(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189526
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】タンパク質凝集体の溶解を用いたタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断する診断キット
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
G01N33/68
【請求項の数】22
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2016-510622(P2016-510622)
(86)(22)【出願日】2014年4月25日
(65)【公表番号】特表2016-537609(P2016-537609A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】KR2014003643
(87)【国際公開番号】WO2014175693
(87)【国際公開日】20141030
【審査請求日】2015年10月26日
(31)【優先権主張番号】61/816,343
(32)【優先日】2013年4月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】10-2014-0038989
(32)【優先日】2014年4月2日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0038988
(32)【優先日】2014年4月2日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】304039548
【氏名又は名称】コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドン ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヘ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ス ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,テ ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョンジン
(72)【発明者】
【氏名】イ,セジン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,キョソン
(72)【発明者】
【氏名】ノ,ジ フン
(72)【発明者】
【氏名】コ,ジェ−ヨン
【審査官】
赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−104975(JP,A)
【文献】
特表2008−519988(JP,A)
【文献】
特表2007−501277(JP,A)
【文献】
特表2009−528380(JP,A)
【文献】
特表2008−511291(JP,A)
【文献】
米国特許第7811769(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48−33/98
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記〔化学式1〕で表されるEPPSを有効成分として含有するタンパク質の単量体化組成物の投与前後の血しょう内タンパク質の濃度を測定して、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット
;
【化1】
。
【請求項2】
(a)
下記〔化学式1〕で表されるEPPSを有効成分として含有するタンパク質の単量体化組成物を投与する前に血しょう内タンパク質の濃度(A)を測定する第1測定部と、
(b)
下記〔化学式1〕で表されるEPPSを有効成分として含有するタンパク質の単量体化組成物を投与した後に血しょう内タンパク質の濃度(B)を測定する第2測定部と、
(c)前記第1測定部から測定された濃度と前記第2測定部から測定された濃度との差を用いて、下記〔数式1〕で計算する演算部と、を含むことを特徴とするタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット;
【化2】
【数1】
。
【請求項3】
前記タンパク質の単量体化組成物を投与した後の血しょう内タンパク質は、脳内のβ−アミロイド重合体、フィブリル前駆体、フィブリル及びプラークが分解されて単量体化されたことを特徴とする請求項1に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項4】
前記タンパク質は、β−アミロイドであることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項5】
前記タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病は、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ポリグルタミン拡張症、脊髄小脳性失調症、脊髄及び延髄筋肉萎縮、タウ症、筋肉緊張異常、セルピン欠乏症、硬変症、第II型糖尿病、一次全身性アミロイド症、二次全身性アミロイド症、フロント−一時的痴呆、老人全身性アミロイド症、家族性アミロイド多発神経病、遺伝性大脳アミロイド脈管病、血透析関連アミロイド症、黄斑退化、アルツハイマー病、放射線治療で誘導された痴呆、軸索突起損傷、急性拡散性皮質抑制、α−シヌクレイン性病態、脳虚血、永久中脳虚血、末梢神経再生、重畳性癲癇後モデル、脊髄損傷、散発性ルーゲーリック病、及びクロイツフェルト・ヤコブ病、スポンジフォーム脳疾患、伝染性海綿状脳症のようなプリオン病からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項6】
前記第2測定部では、前記タンパク質の単量体化組成物を投与した後、20〜450時間後、血しょう内タンパク質の濃度を測定することを特徴とする請求項2に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項7】
前記演算部から計算された値が正(+)の値を有する場合には、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病と診断されることを特徴とする請求項2に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項8】
前記タンパク質の単量体化組成物を投与した後の血しょう内タンパク質は、脳内のβ−アミロイド重合体、フィブリル前駆体、フィブリル及びプラークが分解されて単量体化されたことを特徴とする請求項2に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項9】
前記タンパク質は、β−アミロイドであることを特徴とする請求項2に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項10】
前記タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病は、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ポリグルタミン拡張症、脊髄小脳性失調症、脊髄及び延髄筋肉萎縮、タウ症、筋肉緊張異常、セルピン欠乏症、硬変症、第II型糖尿病、一次全身性アミロイド症、二次全身性アミロイド症、フロント−一時的痴呆、老人全身性アミロイド症、家族性アミロイド多発神経病、遺伝性大脳アミロイド脈管病、血透析関連アミロイド症、黄斑退化、アルツハイマー病、放射線治療で誘導された痴呆、軸索突起損傷、急性拡散性皮質抑制、α−シヌクレイン性病態、脳虚血、永久中脳虚血、末梢神経再生、重畳性癲癇後モデル、脊髄損傷、散発性ルーゲーリック病、及びクロイツフェルト・ヤコブ病、スポンジフォーム脳疾患、伝染性海綿状脳症のようなプリオン病からなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項11】
全血でタンパク質単量体の濃度が減少することを用いてタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するためのキットであって、
下記〔化学式1〕で表されるEPPSを有効成分として含有するタンパク質の単量体化組成物で処理していない血しょう内タンパク質の濃度、
下記〔化学式1〕で表されるEPPSを有効成分として含有するタンパク質の単量体化組成物で処理した後の血しょう内タンパク質単量体の濃度、及び
下記〔化学式1〕で表されるEPPSを有効成分として含有するタンパク質の単量体化組成物で処理した後の全血内タンパク質単量体の濃度を測定して、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット
;
【化3】
。
【請求項12】
(A)
下記〔化学式1〕で表されるEPPSを有効成分として含有するタンパク質の単量体化組成物を処理していない血しょうの血しょう内タンパク質の濃度を測定する第1’測定部と、
(B)
下記〔化学式1〕で表されるEPPSを有効成分として含有するタンパク質の単量体化組成物で処理された血しょうの血しょう内タンパク質の濃度を測定する第2’測定部と、
(C)
下記〔化学式1〕で表されるEPPSを有効成分として含有するタンパク質の単量体化組成物で処理された全血
から収集した血しょうの血しょう内タンパク質の濃度を測定する第3’測定部と、
(D)前記第2’測定部から測定された濃度と前記第3’測定部から測定された濃度とを用いて、下記〔数式2〕で計算または前記第1’測定部から測定された濃度と前記第2’測定部から測定された濃度とを用いて、下記〔数式3〕で計算する演算部と、
を含むことを特徴とするタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット;
【化4】
【数2】
【数3】
。
【請求項13】
前記単量体化されたタンパク質は、β−アミロイド二量体、重合体、フィブリル前駆体、フィブリル、プラーク、β−アミロイド40及び42の集積体、他のタンパク質と結合されたβ−アミロイド単量体、他のタンパク質と結合されたβ−アミロイド集積体、脂肪と結合されたβ−アミロイド、炭水化物と結合されたβ−アミロイド、核酸と結合されたβ−アミロイド、及び血液細胞と結合されたβ−アミロイド単量体が分解されたことを特徴とする請求項11に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項14】
前記タンパク質は、β−アミロイドであることを特徴とする請求項11に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項15】
前記タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病は、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ポリグルタミン拡張症、脊髄小脳性失調症、脊髄及び延髄筋肉萎縮、タウ症、筋肉緊張異常、セルピン欠乏症、硬変症、第II型糖尿病、一次全身性アミロイド症、二次全身性アミロイド症、フロント−一時的痴呆、老人全身性アミロイド症、家族性アミロイド多発神経病、遺伝性大脳アミロイド脈管病、血透析関連アミロイド症、黄斑退化、アルツハイマー病、放射線治療で誘導された痴呆、軸索突起損傷、急性拡散性皮質抑制、α−シヌクレイン性病態、脳虚血、永久中脳虚血、末梢神経再生、重畳性癲癇後モデル、脊髄損傷、散発性ルーゲーリック病、及びクロイツフェルト・ヤコブ病、スポンジフォーム脳疾患、伝染性海綿状脳症のようなプリオン病からなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項16】
前記第1’測定部では、全血から分離した血しょうに前記単量体化組成物を処理しないか、輸送物質を処理して、23〜25時間後、血しょう内タンパク質の濃度を測定することを特徴とする請求項12に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項17】
前記第2’測定部及び第3’測定部では、前記タンパク質の単量体化組成物で処理し、23〜25時間後、タンパク質の濃度を測定することを特徴とする請求項12に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項18】
前記演算部から測定された値が1.0未満である場合には、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病と診断されることを特徴とする請求項12に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項19】
前記単量体化されたタンパク質は、β−アミロイド二量体、重合体、フィブリル前駆体、フィブリル、プラーク、β−アミロイド40及び42の集積体、他のタンパク質と結合されたβ−アミロイド単量体、他のタンパク質と結合されたβ−アミロイド集積体、脂肪と結合されたβ−アミロイド、炭水化物と結合されたβ−アミロイド、核酸と結合されたβ−アミロイド、及び血液細胞と結合されたβ−アミロイド単量体が分解されたことを特徴とする請求項12に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項20】
前記輸送物質は、PBSであることを特徴とする請求項16に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項21】
前記タンパク質は、β−アミロイドであることを特徴とする請求項12に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【請求項22】
前記タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病は、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、ポリグルタミン拡張症、脊髄小脳性失調症、脊髄及び延髄筋肉萎縮、タウ症、筋肉緊張異常、セルピン欠乏症、硬変症、第II型糖尿病、一次全身性アミロイド症、二次全身性アミロイド症、フロント−一時的痴呆、老人全身性アミロイド症、家族性アミロイド多発神経病、遺伝性大脳アミロイド脈管病、血透析関連アミロイド症、黄斑退化、アルツハイマー病、放射線治療で誘導された痴呆、軸索突起損傷、急性拡散性皮質抑制、α−シヌクレイン性病態、脳虚血、永久中脳虚血、末梢神経再生、重畳性癲癇後モデル、脊髄損傷、散発性ルーゲーリック病、及びクロイツフェルト・ヤコブ病、スポンジフォーム脳疾患、伝染性海綿状脳症のようなプリオン病からなる群から選択されることを特徴とする請求項12に記載のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β−アミロイドの凝集を原因とするアルツハイマー病などの疾病または疾患だけではなく、タンパク質凝集による他の疾病または疾患の凝集されたタンパク質の溶解を通じる濃度分析でタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の正確な診断が可能な血液診断キットに関する。
【背景技術】
【0002】
神経細胞機能障害及び損傷は、毒性の凝集されやすいタンパク質によって誘発され、多数の神経系疾患は、そのような容態を特徴とする。これらは、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病、ポリグルタミン拡張症、脊髄小脳性失調症、脊髄及び延髄筋肉萎縮、海綿脳病症、タウ症(tauopathy)、ハンチントン病、または筋肉緊張異常のような疾患を含む。
【0003】
前記疾患を誘発する、毒性の凝集されやすいタンパク質をコーディングするタンパク質、及びタンパク質をコーディングする遺伝子が同定された。正常な代謝酵素は、合成及び分解の永久的な循環を形成するタンパク質を再循環させる。前記遺伝子が突然変異化される場合、ミスフォールディングされたタンパク質は、非正常に蓄積されて分解される。このようなミスフォールディングされたタンパク質が、神経細胞損傷の指示である神経細胞封入体及びプラークを誘発すると公知されている。したがって、細胞機転を理解し、前記ミスフォールディングされたタンパク質を減少させ、阻害し、好転させるために必要な分子手段を同定することが重要である。さらに、タンパク質ミスフォールディング及び凝集が神経細胞生存に及ぼす効果を理解することによって、これら疾患に対する合理的であり、有効な治療法を開発することができる。
【0004】
痴呆のうち、特に、アルツハイマー病とは、脳内に正常に存在したβ−アミロイド及びタウタンパク質が非正常に凝集して、それぞれアミロイドプラーク(Aβ plaque)と神経線維束(neurofibrillary tangle)とを形成し、神経細胞及び神経細胞連接が損傷されて発生する神経系退行性疾病である。
【0005】
このようなアルツハイマー病は、脳血管疾患、癌の次に3番目に高い老化に関連した死亡原因であり、発生時に、平均有病期間が10年以上になるので、保護者の精神的、経済的負担と共に、社会的負担が増加している。
【0006】
アルツハイマー病患者の脳から特異的に発見されるβ−アミロイドは、タンパク質分解酵素(secretase)によって代謝されて表われるペプチドであって、疾病の進行によって、単量体(monomer)、重合体(oligomer)、フィブリル前駆体(proto−fibril)、フィブリル(fibril)及びプラーク(plaque)のように特異な複合構造を帯び、そのうち、動的変形が活発な重合体とフィブリル前駆体とが脳細胞を破壊する主原因と知られている。
【0007】
臨床試験に表われたように、ヒトでアルツハイマー病症状が発生する10〜15年前から脳でβ−アミロイドの非正常な凝集が表われる(Perrin RJ,Fagan AM,Holtzman DM.“Multimodal techniques for diagnosis and prognosis of Alzheimer´s disease.”Nature.2009;461:916−22)。このようなβ−アミロイドは、単量体、小さな二量体及び三量体の形態で脳血管障壁(blood−brain barrier、BBB)に存在するRAGE及びLRPによって、脳と血液との間を移動することができて、血液のうち、β−アミロイドの濃度変化は、アルツハイマー病の進行と直接的な関連関係があると判断される。
【0008】
血液内β−アミロイド濃度を用いてアルツハイマー病を診断する方法について多様な見解がある。まず、アルツハイマー病の進行によって、β−アミロイドが増加するという研究結果があり(van Oijen M,Hofman A,Soares HD,Koudstaal PJ,Breteler MM.“Plasma Abeta(1−40)and Abeta(1−42) and the risk of dementia:a prospective case−cohort study.”Lancet Neurol.2006;8:655−660,Mayeux R,Honig LS,Tang MX,Manly J,Stern Y,Schupf N,Mehta PD.“Plasma A[beta]40 and A[beta]42 and Alzheimer´s disease:relation to age,mortality,and risk.”Neurology.2003;8:1185−1190)、一方、アルツハイマー病の進行によって、血液のうち、β−アミロイドが減少するという研究結果がある(Sundstrom J,Ingelsson E,Ronnemaa E,Arnlov J,Gunnarsson MD,Hyman BT,Basun H.et al.“Plasma beta amyloid and the risk of Alzheimer disease and dementia in elderly men:a prospective,population−based cohort study.”Arch Neurol.2008;8:256−263)。そして、アルツハイマー病の進行による認知能力の低下と血液のうち、β−アミロイドの変化とは関係がないという研究結果もある(Hansson O,Zetterberg H,Vanmechelen E,Vanderstichele H,Andreasson U,Londos E,Wallin A,Minthon L,Blennow K.“Evaluation of plasma Abeta(40) and Abeta(42) as predictors of conversion to Alzheimer´s disease in patients with mild cognitive impairment.”Neurobiol aging.2010;8:357−367,Lopez OL,Kuller LH,Mehta PD,Becker JT,Gacsh HM,Sweet RA,Chang YF,Tracy R,DeKosky ST.“Plasma amyloid levels and the risk of AD in normal subjects in the cardiovascular health study.”Neurology.2008;8:1664−1671)。このような研究結果の差は、血液内に入ったβ−アミロイドを正確に測定しにくいためであると推定される。
【0009】
現在、アルツハイマー病の確診は、死後検査のみで認定され、進行程度などに対する診断は、身体検査と神経学的検査、精神状態検査など間接的な症状に関する検査を施行する方法、脳脊樺液内のβ−アミロイドの量を測定する方法、及び最も正確には、脳映像検査を通じて脳の構造的変化や機能的変化を確認し、β−アミロイドプラークを確認する方法があるが、非常に侵襲的であり、高価の診断を進行しなければならないという短所がある。また、このような短所によって、正確にアルツハイマー病を診断しにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、β−アミロイドの凝集を原因とするアルツハイマー病などの疾病または疾患だけではなく、タンパク質凝集による他の疾病または疾患の凝集されたタンパク質の溶解を通じる濃度分析でタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の正確な診断が可能な血液診断キットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を果たすための本発明のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための血液診断キットは、タンパク質の単量体化組成物の投与前後の血しょう内タンパク質の濃度を測定することができる。
【0012】
具体的に、本発明のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キットは、(a)体内に非正常な凝集またはミスフォールディングされたタンパク質の単量体化組成物を投与する前に血しょう内タンパク質の濃度を測定する第1測定部と、(b)タンパク質の単量体化組成物を投与した後に血しょう内タンパク質の濃度を測定する第2測定部と、(c)前記第1測定部から測定された濃度と前記第2測定部から測定された濃度とを用いて、下記〔数式1〕で計算する演算部と、を含みうる;
【0013】
【数1】
【0014】
前記第2測定部でタンパク質の単量体化組成物を投与した後、20〜450時間後、血しょう内タンパク質の濃度を測定することができる。
【0015】
前記タンパク質は、β−アミロイドであり得る。
【0016】
前記タンパク質の単量体化組成物を投与した後の血しょう内タンパク質は、脳内のβ−アミロイド重合体、フィブリル前駆体、フィブリル及びプラークが分解されて血液内に移動したものであり得る。
【0017】
前記演算部から計算された値が正(+)の値を有する場合には、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病と診断されうる。
【0018】
前記タンパク質の単量体化組成物は、下記〔化学式1〕で表されるEPPSを有効成分として含有することができる;
【0019】
【化1】
【0020】
前記タンパク質の単量体化組成物は、β−アミロイド重合体、フィブリル前駆体、フィブリル及びプラークを単量体に分解することができる。
【0021】
前記他の目的を果たすための本発明の診断キットは、全血でタンパク質単量体の濃度が減少することを用いてタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するためのキットであって、タンパク質の単量体化組成物で処理していない血しょう内タンパク質の濃度、タンパク質の単量体化組成物で処理した後の血しょう内タンパク質単量体の濃度、及びタンパク質の単量体化組成物で処理した後の全血内タンパク質単量体の濃度を測定することができる。
【0022】
具体的に、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キットは、(A)タンパク質の単量体化組成物を処理していない血しょうの血しょう内タンパク質の濃度を測定する第1’測定部と、(B)タンパク質の単量体化組成物で処理された血しょうの血しょう内タンパク質の濃度を測定する第2’測定部と、(C)タンパク質の単量体化組成物で処理された全血の全血内タンパク質の濃度を測定する第3’測定部と、(D)前記第2’測定部から測定された濃度と前記第3’測定部から測定された濃度とを用いて、下記〔数式2〕で計算または前記第1’測定部から測定された濃度と前記第2’測定部から測定された濃度とを用いて、下記〔数式3〕で計算する演算部と、を含みうる;
【0023】
【数2】
【0024】
【数3】
【0025】
前記第1’測定部では、全血から分離した血しょうに単量体化組成物を処理しないか、輸送物質を処理して、23〜25時間後、血しょう内タンパク質の濃度を測定することができる。
【0026】
前記第2’測定部及び第3’測定部では、タンパク質の単量体化組成物で処理し、23〜25時間後、タンパク質単量体の濃度を測定することができる。
【0027】
前記タンパク質は、β−アミロイドであり得る。
【0028】
前記単量体化されたタンパク質は、β−アミロイド二量体、重合体、フィブリル前駆体、フィブリル、プラーク、β−アミロイド40及び42の集積体、他のタンパク質と結合されたβ−アミロイド単量体、他のタンパク質と結合されたβ−アミロイド集積体、脂肪と結合されたβ−アミロイド、炭水化物と結合されたβ−アミロイド、核酸と結合されたβ−アミロイド、及び血液細胞と結合されたβ−アミロイド単量体が分解されたものであり得る。
【0029】
前記演算部から測定された値が1.0未満である場合には、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病と診断されうる。
【0030】
前記輸送物質は、PBS(Phosphate Buffered Saline)であり得る。
【0031】
前記タンパク質の単量体化組成物は、前記〔化学式1〕で表されるEPPSを有効成分として含有することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キットは、タンパク質の単量体化組成物投与前後のタンパク質の濃度を第1及び第2測定部で測定、特に、体内に集積された形態のタンパク質を分解して間接的に血しょうでタンパク質濃度を測定部で測定することによって、β−アミロイドの凝集を原因とするアルツハイマー病などの疾病または疾患だけではなく、タンパク質凝集による他の疾病または疾患を診断及び予測することができる。
【0033】
さらに他の本発明のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キットは、全血で単量体化されたタンパク質の除去によってタンパク質の濃度が減少し、全血及び血しょう内で集積されたタンパク質が単量体化または低分子−多量体化されて、タンパク質の測定濃度が高くなることを用いて、他のタンパク質、脂肪、炭水化物、核酸及び血液細胞に結合されているタンパク質も分離されて、血しょう及び全血内含有されたタンパク質の濃度を第1’、第2’及び第3’測定部で測定することによって、β−アミロイドの凝集を原因とするアルツハイマー病などの疾病または疾患だけではなく、タンパク質凝集による他の疾病または疾患を診断及び予測することができる。
【0034】
現在、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断することができる方法は、侵襲的であり、高価であり、病気の進行が多くなった場合にのみ診断が可能である。タンパク質の集積は、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病患者が症状を示す遥かに以前に起こるために、病気が多く進められた場合には、タンパク質の集積を阻害することを目的とする薬物の効果を見にくい。したがって、タンパク質の集積を防ぐ機転の薬物の効果を見るためには、症状が発現する前に、タンパク質の脳内での集積時点を把握せねばならない。すなわち、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の正確な診断が必ず必要なので、本発明のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための低侵襲的であり、血しょう、血清または血液などの普遍的な診断試料を使った診断キットが有用に使われる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一実施例によってタンパク質の単量体化組成物を投与する前及び投与後の血しょう内タンパク質濃度を第1及び第2測定部で測定してタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断する方式を示す図面である。
【
図2】正常脳及びタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病によってタンパク質が集積された脳を示す図面である。
【
図3A】本発明の一実施例によってタンパク質の単量体化組成物を投与する前及び投与24時間後の血しょう内β−アミロイド42濃度を示す図面である。
【
図3B】本発明の一実施例によってタンパク質の単量体化組成物を投与する前及び投与1日、5日、19日及び33日後の血しょう内β−アミロイド42濃度を示す図面である。
【
図4】本発明の他の実施例によってタンパク質の単量体化組成物で処理した血しょう及び全血のタンパク質単量体濃度を第1’、第2’及び第3’測定部で測定してタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断する方式を示す図面である。
【
図5】本発明の他の実施例及び比較例によってタンパク質の単量体化組成物またはPBS投与24時間後の血しょうまたは全血内β−アミロイド42濃度を示す図面である。
【
図6】前記
図5と異なるマウスを用いて本発明の他の実施例及び比較例によってタンパク質の単量体化組成物またはPBS投与24時間後の血しょうまたは全血内β−アミロイド42濃度を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、β−アミロイドの凝集を原因とするアルツハイマー病などの疾病または疾患だけではなく、タンパク質凝集による他の疾病または疾患の凝集されたタンパク質の溶解を通じる濃度分析でタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の正確な診断が可能な診断キットに関するものである。
【0037】
前記タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病は、パーキンソン病、ハンチントン病(Huntington´s disease)、筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis)、ポリグルタミン拡張症(polyglutamine expansion disease)、脊髄小脳性失調症(spinocerebellar ataxia)、脊髄及び延髄筋肉萎縮(spinal and bulbar muscular atrophy)、タウ症(tauopathy)、筋肉緊張異常(dystonia)、セルピン欠乏症(Serpin deficiency)、硬変症(cirrhosis)、第II型糖尿病、一次全身性アミロイド症、二次全身性アミロイド症、フロント−一時的痴呆(Fronto−temporal dementias)、老人全身性アミロイド症、家族性アミロイド多発神経病(familial amyloid polyneuropathy)、遺伝性大脳アミロイド脈管病(hereditary cerebral amyloid angiopathy)、血透析関連アミロイド症、黄斑退化(age−related macular degeneration)、アルツハイマー病、放射線治療で誘導された痴呆(radiotherapy induced dementia)、軸索突起損傷(axon injury)、急性拡散性皮質抑制(acute cortical spreading depression)、α−シヌクレイン性病態(alpha−synucleinopathies)、脳虚血(brain ischemia)、永久中脳虚血(permanent focal cerebralischemia)、末梢神経再生(peripheral nerve regeneration)、重畳性癲癇後モデル(post−status epilepticusmodel)、脊髄損傷(spinal cord injury)、散発性ルーゲーリック病(sporadic amyotrophic lateral sclerosis)、及びクロイツフェルト・ヤコブ病、スポンジフォーム脳疾患(Spongiform encephalopathy)、伝染性海綿状脳症(transmissible spongiform encephalopathy)のようなプリオン病(prion disease)からなる群から選択されうる。
【0038】
望ましいフォールディングは、タンパク質が可能であるが、望ましくない立体形態の配列から1つの特定構造を取ることを要する。ポリペプチドが、その適した構造を採用することができなかったものが細胞作用及び生育性に対する主な脅威となる。ミスフォールディングされたタンパク質は、その自体で、及びその自ら毒性であり、非常に重症であるか、さらには、致命的な結果をもたらしうる凝集体を形成しうる。結果的に、精巧なシステムは、ミスフォールディングされたタンパク質の有害効果から細胞を保護するように進化した。
【0039】
また、本発明で、“タンパク質凝集”は、ポリペプチドの1つが脱溶媒化状態にする方式で少なくとも2個のポリペプチドが互いに接触している現象を含む。これは、またポリペプチド本来の作用または活性の損失も含みうる。
【0040】
また、本発明で、“タンパク質”は、望ましくは、β−アミロイドであり得る。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0041】
1.体内に凝集されたタンパク質の溶解前、後の濃度を測定して診断するキット
本発明の診断キットは、タンパク質の単量体化組成物の投与前後の血しょう内タンパク質の濃度を測定して、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断する。
【0042】
具体的に、本発明による診断キットは、(a)タンパク質の単量体化組成物を投与する前に血しょう内タンパク質の濃度を測定する第1測定部と、(b)タンパク質の単量体化組成物を投与した後に血しょう内タンパク質の濃度を測定する第2測定部と、(c)前記第1測定部から測定された濃度と前記第2測定部から測定された濃度とを用いて、〔数式1〕で計算する演算部と、を含む。
【0043】
前記第1測定部は、タンパク質の単量体化組成物を投与する前の血しょう内タンパク質の濃度を測定(A)する。
【0044】
また、前記第2測定部は、タンパク質の単量体化組成物を経口または非経口の形態で投与後の血しょう内タンパク質の濃度を測定(B)する。前記タンパク質の単量体化組成物の投与後の時間は、特に限定されるものではないが、望ましくは、20〜450時間、さらに望ましくは、20〜300時間である。
【0045】
また、前記演算部は、前記第1測定部から測定された血しょう内タンパク質の濃度(A)と前記第2測定部から測定された血しょう内タンパク質の濃度(B)との差を用いて計算する。
【0047】
図1に示したように、前記〔数式1〕で計算された値は、正(+)の値と負(−)の値とに分けることができる。ここで、〔数式1〕で計算された値が0であるか、負(−)の値である場合には、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病が進められていない正常であり、正(+)の値である場合には、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の発病可能性が高いと診断することができる。
【0048】
前記〔数式1〕で計算された値が正(+)の値である場合には、タンパク質の単量体化組成物を投与後、血液内タンパク質の量が増加したということを意味し、これは、脳内にタンパク質の集積が進められているということが分かるので、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の発病可能性が高いと診断することができる。
【0049】
前記のように、タンパク質の単量体化組成物の投与前後の血しょう内タンパク質の濃度でタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の発病可能性を診断または予測することができることは、正常の脳内にはタンパク質が単量体で存在するが(
図2、右側)、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の症状が発生する10〜15年前からは脳内にタンパク質の非正常な凝集(重合体、フィブリル、プラークなど)が表われるので(
図2、左側)、タンパク質の単量体化組成物を投与すれば、正常の場合には、脳内で単量体に分解される重合体のタンパク質が存在しないので、血しょう内にタンパク質の濃度が増加せず、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の症状がある場合には、脳内で重合体のタンパク質が分解されて血しょう内にタンパク質の濃度が増加する。
【0050】
また、前記脳内のタンパク質濃度を間接的に血しょうで測定することは、脳内に存在するタンパク質濃度を直接測定することができないので、脳内に存在するタンパク質単量体、二量体、三量体などの低い分子量重合体が脳血管障壁(BBB)に存在するRAGE及びLRPを通じて脳、脳脊樺液、そして、血液の間を移動する特徴を用いたものである。
したがって、タンパク質の単量体化組成物を投与した後、血しょう内に存在するタンパク質は、脳内のβ−アミロイド重合体、フィブリル前駆体、フィブリル及びプラークが分解されたものであり得る。例えば、タンパク質の単量体化組成物を投与した後、血しょう内に存在するタンパク質は、単量体及び/または脳血管障壁(BBB)に存在するRAGE及びLRPを通じて移動することができる二量体、三量体などの低い分子量重合体でもあり得る。
【0051】
また、タンパク質の単量体化組成物を投与し、一定時間が経てば、増加した血液内タンパク質集積体の量は徐々に減少するので、本発明の診断キットで脳内あるいは体内のタンパク質集積体が減っているということをモニタリングすることができる。
前記タンパク質の単量体化組成物としては、下記〔化学式1〕で表されるEPPSを有効成分として含有する組成物が挙げられるが、タンパク質重合体を単量体に分解することができるものであれば、特に限定されるものではない。前記EPPS以外に他のタンパク質重合体を単量体に分解することができる物質を使っても、EPPSを使ったものと同じ結果を示す。
【0053】
前記化学式1のEPPSは、SDS−PAGEを用いた結果、Aβ40及びAβ42の単量体サイズである4.3〜4.5KD付近でバンドが表われてβ−アミロイドフィブリルが単量体に分解されることを確認することによって、集積されたβ−アミロイド重合体、フィブリル前駆体、フィブリル及びプラークを分解する活性を有することが分かり、電子顕微鏡を用いた結果、β−アミロイドの集積された形態が表われないことによって、集積されたβ−アミロイド重合体、フィブリル前駆体、フィブリル及びプラークを分解する活性を有するということが分かる。
【0054】
組成物を医薬品として使う場合、前記化学式1で表されるEPPSを有効成分として含有するタンパク質の単量体化組成物は、臨床投与時に多様な下記の経口または非経口投与の形態に製剤化されて投与されるが、これに限定されるものではない。
【0055】
経口投与用剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、硬質/軟質カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳化剤、シロップ剤、顆粒剤、エリキシル剤などがあるが、これら剤形は、有効成分以外に、希釈剤(例:ラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース及び/またはグリシン)、滑沢剤(例:シリカ、タルク、ステアリン酸及びそのマグネシウムまたはカルシウム塩及び/またはポリエチレングリコール)を含有している。また、錠剤は、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、澱粉ペースト、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び/またはポリビニルピロリジンのような結合剤を含有し、場合によっては、澱粉、寒天、アルギン酸またはそのナトリウム塩のような崩壊剤または沸騰混合物及び/または吸収剤、着色剤、香味剤、及び甘味剤を含有することができる。
【0056】
前記化学式1で表されるEPPSを有効成分として含有するタンパク質の単量体化組成物は、非経口投与し、非経口投与は、皮下注射、静脈注射、筋肉内注射または胸部内注射を注入する方法による。この際、非経口投与用剤形に製剤化するために、前記化学式1のEPPSを安定剤または緩衝剤と共に水に混合して溶液または懸濁液に製造し、それをアンプルまたはバイアル単位投与形に製造することができる。
【0057】
前記組成物は、滅菌され/されるか、防腐剤、安定化剤、水和剤または乳化促進剤、浸透圧調節のための塩及び/または緩衝剤などの補助剤、及びその他の治療的に有用な物質を含有し、通常の方法である混合、顆粒化またはコーティング方法によって製剤化することができる。
【0058】
また、前記化学式1で表されるEPPSを有効成分として含有するタンパク質の単量体化組成物を単位容量の形態に剤形化する場合、有効成分として、前記化学式1のEPPSを約0.1〜1,500mg/kgの単位容量に含有されることが望ましい。投与量は、患者の体重、年齢及び疾病の特殊な性質と深刻性のような要因によって医師の処方による。しかし、成人治療に必要な投与量は、投与の頻度と強度とによって一日に約0.1〜1000mg/kg/dayの範囲が通常である。成人に筋肉内または静脈内投与時に、一回投与量としては、分離して一日に通常約0.5〜300mg/kg/dayの全体投与量であれば、十分であるが、一部患者の場合、さらに高い一日投与量が望ましい。
【0059】
2.血液内に凝集されたタンパク質が溶解された濃度を測定して診断するキット
血液のうち、タンパク質は、脳内のタンパク質が単量体の形態にある時に流入される可能性が最も高く、集積が多くなされた形態は、血液内に流入されることがほとんど不可能であると予想される。しかし、タンパク質が単量体の形態で血液内に流入されても、血液内で集積される可能性を有しているだけではなく、血液内他のタンパク質と結合された状態で存在する可能性もあって、血液のうち、血しょうのみ単純に分離してタンパク質の単量体を測定する方法のみでは、正確な血液内のタンパク質単量体の濃度を測定することが不可能である。
【0060】
このような理由で、単純血しょう内タンパク質の単量体濃度のみで正常人と患者とを区分しにくくなる。これは、血液内タンパク質を単量体化すると共に、他のタンパク質と血液細胞などで前記タンパク質の単量体を分離して、タンパク質単量体の濃度を正確に測定することができるならば解決される。しかし、全血内タンパク質単量体の安定性が血しょうでより落ちるという研究結果があるが(Slemmon JR1,Painter CL,Nadanaciva S,Catana F,Cook A,Motter R,Seubert P.“Distribution of Abeta peptide in whole blood.”J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci.2007;846(1−2):24−31)、これは、タンパク質単量体が血球構成分によって代謝されるか、貪食されるなどによる現象と考えられる。したがって、全血でのタンパク質単量体と血しょうでのタンパク質単量体との濃度を比較すれば、正確にタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断または予測することができる。
【0061】
前記他のタンパク質としては、ラクトフェリン(Lactoferrin)、クラステリン(Clusterin)、α−1−アンチトリプシン(Alpha−1−antitrypsin)、アポリポタンパクA−IV(Apolipoprotein A−IV)、アポリポタンパクE、及びアポリポタンパクA−Iからなる群から選択された1種以上が挙げられる。
【0062】
図4は、本発明の実施例によってタンパク質の単量体化組成物で処理した血しょう及び全血のタンパク質濃度を第1’、第2’及び第3’測定部で測定してタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断する方式を示す図面である。
【0063】
具体的に、本発明のタンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断するための診断キットは、(A)タンパク質の単量体化組成物を処理していない血しょうの血しょう内タンパク質の濃度を測定する第1’測定部と、(B)タンパク質の単量体化組成物で処理された血しょうの血しょう内タンパク質の濃度を測定する第2’測定部と、(C)タンパク質の単量体化組成物で処理された全血の全血内タンパク質の濃度を測定する第3’測定部と、(D)前記第2’測定部から測定された濃度と前記第3’測定部から測定された濃度とを用いて、下記〔数式1〕で計算または前記第1’測定部から測定された濃度と前記第2’測定部から測定された濃度とを用いて、下記〔数式2〕で計算する演算部と、を含む。
【0064】
前記第1’測定部では、全血から分離した血しょうに単量体化組成物を処理しないか、輸送物質を処理して、23〜25時間後、血しょう内タンパク質の濃度を測定する。
【0065】
前記第2’測定部では、全血から分離した血しょうをタンパク質の単量体化組成物で処理し、23〜25時間後、血しょう内タンパク質の濃度を測定する。
【0066】
また、前記第3’測定部では、全血をタンパク質の単量体化組成物で処理し、23〜25時間後、血しょうを分離してタンパク質の濃度を測定する。
【0067】
また、前記演算部は、第2’測定部から測定された血しょう内タンパク質単量体の濃度と第3’測定部から測定された全血内タンパク質単量体の濃度とを用いて、演算部で下記〔数式2〕で計算または第1’測定部から測定された血しょう内タンパク質の濃度と前記第2’測定部から測定された血しょう内タンパク質の濃度とを用いて、演算部で下記〔数式3〕で計算する。
【0069】
前記〔数式2〕で計算された値は、MB/MP<1.0及びMB/MP≧1.0区間に分けることができる。ここで、前記MB/MP<1.0である場合には、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の発病可能性が高く、MB/MP≧1.0である場合には、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の発病可能性が少ないか、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病が進められていない正常であると診断することができる。
【0070】
前記MB/MP<1.0である場合には、前記血しょう内タンパク質単量体の濃度(MP)と全血内タンパク質単量体の濃度(MB)との差(MP−MB)が多いということを意味し、これは、タンパク質集積体濃度が高いということを意味するので、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の発病可能性が高い。
【0071】
血しょうでは、タンパク質集積体及びタンパク質単量体が存在する中、タンパク質集積体をタンパク質の単量体化組成物で処理して単量体化するので、血しょう内タンパク質単量体の濃度(MP)が増加し、全血では、タンパク質単量体が血球や他のタンパク質などによって貪食または代謝されるので、単量体化組成物で処理して集積体を単量体化すれば、全血内タンパク質単量体の濃度(MB)が減少する。したがって、‘MP−MB=集積体の濃度’を意味する。また、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の発病可能性が大きいほど、血液内タンパク質量が多くなり、相対的に集積体に集積される量が多くなる。これにより、血しょう内単量体化タンパク質の濃度(MP)が高くなり、全血内タンパク質の濃度(MB)が代謝及び貪食によって減少するので、MP−MB値が大きくなり、MB/MP値が1.0未満になる。
【0073】
前記〔数式3〕で計算された値は、UP/MP<1.0及びUP/MP≧1.0区間に分けることができる。ここで、前記UP/MP<1.0である場合には、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の発病可能性が高く、UP/MP≧1.0である場合には、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の発病可能性が少ないか、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病が進められていない正常であると診断することができる。
【0074】
前記UP/MP<1.0である場合には、前記単量体化組成物処理後の血しょう内タンパク質の濃度(MP)と単量体化組成物を処理していない血しょう内タンパク質濃度(UP)との差(MP−UP)が多いということを意味し、これは、タンパク質集積体濃度が高いということを意味するので、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の発病可能性が高い。
【0075】
血しょうでは、タンパク質集積体及びタンパク質単量体が存在する中、タンパク質集積体をタンパク質の単量体化組成物で処理して単量体化するので、血しょう内タンパク質の濃度(MP)が増加するので、単量体化組成物を処理していない血しょう内タンパク質の濃度(UP)と差が表われる。したがって、‘MP−UP=集積体の濃度’を意味する。また、タンパク質の非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病の発病可能性が大きいほど、血液内タンパク質量が多くなり、相対的に集積体に集積される量が多くなる。これにより、血しょう内単量体化タンパク質の濃度(MP)が高くなるので、MP−UP値が大きくなり、UP/MP値が1.0未満になる。
【0076】
また、前記第1’測定部、第2’測定部及び第3’測定部で単量体化されたタンパク質は、β−アミロイド二量体、重合体、フィブリル前駆体、フィブリル、プラーク、β−アミロイド40及び42の集積体、他のタンパク質と結合されたβ−アミロイド単量体及び/または集積体、脂肪と結合されたβ−アミロイド、炭水化物と結合されたβ−アミロイド、核酸と結合されたβ−アミロイド、及び血液細胞と結合されたβ−アミロイド単量体が分解されたものである。
【0077】
前記タンパク質の単量体化組成物としては、前記〔化学式1〕で表されるEPPSを有効成分として含有する組成物が挙げられるが、タンパク質重合体を単量体に分解することができるものであれば、特に限定されるものではない。前記EPPS以外に他のタンパク質重合体を単量体に分解することができる物質を使っても、EPPSを使ったものと同じ結果を示すと予想される。
【0078】
前記化学式1のEPPSは、SDS−PAGEを用いた結果、β−アミロイド40及び42の単量体サイズである4.3〜4.5KD付近でバンドが表われてβ−アミロイドフィブリルが単量体に分解されることを確認することによって、集積されたβ−アミロイド二量体、重合体、フィブリル前駆体、フィブリル、プラーク、β−アミロイド40及び42の集積体、他のタンパク質と結合されたβ−アミロイド単量体及び血液細胞と結合されたβ−アミロイド単量体を分解する活性を有することが分かり、電子顕微鏡を用いた結果、β−アミロイドフィブリルが表われないことによって、集積されたβ−アミロイド二量体、重合体、フィブリル前駆体、フィブリル、プラーク、β−アミロイド40及び42の集積体、他のタンパク質と結合されたβ−アミロイド単量体及び/または集積体、脂肪と結合されたβ−アミロイド、炭水化物と結合されたβ−アミロイド、核酸と結合されたβ−アミロイド、及び血液細胞と結合されたβ−アミロイド単量体を分解する活性を有するということが分かる。
【0079】
以下、本発明の理解を助けるために望ましい実施例を提示するが、下記の実施例は、本発明を例示するものであり、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正可能であることは、当業者において明白なことであり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0080】
<実施例1>体内に凝集されたタンパク質の溶解前、後の濃度を測定して診断するキット
1.マウス準備
実験動物としては、APP/PS1形質転換雌マウスを利用し、5〜6ヶ月(11匹)、7.2〜8.6ヶ月及び13ヶ月齢(21匹)の個体総32匹を用いた。5ヶ月からβ−アミロイドが脳内に集積されてプラークを形成するモデルなので、5〜6ヶ月齢から実験に用いた。
【0081】
研究に使われた形質転換マウスAPP/PS1モデルは、B6C3−Tg(APPswe,PSEN1dE9)85Dbo/Mmjaxでり、米国ジャクソン実験動物センター(The Jackson Laboratory,USA)で購入して実験動物倫理規定下に管理し、実験に用いた。
【0082】
前記31匹のマウスを実験に利用するために、マウスそれぞれに1,000mg/kg/day容量のEPPSを投与した。
【0083】
2.マウス採血及びβ−アミロイド濃度の測定
前記マウスの採血は、80iu/mLのヘパリンが処理された微小管(Msrienfeld,Germany)で眼窩採血方法で収集し、EPPS投与前及び投与後に亘って進行した。前記EPPS投与後は、EPPSを投与してからそれぞれ1日、5日、19日及び33日後を意味する。
【0084】
前記血液は、エッペンドルフチューブに収集し、13,500rpm、4℃で5分間遠心分離し、血しょうは、細胞分画から分離して収集し、エッペンドルフチューブに入れて直ちに実験するか、−80℃で保管して実験に使った。
【0085】
前記EPPS投与前、投与後、収集された血しょうでβ−アミロイド濃度の測定は、それぞれキットの第1及び第2測定部で測定し、前記測定された濃度を演算部で〔数式1〕によって計算して値を得た。前記キットを用いて3回繰り返して得た値の平均値を、下記の〔表1〕ないし〔表5〕に表わした。
【0091】
前記の表1ないし表5に示すように、EPPSを投与し、24時間(1日)後、キットでβ−アミロイド濃度を測定して計算されたB−A値は、あらゆるマウスが正(+)の値を表わしてEPPS投与前よりは投与後のβ−アミロイドの血中濃度が増えたことを示す。これは、使われたマウスがβ−アミロイドの集積体を形成する動物モデルであって、β−アミロイドの集積体が形成された動物の血しょうを本発明によるキットに利用すれば、EPPS投与後、β−アミロイドが濃度が増加した値を示すことを確認したので、本発明の診断キットを使えば、アルツハイマー病、痴呆などの診断または予測に対する正確度を高めうるということを確認することができる。
【0092】
図3Aに示したように、5〜6ヶ月齢のマウス(young)及び7.2ヶ月齢以上のマウス(aged)に対して、本発明によるアルツハイマー病を診断するための診断キットで測定した結果、EPPSを投与した後には、EPPSを投与する前に比べて、β−アミロイド42濃度が相当量増加したことを確認した。
【0093】
また、個体の差はあるが、EPPS投与19日後からはキットで得た値が減少する傾向を示すが、これは、一定時間が経てば、脳内のタンパク質集積体が薬物によって血液に多く抜け出しながら、脳内の集積体の量が減るので、自然に長時間薬物を投与すれば、脳内で血液に抜け出すタンパク質集積体の量が減るためである。すなわち、EPPSを投与する時間によって、増加した血液内タンパク質集積体の量は、一定時間以後に減少し、これは、脳内にタンパク質集積体が減っているということを意味する。したがって、長期間の薬物投与と血液検査とを通じて脳内の病気であるタンパク質集積体が減っているということをモニタリングすることができる。
【0094】
図3Bに示したように、7.2ヶ月齢以上のマウス(aged)に対して、本発明による診断キットに長期投与した後、測定した結果、EPPSを投与した後には、EPPSを投与する前に比べて、β−アミロイド42濃度が相当量増加後、再び減少することを確認した。脳内に集積体の形態にあったβ−アミロイドが溶解されながら、血液内に移動して診断キットで観察された。また、長期投与後、脳内に集積されていたβ−アミロイドの量が次第に減少して、血液内から観察される濃度も減少するということが分かり、病気の診断だけではなく、タンパク質の集積体が、脳内で減っているということを血液診断キットでモニタリングすることもできる。
【0095】
<実施例2>血液内に凝集されたタンパク質が溶解された濃度を測定して診断するキット
APP/PS1/Tau形質転換マウスを用いてβ−アミロイド単量体濃度の測定及びアルツハイマー病の診断
1.マウス準備
実験動物としては、APP/PS1/Tau形質転換雌マウスを利用し、5ヶ月齢の同じ週齢の個体を用いた。
【0096】
研究に使われた形質転換マウスAPP/PS1/Tauモデルは、B6;129−Psen1tm1Mpm Tg(APPSwe、tauP301L)1Lfa/Mmjaxであり、米国ジャクソン実験動物センターで購入して実験動物倫理規定下に管理し、実験に用いた。
【0097】
2.血しょう及び全血の処理
血液は、K2 EDTAが処理された真空チューブにRoche cOmplete Mini(protease inhibitor)溶液を添加した後、収集して遠心分離し、血しょうは、細胞分画から分離して収集し、エッペンドルフチューブに0.1mL標本に分けて直ちに実験または−80℃で保管し、全血は、直ちにEPPSなどを処理して血しょうを細胞分画から分離して収集し、エッペンドルフチューブに0.1mL標本に分けて直ちにβ−アミロイド濃度を測定するか、−80℃で保管した。
【0098】
3.サンプル処理及びβ−アミロイド濃度の測定
前記血しょうを水で処理した対照群とEPPSで処理したEPPS処理群とに分けて処理する。
【0099】
前記EPPS処理群は、血しょう15μLに400mM EPPSで5μL処理して、最終的に100mM EPPSが処理されるようにし、前記対照群は、血しょう15μLにPBS 5μLで処理してEPPS処理群と同じ濃度になるようにした後、対照群とEPPS処理群とをそれぞれ4℃で24時間撹拌した。
【0100】
前記全血は、EPPS処理後、分析する。
【0101】
前記全血15μLに500mM EPPSで5μL処理して、最終的に100mM EPPSが処理されるようにした後、4℃で24時間撹拌した後、β−アミロイド濃度の測定前、遠心分離して血しょうを収集して実験した。
【0102】
前記収集された各血しょうでβ−アミロイド濃度の測定は、第1及び第2測定部で測定し、演算部で〔数式2〕によって3回計算した後、その平均値を下記の〔表6〕に表わした。
【0103】
下記の〔表6〕は、対照群(UP Aβ)、EPPS処理群血しょうの単量体濃度(MP Aβ)、EPPS処理群全血の単量体濃度(MB Aβ)、前記UPとMPとに対するUP/MP値及び前記MPとMBとに対するMB/MP値を表わしたものである。
【0105】
前記の表6に示すように、対照群血しょうの濃度(UP Aβ)に比べて、EPPS処理群血しょうの単量体濃度(MP Aβ)が高いので、EPPSを使ってβ−アミロイドが単量体化されたことを確認した。また、EPPS処理群全血の単量体濃度(MB Aβ)は、むしろUP Aβよりも減少した(
図5)。
【0106】
また、前記対照群(UP Aβ)とEPPS処理群血しょうの単量体濃度(MP Aβ)とを用いて測定されたUP/MP値は、0.92であって、1.0よりも小さく、前記EPPS処理群血しょうの単量体濃度(MP Aβ)とEPPS処理群全血の単量体濃度(MB Aβ)とを用いて測定されたMB/MP値は、0.61であって、1.0よりも小さいので、アルツハイマー病の危険群であるか、痴呆が進められている状態であると診断することができる。これは、使われたマウスがβ−アミロイドの集積体を形成する動物モデルであって、β−アミロイドの集積体が形成された動物の血しょうを本発明によるキットに利用すれば、EPPS投与後、全血内アミロイドの濃度減少値を示すことを確認したので、本発明のキットを使えば、アルツハイマー病、痴呆などの診断または予測に対する正確度を高めうるということを確認することができる。
【0107】
前記UP Aβ、MP Aβ及びMB Aβについてさらに説明しようとすれば、UP Aβは、多様な形態(例えば、β−アミロイド二量体、重合体、フィブリル前駆体、フィブリル、プラーク、β−アミロイド40及び42の集積体、他のタンパク質と結合されたβ−アミロイド単量体、他のタンパク質と結合されたβ−アミロイド集積体、脂肪と結合されたβ−アミロイド、炭水化物と結合されたβ−アミロイド、核酸と結合されたβ−アミロイド、及び血液細胞と結合されたβ−アミロイド単量体)が混合されているβ−アミロイドを含んだ血しょうを意味し、MP Aβは、UP Aβの混合β−アミロイドの結合を分離して単量体化したβ−アミロイドを含む血しょうを意味し、MB Aβは、全血にEPPSを処理してβ−アミロイドを単量体化した後、分離した血しょうを意味する。この際、UP Aβ=[ヘテロAβ];MP Aβ=[総Aβ単量体];MP Aβ−MB Aβ=[集積体Aβ]である。
【0108】
<実施例3>血液内に凝集されたタンパク質が溶解された濃度を測定して診断するキット
APP/PS1形質転換マウスを用いてβ−アミロイド重合体濃度の測定
1.マウス準備
実験動物としては、APP/PS1形質転換雌マウスを利用し、9ヶ月齢の同じ週齢の個体を用いた。
【0109】
研究に使われた形質転換マウスAPP/PS1モデルは、B6C3−Tg(APPswe,PSEN1dE9)85Dbo/Mmjaxであり、米国ジャクソン実験動物センターで購入して実験動物倫理規定下に管理し、実験に用いた。
【0110】
血しょう及び全血の処理;サンプル処理及びβ−アミロイド濃度の測定は、前記実施例1と同様に実施した。
【0111】
下記の〔表7〕は、対照群(UP Aβ)、EPPS処理群血しょうの単量体濃度(MP Aβ)、EPPS処理群全血の単量体濃度(MB Aβ)、前記UPとMPとに対するUP/MP値及び前記MPとMBとに対するMB/MP値を表わしたものである。〔表7〕の値は、3回測定後、その平均値を表わしたものである。
【0113】
前記の表7に示すように、EPPS処理群全血の単量体濃度(MB Aβ)が、むしろUP Aβよりも減少した(
図6)。また、前記対照群(UP Aβ)とEPPS処理群血しょうの単量体濃度(MP Aβ)とを用いて測定されたUP/MP値は、0.99であって、1.0よりも小さく、前記EPPS処理群血しょうの単量体濃度(MP Aβ)とEPPS処理群全血の単量体濃度(MB Aβ)とを用いて測定されたMB/MP値は、0.79であって、1.0よりも小さいので、アルツハイマー病の危険群であるか、痴呆が進められている状態であると診断することができる。
【0114】
これは、使われたマウスがβ−アミロイドの集積体を形成する動物モデルであって、β−アミロイドの集積体が形成された動物の血しょうを本発明によるキットに利用すれば、EPPS投与後、全血内アミロイドの濃度減少値を示すことを確認したので、本発明のキットを使えば、アルツハイマー病、痴呆などの診断または予測に対する正確度を高めうるということを確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の診断キットを用いて非正常な凝集またはミスフォールディングと関連した疾患または疾病を診断することができる。