特許第6189618号(P6189618)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6189618睡眠状態判断システムおよび睡眠状態判断システムの作動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189618
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】睡眠状態判断システムおよび睡眠状態判断システムの作動方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20170821BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   A61B5/16
   A61B5/10 310A
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-77204(P2013-77204)
(22)【出願日】2013年4月2日
(65)【公開番号】特開2014-200386(P2014-200386A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】594175249
【氏名又は名称】キッセイコムテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596033303
【氏名又は名称】株式会社アコーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田口 勇次郎
(72)【発明者】
【氏名】向當 さや香
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】原 稔
【審査官】 田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−055464(JP,A)
【文献】 特開2012−161548(JP,A)
【文献】 特開2012−187162(JP,A)
【文献】 特開2005−124858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/06 − 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の加速度を検出する3軸の加速度センサと、
該加速度センサにより検出された加速度に基づいて前記対象者の姿勢を判断する姿勢判断手段と、
前記加速度から前記対象者の運動量値を演算する演算手段と
を含む活動量計と、
前記活動量計から前記対象者の運動量値と姿勢の情報とを入力する入力手段と、
前記姿勢の情報から前記対象者が横になっていると判断された場合、前記運動量値に基づいて、前記対象者が覚醒しているかまたは睡眠中であるかを判定する覚醒/睡眠判定手段と
を含む睡眠状態判断装置と
を備え
前記演算手段は、前記加速度センサから出力される各軸方向の加速度信号について、第1の所定期間の平均値と直近の値との差を計算する処理と、前記計算の結果が所定の閾値以上である場合にカウンタを増分する処理とを、第2の所定期間繰り返し、前記カウンタの値に基づいて前記運動量値を演算することを特徴とする睡眠状態判断システム。
【請求項2】
前記覚醒/睡眠判定手段は、
前記姿勢の情報から前記対象者が横になっていると判断された時刻を含む所定の時間的範囲における運動量値を線形結合する結合手段と、
前記結合手段により線形結合された値と所定の閾値とを比較する比較手段と、
前記比較手段による比較の結果、前記線形結合された値が前記所定の閾値未満である場合に前記対象者が睡眠中であると判定する手段と
を含むことを特徴とする請求項1に記載の睡眠状態判断システム。
【請求項3】
前記睡眠状態判断装置は、前記対象者が覚醒しているかまたは睡眠中であるかの判定結果に関する情報を時刻と対応付けて記憶する記憶手段を更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の睡眠状態判断システム。
【請求項4】
前記睡眠状態判断装置は、前記運動量値と、前記姿勢の情報と、前記対象者が覚醒しているかまたは睡眠中であるかの判定結果に関する情報とを時刻の情報と対応付けて表示する表示手段を更に含むことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の睡眠状態判断システム。
【請求項5】
活動量計の3軸の加速度センサが、対象者の加速度を検出するステップと、
前記活動量計の姿勢判断手段が、前記加速度センサにより検出された加速度に基づいて前記対象者の姿勢を判断するステップと、
前記活動量計の演算手段が、前記加速度から前記対象者の運動量値を演算するステップと、
睡眠状態判断装置が、前記活動量計から前記対象者の運動量値と姿勢の情報とを入力するステップと、
前記睡眠状態判断装置が、前記姿勢の情報から前記対象者が横になっていると判断された場合、前記運動量値に基づいて、前記対象者が覚醒しているかまたは睡眠中であるかを判定するステップと
を備え
前記運動量値を演算するステップにおいて、前記加速度センサから出力される各軸方向の加速度信号について、第1の所定期間の平均値と直近の値との差を計算する処理と、前記計算の結果が所定の閾値以上である場合にカウンタを増分する処理とを、第2の所定期間繰り返し、前記カウンタの値に基づいて前記運動量値を演算することを特徴とする睡眠状態判断システムの作動方法。
【請求項6】
前記判定するステップは、
前記姿勢の情報から前記対象者が横になっていると判断された時刻を含む所定の時間的範囲における運動量値を線形結合するステップと、
前記線形結合するステップにより線形結合された値と所定の閾値とを比較するステップと、
前記比較するステップによる比較の結果、前記線形結合された値が前記所定の閾値未満である場合に前記対象者が睡眠中であると判定するステップと
を含むことを特徴とする請求項5に記載の睡眠状態判断システムの作動方法。
【請求項7】
前記睡眠状態判断装置が、前記対象者が覚醒しているかまたは睡眠中であるかの判定結果に関する情報を時刻と対応付けて記憶装置に記憶するステップを更に備えたことを特徴とする請求項5または6に記載の睡眠状態判断システムの作動方法。
【請求項8】
前記睡眠状態判断装置が、前記運動量値と、前記姿勢の情報と、前記対象者が覚醒しているかまたは睡眠中であるかの判定結果に関する情報とを時刻の情報と対応付けて表示装置に表示するステップを更に備えたことを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載の睡眠状態判断システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は睡眠状態判断システムおよび睡眠状態判断方法に関し、特に、対象者に装着された活動量計により計測された情報に基づいて睡眠状態を判断する睡眠状態判断システムおよび睡眠状態判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対象者に活動量の計測機器を装着し、当該計測機器により計測された活動量に基づいて、睡眠状態を検出または推定する技術が知られている。
【0003】
このような計測機器として、例えば3軸の加速度センサを内蔵したものがある。対象者の動きに応じて変化する加速度センサからの出力値は、対象者の姿勢を判断して、睡眠の深さや睡眠中の活動を推定するために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−148829号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Minori Enomoto他、“Newly developed waist actigraphy and its sleep/wake scoring algorithm”,Sleep and Biological Rhythms,Japanese Society of Sleep Research, 2009;7;17−22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
対象者の睡眠状態を観察するにあたっては、対象者の睡眠時間の長さを正確に計測することが重要である。
【0007】
しかしながら、就床時刻および離床時刻等の、対象者の睡眠と覚醒のタイミングを正確に判断することは非常に難しい。例えば、計測機器が睡眠中に対象者の動作を検出した場合、その動作が寝返りであるかまたは覚醒したのかを判断することは困難である。特に、対象者の活動量が低下しているときは、睡眠状態の判断において誤認が起こりやすいという問題があった。
【0008】
したがって、対象者の睡眠時間の長さを正確に計測するために、睡眠と覚醒のタイミングを正確に判断する手法が望まれている。
【0009】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、睡眠と覚醒を正確に判断することができる睡眠状態判断システムおよび睡眠状態判断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明では、対象者の姿勢の判断処理と睡眠・覚醒の判断処理とを区別することにより、簡易な計算で正確に睡眠状態を判断することを可能とする。
【0011】
本発明に係る睡眠状態判断システムは、対象者の加速度を検出する加速度センサと、該加速度センサにより検出された加速度に基づいて前記対象者の姿勢を判断する姿勢判断手段と、前記加速度から前記対象者の運動量値を演算する演算手段とを含む活動量計と、前記活動量計から前記対象者の運動量値と姿勢の情報とを入力する入力手段と、前記姿勢の情報から前記対象者が横になっていると判断された場合、前記運動量値に基づいて、前記対象者が覚醒しているかまたは睡眠中であるかを判定する覚醒/睡眠判定手段とを含む睡眠状態判断装置とを備える。
【0012】
ここで、前記覚醒/睡眠判定手段は、前記姿勢の情報から前記対象者が横になっていると判断された時刻を含む所定の時間的範囲における運動量値を線形結合する結合手段と、前記結合手段により線形結合された値と所定の閾値とを比較する比較手段と、前記比較手段による比較の結果、前記線形結合された値が前記所定の閾値未満である場合に前記対象者が睡眠中であると判定する手段とを含むものとすることができる。
【0013】
また、前記睡眠状態判断装置は、前記対象者が覚醒しているかまたは睡眠中であるかの判定結果に関する情報を時刻と対応付けて記憶する記憶手段を更に含むものとすることができる。
【0014】
また、前記睡眠状態判断装置は、前記運動量値と、前記姿勢の情報と、前記対象者が覚醒しているかまたは睡眠中であるかの判定結果に関する情報とを時刻の情報と対応付けて表示する表示手段を更に含むものとすることができる。
【0015】
本発明の別の態様によれば、本発明に係る睡眠状態判断方法は、活動量計の加速度センサが、対象者の加速度を検出するステップと、前記活動量計の姿勢判断手段が、前記加速度センサにより検出された加速度に基づいて前記対象者の姿勢を判断するステップと、前記活動量計の演算手段が、前記加速度から前記対象者の運動量値を演算するステップと、睡眠状態判断装置が、前記活動量計から前記対象者の運動量値と姿勢の情報とを入力するステップと、前記睡眠状態判断装置が、前記姿勢の情報から前記対象者が横になっていると判断された場合、前記運動量値に基づいて、前記対象者が覚醒しているかまたは睡眠中であるかを判定するステップとを備える。
【0016】
本発明の他の態様によれば、本発明に係る睡眠状態判断装置は、加速度センサを含む活動量計により計測された対象者の運動量値と姿勢の情報とを用いて前記対象者の睡眠状態を判断する睡眠状態判断装置であって、前記対象者の運動量値と姿勢の情報とを入力する入力手段と、前記姿勢の情報から前記対象者が横になっていると判断された場合、前記運動量値に基づいて、前記対象者が覚醒しているかまたは睡眠中であるかを判定する覚醒/睡眠判定手段とを備える。
【0017】
本発明の他の態様によれば、本発明に係る睡眠状態判断方法は、加速度センサを含む活動量計により計測された対象者の運動量値と姿勢の情報とを用いて前記対象者の睡眠状態を判断する装置により実行される睡眠状態判断方法であって、前記対象者の運動量値と姿勢の情報とを入力するステップと、前記姿勢の情報から前記対象者が所定の期間を超えて横になっていると判断された場合、前記運動量値に基づいて、前記対象者が覚醒しているかまたは睡眠中であるかを判定するステップとを備える。
【0018】
本発明の他の態様によれば、本発明に係る活動量計は、コンピュータを、上記の睡眠状態判断装置として機能させる。
【0019】
本発明の他の態様によれば、本発明に係る活動量計は、前記対象者の加速度を検出する加速度センサと、該加速度センサにより検出された加速度に基づいて前記対象者の姿勢を判断する姿勢判断手段と、前記加速度から前記対象者の運動量値を演算する演算手段と、前記対象者の運動量値と姿勢の情報とを、前記対象者の睡眠状態を判断するための情報として出力する出力手段とを備える。
【0020】
本発明の他の態様によれば、本発明に係る活動量計測方法は、加速度センサを含む活動量計により実行される活動量計測方法であって、前記加速度センサにより対象者の加速度を検出するステップと、該加速度センサにより検出された加速度に基づいて前記対象者の姿勢を判断するステップと、前記加速度から前記対象者の運動量値を演算するステップと、前記対象者の運動量値と姿勢の情報とを、前記対象者の睡眠状態を判断するための情報として出力するステップとを備える。
【0021】
本発明の他の態様によれば、本発明に係るコンピュータプログラムは、加速度センサに接続されたコンピュータを、上記の活動量計として機能させる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、対象者の姿勢の判断処理と、睡眠/覚醒の判定処理とを区別することにより、簡易な計算で対象者の睡眠状態を正確に判断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る活動量計の機能構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る睡眠状態判断システムの外観構成を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る睡眠状態判断システムに含まれる睡眠状態判断装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る運動量値の計算方法を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る活動量計の外観斜視図であり、(a)は活動量計本体の図、(b)は活動量計を対象者に装着する態様を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る活動量計の外観図であり、(a)は正面図、(b)は側面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る活動量計が正面に直交する軸の周りに360°回転した場合に対象者の姿勢を判断する方法を説明する図である。
図8】本発明の一実施形態に係る活動量計が側面に直交する軸の周りに360°回転した場合に対象者の姿勢を判断する方法を説明する図である。
図9】本発明の一実施形態に係る睡眠状態判断装置において対象者の覚醒/睡眠を判定する方法を説明する図である。
図10】本発明の一実施形態に係る睡眠状態判断装置において実行される覚醒/睡眠を判定する方法を示すフローチャートである。
図11】本発明の一実施形態に係る睡眠状態判断装置による計測情報の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る活動量計100の回路構成を示すブロック図である。
【0026】
活動量計100は、対象者の活動量および姿勢を計算し記憶する機能と、記憶された情報を送信する機能とを有する。同図に示すように、活動量計100は、センサ部102と、プロセッサ108と、入力部104と、記憶部110に含まれた運動データ記憶部114およびプログラム記憶部116と、表示部112と、通信部106と、表示部112とから構成される。
【0027】
センサ部102は、活動量計100の動き(活動量計100を装着している対象者の動き)を検出するものであり、直交する3軸の加速度を検出して加速度信号を出力する加速度センサを含んでいる。
【0028】
記憶部110は、EEPROMやフラッシュメモリの様な不揮発性記憶素子により構成され、プログラム記憶部116および運動データ記憶部114を含んでいる。
【0029】
プロセッサ108は、活動量計100全体の動作を制御すると共に、体動信号および/または予め記憶された個人データから運動データを計算し、記憶部110の運動データ記憶部114に記憶するものである。この運動データには、センサ部102から出力された体動信号に基づく運動量値と、対象者の姿勢の情報とを含む。
【0030】
通信部106は、外部機器として構成されるリーダライタを通じて近接通信を行なって、睡眠状態判断装置に情報を送信し、また睡眠状態判断装置から情報を受信する。
【0031】
ここで、活動量計100から睡眠状態判断装置に送信されるデータには、運動データ記憶部114に記憶された運動データが含まれる。
【0032】
また、活動量計100が睡眠状態判断装置から受信するデータには、個人データ等が含まれる。
【0033】
本実施形態において、リーダライタは電磁波を発生することにより、RF(Radio Frequency)フィールド(磁界)を形成する。通信部106をリーダライタに近づけると、電磁誘導によって電源の供給を受け、リーダライタとの間でデータ伝送を行なう。リーダライタは、自身が発生する電磁波を変調することにより、活動量計100にデータを送信する。通信部106では、リーダライタが発生する電磁波を負荷変調することにより、リーダライタにデータを発信することができる。
【0034】
なお、非接触の通信手段として、赤外線通信、近距離無線通信のブルートゥース(Bluetooth(登録商標))、微弱電力型無線通信装置等の種々の送受信方式を採用することとしてもよい。
【0035】
表示部112は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等により構成され、入力部104から入力された信号や、運動データ記憶部114に記憶された運動データに関する情報を表示するものである。
【0036】
プログラム記憶部116は、コンピュータを本実施形態に係る活動量計として機能させるためのプログラムを記憶する。本実施形態において活動量計100により実行される諸機能は、プログラム記憶部116に記憶されたプログラムをロードしたプロセッサ108が、このプログラムに含まれるコンピュータ読取可能な命令を実行することにより達成されるものである。
【0037】
図2は、活動量計100と、睡眠状態判断装置200およびリーダライタ202とから構成される睡眠状態判断システムの外観構成を示す図である。
【0038】
活動量計100は対象者(被験者)に装着され、センサ部102から出力される体動信号に基づいて対象者の運動量値および姿勢を定期的に計測し、計測結果を運動データとして運動データ記憶部114に記憶する。
【0039】
ここで、運動データは、対象者または機器自体に割り当てられた固有のIDに対応付けて記憶することができる。
【0040】
対象者が睡眠状態判断装置200を使用して運動データを表示させる場合、図2に示すように活動量計100を睡眠状態判断装置200に接続されたリーダライタ202にかざすか、またはリーダライタ202に近づける。すると、プロセッサ108によって記憶部110の運動データ記憶部114から運動データが読み出される。読み出された運動データは、通信部106によってリーダライタ202を経由し、睡眠状態判断装置200に送信される。睡眠状態判断装置200ではプログラムの実行に基づいて運動データを画像処理し、ディスプレイ上に処理結果の画像を表示する。
【0041】
図3は、本実施形態に係る睡眠状態判断装置200のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0042】
睡眠状態判断装置200は、活動量計100から受信した活動量と姿勢の情報に基づいて覚醒/睡眠の判定を行う機能を有する。同図に示すように、睡眠状態判断装置200は、中央処理装置(CPU)318と、一時記憶領域であるRAM304と、プログラムやデータを記憶したROM306と、リーダライタ202に接続可能な通信インタフェース(I/F)316と、CD−ROMに記憶されたデータを読み出すためのCD−ROMドライブ(DRV)308とが、バス302に接続されている。また、バス302には、補助記憶装置としてのハードディスク(HD)322が接続されている。また、データ等の入力操作に使用されるキーボード312およびマウス314がキーボード/マウス制御(CTRL)部310を介してバス302に接続されている。
【0043】
ハードディスク322およびROM306には、本発明に係わる処理を実行するためのプログラムや、このプログラムによって参照されるデータが記憶されている。本実施形態において睡眠状態判断装置200により実行される諸機能は、ROM306やハードディスク322等に記憶されたプログラムをロードしたCPU318が、このプログラムに含まれるコンピュータ読取可能な命令を実行することにより達成されるものである。
【0044】
プログラムには、睡眠状態判断装置200が対象者の運動データに関する情報を表示する装置として機能するために実行されるアプリケーションプログラム、リーダライタ202を介してデータの送受信を行うための通信プログラム、LCD320に表示するためのコンテンツ等が含まれる。
【0045】
また、ハードディスク322には、活動量計100から受信した運動データを蓄積した
データの集合(データベース)が構築されている。
【0046】
このような構成をとることにより、睡眠状態判断装置200では、通信I/F316を介して活動量計100から固有のIDと共に運動データを受信した場合、CPU318はそのIDに対応付けて運動データを上記のデータベースに記憶する。また、上記のアプリケーションの実行中に自動的に、またはキーボード312またはマウス314の操作を通じて対象者からデータ処理の指示を受けた場合、上記のデータベースに記憶されたデータを読み出して当該データに基く計算処理を実行する。計算結果は、LCD320に表示させることによって対象者に提供することができる。
【0047】
この睡眠状態判断装置200は、例えば、ノートパソコン等のPC(Personal Computer)、携帯電話機、情報通信端末(PDA:Personal Digital Assistant)、PHS(Personal Handyphone System)、ポータブルナビゲーション装置、ゲーム機等により構成することができる。
【0048】
次に、本実施形態に係る活動量計100において対象者の運動量値および姿勢を計算する処理について説明する。
【0049】
図4は、活動量計100において実行される運動量値の計算方法の処理フローである。
【0050】
まず、ステップS4002において運動カウンタUkおよび時間値tを初期化する。
【0051】
次いで、ステップS4006において、3軸の加速度センサにより構成されたセンサ部102からx、y、z軸方向の加速度信号を取り込み記憶する。本実施形態では、加速度信号を取り込む周期tsを125msに設定した例を説明するが、周期tsは、例えば数十ms〜数百msとすることができる。
【0052】
このように125ms毎に加速度信号をi回取り込むと、結果として以下の複数の加速度信号の値が得られる。
【0053】
x軸方向の加速度信号:x1、x2、x3、・・・、xi
y軸方向の加速度信号:y1、y2、y3、・・・、yi
z軸方向の加速度信号:z1、z2、z3、・・・、zi
次いで、ステップS4010において、記憶されたx、y、z軸方向のそれぞれの加速度信号の値について、過去8回(すなわち過去1秒間)の平均値と直近の値との差の絶対値を計算し、結果をそれぞれx比較値、y比較値、z比較値とする。比較値は、以下の式により求めることができる。
【0054】
【数1】
【0055】
【数2】
【0056】
【数3】
【0057】
次いで、ステップS4012において、上記のように求めたx比較値、y比較値、z比較値のいずれかが一定値Th以上であるか比較する。一定値Th以上の場合(YESルート)はステップS4014へ進み、運動ありとして運動カウントUkに一定値を加算する。例えば、運動カウントUkの計算を以下の式により行う。
Uk=Uk+0.5
【0058】
ここで、運動カウントUkは、Th以上である比較値の個数に応じて増加させることとしてもよい。例えば、x、y、z比較値のいずれか1つがTh以上であればUk=Uk+1とする。また、x、y、z比較値のうち2つがThであれば、Uk=Uk+2とする。さらに、x、y、z比較値の全てがTh以上であれば、Uk=Uk+3とする。
【0059】
一方、ステップS4012で3軸の比較値が全て一定値Th未満の場合(NOルート)は、ステップS4016へ進む。
【0060】
ステップS4016では時間値tと閾値Tとを比較する。時間値tが閾値T以上の場合(YESルート)は、ステップS4018へ進む。一方、時間値tが閾値T未満の場合(NOルート)はステップS4006に戻る。
【0061】
本実施形態では、閾値Tを2分と設定した例を説明するが、時間Tは数秒から数分の値をとることができる。
【0062】
ステップS4018では、運動カウントUkから運動量値Mcを算出する。例えば、周期ts=125(ms)、閾値T=2(min)、n=8とした場合、以下のテーブルを参照して、運動カウントUkに対応する運動量値Mcを取得する。
【0063】
【表1】
【0064】
上記の算出処理により、32段階の運動量値Mcが得られる。
【0065】
なお、運動量値Mcの値は32段階に限定されるものではなく、テーブルの値は上記の例に限定されるものでもない。また、運動量値の算出においてはテーブルを参照せずに計算式を用いて行うこととしても良い。例えば、運動量値Mcを以下の式により求めることとしても良い。
Mc=sqrt(Uk*4)−1
【0066】
最後に、ステップS4020へ進み、現在の時刻における対象者の姿勢を判断した後、ステップS4002に戻る。
【0067】
以上の処理により、2分ごとに運動カウントUkが算出され、対象者の姿勢の情報が生成される。
【0068】
次に、図5〜8を参照し、本実施形態に係る活動量計100において対象者の姿勢を判断する基本原理について説明する。
【0069】
図5(a)は、活動量計100の外観斜視図であり、図5(b)は対象者に活動量計を装着する態様を示す外観斜視図である。
【0070】
活動量計100には、図5(a)に示すように直交する3つの軸が対応付けられる。使用の際には、図5(b)に示すように、ベルト等で対象者の胴体(例えば腰の部分)に装着される。
【0071】
上述したように、活動量計100では、周期的にセンサ部102から3軸の加速度信号が出力される。プロセッサ108では、出力された計測結果に基づいて運動量値および対象者の姿勢を判断する。
【0072】
図6(a)は活動量計100の正面図、図6(b)は活動量計100の側面図である。
【0073】
本実施形態では、以下の表に示すように、対象者の姿勢として、立位、倒立位、仰臥位、左仰臥位、右仰臥位、伏臥位の6種類の姿勢が定義される。この定義に対応して、活動量計100を含む空間を6つの領域に分類する。そして、2分間のうちに、重力方向が最も長い時間含まれていた領域から対象者の姿勢を判断する。
【0074】
具体的には、概略直方体として構成される活動量計100の6つの面に1〜6の姿勢番号が割り当てられる。姿勢番号と姿勢の種類との対応関係の情報は、記憶部110に記憶される。
【0075】
【表2】
【0076】
図7は、活動量計100が正面に垂直な軸の周りに(すなわちx−y平面上で)360°回転した場合における対象者の姿勢を判断する方法の例を説明する図である。図6(a)に示すx−y平面は、図7(a)のグラフに示すように4つの領域に分割される。この4つの領域には、それぞれ以下の表に示すように姿勢1〜4が割り当てられている。姿勢1〜4と角度との対応関係の情報は、記憶部110に記憶されている。
【0077】
【表3】
【0078】
活動量計100のプロセッサ108は、センサ部102から出力される加速度信号から判断される重力方向を例えば5°毎の精度で測定し、過去2分間のうちに、重力方向が4つの領域のうちのいずれの領域に最も長く位置したかを判断する。例えば、図7(a)の中心から右下へ向かう矢印は、重力方向が姿勢3に割り当てられた領域に位置していると判断される。
【0079】
このようにして、図7(b)に示すような活動量計100の向きの変化が判断される。結果として、活動量計100を装着した対象者が姿勢1〜4のうちのいずれの姿勢であるかを判断することができる。
【0080】
図8は、活動量計100が側面に直交する軸の周りに(すなわちy−z平面上で)360°回転した場合に対象者の姿勢を判断する方法の例を説明する図である。図6(b)のy−z平面は、図8(a)のグラフに示すように4つの領域に分割される。この4つの領域には、それぞれ以下の表に示すように姿勢2、6、1、および5が割り当てられている。姿勢2、6、1、および5と角度との対応関係の情報は、記憶部110に記憶される。
【0081】
【表4】
【0082】
活動量計100のプロセッサ108は、センサ部102の出力値から判断される重力方向を例えば5°毎の精度で測定し、過去2分間のうちに、重力方向が4つの領域のうちのいずれの領域に最も長く位置したかを判断する。例えば図8(a)の中心から右下へ向かう矢印は、重力方向が姿勢5に割り当てられた領域に位置していると判断される。
【0083】
このようにして、活動量計100の図8(b)に示すような向きへの変化が判断される。結果として、活動量計100を装着した対象者が姿勢2、6、1、および5のうちのいずれの姿勢であるかを判断することができる。
【0084】
以上説明したように、センサ部102から出力された加速度信号の値は運動量値に変換され、この運動量値が時刻の情報と対応付けて運動データ記憶部114に蓄積・記憶される。さらに、活動量計100では蓄積された情報に基づいて2分毎に対象者の姿勢を判断し、その判断結果を時刻と対応付けて運動データ記憶部114に蓄積・記憶する。
【0085】
活動量計100は、図2を参照して上述した方法を使用して、対象者の運動量値と姿勢の情報とを、前記対象者の睡眠状態を判断するための情報として出力する。睡眠状態判断装置200は、活動量計100に蓄積された情報を受信し、当該情報を使用して、対象者が覚醒しているか睡眠中であるかを判定することができる。
【0086】
次に、図9を参照し、各時刻において対象者が覚醒しているかまたは睡眠中であるかを判定する方法について説明する。
【0087】
同図に示すグラフにおいて、横軸は時刻、縦軸はセンサ部102からの出力値を表す。即ち、同図に示す例では、0:00〜0:12の時間的範囲で7回分の運動量値を求めている。
【0088】
本実施形態において、覚醒/睡眠の判定においては、活動量計100から運動量値の中から連続する5個の運動量値を用いている。1回目の判定においては、0:04における対象者の覚醒/睡眠を判定するために、0:04の測定値と前後の4つの値(すなわち0:00〜0:08の5個の運動量値)を、Z値を求めるための次の式に適用する。
Z=0.208742X−2+0.200402X−1+0.304441X+0.128205X+1+0.153489X+2
【0089】
ここで、X−2は0:00における運動量値、X−1は0:02における運動量値、X=0:04における運動量値、X+1は0:06における運動量値、X+2は0:08における運動量値、のように値を代入する。
【0090】
そして、Z値が1以上であれば覚醒と判定し、Z値が1未満であれば睡眠中と判定する。
【0091】
2回目の判定においては、0:06における対象者の姿勢を測定するために、0:06の運動量値と前後の4つの運動量値(すなわち0:02〜0:10の5個の運動量値)を、Z値の式に適用する。
【0092】
ここで、X−2は0:02における運動量値、X−1は0:04における運動量値、Xは0:06における運動量値、Xは0:08における運動量値、X+2は0:10における運動量値、のように値を代入する。
【0093】
そして、Z値が1以上であれば0:06では覚醒と判定し、Z値が1未満であれば0:06では睡眠中と判定する。
【0094】
同様に、3回目の測定においては、0:08における対象者の姿勢を測定するために、0:08の出力値と前後の4つの出力値(すなわち0:04〜0:12の5個の出力値)を、Z値の式に適用する。
【0095】
ここで、X−2は0:04における出力値、X−1は0:06における出力値、Xは0:08における出力値、Xは0:10における出力値、X+2は0:12における出力値、のように値を代入する。
【0096】
そして、Z値が1以上であれば0:08では覚醒と判定し、Z値が1未満であれば0:08では睡眠中と判定する。
【0097】
このようにして、図9に示す例では2分毎に着目する時刻を順に進め、その時刻において対象者が覚醒していたか、または睡眠中であったかを判定することができる。
【0098】
次に、図10を参照して、睡眠状態判断装置200において実行される覚醒/睡眠の判定方法8000について説明する。
【0099】
ステップS8002において、時刻tにおける姿勢の情報から、対象者が横になっているかどうか判断する。この判断は、姿勢番号が3、4、5、6のいずれかに該当するかどうかにより判断される.
対象者が横になっていないと判断した場合(ステップS8002のNOルート)は、ステップS8012に進み、着目する時刻tを2分進める。
【0100】
一方、対象者が横になっていると判断した場合(ステップS8002のYESルート)は、ステップS8004に進んでZ値を計算する。次いで、ステップS8006に進み、計算されたZ値と1とを比較することにより、覚醒/睡眠の判定を行う。そして、ステップS8008に進み、覚醒/睡眠の判定結果を時刻と対応付けて記録する。
【0101】
次いで、ステップS8010に進み、運動量値Mcが残っているか判断する。そして、覚醒/睡眠を判定するための運動量値が残っていなければ(NOルート)処理を終了する。一方、覚醒/睡眠を判定するための運動量値が残っている場合は、ステップS8012に進み、着目する時刻tを2分進める。その後、ステップ8002に戻る。
【0102】
このようにして、対象者が横になっている場合に、覚醒しているかまたは睡眠中であるかを判定することができる。
【0103】
上記の方法で蓄積・記憶された運動データは、32段階の運動量値、対象者の姿勢に関する情報、および対象者の睡眠/覚醒の判定結果の情報を含む。これらの情報は、時刻の情報と関連づけて記憶される。睡眠状態判断装置200は、これらの情報に基づいて画像処理を行い、運動データをLCD320上に表示させる。
【0104】
図11は、睡眠状態判断装置200のLCD320上における運動データの表示例を示す。ここで表示に使用されるデータは、対象者の姿勢の判断に関する情報、および対象者の睡眠/覚醒の判定に関する情報を含んでいる。同図において、横軸は時刻、縦軸は出力値を表す。破線により囲まれた部分は対象者の姿勢判断情報の表示例を示す。ここで、白は立位状態を示し、仰臥位、左側臥位が色分けして表示されている。また、ハッチング1002は、対象者が睡眠状態であると判断されたことを示している。
【0105】
図11において、0:00から6:00までの間、2分毎に上述した手法により活動量計100の重力方向を求め、対象者の姿勢を判断する。同図に示す例では、0:40を過ぎた時点で対象者は仰臥位となり、次いで2:15を過ぎた時点で左側臥位に変化し、3:00を過ぎた時点で仰臥位に戻り、5:00前に再び左側臥位に変化している。
【0106】
そして、5:30を過ぎたところで立位と判断されている。一方、覚醒/睡眠の判定においては、立位と判断される前に覚醒との判定が行われている。
【0107】
したがって、対象者の姿勢の判断と、覚醒/睡眠の判定とを区別することによって、正確な睡眠状態の判断が可能となる。
【実施例】
【0108】
上述の実施形態に係る姿勢の判断方法において、3軸の加速度センサから125ms間隔で2分間分の出力値を取得して運動量値を求める方法を採用し、当該運動量値から、覚醒/睡眠の判定を行った。
【0109】
対象者の脳波を測定して得られた覚醒/睡眠の判定結果と比較したところ、本実施例の方法によれば、約87.4%の精度で覚醒/睡眠を判定できることが確認された。
【0110】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の形態に限らず、他の様々な形態でも実施できることはいうまでもない。そして、このような他の実施形態もまた、本発明の範囲を逸脱しない限り請求項の範囲に属するものである。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、対象者の姿勢、睡眠/覚醒、日中の活動状況を観察する活動量計を用いたシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
100 活動量計
102 センサ部
104 入力部
106 通信部
108 プロセッサ
110 記憶部
112 表示部
114 運動データ記憶部
116 プログラム記憶部
200 睡眠状態判断装置
202 リーダライタ
304 RAM
306 ROM
308 CD−ROMドライブ
310 キーボード/マウス制御部
312 キーボード
314 マウス
316 通信インタフェース
318 CPU
320 LCD
322 ハードディスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11