(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189598
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】デッキプレート用インサート及びその取付方法
(51)【国際特許分類】
E04B 1/41 20060101AFI20170821BHJP
E04B 9/18 20060101ALI20170821BHJP
B28B 7/00 20060101ALI20170821BHJP
B28B 23/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
E04B1/41 502M
E04B9/18 B
B28B7/00 D
B28B23/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-11712(P2013-11712)
(22)【出願日】2013年1月25日
(65)【公開番号】特開2014-141847(P2014-141847A)
(43)【公開日】2014年8月7日
【審査請求日】2015年10月5日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592192930
【氏名又は名称】株式会社三門
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073210
【弁理士】
【氏名又は名称】坂口 信昭
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 清寿
(72)【発明者】
【氏名】久島 勝
(72)【発明者】
【氏名】足立 忠郎
(72)【発明者】
【氏名】松島 俊久
(72)【発明者】
【氏名】山下 剛典
【審査官】
坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3168548(JP,U)
【文献】
特開平10−121584(JP,A)
【文献】
特開2000−248637(JP,A)
【文献】
特開2010−270495(JP,A)
【文献】
実開昭60−102304(JP,U)
【文献】
特開昭47−29744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/41
E04B 1/36
E04B 9/18
B28B 7/00
B28B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デッキプレートに穿かれる貫通孔に上方から挿通取付する合成樹脂製の外筒部と、該外筒部の中空部に挿入装着されているインサート本体と、を有して成り、
前記外筒部には、その外周に前記デッキプレート挿通取付時に該デッキプレート上面に当接する鍔部が設けられ、該鍔部の下方に前記デッキプレート下側にて外周方向に張出し可能な張出し片部が設けられており、
前記インサート本体には、下方に開口する雌螺子部が形成されており、
前記デッキプレートに挿通した後に前記インサート本体の頭部を打ち込んで前記張出し片をデッキプレート下側にて外周方向に張出させて前記デッキプレートに固定し、吊りボルトを吊下げ可能な構成のデッキプレート用インサートにおいて、
前記デッキプレートと前記外筒部の鍔部との間に、止水性弾性材料で形成されたワッシャー部材を配設する構成であり、
前記ワッシャー部材が、前記鍔部の下方の張出し片部外周に装着されると共に、前記貫通孔に挿通取付される筒状体と、該筒状体の外周面の上端全周に外周方向に延伸する縁部と、を有する構成であり、
且つ前記インサート本体の外周面であって、少なくとも前記外筒部の中空部の内周面に接する位置に、逆ネジが形成され、前記インサート本体は前記外筒部に圧入により装着された構成であり、
更に、前記インサート本体は、その外周面が前記貫通孔の内周面とは非接触の状態で挿通取付される構成であり、
デッキプレートの貫通孔とインサートの外筒部との間に止水性弾性材料から形成されたワッシャー部材を介在させて、貫通孔に対するインサートの挿通取付が固定される構成により、吊りボルト螺合時の供回りを防止することができるのみでなく、インサート本体の外周面であって、少なくとも前記外筒部の中空部の内周面に接する位置に、逆ネジが形成された構成により、インサート本体の雌螺子部に吊りボルトを螺合した際に、該吊りボルトの螺合と共にインサート本体が供回りしてしまうことを防止することができる構成であること、
を特徴とするデッキプレート用インサート。
【請求項2】
前記ワッシャー部材の縁部の外径が、前記外筒部の鍔部の外径よりも大であることを特徴とする請求項1に記載のデッキプレート用インサート。
【請求項3】
前記ワッシャー部材の筒状体が、デッキプレート挿通取付時に該デッキプレート下面より突出する長さであることを特徴とする請求項1又は2に記載のデッキプレート用インサート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のデッキプレート用インサートをデッキプレートに取り付ける方法であって、
デッキプレートに形成される貫通孔に、前記ワッシャー部材を該ワッシャー部材の筒状体が前記貫通孔に入り込む共に縁部が前記デッキプレート上面に当接するように取り付け、
前記貫通孔に前記ワッシャー部材が介在した状態で外筒部及びインサート本体を挿通取付けし、
インサート本体の頭部をハンマーの如き打込手段を用いて叩くことにより該インサート本体を打ち込み、
この打ち込みによってインサート本体が下方に移動して張出し片部が内側から該インサート本体により外周方向に押し出されて張出させ、
この張出し片部の張出しにより、インサートをデッキプレートにワッシャー部材を介して密に固定し、
インサートの下方から雌螺子部に吊りボルトを螺合して該吊りボルトをインサートに吊下げ固定する構成であり、
且つ、前記外筒部に圧入により装着された前記インサート本体は、その外周面であって、少なくとも前記外筒部の中空部の内周面に接する位置に、逆ネジが形成され、前記インサートに対する吊りボルトの螺合の際、前記インサート本体の供回りを抑制すること、
更には、前記インサート本体は、その外周面が前記貫通孔の内周面とは非接触の状態で挿通取付けされること、
を特徴とするデッキプレート用インサートの取付方法。
【請求項5】
吊りボルトをインサートに螺合した後に、デッキプレート上にコンクリートを打設することを特徴とする請求項4に記載のデッキプレート用インサートの取付方法。
【請求項6】
吊りボルトをインサートに螺合する前に、デッキプレート上にコンクリートを打設することを特徴とする請求項4に記載のデッキプレート用インサートの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はデッキプレート用インサート及びその取付方法に関し、詳しくはデッキプレート等の天井プレート材に吊り天井・空調機器・配管類等の吊り構造物を吊り下げるための吊りボルトを吊下げ固定するためのインサート、及び該インサートをデッキプレートに取り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波形プレート構造のデッキプレートへのインサートの取付けは、デッキプレートに貫通孔を穿ち、該貫通孔にインサートを打ち込み挿通することで取付固定している。
【0003】
従来のインサートは、例えば特許文献1に記載のように、インサートの外筒部に設けられた鍔部がデッキプレート上面に当接することで該デッキプレートに穿かれた貫通孔を閉塞する構成となっている。
【0004】
しかし特許文献1の技術では、貫通孔の直径に対してインサートの外筒部の外径が大きい場合が多いため、該インサートの雌螺子部に吊りボルトを螺合する際に該インサートが該吊りボルトの捩じ込みと供回りしてしまい螺合できない場合があり、作業性を著しく損なう場合があるという問題点を有している。
【0005】
また、デッキプレート上へのコンクリート打設時の水分が前記貫通孔から漏出してしまう場合があるという問題点も有している。
【0006】
更に、近年において行われ始めているコンクリート打設前に空調機等を吊下げてしまう施工方法の場合、コンクリート打設前の降雨時に雨水が前記貫通孔から漏出して空調機等を濡らしてしまうという不都合をも有している。
【0007】
そこで本発明者らは、上記した従来技術の課題を解決するために、デッキプレートの貫通孔とインサートの外筒部との間に止水性弾性材料から形成されたワッシャー部材を介在させ、このワッシャー部材が、デッキプレートの貫通孔に挿通取付される筒状体と、筒状体の外周面の上端全周に外周方向に延伸する縁部とを有する構成とすることにより、効率的な取付作業が可能であり、しかも止水効果の高いデッキプレート用インサートを先に提案した(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許4215165号
【特許文献2】登録実用新案3168548号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、先提案技術について更に研究を続けた結果、デッキプレートへの取付作業の効率化の点で更なる改良の余地があることが判った。
【0010】
そこで本発明の課題は、コンクリート打設前乃至は打設時の止水性に優れており、しかもデッキプレートへの取付作業を更に効率的に行うことができるデッキプレート用インサート及びその取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は下記構成を有する。
【0012】
1.デッキプレートに穿かれる貫通孔に上方から挿通取付する
合成樹脂製の外筒部と、該外筒部の中空部に挿入装着されているインサート本体と、を有して成り、
前記外筒部には、その外周に前記デッキプレート挿通取付時に該デッキプレート上面に当接する鍔部が設けられ、該鍔部の下方に前記デッキプレート下側にて外周方向に張出し可能な張出し片部が設けられており、
前記インサート本体には、下方に開口する雌螺子部が形成されており、
前記デッキプレートに挿通した後に前記インサート本体の頭部を打ち込んで前記張出し片をデッキプレート下側にて外周方向に張出させて前記デッキプレートに固定し、吊りボルトを吊下げ可能な構成のデッキプレート用インサートにおいて、
前記デッキプレートと前記外筒部の鍔部との間に、止水性弾性材料で形成されたワッシャー部材を配設する構成であり、
前記ワッシャー部材が、前記鍔部の下方の張出し片部外周に装着されると共に、前記貫通孔に挿通取付される筒状体と、該筒状体の外周面の上端全周に外周方向に延伸する縁部と、を有する構成であり、
且つ前記インサート本体の外周面であって、少なくとも前記外筒部の中空部の内周面に接する位置に、逆ネジが形成され、前記インサート本体は前記外筒
部に圧
入により装着された構成であり、
更に、前記インサート本体は、その外周面が前記貫通孔の内周面とは非接触の状態で挿通取付される構成で
あり、
デッキプレートの貫通孔とインサートの外筒部との間に止水性弾性材料から形成されたワッシャー部材を介在させて、貫通孔に対するインサートの挿通取付が固定される構成により、吊りボルト螺合時の供回りを防止することができるのみでなく、インサート本体の外周面であって、少なくとも前記外筒部の中空部の内周面に接する位置に、逆ネジが形成された構成により、インサート本体の雌螺子部に吊りボルトを螺合した際に、該吊りボルトの螺合と共にインサート本体が供回りしてしまうことを防止することができる構成であること、
を特徴とするデッキプレート用インサート。
【0013】
2.前記ワッシャー部材の縁部の外径が、前記外筒部の鍔部の外径よりも大であることを特徴とする上記1に記載のデッキプレート用インサート。
【0014】
3.前記ワッシャー部材の筒状体が、デッキプレート挿通取付時に該デッキプレート下面より突出する長さであることを特徴とする上記1又は2に記載のデッキプレート用インサート。
【0015】
4.上記1〜3のいずれかに記載のデッキプレート用インサートをデッキプレートに取り付ける方法であって、
デッキプレートに形成される貫通孔に、前記ワッシャー部材を該ワッシャー部材の筒状体が前記貫通孔に入り込む共に縁部が前記デッキプレート上面に当接するように取り付け、
前記貫通孔に前記ワッシャー部材が介在した状態で外筒部及びインサート本体を挿通取付けし、
インサート本体の頭部をハンマーの如き打込手段を用いて叩くことにより該インサート本体を打ち込み、
この打ち込みによってインサート本体が下方に移動して張出し片部が内側から該インサート本体により外周方向に押し出されて張出させ、
この張出し片部の張出しにより、インサートをデッキプレートにワッシャー部材を介して密に固定し、
インサートの下方から雌螺子部に吊りボルトを螺合して該吊りボルトをインサートに吊下げ固定する構成であり、
且つ、前記外筒部に圧
入により装着された前記インサート本体は、その外周面であって、少なくとも前記外筒部の中空部の内周面に接する位置に、逆ネジが形成され、前記インサートに対する吊りボルトの螺合の際、前記インサート本体の供回りを抑制すること、
更には、前記インサート本体は、その外周面が前記貫通孔の内周面とは非接触の状態で挿通取付けされること、
を特徴とするデッキプレート用インサートの取付方法。
【0016】
5.吊りボルトをインサートに螺合した後に、デッキプレート上にコンクリートを打設することを特徴とする上記4に記載のデッキプレート用インサートの取付方法。
【0017】
6.吊りボルトをインサートに螺合する前に、デッキプレート上にコンクリートを打設することを特徴とする上記4に記載のデッキプレート用インサートの取付方法。
【0018】
尚、上記1〜3に係る本発明の参考発明として、以下の構成を挙げることができる。
前記ワッシャー部材が、水膨張性ゴムによって形成された構成であることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のデッキプレート用インサート。
【発明の効果】
【0019】
請求項1又は4に示す発明によれば、デッキプレートへの取付作業を効率的に行うことができ、しかもコンクリート打設前乃至は打設時の止水性にも優れたデッキプレート用インサートを提供することができる。
【0020】
より具体的には、デッキプレートの貫通孔とインサートの外筒部との間に止水性弾性材料から形成されたワッシャー部材を介在させることにより、貫通孔に対するインサートの挿通取付が固定される構成により、吊りボルト螺合時の供回りを防止することができるだけでなく、このワッシャー部材が、デッキプレートの貫通孔に挿通取付される筒状体と、筒状体の外周面の上端全周に外周方向に延伸する縁部とを有する構成であるため、止水効果を発揮するので、コンクリート打設前の雨水の漏水やコンクリート打設時の打設コンクリート水分の漏水を防止することができる。
【0021】
更に特に、インサート本体の外周面であって、少なくとも前記外筒部の中空部の内周面に接する位置に、逆ネジが形成された構成であるため、インサート本体の雌螺子部に吊りボルトを螺合した際に、該吊りボルトの螺合と共にインサート本体が供回りしてしまうことを防止することができる。従って、吊りボルト7を遅滞なく螺合することができるので確実な吊下げ固定が可能となる。
【0022】
請求項2に示す発明によれば、インサート外筒部の鍔部とデッキプレート上面との間の止水効果をより向上させることができると共に、吊りボルト螺合時の供回り防止効果をより向上させることができる。
【0023】
請求項3に示す発明によれば、インサート外筒部の張出し片部とデッキプレート貫通孔との間の止水効果をより向上させることができると共に、吊りボルト螺合時の供回り防止効果をより向上させることができる。
【0024】
尚、上記参考発明によれば、コンクリート打設時に生じる水分を吸収することで、より高い止水効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係るデッキプレート用インサートの一実施例を示す分解説明正面図、正面図及びA−A線断面図
【
図2】
図1に示すデッキプレート用インサートの取付例の一例を示す説明正面図(その1)
【
図3】
図1に示すデッキプレート用インサートの取付例の一例を示す説明正面図(その2)
【
図4】
図1に示すデッキプレート用インサートの取付例の一例を示す説明正面図(その3)
【
図5】
図1に示すデッキプレート用インサートの取付例の一例を示す説明正面図(その4)
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、添付の図面に従って本発明を説明する。
【0027】
本発明に係るデッキプレート用インサート(以下、単にインサート言うこともある。)1は、
図1〜
図5に示すように、
デッキプレート5に穿かれる貫通孔51に上方から挿通取付する外筒部2と、該外筒部2の中空部に挿入装着されているインサート本体3と、を有して成り、
前記外筒部2には、その外周に前記デッキプレート5挿通取付時に該デッキプレート5上面に当接する鍔部21が設けられ、該鍔部21の下方に前記デッキプレート5下側にて外周方向に張出し可能な張出し片部22が設けられており、
前記インサート本体3には、下方に開口する雌螺子部31が形成されており、
前記デッキプレート5の貫通孔51に挿通した後に前記インサート本体の頭部を打ち込んで前記張出し片をデッキプレート下側にて外周方向に張出させて前記デッキプレート5に固定し、吊りボルト7を吊下げ可能な構成において、
前記鍔部21の下方の外筒部2外周に装着されると共に前記貫通孔51に挿通取付される筒状体41と、該筒状体41の外周面の上端全周に外周方向に延伸する縁部42と、を有する止水性弾性材料で形成されたワッシャー部材4を、前記デッキプレート5と前記外筒体2との間に配設する構成である。
【0028】
以下、本発明のインサート1について更に詳説する。
【0029】
インサート1の一構成部材である外筒部2としては、この種のデッキプレート用インサートの外筒部として公知公用の構成及び素材のものを特別の制限なく用いることができる。即ち、合成樹脂製であり、デッキプレート5の貫通孔51に上方から挿通取付され、該デッキプレート5の上面に対しては鍔部21により下方への脱落を防止し、インサート本体3の打ち込みによる張出し片部22の外周方向への張出しによりデッキプレート5の上方への抜けを防止することでインサート1をデッキプレート5に固定するものである。尚、符号23は、外筒部2と鍔部21の強度を補強する補強リブである。
【0030】
同じくインサート1の一構成部材であるインサート本体3としては、この種のデッキプレート用インサートのインサート本体として公知公用の構成及び素材のものを特別の制限なく用いることができる。即ち、金属製又は硬質プラスチック製であり、外筒部2に挿入固定された状態でデッキプレート5の貫通孔51に挿通後、ハンマー6(
図5(A)参照)による打ち込みにより該デッキプレート5に固定されるものである。デッキプレート5への固定後、打設コンクリート8の打設前或いは打設後に下方に開口する雌螺子部31に吊りボルト7を螺合し、螺合した吊りボルト7に吊り天井・空調機器・配管類等の吊り構造物を固定することでこれらの吊り構造物をデッキプレート5から安定した状態で吊下げることが可能となるものである。
【0031】
また、インサート本体3は、その外周面であって、少なくとも前記外筒部2の中空部の内周面に接する位置に、逆ネジが形成された逆ネジ部32を有する構成となっている。該インサート本体3を外筒部2の中空部に挿入装着するには、該インサート本体3を外筒部2に圧入するか、及び/又は左回転の捩じ込みによって装着することができる。
【0032】
本発明では、前述したように、インサート1の構成部材として外筒部2及びインサート本体3に加えてワッシャー部材4を付加した構成となっている。
【0033】
ワッシャー部材4は、デッキプレート5の貫通孔51とインサート1の外筒部2との間に介在することで、該貫通孔51に対するインサート1の挿通取付を固定し、吊りボルト7螺合時の供回りを防止することができる。
【0034】
更に、該ワッシャー部材4は、止水性弾性材料により形成され、筒状体41と縁部42とを有する構成であるので、貫通孔51における止水効果を発揮してコンクリート打設時のコンクリート水分の漏水を防止することができる。
【0035】
ワッシャー部材4の材質としては、合成ゴム、天然ゴム、軟質合成樹脂、これらの混合物等、止水性を有する弾性材料を特別の制限なく用いることができる。また、止水性弾性材料として、水分を吸収することで膨張して止水効果を発揮する水膨張性ゴムを用いることも好ましい。
【0036】
水膨張性ゴムとしては、例えば、ゴム物質と水膨張性樹脂、充填剤、加硫剤、加硫促進剤、可塑剤、着色剤、老化防止剤、加工助剤などを加えた組成物をローラーミキサー、バンバリーミキサー、ニーダーなどの機械で混錬し、押出成形により所望の形状に押出し、常法により加硫したものを挙げることができる。
【0037】
前記ゴム物質としては、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、天然ゴム等を挙げることができ、これらを複合ブレンドとして使用することも可能である。
【0038】
水膨張性ゴムに使用される水膨張性樹脂としては、アクリル酸系、アクリレート系、無水マレイン酸系、ウレタン系、ポリビニルアルコール系等の架橋された各種の水膨張性樹脂を挙げることができる。これらの水膨張性樹脂を配合し、2〜15倍、好ましくは3〜10倍の体積膨張を有するものとなる。
【0039】
ワッシャー部材4による供回り防止効果及び止水効果を向上させるために、本実施例に示すように、縁部42の外径を外筒部2の鍔部21の外径よりも大とすることが好ましい。かかる構成によれば、縁部21とデッキプレート5上面との接触面積、縁部21と鍔部21との接触面積を共に大きくすることができるため、前記した供回り防止効果及び止水効果をより向上させることができる。
【0040】
また、上記した供回り防止効果及び止水効果を向上させるために、本実施例に示すようにワッシャー部材4の筒状体41をデッキプレート5挿通取付時に該デッキプレート5下面より突出する長さ、即ち、筒状体41の長さをデッキプレート5の厚みより大とすることも好ましい。かかる構成によれば、筒状体41と貫通孔51との接触面積、筒状体41とインサート本体3との接触面積を共に大きくすることができるため、前記した供回り防止効果及び止水効果をより向上させることができる。
【0041】
以上、本発明に係るデッキプレート用インサートについて実施例に基づき説明したが、次に、以上の構成を有するインサート1の取付例の一例について
図2〜
図5に基づき説明する。
【0042】
先ず、
図2(A)に示すようにデッキプレート5に貫通孔51を形成し、該貫通孔51に
図2(B)に示すようにワッシャー部材4を取り付ける。この際、ワッシャー部材4の筒状体41部分が貫通孔51内に確実に入り込み、縁部42がデッキプレート5上面に当接するように取り付ける。
【0043】
次に、
図3(A)・(B)に示すように、貫通孔51にワッシャー部材4を介在させた状態で外筒部2及びインサート本体3を挿通取付する。
【0044】
次に、
図4(A)に示すようにインサート本体3の頭部をハンマー6に叩くことで、
図4(B)に示すようにインサート本体3を打ち込む。この打ち込みによりインサート本体3が下方に移動し、この移動により張出し片部22が内側からインサート本体3により外周方向に押し出されて張出すことになる。この張出し片部22の張出しにより、インサート1はデッキプレート5にワッシャー部材4を介して密に固定されることになる。
【0045】
次に、
図5(A)に示すように、インサート1の下方から雌螺子部31に吊りボルト7を螺合することで、
図5(B)に示すように該吊りボルト7をインサート1に吊下げ固定することができる。尚、
図5(B)において、符号8は打設コンクリートを示す。
【0046】
この吊りボルト7の吊下げ固定の際の雌螺子部31への螺合の際に、デッキプレート5上のコンクリートが打設前の場合であっても、吊りボルト7の螺合に伴ってインサート本体3が供回りしてしまうことがなく、吊りボルト7を遅滞なく螺合することができるので確実な吊下げ固定が可能となる。
【0047】
即ち、インサート本体3の外周面に逆ネジ部32が形成されているため、吊りボルト7の螺合回転方向(上方から見て左回転方向、即ち、下方から見て右回転方向)とインサート本体3の外筒部2に対する緊締螺合方向(下方から見て右回転方向)とが同じ回転方向となるので、インサート本体3の供回りを防ぐことができる。
【0048】
尚、インサート本体3の外筒部2に対するハンマー打ち込みが弱く規定位置までの下方移動が不充分となってしまった場合であっても、吊りボルト7の螺合に伴ってインサート本体3が供回りして外筒部2に対して緊締螺合されることによって規定位置までインサート本体2を下方移動させることができ、規定位置まで下方移動した時点で該インサート本体3の供回りは止まり、吊りボルト7を雌螺子部31に螺合して吊下げ固定することができる。
【0049】
図5(A)・(B)に示す本実施例では、吊りボルト7の螺合後にデッキプレート5上にコンクリートを打設しているが、本発明はこれに限定されず、コンクリート打設後に吊りボルト7の螺合を行ってもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 インサート
2 外筒部
21 鍔部
22 張出し片部
23 補強リブ
3 インサート本体
31 雌螺子部
32 逆ネジ部
4 ワッシャー部材
41 筒状体
42 縁部
5 デッキプレート
51 貫通孔
6 ハンマー
7 吊りボルト
8 打設コンクリート