(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
光透過性ポリマーフィルムと、前記光透過性ポリマーフィルムの1つの主表面又は両主表面上に配置される、硬化した請求項1〜6のいずれか一項に記載のハードコート組成物とを含む、保護フィルム物品。
光透過性表面を含むディスプレイ物品であって、前記表面が、請求項7に記載の保護フィルム又は硬化した請求項1〜6のいずれか一項に記載のハードコートを含む、ディスプレイ物品。
前記光透過性ポリマーフィルムと硬化した前記ハードコート組成物との間に配置されるプライマー層を更に含む、請求項7又は8に記載の保護フィルム物品又はディスプレイ物品。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、重合性樹脂組成物及び無機酸化物ナノ粒子を含むハードコート組成物、並びにこのような硬化したハードコートを含む保護フィルム及び(例えば、電光)ディスプレイ等の物品に関する。好ましい実施形態では、ハードコートは、高い透明性、低いヘイズ、及び高い耐久性を有する、ガラスの特性に近づく。
【0007】
重合性樹脂組成物は、少なくとも3つの(メタ)アクリレート基及びアルコキシ(すなわち、アルキレンオキシド)繰り返し単位を含む、少なくとも1つの第1の(メタ)アクリレートモノマーを含む。アルコキシ繰り返し単位(すなわち、アルキレンオキシド)は、典型的に、式−[O−L]−を有する。(式中、Lは、直鎖又は分枝状アルキレンである。)幾つかの実施形態では、アルキレンは、直鎖又は分枝状C
2〜C
6アルキレンである。このようなモノマーは、以下の一般式:
【0008】
【化1】
によって表すことができる。(式中、R1は、H又はメチルであり、Rは、三価有機残基であり;各mについて、Lは、独立して、直鎖又は分枝状C
2〜C
6アルキレンであり;各pについて、mは、独立して、少なくとも1、2、又は3かつ30又は25以下である。)幾つかの実施形態では、mは、20、又は15、又は10以下である。
【0009】
幾つかの実施形態では、第1の(メタ)アクリレートモノマーは、エチレンオキシド繰り返し単位等の直鎖状アルコキシ繰り返し単位を含む。このようなモノマーは、以下の一般式:
R((OC
nH
2n)
mOC(O)C(R
6)=CH
2)
p
によって表すことができる。(式中、Rは、価数pを有する有機残基であり、nは、アルコキシ繰り返し単位の炭素原子の数であり、mは、アルコキシ繰り返し単位の数であり、R
6は、水素又はメチルであり、pは、少なくとも3である。)各mについて、nは、独立して、1〜4であってよい。幾つかの実施形態では、アルコキシ繰り返し単位の数mは、6超であり、典型的には、20未満である。幾つかの実施形態では、pは、少なくとも4、又は5、又は6である。幾つかの実施形態では、Rは、任意で1つ以上の酸素原子、硫黄原子、又は窒素原子を更に含む、炭化水素残基である。幾つかの実施形態では、Rは、少なくとも3、4、5、又は6個の炭素原子、典型的には、12個以下の炭素原子を含む。
【0010】
他の実施形態では、第1の(メタ)アクリレートモノマーは、イソプロピレンオキシド及び/又はイソブチレンオキシド繰り返し単位等の分枝状アルコキシ繰り返し単位を含む。幾つかの実施形態のモノマーは、以下の一般式:
R((OC
n(CH
3)
qH
2n−q)
mOC(O)−C(R
6)=CH
2)
p
によって表すことができる。(式中、R及びpは、既に記載したものと同様である。)分枝状イソプロピレンオキシド繰り返し単位の場合、nは2であり、qは1である。分枝状イソブチレンオキシド繰り返し単位の場合、nは2であり、qは2である。
【0011】
少なくとも3つの(メタ)アクリレート基及びC
2〜C
4アルコキシ繰り返し単位を含む第1の(メタ)アクリレートモノマーは、直鎖及び/又は分枝状C
2〜C
4アルコキシ繰り返し単位の任意の組み合わせを含んでよい。したがって、第1の(メタ)アクリレートモノマーは、エチレンオキシド繰り返し単位のみ、プロピレンオキシド繰り返し単位のみ、ブチレンオキシド繰り返し単位のみ、及びこれらの組み合わせを含んでよい。1つの実施形態では、第1の(メタ)アクリレートモノマーは、エチレンオキシド繰り返し単位及びプロピレンオキシド繰り返し単位の両方の組み合わせを含む。
【0012】
好ましい実施形態では、(メタ)アクリレート基の数で除した第1の(メタ)アクリレートモノマーの分子量は、約220〜375g/モルである。あるいは、言い換えれば、(メタ)アクリレート基当たりの分子量は、(メタ)アクリレート当たり約220〜375g/モルである。下記実施例で実証する通り、このような第1の(メタ)アクリレートモノマーを含むとガラス様ハードコートを提供しやすい。幾つかの実施形態では、(少なくとも10マイクロメートルの厚さの)硬化したハードコートは、#7Hの鉛筆及び750グラムの負荷を用いて試験したとき、亀裂を示さない。これに代えて又はこれに加えて、硬化したハードコートは、(実施例に記載の試験方法に従って)磨耗試験を行った後に5、又は4、又は3、又は2%未満のヘイズを示すように、十分に耐久性である。
【0013】
このような基準を満たす市販のエトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレートモノマーとしては、例えば、下記実施例に更に記載する通り、Sartomerから入手可能なSR9035及びSR502が挙げられる。このような基準を満たす他のモノマーは、例えば、下記実施例にも記載する通り、ポリアルキレンオキシドポリオールとアクリル酸とを反応させることによって、合成することができる。
【0014】
硬化したハードコート組成物中の第1の(メタ)アクリレートモノマーの濃度は、典型的に、少なくとも5重量%であり、幾つかの実施形態では、少なくとも10重量%固形分であり、一般的に、40重量%、又は35重量%、又は30重量%、又は25重量%固形分以下である。幾つかの実施形態では、第1のモノマーの濃度は、少なくとも11、12、13、14、又は15重量%固形分である。幾つかの実施形態では、第1のモノマーの濃度は、5〜10重量%固形分である。本明細書で使用するとき、重量%固形分とは、存在し得るなんらかの溶媒を蒸発させた後の、乾燥及び/又は硬化したハードコート組成物の合計量を指す。
【0015】
ハードコート組成物の重合性樹脂は、少なくとも1つの第2のマルチ(メタ)アクリレートモノマーを含む。第2の(メタ)アクリレートモノマーは、第1のモノマーとは異なるモノマーである。
【0016】
有用なマルチ(メタ)アクリレートモノマー及びオリゴマーとしては、以下が挙げられる:
(a)ジ(メタ)アクリル含有モノマー、例えば、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレートモノメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、アルコキシル化脂肪族ジアクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン修飾ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、カプロラクトン修飾ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド修飾トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールアクリレート;
(b)トリ(メタ)アクリル含有モノマー、例えば、グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(例えば、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)、プロポキシル化トリアクリレート(例えば、プロポキシル化グリセリルトリアクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート)、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート;
(c)より高官能性の(メタ)アクリル含有モノマー、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びカプロラクトン修飾ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート。
【0017】
例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、及びエポキシアクリレート等のオリゴマー(メタ)アクリルモノマーもまた用いてよい。
【0018】
このような(メタ)アクリレートモノマーは、例えば、Sartomer Company(Exton,Pennsylvania);Cytec Industries(Woodland Park,N);及びAldrich Chemical Company(Milwaukee,Wisconsin)等の供給業者から広く入手可能である。
【0019】
幾つかの実施形態では、ハードコート組成物は、少なくとも3つの(メタ)アクリレート官能基を含む第2の(メタ)アクリレートモノマーとして架橋剤(例えば、単独で)を含む。幾つかの実施形態では、第2の架橋モノマーは、少なくとも4、5又は6つの(メタ)アクリレート官能基を含む。アクリレート官能基は、(メタ)アクリレート官能基よりも好ましい傾向がある。
【0020】
好ましい市販の架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer Company(Exton,PA)から商標名「SR351」として市販されている)、エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer Company(Exton,PA)から商標名「SR454」として市販されている)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート(Sartomerから商標名「SR444」として市販されている)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Sartomerから商標名「SR399」として市販されている)、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールトリアクリレート(Sartomerから商標名「SR494」として市販されている)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(Sartomerから商標名「SR368」として市販されている)が挙げられる。
【0021】
幾つかの実施形態では、第2の(例えば、架橋)モノマーは、C
2〜C
4アルコキシ繰り返し単位を含まない。
【0022】
硬化したハードコート組成物中の第2のモノマーの合計量の濃度は、典型的に、少なくとも5重量%又は10重量%固形分であり、一般的に、40、35、又は30重量%固形分以下である。幾つかの実施形態では、第2のモノマーの合計量は、10〜25重量%固形分である。他の実施形態では、第2のモノマーの合計量は、5〜15重量%固形分である。
【0023】
他の実施形態では、ハードコート組成物は、少なくとも3つの(メタ)アクリレート官能基を含む架橋剤(例えば、C
2〜C
4アルコキシ繰り返し単位を有しない)及び少なくとも1つのジ(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマー等、2つ以上のモノマーのブレンドを含んでもよい。ジ(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーの濃度は、典型的に、全ハードコート組成物の15、又は10、又は5重量%固形分以下である。
【0024】
ハードコート組成物は、得られるコーティングに機械的強度及び耐久性を付与する表面修飾無機酸化物粒子を含む。粒子は、典型的に、実質的に球の形状であり、サイズは比較的均一である。粒子は、実質的に単分散の粒径分布を有してもよく、又は実質的に単分散分布のものを2つ以上ブレンドすることによって得られる多峰性分布を有してもよい。無機酸化物粒子は、典型的に、凝集していない(実質的に分離している)が、その理由は、凝集すると、無機酸化物粒子の沈殿、又はハードコートのゲル化が生じ得るためである。
【0025】
無機酸化物粒子のサイズは、著しい可視光の散乱を避けるように選択される。ハードコート組成物は、一般的に、少なくとも30、40、又は50nmかつ約200、175、又は150nm以下の平均(非会合)一次粒径又は会合粒径を有する表面修飾無機酸化物ナノ粒子をかなりの量含む。ハードコート組成物がかなりの量のこのようなサイズの無機ナノ粒子を含まない場合、硬化したハードコートは、本明細書に記載する鉛筆硬度試験に供したときに亀裂が生じることがある。無機酸化物ナノ粒子の合計濃度は、典型的に、少なくとも30、35、又は40重量%固形分、一般的には、90、80、又は75重量%固形分以下、幾つかの実施形態では、70、又は65、又は60重量%固形分以下である。
【0026】
ハードコート組成物は、より小さなナノ粒子を最大約10重量%固形分含んでもよい。このような無機酸化物ナノ粒子は、典型的に、少なくとも1nm又は5nmかつ50、40、又は30nm以下の平均(例えば、非会合)一次粒径又は会合粒径を有する。
【0027】
無機酸化物粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡を使用して、所与の直径の無機酸化物粒子の数を数えることによって測定することができる。無機酸化物粒子は、例えばシリカ等の単一の酸化物から本質的になっていてもよく又はなっていてもよく、あるいは酸化物との組み合わせを含んでいてもよく、又はある種の酸化物のコア(又は金属酸化物以外の材料のコア)上に別の種類の酸化物が析出したものを含んでいてもよい。シリカは、ハードコート組成物で利用される一般的な無機粒子である。無機酸化物粒子は、多くの場合、液体媒体中無機酸化物粒子のコロイド状分散液を含有するゾルの形態で提供される。ゾルは、様々な技術を用いて調製することができ、ヒドロゾル(水が液体媒体として機能する場合)、オルガノゾル(有機液体がこのように機能する場合)、及び混合ゾル(液体媒体が水及び有機液体の両方を含有する場合)を含む様々な形態であってよい。
【0028】
水性コロイドシリカ分散液は、Nalco Chemical Co.(Naperville,IL)から、例えば、製品1040、1042、1050、1060、2327、2329、及び2329K等、商標名「Nalco Collodial Silicas」として、又はNissan Chemical America Corporation(Houston,TX)から商標名Snowtex(商標)として市販されている。コロイドシリカの有機分散液は、商標名Organosilicasol(商標)としてNissan Chemicalから市販されている。好適なヒュームドシリカとしては、例えば、Evonki DeGussa Corp.(Parsippany,NJ)から商標名「AerosilシリーズOX−50」並びに製品番号−130、−150及び−200として市販されている製品が挙げられる。また、ヒュームドシリカは、Cabot Corp.(Tuscola,IL)から商標名「CAB−O−SPERSE 2095」、「CAB−O−SPERSE A105」、及び「CAB−O−SIL M5」として市販されている。
【0029】
光学特性、材料特性を最適化するため、又は全般的な組成物コストを低減させるために、複数の種類の無機酸化物粒子の混合物を用いることが望ましい場合がある。
【0030】
シリカの代わりに又はシリカと組み合わせて、ハードコートは、様々な高屈折率無機ナノ粒子を含んでよい。このようなナノ粒子は、少なくとも1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00、又は更に高い屈折率を有する。高屈折率無機ナノ粒子としては、例えば、単独又は組み合わせのジルコニア(「ZrO
2」)、チタニア(「TiO
2」)、酸化アンチモン、アルミナ、酸化スズが挙げられる。混合金属酸化物を用いてもよい。
【0031】
高屈折率層に用いるジルコニアは、Nalco Chemical Co.から商標名「Nalco OOSSOO8」として、Buhler AG(Uzwil,Switzerland)から商標名「Buhler zirconia Z−WO sol」として、及びNissan Chemical America Corporationから商標名NanoUse ZR(商標)として入手可能である。また、Zirconiaナノ粒子は、米国特許公開第2006/0148950号及び米国特許第6,376,590号に記載されているもののように調製することもできる。酸化アンチモンによって被覆される酸化スズ及びジルコニアの混合物を含むナノ粒子分散液(RI約1.9)は、Nissan Chemical America Corporationから商標名「HX−05M5」として市販されている。酸化スズナノ粒子分散液(RI約2.0)は、Nissan Chemicals Corp.から商標名「CX−S401M」として市販されている。また、ジルコニアナノ粒子は、米国特許第7,241,437号及び同第6,376,590号に記載されているもののように調製することもできる。
【0032】
ハードコートの無機ナノ粒子は、好ましくは、表面処理剤で処理される。ナノサイズの粒子を表面処理することで、ポリマー樹脂中における安定した分散をもたらすことができる。好ましくは、粒子が重合性樹脂中に十分に分散して、実質的に均一な組成物が生じるように、表面処理はナノ粒子を安定させる。更に、安定化した粒子が硬化中に重合性樹脂と共重合又は反応できるように、ナノ粒子の表面の少なくとも一部を表面処理剤で修飾してもよい。表面修飾無機粒子に組み込むことにより、粒子の共有結合がフリーラジカル重合性有機成分の影響を受けやすくなり、より強固かつより均質なポリマー/粒子網状構造がもたらされる。
【0033】
一般に、表面処理剤は、粒子表面に結合(共有結合、イオン結合、又は強力な物理吸着による結合)する第1の末端と、粒子の樹脂との相溶性をもたらす及び/又は硬化中に樹脂と反応する第2の末端とを有する。表面処理剤の例としては、アルコール、アミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、シラン、及びチタン酸塩が挙げられる。処理剤の好ましい種類は、部分的には、金属酸化物表面の化学的性質によって決定される。シリカに対してはシランが好ましく、ケイ質充填剤に対しては他のものが好ましい。ジルコニア等の金属酸化物に対しては、シラン及びカルボン酸が好ましい。表面修飾は、モノマーとの混合に続いて又は混合の後に行ってよい。シランの場合、樹脂に組み込む前にシランを粒子又はナノ粒子の表面と反応させることが好ましい。表面修飾剤の必要量は、粒径、粒子の種類、修飾剤の分子量、及び修飾剤の種類等の幾つかの要因に依存する。一般的には、おおむね単層の修飾剤を粒子の表面に結合させることが好ましい。必要とされる結合手順又は反応条件はまた、使用される表面修飾剤に依存する。シランの場合、酸性又は塩基性条件下、高温で、約1〜24時間表面処理することが好ましい。カルボン酸等の表面処理剤は、高温及び長時間を必要としない場合もある。
【0034】
シラン表面処理は、無機酸化物(例えば、シリカ)分散液に添加するとき、1つ以上のアルコキシシラン基を含む。アルコキシシラン基は、水(ナノ粒子分散液中に存在)で加水分解されて、Si−OH(ヒドロキシ基)を形成する。次いで、これらSiOH基は、ナノシリカ表面上のSiOH基と反応して、シラン表面処理されたナノシリカを形成する。
【0035】
幾つかの実施形態では、無機酸化物(例えば、シリカ)ナノ粒子は、(例えば、共重合性又は非共重合性)シラン表面処理で別々に表面修飾され、ハードコートは、両種類の表面修飾無機酸化物(例えば、シリカ)ナノ粒子の混合物を含む。他の実施形態では、無機酸化物(例えば、シリカ)ナノ粒子は、共重合性及び非重合性シラン表面処理の両方で同時に表面修飾される。
【0036】
無機酸化物(例えば、シリカ)ナノ粒子は、少なくとも1つの共重合性シラン表面処理を含む。共重合性シラン表面処理は、メタ(アクリル)又はビニル等のフリーラジカル重合性基を含む。フリーラジカル重合性基は、ハードコート組成物のフリーラジカル重合性(例えば、(メタ)アクリレート)モノマーと共重合する。
【0037】
好適な(メタ)アクリルオルガノシランとしては、例えば、(メタ)アクリロイルアルコキシシラン、例えば、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、3−(アクリロイルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、3−(メタクリロイルオキシ)プロピルジメチルメトキシシラン、及び3−(アクリロイルオキシプロピル)ジメチルメトキシシランが挙げられる。幾つかの実施形態では、(メタ)アクリルオルガノシランが、アクリルシランよりも好ましいことがある。好適なビニルシランとしては、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリ−t−ブトキシシラン、ビニルトリス−イソブトキシシラン、ビニルトリイソプロペンオキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランが挙げられる。好適なアミノオルガノシランは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2006/0147177号に記載されている。
【0038】
好ましい実施形態では、共重合性シラン表面処理は、一般式
X
1−L
1−SiR
m(OR
1)
3−m;
を有し得る。(式中、X
1は、(メタ)アクリル又はビニル等のフリーラジカル重合性基であり;
L
1は、1〜12個の炭素原子を有する有機二価連結基であり;
Rは、独立して、C
1〜C
4アルキル、最も典型的には、メチル又はエチルであり;
R
1は、独立して、H又はC
1〜C
4アルキル、最も典型的には、メチル又はエチルであり;
mは、0〜2である。)
【0039】
典型的な実施形態では、L
1は、アルキレン基である。幾つかの実施形態では、L
1は、1、2、又は3個の炭素原子を有するアルキレン基である。他の実施形態では、L
1は、フェニル又は(例えば、C
1〜C
4)アルキルフェニル等の芳香族基を含むか、又はそれからなる。
【0040】
無機酸化物(例えば、シリカ)ナノ粒子は、少なくとも1つの非共重合性(例えば、シラン)表面処理、すなわち、フリーラジカル重合性基を有しない表面処理を更に含む。
【0041】
好ましい実施形態では、非共重合性表面処理は、一般式:
X−L−SiR
m(OR
1)
3−m
を有するシラン表面処理化合物である。(式中、Xは、3〜12個の炭素原子を含む有機基であり;
Lは、共有結合又は1〜12個の炭素原子を有する有機二価連結基であり;
Rは、独立して、C
1〜C
4アルキル、最も典型的には、メチル又はエチルであり;
R
1は、独立して、H又はC
1〜C
4アルキル、最も典型的には、メチル又はエチルであり;そして、
mは、0〜2である。)
【0042】
典型的な実施形態では、Lは、アルキレン基である。幾つかの実施形態では、L
1は、1、2、又は3個の炭素原子を有するアルキレン基である。幾つかの実施形態では、Xは、フェニル等の芳香族基を含むか、又はそれからなる。幾つかの実施形態では、X−Lは、6−メチルヘプチル(すなわち、イソオクチル)等のアルキル基である。
【0043】
幾つかの実施形態では、好ましい表面処理化合物は、表面張力によって特徴付けることができる。本明細書で使用するとき、表面張力とは、ACD/PhyChem Suiteソフトウェアを用いることによって計算した、www.chemspider.comによって報告されている値を指す。共重合性及び非共重合性シラン表面処理は、独立して、約22〜29ダイン/cmの表面張力を有し得る。この範囲内の表面張力を有する代表的な表面処理は、以下の通りである。
【0045】
幾つかの実施形態では、共重合性及び/又は非重合性シラン表面処理は、典型的に、少なくとも23、24、又は25ダイン/cmの表面張力を有する。幾つかの実施形態では、非重合性表面処理は、重合性表面張力とは表面張力が約2ダイン/cm以下異なる。
【0046】
無機ナノ粒子は、任意で、当該技術分野において公知である様々な他の表面処理、例えば、6個より多い炭素原子を有する少なくとも1つの不揮発性モノカルボン酸を含む共重合性表面処理、又は(例えば、ポリエーテル)水溶性テールを含む非反応性表面処理を更に含んでよい。
【0047】
表面処理化合物の合計量は、ハードコート組成物に添加される表面修飾無機酸化物(例えば、シリカ)ナノ粒子の濃度、及び無機酸化物(例えば、シリカ)ナノ粒子の粒径に依存して変動し得る。しかし、典型的に、ハードコートは、少なくとも0.50、0.60、0.70、0.80、又は0.90重量%固形分の共重合性表面処理及び10重量%固形分以下の共重合性表面処理を含む。例えば、3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシランの場合等、共重合性表面処理が比較的低分子量である場合、ハードコート組成物中の表面処理化合物の濃度は、典型的に、5、4、又は3重量%固形分以下、幾つかの好ましい実施形態では、2.5、2.0、1.5、又は1.0重量%固形分以下である。
【0048】
ハードコートは、典型的に、少なくとも0.20、0.30、0.40、0.50重量%固形分の非重合性表面処理及び10重量%固形分以下の共重合性表面処理を含む。幾つかの実施形態では、ハードコート組成物中の非重合性表面処理化合物の濃度は、典型的に、5重量%固形分以下、幾つかの好ましい実施形態では、4、3、又は2重量%固形分以下である。
【0049】
非共重合性表面処理化合物の共重合性表面処理化合物に対する重量比は、変動し得る。幾つかの実施形態では、重量比は、1:10〜5:1で変動し得る。幾つかの実施形態では、重合性表面処理化合物の重量による量は、非重合性表面処理の重量による量以上である。この実施形態では、重合性表面処理化合物の非重合性表面処理化合物に対する重量比は、約1:1〜約5:1であり得る。
【0050】
乾燥及び硬化したハードコート中に非共重合性表面処理を含めると、耐磨耗性の改善及び/又はカールの低減が可能である。典型的な実施形態では、磨耗試験(実施例に更に記載する)によるヘイズの変化は、5、4、又は3%未満、好ましくは、2、1.5、又は1%未満である。最も好ましくは、ヘイズの変化はゼロである。しかし、0.1、0.2、0.3、0.4、又は0.5のヘイズの変化は、典型的に、許容可能である。カール(実施例に更に記載する)は、典型的に、30又は25mm未満であり、幾つかの実施形態では、20、15、又は10mm未満である。乾燥及び硬化したハードコートは、#8Hの鉛筆及び750グラムの重りを用いてJISK5600−5−4:1999に従って試験したとき、亀裂を示し得ない。しかし、最終用途に応じて、より低い鉛筆硬度が好適な場合もある。また、乾燥及び硬化したハードコートは、22、21、又は20mmの直径を有するマンドレルを用いて試験したときも、亀裂を示し得ない。幾つかの実施形態では、乾燥及び硬化したハードコートは、15又は10mmのマンドレルを用いて試験したとき、亀裂を示さない。更に、乾燥及び硬化したハードコートは、このような特性の様々な組み合わせを示し得る。乾燥及び硬化したハードコートの特性は、少なくとも部分的に、ハードコートの厚さ及びハードコートが配置される基材に依存する。本明細書で使用するとき、このような特性は、5mil(0.13mm)の厚さを有するポリエステルフィルム上に配置される14マイクロメートルの厚さを有する乾燥及び硬化したハードコートに関して記載される。
【0051】
硬化を促進するために、本明細書に記載されている重合性組成物は、少なくとも1種のフリーラジカル熱開始剤及び/又は光開始剤を更に含んでよい。このような開始剤及び/又は光開始剤が存在する場合、これは、重合性組成物の総重量に基づいて、典型的には、重合性組成物の約10重量%未満、より典型的には、約5重量%未満含まれる。フリーラジカル硬化技術は、当該技術分野において周知であり、そして、例えば、熱硬化法、及び電子ビーム又は紫外線等の放射線硬化法が挙げられる。有用なフリーラジカル光開始剤としては、例えば、国際公開第2006/102383号に記載されているようなアクリレートポリマーのUV硬化において有用であることが知られているものが挙げられる。
【0052】
ハードコート組成物は、任意で、様々な添加剤を含んでもよい。例えば、シリコーン添加剤又はフッ素化添加剤を添加して、ハードコートの表面エネルギーを低下させることができる。
【0053】
1つの実施形態では、ハードコートコーティング組成物は、例えば、米国特許第7,178,264号に記載されている、少なくとも0.005、好ましくは少なくとも0.01重量%固形分の1つ以上のペルフルオロポリエーテルウレタン添加剤を更に含む。ペルフルオロポリエーテルウレタン添加剤の合計量は、単独で又は他のフッ素化添加剤と組み合わせて、典型的に、最大0.5又は1重量%固形分である。
【0054】
ペルフルオロポリエーテルウレタン材料は、好ましくは、イソシアネート反応性HFPO−材料から調製される。特に指定しない限り、「HFPO−」とは、メチルエステルF(CF(CF
3)CF
2O)
aCF(CF
3)C(O)OCH
3(式中、「a」は、平均2〜15である)の末端基F(CF(CF
3)CF
2O)
aCF(CF
3)−を指す。幾つかの実施形態では、aは、平均3〜10であるか、又は平均5〜8である。このような種は、一般に、aについてある範囲の値を有するオリゴマーの分散物又は混合物として存在し、その結果、aの平均値は非整数となることがある。例えば、1つの実施形態では、「a」は、平均6.2である。HFPO−ペルフルオロポリエーテル材料の分子量は、繰り返し単位の数(「a」)に依存して、約940g/モル〜約1600g/モルで変動し、典型的には1100g/モル〜1400g/モルが好ましい。
【0055】
1つの実施形態では、反応生成物は、以下の式:
R
i−(NHC(O)XQR
f)
m,−(NHC(O)OQ(A)
p)
n;
のペルフルオロポリエーテルウレタン添加剤を含む。(式中、
R
iは、マルチイソシアネートの残基であり;
Xは、O、S、又はNR(式中、Rは、H又は1〜4個の炭素を有するアルキルである)であり;
R
fは、式F(R
fcO)
xC
dF
2d−(式中、各R
fcは、独立して、1〜6個の炭素原子を有するフッ素化アルキレン基であり、各xは、2以上の整数であり、dは、1〜6の整数である)の基を含む一価ペルフルオロポリエーテル部分であり;
各Qは、独立して、少なくとも2の価数を有する連結基であり;
Aは、(メタ)アクリル官能基−XC(O)C(R
2)=CH
2(式中、R
2は、1〜4個の炭素原子のアルキル基又はH又はFである)であり;
mは、少なくとも1であり;nは、少なくとも1であり;pは、2〜6であり;m+nは、2〜10であり;式中、下付き文字m及びnを有する各基は、R
i単位に結合している。)
【0056】
Rf基に結合しているQは、直鎖、分枝鎖、又は環含有連結基である。Qは、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、アルカリーレンを含み得る。Qは、任意で、O、N、及びS等のヘテロ原子並びにこれらの組み合わせを含んでもよい。Qはまた、任意で、カルボニル又はスルホニル等のヘテロ原子含有官能基、並びにこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0057】
XがOであるとき、Qは、典型的にはメチレンではなく、したがって、2個以上の炭素原子を含有する。幾つかの実施形態では、Xは、S又はNRである。幾つかの実施形態では、Qは、少なくとも2個の炭素原子を有するアルキレンである。他の実施形態では、Qは、アリーレン、アラルキレン、及びアルカリーレンから選択される直鎖、分枝鎖、又は環含有連結基である。更に他の実施形態では、Qは、O、N、及びS等のヘテロ原子並びに/又はカルボニル及びスルホニル等のヘテロ原子含有官能基を含有する。他の実施形態では、Qは、O、N、Sから選択されるヘテロ原子並びに/又はカルボニル及びスルホニル等のヘテロ原子含有官能基を任意で含有する分枝鎖又は環含有アルキレン基である。幾つかの実施形態では、Qは、例えば−C(O)NHCH
2CH
2−、−C(O)NH(CH
2)
6−、及び−C(O)NH(CH
2CH
2O)
2CH
2CH
2−等のアミド基等の窒素含有基を含有する。
【0058】
イソシアネート基のモル分率が1.0である場合、ペルフルオロポリエーテルウレタン添加剤材料を作製するのに使用されるm及びn単位の合計モル分率は、1.0以上である。m:nのモル分率は、0.95:0.05〜0.05:0.95である。好ましくは、m:nのモル分率は、0.50:0.50〜0.05:0.95である。より好ましくは、m:nのモル分率は、0.25:0.75〜0.05:0.95、最も好ましくは、m:nのモル分率は、0.25:0.75〜0.10:0.95である。m:nのモル分率が合計1超、例えば、0.15:0.90である場合、m単位が最初にイソシアネートにおいて反応し、わずかに過剰の(0.05モル分率)のn単位が用いられる。
【0059】
例えば、モル分率0.15のm及びモル分率0.85のn単位が導入される配合では、形成される生成物の一部の画分がm単位を含有しない生成物の分布が形成される。
【0060】
HDIのビウレットと、1等量のHFPOオリゴマーアミドールHFPO−C(O)NHCH
2CH
2OH(式中、「a」は平均2〜15である)と、更に2等量のペンタエリスリトールトリアクリレートとの反応生成物によって形成される1つの代表的な反応生成物を、以下の通り示す。
【0062】
参照により本明細書に組み込まれる「Polymerizable Composition Comprising Perfluoropolyether Urethane Having Ethylene Oxide Repeat Units」と題された国際公開第2006/102383号及び米国特許出願公開第2008/0124555号に記載されているもの等のペルフルオロポリエーテルウレタンの調製においては、様々な他の反応物質が含まれてよい。
【0063】
参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/029438号に記載されているように、特定のシリコーン添加剤も、低いリント吸引力(lint attraction)と合わせて撥インク性を提供することが見出されている。このようなシリコーン(メタ)アクリレート添加剤は、一般に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)主鎖、及び(メタ)アクリレート基で終端する少なくとも1つのアルコキシ側鎖を含む。アルコキシ側鎖は、任意で、少なくとも1つのヒドロキシル置換基を含んでもよい。このようなシリコーン(メタ)アクリレート添加剤は、様々な供給元から市販されており、例えば、Tego Chemieから商標名TEGO Rad 2300、「TEGO Rad 2250」、「TEGO Rad 2300」、「TEGO Rad 2500」、及び「TEGO Rad 2700」として市販されている。これらのうち、「TEGO Rad 2100」が最も低いリント引力を提供した。
【0064】
NMR分析に基づいて、「TEGO Rad 2100」及び「TEGO Rad 2500」は、以下の化学構造:
【0065】
【化3】
を有すると考えられる。(式中、nは、10〜20であり、mは、0.5〜5である。)
【0066】
幾つかの実施形態では、nは、14〜16であり、mは、0.9〜3である。分子量は、典型的には、約1000g/モル〜2500g/モルである。
【0067】
シリコーン(メタ)アクリレート添加剤は、単独で又はペルフルオロポリエーテルウレタン添加剤と組み合わせて、ハードコート組成物に添加してよい。シリコーン(メタ)アクリレート添加剤の濃度は、ハードコート組成物の少なくとも約0.10、0.20、0.30、0.40、又は0.50重量%固形分からハードコート組成物の1〜3重量%固形分の範囲であり得る。
【0068】
熱重量分析(国際公開第2009/029438号に記載の通り)に基づいて、12重量%未満の残留含量を有するシリコーン(メタ)アクリレートから、セルロース表面引力試験に従って最低のヘイズ値が得られた。表面層(例えば、このようなシリコーン(メタ)アクリレート添加剤を含む)は、セルロース表面引力試験に従って、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、更により好ましくは5%未満のヘイズを有する。
【0069】
硬化した表面層及びコーティングされた物品は、ペン(商標名「Sharpie」として市販)からのインクが玉状化して別々の液滴になり、Kimberly Clark Corporation(Roswell,GA)から商標名「SURPASS FACIAL TISSUE」として入手可能なティッシュ等の、ティッシュ又は紙タオルで露出面を拭くことによって容易に除去することができるとき、「撥インク性」を呈する。
【0070】
重合性組成物は、フリーラジカル重合性材料を相溶性有機溶媒に溶解させることによって形成することができ、次いで、約40〜60%固形分の濃度でナノ粒子分散液(表面処理無機酸化物(例えば、シリカ)ナノ粒子を含む)と合わせてよい。単一の有機溶媒又は溶媒のブレンドを用いることができる。用いられるフリーラジカル重合性材料に応じて、好適な溶媒としては、アルコール(例えば、イソプロピルアルコール(IPA)又はエタノール等)、ケトン(例えば、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)等)、シクロヘキサノン又はアセトン、芳香族炭化水素(例えば、トルエン等)、イソホロン、ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、エステル(例えば、ラクテート、アセテート、例えば、3Mから商標名「3M Scotchcal Thinner CGS10」(「CGS10」)」として市販されているようなプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3Mから商標名「3M Scotchcal Thinner CGS50」(「CGS50」)」として市販されているような2−ブトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(DEアセテート)、エチレングリコールブチルエーテルアセテート(EBアセテート)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(DPMA)、イソ−アルキルエステル(例えば、イソヘキシルアセテート、イソヘプチルアセテート、イソオクチルアセテート、イソノニルアセテート、イソデシルアセテート、イソドデシルアセテート、イソトリデシルアセテート、又は他のイソ−アルキルエステル)、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0071】
ハードコート組成物は、単層又は複層として、従来のフィルム適用技術を使用して(例えば、ディスプレイ表面又はフィルム)基材に適用することができる。ディップコーティング、正転及び逆転ロールコーティング、巻線ロッドコーティング、並びにダイコーティング等を含む様々な技術を用いて、薄いフィルムを適用することができる。ダイコーターとしては、とりわけ、ナイフコーター、スロットコーター、スライドコーター、流体ベアリングコーター、スライドカーテンコーター、ドロップダイカーテンコーター、及び押出コーターが挙げられる。多くの種類のダイコーターが、文献に記載されている。通常、基材は連続ウェブのロールの形状であるのが好都合であるが、個々のシートにコーティングを塗布してもよい。
【0072】
ハードコート組成物は、オーブン内で乾燥させて溶媒を除去し、次いで、例えば、H電球又は所望の波長の他のランプを用いて、好ましくは不活性雰囲気(酸素50ppm未満)下で紫外線に曝露することによって硬化させる。この反応機序によって、フリーラジカル重合性材料を架橋させる。
【0073】
(すなわち、乾燥及び/又は硬化した)ハードコート表面層の厚さは、典型的に、少なくとも0.5マイクロメートル、1マイクロメートル、又は2マイクロメートルである。ハードコート層の厚さは、一般的に、50、40、35、30、又は25マイクロメートル以下である。幾つかの実施形態では、厚さは、約5マイクロメートル〜25マイクロメートルである。
【0074】
その光学的透明度に起因して、本明細書に記載するハードコートは、光透過性フィルム基材又は光学ディスプレイに適用するのに特に有用である。光透過性基材は、ガラス等の広範な非ポリマー材料、又はポリエチレンテレフタレート(PET)、(例えば、ビスフェノールA)ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリ(メチルメタアクリレート)等の様々な熱可塑性及び架橋されたポリマー材料、並びに二軸延伸ポリプロピレン等のポリオレフィンのいずれかを含むか又はこれらからなっていてよく、これらは、様々な光学デバイスにおいて一般に使用されている。更に、基材は、有機成分と無機成分との両方を有するハイブリッド材料を含んでもよい。基材及び硬化したハードコートは、少なくとも80%、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%の透過率を有する。基材及び硬化したハードコートの初期ヘイズ(すなわち、磨耗試験前)は、1、又は0.5、又は0.4、又は0.2%未満であり得る。
【0075】
本明細書に記載するハードコートは、保護フィルムを形成する光透過性フィルムの一方又は両方の主表面に適用し得る。
【0076】
多層光学フィルム、微細構造フィルム(例えば、再帰反射シート及び輝度向上フィルム)、(例えば、反射性又は吸収性)偏光フィルム、拡散性フィルムに加えて、(例えば、二軸)リターダフィルム及び補償フィルムが挙げられるが、これらに限定されない様々な光透過性光学フィルムが、フィルム基材として使用するのに好適である。
【0077】
大多数の用途について、基材の厚さは、好ましくは約0.5mm未満、より好ましくは約20マイクロメートル〜約100、150、又は200マイクロメートルである。自己支持性ポリマーフィルムが好ましい。ポリマー材料は、例えば、押出成形及び押出フィルムの任意の1軸又は2軸配向等の従来のフィルム製造技術を使用してフィルムに成形することができる。基材と隣接する層との間の接着を改善するために、例えば化学処理、コロナ処理(例えば、空気又は窒素コロナ)、プラズマ、火炎、又は化学線によって基材を処理してよい。必要に応じて、ハードコートとの層間接着を増強させるため、任意の連結層又はプライマーを保護フィルム又はディスプレイ基材に適用してもよい。
【0078】
光学的フリンジング(fringing)を低減するか又はなくすために、基材がハードコート層の屈折率に近い屈折率を有する、即ち、高屈折率層と0.05未満、より好ましくは0.02未満だけ異なることが好ましい。基材が高屈折率を有する場合、米国特許出願公開第2008/0274352号に記載されているようなスルホポリエステル帯電防止プライマー等の高屈折率プライマーを用いてよい。あるいは、基材とハードコート層との中間(すなわち、中央値+/−0.02)の屈折率を有するフィルム基材又は電光ディスプレイ表面にプライマーを設けることによって、光学的フリンジングをなくすか又は低減することができる。また、光学的フリンジングは、ハードコートが適用される基材を粗面化することによってなくすか又は低減することもできる。例えば、基材表面は、9マイクロメートル〜30マイクロメートルの微細研磨材で粗面化することができる。
【0079】
ハードコートが適用される硬化したハードコート層又はフィルム基材は、光沢又は艶消し表面を有し得る。艶消しフィルムは、典型的には、典型的な光沢フィルムよりも透過率が低く、ヘイズ値が高い。例えば、ヘイズは、一般的に、ASTM D1003に従って測定したとき、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、又は10%である。60℃においてASTM D 2457−03に従って測定したとき、光沢表面は、典型的に、少なくとも130の光沢を有するが、艶消し表面は、120未満の光沢を有する。
【0080】
艶消し表面を提供するために、ハードコート表面を粗面化又は非平滑化することができる。これは、例えば、ビードブラスト又は他の方法で粗面化されている適切な用具でハードコート表面をエンボス加工することを含む当該技術分野において公知の様々な方法に加えて、米国特許第5,175,030号(Luら)及び同第5,183,597号(Lu)に記載されているように、適切な粗面化マスターに対して組成物を硬化させることによって実現することができる。
【0081】
更に、様々な永続久的グレード及び除去可能なグレードの接着剤組成物を、硬化したハードコートとしてフィルム基材の反対側に提供してよい。感圧接着剤を使用する実施形態については、保護フィルム物品は、典型的に、除去可能な剥離ライナーを含む。ディスプレイ表面への適用中に、保護フィルム物品がディスプレイ表面に接着できるように、剥離ライナーを取り外す。
【0082】
好適な接着剤組成物としては、(例えば、水素添加)ブロックコポリマー、例えば、Kraton Polymers(Westhollow,TX)から商標名「Kraton G−1657」として市販されているものに加えて、他の(例えば、類似の)熱可塑性ゴムが挙げられる。他の代表的な接着剤としては、アクリルベース、ウレタンベース、シリコーンベース、及びエポキシベース接着剤が挙げられる。経時的に又は屋外暴露時に接着剤が黄色化して光学ディスプレイの表示品質が劣化しないように、好ましい接着剤は、十分な光学的品質及び光安定性を有する。トランスファーコーティング、ナイフコーティング、スピンコーティング、ダイコーティング等の様々な公知のコーティング技術を使用して、接着剤を塗布することができる。代表的な接着剤は、米国特許出願公開第2003/0012936号に記載されている。このような接着剤類の幾つかは、3M Company(St.Paul,MN)から商標名8141、8142、及び8161として市販されている。
【0083】
本明細書に記載するハードコート又は保護フィルムは、様々な携帯式及び非携帯式情報ディスプレイ物品において使用することができる。ディスプレイとしては、様々な電光及び非電光ディスプレイ物品が挙げられる。このようなディスプレイとしては、マルチキャラクター(multi-character)、特に、マルチライン・マルチキャラクターディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイ(「LCD」)、プラズマディスプレイ、フロントプロジェクション及びリアプロジェクションディスプレイ、陰極線管(「CRT」)、標識、並びにシングルキャラクター又はバイナリーディスプレイ(例えば、発光管(light emitting tube)(「LED」))、信号ランプ、スイッチが挙げられる。
【0084】
電光ディスプレイ物品としては、PDA、LCDテレビ(エッジリット及びダイレクトリットの両方)、携帯電話(PDA/携帯電話の組み合せを含む)、タッチセンサ式スクリーン、腕時計、カーナビゲーションシステム、グローバルポジショニングシステム、深度探知機、計算機、電子書籍、CD及びDVDプレイヤー、プロジェクションテレビスクリーン、コンピューターモニター、ノート型パソコンディスプレイ、機器計器、及び機器パネルカバーが挙げられるが、これらに限定されない。これらデバイスは、平面表示面又は曲面表示面を有してよい。好ましい実施形態では、ハードコート又はこのようなものを含む保護フィルムは、タッチスクリーンに引っ掻き傷がつくことを防ぐために用いられるカバーガラスの代わりに用いることができる。
【0085】
1つの実施形態では、本明細書に記載する保護フィルム又は硬化したハードコート(例えば、ガラス基材に適用)は、タッチスクリーンの表面層、又はタッチセンサ基材のアセンブリを含むタッチセンサフィルム基材又はタッチモジュール等のこれらの部品である。
【0086】
タッチスクリーンは、一般的に、スクリーンに触れることによってユーザがコンピュータと情報をやりとりすることができるように、ヒトの接触に対して感受性にすることができるコンピュータのディスプレイスクリーンの部品である。タッチスクリーンは、複数のタッチセンサ基材及び任意でカバーガラス又はカバーフィルムを含んでよい。タッチスクリーンはまた、タッチモジュールと呼ばれることもある。数種類のタッチスクリーンが存在する。投影型静電容量方式タッチスクリーンの代替(すなわち、非投影型静電容量方式)としては、抵抗膜方式タッチスクリーン、デジタル抵抗膜方式タッチスクリーン、表面弾性波方式タッチスクリーン、表面型静電容量方式タッチスクリーン、及び誘導容量方式タッチスクリーンが挙げられる。
【0087】
投影型静電容量方式タッチスクリーンパネルは、電荷を伝送する材料でコーティングされる。投影型静電容量方式タッチスクリーンは、複数の導電性電極でパターン化してよい。パネルに接触があると、少量の電荷が電極に沿って接触点へと引っ張られる。各電極に接続された回路が電荷を測定し、処理用コントローラに情報を送る。様々な投影型静電容量方式タッチスクリーンが公知である。タッチスクリーンの例としては、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,030,860号;同第7,463,246号;同第7,663,607号;同第7,932,898号;同第8,179,381号;同第8,243,027号;同第2008/0266273号;及び米国特許出願公開第2012/0256878号に記載されているものが挙げられる。
【0088】
1つの実施形態では、一式のパターン化電極と、硬化したハードコート又は硬化したハードコートが保護表面層を形成するようにタッチセンサフィルム基材上に配置される硬化したハードコートを含む保護フィルムとを含むタッチセンサフィルム基材が記載される。
図1を参照すると、一式のパターン化電極(例えば、米国特許第8,179,381号に記載されている)を有するタッチセンサフィルム基材104は、ハードコート107を含む保護フィルム基材106に(光学的に透明な接着剤105を用いて)接合され得る。あるいは、106は、ガラス基材であってもよい。
【0089】
別の実施形態では、ハードコート107は、
図2に図示するように、タッチセンサフィルム基材104上に直接配置してもよい。
【0090】
別の実施形態では、一対のタッチセンサフィルム基材を含むタッチスクリーンが記載される。
図1を参照すると、タッチスクリーン100は、第1のセンサフィルム基材104に(光学的に透明な接着剤103を用いて)接合されている一式のパターン化電極(例えば、米国特許第8,179,381号に記載されている)を有する第2のセンサフィルム基材102を含む。タッチセンサフィルム基材104は、ハードコート107を含む保護フィルム基材106に(光学的に透明な接着剤105を用いて)接合され得る。別の実施形態では、タッチセンサフィルム基材104は、ハードコート107を含む保護フィルム基材106の代わりにガラス(不図示)に(光学的に透明な接着剤105を用いて)接合され得る。更に別の実施形態では、ハードコート107は、
図2に図示するように、タッチセンサフィルム基材104上に直接配置してもよい(層105及び106は存在しない)。
【0091】
ディスプレイ物品は、
図3に図示するように、(光学的に透明な接着剤101を用いて)電光ディスプレイ200に接合されているタッチスクリーン100を含む。非電光ディスプレイ物品としては、様々な広告、販促、及び企業イメージの統一戦略用途に使用される(例えば、再帰反射)標識及び商業的グラフィックディスプレイフィルムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
ハードコート材料は、例えば、カメラレンズ、眼鏡レンズ、双眼鏡レンズ、鏡、自動車の窓、建物の窓、列車の窓、ボートの窓、航空機の窓、車のヘッドライト及びテールライト、ディスプレイケース、眼鏡、オーバーヘッドプロジェクター、ステレオキャビネットドア、ステレオカバー、時計カバー、並びに光学及び磁気光学記録ディスク等の様々な他の物品にも同様に使用してよい。
【0093】
好ましい実施形態の観点で本発明を説明してきたが、特に上記の教示を考慮して当業者によって変更が行なわれ得るため、当然ながら、本発明は好ましい実施形態に限定されないことが理解されるであろう。
【実施例】
【0094】
実施例で用いられる成分
Esacure Oneは、光開始剤であり、Lamberti USA(Conshohocken PA)から入手可能である。Sartomer USA(Exton PA)製のSR399は、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート樹脂である。
【0095】
ペルフルオロポリエーテルウレタンマルチアクリレート(HFPOUA)は、用いた材料のモル比を1.0 Des N100/0.95 PET3A/0.10 HFPOに調整し;HFPOアミドールを、反応の開始時に一度に全て添加する代わりに、約30分間かけて添加し;メチルエチルケトン中50%固形分の代わりに、アセトン中66%固形分で反応を実施したことを除いて、米国特許第7,178,264号、調製No.6(Des N100/0.90 PET3A/0.15 HFPOの調製)に概説されている手順に従って調製した。
【0096】
Sartomer USA製のSR9035は、956g/モルの分子量を有すると報告されている、エトキシ化(15)トリメチロールプロパントリアクリレートである。
【0097】
Sartomer USA製のSR344は、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレートである。
【0098】
Sartomer USA製のSR444Cは、ペンタエリスリトールトリアクリレート樹脂である。
【0099】
3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン処理シリカ分散液(A174処理シリカ36.7重量%固形分)は、以下の通り調製した:撹拌棒、撹拌プレート、冷却器、加熱マントル、及び熱電対/温度調節器を備える1000mLの3つ口フラスコに、300グラムのNalco 2329K(約75nmコロイドシリカの40重量%固形分分散液、Nalco Company(Naperville,IL))を入れた。この分散液に、350グラムの1−メトキシ−2−プロパノールを撹拌しながら添加した。次に、4.93グラムの97% 3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(Alfa Aesar(Ward Hill MA))、0.3グラムの5重量% Prostab 5198(BASF Corporation)水溶液、及び50グラムの1−メトキシ−2−プロパノールを、100グラムのポリビーカーに添加した。3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン/Prostab/1−メトキシ−2−プロパノール混合物を、撹拌しながらバッチに添加した。混合物の入ったビーカーを、合計50グラムの1−メトキシ−2−プロパノールのアリコートですすいだ。すすぎ液をバッチに添加した。バッチを80℃に加熱し、約16時間保持した。バッチを室温に冷却し、次いで、2000mLの蒸留フラスコに移した。真空蒸留と400グラムの1−メトキシ−2−プロパノールの添加を交互に行うことによって、水をバッチから除去した。このバッチを真空蒸溜によって濃縮して、36.7重量%固形分の極めて流動的な半透明の分散液を得た。ナイロンメッシュを通してバッチを濾過し、16オンス(0.47リットル)の琥珀色のガラス瓶に移した。
【0100】
A174/フェニルトリメトキシシラン(1/2モル比)処理シリカは、以下の通り調製した:撹拌棒、撹拌プレート、冷却器、加熱マントル、及び熱電対/温度調節器を備える1000mLの3つ口フラスコに、300グラムのNalco 2329K(約75nmコロイドシリカの40重量%固形分分散液、Nalco Company(Naperville,IL))を入れた。この分散液に、350グラムの1−メトキシ−2−プロパノールを撹拌しながら添加した。次に、3.29グラムの97%3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(Alfa Aesar(Ward Hill MA))、1.31グラムのフェニルトリメトキシシラン(Alfa Aesar(Heysham,England))、0.3グラムの5重量%Prostab 5198(BASF Corporation(Florham Park NJ))水溶液、及び50グラムの1−メトキシ−2−プロパノールを、100mLのポリビーカーに添加した。3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン/フェニルトリメトキシシラン/Prostab/1−メトキシ−2−プロパノール混合物を、撹拌しながらバッチに添加した。混合物の入ったビーカーを、合計50グラムの1−メトキシ−2−プロパノールのアリコートですすいだ。すすぎ液をバッチに添加した。バッチを80℃に加熱し、約16時間保持した。バッチを室温に冷却し、2000mLの蒸留フラスコに移した。真空蒸留と450グラムの1−メトキシ−2−プロパノールの添加を交互に行うことによって、水をバッチから除去した。このバッチを真空蒸溜によって濃縮して、37.7重量%固形分の極めて流動的な半透明の分散液を得た。ナイロンメッシュを通してバッチを濾過し、16オンス(0.47リットル)の琥珀色のガラス瓶に移した。
【0101】
A174/イソオクチルトリメトキシシラン(2/1モル比)処理シリカは、以下の通り調製した:撹拌棒、撹拌プレート、冷却器、加熱マントル、及び熱電対/温度調節器を備える1000mLの3つ口フラスコに、300グラムのNalco 2329K(約75nmコロイドシリカの40重量%固形分分散液、Nalco Company(Naperville,IL))を入れた。この分散液に、350gの1−メトキシ−2−プロパノールを撹拌しながら添加した。次に、3.29グラムの97% 3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(Alfa Aesar(Ward Hill MA))、1.55グラムのイソオクチルトリメトキシシラン(Gelest Inc(Morrisville,PA))、0.3グラムの5重量%Prostab 5198(BASF Corporation(Florham Park NJ))水溶液、及び50グラムの1−メトキシ−2−プロパノールを、100mLのポリビーカーに添加した。3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン/イソオクチルトリメトキシシラン/Prostab/1−メトキシ−2−プロパノール混合物を、撹拌しながらバッチに添加した。混合物の入ったビーカーを、合計50グラムの1−メトキシ−2−プロパノールのアリコートですすいだ。すすぎ液をバッチに添加した。バッチを80℃に加熱し、約16時間保持した。バッチを室温に冷却し、2000mLの蒸留フラスコに移した。真空蒸留と400グラムの1−メトキシ−2−プロパノールの添加を交互に行うことによって、水をバッチから除去した。このバッチを真空蒸溜によって濃縮して、34.4重量%固形分の極めて流動的な半透明の分散液を得た。ナイロンメッシュを通してバッチを濾過し、16オンス(0.47リットル)の琥珀色のガラス瓶に移した。
【0102】
フェニルトリメトキシシラン処理シリカは、以下の通り調製した:撹拌棒、撹拌プレート、冷却器、加熱マントル、及び熱電対/温度調節器を備える5000mLの3つ口フラスコに、1500グラムのNalco 2329K(約75nmコロイドシリカの40重量%固形分分散液、Nalco Company(Naperville,IL))を入れた。この分散液に、2000グラムの1−メトキシ−2−プロパノールを撹拌しながら添加した。次に、19.69グラムのフェニルトリメトキシシラン(Alfa Aesar(Heysham,England))、1.50グラムの5重量%Prostab 5198(BASF Corporation(Florham Park NJ))水溶液、及び50グラムの1−メトキシ−2−プロパノールを、100グラムのポリビーカーに添加した。フェニルトリメトキシシラン/Prostab/1−メトキシ−2−プロパノール混合物を、撹拌しながらバッチに添加した。混合物の入ったビーカーを、合計200グラムの1−メトキシ−2−プロパノールのアリコートですすいだ。すすぎ液をバッチに添加した。バッチを80℃に加熱し、約16時間保持した。バッチを室温に冷却し、バッチの一部を2000mLの蒸留フラスコに移した。真空蒸留と900グラムの1−メトキシ−2−プロパノール及びバッチの残りの添加を交互に行うことによって、水をバッチから除去した。このバッチを真空蒸溜によって濃縮して、43.0重量%固形分の極めて流動的な半透明の分散液を得た。ナイロンメッシュを通してバッチを濾過し、32オンス(0.95リットル)の琥珀色のガラス瓶に移した。
【0103】
3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン処理シリカ分散液(A174処理シリカ42重量%固形分)は、以下の通り調製した:撹拌棒、撹拌プレート、冷却器、加熱マントル、及び熱電対/温度調節器を備える1000mLの3つ口フラスコに、300グラムのNalco 2329K(直径約75nmのコロイドシリカの40重量%固形分水分散液、Nalco Chemical Company(Naperville,IL))を入れた。この分散液に、350グラムの1−メトキシ−2−プロパノールを撹拌しながら添加した。次に、5.03グラムの97% 3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン(Alfa Aesar(Ward Hill MA))、0.30グラムの5% Prostab 5198(BASF Corp.(Florham Park NJ))水溶液、及び50グラムの1−メトキシ−2−プロパノールを、100mLのポリビーカーに添加した。3−(メタクリルオキシ)プロピルトリメトキシシラン/Prostab 5198/1−メトキシ−2−プロパノールプレミックスのプレミックスを、撹拌しながらバッチに添加した。プレミックスの入ったビーカーを合計50グラムの1−メトキシ−2−プロパノールのアリコートですすいだ。すすぎ液をバッチに添加した。この時点で、バッチは半透明な低粘度の分散液であった。バッチを80℃に加熱し、約16時間保持した。バッチを室温に冷却し、2000mLの1つ口フラスコに移した。反応フラスコを100グラムの1−メトキシ−2−プロパノールですすぎ、すすぎ液をバッチに添加した。更に250グラムの1−メトキシ−2−プロパノールをフラスコに添加して、1−メトキシ−2−プロパノール/水共沸混合物の蒸留を支援した。バッチをRotavapor上で真空下にて加熱/蒸留して、1−メトキシ−2−プロパノール中42重量%固形分の表面修飾シリカ粒子を含有する半透明の分散液を得た。
【0104】
試験法
サンプルの磨耗は、各サンプルのコーティングされた表面を横断するようにスタイラスに接着されている研磨材料を振動させることができる機械装置を用いて、コーティング方向に対してクロスウェブで試験した。スタイラスを、210mm/秒(2回拭き取り/秒)の速度で60mmの広い掃引幅にわたって振動させ、ここで、拭き取りは、60mmの1回の移動として定義する。スタイラスは、平坦な基部及び直径3.2cmを有するシリンダであった。この試験に用いた研磨材は、Rhodes−American(Homax Products(Bellingham,WA)の一部門)から商標名「#0000−Super−Fine」として入手したスチールウールであり、購入したまま用いた。
【0105】
直径3.2cmのディスクをパッドから切り取り、3M Scotch Permanent Adhesive Transferテープを用いてスタイラスの基部に接着した。各実施例について1つのサンプルを試験し、4.5kgの重りで、3000回拭いた。磨耗後、各サンプルのオプティカルヘイズを、5つの異なる点でHaze−Gard Plus haze meter(BYK Gardner(Columbia MD)から入手可能)を用いて測定した。各サンプルのデルタヘイズ値を、サンプルの未試験領域のヘイズを減じることによって計算した。
【0106】
各サンプルの鉛筆硬度を、JIS K5600−5−4:1999試験手順、並びに#8H鉛筆及び750gの重りを用いて測定した。サンプルを目視検査した。記録された「合格」とは、亀裂が見られなかったことを示す。「不合格」とは、亀裂の著しい証拠が観察されたことを示す。「わずか」とは、少量の亀裂が観察されたことを示す。
【0107】
カールは、テーブル面上にハードコートフィルムサンプルの10cm四方の1枚を置き、テーブル面から各四隅の高さを測定することによって測定した。4つの高さの合計をカールとして記録した。
【0108】
マンドレル屈曲は、一連のマンドレルにわたってサンプルを屈曲させ、亀裂を示さなかった最小マンドレル直径を記録することによって測定した。屈曲試験は、マンドレルと接触する光透過性フィルムを用いて実施した。
【0109】
実施例1〜4及び比較例C1〜C2
コーティング溶液を以下の表に従って調製した。表中の量は、重量部固形分であり、括弧内に重量パーセント固形分を記載する。調製したコーティング溶液を、5mil(0.13mm)の下塗りされたPETフィルム(3M Company(St.Paul MN)からScotchPakとして入手可能)上に52%固形分でコーティングした。コーティングは、#22巻線ロッド(R.D.Specialties(Webster NY)から入手可能)を用いて行い、80℃で2分間乾燥させた。乾燥したコーティングは、約14マイクロメートルの厚さを有していた。次いでコーティングを、Fusion H電球(Fusion UV Systems(Gaithersburg MD)から入手可能)を用いて、40フィート/分(12.1m/分)で窒素下にて100%の力で硬化させた。全ての試験は、乾燥及び硬化したハードコートPETフィルム上で実施した。
【0110】
【表2】
【0111】
【表3】