(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189482
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】デュアルアンテナマイクロ波切除および焼灼装置、システムおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/18 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
A61B18/18 100
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-110170(P2016-110170)
(22)【出願日】2016年6月1日
(62)【分割の表示】特願2012-10801(P2012-10801)の分割
【原出願日】2012年1月23日
(65)【公開番号】特開2016-185333(P2016-185333A)
(43)【公開日】2016年10月27日
【審査請求日】2016年6月1日
(31)【優先権主張番号】13/020,664
(32)【優先日】2011年2月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513109016
【氏名又は名称】コビディエン エルピー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(72)【発明者】
【氏名】ケンリン,エス.ボン
【審査官】
後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−050975(JP,A)
【文献】
特開平10−098333(JP,A)
【文献】
特開平11−017439(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のマイクロ波周波数信号と第2のマイクロ波周波数信号とを生成するように構成されたマイクロ波発生器と、
マイクロ波アンテナアセンブリと、
を含むマイクロ波焼灼システムであって、
前記マイクロ波アンテナアセンブリは、
前記第1のマイクロ波周波数信号を放射するように構成された近位アンテナと、前記第2のマイクロ波周波数信号を放射するように構成された遠位アンテナとを含む長尺シャフトと、
前記近位アンテナと前記遠位アンテナとの間に配置され、かつ近位部分と遠位部分とを含む両面チョークと、
を含み、
前記近位部分は、前記第1のマイクロ波周波数信号の前記遠位アンテナに向かう伝播を制限するように構成され、前記遠位部分は、前記第2のマイクロ波周波数信号の前記近位アンテナに向かう伝播を制限するように構成されている、マイクロ波焼灼システム。
【請求項2】
前記マイクロ波アンテナアセンブリは、前記長尺シャフトに動作可能に接続している給電路をさらに含み、前記給電路は、第1の導体、第2の導体、第3の導体に電気的に接続している、請求項1に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項3】
前記給電路は、三重同軸構成に配置され、前記三重同軸構成において、前記第1の導体は内側導体であり、前記第2の導体は前記内側導体上に同軸に配置された中間導体であり、第3の導体は前記中間導体上に同軸に配置された外側導体である、請求項2に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項4】
前記第1の導体および前記第2の導体は、前記近位アンテナに接続しており、前記第2の導体および前記第3の導体は、前記遠位アンテナに接続している、請求項2に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項5】
前記両面チョークは、前記第2の導体に接続している、請求項2に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項6】
前記近位アンテナ、前記遠位アンテナまたは前記両面チョークの少なくとも1つの長さは、前記第1のマイクロ波周波数信号または前記第2のマイクロ波周波数信号のうちの1つの1/4波長に相当する、請求項1に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項7】
前記近位アンテナは前記第1のマイクロ波周波数信号を、前記遠位アンテナは前記第2のマイクロ波周波数信号を、同時に放射するように構成されている、請求項1に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項8】
前記マイクロ波アンテナアセンブリは、前記近位アンテナ、前記遠位アンテナ、または前記両面チョークのうちの少なくとも1つの上に少なくとも部分的に配置された誘電体コーティングをさらに含む、請求項1に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項9】
前記近位アンテナは遠位放射部をさらに含み、前記遠位アンテナは近位放射部をさらに含み、前記遠位放射部および前記近位放射部は、前記近位アンテナの遠位端と前記遠位アンテナの近位端との間でマイクロ波エネルギーを放射するように構成されている、請求項1に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項10】
前記近位放射部および前記遠位放射部は、前記第1のマイクロ波周波数信号または前記第2のマイクロ波周波数信号の少なくとも1つの波長に比例した長さを有する、請求項1に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項11】
前記近位アンテナは第1の給電点を含み、前記遠位アンテナは第2の給電点を含み、前記第1の給電点と前記第2の給電点は、前記第1のマイクロ波周波数信号または前記第2のマイクロ波周波数信号のうちの少なくとも1つの1/4波長に相当する距離によって離間されている、請求項1に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項12】
第1のマイクロ波周波数信号と第2のマイクロ波周波数信号とを生成するように構成されたマイクロ波発生器と、
マイクロ波アンテナアセンブリと、
を含むマイクロ波焼灼システムであって、
前記マイクロ波アンテナアセンブリは、
前記第1のマイクロ波周波数信号を放射するように構成された近位アンテナと、前記第2のマイクロ波周波数信号を放射するように構成された遠位アンテナとを含む長尺シャフトと、
前記近位アンテナと前記遠位アンテナとの間に配置され、かつ近位開口部と遠位開口部とを規定するチョーク導体を含む両面チョークと、
を含み、
前記両面チョークは、前記第1のマイクロ波周波数信号の前記遠位アンテナに向かう伝播を制限し、前記第2のマイクロ波周波数信号の前記近位アンテナに向かう伝播を制限するように構成されている、マイクロ波焼灼システム。
【請求項13】
前記マイクロ波アンテナアセンブリは、前記長尺シャフトに動作可能に接続している給電路をさらに含み、前記給電路は、第1の導体、第2の導体、第3の導体に電気的に接続している、請求項12に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項14】
前記第1の導体および前記第2の導体は、前記近位アンテナに接続しており、前記第2の導体および前記第3の導体は、前記遠位アンテナに接続しており、前記両面チョークは、前記第2の導体に接続している、請求項13に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項15】
前記近位アンテナ、前記遠位アンテナまたは前記両面チョークの少なくとも1つの長さは、前記第1のマイクロ波周波数信号または前記第2のマイクロ波周波数信号のうちの1つの1/4波長に相当する、請求項12に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項16】
前記近位アンテナは前記第1のマイクロ波周波数信号を、前記遠位アンテナは前記第2のマイクロ波周波数信号を、同時に放射するように構成されている、請求項12に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項17】
前記マイクロ波アンテナアセンブリは、前記近位アンテナ、前記遠位アンテナ、または前記両面チョークのうちの少なくとも1つの上に少なくとも部分的に配置された誘電体コーティングをさらに含む、請求項12に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項18】
前記近位アンテナは遠位放射部をさらに含み、前記遠位アンテナは近位放射部をさらに含み、前記遠位放射部および前記近位放射部は、前記近位アンテナの遠位端と前記遠位アンテナの近位端との間でマイクロ波エネルギーを放射するように構成されている、請求項12に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項19】
前記近位放射部および前記遠位放射部は、前記第1のマイクロ波周波数信号または前記第2のマイクロ波周波数信号の少なくとも1つの波長に比例した長さを有する、請求項18に記載のマイクロ波焼灼システム。
【請求項20】
前記近位アンテナは第1の給電点を含み、前記遠位アンテナは第2の給電点を含み、前記第1の給電点と前記第2の給電点は、前記第1のマイクロ波周波数信号または前記第2のマイクロ波周波数信号のうちの少なくとも1つの1/4波長に相当する距離によって離間されている、請求項12に記載のマイクロ波焼灼システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療処置を行うためのシステム、装置および方法に関する。より詳細には、本開示は、デュアルアンテナマイクロ波切除および焼灼装置ならびに組織を治療するためのその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌などの疾患の治療では、ある種の癌細胞が、健康な細胞に通常有害である温度よりも僅かに低い高温で変性することが分かっている。一般に温熱療法として知られているこの種の治療は典型的に、隣接する健康な細胞を不可逆的な細胞破壊が生じないより低い温度に維持しながら、異常細胞を41℃超の温度に加熱するために電磁放射線を利用する。電磁放射線を利用して組織を加熱する他の処置としては、組織の焼灼および凝固も挙げられる。例えば、月経過多のために行われるようなそのようなマイクロ波焼灼処置は典型的に、標的組織を焼灼しかつ凝固させて組織を変性または死滅させるために行われる。電磁放射線療法を利用する多くの処置および多くの種類の装置が当該技術分野で知られている。そのようなマイクロ波療法は典型的に、組織ならびに前立腺、心臓、肝臓、肺、腎臓および乳房などの臓器の治療で使用される。
【0003】
現在、モノポール型、ダイポール型およびヘリカル型などの数種類のマイクロ波プローブが使用されている。モノポールアンテナプローブは、プローブの端部で露出された単一の細長いマイクロ波導体からなる。このプローブは典型的に誘電性スリーブで取り囲まれている。ダイポールアンテナは、誘電性接合部によって内側導体の一部が分離された状態で内側導体および外側導体を有する同軸構造体からなる。内側導体は、第1のダイポール放射部に対応する部分に接続されていてもよく、外側導体の一部は、第2のダイポール放射部に接続されていてもよい。ダイポール放射部は、一方の放射部が誘電性接合部の近位に配置され、他方の放射部が誘電性接合部の遠位に配置されるように構成されていてもよい。モノポールおよびダイポールアンテナプローブでは、マイクロ波エネルギーは一般に、導体の軸から垂直に放射される。
【0004】
典型的なマイクロ波アンテナは、長く薄い内側導体を有し、この内側導体はプローブの軸に沿って延在し、誘電体で取り囲まれており、さらに誘電体を取り囲む外側導体で取り囲まれているため、結果的に、外側導体もプローブの軸に沿って延在している。
【0005】
組織焼灼の場合、約500MHz〜約10GHzの範囲の高周波電流を標的組織部位に照射して特定の大きさおよび形状を有し得る焼灼体積を生成する。焼灼体積は、アンテナの設計、アンテナの性能、アンテナのインピーダンスおよび組織のインピーダンスと相関している。所望の手術結果を達成するために、特定の種類の組織焼灼処置に応じて特定の焼灼体積を決定してもよい。一例であって限定されるものではないが、脊髄の焼灼処置では、より長く細い焼灼体積が求められる場合があり、前立腺の焼灼処置では、より球状の焼灼体積が求められる場合がある。
【0006】
1つの特定の焼灼処置は、組織切除処置である。組織切除処置では、臨床医は最初に、病的な組織を含む特定の臓器のその部分の切除または除去の必要性を決定する。切除線に沿って組織を焼灼する場合、生存可能かつ機能するように臓器の十分な部分を残しながら病的な部分を除去し得るように、臓器上の病的な組織と健康な組織との間に切除線の位置を定める。
【0007】
マイクロ波切除または焼灼処置における1つの工程は、標的組織の一部に1つまたは複数のマイクロ波エネルギー伝達装置を配置する工程である。適切な配置が、所望の焼灼領域の大きさおよび形状、使用される1つまたは複数の焼灼装置の種類、マイクロ波エネルギー信号のパラメータ(すなわち、周波数、電力、デューティーサイクルなど)および焼灼装置によって生成され得る予測される焼灼サイズなどのいくつかの要因に依存することが多いため、配置工程は重要な工程である。
【0008】
処置が複数の焼灼装置を必要とする場合、配置工程はさらにより複雑になる。例えば、所定の切除線に沿った組織の焼灼を必要とする切除処置は、多くの場合、特定の切除線に沿った複数のマイクロ波エネルギー伝達装置の配置を必要とする。1つの特定の配置方法としては、経皮的挿入によって標的組織内に配置される複数の組織貫通型マイクロ波エネルギー伝達装置の挿入が挙げられる。
【0009】
切除処置では、臨床医は、切除線の位置を決定した後、切除線に沿って組織を焼灼する焼灼装置の配置を決定する。この配置は典型的に、選択された1つまたは複数の焼灼装置について予測される焼灼領域の大きさおよび形状によって決まる。大部分の切除処置では、切除線に沿って組織の完全な焼灼を達成するのに十分な量のエネルギーを伝達するために、複数の焼灼装置が切除線に沿って配置される。
【0010】
1つの公知の切除焼灼方法では、切除線に沿って最初の焼灼を行い、切除線に沿って次の位置に焼灼装置を移動して次の焼灼を行うことにより切除を行う。切除線全体が焼灼されるまで、この工程を切除線に沿って繰り返す。別の切除方法では、複数の焼灼装置を切除線に沿って挿入し、複数の装置に同時にエネルギーを供給(あるいは、ほぼ同時にエネルギーを供給)して、切除線に沿って組織を焼灼する。どちらの方法も効果的であるが、複数の焼灼が順番に行われるため、1つ目の方法は時間がかかる。2つ目の方法は、隣接する装置間の相互作用または干渉を最小にしながら焼灼が完全に行われることを保証するために、複数の装置を正確に配置する必要がある。
【0011】
典型的な切除処置にとって望ましい焼灼領域が典型的な焼灼処置にとって望ましい焼灼領域とは形状および大きさが非常に異なるため、使用される方法に関係なく、切除処置は複雑である。焼灼処置での標的組織は典型的に、通常は円形、楕円形または長楕円形の腫瘍性腫瘤である。従って、マイクロ波焼灼装置は典型的に、円形、長楕円形または卵形の焼灼領域を生成するように設計されている。焼灼処置とは対照的に、切除処置は典型的に、切除線に沿った組織の細長い領域の焼灼を必要とし、切除処置での焼灼領域の長さは通常、典型的な焼灼装置によって生成される焼灼領域の幅および/または厚さよりも非常に大きい。
【0012】
臨床医は焼灼処置および切除処置のために典型的に同じ焼灼装置を使用するため、所望の焼灼領域の形状における差は問題となる。
【発明の概要】
【0013】
本開示は、焼灼処置および切除処置のために望ましい大きさおよび寸法の焼灼領域を生成するように構成されたデュアルアンテナマイクロ波切除および焼灼装置について説明する。
【0014】
本開示の一実施形態は、マイクロ波発生器およびデュアルアンテナマイクロ波装置に接続している伝送線路を有するマイクロ波エネルギー発生システムに関する。マイクロ波発生器は、伝送線路によってデュアルアンテナマイクロ波装置に伝送される第1のマイクロ波信号と第2のマイクロ波信号とを生成する。デュアルアンテナマイクロ波装置は、第1のアンテナと、第1のアンテナの遠位にある第2のアンテナと、第1のアンテナと第2のアンテナとの間に配置された両面チョークとを含む。第1のアンテナは、伝送線路の第1の導体と第2の導体との間で伝送線路から第1のマイクロ波周波数信号を受信し、第2のアンテナは、伝送線路の第2の導体および第3の導体から第2のマイクロ波周波数信号を受信する。両面チョークは、第1のアンテナチョーク回路および第2のアンテナチョーク回路をさらに含むチョーク導体を含む。第1のアンテナチョーク回路は、第1のアンテナによって生成された電磁場の第2のアンテナへの伝播を制限するように構成されており、第2のアンテナチョーク回路は、第2のアンテナによって生成された電磁場の第1のアンテナへの伝播を制限するように構成されている。一実施形態では、チョーク導体は、第2の導体に電気的に接続している。
【0015】
第1のアンテナ、第2のアンテナおよび/または両面チョークの長さは、第1のマイクロ波周波数信号および/または第2のマイクロ波周波数信号の1/4波長に相当していてもよい。第1のアンテナは、第1のマイクロ波周波数信号を、第2のアンテナは、第2のマイクロ波周波数信号を同時に放射するように構成されていてもよい。誘電体コーティングは、第1のアンテナ、第2のアンテナおよび/または両面チョーク上に少なくとも部分的に配置されていてもよい。
【0016】
第1のアンテナは、遠位放射部をさらに含んでいてもよく、第2のアンテナは、近位放射部をさらに含んでいてもよく、第1のアンテナおよび第2のアンテナは、第1のアンテナの遠位放射部と第2のアンテナの近位放射部との間で電磁場を生成する。近位放射部および遠位放射部は、アンテナアセンブリによって伝送される放射線の実効波長に比例する長さを有していてもよい。
【0017】
さらなる実施形態では、デュアルアンテナマイクロ波装置は、内側導体、外側導体および三重同軸導体を有する給電路をさらに含む。給電路の少なくとも一部は、三重同軸方向に内側導体、外側導体および三重同軸導体を含む。
【0018】
第1のアンテナは第1の給電点をさらに含んでいてもよく、第2のアンテナは第2の給電点をさらに含んでいてもよい。第1の給電点の中間点と第2の給電点の中間点との間の距離は、第1のマイクロ波周波数信号および第2のマイクロ波周波数信号のうちの少なくとも1つの1/4波長に相当していてもよい。
【0019】
さらなる実施形態では、第1のアンテナチョーク回路および/または第2のアンテナチョーク回路の長さは、第1のマイクロ波周波数信号および/または第2のマイクロ波周波数信号の1/4波長に相当していてもよい。
【0020】
本開示の別の実施形態は、伝送線路、第1のアンテナ、第2のアンテナおよび両面チョークを含む組織焼灼装置である。第2のアンテナは第1のアンテナの遠位にあり、両面チョークは第1のアンテナと第2のアンテナとの間に配置されている。伝送線路は、本装置をマイクロ波エネルギー源に接続し、マイクロ波エネルギー源から第1のアンテナおよび第2のアンテナに、第1のマイクロ波周波数信号と第2のマイクロ波周波数信号とを伝送する。第1のアンテナは、伝送線路の第1の導体と第2の導体との間で第1のマイクロ波周波数信号を受信し、第2のアンテナは、伝送線路の第2の導体と第3の導体との間で第2のマイクロ波周波数信号を受信する。両面チョークは、第1のアンテナチョーク回路および第2のアンテナチョーク回路をさらに含むチョーク導体を含む。第1のアンテナチョーク回路は、第1のアンテナによって生成された電磁場の第2のアンテナへの伝播を制限するように構成されており、第2のアンテナチョーク回路は、第2のアンテナによって生成された電磁場の第1のアンテナへの伝播を制限するように構成されている。
【0021】
本開示のさらに別の実施形態は、それぞれがその中まで延在する内側導体、外側導体および三重同軸導体を有する近位部を含む、マイクロ波エネルギー療法を行うためのマイクロ波アンテナアセンブリに関する。本アセンブリは、第1のアンテナ、第2のアンテナおよび両面チョークも含む。近位部では、内側導体は外側導体の中に配置されており、外側導体は三重同軸導体の中に配置されている。第1のアンテナは、三重同軸導体に接続している第1のアンテナ遠位放射部と、外側導体に接続している第1のアンテナ近位放射部とを含む。第2のアンテナは、内側導体に接続している第2のアンテナ遠位放射部と、内側導体に接続している第2のアンテナ近位放射部とを含む。第1のアンテナと第2のアンテナとの間にそれらと共に配置された少なくとも一部を有する両面チョークは、第1のアンテナチョーク回路および第2のアンテナチョーク回路を含む。第1のアンテナチョーク回路は、第1のアンテナによって生成された電磁場の第2のアンテナへの伝播を制限するように構成されており、第2のアンテナチョーク回路は、第2のアンテナによって生成された電磁場の第1のアンテナへの伝播を制限するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1A】本開示の一実施形態に係るデュアルアンテナマイクロ波切除および焼灼装置(DAMRAD)を含むマイクロ波エネルギー伝達システムの概略図である。
【
図1B】本開示の別の実施形態に係るDAMRADに第1のマイクロ波エネルギー信号および第2のマイクロ波エネルギー信号を提供する第1のマイクロ波信号発生器および第2のマイクロ波信号発生器を含むマイクロ波エネルギー伝達システムの概略図である。
【
図2】DAMRADの遠位アンテナによって生成されたシミュレートした電力流のグラフィック図である。
【
図3】DAMRADの近位アンテナによって生成されたシミュレートした電力流のグラフィック図である。
【
図4】DAMRADの遠位アンテナおよび近位アンテナによって生成されたシミュレートした電力流のグラフィック図である。
【
図6】DAMRADの遠位アンテナの断面図である。
【
図7】DAMRADの近位アンテナの断面図である。
【
図8】本開示の別の実施形態に係るDAMRADの両面チョークの断面図である。
【
図9】本開示のさらに別の実施形態に係るDAMRADの両面チョークの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書では本開示の詳細な実施形態について説明するが、開示されている実施形態は、単に例であって、様々な形態で具現化できることを理解されたい。従って、本明細書に開示されている具体的な構造および機能の詳しい説明は、限定的なものではなく、単に特許請求の範囲の根拠として、および実質的にあらゆる適切に詳細な構造において本開示を様々に用いることを当業者に教示するための代表的な根拠として解釈されるべきである。
【0024】
図1Aを参照すると、マイクロ波発生器100と、本開示の実施形態を用いたデュアルアンテナマイクロ波切除および焼灼装置(DAMRAD)110と、その間に接続された三重同軸伝送ケーブル120とを含むマイクロ波エネルギー伝達システム10が示されている。三重同軸伝送ケーブル120は、(
図1Aに示すように)DAMRAD110に恒久的に取り付けられていてもよく、あるいは、三重同軸伝送ケーブル120はDAMRAD110とは分かれていてもよい。あるいは、DAMRAD110は、それぞれがDAMRAD110にマイクロ波エネルギー信号を提供する複数の同軸伝送ケーブル(不図示)に接続していてもよい。三重同軸伝送ケーブル120または複数の同軸伝送ケーブルに提供されるマイクロ波エネルギー信号は、互いに対して同相または逆相であってもよい。一実施形態では、マイクロ波発生器100は、マイクロ波発生器100によって生成された単一のマイクロ波エネルギー信号をDAMRAD110のために2つの信号に分割するように構成されたマイクロ波信号分配器(不図示)をさらに含んでいてもよい。
【0025】
図1Aに示すように、DAMRAD110は、組織を貫通するように構成された鋭い先端部118を有する経皮的装置を含む。アンテナ部116は、両面チョーク128によって分離された近位アンテナ116aと遠位アンテナ116bとを備える。ハンドル112は、長尺シャフト114によってアンテナ部116に接続されている。
【0026】
長尺シャフト114は、近位アンテナ116aおよび遠位アンテナ116bそれぞれにマイクロ波エネルギー信号を提供するように構成されている。一実施形態では、長尺シャフト114は、三重同軸構成で配置された3つの導体を含み、それにより、三重同軸伝送線路が形成されている。あるいは、長尺シャフト114は、アンテナ116a、116bのうちの1つにそれぞれがマイクロ波エネルギー信号を供給する複数の伝送線路を含んでいてもよい。
【0027】
マイクロ波発生器100は、DAMRAD110に好適なマイクロ波エネルギー信号を提供するように構成されている。マイクロ波エネルギー信号は、実質的に同じであっても、1つまたは複数の方法(例えば、同相、同様の周波数および/または電力レベル)で関連していてもよい。例えば、マイクロ波発生器100は、選択された位相シフトによって第1のマイクロ波信号および第2のマイクロ波信号を所定のマイクロ波周波数だけオフセットするように構成された位相シフト回路(不図示)を含んでいてもよい。選択された位相シフトは、DAMRAD116の物理的特性もしくは構成によって臨床医によって決定されても、あるいは、マイクロ波発生器100によって測定されたフィードバック(すなわち、反射エネルギー)に基づいて選択されてもよい。
【0028】
また、マイクロ波発生器は、第1の周波数の第1のマイクロ波信号と、第2の周波数の第2のマイクロ波信号とも生成する(ここでは、第1の周波数と第2の周波数とは異なる)第1のマイクロ波信号生成回路および第2のマイクロ波信号生成回路(不図示)を含んでいてもよい。一実施形態では、第1の周波数と第2の周波数とは高調波である。
【0029】
図1Bを参照すると、同軸−三重同軸コネクタ105を介してDAMRAD100に接続された第1のマイクロ波発生器100aおよび第2のマイクロ波発生器100bを備えるマイクロ波エネルギー伝達システム11が示されている。第1のマイクロ波発生器100aは第1のマイクロ波エネルギー信号を生成し、第2のマイクロ波発生器100bは第2のマイクロ波信号を生成する。第1のマイクロ波信号と第2のマイクロ波信号とは、第1の同軸コネクタ105aに接続された第1の同軸ケーブル120a、および第2の同軸コネクタ105bに接続された第2の同軸ケーブル120bをそれぞれ介して同軸−三重同軸コネクタ105に提供される。三重同軸コネクタ105は、DAMRAD100に接続された三重同軸ケーブル120に第1のマイクロ波エネルギー信号と第2のマイクロ波エネルギー信号とを伝える。第1のマイクロ波発生器100aと第2のマイクロ波発生器100bとは、マイクロ波発生器インタフェースケーブル107によって互いに接続し、その間で制御および/または同期情報を提供する。
【0030】
第1のマイクロ波発生器100aによって生成された第1のマイクロ波信号と、第2のマイクロ波発生器100bによって生成された第2のマイクロ波信号とは、実質的に同じであっても、1つまたは複数の方法(例えば、同相、同様の周波数および/または電力レベル)で関連していてもよい。例えば、第1のマイクロ波発生器100aによって生成された第1のマイクロ波信号は、第2のマイクロ波発生器100bによって生成された第2のマイクロ波信号に対して位相シフトされていてもよい。マイクロ波発生器インタフェースケーブル107は、第1または第2のマイクロ波信号のうちの1つに関する1つまたは複数のパラメータを提供してもよい。例えば、マイクロ波発生器インタフェースケーブル107は、第1の発生器100aおよび第2の発生器100b間で、信号位相データ、タイミング信号または周波数データを提供してもよい。マイクロ波インタフェースケーブル107は、第1および/または第2のマイクロ波信号のうちの1つのサンプルまたはそれに関する信号を提供してもよい。
【0031】
第1のマイクロ波信号と第2のマイクロ波信号間の位相シフトは、DAMRAD116の物理的特性もしくは構成によって臨床医によって決定されたものであってもよく、あるいは、マイクロ波発生器100によって測定されたフィードバック(すなわち、反射エネルギー)に基づいて選択されたものであってもよい。
【0032】
DAMRADは、915MHz、2.45GHzまたは任意の他の好適な周波数のマイクロ波周波数で動作するように設計されていてもよい。915MHzで動作するように設計されたDAMRADは、2.45GHzで動作するように設計されたDAMRADと比較して、より長いアンテナ長さ(波長がより長いため)を含み、従って、以下に説明するように、より長い焼灼領域を生成する。
【0033】
マイクロ波アンテナによって生成された場に伴うエネルギーは、電場強度(以下、E場)として、あるいは、磁場強度(以下、H場)によって表わしてもよく、各強度によって放射エネルギー流の同程度に有効な式が得られる。
図2〜
図4のシミュレートした電力流236、336、436は、E場(単位:V/m)およびH場(単位:A/m)の積としての電力流を示し、ここでは、E場およびH場の積の単位はVA/m
2となる。
図2〜
図4のシミュレーションは、
図2の遠位アンテナ116b、
図3の近位アンテナ116aおよび
図4の近位アンテナ116aおよび遠位アンテナ116bに提供される0.915GHzのマイクロ波エネルギー信号を用いて行った。
【0034】
シミュレートした電力流236、336、436は、分かりやすさのために、電力流の3つの異なる領域として示されている。例えば、
図2に示すように、シミュレートした電力流236は、高密度電力流236aの領域、中密度電力流236bの領域および低密度電力流236cの領域を含む。実際の電力流および/またはシミュレートした電力流236、336、436は、電力流236の絶対値が(線形に、非線形に、あるいは、指数関数的に)比例して減少する電力流勾配を含み、遠位アンテナ116bからの距離に関係し得ることが理解される。
【0035】
図2は、DAMRAD110の遠位アンテナ116bによって生成されたシミュレートした電力流236のグラフィック図である(図示のために、DAMRAD110は、グラフィック図の上に重ね合わせられている)。DAMRAD110は、両面チョーク128によって分離された遠位アンテナ116bおよび近位アンテナ116aを含む。シミュレーションは、遠位アンテナ216bに提供される915MHzのマイクロ波エネルギー信号を用いて行った。電力流236の近位部236dは、以下に述べるように、両面チョーク128の遠位側によって短絡されている。
【0036】
図3は、DAMRAD110の近位アンテナ116aによって生成されたシミュレートした電力流のグラフィック図である(図示のために、DAMRAD110は、グラフィック図の上に重ね合わせられている)。分かりやすさのために、シミュレートした電力流336は、高密度電力流336aの領域、中密度電力流336bの領域および低密度電力流336cの領域を含むように示されている。電力流336の遠位部336eは、以下に述べるように、両面チョーク128の近位側によって短絡されている。近位アンテナ116aの近位側にチョークが設けられていないため、電力流336の近位部336fは近位アンテナ116aの近位端を越えて延在している。
【0037】
図4は、DAMRAD110の遠位116bアンテナおよび近位アンテナ116aによって生成された複合電力流436のシミュレーションのグラフィック図である(図示のために、DAMRAD110は、グラフィック図の上に重ね合わせられている)。シミュレートした電力流436は、高密度電力流436aの領域、中密度電力流436bの領域および低密度電力流436cの領域を含む。両面チョーク128は、遠位アンテナ116bの近位部に生成された磁場を分路し、近位アンテナ116aの遠位部に生成された磁場を分路する。従って、両面チョーク128に隣接した領域には、アンテナ116a、116bのいずれか一方によって生成された磁場の間に相互作用はほとんど存在していない。近位アンテナ116aの近位側にチョークが設けられていないため、電力流436の近位部436fは近位アンテナ116aの近位端を越えて延在している。
【0038】
DAMRAD110の両面チョーク128に隣接する領域および/またはそれを取り囲む領域は、遠位アンテナ116bによって生成された電磁場および近位アンテナ116aによって生成された電磁場からのエネルギーを受け取り、それにより、この領域に相乗的な加熱効果が生じる。DAMRAD110は、DAMRAD110の遠位先端部118から近位アンテナ116aの近位点まで延在する高密度電力流436aの細長い領域を生成するように構成されていることが、
図2〜
図4に示されているシミュレートした電力流236、336、436から確認することができる。従って、DAMRAD110から生成され得る焼灼領域の実効長は、単一のアンテナを含むマイクロ波エネルギー伝達装置から生成される焼灼領域の少なくとも2倍から最大3倍の長さである。
【0039】
デュアルアンテナ116a、116bに同時にエネルギーを伝達することによって、あるいは、近位アンテナ116a、遠位アンテナ116bまたはそれらの任意の組み合わせ間でマイクロ波エネルギー信号を交互に伝達することによって、両面チョーク128を取り囲む領域に相乗的な加熱効果を得てもよい。以下に述べるように、そして
図1に示すように、少なくとも1つの実施形態では、近位アンテナ116aおよび遠位アンテナ116bに提供されるマイクロ波信号は、同じマイクロ波発生器100および三重同軸伝送ケーブル120から提供される。従って、近位アンテナ116aおよび遠位アンテナ116bに提供されるマイクロ波信号は、実質的に同じ供給経路および距離を共有する。従って、2つのアンテナ116a、116bに提供されるマイクロ波エネルギー信号は、本質的に互いに対して同相である。
【0040】
図2〜
図4に示すように、DAMRAD110は、異なる大きさおよび形状の焼灼領域を生成するように構成されている。DAMRAD110は、ダイポールアンテナ116a、116bのうちの1つのみを利用し、かつそれにエネルギーを供給することによって、標準的な焼灼装置と同様の方法で利用してもよい。あるいは、別の実施形態では、遠位アンテナ116bを利用して、典型的な焼灼領域を生成してもよく、近位アンテナ116aを利用して、挿入経路の少なくとも一部を選択的に焼灼してもよい。最後に、
図4に示すように、DAMRAD110は、切除処置に特に適した形状を有する細長い焼灼領域を生成するように構成されている。
【0041】
図5は、
図1のDAMRAD110のアンテナ部116の断面図である。アンテナ部116は、両面チョーク128によって分離された近位アンテナ116aおよび遠位アンテナ116bを含む。遠位アンテナ116bの遠位には、DAMRAD110の患者組織(不図示)への経皮的挿入を容易にするように構成された鋭い先端部118がある。遠位アンテナ116b、近位アンテナ116aおよび両面チョーク128はそれぞれ、
図6、
図7および
図8にさらに示されており、以下に詳細に説明する。
【0042】
図6は、
図5のDAMRAD110の遠位アンテナ116bの断面図である。遠位アンテナ116bは、ダイポールアンテナとして構成されており、遠位アンテナ遠位放射部117および遠位アンテナ近位放射部115を含み、その両方が、内側同軸ケーブル120aの遠位端にある遠位アンテナ給電点119bからのマイクロ波エネルギー信号を受信する。内側同軸ケーブル120aは、同軸配置で内側導体121および外側導体123を含み、内側誘電体122によって分離され、遠位アンテナ給電点119bにマイクロ波エネルギー信号を提供する。
【0043】
遠位アンテナ116bは、少なくとも部分的に誘電体装荷スリーブ141によって取り囲まれていてもよい。誘電体装荷スリーブ141は、周囲組織(不図示)から遠位アンテナ116bの様々な部分を絶縁し、遠位アンテナ116bとDAMRAD110の残りの部分との間に均一な直径を提供するように構成されている。また、誘電体装荷スリーブ141によって、遠位アンテナ116bと周囲組織(不図示)の変動負荷との間に緩衝(すなわち、誘電体緩衝)を提供してもよい。遠位アンテナ116bは誘電体装荷スリーブ141に挿入されていてもよく、あるいは、誘電体装荷スリーブ141は、射出などの様々な方法または当該技術分野で一般に使用されている収縮包装方法によって遠位アンテナ116bの周りに形成されていてもよい。
【0044】
図7は、
図5のDAMRAD110の近位アンテナ116aの断面図である。近位アンテナ116aは、ダイポールアンテナとして構成されており、近位アンテナ遠位放射部137および近位アンテナ近位放射部138を含み、その両方が、外側同軸ケーブル120bの遠位端にある近位アンテナ給電点119aからのマイクロ波エネルギー信号を受信する。三重同軸伝送ケーブル120の外側同軸ケーブル120bは、同軸配置で外側導体123および三重同軸導体125を含み、外側誘電体124によって分離されている。外側同軸ケーブル120bは、近位アンテナ給電点119aにマイクロ波エネルギー信号を提供する。
【0045】
図6および
図7を参照すると、外側導体123、123は、内側同軸ケーブル120aおよび外側同軸ケーブル120bに共通している。近位アンテナ116aの近位には、内側導体121、外側導体123および三重同軸導体125が三重同軸構成で配置されている。内側導体121および外側導体123は、内側誘電体122によって分離されており、外側導体123および三重同軸導体125は、外側誘電体124によって分離され、それらは一緒になって三重同軸伝送ケーブル120を形成している。
【0046】
三重同軸伝送ケーブル120は、近位アンテナ116aおよび遠位アンテナ116bにマイクロ波エネルギー信号を供給する。三重同軸伝送ケーブル120の構成によって、給電路の距離(例えば、
図1のマイクロ波発生器100と
図7の近位アンテナ給電点119aとの間のケーブルの物理的距離)を両方のマイクロ波信号に対して同じにすることができる。従って、内側導体120aおよび外側導体120bによって提供されるマイクロ波信号に、マイクロ波信号の伝送線路の長さによって生じる実質的に同じ位相シフトを行う。
【0047】
図5〜
図7を参照すると、遠位アンテナ近位放射部115および近位アンテナ遠位放射部137は、三重同軸給電路120の外側導体123に接続している。
図6および
図7を参照すると、近位アンテナ給電点119aおよび遠位アンテナ給電点119bは、ある距離だけオフセットされており、給電点119a、119b間の距離は、所定のマイクロ波周波数の波長またはその分数部分(すなわち、1/4波長、1/2波長)に相当している。この距離は、DAMRAD110によって長く細い焼灼領域を達成するように最適化および/または構成されていてもよい。
【0048】
また、
図5に示すように、近位アンテナ116aの近位におけるマイクロ波エネルギーの強度を制限するために、フェライト環179が、近位アンテナ116aの近位の長尺シャフト114上に配置されていてもよい。フェライト環179は、アンテナ116から近位に放射される電磁エネルギーを分路することができる任意の好適な金属または導電性材料で構成されていてもよい。また、フェライト環179は、ファラデーシールドとして構成されていてもよく、所定のマイクロ波周波数でアンテナから近位に放射される電磁エネルギーを分路するように構成されていてもよい。
【0049】
図7に戻ると、近位アンテナ137の遠位放射部は、少なくとも部分的に近位誘電体装荷スリーブ140によって取り囲まれている。近位誘電体装荷スリーブ140は、外側ジャケット126、遠位誘電体装荷スリーブ141(
図6を参照)またはその両方に接続されているか、それらの一部であってもよい。
【0050】
図8は、本開示の別の実施形態に係る
図1のDAMRAD110の両面チョーク128の断面図である。両面チョーク128は、外側導体123に電気的に接続されたチョーク導体129を含む。一実施形態では、チョーク導体129の少なくとも一部は、近位アンテナチョーク拡張誘電体142および/または遠位アンテナチョーク拡張誘電体143の一部を部分的に取り囲んでいる。遠位アンテナチョーク回路128bは、遠位アンテナチョーク回路128bの開口部が遠位アンテナ116bの方向に向けられた状態で、外側導体123とチョーク導体129の第1のセグメント129aとの間に形成されている。近位アンテナチョーク回路128aは、第1のセグメント129aとチョーク導体129の第2のセグメント129bとの間に形成されており、近位アンテナチョーク回路128aの開口部は、近位アンテナ116aの方向に向けられている。両面チョークの終端点119において、チョーク導体129は、外側導体123に接続しており、好適な電気的接続を形成している。電気的接続は、半田接続、溶接、圧入接続または任意の他の好適な接続であってもよい。両面チョーク128の外面は、誘電体装荷スリーブ140でコーティングされており、誘電体装荷スリーブ140は、外側ジャケット(
図7の外側ジャケット127を参照)、遠位誘電体装荷スリーブ(
図6の誘電体装荷スリーブ141を参照)またはその両方に接続されているか、それらから形成されていてもよい。両面チョーク128は、フェライト環(
図5の近位アンテナ116aの近位の長尺シャフト114上に配置されたフェライト環179を参照)と共に使用されていてもよい。
【0051】
近位アンテナチョーク回路128aおよび遠位アンテナチョーク回路128bは、1/4波長の短絡されたチョークとして構成されていてもよく、マイクロ波エネルギーがアンテナ116a、116bを越えて強まるのを制限するように支援してもよい。
【0052】
別の実施形態では、
図9に示すように、
図8の両面チョーク128を両面チョーク928で置き換えてもよい。両面チョーク928は、近位アンテナチョーク回路928aおよび遠位アンテナチョーク回路928bを含む。近位アンテナチョーク回路928aは、共通のチョーク導体929を介して外側導体123に電気的に接続する近位チョークセグメント929aを含む。近位アンテナチョーク回路928aは、近位アンテナチョーク拡張誘電体942を少なくとも部分的に取り囲んでいてもよい。遠位アンテナチョーク回路928bは、共通のチョーク導体929を介して外側導体123に電気的に接続する遠位チョークセグメント929bを含む。遠位アンテナチョーク回路928bは、遠位アンテナチョーク拡張誘電体943を少なくとも部分的に取り囲んでいてもよい。
図9に示すように、近位アンテナチョーク回路928aおよび遠位アンテナチョーク回路928bはどちらも、共通のチョーク導体929を介して外側導体に接続している。別の実施形態では、各チョーク回路928a、928bに対して外側導体123との個別の接続を提供してもよい。両面チョーク928の外面は、誘電体装荷スリーブ940でコーティングされており、誘電体装荷スリーブ940は、外側ジャケット(
図7の外側ジャケット126を参照)、遠位誘電体装荷スリーブ(
図6の遠位誘電体装荷スリーブ141を参照)またはその両方に接続されているか、それらから形成されていてもよい。両面チョーク928は、フェライト環(
図5の近位アンテナ116aの近位の長尺シャフト114上に配置されたフェライト環179を参照)と共に使用されていてもよい。
【0053】
図8および
図9を参照すると、両面チョーク128の長手方向長さは、両面チョーク928の長手方向長さよりも短い。従って、両面チョーク128および両面チョーク928を備えた装置上の近位アンテナ116a、916aと遠位アンテナ116b、916bとの間隔はそれぞれ異なる。近位アンテナ116a、916aと遠位アンテナ116b、916bとの間隔は、近位アンテナ116a、916aおよび遠位アンテナ116b、916bから放射されるマイクロ波エネルギー間の位相関係に影響を与える。従って、両面チョーク128を備えた装置は、両面チョーク928を備えた装置よりも、近位アンテナ116aおよび遠位アンテナ116bから放射されるマイクロ波エネルギー間で異なる位相関係を提供する。
【0054】
図8および
図9を引き続き参照すると、両面チョーク構成によって一方のチョークが他方のチョークから半径方向外側に配置されているが、両面チョーク928によってチョーク928a、928bが実質的に同一の放射面に配置されているため、両面チョーク928を備えた装置によって、アンテナ916の全体的な直径を縮小させてもよい。
【0055】
本開示の範囲を逸脱せずに上記構成における様々な変形が可能であるが、上記説明に含まれる全ての事柄は、限定的なものではなく例示として解釈されるべきである。以下の特許請求の範囲によって定義されているように、本開示のいくつかの目的が達成され、かつ有利な結果が達成されることが分かるであろう。