラグ62をオンとして、電子記録債権の一部の金額ではなく全額を当行が買い取り、前払データ管理部22が、仕入先企業と予め個別に定めた前払の態様(前払区分60)に応じて、前払を実行する。
【0087】
譲渡フラグ62の制御対象を、電子記録債権の一部(分割)ではなく、全額としたため、支払企業は、電子記録債権の全額を買い取った当行を電子記録債権者として期日に口座間送金をすればよく、1つの電子記録債権の分割に応じて複数回の振込をしたり、期日までの割引による送金先の変更に対応する必要がない。つまり、全額譲渡を採用することで、前払の実行による支払企業の支払事務の事務負担増加を回避することができる。
また、全額譲渡としつつも、仕入先企業への前払額は任意であり、事前に定めた金額や、随時に申し込まれる金額を前払額とすることができるため、仕入先企業にとって、それぞれに使いやすい前払を提供することができる。また、実施例2では、代行者やSPCなどのプレーヤーもなく、支払企業と取引があり、支払企業をよく知る金融機関(当行)が電子記録債権を買い取り、仕入先企業への前払をするため、スキームに複雑さがなく、地域密着の鮮度の高い情報による信用リスク管理により、安定した前払を実行することができる。
そして、支払企業の支払事務の内容は個別の前払の有無で変化しないため、前払の個別利用の金額や時期について支払企業に知られない仕組みとなっている。従って、前払を利用するか否か自体は支払企業等に登録されるが、仕入先企業が前払を実際に使っているか否かは、支払企業に知られることがない。このため、資金繰りの状況変化について支払企業に知られたくない仕入先企業にとっても、使いやすい前払の方法を新たに提供することができる。
このように、支払企業に個別の前払利用の有無を知られることなく、仕入先企業のニーズに応じた柔軟な前払を利用でき、さらに、従前より使用をしている決済実口座番号52の口座に前払額が振り込まれるため、仕入先企業にとって、約束手形より使い勝手が高い決済方法を提供することができる。
これらにより、仕入先企業の電子記録債権の加入率を高め、仕入先企業の加入率を高めることができると、この加入率の向上により、支払企業の支払事務負担をより軽減することができる。
【0088】
<データ構造>
実施例2でのデータ構造の一例を開示する。決済支援システム102は、勘定系システム46(金融機関のホストコンピュータ)の一部として実現しても良いし、データベース・マネジメント・システムを実行するサーバーで実現しても良い。サーバーで実現する際にも、勘定系システム46の顧客情報と、サーバーのマスター情報を整合させるため、マスターに登録するデータを勘定系システム46にまず入力し、サーバー側に自動で送信するようにしても、逆に、サーバー側で登録した情報を勘定系システム46に送信するようにしても良い。
決済支援システム102をサーバーで実現する際にも、当行の買入債権の明細や残高は当行の会計処理上、勘定系システム46と整合させて管理すると良い。データの整合は、トランザクションレベルでの整合ではなく、勘定系システム46とサーバーの項目が例えば日単位で論理的に不一致とならない仕組みとしても良い。
【0089】
再度
図7を参照すると、決済支援システム102をサーバーで構成する場合、データベース30のマスタとして、支払企業マスタ32と、仕入先企業マスタ34と、支払企業契約マスタ36と、仕入先企業契約マスタ38とを備えている。
【0090】
実施例2では特に、仕入先契約マスタ38が、仕入先企業の前払区分60を当該仕入先企業ごとで、かつ、支払企業ごとに有する。この例では、前払の利用有無と前払の方法は、仕入先企業ごとではなく、支払企業と仕入先企業との契約ごとに定める。
【0091】
実施例2では、データベース30は、債権及び前払の明細を管理するテーブルとして、債権買取明細テーブル40と、債権支払明細テーブル42とを備えている。
特に、債権買取明細テーブル40は、譲渡フラグ62のオンに応じて前払利用有りの仕入先企業から譲り受ける電子記録債権の内容を管理する。
【0092】
図8を参照すると、支払企業マスタ32は、支払企業IDで識別される支払企業ごとに、支払企業名、一括ファクタリングや電子記録債権の利用区分、当行に開設された決済口座番号50、FAX番号、でんさいネット(登録商標)で当該支払企業を特定するためのでんさい利用者番号56、債権受付極度額、割引極度額を有している。
債権受付極度額は、支払企業を電子記録債務者とする電子記録債権のうち、当行が譲受可能な電子記録債権の合計額に関する極度額である。割引極度額は、1件の電子記録債権の上限を定める極度額である。これらは、支払企業から入手した情報に応じた信用リスク管理の結果に応じて定める。
支払企業マスタ32は、その他の書誌事項として、住所、電話番号、口座間送金等で通帳印字のための適用、電子記録債権記録機関で必要とする各種情報などを有する。
【0093】
仕入先企業マスタ34は、仕入先企業IDで識別される仕入先企業ごとに、仕入先企業名、
図6に示すような決済実口座番号52及び決済仮口座番号54、FAX番号、でんさい利用者番号58などを有する。
仕入先企業マスタ34は、その他の書誌事項として、住所、電話番号、口座間送金等で通帳印字のための適用、電子記録債権記録機関で必要とする各種情報などを有する。
【0094】
支払企業契約マスタ36は、支払企業と当行間の決済支援サービス(でんさい一括ファクタリングサービス)の契約ごとに、サーバー上で当該契約を唯一に識別する諸契約IDと、勘定系システム46(ホスト)で契約を唯一に識別する諸契約番号と、勘定系システム46で顧客を唯一に識別するCIF番号と、決済支援システム102中で支払企業を唯一に識別する支払企業IDと、支払データ24で支払企業との契約を唯一に識別するデータ伝送用コードとを有している。
【0095】
仕入先企業契約マスタ38は、支払企業と仕入先企業との契約ごとに生成されるマスタで、支払企業IDと、仕入先企業IDの両者を主キーとする。そして、支払企業が当該仕入先を唯一に特定する仕入先コードと、前払区分60とを有している。
図8に示す仕入先企業契約マスタ38での例では、前払区分60は、前払の種類(随時、定期、期日)、定期前払方法(全額、指定額)、支払日区分(譲渡日、指定日)、前払指定額などの項目を有している。
【0096】
前払種類の随時は、仕入先企業からの申し込みを待って前払をするタイプで、
図16に示す例では仕入先企業αである。
前払種類の定期は、予め定められた定期日に前払をするタイプで、例えば
図16に示す例では、指定日が譲渡日、債権ごとに定額(100万円)とする仕入先企業βや、指定日が譲渡日、債権の額面全額とする仕入先企業がγである。
前払種類の期日は、多様な使い方があるが、例えば、前払を利用しないタイプである。
図16に示す例では、前払を利用しないため期日に支払企業から直接に仕入先企業に口座間送信により資金決済される仕入先企業πである。
【0097】
図9を参照すると、支払企業が当行に送信する支払データ24は、諸契約番号(データ伝送用コードでも良い)と、支払企業の決済口座番号50とをヘッダーに含め、仕入先企業ごとに、仕入先企業の決済実口座番号52と、電子記録債権の発生日と、満期期日と、発生金額とを含む。発生日と満期期日はヘッダーに含めるようにしても良い。
支払データ24には、人間による人手チェックのために、支払企業社や仕入先企業の社名等を入れるようにしてもよい。
【0098】
記録請求データ26は、当行から中継システム80を介して電子債権記録機関82に送信されるデータであり、支払企業及び仕入先企業を特定する利用者番号56,58と、発生日、満期期日、発生金額、支払企業の決済口座番号50、仕入先企業の決済仮口座番号54、譲渡フラグ62などを有する。
電子記録債権で必要とされる支払企業等の社名や、各口座番号の金融機関名は、当行から中継システム80に送信する記録請求データ26に含めても良いし、中継システム80にて利用者番号56,58等から記録利用者マスタ84を参照して付加しても良い。
【0099】
図10を参照すると、債権買取明細テーブル40は、当行が仕入先企業から購入した電子記録債権の明細であり、仕入先企業IDと、債権IDとを主キーとする。そして、仕入先コード、支払企業ID,電子債権記録機関82で債権の特定に使用する電子記録債権番号、発生日、満期期日、債権の当初の額面金額、前払額額の累計した合計額である支払済額64とを有する。債権額面金額から支払済額64を減算すると、当該債権の残高となる。支払済額64には、前払の実行に際して必要とした手数料等の金額を含めておくと良い。
【0100】
債権支払明細テーブル42は、各債権の前払の実行ごとに、前払をした支払の明細であり、仕入先企業IDと、債権IDと、前払の回数となる支払IDとを主キーとする。この債権支払明細テーブル42は、仕入先コード、支払企業ID,電子記録債権番号、支払区分(期日、前払)、前払種類(随時、定期)、支払日、満期期日、支払額、手数料を有する。支払額と手数料を加算した額が、前払額額であり、前払額額の累計が、支払済額64となる。前払種類は、前払区分60の一部である。
【0101】
<定期かつ定額(金額指定)の前払>
実施例2では、当行は電子記録債権の全額を購入しつつ、その全部または一部の金額の前払申し込みに応じて早期資金を提供する。
本実施形態での前払の態様の開示は、技術的に計算が可能である内容を、技術的に整合する範囲で、その情報処理の一例となる技術の開示であって、社会制度面の現状や変化によって実現できない内容を含む可能性がある。
このため、本実施形態及び実施例で開示する内容は、特許出願人が提供を予定する役務内容の説明ではない。利息の利率や手数料の数値も同様に情報処理内容の開示例であり、現実の役務の説明ではない。
実施例2では、まず、前払区分60で前払の金額が予め指定されたタイプの前払を実行する情報処理方法を説明する。
予め金額を指定する前払には、債権の譲渡を単位として、債権ごとの一定額を債権ごとに前払額とするタイプ(
図15)と、月次の指定日での残高のある債権それぞれについて一定額を前払額とするタイプなどがある。月次の指定日での全債権の合計残高に対して、予め定めた一定額を前払額とするようにしてもよい(例えば、
図11)。
一定額の場合、どちらのタイプでも債権の残高が一定額より低額の場合、債権の残高を前払額とする。
【0102】
前払の指定日が譲渡日である場合、電子記録債権の譲渡日に向けて、各電子記録債権ごとに、予め定められた一定額か、電子記録債権の額面額が一定額に満たなければ額面額を前払額とする。
図15、
図23及び
図24に示す仕入先企業βの例では、債権の譲渡日(2016/4/15)に、債権毎に予め定められた金額(1,000,000円)を、前払額として振込をする。
図15等に示す例では、4/15発生日として、4/26期日と5/2期日の2件あるため、それぞれから予め定められた額の100万円を前払とする。債権が2件のため、前払額は合計で200万円となる。前払を実行すると、前払データ管理部22は、各債権の支払済額64を更新する。
図15等に示すように、指定日が譲渡日の場合、各債権について前払が実行されるのは、譲渡日の1度のみとなる。
前払の指定日が例えば毎月25日などの特定日の場合、特定日に残高のある全ての債権について、それぞれ一定額を前払に割り当てる仕組みでは、1つの債権について残高のある範囲で毎月一定額が前払される。また、指定日が特定日の場合であっても、各債権の前払は1度のみとするようにしても良い。
【0103】
定額の前払の場合、特定日に残高のある全ての債権の残高を合計して基準日前払可能額とし、その範囲で予め定められた一定額の支払としても良い。この場合、随時申込による金額指定の前払とほぼ同様の情報処理となる。
図11を参照すると、前払データ管理部22が、前払区分60として定期かつ定額の前払方法を取り扱う際には、前払予定日に向けた日に、当該情報処理を開始する。
図11に示す例では、前払予定日に向けた日は、前払の2営業日前である。前払予定日は、毎月10日が前払指定日であれば、その2営業日前である。なお、随時の場合には、3営業日前までの申込みを受け付けて、2営業日前に
図11に類似の情報処理を開始する。
【0104】
前払データ管理部22は、仕入先契約マスタ38を参照して(ステップS22)、当該前払予定日が定期の予定日である仕入先企業を抽出する(ステップS23)。具体的には、仕入先契約マスタ38にデータを持つ仕入先企業のうち、2営業日後が前払予定日で、未検索で、前払区分60が定期の指定日で定額の仕入先企業を抽出する。
【0105】
続いて、前払データ管理部22は、債権買取明細テーブル40を参照して(ステップS24)、当該仕入先企業から譲り受けた電子記録債権のうち、満期期日の到来前の電子記録債権群を特定する(ステップS25)。続いて、特定した電子記録債権群から満期期日の到来が近い順に定額に至るまで各電子記録債権の残高を前払額に割り当てる(ステップS26)。電子記録債権群が発見されなければ、ステップS22に戻り、次の仕入先企業を探索する。
【0106】
前払額が計算されると、割り当てた前払額の合計額に応じた金額を振込額とし、定期の予定日を振込日とし、決済実口座を振込先口座とする振込データを生成する(ステップS27)。実際には、前払額から各種の手数料を減額し、減額した額を振込額とする。
【0107】
さらに、債権買取明細テーブル40の支払済額64を当該振込日付けで当該前払額の金額にて更新する(ステップS28)。
ステップS27にて振込データを生成し、ステップS28にて支払済額64を更新すると、当該仕入先企業についても前払制御は完了のため、次の仕入先企業の検索に処理を戻す(ステップS29)。
【0108】
前払区分60が月次の指定日での一定額の際には、
図11に示す計算方法により、月間の前払額の最大値は当該一定額となる。一方、前払区分60が譲渡日の一定額の際には、電子記録債権の数に応じて増加することとなるが、各電子記録債権の前払回数は1度となる。指定日が特定日で債権毎の定額の場合、債権に残高がある範囲で、毎月の特定日に残高のある全ての債権についての定額を合計した額が前払額となる。
これらの前払制御によると、前払の内容を事前に取り決めて、前払区分60に登録しておくだけで、前払のための振込データを自動的に生成することができ、仕入先企業の資金繰りを安定化することができる。このため、電子記録債権を約束手形の代替手段として広め、仕入先企業の電子記録債権への加入率を向上させ、この加入率の向上により、支払企業の支払事務負担を総合的に軽減することができる。
【0109】
<定期かつ全額(債権指定)の前払>
図12を参照すると、前払データ管理部22は、前払区分60として全債権の全額の前払方法を取り扱う際には、支払データ24の受信から処理を開始する。
まず、支払データ24を受信すると(ステップS31)、当該支払データ24から前払区分60が全債権で全額の仕入先企業を抽出する(ステップS32)。
【0110】
仕入先企業がある場合(ステップS33)、支払データ24に指定される電子記録債権の発生日に向けて、抽出した仕入先企業の電子記録債権の全額を前払額に割り当てる(ステップS34)。
そして、前払データ管理部22は、割り当てた前払額に応じた額を振込額とし、譲渡フラグ62のオンに応じて譲渡記録がなされる電子記録債権の譲渡日を振込日とし、仕入先企業の決済実口座を振込先とする振込データを生成する(ステップS35)。
実際には、全額から前払に必要な手数料を減額した金額が振込額となる。この振込データは、勘定系システム46に送信される。
前払データ管理部22は、債権買取明細テーブル40に、当該譲渡日付けで電子記録債権の支払済額64を全額として記録する(ステップS36)。
【0111】
この
図12に示す例では、支払データ24の受信時から、前払のための振込データを生成する準備を開始するため、電子記録債権の譲渡日が電子記録債権の発生日と同日であっても、その譲渡日に前払の振込を実行することができる。
そして、前払データ管理部22が、振込データを生成するため、仕入先企業の資金繰りの安定化を図るサービスを提供でき、前払の自動化による仕入先企業の債権管理の簡略化を提供することができる。また、譲渡日の全額前払を実現することで、手形の振り出し日に割り引きをする約束手形と同等以上の早期現金化が可能であり、電子記録債権に加入する仕入先企業を増加させることができる。
特に、支払企業と取引のある当行による割引きであるため、支払企業と取引のない他行による割引きと比較して審査時間を短くすることが出来る他、支払データ24を受信した段階で、前払の実行(振込データの生成)に向けた準備をすることができるため、電子記録債権の発生日を譲渡日として、この譲渡日に振込を完了させることができる。
これらにより、仕入先企業の電子記録債権への加入率を向上させることができる。この電子記録債権への加入率の向上により、支払企業の支払方法を統一を図り、支払企業の支払事務負担を総合的に軽減することができる。
【0112】
<随時(前払日及び金額指定)の前払>
次に、随時の申し込みに応じた前払処理の一例を説明する。前払の申し込みは、3営業日前までに、前払日と、前払額を指定して、仕入先企業αが当行に申し込むとする。
再度
図11を参照すると、随時に申し込みを受けた前払日の2営業日になると(ステップS21)、2営業日ごを前払予定日とする随時申し込みの仕入先企業を抽出する(ステップS22からS23と同種の処理)。
【0113】
続いて、当該仕入先企業を電子記録債権者として発生し、当行が買取をしたすべての電子記録債権群を抽出する(ステップS24,S25)。続いて、電子記録債権を前払期日の近い順序で並べて、前払期日の近い準に、随時に申し込みを受けた前払額に至るまで、電子記録債権の残高を前払額に割り当てる(ステップS26)。
【0114】
申し込みを受けた前払額に達すると、当該前払額から手数料を除いた金額を振込額、決済実口座を振込先とする振込データを生成し(ステップS27)、振込日が到来すると、債権買取明細テーブル40の支払済額を更新する。
【0115】
このように、随時のタイミングで任意の金額の前払に応じても、全額購入済みの残高の範囲内で前払を実行し、電子記録債権自体の分割や譲渡などは行わないため、前払の実行を支払企業に知らせることなく実行することができ、また、前払の実行によって支払企業の支払事務負担を増加させることがない。
【0116】
<譲渡フラグ62>
再度
図7を参照すると、実施例2では、決済支援システム102に、中継システム80と、記録利用者マスタ84が併設されている。
中継システム80は、電子債権記録機関82にアクセスするためのAPIを提供する。中継システム80のAPIに従った記録請求データ26を生成すると、中継システム80が電子債権記録機関82の規約に応じたデータを生成する。また、中継システム80に記録利用者マスタ84を接続し、電子債権記録機関82の利用者に関する各種のデータを蓄積しておくと、電子記録債権の発生ごとに同一の内容のデータ項目を何度も送信する必要がなく、また、事前に取り決めた契約に従った記録請求以外の請求がなされることを防止することができる。
【0117】
実施例2では特に、決済支援システム102と中継システム80との連携により、譲渡記録請求データの自動生成をすることができる。本実施形態による決済支援システムでは、前払を利用する仕入先企業を電子記録債権者とする電子記録債権は、すべて、当行に譲渡をする。この譲渡について、毎回譲渡記録請求データを生成するのは事務処理負担としても、コンピュータ資源の利用としても無駄が多い。
このため、記録請求データ26に譲渡フラグ62のデータ項目を含め、譲渡フラグ62がオンの際に中継システム80側で自動的に譲渡記録請求データを生成すると良い。特に、電子記録債権の発生記録請求を先日付で行い、記録請求の予約とし、譲渡記録を自動化すると、将来の前払に向けた確実な準備をすることができる。具体的には、電子記録債権の発生日に、当該電子記録債権を発生させ、同日のその後に電子記録債権を当行に譲渡記録し、その同日に前払を実行することができる。
【0118】
上述したように実施例2によると、当行への全額譲渡を前提に、多様な前払を用意できるため、多種多様な仕入先企業のニーズに応じた前払を提供することができ、しかも、取引のなかった仕入先企業との新たな取引に際しても、当該仕入先企業が現に使用している預金口座を決済実口座番号52とすることで、そのまま前払の振込先口座とすることができる。
このため、支払企業は、多数の仕入先企業に電子記録債権への加入(手形からの切り替え)を提案し、仕入先企業の加入率アップと、支払手法の統一を図ることができる。仕入先企業の多くが電子記録債権に切り替えると、支払企業の支払事務を飛躍的に合理化することができる。
これにより、支払企業、仕入先企業及び本実施形態のシステムを導入する金融機関のすべてが、ITによる生産性の向上を図ることができる。
【実施例】
【0119】
次に、仕入先企業への前払等を実行するために、ファクシミリにより帳票を送信する実施例を説明する。本実施例では、EBやインターネットバンキングではなく、ファクシミリを活用することで、仕入先企業の電子記録債権を利用し安くし、加入率の向上を図っている。
本実施例は、実施例1及び/又は実施例2で実現可能な技術の一例であり、実施例として開示する手法は、実施例1及び/又は実施例2でも実施可能である。
再度
図7を参照すると、本実施例の決済支援システム102には、FAXサーバ96が併設されている。そして、電子記録債権コントローラ10は、支払企業及び仕入先企業の決済に関するファクシミリデータ98を生成するファクシミリデータ生成部23を備えている。
【0120】
ファクシミリデータ生成部23は、決済に関するファクシミリデータ98として、電子記録債権の発生、譲渡、買取の電子記録債権の一覧と基準日前払可能額、前払による振込、期日決済による振込、期日決済の引落の予定を知らせる帳票を生成する。ファクシミリデータ生成部23は、この予定を知らせる帳票を、それぞれの実行日に向かう日(例えば、実行日の2日から10日前)に、上記FAXサーバ96を介して、仕入先企業及び支払企業のファクシミリ装置に送信する。仕入先企業及び支払企業では、コンピュータで動作する電子メール管理アプリケーションソフトウエアを、ファクシミリ装置として使用することもできる。
【0121】
本実施例では、
図6に示す支払企業社から仕入先企業α,β,γ,πへの支払データ24の一例を
図13に、その発生記録予約請求データの一例を
図14に、そのうち仕入先企業β社への前払の例を
図15、支払企業社の支払と、仕入先企業α,β,γ,πへの入金の対応例を
図16に示す。
これらの決済支援に関するファクシミリデータ98の例を、
図17から
図26に示す。
【0122】
図13を参照すると、2016年4月15日を発生日とする支払データ24は、4/26を満期とする2件と、5/2を満期とする4件の合計6件である。支払データ24の識別は、諸契約番号xxx500を使用することで、確実に特定することができる。本実施例では、支払データ24に手動又は自動で付加される諸契約番号により、支払企業マスタ32を参照して、支払企業の利用者番号56を特定する。
支払データ24は、最低限
図13に示される項目があれば良く、例えば、仕入先企業等の社名は人手のチェックに有用だが、決済支援システム102での発生記録(予約)請求データの生成に必須ではない。
例えば、
図6に示すように、Y銀行 那覇支店001を決済実口座番号52とする仕入先企業は、α社であり、決済口座選定部14は、仕入先企業マスタ34を参照して、この決済実口座番号52から仕入先企業の利用者番号58を特定することができる(
図5のステップS12)。この支払データ24では、仕入先企業に対して、満期期日の異なる2件の電子記録債権が含まれている。
【0123】
図14を参照すると、発生記録予約請求データ26には、利用者番号56、決済口座番号50、発生日、満期期日、発生金額(額面金額)、譲渡フラグ62が含まれている。電子債権記録機関82の要請に応じて、電子記録債権コントローラ10が企業や金融機関のカナ名等を追加するようにしても良いし、定型で変更のない項目については、外部の記録利用者マスタ84に格納しておき、中継システム80にて付加するようにしても良い。
【0124】
電子記録債権コントローラ10は、
図13に示す支払データ24を受信すると、番号特別部12が、支払データ24の諸契約番号やデータ伝送用コードをキーとして支払企業契約マスタ36を参照し、支払企業ID(図中、500番)を特定した上で、支払企業マスタ32を参照して決済口座番号50(図中、X銀行長野支店001)を特定する(
図4のステップS2)。
【0125】
電子記録債権コントローラ10は、支払データ24の各債権ごとに、決済口座選定部14が、決済実口座番号52をキーとして仕入先企業マスタ34を参照して仕入先企業の利用者番号58を特定する(
図4のステップS3)。決済口座選定部14は、続いて、仕入先企業契約マスタ38を参照して、当該支払企業と仕入先企業との間での前払利用有無を確認する(
図4のステップS4)。
図14等に示す例では、仕入先企業の3社については、前払利用があるため、決済口座番号50として、
図6の仕入先企業ごとに当行にて発番された決済仮口座番号54を選定する(
図4のステップS5)。一方、仕入先企業πの1社については、前払利用がないため、
図6の決済実口座の列に示す決済実口座番号52(図中、Z銀行 鶴岡支店012)を選定する(
図4のステップS6)。
【0126】
本実施例では、譲渡制御部20が、仕入先企業の仕入先企業ID又は利用者番号58をキーとして、仕入先企業契約マスタ38を参照し、前払区分60にて前払利用有りの際には、譲渡フラグ62をオンにする。譲渡フラグ62は、当該金銭債権の記録請求データ26によって発生する電子記録債権について、当行が全額を譲り受けることを示すフラグである。
【0127】
そして、記録請求データ生成部16は、
図14に示すように、仕入先企業の利用者番号58、決済口座番号50(決済実口座番号52又は決済仮口座番号54)、発生日、期日、発生金額、譲渡フラグ62をセットすることで、発生記録(予約)請求データ26を生成する。発生日は、記録請求データ26の生成日に対して、将来の日付(先日付)である。
図14中、左端の#01から#06は図面上の説明のために付した債権の番号であり、
図15、
図19から
図25で使用した債権の番号である。
【0128】
中継システム80は、この発生記録(予約)請求データを受信すると、事前の取り決めから変更のない項目を記録利用者マスタ84から読み出して付加し、電子債権記録機関82が定める規格に従った記録請求データ26を電子債権記録機関82に送信する。
また、中継システム80では、譲渡フラグ62がオンの金銭債権については、電子記録債権を予め定められた当行宛てに譲渡するための譲渡記録請求データを自動生成し、電子債権記録機関82に送信すると良い。
【0129】
本実施例では、電子記録債権コントローラ10は、前払日に向けた日(前払日の数営業日前の日)に、前払データ管理部22が、当該譲渡フラグ62のオンに応じて当行が全額を譲り受けた債権額の残高の範囲内で、随時又は定期に任意額での前記仕入先企業への前払を制御する。
例えば、前払データ管理部22が、仕入先企業βの仕入先企業契約マスタ38の前払区分60を参照して、前払日を譲渡日、金額を債権毎に百万円の定額である場合、譲渡日である前払日に向けた日の電子記録債権を探索する。β社には、4/26満期期日の2,412,000と、5/2満期期日の2,312,000との債権があるため、前払データ管理部22は、これら百万円を超える債権について前払可能として、前払額を百万円、前払日を譲渡日(
図14に示す電子記録債権の発生日と同日)である4/15、振込先口座の口座番号を仕入先企業βの決済実口座番号52(
図6に示すZ銀行鈴川支店011)とする振込データを生成する。なお、実際には、前払額から各種手数料が控除された金額が振込額となる。
図15に示すように、仕入先企業βから買取をした電子記録債権のそれぞれの残高は、発生金額から前払額を減算した額となる。
このように、本実施例では、電子記録債権の残高内で自動で前払を実行することができる。
【0130】
図16を参照すると、支払企業社は合計6件の支払を4社の仕入先企業α,β,λ,πに対して行う。
仕入先企業αの前払区分60は随時で、今回は300万円の申込みがあった。
図16に示す例では、合計4,722,000円の内3,000,000円を4/18付けで前払し、4/26の期日は全額前払済で期日の支払なし、5/2の期日には残額の1,722,000を当行から振り込まれている。
【0131】
仕入先企業βの前払区分60は定期・定額で、前払日は譲渡日、定額は債権毎に100万円である。電子記録債権の発生日で、かつ、譲渡日である4/14を前払日として、支払データ24の受信時点から前払の準備をし、4/14に当行から仕入先企業βの決済実口座番号52(他行ZであるZ銀行鈴川支店011)の口座に振込がなされている。この譲渡日当日の前払は、電子債権記録機関82から譲渡の登録済みの通知を受けてから振込を実行するようにしても良いし、非常に例外的な事象の発生により譲渡の登録が予定通りできない場合であっても、支払企業社に当行あての支払義務が生じる仕組みとすることで、譲渡の通知を受けずに振込を完了させることもできる。
期日である4/26と、5/2には、それぞれ買取債権の残額を仕入先企業βの決済実口座番号52宛てに振り込みがされている。
【0132】
仕入先企業γの前払区分60は定期・全額で、指定日は譲渡日である。譲渡日である4/14に、債権の全額を前払で振り込みをし、5/2の期日には残高がないため振込はされない。
【0133】
仕入先企業πは前払利用なしで、
図14に示す発生記録(予約)請求データの譲渡フラグ62もオフであり、当行への譲渡はされない。電子記録債権上、仕入先企業πの決済口座番号50は決済実口座番号52(Z銀行鶴岡支店012)であり、期日にこの決済実口座番号52宛てに口座間送金による決済がなされる。
【0134】
図16に示す仕組みでは、支払企業Aは、前払の有無に応じた事務処理負担がなく、支払すべき金額を一括して取り扱うことができる。例えば、一定の範囲で合計した金額をまとめて口座に入金しておくと、個別の引落が自動的になされ、支払を完了させることができる。
仕入先企業は、
図16に示すように、各仕入先企業の状況に応じた方法で、必要な金額の前払を利用できるため、手形から電子記録債権への切り替えをしやすく、また入金日の不明な振込による決済よりも資金運用の予定を立てやすい。
また、仕入先企業が前払をした個別の金額は支払企業に通知されないため、支払企業に個々に把握されることなく前払を利用できる点に、魅力を感じる仕入先企業の存在も想定できる。また、支払企業は、本サービスを利用すると、一定条件下、早期資金化のためには前払の利用をうながすことで、支払期日の延長を仕入先企業に提案することができる。
このように、支払企業は支払いを一括的に扱うことで支払事務を合理化でき、仕入先企業はニーズに応じて多様な前払を利用することができる。
【0135】
次に、ファクシミリデータ生成部23が生成する帳票(ファクシミリデータ98)の例を
図17から
図26を参照して説明する。
図17及び
図18を参照すると、
図13に示す支払データ24を情報処理し、
図14に示す発生記録(予約)請求データが生成される前後である4/6に、当行Xから支払企業Aのファクシミリ装置に4/15付けで発生記録債権明細書(ファクシミリデータ98)が送付される。この明細書は、支払期日毎に集計されており、5/2分は
図18に示すファクシミリデータ98となる。
この発生記録債権明細書は、電子記録債権として発生する金銭債権の一覧である。前払区分60として、前払利用か、でんさい利用かが表示されているが、これは電子記録債権の利用を申し込んだ際の2択であり、前払をどのように利用するかの詳細情報ではない。
また、この発生記録債権明細書では、前払利用先についても、決済実口座番号52を表示している。全銀行参加型の電子債権記録機関82を利用する際には、仕入先企業が当行に開設する口座番号を使用しなければならないが、本実施例による決済支援システムを使用すると、決済実口座番号52と決済仮口座番号54の使い分けを自動化できるため、ユーザである支払企業には、実際に仕入先企業から従来より使用している決済実口座番号52を知らせることができる。
なお、当行Xから電子債権記録機関82に向けて送信する発生記録請求(予約)データでは、前払を利用する仕入先企業については決済仮口座番号54を使用する(
図14)。
決済実口座番号52で支払企業に連絡できると、支払企業で新たな口座番号(電子債権記録機関82を利用するために必要となる決済仮口座番号54)を管理する必要がない。
【0136】
図19を参照すると、前払区分60が随時である仕入先企業αに、電子記録債権の発生及び譲渡日(4/15)の一定期間前の日付(4/6)にて、でんさい一括ファクタリング譲渡債権確認書をファクシミリデータ98として送信する。前払を随時で利用する際には、この電子記録債権の金額の範囲内での申込みが必要となるため、仕入先企業αは、この譲渡債権確認書を利用して前払の利用の有無を判断し、この基準日前払可能額の範囲内での前払申込みを行う。
この譲渡債権確認書は、支払企業Aから仕入先企業αに譲渡済の他の電子記録債権を含めて表示し、今回新しく譲渡された債権に※等のマークを付して明示するようにしても良い。
このように、仕入先企業に、基準日前払可能額の範囲内が通知されると、前払による資金繰りを検討しやすい。
【0137】
図20を参照すると、
図16に示すように300万円の随時の前払を申し込んだ仕入先企業αに、でんさい一括ファクタリング前払申込確認書がファクシミリデータ98として送付される。前払データ管理部22は、期日が先に到来する金銭債権から順に前払の申込額まで前払額を割り当てる。
図20に示す例では、期日が4/26である債権番号01の全額をまず割り当てて、次に期日が5/2である債権番号03から必要な589,000円を割り当てることで、前払額300万円を確保する。この前払後には、債権残高は1,722,000となる。
金額指定による前払では、期日の近い方から割り当てることで、利息額を最小とすることができる。
【0138】
図21を参照すると、
図20に示す申込確認書と同時か、実際の前払日が近づいた日に、でんさい一括ファクタリングお支払いのお知らせが、ファクシミリデータ98として送付される。前払は、期日までの日数分の利率と、振込の手数料が必要となるため、
図21に示す利率計算を示し、利息と振込手数料の減額後の金額が振込額となる。
このように、本実施例では、振込の実行日よりも前に、ファクシミリで振込予定日を通知することができる。
【0139】
図22を参照すると、
図21に示す前払後、2回目の前払がない場合、期日到来のお知らせとして、5/2の期日到来前に期日の振込額がファクシミリデータ98として送付される。この期日到来のお知らせでは、電子記録債権の額面額と、前払による支払済額64の合計と、残高である債権金額とが明示される。この振込は、決済実口座番号52で特定される他行に開設された口座番号宛てになされる。
【0140】
図23を参照すると、仕入先企業βに、でんさい一括ファクタリング譲渡債権確認書がファクシミリデータ98として送付される。仕入先企業βは、前払区分60として、前払指定日が譲渡日、前払請求金額(定額)が100万円である旨もあわせて明示されている。
【0141】
図24を参照すると、定額での前払である仕入先企業βに、でんさい一括ファクタリングお支払いのお知らせがファクシミリデータ98として送付される。
図24に示す例では、期日の異なる2件の債権について、それぞれ定額を超えるため定額を前払額とする前払が実行される。期日までの利息計算と、振込手数料等が減額され、他行Zに開設された決済実口座番号52に振込が実行される。
【0142】
図25を参照すると、仕入先企業βに、5/2の期日到来のお知らせがファクシミリデータ98として送付される。
図25に示すお知らせの送付日である4/28には、満期期日4/26分はすでに期日決済がされている。
図25に示される債権は、5/2期日の額面2,412,000円、前払による支払済額64が1,000,000で、期日の債権金額1,412,000円である。この場合も振込手数料を減額した金額が振込額となる。
【0143】
図26を参照すると、5/2の決済期日について、支払企業に一括ファクタリング期日決済のお知らせがファクシミリデータ98として送付される。電子記録債権の内訳は、電子債権記録機関82からも送付される際には、
図26に示す帳票(ファクシミリデータ98)の送信は必須ではないが、
図26に示す通知は、引落額の合計額であるため、支払企業の確認に有用な情報となる。
図26に示す引落額は、
図16に示す仕入先企業の3社に対する5/2を満期期日とする3件分の合計である。この3件は、それぞれ随時、定額、全額などの前払がなされているが、支払企業では当行の口座に支払額を一括して入金しておけば、個別の引落が自動的になされるため、多数の支払に対して一括した事務による支払をすることができ、これにより、支払事務を合理化することができる。
【0144】
上述したように本実施例によると、支払企業と取引のある当行が、電子記録債権の窓口となるため、発生、譲渡、前払額、振込などを予定の段階で帳票とすることができ、そして、これらの帳票をファクシミリデータ98として仕入先企業にファクシミリで送付するため、EBやインターネットバンキングの契約や習熟を必要とせず、電子記録債権を利用し、ニーズに応じた前払を受けることができる。
この予定を知らせる帳票を、ファクシミリデータ98で送信する仕組みのため、電子記録債権を利用する仕組みがシンプルで分かりやすく、従って、電子記録債権への利用率の向上を見込むことができる。特に、決済仮口座番号54の利用により、当行と取引の無い日本国内で遠方の仕入先企業との契約についても、簡易であり、ファクシミリの送受信ができれば電子記録債権に加入できるため、電子記録債権に関して従来提案されている様々な提案との比較において、極めて加入しやすい仕組みを実現できる。
このように、本実施例は、予定を知らせる帳票をファクシミリデータ98で送信する仕組みとしたことで、電子記録債権への加入率を高め、この加入率の向上により、支払企業の支払事務を総合的に軽減することができる。
【解決手段】 支払企業から金銭債権に関する支払データ24が送信された際に、当該支払データ24に応じて当該支払企業の利用者番号56を特定する番号特定部12と、支払データ24に応じて仕入先企業の利用者番号58を特定すると共に、決済口座番号として、前払区分60が前払利用無しの際には決済実口座番号52を選定する一方、前払利用有りの際には決済仮口座番号54を選定する決済口座選定部14と、支払企業の利用者番号56と、仕入先企業の利用者番号58と、選定された仕入先企業の前記決済口座番号とを使用して、仕入先企業が前記支払企業に対してもつ金銭債権を前記電子記録債権として登録するための記録請求データ26を生成する記録請求データ生成部16とを備えた。