特許第6189519号(P6189519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189519
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】木材製品の湿度制御システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/28 20060101AFI20170821BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20170821BHJP
   F24F 6/00 20060101ALI20170821BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   B01D53/28
   B01D53/26 300
   F24F6/00 Z
   F24F5/00 Z
【請求項の数】23
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-500229(P2016-500229)
(86)(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公表番号】特表2016-520410(P2016-520410A)
(43)【公表日】2016年7月14日
(86)【国際出願番号】US2014015547
(87)【国際公開番号】WO2014158383
(87)【国際公開日】20141002
【審査請求日】2015年11月10日
(31)【優先権主張番号】13/803,319
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515256992
【氏名又は名称】ボベダ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エドベリ、デヴィッド シー.
(72)【発明者】
【氏名】エッセ、ロバート エル.
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第05936178(US,A)
【文献】 特表平07−500902(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/159244(WO,A1)
【文献】 特開2005−169392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/26−53/28
B01J 20/00−20/34
B01D 15/00−15/42
F24F 1/06− 1/65
F24F 5/00
B65D 67/00−79/02
B65D 81/18−81/30
A45C 1/00−15/08
A45F 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖された環境内で相対湿度を40%〜60%の範囲に維持するために前記閉鎖環境内で使用される湿度制御デバイスにおいて、該湿度制御デバイスが、
(a)水蒸気に対して透過性であるが液体溶液に対しては透過性でない薄壁重合体材料により形成されたポーチと、
(b)ギ酸ナトリウム結晶を含有するギ酸ナトリウムの飽和塩水溶液を含む湿度制御溶液であって、前記ポーチ内に密封され、前記飽和塩水溶液が30重量%〜90重量%の塩を含有する、湿度制御溶液と
を備え、
(c)前記ポーチの水蒸気透過性は、前記ポーチの水分移動能力が、10%未満の相対湿度の大気に露出される場合に24時間で当初のポーチ含有物の少なくとも1重量%〜50重量%が透過し、85%を超える相対湿度を有する大気に露出される場合に当初のポーチ含有物の少なくとも1重量%〜50重量%が吸収されるようになっている、湿度制御デバイス。
【請求項2】
前記湿度制御溶液が、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム及び酢酸カリウムからなる群から選択される1つ又は複数の塩を含有する、請求項1に記載された湿度制御デバイス。
【請求項3】
前記湿度制御溶液が、1つ又は複数の相溶する粘度制御剤によって増粘される、請求項1に記載された湿度制御デバイス。
【請求項4】
前記湿度制御溶液が、1つ又は複数の相溶する粘度制御剤によって増粘される、請求項2に記載された湿度制御デバイス。
【請求項5】
前記1つ又は複数の粘度制御剤が、シリカ、アルミナ、化学修飾セルロース、及び、キサンタンゴムからなる群から選択される、請求項3に記載された湿度制御デバイス。
【請求項6】
前記1つ又は複数の粘度制御剤が、シリカ、アルミナ、化学修飾セルロース、及び、キサンタンゴムからなる群から選択される、請求項4に記載された湿度制御デバイス。
【請求項7】
前記デバイスがOddyガス発生試験に合格している、請求項1に記載された湿度制御デバイス。
【請求項8】
前記デバイスがOddyガス発生試験に合格している、請求項4に記載された湿度制御デバイス。
【請求項9】
前記湿度制御溶液が活性炭を含有する、請求項1に記載された湿度制御デバイス。
【請求項10】
前記湿度制御溶液が、酢酸カリウムを含有するギ酸ナトリウムの水溶液を含む、請求項1に記載された湿度制御デバイス。
【請求項11】
キサンタンゴムをさらに含む、請求項に記載された湿度制御デバイス。
【請求項12】
アルミナをさらに含む、請求項に記載された湿度制御デバイス。
【請求項13】
前記湿度制御溶液が、乳酸ナトリウムを含有するギ酸ナトリウムの飽和水溶液を含む、請求項1に記載された湿度制御デバイス。
【請求項14】
前記湿度制御溶液が、酢酸カリウムを含有するギ酸ナトリウムの飽和水溶液を含む、請求項1に記載された湿度制御デバイス。
【請求項15】
前記湿度制御溶液のpHが6.5〜9.5である、請求項1に記載の湿度制御デバイス。
【請求項16】
前記湿度制御溶液のpHが、クエン酸、乳酸、ギ酸、リン酸、リン酸塩、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される酸又は塩基を追加することによって調整されている、請求項15に記載された湿度制御デバイス。
【請求項17】
前記ポーチの前記重合体材料が、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、高分子過フッ化炭化水素、ポリ乳酸、ポリエチレン塩化ビニル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレン・テレフタレート、スチレンブタジエン共重合体、及び、それらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載された湿度制御デバイス。
【請求項18】
漏出に対するさらなる保護物として、前記ポーチを入れるための蒸気透過性外側ポーチをさらに備える、請求項1に記載された湿度制御デバイス。
【請求項19】
前記ポーチを入れるためのバッグをさらに備える、請求項1に記載された湿度制御デバイス。
【請求項20】
前記ポーチの前記重合体材料がポリエステルを含む、請求項17に記載された湿度制御デバイス。
【請求項21】
1個又は複数個の請求項1に記載された湿度制御デバイスを閉鎖環境内に導入するステップと、
指定の時間間隔で前記閉鎖環境内の相対湿度を監視するステップと
を含む、閉鎖環境内の相対湿度を制御する方法。
【請求項22】
前記1つ又は複数の湿度制御デバイスの重量を監視するステップを含む、請求項21に記載された方法。
【請求項23】
閉鎖された環境内で相対湿度を40%〜60%の範囲内で維持するために前記閉鎖環境内で使用される湿度制御デバイスにおいて、該湿度制御デバイスが、
(a)水蒸気に対して透過性であるが液体溶液に対して透過性ではない薄壁重合体材料により形成されたポーチと、
(b)乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム及び酢酸カリウムからなる群から選択される1つ又は複数の塩との組み合わせでギ酸ナトリウム結晶を含有するギ酸ナトリウムの飽和塩水溶液を含む湿度制御溶液であって、前記ポーチ内で密封され、前記塩水溶液が30重量%〜90重量%の塩を含有する、湿度制御溶液と
を備え、
(c)前記ポーチの水蒸気透過性は、前記ポーチの水分移動能力が、10%未満の相対湿度の大気に露出される場合に24時間で当初のポーチ含有物の少なくとも1重量%〜50重量%が透過し、85%を超える相対湿度を有する大気に露出される場合に当初のポーチ含有物の少なくとも1重量%〜50重量%が吸収されるようになっている、湿度制御デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く言えば木材含有物品の保存に関するものであり、より詳細には、美術館収蔵品及び楽器などの木材含有物品の保管環境における湿度を制御することに係るものである。
【背景技術】
【0002】
密閉箱に保管される木材製品は、温度及び保管環境の湿度によって水分を吸収するか放出するか左右される。残念ながら、水分含有量が変化すると、木材が収縮・膨張して、しばしば物理的特性及び外観を永久的に変化させ、保管されている木材製品が傷む可能性がある。例えば寒い天候下では、具体的には極緯度などでは、しばしば室内水分含有量が非常に低くなり、湿度が低くなることにより木材製品が収縮し、それにより木材製品が傷む可能性があることが良く知られている。逆に、具体的には熱帯地域などでの高湿度環境では、湿度が高いことにより、木材製品が水分を吸収して膨らんで非常に傷む場合も十分にある。環境の湿度による問題のために、美術品、楽器、さらには高価なスポーツ用品などの価値の高い木材製品が湿度制御環境に密封されることが多い。木材製品の保管に推奨される相対湿度(RH)は40%〜60%であることが分かっている。
【0003】
米国特許第5,936,178号に開示されるように、閉鎖環境の相対湿度は、特定の塩溶液を含む水分透過性ポーチにより構成された湿度制御システムを使用することによって安定させられる。また、エチレン・グリコール、プロピレン・グリコール、グリセリン、尿素、グアニジン、エタノール・アミン、単糖又は糖アルコールなどの低分子量の分子を含有する特定の非イオン性溶液も採用できる。水溶液中の溶質及び溶質濃度の選択により溶液の水の活量(a)が決定される。相対湿度(RH)が水の活量と等しくなるまで、溶液の水の活量が周囲大気と平衡する。したがって、RHパーセンテージはa×10に等しくなる。例えば、a0.75の、過度の結晶を有する飽和塩化ナトリウムの水溶液は、相対湿度が75パーセントになるまで閉鎖システム内で湿った空気又は乾燥した空気により平衡化される。
【0004】
しかし、最適な相対湿度範囲(40%〜60%)を確立して維持するのに最も効果的である溶液の多くが、パッケージング材料に対して化学反応性を有すること、腐食性を有すること、望ましくないガスを形成すること、又は、水分移動能力(MTC)(下記で定義される)に制限があることなどの望ましくない特性を有することも分かっている。例えば、過度の結晶を有する炭酸カリウムの飽和溶液は所望される40%〜60%の安定した湿度を維持するが、材料のpHが高いことにより多くのパッケージング・フィルムを劣化させることになる。別の問題は、湿度の制御に亜硝酸塩が使用される場合に形成される腐食性のガスである。
【0005】
水分移動能力(MTC)は、所定の相対湿度範囲において、所与の制御システム、すなわち、デバイス、ポーチなどの内へ又は外へ輸送される水分の量として定義される。例えば、40%〜60%の湿度に制御するには、塩化カルシウム、塩化マグネシウム又はグリセリンの水溶液が使用できるが、MTCはパッケージの重量の約15%〜20%のみである。また、シリカゲル、又は、例えばアクリルアミドなどの水吸収有機重合体などの固体物質を採用する水分制御システムは特定の相対湿度に合わせて構築され得るが、これらのシステムは水分移動能力が低いという特性があり、制御すべき湿度環境を維持する点に関して有用性が低い。一定範囲の環境条件において所望の湿度を維持するためには湿度制御システムの水分移動能力が非常に重要であることは明らかである。デバイスの水分移動能力が向上すると、対象の木材製品の保護に必要な湿度を維持するために不可欠な水分を提供するためのデバイスの能力が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,936,178号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、木材製品及び美術館収蔵品を概ね閉鎖された環境で維持する場合に、それらの物品を保存するための最適な相対湿度を制御するための湿度制御溶液の形態の材料システムを含有する小さな包み又はポーチの形態のデバイス又は容器を提供するものである。本発明は、木材製品にとって必要とされる40%〜60%の臨界範囲内に概ね相対湿度を安定させるための優れた水分移動能力を有する好適なシステムを開示する。開示される手段は、腐食させたり又はパッケージを劣化させたりすることなくこの範囲内で優れた水分移動能力を有する。好適な形態では、本発明は、酢酸塩、乳酸塩又はクエン酸塩と混合されたギ酸ナトリウムの飽和水溶液を採用する。この溶液は種々な重合体フィルム内に入れられ、この重合体フィルムは、液体溶液を透過させないが水蒸気が透過することは可能であり、楽器ケース又は陳列棚などの密閉容器内で相対湿度を40%〜60%に制御できる。
【0008】
粘度を増大させ制御するために湿度制御溶液に特定の増粘剤を加えることができる。製品が高粘度であると、パッケージに不具合が生じた場合の溶液の漏洩が最小になる。考えられる増粘剤の多くが上記で引用した米国特許第5,936,178号に開示されている。本発明の材料として好適な増粘剤には、ヒドロキシエチルセルロース(Natrosol(登録商標))、キサンタンゴム、アルミナ(Aeroxide(登録商標))、及び、フュームド・シリカ(Aerosil(登録商標))が含まれる。これらの増粘剤は分子量が大きく、低濃度で加えられることから、デバイスの相対湿度の制御に対する影響は最小であるが、溶液の粘度を大きく向上することができる。
【0009】
ある具体例によれば、本発明による湿度制御溶液又は湿度制御システムは、重合体フィルムにより形成されたポーチ内に入れられる。このポーチの通気は、水蒸気を透過させるが、液体は漏洩することなく貯留するようになっている。水蒸気透過速度(WVTR)として知られる水蒸気移動量は、標準の試験条件下で、24時間内に材料の645.16平方センチメートル(100平方インチ)当たりを通過する水のグラム数として測定される。これは使用されるフィルムの種類及びフィルムの厚さに関係する。もちろん、通過する水分の総量は、所定の用途において湿度制御溶液に対して露出されるフィルムの面積によっても左右される。24時間で645.16平方センチメートル(100平方インチ)当たり約10グラムの水が通過するWVTRが本発明によるデバイスに良好な結果をもたらすことが分かっている。採用できるパッケージング・フィルムの材料には、ポリ塩化ビニル、線維ポリエチレン(TYVEK(登録商標))、セロハン、ポリカーボネート、薄型ポリオレフィン、配向ポリスチレン、ポリフルオロカーボン、又は、紙などの適切な基材の上に積層されたエラストマHytrel(登録商標)などのポリエステルが含まれる。ポーチは、Capran(登録商標)、K−Resin(登録商標)などのスチレンブタジエン共重合体、セルロース・アセテート、ポリエチレン・テレフタレート(Mylar(登録商標))、エチレン酢酸ビニル、又は、エチレン・ビニル・アルコールなどの、ポリアミド・ナイロン・フィルムを含むことができる。
【0010】
しかし、相対湿度制御デバイスは重合体フィルムのポーチのみに限定されない。液体を保持しながら水蒸気を透過させる任意の容器又は材料は、本発明の湿度制御溶液のための適切な容器に用いることができる。
【0011】
本発明の一具体例によれば、湿度制御デバイスは、保管容器の周囲の大気と制御デバイス内の湿度制御溶液の水の活量を平衡化するために、保管容器の大気に水蒸気を加えること及び除去することの両方を行う。溶質の具体的な選択により、特定のデバイス又はポーチのa又はRHの「設定値」が決定される。所与の保管容器で複数のポーチを使用してもよい。これらのデバイスはサイズ又は容量及び設定値が等しくても異なっていてもよい。645.16平方センチメートル(100平方インチ)当たりで24時間に10グラムの水蒸気を通過させるようなWVTRが良好な結果をもたらすが、24時間当たりで水蒸気1〜25グラムの概略範囲が使用できる。デバイスのRHの設定値及びWVTRは、湿度制御溶液の組成とともにパッケージング・フィルムの組成及び厚さとの組み合わせによって決定される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による湿度制御用の典型的なポーチを示す図。
図2】ギターと共にギター・ケース内に複数個の図1に示されたポーチを配置した状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の1つ又は複数の実施例を詳細に説明する以下の詳細な記述は例示として提供されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。十分に本発明の概念の範囲内にある他の組み合わせ及び変形形態は当業者であれば理解できるであろう。
【0014】
本発明は、フィルムを通して水蒸気の形態での水分移動が可能である十分な透過性を有するものの、液体の漏出の防止に十分な厚さ及び不透過性を有する壁を有する重合体フィルムのポーチを含む湿度制御デバイスに関する。特定の好適な具体例として、酢酸カリウム又は乳酸ナトリウムと組み合わされたギ酸ナトリウム、および、シリカ、ヒドロキシエチルセルロース、アルミナ又はキサンタンゴムなどの増粘剤を含む水性の湿度制御溶液が採用される。溶液として、周囲から水蒸気を除去することを目的としてデバイスの容量を増大させるために、過度の溶質、すなわち、ギ酸ナトリウム、酢酸カリウム又は乳酸ナトリウムを含有できる。
【0015】
重合体フィルム・ポーチは、制御すべき対象の環境湿度の安定に必要な量の溶液を保持するために必要な任意の寸法又は形状に構成できる。例えばギター・ケース内の湿度を維持するための典型的なデバイスは、約70グラムの制御溶液が入った枕形状(ピロー形状)で水蒸気透過性の重合体ポーチである。このようなポーチが図1に符号30で示される。美術品又は美術館収蔵品を展示又は保管するために使用されるガラス・ケース又は金属ケースなどのより大きい容積部の湿度を制御する場合、より大きいポーチ又は複数のポーチが採用できる。
【0016】
本発明のポーチは、溶液を入れることができるが十分な水分蒸気透過速度も有する任意の重合体材料で構成できる。ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ナイロンなどのポリアミド、セロハン、エチレン酢酸ビニル、及び、ポリエチレン・テレフタレート又はHytrel(登録商標)などのポリエステルなどの材料が首尾よく採用された。好適なパッケージング材料は、Hytrel(登録商標)の商標で販売されている熱可塑性ポリエステル・エラストマを含む。
【0017】
ポーチ材料の水蒸気透過速度の好適な範囲は、相対湿度が10%未満の大気中において24時間で当初のパッケージ含有物の総量の約1重量%〜約40重量%の水分を透過させる範囲、また、ポーチが、相対湿度が85パーセントを超える大気中において24時間で当初のパッケージ含有物の総量の約1重量%〜約40重量%の水分を吸収する範囲である。最も好適には、ポーチ材料は、相対湿度が10%及び85%のそれぞれの大気中で、24時間で当初のパッケージ含有物の総量の約1重量%〜約50重量%の量の水蒸気を透過及び吸収するような材料である。
【0018】
好適な水蒸気透過性のポーチ材料には、ポリエステル、Hytrel(登録商標)、ポリ塩化ビニル、高分子過フッ化炭化水素、ナイロン、ポリ乳酸、ポリエチレン・ビニル・アルコール、ポリエチレン酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、Surlyn(登録商標)、ポリプロピレン、ポリエチレン・テレフタレートなどの重合体材料、重合体の組み合わせ、又は、液体の水を透過させずに水蒸気を透過させる同様の材料を含むポーチが含まれる。基本的な基準に適合すれば任意の材料が使用できる可能性がある。所望される通りに水蒸気を透過させ且つ液体に対する障壁性を有する任意の入れ物が使用できる。さらに、密閉ポーチであるこの水分制御システムは、主ポーチで漏洩が起こった場合に補助的に保護するために、第2の(外側にある)水蒸気透過性のポーチ、バッグ又は他の容器の中に入れられてもよい。
【0019】
本発明で開示される溶液は制御すべき環境の湿度に応じて15%〜55%の水を含有できる。湿度を最適に制御することを達成するために、ギ酸ナトリウム、乳酸ナトリウム及び酢酸カリウムが使用でき、また、特定の製剤には、概して結晶として過度の量のこれらの成分が含有できる。湿度を制御するために増粘剤が必要でなかったり又は有用でなかったりするが、処理を改善するために及び漏洩の可能性を最小にするために湿度制御溶液は増粘(thicken)することができる。可能性として種々の増粘剤が採用できるが、Aerosil(登録商標)200(Eronik)の形態の吸水性のフュームド・シリカ、及び、塩水に対して耐性のある(brine tolerant)キサンタンゴム(Danisco(登録商標)SM)が好適である。約500センチポアズ〜約7000センチポアズの範囲の所望の粘度を得るためには、キサンタンは0.2%〜0.7%の範囲で使用され、Aerosilは約2.5%で使用される。
【0020】
湿度制御組成物に関しては、多くの場合での欠点として、ガスの発生、すなわち、湿度制御デバイスによって保護されるべき物体中の金属又は繊維などの構成要素を経時的に腐食させるような硫化水素、硫黄酸化物、揮発性酸又は窒素酸化物などの微量ガスが発生することがある。業界での標準的な試験はOddy試験と称され、これは、湿度制御システムに対して、鉛、銅及び銀を60℃で28日間露出する。いくらかでも有害なガスが発生するとこれらの金属のうちの1つ又は複数の金属が腐食し、対応する湿度制御デバイスが多くの用途で許容されない。Oddy試験に合格することができたために、本発明の湿度制御デバイスはこの欠点を有さず、一般的な使用環境に対して極めて無害である。
【0021】
したがって、水分制御システムのための好適な材料には、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム及び酢酸カリウムから選択される1つ又は複数の追加の成分と組み合わされる、ギ酸ナトリウム及びギ酸カリウムから選択される塩を含有する水溶液が含まれる。
【0022】
溶液のpHは、一般的な酸又は塩基、例えば、限定しないが、クエン酸、乳酸、ギ酸、リン酸、リン酸塩、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムなどを使用して調整できる。好適なpHの範囲は約6.5〜約9.5である。
【0023】
必須ではないが、好適には、湿度制御溶液は、限定しないが、シリカ、アルミナ、化学修飾セルロース、及び、キサンタンゴムなどの物質から選択される粘度制御剤を用いて増粘される。活性炭を湿度制御溶液に加えてもよい。
【0024】
(実施)
使用の際、本発明の湿度制御デバイスは、湿度制御によって保護すべき物体を入れる密閉ケース又は他の同様の場所に配置される。例えば、図2に描かれるように、1つ又は複数のポーチ30が楽器50とともにギター・ケース又はヴァイオリン・ケース40の中に配置できる。同様に、1つ又は複数のポーチが美術作品又は美術館収蔵品を保管する密閉キャビネット内に配置できる。理論的には、ポーチが正確に寸法決定され、キャビネット又はケースが完全な密封性を有する場合、制御される湿度は無限に維持されることになる。しかし、実際の環境は理想の環境には及ばす、ケース及びキャビネットはリークが生じやすく、ときどき開けられる可能性もある。したがって、所与のポーチは、その水分移動能力を超えてポーチが水分を吸収するか又は失うようになるまで、貴重な物体を保護しながら水を得るか又失う。この限界値は、ケース・キャビネット内の相対湿度又はポーチの重量変化のいずれかを測定することにより容易に決定できる。
【0025】
制御すべき環境内に湿度制御ポーチを入れるための好適な方法は、Gortex(登録商標)又は同様の材料で構成されたバッグの内部に湿度制御ポーチを配置することである。このバッグは可能性としてのいかなる溶液の漏洩を封じ込めるが水蒸気の移動が容易になっている。
【実施例】
【0026】
「実施例1」
本発明の好適な具体例により50%(重量)の酢酸カリウム及び50%(重量)の水を含有する355グラムの水および170グラムの酢酸カリウム溶液に対して470グラムのギ酸ナトリウムを加えることにより、酢酸カリウムを含有するギ酸ナトリウムの飽和水溶液を調製した。この混合物の中にキサンタンゴムDanisco SM(3グラム)を分散させた。この混合物を71.1℃(160°F)まで加熱し、その後48.9℃(120°F)まで冷却した。この溶液を、紙基材の上で、Hytrel(登録商標)フィルム(DuPont)(0.0381mm(1.5×10−3インチ)の厚さ)から構成されるポーチに充填した。pHは8.9であり、相対湿度は53%であった(水の活量0.53)。ギター・ケース内の乾燥大気(RHが10%)内に配置される場合、このデバイスは、限界値である40%のRHに達する前に溶液の重量の32%を水分として放出した。高湿大気(RHが85%)中に配置される場合、この溶液は、上限の60%のRH(水の活量が0.60)に達する前に、ポーチ含有物の重量の15%を吸収した。これらは大いに満足できる結果であり、高い湿度及び低い湿度の多様な条件で試験した場合、この溶液を70グラム包含するポーチは、ギターを入れたギター・ケース内で数ヶ月にわたって所望の湿度を維持することができた。この湿度制御システムはOddyのガス発生性能試験も合格した。
【0027】
「実施例1A」
実施例1と同様に、355グラムの水及び170グラムの酢酸カリウム溶液(水50%)に対して470グラムのギ酸ナトリウムを加えることにより、酢酸カリウムを含有するギ酸ナトリウムの飽和水溶液を調製した。この混合物を37.8℃(100°F)まで加熱し、35グラムのAerosil(登録商標)200の吸水性のフュームド・シリカ(Eronik)を加えて完全に混合した。pHは7.2であり、湿度は52%であった(水の活量0.52)。同じ環境条件に露出した場合、この調合の水放出および吸収特性は実施例1と同等であった。この湿度制御システムはOddyのガス発生性能試験も合格した。
【0028】
「実施例1B」
Aerosil(登録商標)の代わりに60グラムのフュームド酸化アルミニウムのアルミナ(Aeroxide(登録商標)Alu130)(Eronik)を加えることを除いて、実施例1Aで説明したものと全く同様に酢酸カリウムを含有するギ酸ナトリウムの飽和水溶液を調製した。pHは8.7であり、水の活量は0.52であった。この溶液は実施例1Aの溶液と実質的に同等に機能した。この湿度制御システムはOddyのガス発生性能試験に合格した。
【0029】
「実施例2」
470グラムのギ酸ナトリウム、125グラムの60%乳酸ナトリウム溶液(水40%)(重量)、および5グラムのキサンタンゴムを400グラムの水に加えることにより、乳酸ナトリウムを含有するギ酸ナトリウムの飽和水溶液を調製した。連続混合中にこの混合物を71.1℃(160°F)まで加熱した。この溶液のpHは8.2であり、水の活量は0.54であった。この溶液は0.43の水の活量の下限に達する前に当初の溶液の重量の36%の水分移動能力を有し、高湿度環境では60%のRH(0.60の水の活量)の上限に達する前に溶液重量の12%が得られた。ギター・ケース内に配置した場合、70グラムのポーチ3個で、そのケース内で3ヶ月以上にわたって相対湿度を維持した。この湿度制御システムはOddyのガス発生性能試験も合格した。
【0030】
「実施例3」
430グラムの水に対して、430グラムのギ酸ナトリウムおよび142グラムのクエン酸三カリウム一水和物を加えることにより、クエン酸カリウムを含有するギ酸ナトリウムの飽和水溶液を調製した。当初の水の活量は0.53であり、pHは8.3であった。湿度が低い環境(RHが10%)では、この溶液は、0.40の水の活量に達する前に当初の溶液の35重量で%の水を失った。
【0031】
「実施例4」
(高湿度環境を制御するための調合)
300グラムの60%の乳酸ナトリウム(水40%)(重量)に対して400グラムのギ酸ナトリウムを加えることにより、乳酸ナトリウムを含有するギ酸ナトリウムの飽和水溶液を調製した。この混合物はかなりの量の過度のギ酸ナトリウムの結晶を含有した。この溶液の水の活量は0.44であり、pHは7.8であった。この溶液をRHが85%を超える大気に露出した場合、この溶液は、上限である60%の相対湿度(0.60の水の活量)に達する前に溶液の58重量%の水を得た。この湿度制御システムはOddyのガス発生性能試験も合格した。
【0032】
「実施例5」
(高湿度環境を制御するための調合)
290グラムの50%の酢酸カリウムの水溶液に対して150グラムのギ酸ナトリウムを加えることにより、酢酸カリウムを含有するギ酸ナトリウムの飽和水溶液を調製した。水の活量は0.38であり、pHは9.07であった。過度の結晶を含有するこの溶液は、0.60の水の活量に達する前に初期の混合物の重量の45%を水として得た。この湿度制御システムはOddyのガス発生性能試験も合格した。
【0033】
特許法に適合するために、並びに、新規の原理の適用および必要な例示の実施例を構築及び使用することに必要となる情報を当業者に提供するために、本明細書では本発明を非常に詳細に説明してきた。しかし、本発明が明確に異なるデバイスによっても実行できること、及び、本発明自体の範囲から逸脱することなく多様な変更がなされ得ることを理解されたい。
図1
図2