(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明を適用可能なインクジェット記録装置(液体吐出装置)200の内部構造の概略を示す正面図であり、本発明の液体吐出ヘッドの一実施形態としてのインクジェット記録ヘッド100が備えられている。記録装置200には、液体としてのインクを吐出する複数の記録ヘッド100が交換可能に備えられている。201は、それぞれの記録ヘッド100に個別に対応する回復ユニットであり、202は、インクを収納するカートリッジ形態のインクタンクであり、203は、オペレーションパネル部である。204は記録媒体の搬送部、205は、記録媒体を記録装置本体に送給する給紙部である。
【0012】
本例の記録装置200は、いわゆるフルラインタイプのインクジェット記録装置であり、記録媒体を
図1中の右方から左方に連続的に搬送しつつ、記録ヘッド100の吐出口からインクを吐出することにより、記録媒体に画像を記録することができる。本例の場合には、インクタンク202から供給されたイエロー(Y),ライトマゼンタ(LM),マゼンタ(M),ライトシアン(LC),シアン(C),ブラック(K)のインクが対応する記録ヘッド100から吐出される。これにより、カラー画像を記録することができる。回復ユニット201は、記録ヘッド100におけるインクの吐出状態を良好に維持するための回復処理に用いられる。その回復処理としては、記録ヘッドとインクタンクとの間においてインクを循環させて、その循環経路においてインク中のゴミや気泡を除去する循環回復動作を含むことができる。さらに、画像の記録に寄与しないインクを吐出口からキャップ内に吐出する予備吐出動作、および、記録ヘッド内のインクを加圧して、それを吐出口からキャップ内に強制的に排出させる加圧回復動作などを含むことができる。さらに、吐出口からキャップ内にインクを吸引排出させる吸引回復動作、吐出口が形成される記録ヘッド100の吐出口面をワイピングするワイピング動作などを含むこともできる。
【0013】
図2は、記録ヘッド100の分解斜視図である。
【0014】
101は、記録ヘッド100の主要部をなす吐出エレメントであり、その一側面がセラミック製のベースプレート102に支持されている。吐出エレメント101には、後述するように、共通液室と、共通流路と、複数の吐出口と、共通流路内と吐出口との間を連通する複数のインク流路(液流路)と、吐出エネルギー発生素子と、が備えられている。本例の場合、吐出エネルギー発生素子として、インクを加熱発泡させる電気熱変換体(ヒータ)が備えられている。吐出エレメント101の他側面には配線基板103が配されており、その配線基板103は、吐出エレメント101上に設けられる配線(吐出エネルギー発生素子やその駆動素子用などの配線)の電極部に対して、ワイヤボンディングにより電気的に接続される。104は、吐出エレメント101に対するインクの供給経路を形成するためのインク流路形成部材であり、配線基板103に設けた開口を通して、吐出エレメント101内に設けられる後述の共通液室に接続される。
【0015】
本例におけるインクの供給経路は、記録ヘッド100とインクタンク202との間においてインクを循環可能な循環経路を形成している。すなわち、インクタンク202内のインクは、インク流路形成部材104を介して吐出エレメント101内の共通液室に移送され、その移送されたインクが共通液室から、それぞれのインク流路に分配される。また、共通液室内のインクは、インク流路形成部材104を介してインクタンク202に還流させることができる。
【0016】
図3は、吐出エレメント101のノズル近傍を示す一部破断の斜視図である。第1の板部材としてのヒータボード(基板)1には、複数のインク流路3のそれぞれに対応する位置に、吐出エネルギー発生素子としての電気熱変換体(ヒータ)2が配置されている。ヒータ2の発熱によってインク流路3内のインクが発泡され、その発泡エネルギーを利用して、吐出口7からインクを吐出させることができる。以下においては、インク流路3と吐出口7とをまとめて「ノズル」ともいう。ヒータ2としては、チッ化タンタル等の抵抗体が用いられ、その厚さは0.01〜0.5μm、そのシート抵抗は単位正方形当たり10〜350Ωである。ヒータ2は、チッ化タンタル以外の材料、例えばホウ化ハフニウムなどで形成されたものでもよく、その厚さやシート抵抗についても特に限定されるものではない。
【0017】
ヒータ2の両端部には、通電を行うためのアルミニウム等からなる一対の電極配線(不図示)が接続されており、一方の電極配線には、通電をオン/オフするためのスイッチングトランジスタ(不図示)が接続されている。ゲート素子等を含む回路からなる制御用IC(不図示)は、記録ヘッドの外部から入力される記録信号に応じてスイッチングトランジスタを制御する。
【0018】
ヒータボード1上において、互いに隣接するヒータ2の間にはノズル側壁(壁部)4が設置されている。そのノズル側壁4の上面には、厚さ2μm程度の天板接着層(図示せず)を介して、Si等で形成された、第2の板部材としての天板5が配置される。これにより、ヒータボード1、ノズル側壁4、および天板接着層によって囲まれた管状のインク流路3が形成される。天板5には、異方性エッチング等の方法によって開口5Aが形成されており、この開口5Aにインク流路形成部材104が接続されることによって、共通液室6へのインクの導入等が可能となる。ヒータボード1および天板5との間には、後述する共通流路12、共通流路入口15、およびノズル入口14が形成されている。共通流路12には複数の柱11が設けられており、それらの柱11は基板1と天板5に挟まれている。複数の柱11は、ゴミや気泡などの異物を捕捉するためのフィルタとして機能するものであり、後述するように配列されている。
【0019】
ヒータボード1において、ノズルが形成される側の反対側には、記録信号をヒータ2に伝達するための電気パッド9が形成されている。その電気パッド9は、電気配線板8のパッド部10とワイヤー13により電気的に接続されている。
【0020】
以上の構成において、記録ヘッドの外部から入力される記録信号に応じて、制御用ICがスイッチングトランジスタを駆動制御することによって、ヒータ2の通電がオン/オフされる。共通液室6から各インク流路3に供給されたインクは、ヒータ2上において加熱されて発泡する。そして、その発泡による圧力により、ヒータ2よりもインクの供給方向下流側のインクが吐出口7から吐出される。そのインクはインク滴が飛翔し、記録媒体に着弾することによりドットを形成する。
【0021】
図4(a)は、ノズルおよび柱11の部分を天板5側から視た平面図、
図4(b)は、
図4(a)のIVb−IVb線に沿う断面図である。
【0022】
本実施形態における柱11は円柱形状であり、前述したように、共通流路12内に配備されていて、ヒータボード1と天板5の間に挟まれている。本発明において、柱とは、両端部がヒータボード1と天板5とに接触している形態に限らず、柱の一方の端部がヒータボード1や天板5に接触しない形態も含むものとする。
図4(a),(b)において、P1は、ノズル側壁4の端部の位置であり、この位置P1と吐出口7との間の範囲A0にノズルのインク流路3が形成されため、以下、このノズル内の位置P1をノズル入口14ともいう。P2は、ヒータボード1から離れる方向(
図4(b)中の右斜め上方)に天板5が傾斜し始める位置であり、この位置P2から
図4(a),(b)中の右方の範囲A2に共通液室6が形成される。位置P1は、位置P2よりも吐出口7側にずれており、それらの位置P1,P2の間の範囲A1には共通流路12が形成されている。以下、この位置P2を共通流路入口15ともいう。共通流路12は、ノズル側壁4が形成されていないため、複数のノズルに対して共通する通路である。したがって、共通液室6内に供給されたインクは、共通流路12を通ってから、複数のインク流路3のそれぞれに導入されることになる。
【0023】
天板5の内面がノズル入口14の位置P2から
図4(b)中の右斜め上方に傾斜するため、ヒータボード1と天板5と間において共通液室6が形成される範囲A2は、それらのヒータボード1と天板5との対向間隔が比較的大きい領域となる。一方、吐出口7から共通流路入口15の位置P2までの範囲A0,A1は、ヒータボード1と天板5との対向間隔が比較的小さい領域となる。
【0024】
図5(a)は、
図4(a)中の範囲A1の部分の拡大図である。複数の柱11は、共通流路12からインク流路3へのインクの供給方向の上流側(
図5(a)中の右側)および下流側(
図5(a)中の左側)に偏在するように配列されている。本例の場合は、
図5(a)のような蛇行ラインに沿って配列されている。その蛇行ラインは、共通流路12からインク流路3へのインクの供給方向に沿う
図5(a)中の左右方向をノズル方向とし、そのノズル方向と直交する直交方向をノズルの配列方向とした場合、ノズル方向に蛇行しつつ、ノズルの配列方向に延在する。したがって蛇行ラインは、ノズルの配列方向に対して交差する方向に延在する部分を含むことになる。インク流路3は、ノズル方向と直交する方向に沿って並ぶように複数備えられている。
【0025】
図5(a)において、このような蛇行ラインに沿って配列される柱11aから11gは、互いに隣接するもの同士の間隔が一定の距離D1に設定されている。柱11aは、共通流路入口15に最も近い側、つまりインクの供給方向(
図5(a)中の左方向)において最も上流側に位置する。柱11aに隣接する柱11bは、柱11aよりもインクの供給方向の下流側に位置する。この柱11bは、柱11aの中心を通るノズル方向の直線L1に対して、柱11aの中心から所定の角度θ1を成す位置にある。これらの柱11a,11bは距離D1だけ離れている。柱11bに隣接する柱11cは、柱11bから直線L2に沿ってインクの供給方向に距離D1ずれた位置にある。柱11cに隣接する柱11dは、柱11cよりもインクの供給方向の下流側に位置する。この柱11cは、柱11cの中心を通るノズル方向の直線L2に対して、柱11cの中心から所定の角度θ2を成す位置にある。これらの柱11c,11dも距離D1だけ離れている。柱11dは、インク流路3に最も近い側、つまりインクの供給方向において最も下流側に位置する。
【0026】
柱11dに隣接する柱11eは、柱11dよりもインクの供給方向の上流側に位置する。この柱11eは、柱11dの中心を通るノズル方向の直線L3に対して、柱11dの中心から所定の角度θ3を成す位置にある。これらの柱11d,11eも距離D1だけ離れている。柱11eに隣接する柱11fは、柱11eの中心を通るノズル方向の直線L4に沿って、インクの供給方向の上流側に距離D1ずれた位置にある。これらの柱11e,11fも距離D1だけ離れている。柱11fに隣接する柱11gは、柱11fよりもインクの供給方向の上流側に位置する。この柱11gは、直線L4に対して、柱11fの中心から所定の角度θ4を成す位置にある。これらの柱11f,11gも距離D1だけ離れている。
【0027】
本例の場合、角度θ1からθ4は同一角度であり、直線L1,L2,l3,L4,L5は、ノズルの配列方向において一定の間隔で位置する。また、柱11a,11gは、ノズルの配列方向に延在する同一の直線L11上に位置し、柱11b,11fは、ノズルの配列方向に延在する同一の直線L12上に位置し、柱11c,11eは、ノズルの配列方向に延在する同一の直線L13上に位置する。
【0028】
複数の柱11は、これらの柱11aから11gのような配列を繰り返すように、蛇行ラインに沿って等間隔に配列されている。
【0029】
また、本発明のフィルタは、最も中心間距離が短い柱同士の中心間距離の、前記複数の柱における総和が、中心間距離が最も長い2本の柱の中心間距離よりも長いことを特徴とする。本例においては、柱同士の距離関係がD1である柱同士の中心間距離の合計と、インクの供給方向と直交する方向において互いの中心間距離が最も長い2本の柱同士の中心間距離と、を比較した場合、前者が後者よりも長くなるように複数の柱が構成されている。より具体的には、
図5(a)のようにノズルが3つ構成されているとすれば、前者は、12箇所における中心間距離の合計であり、後者は、
図5(a)において最も上に記載されている柱と、
図5(a)において最も下に記載されている柱と、の中心間距離である。この場合、
図5(a)において最も上に記載されている柱、および
図5(a)において最も下に記載されている柱は、中心間距離が最も長い2本の柱である。
【0030】
図5(b)は、
図5(a)のVb−Vb線に沿う断面図である。互いに隣接する2つの柱11a,11b、ヒータボード1、および天板5によって形成される空間を通して、インクが供給される。円CAは、それらの柱11a,11bの間隔D1を直径とする仮想円である。間隔D1を超える直径の仮想の球体は、互いに隣接する柱11間を通過することができない。つまり、柱11は、最も近い柱同士の距離が流路の最小幅部より短く構成されている。
図5(c)は、
図4(b)のVc矢視図である。
図5(c)中の仮想円CBは、吐出口7を通過可能な最大の仮想球体の外周であり、その直径をD2とする。共通流路入口15から吐出口7までの間の流路においては、吐出口7の幅が最も小さい。したがって、直径がD2以下の球体は、共通流路入口15から吐出口7を通過可能であり、直径がD2を超える球体は通過することができない。D1とD2は、D1<D2の関係となっている。
【0031】
図6(a),(b)の左側は、共通流路12内のインクの流れ、および共通流路12内のインクがノズル内に流入する際の異物の挙動の説明図である。
図6(a),(b)中の矢印は、柱11間の隙間を通過可能な最大の異物の通過方向を示す。
【0032】
共通流路12内のインクは、隣接する柱11間の間隔D1の隙間を通ってインク流路3内に流入する。
図6(b)中の左側に示すように、ノズルの配列方向における所定の範囲DA内には、7つの柱11aから11gによって間隔D1の隙間が計6つ形成される。間隔D1の1つの隙間を通過する際のインクの流抵抗をRとした場合、範囲DA内の6つの隙間による総流抵抗RAは、下式(1)によりR/6となる。
RA=1/{(1/R)+(1/R)+(1/R)+(1/R)+(1/R)+(1/R)}
=R/6 ・・・(1)
【0033】
このように、ノズルの配列方向における所定の範囲内に柱間の隙間を多く形成するように、複数の柱を配列することにより、インクの流抵抗を小さく抑えることができる。そのためには、角度θを小さくして、直線L1,L2,l3,L4,L5の間隔を小さくすること、柱を配列する直線(L11,L12,L13,L14)の数を多くすることが有効となる。また、それらの線L1,L2,l3,L4,L5、および線L11,L12,L13,L14は、必ずしも直線でなくてもよく、例えば、湾曲または傾斜する線であってもよい。
【0034】
このように、ノズルの配列方向における所定の範囲内に柱間の隙間の数を多く形成することにより、共通流路12からインク流路3内に流動するインクの流抵抗を小さくして、共通流路12内のインクをインク流路3内にスムーズに供給することができる。したがって、柱間の隙間のいくつかに異物が捕捉された場合にもインクをインク流路3内にスムーズに供給することができる。
【0035】
仮に、
図6(b)の右側に示すように、柱11をノズルの配列方向に沿って直列的に配列させた場合には、範囲DA内に形成される柱間の隙間の数が少なくなる。なお、
図6(b)の右側は、本実施形態の柱とはことなる柱の配列であり、本実施形態に対する比較例として記載しているものである。例えば、範囲DA内に3つの隙間が形成された場合、その3つの隙間による総流抵抗RBは、下式(2)により、総流抵抗RAよりも大きいR/3となる。
RB=1/{(1/R)+(1/R)+(1/R)}
=R/3 ・・・(2)
【0036】
図6(a)のように、共通流路12内に直径がD1よりも大きい異物16が流入した場合、その異物16は、互いに隣接する柱11と、ヒータボード1と天板5で形成される断面間を通過できず、それらの間において捕捉される。したがって、その異物16は、インク流路3内への進入が阻止される。一方、直径がD1よりも小さい異物17が混入した場合、その異物17は、共通流路入口15から吐出口7に至る流路内において引っかかることなく導入され、最終的には、インク滴18と共に外部に排出される。
【0037】
(第2の実施形態)
図7は、本発明の第2の実施形態の記録ヘッドにおけるノズルと柱11の部分を天板5側から視た平面図である。
【0038】
本実施形態においては、1つのインク流路に対応するノズルの配列方向の範囲DBに、5つの柱11によって4つの隙間を形成するように、ノズル方向に蛇行しつつノズルの配列方向に延在する蛇行ラインに沿って柱11が配列されている。前述した実施形態と同様に、互いに隣接する柱11間は距離D1だけ離れている。
【0039】
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態の記録ヘッドにおけるノズルと柱11の部分を天板5側から視た平面図である。
【0040】
本実施形態においては、1つのインク流路に対応するノズルの配列方向の範囲DBに9つの柱11によって8つの隙間を形成するように、ノズル方向に蛇行しつつノズルの配列方向に延在する蛇行ラインに沿って柱11が配列されている。前述した実施形態と同様に、互いに隣接する柱11間は距離D1だけ離れている。
【0041】
(第4の実施形態)
図9は、本発明の第4の実施形態の記録ヘッドにおけるノズルと柱11の部分を天板5側から視た平面図である。
【0042】
本実施形態においては、前述した第2の実施形態と同様に、1つのインク流路に対応するノズルの配列方向の範囲DBに5つの柱11によって4つの隙間を形成するように、蛇行ラインに沿って柱11が配列されている。ただし本実施形態においては、インクの供給方向(
図8中の左方)に向かうにしたがって、互いに隣接する柱11間の距離D11,D12,D13,D14は小さく設定されている(D11>D12>D13>D14)。このように柱11間の距離を設定することにより、比較的大きな異物は、インクの供給方向の上流側に位置する柱11間において補足することができる。このように異物の大きさに応じて、その補足位置を異ならせることにより、共通液室からインク流路内の供給を確保しつつ異物を補足することができる。D11の部分の柱11間で捕捉された異物が、柱11間は通過せずに、さらに下流に流れていった場合、D12、D13、または、D14の柱11間で捕捉される場合がある。つまり、異物はより下流側の柱11間で捕捉される場合が多いので、捕捉された異物が後に流れてきた異物に押されて柱11間を通過しないように、下流側の柱11間ほど距離を小さく設定するとよい。
【0043】
(第5の実施形態)
図10は、本発明の第5の実施形態の記録ヘッドにおけるノズルと柱11の部分を天板5側から視た平面図である。
【0044】
本実施形態においては、ノズルの配列方向に沿って配列される柱11と、ノズルの配列方向に対して斜めに配列される柱11と、が形成されている。互いに隣接する柱11間は距離D1だけ離れている。
【0045】
(第6の実施形態)
図11は、本発明の第6の実施形態の説明図である。
図11(a)は、記録ヘッドにおけるノズルと柱11の部分を天板5側から視た平面図、
図11(b)は、
図11(a)のXIb−XIb線に沿う断面図、
図11(c)は、
図11(a)のXIc−XIc線に沿う断面図である。
【0046】
本実施形態においては、前述した第1の実施形態と同様に柱11が配列された上、ノズル入口14からヒータ2までの間の範囲A3内に位置するノズル側壁4に、その幅方向(ノズルの配列方向)に膨出する膨出部分4Aが形成されている。その膨出部分4Aの幅は、ノズル入口14側から吐出口7側に向かうにしたがって徐々に大きくなるように設定されている。共通流路入口15から吐出口7に至るまでの間の流路においては、その流路を形成するノズル側壁4,4の膨出部分4A,4A間の幅が最も小さい。したがって、
図11(c)のようにノズル側壁4,4の膨出部分4A,4Aに内接する直径D3の仮想円CCは、共通流路入口15から吐出口7に至るまでの間の流路を通過可能な仮想の最大球体の外周となる。距離D1、直径D3、および吐出口7を通過可能な仮想の最大球体の直径D2は、D1<D3<D2の関係となっている。
【0047】
(第7の実施形態)
図12は、本発明の第7の実施形態の記録ヘッドにおけるノズルと柱11の部分を天板5側から視た平面図である。
【0048】
本実施形態においては、第6の実施形態と同様にノズル側壁4に膨出部分4Aが形成された上、前述した第2の実施形態のように、1つのインク流路に対応する範囲DBに,5つの柱11によって4つの隙間が形成されている。
【0049】
(吐出エレメント101の製造方法)
次に、記録ヘッド100における吐出エレメント101の製造方法について説明する(
図13および
図14参照)。
【0050】
図13(a)から(e)は、製造段階における吐出エレメント101を吐出口7側から見るように断面した図である。
図14(a)から(e)は、それぞれ、対応する
図13(a)から(e)のXIV−XIV線に沿う断面図であり、製造段階における吐出エレメント101をノズルの長手方向に沿って断面した図である。本実施形態では、2つの吐出エレメント101を一体的に製造する段階を経てから、
図14(d)中の切断線CLに沿って切断されることにより、
図14(e)のような吐出エレメント101が2つ製造され、切断線CLに沿う切断面に吐出口7が形成される。吐出エレメントの製造方法は、本例の方法に限定されるものではなく、それを単体で製造する方法であってもよい。
【0051】
まずは、
図13(a)および
図14(a)のように、シリコンウエハからなるヒータボード1上に、半導体製造工程において用いる製造装置と同様の装置を用いて、ホウ化ハフニウムやチッ化タンタル等からなるヒータ2を形成する。ヒータボード1には、ヒータ2を選択的に駆動するためのスイッチングトランジスタ等の半導体素子を含む駆動回路を予め作り込んでおくことができる。その後、次の工程におけるヒータボード1と感光性樹脂フィルムとの密着性を向上させるために、ヒータボード1の表面を処理する。すなわち、ヒータボード1の表面を洗浄してから、紫外線−オゾン等による表面改質を行い、その後、その改質表面上に、例えばシランカップリング剤をエチルアルコールで1重量%に希釈した液をスピンコートする。
【0052】
次に、ヒータボード1の表面洗浄を行ってから、
図13(b)および
図14(b)のように、密着性が向上されたヒータボード1上に感光性樹脂フィルムDFをラミネートする。そして、フォトマスクを介して、ノズル側壁4および柱11として残す感光性樹脂フィルムDFの部分に、紫外線を照射する。
【0053】
次に、感光性樹脂フィルムDFをキシレンとブチルセルソルブアセテートとの混合液からなる現像液によって現像し、感光性樹脂フィルムDFの未露光部分を融解させる。これにより、
図13(c)および
図14(c)のように、ヒータボード1上に所望の形状のノズル側壁4と柱11が形成される。
【0054】
次に、
図13(d)および
図14(d)のように、ノズル側壁4の上に、感光性樹脂フィルムを材料とした天板接着層が予めラミネートされた天板5を溶着する。このとき、200℃程度のキュアを要する。
【0055】
以上の工程を経て2つの吐出エレメント101を一体的に製造した後に、
図13(e)および
図14(e)のように、それらの吐出エレメント101の吐出口7の突合せ面に対応する切断線CLに沿って切断する。これにより、それら2つの吐出エレメント101を分離する。例えば、厚さ0.05mmのダイヤモンドブレードを取り付けたダイシングマシンを用いて切断することにより、2つの吐出エレメント101を切り離す。その後、それらの切断面を平滑化するための研磨を行うことによって、吐出エレメント101が完成する。
【0056】
(他の実施形態)
複数の柱は、共通流路からインク流路(液流路)へのインクの供給方向の上流側および下流側に偏在するように配列することができればよく、そのインクの供給方向と直交する直交方向に対して交差する直線および曲線のラインに沿って配列することができる。そのラインは、インクの供給方向と直交する直交方向に対して異なる角度で交差する複数の部分を含んでもよい。
【0057】
本発明は、フルラインタイプの記録装置の他、記録ヘッドの移動と、記録媒体の搬送動作と、を伴って画像を記録するシリアルスキャンタイプの記録装置等、種々の記録方式の記録装置に対して適用することができる。
【0058】
また、本発明の液体吐出ヘッドは、インクを吐出可能なインクジェット記録ヘッドの他、種々の液体を吐出するためのヘッドとして広く適用することができる。例えば、液流路内に供給される種々の処理液や薬剤などを吐出するためのヘッドとして用いることもできる。また、本発明の液体吐出装置は、インクジェット記録ヘッドを用いるインクジェット記録装置の他、種々の処理液や薬剤などを処理部材に付与するための装置として、広く適用することができる。
【0059】
また、柱の形状は、円柱形状および三角柱形状のみに特定されず任意である。また柱の形成材料は、液流路と同じ形成材料(感光性樹脂材料など)とすることが好ましい。