【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、太陽電池パネルのユーザーの間では、例えば、太陽電池パネルを用いた発電設備の竣工前や、太陽電池パネルが発電できない夜間でも検査を行いたいという要望がある。この点に関し、特許文献1の太陽電池パネルの検査装置は、太陽電池パネルのバスバーから発生する磁気を検知する方式であるため、検査中はバスバーに電流が流れている状態(より正確には、電流が流れることが可能な状態)にしておく必要がある。従って、特許文献1の太陽電池パネルの検査装置は、太陽電池パネルに電力系統が接続されていない状態や、太陽電池パネルに光が照射されていない状態では検査を行うことはできない。
【0008】
特許文献2の太陽電池パネルの検査装置は、太陽電池パネルのインピーダンスを測定する方式であるため、検査中の太陽電池パネルに光が照射されていることは必須ではない。ところが、上述のように特許文献2の太陽電池パネルの検査装置は、モジュールとしての太陽電池パネルの正常/異常判定を行うものであって、モジュールを構成する個々のパネルの故障箇所までを特定することはできない。
【0009】
このように、特許文献1及び特許文献2の太陽電池パネルの検査装置では、発電設備の竣工前や、太陽電池パネルが発電できない夜間等において、太陽電池パネルの故障箇所を正確に特定することはできず、新たな検査装置の登場が望まれている。本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、太陽電池パネルが発電を行っていない状態であっても、太陽電池パネルの故障箇所を正確かつ容易に特定することが可能な太陽電池パネルの検査装置、及び太陽電池パネルの検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明に係る太陽電池パネルの検査装置の特徴構成は、
非通電状態にある太陽電池パネルを検査する太陽電池パネルの検査装置であって、
検査対象の太陽電池パネルに対して、周波数を変更可能な交流波を入力する交流波入力部と、
前記太陽電池パネルの表面に電極板を当接又は近接させて、前記太陽電池パネルと前記電極板との間にキャパシタを形成する検査部と、
前記キャパシタに接続するように設けられるインダクタと、
前記インダクタの両端の電圧を出力する電圧出力部と、
を備え、
前記交流波入力部は、
前記電圧出力部から出力される前記インダクタの両端の電圧が脈動するように、前記キャパシタと前記インダクタとが共振する共振周波数を含む周波数帯域の間で
一定の規則又はリズムに従って周波数が変更されている交流波を、前記太陽電池パネルに入力することにある。
【0011】
本構成の太陽電池パネルの検査装置は、周波数を変更可能な交流波を入力する交流波入力部を備えており、この交流波入力部から、キャパシタとインダクタとが共振する共振周波数を含む周波数帯域の間で周波数が変更されている交流波を、検査対象の太陽電池パネルに入力し、インダクタの両端の電圧を電圧出力部から出力するように構成したものである。ここで、インダクタの両端の電圧は、インダクタの共振エネルギーの大きさに比例し、太陽電池パネルが正常であれば、交流波のエネルギーが増幅されてインダクタに蓄積されることになる。そこで、このインダクタの両端の電圧をモニタリングすれば、太陽電池パネルが正常であるか、或いは異常(劣化を含む)であるかを正確かつ容易に判断することが可能となる。このような検査は、太陽電池パネルが非通電状態にあっても、検査対象の太陽電池パネルに交流波を入力するだけで実施することができるため、発電設備の竣工前や、太陽電池パネルが発電できない夜間等においても、太陽電池パネルの故障箇所を正確かつ容易に特定することが可能となる。
【0013】
本構成の太陽電池パネルの検査装置であれば、交流波入力部から太陽電池パネルに入力される交流波は、一定の規則又はリズムに従って周波数が変更されたものであるため、太陽電池パネルが正常であれば、交流波の周波数が周波数帯域内で変更されて共振周波数を通過する度に、電圧出力部から出力されるインダクタの両端の電圧が一定の規則又はリズムに従って脈動し、太陽電池パネルが正常であることをより明確に認識することが可能となる。
【0014】
本発明に係る太陽電池パネルの検査装置において、
前記周波数帯域は、10〜1000kHzであることが好ましい。
【0015】
本構成の太陽電池パネルの検査装置であれば、交流波の周波数が採り得る周波数帯域を10〜1000kHzとすることで、市場に出回っている略全ての太陽電池パネルの特性をカバーできるため、一般家庭用から産業用まで様々なスケールの太陽電池パネルを検査することが可能となる。
【0016】
本発明に係る太陽電池パネルの検査装置において、
前記電圧出力部に出力された電圧に基づいて、前記太陽電池パネルの状態を判定する判定部をさらに備えることが好ましい。
【0017】
本構成の太陽電池パネルの検査装置であれば、事後に測定データを分析する必要がなく、装置側で太陽電池パネルの状態を判定することができるため、その場で太陽電池パネルの故障診断が可能となる。
【0018】
本発明に係る太陽電池パネルの検査装置において、
前記判定部は、前記電圧出力部に出力された電圧について、最大電圧が最小電圧の2倍以上である場合に前記太陽電池パネルは正常状態であると判定し、前記最大電圧が前記最小電圧の2倍未満である場合に前記太陽電池パネルは劣化状態又は異常状態であると判定することが好ましい。
【0019】
本構成の太陽電池パネルの検査装置であれば、インダクタの両端の電圧は常に変動しているため、最大電圧と最小電圧との関係を見るだけで、太陽電池パネルの故障診断が可能となる。具体的には、最大電圧が最小電圧の2倍以上である場合に太陽電池パネルは正常状態であると判定し、最大電圧が最小電圧の2倍未満である場合に太陽電池パネルは劣化状態又は異常状態であると判定する。このような判定を行えば精度の高い検査が可能となり、太陽電池パネルの長期信頼性を向上させることができる。
【0020】
本発明に係る太陽電池パネルの検査装置において、
前記太陽電池パネルは、複数の太陽電池セルが接続されてなる太陽電池モジュールであることが好ましい。
【0021】
本構成の太陽電池パネルの検査装置は、太陽電池パネルに入力する交流波の周波数帯域として、インダクタとキャパシタとが共振する共振周波数を含む周波数帯域を選択し、インダクタとキャパシタとの共振時にインダクタに蓄積された共振エネルギーを利用して太陽電池パネルが故障しているか否かを判断するため、太陽電池セルのモジュール化(またはストリング化)の影響を受けることなく、正確かつ容易に検査を行うことができる。従って、本発明は、複数の太陽電池セルが接続されてなる太陽電池モジュールの検査において、好適に利用することができる。
【0022】
上記課題を解決するための本発明に係る太陽電池パネルの検査方法の特徴構成は、
非通電状態にある太陽電池パネルを検査する太陽電池パネルの検査方法であって、
検査対象の太陽電池パネルに対して、周波数を変更可能な交流波を入力する交流波入力工程と、
前記太陽電池パネルの表面にインダクタが設けられた電極板を当接又は近接させる検査工程と、
を包含し、
前記検査工程により、前記太陽電池パネルと前記電極板との間にキャパシタが形成されるとともに、当該キャパシタに前記インダクタが接続され、
前記インダクタの両端の電圧が脈動するように、前記キャパシタと前記インダクタとが共振する共振周波数を含む周波数帯域の間で
一定の規則又はリズムに従って前記交流波の周波数を変更する周波数変更工程と、
前記インダクタの両端の電圧を出力する電圧出力工程と、
を包含することにある。
【0023】
本構成の太陽電池パネルの検査方法であれば、上述した太陽電池パネルの検査装置と同様の優れた作用効果を奏する。すなわち、太陽電池パネルが非通電状態にあっても、当該太陽電池パネルに交流波を入力するだけで、太陽電池パネルが正常であれば、交流波のエネルギーが増幅されてインダクタに蓄積されるため、インダクタの両端の電圧をモニタリングすることで、太陽電池パネルが正常であるか、或いは異常(劣化を含む)であるかの判断が可能となる。従って、発電設備の竣工前や、太陽電池パネルが発電できない夜間等においても、太陽電池パネルの故障箇所を正確かつ容易に特定することが可能となる。
【0025】
本構成の太陽電池パネルの検査方法であれば、上述した太陽電池パネルの検査装置と同様の優れた作用効果を奏する。すなわち、太陽電池パネルが正常であれば、交流波の周波数が周波数帯域内で変更されて共振周波数を通過する度に、電圧出力部から出力されるインダクタの両端の電圧が一定の規則又はリズムに従って脈動し、太陽電池パネルが正常であることをより明確に認識することが可能となる。