【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る電動リニアアクチュエータの一実施形態を示す縦断面図、
図2は、
図1のアクチュエータ本体を示す縦断面図、
図3は、
図1のハウジング単体を示す図であって、(a)は(b)のIII−III線から見た矢視図、(b)は縦断面図、
図4は、
図3(b)のハウジングの衝合部を示す要部拡大図である。
【0026】
この電動リニアアクチュエータ1は、
図1に示すように、ハウジング2と、このハウジング2に取り付けられた電動モータMと、この電動モータMのモータ軸M/Sに取付けられた入力歯車3に噛合する出力歯車4からなる減速機構5と、この減速機構5を介して電動モータMの回転運動を駆動軸6の軸方向の直線運動に変換するボールねじ機構7と、このボールねじ機構7を備えたアクチュエータ本体8とを備えている。
【0027】
ハウジング2は、第1のハウジング2aと、その端面に衝合された第2のハウジング2bとからなり、固定ボルト9によって一体に固定されている。第1のハウジング2aには電動モータMが取り付けられると共に、これら第1のハウジング2aと第2のハウジング2bには、後述するねじ軸10を収容するための貫通孔11と袋孔12がそれぞれ形成されている。
【0028】
このハウジング2は、A6061やADC12等のアルミ合金からダイキャストによって形成され、高温に加熱して固溶体を形成させる溶体化処理、それを水中で急速冷却する焼き入れ処理、続いて室温に保持あるいは低温(100〜200℃)に加熱して析出させる時効硬化処理(焼きもどし処理)で構成される熱処理によって、析出相に大きな格子ひずみを生じさせ硬化させる方法、所謂析出硬化処理が施されている。これにより、量産性が良くなり、低コスト化を図ることができる共に、強度を高めてアルミ使用量を削減し、軽量化を達成することができる。
【0029】
電動モータMのモータ軸M/Sは、その端部に平歯車からなる入力歯車3が圧入により相対回転不能に取り付けられると共に、入力歯車3に噛合する出力歯車4は、ボールねじ機構7を構成するナット18にキー14を介して一体に固定されている。
【0030】
駆動軸6は、ボールねじ機構7を構成するねじ軸10と一体に構成され、この駆動軸6の一端部(図中右端部)に係止ピン13、13が植設され、第2のハウジング2bに装着された止め輪15に当接することにより抜け出しを防止している。ここで、16は、ハウジング2bの袋孔12に装着されたガイド部材で、軸方向に形成されたガイド溝16a、16aに係止ピン13、13を係合させることにより、ねじ軸10が、回転不可に、かつ軸方向移動可能に支持されている。
【0031】
ガイド部材16は、SCr420やSCM415等の浸炭鋼からなる板材またはパイプ材から塑性加工によって形成されている。具体的には、パイプ材からプレス加工によって形成されている。そして、浸炭焼入れによって表面硬さを50〜64HRCの範囲に硬化処理されている。これにより、長期間に亘って摩耗を防止することができ、耐久性を向上させることができる。なお、ガイド部材16の材質としてこれ以外にも、SCM440等の浸炭鋼、あるいは冷間圧延鋼板(JIS規格のSPCC系等)やS45C等の炭素鋼を例示することができる。冷間圧延鋼板や炭素鋼の場合、高周波焼入れによって表面硬さを50〜64HRCの範囲に硬化処理が施されている。
【0032】
ボールねじ機構7は、
図2に拡大して示すように、ねじ軸10と、このねじ軸10にボール17を介して外挿されたナット18を備えている。ねじ軸10は、外周に螺旋状のねじ溝10aが形成され、軸方向移動自在に、かつ回転不可に支承されている。一方、ナット18は、ねじ軸10に外挿されると共に、内周にねじ軸10のねじ溝10aに対応する螺旋状のねじ溝18aが形成され、これらねじ溝10a、18aとの間に多数のボール17が転動自在に収容されている。そして、ナット18は、第1、第2のハウジング2a、2bに対して、2つの支持軸受20、20を介して回転自在に、かつ軸方向移動不可に支承されている。19は、ナット18のねじ溝18aを連結して循環部材を構成する駒部材で、この駒部材19によって多数のボール17が無限循環することができる。
【0033】
各ねじ溝10a、18aの断面形状は、サーキュラアーク形状であってもゴシックアーク形状であっても良いが、ここではボール17との接触角が大きくとれ、アキシアルすきまが小さく設定できるゴシックアーク形状に形成されている。これにより、軸方向荷重に対する剛性が高くなり、かつ振動の発生を抑制することができる。
【0034】
ナット18はSCM415やSCM420等の肌焼き鋼からなり、真空浸炭焼入れによってその表面に55〜62HRCの範囲に硬化処理が施されている。これにより、熱処理後のスケール除去のためのバフ加工等を省略することができ、低コスト化を図ることができる。一方、ねじ軸10はS55C等の中炭素鋼あるいはSCM415やSCM420等の肌焼き鋼からなり、高周波焼入れ、あるいは浸炭焼入れによってその表面に55〜62HRCの範囲に硬化処理が施されている。
【0035】
ナット18の外周面18bには減速機構5を構成する出力歯車4がキー14を介して一体に固定されると共に、この出力歯車4の両側に2つの支持軸受20、20が所定のシメシロを介して圧入されている。これにより、駆動軸6からスラスト荷重が負荷されても支持軸受20、20と出力歯車4の軸方向の位置ズレを防止することができる。また、2つの支持軸受20、20は、両端部にシールド板20a、20aが装着された密封型の深溝玉軸受で構成され、軸受内部に封入された潤滑グリースの外部への漏洩と、外部から摩耗粉等が軸受内部に侵入するのを防止している。
【0036】
また、本実施形態では、ナット18を回転自在に支持する支持軸受20が同じ仕様の深溝玉軸受で構成されているので、前述した駆動軸6からスラスト荷重および出力歯車4を介して負荷されるラジアル荷重の両方を負荷することができると共に、組立時に誤組み防止のための確認作業を簡便化することができ、組立作業性を向上させることができる。なお、ここで、同一仕様の転がり軸受とは、軸受の内径、外径、幅寸法をはじめ、転動体サイズ、個数および軸受内部すきま等が同一なものを言う。
【0037】
ここで、
図3(a)に拡大して示すように、ハウジング2a、2bのそれぞれの衝合面(合わせ面)21、22は略円形に形成され、固定ボルト(図示せず)によって結合される固定部23が外周面から一部突出して複数個(ここでは、4個)形成されている。これら固定部23には固定ボルトが挿通されるボルト孔23aが形成され、円周方向に等配(90°間隔)に配設されている。これにより、固定ボルトを円周方向均一に締結することができ、締結時に第1、第2のハウジング2a、2bの衝合面21、22の変形を抑えて密封性を向上させることができる。なお、ここでいう「略円形」とは、後述するシール材28が塗布される衝合面21、22が少なくとも円形であれば良く、例えば、外周部に部分フランジや矩形状あるいは非円形の取付部があるものも含まれる。
【0038】
また、
図3(b)に示すように、第1のハウジング2aの入力歯車3を収容する円筒状の歯車収容部24の端部の一部が径方向内方に延びて底部25が形成され、この底部25の内端部が衝合面21を構成している。このように、本実施形態では、減速機構5は、従来のようなアイドラギアを廃止して入力歯車3と出力歯車4で構成されると共に、第1のハウジング2aの歯車収容部24に底部25が形成され、この底部25が衝合面21とされているので、第1、第2のハウジング2a、2bの衝合面21、22を略円形にすることができる。このように、第1のハウジング2aの歯車収容部24に底部25を設け、この底部25を衝合面とすることで、第1のハウジング2aの開口部の面積を減少させたので、密封性が向上すると共に、開口部面積を縮小することによる剛性・強度アップや、シール材の量も少なくできる。また、敢えて第1、第2のハウジング2a、2bの径方向の大きさを異ならせることにより、第1、第2のハウジング2a、2bの衝合面21、22を略円形にすることができる。これにより、2分割のハウジング2を固定ボルト9によって締結する際、ハウジング2の変形を抑えて均一な締結力で結合することができ、ハウジング2の密封性の向上を図ると共に、少なくとも歯車収容部24の底部25によって第1のハウジング2aの肉厚が厚くなり、荷重負荷に対する強度・剛性を高めて耐久性の向上を図った電動リニアアクチュエータ1を提供することができる。
【0039】
さらに、第1のハウジング2aと第2のハウジング2bのうち少なくとも一方のハウジング2bには、衝合面22の外周部と、各固定部23からねじ軸(図示せず)を収容する袋孔12を形成する円筒部26に亙ってリブ27が形成されている。
【0040】
このリブ27は、固定部23から漸次縮径する円弧状に形成され、円筒部26に近付くにしたがってその傾斜が緩やかになるように設定されている。これにより、ハウジング2bの軽量化を図りつつ強度・剛性を高めることができると共に、最弱部となる円筒部26に負荷された荷重をリブ27によって許容することができるため、最弱部の安全設計に寄与することができ、荷重負荷に対する強度を高めて耐久性の向上と信頼性を一層高めることができる。また、リブ27によりハウジング2bの強度・剛性を高めることで、ハウジング2a、2bの衝合面や嵌合面の変形を防止することができ、密封性を一層向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、
図4に拡大して示すように、第1、第2のハウジング2a、2bの衝合面21、22のうち第1のハウジング2aの内端部にテーパ状の面取り部21aが形成されると共に、第2のハウジング2bの衝合面22に断面が略半円形で、環状のシール溝22aが形成され、これら衝合面21、22にシール材28が充填(塗布)されている。充填されるシール材28は硬化性材料からなり、シール溝22aの体積よりも多く、また、面取り部21aとシール溝22aで形成される環状の空隙部の体積よりも少なく設定されている。すなわち、シール溝22aからはみ出したシール材28の余剰分が、対向する面取り部21aに充填されることになる。これにより、シール材28が衝合面21、22から外部にまではみ出すのを防止することができ、はみ出した余剰分のシール材28が脱落したり、外観を損なうと言った不具合を防止することができるので、ハウジング2の衝合面の強固な密封を図ることができる。
【0042】
シール材28としては、無溶剤型シリコン系液体ガスケット(パッキン)や合成ゴム系液体ガスケットを例示することができる。これらの液体ガスケットからなる硬化性材料は、一定の時間が経過すれば硬化するため、概ね24時間で密封性を発揮する。また、シール溝22aが断面略半円形に形成されると共に、第1のハウジング2aの内端部にテーパ状の面取り部21aが形成されているので、簡便かつ省スペースで、はみ出したシール材28の脱落を効果的に防止することができる。
【0043】
なお、ここでは、シール材28として硬化性材料からなる液体ガスケットを例示したが、これ以外にも、例えば、合成ゴム等からなるOリングを装着しても良いし、銅やステンレス、アルミ合金等からなるメタルガスケットや無機質のクッション材を金属薄板で被覆したセミメタルガスケット、あるいは、合成ゴムやフッ素樹脂等からなるシートガスケットを介装させても良い。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、あくまで例示であって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。