(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189631
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】地盤の改良工法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/10 20060101AFI20170821BHJP
B09C 1/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
E02D3/10 102
B09B5/00 SZAB
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-101291(P2013-101291)
(22)【出願日】2013年5月13日
(65)【公開番号】特開2014-221981(P2014-221981A)
(43)【公開日】2014年11月27日
【審査請求日】2016年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】599090062
【氏名又は名称】株式会社アサヒテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】高橋 茂吉
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 哲二
【審査官】
大熊 靖夫
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−225143(JP,A)
【文献】
特開2009−095784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に所定間隔をあけて複数本の管体を設置して、
前記管体として、水と空気の流通を可能とする多孔部が下部に備えられる管体を用いるとともに、
地上に配置された、前記管体に圧縮空気を供給するコンプレッサと、前記管体に負圧を作用させて水を吸引する揚水ポンプと、前記管体に負圧を作用させて空気を吸引する真空ポンプと、を用い、
地上の前記コンプレッサの駆動により前記管体に圧縮空気を供給して、前記管体の下部の前記多孔部から地中に圧縮空気を送り続けることで、地中の水圧を空気圧により加圧状態とした後、
地上の前記揚水ポンプ及び前記真空ポンプの駆動により前記管体に負圧を作用させて、前記管体の下部の前記多孔部から地中の水と空気を吸引することで、地下水位を下げると同時に、地中を負圧化することを特徴とする地盤の改良工法。
【請求項2】
前記地中に圧縮空気を送り続ける工程と前記地中の水と空気を吸引する工程を繰り返して行うことを特徴とする請求項1に記載の地盤の改良工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空気化による軟弱地盤の改良工法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は特許文献1において地盤の改良工法を提案した。
この工法は、SWP(スーパーウェルポイント)を用いて飽和地下水を負圧伝播で揚水することで、主に目的のエリアのみ集中してスポット的に水位低下が望め不飽和ゾーンを作り出す。その後、SWPのバキユームポンプや、ボルテックスポンプを用いて、不飽和ゾーンの範囲で真空気化を促進して水分の除去やVOCs(揮発性有機化合物)、油分など気化性のものを地中から除去し、地盤改良や土壌浄化を進める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−303095(特許第4114944号)公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、SWP工法では、大規模な井戸を設置する必要があった。
【0005】
本発明の課題は、比較的簡易な管体を地盤に設置することで、地下水位を下げると同時に、地中を負圧化して、真空気化による油分やVOC等の除去を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
地盤に所定間隔をあけて複数本の管体を設置して、
前記管体として、水と空気の流通を可能とする多孔部が下部に備えられる管体を用いるとともに、
地上に配置された、前記管体に圧縮空気を供給するコンプレッサと、前記管体に負圧を作用させて水を吸引する揚水ポンプと、前記管体に負圧を作用させて空気を吸引する真空ポンプと、を用い、
地上の前記コンプレッサの駆動により前記管体に圧縮空気を供給して、前記管体の下部
の前記多孔部から地中に圧縮空気を送り続けることで、地中の水圧を空気圧により加圧状態とした後、
地上の前記揚水ポンプ及び前記真空ポンプの駆動により前記管体に負圧を作用させて、前記管体の下部
の前記多孔部から地中の水と空気を吸引することで、地下水位を下げると同時に、地中を負圧化する、地盤の改良工法を特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の地盤の改良工法であって、
前記地中に圧縮空気を送り続ける工程と前記地中の水と空気を吸引する工程を繰り返して行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、比較的簡易な管体を地盤に設置することで、地下水位を下げると同時に、地中を負圧化して、真空気化による油分やVOC等を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明を適用した一実施形態の工法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態を詳細に説明する。
(実施形態)
図1は本発明を適用した一実施形態の工法を示すもので、1は鋼矢板、2は管体、3は接続管、4は揚水ポンプ、5は接続ホース、6は真空ポンプ、7は接続ホース、8は気液分離槽、9は接続ホース、10は活性炭槽、11は接続ホース、12は水処理プラント、13は接続ホース、14は接続ホース、15はコンプレッサである。
【0013】
図示のように、本発明の地盤改良工法を適用する軟弱な対象地盤は、周囲に鋼矢板1を設置して覆われて大気に開放されており、所定間隔をあけて複数本の管体2がそれぞれ設置されている。管体2は、上下端が開口し、下部に水と空気の流通を可能とする多孔部2aを備えている。
【0014】
そして、管体2の上端に開閉バルブ2bを介して接続管3が接続され、接続管3に揚水ポンプ4が接続されている。揚水ポンプ4の上部に接続ホース5を介して真空ポンプ6が接続され、真空ポンプ6に接続ホース7及び開閉バルブ7aを介して気液分離槽8が接続されている。気液分離槽8の上部に接続ホース9及び開閉バルブ9aを介して活性炭槽10が接続され、活性炭槽10で浄化された空気は上部に設けた排気管10aから排気される。
【0015】
また、揚水ポンプ4の上部には、接続ホース11及び開閉バルブ11aを介して水処理プラント12が接続されている。水処理プラント12には、気液分離槽8の底部に開閉バルブ8aを介して接続した接続ホース13も接続されている。水処理プラント12からは処理後の水が排水される。
【0016】
また、接続管3には、接続ホース14及び開閉バルブ14aを介してコンプレッサ15が接続されている。
【0018】
1)先ず、コンプレッサ15を駆動し、接続ホース14及び接続管3を経て管体2に圧縮空気を供給して、管体2の下部の多孔部2a及び下端開口から地中に圧縮空気を送り続ける。その空気圧により地中の水圧は加圧状態となる。
【0019】
ここで、他の管体を設置することで、エアーリフトだけでも揚水は可能となるが、その場合、空気と水がスイングすることになる。
また、地下水の揚水は主にコンプレッサ15の圧力による揚圧力を利用する。
そして、バキューム吸引力は地下水に負圧伝播を加えることを主として作用させる。
【0020】
2)次に、コンプレッサ15を停止し、揚水ポンプ4と真空ポンプ6を駆動して、接続ホース5及び接続管3を経て管体2に負圧を作用させて、管体2の下部の多孔部2a及び下端開口から地中の水と空気を吸引する。こうして不飽和地盤を負圧化し、真空気化で油分やVOC等を除去する。
【0021】
以上の地中に圧縮空気を送り続ける工程1と地中の水と空気を吸引する工程2を繰り返して、所定の地下水位になるまで行う。
【0022】
なお、揚水ポンプ4による揚水は接続ホース11を経て水処理プラント12に送られる。そして、気液分離槽8の底部に溜まった水も接続ホース13を経て水処理プラント12に送られる。また、気液分離槽8の上部に溜まった空気は接続ホース9を経て活性炭槽10に送られる。
【0023】
以上、実施形態の真空気化による軟弱地盤の改良工法によれば、大規模な井戸を設置する必要があるSWP工法によらずに、比較的簡易な管体2を地盤に設置することで、地下水位を下げると同時に、地中を負圧化して、真空気化による油分やVOC等を除去して、時間短縮・コストダウンを達成することができる。
【0024】
(変形例)
以上の実施形態においては、対象地盤を鋼矢板で囲ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、鋼矢板を設置しなくてもよい。
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0025】
1 鋼矢板
2 管体
2a 多孔部
3 接続管
4 揚水ポンプ
5 接続ホース
6 真空ポンプ
7 接続ホース
8 気液分離槽
9 接続ホース
10 活性炭槽
11 接続ホース
12 水処理プラント
13 接続ホース
14 接続ホース
15 コンプレッサ