特許第6189641号(P6189641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189641
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】チェーン駆動用のスプロケット
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/30 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   F16H55/30 C
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-114112(P2013-114112)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-231895(P2014-231895A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2015年12月10日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】石田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】山根 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】越智 誠二
【審査官】 岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭64−051593(JP,U)
【文献】 特開平04−029640(JP,A)
【文献】 特表2012−501272(JP,A)
【文献】 実開平2−132162(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力の伝達に基づき中央の軸線を中心に回転する回転部材と、
チェーンの一部と噛合可能な歯部を有して当該歯部が前記回転部材の外周側に位置するように当該回転部材に支持される歯体と、
前記回転部材と前記歯体との間に挟まれた状態で前記チェーン側から前記歯体に加わる衝撃を吸収可能な弾性部材と
を備え、
前記弾性部材は、
仕様の異なる複数種類の弾性部材であって、前記回転部材のラジアル方向において前記回転部材と前記歯体との間に挟まれる第1の弾性部材と、前記回転部材のアキシャル方向において前記回転部材と前記歯体との間に挟まれる第2の弾性部材とを含んでおり、
前記歯体は、
前記回転部材との間に前記各弾性部材を挟んだ状態で前記回転部材に対して前記第2の弾性部材をアキシャル方向に貫通する剛性を有した固定部材により固定されていることを特徴とするチェーン駆動用のスプロケット。
【請求項2】
前記弾性部材は、前記回転部材の周方向の複数箇所にそれぞれ介装可能な複数の弾性部材からなることを特徴とする請求項1に記載のチェーン駆動用のスプロケット。
【請求項3】
前記弾性部材は、前記回転部材及び前記歯体よりもヤング率が小さい材質で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチェーン駆動用のスプロケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周部に設けた歯部をチェーンに噛合させて回転することによりチェーンを駆動するチェーン駆動用のスプロケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のチェーン駆動用のスプロケットとして、駆動シャフトが嵌入される軸孔を有する内周部材と、チェーンのローラと噛合可能な複数の歯部を外周部に等間隔で有する外周部材と、内周部材と外周部材との間に周方向へ等間隔で並ぶように介装される複数の円筒状ダンパ部材(弾性部材)を備えたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
すなわち、この従来のスプロケットでは、内周部材の外周面に複数の半円弧状の凹溝を周方向に等間隔で設けると共に、外周部材の内周面に内周部材の各凹溝とラジアル方向で対峙する複数の半円弧状の凹溝を周方向に等間隔で設け、それらの対峙する各凹溝の間に円筒状ダンパ部材をそれぞれ挟持させていた。そして、チェーン駆動時にチェーンが外周部材の歯部に衝突した際の衝撃を円筒状ダンパ部材で吸収することにより、騒音の低減を図っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−270878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記した従来のスプロケットでは、弾性部材としての円筒状ダンパ部材が、スプロケットの周方向における複数箇所に介装されているものの、各円筒状ダンパ部材は全て同一形状で同一姿勢にて介装される単一仕様のものであった。そのため、チェーンの駆動時にチェーン側から外周部材に加わる衝撃の作用する方向が多岐に亘る場合、衝撃の作用する方向によっては、所定方向からの衝撃に対応可能な単一仕様の円筒状ダンパ部材では、その所定方向以外の方向からの衝撃を効果的に吸収できず、騒音の低減を図れない虞があった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、チェーンの駆動時にチェーン側から加わる多様な衝撃に対しても、その衝撃の吸収機能を発揮して、騒音の低減を図ることができるチェーン駆動用のスプロケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するチェーン駆動用のスプロケットは、駆動力の伝達に基づき中央の軸線を中心に回転する回転部材と、チェーンの一部と噛合可能な歯部を有して当該歯部が前記回転部材の外周側に位置するように当該回転部材に支持される歯体と、前記回転部材と前記歯体との間に介装された状態で前記チェーン側から前記歯体に加わる衝撃を吸収可能な弾性部材とを備え、前記弾性部材は、仕様の異なる複数種類の弾性部材であって、それぞれの介装位置を異ならせて前記回転部材と前記歯体との間に介装されている。
【0008】
この構成によれば、回転部材と歯体との間には仕様が異なる複数種類の弾性部材がそれぞれの介装位置を異ならせた状態で介装されているので、チェーンの駆動時にチェーン側から加わる衝撃の作用する方向が多岐に亘る場合であっても、そのような各方向からの衝撃に対して何れかの弾性部材が対応して、その衝撃を効果的に吸収する。したがって、チェーンの駆動時にチェーン側から加わる多様な衝撃に対しても、その衝撃の吸収機能を発揮して、騒音の低減を図ることができる。
【0009】
上記チェーン駆動用のスプロケットにおいて、前記複数種類の弾性部材は、前記回転部材のラジアル方向において前記回転部材と前記歯体との間に介装される第1の弾性部材と、前記回転部材のアキシャル方向において前記回転部材と前記歯体との間に介装される第2の弾性部材とを含んでいることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、チェーンが歯部に噛合したとき歯体には回転部材のラジアル方向に衝撃が作用するので、その衝撃を第1の弾性部材により吸収して騒音の低減を図ることができる。さらに、チェーンが歯部に噛合した状態において歯体には回転部材のアキシャル方向への振動が衝撃の一種として発生することがあるが、そのような振動が発生した場合には第2の弾性部材が振動を減衰させて騒音の低減を図ることができる。
【0011】
上記チェーン駆動用のスプロケットにおいて、前記歯体は、前記回転部材との間に前記各弾性部材を介装した状態で前記回転部材に対して剛性を有する固定部材により固定されることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、回転部材が回転したときに回転部材と歯体との間に介装されている弾性部材にはトルクがかからないため、弾性部材の疲弊を抑制することができる。
上記チェーン駆動用のスプロケットにおいて、前記弾性部材は、前記回転部材の周方向の複数箇所にそれぞれ介装可能な複数の弾性部材からなることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、弾性部材を交換する場合に、回転部材の周方向全体に亘る円環状の一体物に形成された弾性部材の場合とは異なり、周方向に分散して介装された複数の弾性部材のうち、劣化などが認められて交換する必要がある何れかの弾性部材だけを交換すればよいので、弾性部材の部品交換に関わるコストを低減できる。
【0014】
上記チェーン駆動用のスプロケットにおいて、前記弾性部材は、前記回転部材及び前記歯体よりもヤング率が小さい材質で構成されていることが好ましい。
この構成によれば、回転部材や歯体の材質よりもヤング率が小さい材質でさえあれば、多種多様な材質の中から、使用環境に応じて、最適な材質の弾性部材を選択できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、チェーンの駆動時にチェーン側から加わる多様な衝撃に対しても、その衝撃の吸収機能を発揮して、騒音の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態のスプロケットによるチェーン駆動状態を示す斜視図。
図2】(a)はスプロケットの一方向からの斜視図、(b)は同じくスプロケットの他方向からの斜視図。
図3】スプロケットの分解斜視図。
図4】スプロケットの歯部にチェーンが噛合した状態の一部省略破断面図。
図5】第2実施形態のスプロケットの斜視図。
図6】第3実施形態のスプロケットの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、チェーン駆動用のスプロケットの第1実施形態について図を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態におけるチェーン駆動用のスプロケット11は、チェーン12を噛合させた状態で駆動力の伝達に基づき回転することによって、チェーン12をその長手方向に沿って進退移動するように駆動する。
【0018】
すなわち、チェーン12は、その幅方向で対向する複数対のリンクプレートの一例としての内プレート13及び同じく複数対のリンクプレートの一例としての外プレート14を有している。対をなす内プレート13は、円筒状ブシュ(図示略)により連結されることで互いに離間した対向状態に保持されている。そして、その内プレート13の外側に、外プレート14が対をなして内プレート13と交互配置となるように直列に配置され、その直列方向で隣り合う互いの端部同士がブシュ内に挿入されるピン15にて回動自在に連結されることにより、チェーン12は所定長さに形成されている。また、幅方向で対向するプレート13,14間において、ピン15の外周側にはローラ16が回転自在に装着され、そのローラ16が回転するスプロケット11の外周部に設けられた歯部と噛合してスプロケット11の回転方向へ引っ張られることにより、チェーン12はその長手方向に沿って進退移動する。
【0019】
図2(a)(b)に示すように、スプロケット11は、金属材料(例えば、鉄など)からなる略円板状の回転部材21と、剛性を有する金属材料(例えば、鉄など)からなる固定部材の一例としてのボルト22及びナット23を用いて回転部材21に固定される金属材料(例えば、鉄など)からなる歯体24を備えている。回転部材21の中央には、駆動力を伝達するための駆動軸(図示略)が嵌入される軸孔25が形成され、回転部材21は駆動軸の回転に伴い、軸孔25の中心軸線Pを回転中心として回転する。
【0020】
図3に示すように、回転部材21は、軸孔25が貫通形成された内周部26と、内周部26のラジアル方向(すなわち、径方向)外側に内周部26よりもアキシャル方向(すなわち、軸方向)の厚さを薄くして連なる中間部27と、中間部27のラジアル方向外側に中間部27よりもアキシャル方向の厚さを薄くして連なる外周部28を有している。外周部28は、そのアキシャル方向の厚さを中間部27のアキシャル方向の厚さの略半分程度にして、中間部27の外周側に段差29を介して周方向全体に連続形成した環状の板部であり、その周方向の複数箇所(本実施形態では20箇所)にはボルト22を挿通可能な孔30が等間隔で厚さ方向に貫通形成されている。
【0021】
また、歯体24は、回転部材21の周方向の複数箇所(本実施形態では10箇所)に等間隔で固定される複数(本実施形態では10個)の歯体24で構成されている。各歯体24は、回転部材21における中間部27とアキシャル方向の厚さが略同一で外周部28の輪郭形状に沿う円弧形状をなすように形成された板片であって、その外周縁にはチェーン12のローラ16と噛合可能な歯部24aが2つ形成されている。また、その歯体24における内周側部位は、その厚さが外周側部位の厚さの略半分程度となるように段差31を介して薄くされた部位であり、外周側の歯部24aとラジアル方向で対応する2箇所にはボルト22を挿通可能な孔32が厚さ方向に貫通形成されている。そして、歯体24は、その内周側部位に形成された孔32を回転部材21の外周部28に形成された孔30に一致させるようにして、回転部材21の外周部28にボルト22とナット23にて固定される。
【0022】
図3及び図4に示すように、各歯体24を回転部材21の外周部28に固定する場合、回転部材21と各歯体24との間には仕様が異なる複数種類の弾性部材41,42が介装される。すなわち、回転部材21のラジアル方向における歯体24と回転部材21の外周部28との間には、幅寸法が外周部28の厚さ寸法と略同一の細い帯状に形成された複数(本実施形態では10個)の第1の弾性部材41が、回転部材21の外周部28の周方向の複数箇所(この場合、10箇所)に分散して介装される。第1の弾性部材41の長さ寸法は、歯体24の段差31の周方向の長さ寸法と略同一であり、その材質は回転部材21や歯体24の材質よりもヤング率が小さい材質の金属材料(例えば、アルミニウムなど)が選択される。
【0023】
また、回転部材21のアキシャル方向において歯体24と回転部材21の外周部28との間には、径方向の寸法が外周部28の径方向の寸法と略同一の円弧状帯片に形成された複数(本実施形態では10個)の第2の弾性部材42が、回転部材21の外周部28の周方向の複数箇所(この場合、10箇所)に分散して介装される。第2の弾性部材42の長さ寸法は、歯体24の周方向の長さ寸法と略同一であり、その材質は回転部材21や歯体24の材質よりもヤング率が小さい材質の金属材料(例えば、アルミニウムなど)が選択される。そして、第2の弾性部材42には、回転部材21の外周部28に形成された孔30及び歯体24の内周側部位に形成された孔32と同径で同一間隔の孔43が厚さ方向に貫通形成されている。そして、第2の弾性部材42は、その孔43を回転部材21の外周部28の孔30及び歯体24の内周側部位の孔32に一致させるようにして、歯体24と回転部材21の外周部28との間に介装される。
【0024】
次に、上記のように構成されたチェーン駆動用のスプロケット11の作用について説明する。
さて、図1及び図4に示すように、スプロケット11の外周に巻き掛けたチェーン12を駆動するとき、スプロケット11は、外周側の歯体24の歯部24aにチェーン12のローラ16を噛合させて回転する。そして、その歯体24の歯部24aにチェーン12のローラ16が噛合するときには、ローラ16が歯体24の歯部24aと歯部24aとの間の歯底にラジアル方向の外側から衝突する。そのため、その歯部24aが設けられた歯体24を介して、ラジアル方向の内側に位置する回転部材21にはローラ16の衝突による衝撃力が加わる。この場合、歯体24に対するローラ16の衝突は騒音を発生させる原因となり、その衝突の際の衝撃力が大きいほど騒音も大きくなる。したがって、このような衝撃力は小さくすることが望まれる。
【0025】
この点、図4に示すように、回転部材21のラジアル方向において歯体24と回転部材21の外周部28との間には、第1の弾性部材41が介装されている。そして、この第1の弾性部材41の材質は、回転部材21や歯体24の材質よりもヤング率が小さい材質の金属材料で構成されている。そのため、この第1の弾性部材41が、歯部24aに対するローラ16の衝突により歯体24を介して回転部材21側へラジアル方向の外側から作用する衝撃力を吸収する。
【0026】
また、スプロケット11における歯体24の歯部24aにチェーン12のローラ16が噛合した状態では、そのローラ16を間に挟んで対向する各対の内プレート13の間及び各対の外プレート14の間に歯体24の歯部24aがラジアル方向の内側から挿入された状態で位置する。そのため、チェーン12の駆動時において、そのチェーン12が例えば撓んだりして振動したような場合には、その振動がスプロケット11における歯体24の歯部24aに対してアキシャル方向から作用する場合がある。そして、この場合に、歯体24に対してチェーン12側から作用するアキシャル方向の振動は、スプロケット11の回転部材21にも伝播し、スプロケット11を含むチェーン駆動機構の全体を振動させる原因ともなる。したがって、このような衝撃の一種である振動の伝播は抑制されることが望まれる。
【0027】
この点、図4に示すように、回転部材21のアキシャル方向において歯体24と回転部材21の外周部28との間には、第2の弾性部材42が介装されている。そして、この第2の弾性部材42の材質は、回転部材21や歯体24の材質よりもヤング率が小さい材質の金属材料で構成されている。そのため、この第2の弾性部材42がチェーン12側から歯体24を介して回転部材21側へアキシャル方向において伝播する振動を減衰させる。
【0028】
以上のように、チェーン12側から歯体24を介してスプロケット11の回転部材21にラジアル方向やアキシャル方向など多岐に亘る方向から衝撃が作用した場合には、ラジアル方向からの衝撃に対応可能な第1の弾性部材41やアキシャル方向からの衝撃(振動を含む)に対応可能な第2の弾性部材42などのうちから何れかの弾性部材が対応する。すなわち、形状や介装されるときの姿勢及び介装される位置など仕様が異なる複数種類の弾性部材41,42のうち、そのときの衝撃の作用する方向に応じて何れかの弾性部材が対応して衝撃を吸収することになる。
【0029】
また、スプロケット11において、チェーン12と歯部24aが噛合する歯体24は、駆動軸の駆動回転に基づき回転する回転部材21に対して剛性を有する金属材料からなるボルト22及びナット23を用いて固定されている。そのため、回転部材21の回転時には、そのトルクが各弾性部材41,42を介することなく剛性を有するボルト22などを通じて各歯体24へ回転部材21から直接的に作用する。すなわち、歯体24と回転部材21の外周部28との間に介装された各弾性部材41,42には、そのような各弾性部材41,42の疲弊を招くトルクがかかることはない。
【0030】
また、振動を含む衝撃の吸収機能を発揮可能な弾性部材41,42について、その交換が必要になった場合には、回転部材21の周方向において分散する複数位置に介装された複数の弾性部材41,42のうちから、劣化などが認められて交換が必要とされた例えば1つの弾性部材41,42だけが交換される。そして、そのように部品として交換される弾性部材41,42については、回転部材21や歯体24の材質よりもヤング率が小さい材質でさえあればよいため、多種多様な材質の中から、使用環境に応じて、最適な材質のものが選択可能とされる。
【0031】
上記第1実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)回転部材21と歯体24との間には仕様が異なる複数種類の弾性部材41,42がそれぞれの介装位置を異ならせた状態で介装されている。そのため、チェーン12の駆動時にチェーン12側から加わる衝撃の作用する方向が多岐に亘る場合であっても、そのような各方向からの衝撃に対して何れかの弾性部材41,42が対応して、その衝撃を効果的に吸収する。したがって、チェーン12の駆動時にチェーン12側から加わる多様な衝撃に対しても、その衝撃の吸収機能を発揮して、騒音の低減を図ることができる。
【0032】
(2)チェーン12が歯部24aに噛合したとき歯体24には回転部材21のラジアル方向に衝撃が作用するので、その衝撃を第1の弾性部材41により吸収して騒音の低減を図ることができる。さらに、チェーン12が歯部24aに噛合したとき歯体24には回転部材21のアキシャル方向への振動が発生することがあるが、そのような衝撃の一種である振動が発生した場合には第2の弾性部材42が振動を減衰させて騒音の低減を図ることができる。
【0033】
(3)回転部材21が回転したときに回転部材21と歯体24との間に介装されている弾性部材41,42にはトルクがかからないため、弾性部材41,42の疲弊を抑制することができる。
【0034】
(4)弾性部材41,42を交換する場合に、回転部材21の周方向全体に亘る円環状の一体物に形成された弾性部材の場合とは異なり、周方向に分散して介装された複数の弾性部材41,42のうち、劣化などが認められて交換する必要がある何れかの弾性部材だけを交換すればよいので、弾性部材41,42の部品交換に関わるコストを低減できる。
【0035】
(5)回転部材21や歯体24の材質よりもヤング率が小さい材質でさえあれば、多種多様な材質の中から、使用環境に応じて、最適な材質の弾性部材を選択できる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態のスプロケットについて図を参照しながら説明する。なお、この第2実施形態のスプロケットは、各歯体が第1実施形態の場合とは異なっている。そして、その他の点では第1実施形態とほぼ同じであるため、同一の構成については同一符号を付すことによって重複した説明は省略する。
【0036】
図5に示すように、本実施形態のスプロケット51において、回転部材21の外周側にボルト22により固定される各歯体24は、その外周縁にチェーン12のローラ16と噛合可能な歯部24aが1つ形成されている。すなわち、第1実施形態のスプロケット11は歯体24に2つの歯部24aを有しているのに対し、本実施形態のスプロケット51は歯体24に1つの歯部24aしか有していない。そのため、チェーン12の駆動時には、チェーン12の長手方向に所定間隔で位置する各ローラ16のうち2つおきのローラ16に対して各歯体24の歯部24aが噛合した状態でスプロケット51が回転する。
【0037】
なお、図5には図示していないが、各歯体24とスプロケット51における回転部材21の外周部28との間には、第1実施形態の場合と同様に、仕様の異なる第1の弾性部材41及び第2の弾性部材42が互いの介装位置を異ならせて介装されている。そのため、この第2実施形態でも、チェーン12側から歯体24を介してスプロケット51の回転部材21にラジアル方向やアキシャル方向など多岐に亘る方向から衝撃が作用すると、形状や介装位置など仕様が異なる複数種類の弾性部材41,42のうち何れかの弾性部材が、そのときの衝撃の作用する方向に応じて対応することで衝撃を吸収する。
【0038】
この第2実施形態によれば、第1実施形態における(1)〜(5)の効果に加えて、さらに以下のような効果を得ることができる。
(6)スプロケット51は歯体24の歯部24aが1つだけであるので、歯部24aが2つの歯体24を取り付けるスプロケット11の場合よりも、歯部が少ない分だけでも、スプロケットの重量を軽量化できる。
【0039】
次に、第3実施形態のスプロケットについて図を参照しながら説明する。なお、この第3実施形態のスプロケットは、各弾性部材が第1実施形態の場合とは異なっている。そして、その他の点では第1実施形態とほぼ同じであるため、同一の構成については同一符号を付すことによって重複した説明は省略する。
【0040】
図6に示すように、本実施形態のスプロケット61において、各歯体24とスプロケット61における回転部材21の外周部28との間に介装される第1の弾性部材41と第2の弾性部材42は、スプロケット51の周方向全体に亘る円環状の一体物に形成されている。なお、第1実施形態の場合と同様に、第1の弾性部材41は回転部材21のラジアル方向において各歯体24と回転部材21の外周部28との間に介装され、第2の弾性部材42はアキシャル方向において各歯体24と回転部材21の外周部28との間に介装されている。
【0041】
この点で、本実施形態における第1の弾性部材41と第2の弾性部材42も、第1実施形態の場合と同様に、形状や介装位置など仕様が異なる複数種類の弾性部材であるといえる。そのため、この第3実施形態でも、チェーン12側から歯体24を介してスプロケット61の回転部材21にラジアル方向やアキシャル方向など多岐に亘る方向から衝撃が作用すると、仕様が異なる複数種類の弾性部材41,42のうち何れかの弾性部材が、そのときの衝撃の作用する方向に応じて対応することで衝撃を吸収する。
【0042】
この第3実施形態によれば、第1実施形態における(1)〜(3)及び(5)の効果に加えて、さらに以下のような効果を得ることができる。
(7)第1の弾性部材41及び第2の弾性部材42は、スプロケット11における回転部材21の周方向全体に亘る円環状の一体物であるため、複数の弾性部材が回転部材21の外周部28の周方向の複数箇所に分散して介装される場合よりも、弾性部材の介装作業を簡略にできる。
【0043】
なお、上記各実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態において、弾性部材41,42の材質は、回転部材21や歯体24の材質よりもヤング率の小さい材質であれば、アルミニウム以外に、例えばゴムや制振鋼板など、多種多様な材質のうちから使用環境に応じて選択可能である。
【0044】
・上記各実施形態において、回転部材21の周方向に分散して介装される複数の弾性部材41,42は、回転部材21の周方向に沿う寸法が歯体24一個分と同寸法である以外に、例えば歯体24二個分や歯体24三個分と同寸法であるなど第1実施形態とは異なる寸法であってもよい。
【0045】
・上記各実施形態において、歯体24と回転部材21との間に弾性部材41,42を介装した状態で、その歯体24を回転部材21に固定する剛性を有する固定部材は、ボルト22以外にピンやクリップなど他の固定部材であってもよい。また、その固定部材の材質は剛性を有するものであれば、鉄以外に例えばステンレスなど他の金属材料でもよい。
【0046】
・上記各実施形態において、第1の弾性部材41及び第2の弾性部材のうち少なくとも一方に、回転部材21の周方向において隣り合う歯体24同士の間に挟入可能な弾性片部を延設してもよい。
【0047】
・上記各実施形態において、第1の弾性部材41及び第2の弾性部材は、それらの材質が回転部材21及び歯体24の材質よりもヤング率が小さい材質であれば、第1の弾性部材41の材質と第2の弾性部材42の材質は異なっていてもよい。また、その場合に第1の弾性部材41の材質のヤング率と第2の弾性部材42の材質のヤング率は異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0048】
11,51,61…スプロケット、12…チェーン、21…回転部材、22…固定部材の一例としてのボルト、24…歯体、24a…歯部、41…第1の弾性部材、42…第2の弾性部材、P…軸線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6