特許第6189654号(P6189654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189654
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】麺の受け渡し装置と麺の受け渡し方法
(51)【国際特許分類】
   A21C 9/08 20060101AFI20170821BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20170821BHJP
   A23L 7/113 20160101ALI20170821BHJP
【FI】
   A21C9/08 C
   A23L7/109 Z
   A23L7/113
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-124971(P2013-124971)
(22)【出願日】2013年6月13日
(65)【公開番号】特開2015-13(P2015-13A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390026631
【氏名又は名称】株式会社冨士製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100075579
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】櫻澤 初雄
【審査官】 田中 侑以
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−110968(JP,A)
【文献】 実開平04−065702(JP,U)
【文献】 特開2000−175828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21C 1/00−15/04
A23L 7/09− 7/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端運動するチェンその他の無端体により進行方向にバスケットを多数連続させてなり、フライヤーその他の熱処理装置から前記バスケットに収容したまま麺を送り出す熱処理コンベヤと、
受け入れ部が熱処理コンベヤの先端下側に臨み、前記先端での反転により下向きになった前記バスケットから供給される麺を受け入れ部で受け入れ、その麺を押し出し部で次工程に送り出す受け渡しコンベヤとを備え、
前記受け渡しコンベヤを、無端運動するチェンその他の無端体と、この無端体に対してその進行方向に多数が等間隔に吊り下げられ、それぞれが上面の搭載面に麺を載せて移動するパレットとを有する吊り下げタイプのものとし、
前記受け渡しコンベヤの前記押し出し部に、前記パレットの移動方向に沿って進退して前進により、前記受け渡しコンベヤで搬送中の麺をパレットから押し出す押具を配置し
前記押し出し具は、前記パレットの移動よりも早く前進して、麺をパレットから押し出すことを特徴とする麺の受け渡し装置。
【請求項2】
前記押し出し具を進退させる機構として、回転するフライホイールと、後端をフライホイールに連結して前記押し出し具の進退方向に沿った方向に延在したクランクアームと、上端が前記クランクアームの中途に連結して前記クランアームの先端を揺動させる揺動アームと、前記押し出し具の進退方向に沿った方向に進退自在なスライダーと、前記スライダーに昇降可能に支持され且つ前記クランクアームの先端が連結された昇降枠と、を備え、
前記昇降枠に前記押し出し具が連結することで、前記押し出し具は、前進してパレット上の麺をパレットから押し出し、次いで後続の麺の押し出しのために後続の麺の上側を迂回して後退する進退動作をすることを特徴とする請求項1に記載の麺の受け渡し装置。
【請求項3】
前記パレットは、前記受け渡しコンベヤの押し出し部における移動方向の前部が解放されていて、麺は押具に押されてパレットの搭載面から前記の解放されている前部を経て滑り落ちるようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の麺の受け渡し装置。
【請求項4】
前記受け渡しコンベヤには、少なくとも前記受け入れ部と前記押し出し部とに、前記パレットの揺動を規制する揺動規制具を配置したことを特徴とする請求項1請求項3のいずれか1項に記載の麺の受け渡し装置。
【請求項5】
前記受け渡しコンベヤの前記受け入れ部では、前記パレットは前記熱処理コンベヤの先端下側と同一の方向に移動するとともに、前記受け渡しコンベヤの前記押し出し部では前記パレットは反転して前記受け入れ部とは逆方向の、熱処理装置から遠ざかる方向に移動するように前記受け渡しコンベヤを配置したことを特徴とする請求項1請求項のいずれか1項に記載の麺の受け渡し装置。
【請求項6】
フライヤーその他の熱処理装置からバスケットに収容したまま熱処理後の麺を送り出した後、前記バスケットを下向きにして麺を排出し、無端運動するチェンその他の無端体に対してこの無端体の進行方向に多数が等間隔に吊り下げられたパレットの上面の搭載面に前記排出された麺を受け入れて移動させ、その後、麺を次工程に送り出す押し出し部で、前記パレットの移動方向に沿って進退して前進により麺を移動中のパレットから押し出す押具により、パレット上の麺を次工程に押し出し、前記押し出し具は、前記パレットの移動よりも早く前進して、麺をパレットから押し出すことを特徴とする麺の受け渡し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席麺の製造工程においてフライヤーその他の熱処理装置から送り出された麺を次の包装工程などに受け渡す麺の受け渡し装置と麺の受け渡し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばフライヤーにおいて油揚げされた即席麺を次の工程に受け渡す装置としては特許文献1に記載されるものがある。すなわち、フライヤーを通過した熱処理コンベヤから油揚げした麺を次の工程に受け渡す装置が同文献1に図示されている。その熱処理コンベヤから次のコンベヤに麺を乗り換えさせて次の工程に受け渡す従来の装置の具体例が図5及び図6に示すものである。図5(a)に示されるものは、図の左方にある図示を省略したフライヤーを通過して出てきた熱処理コンベヤ100と、このコンベヤ100の先端の転回部にある案内用の面板200と、コンベヤ100の転回部の下側にあって、前記面板200に連続する位置とその下方の位置との間で上下に揺動する揺動板300と、下がった位置の前記揺動板300に連続するプッシュバータイプのコンベヤ400とからなる。熱処理コンベヤ100は平行な無端チェン101間にバスケット102が架設されてなる。バスケット102は無端チェン101の連続方向に多数が同一間隔で架設されていて、麺1を収容した状態で無端チェン101とともにフライヤー内を通過してきたものである。したがってこの段階では麺1は油揚げされたものであり、しかも図示の麺1は長方形にまとめられた麺線の集合体が二つ折りされた状態で油揚げされて平面四角形で全体が平坦になっていて、1個ごとに袋に入れられて商品化されるものである。
【0003】
熱処理コンベヤ100で運ばれてきた油揚げ直後の麺1は、先端の転回部でバスケット102が転回するときに面板200に支持されてバスケット102内に留まり、そのまま揺動板300に至る。すると、揺動板300が自重と麺の重量とカム301の作用で軸302を中心に下方に揺動するため、この揺動により揺動板300上の麺は揺動板300上を滑り落ちてプッシュバータイプのコンベヤ400に至る。
【0004】
プッシュバータイプのコンベヤ400は、平行な無端チェン401間にプッシュバー402が架設されてなる。プッシュバー402は無端チェン401の連続方向に多数が同一間隔で架設され、無端チェン401の往路(図5において右方に進行する部分)の下側には、下に揺動した前記揺動板300に連続する簀の子状のガイドレール403が無端チェン401と平行に設置されていて、揺動板300から滑り落ちた麺1がガイドレール403上をプッシュバー402により押されて図の右方の次工程に供給されるようになっている。
【0005】
ここで、麺1の姿勢について注目すると、図5(a)に示された麺1は前記のように二つ折りにされて平面四角形で全体として平坦になっているものであって、熱処理コンベヤ100では二つ折りされて折り目のついた前端が進行方向先方を向いて搬送されると、コンベヤ400では前後が逆になって二つ折りされた後端が進行方向先方を向いて次工程に搬送される。この姿勢の変化を示したのが図5(b)であって麺1の姿勢は同図の上の姿勢から下の姿勢に変化される。このことは、麺1においては前後の向きが逆になることだけでなく、上下の向きも逆になって次工程に搬送されることを意味している。図5(c)は麺1を前記のように袋に入れられて商品化されるものではなく、後工程で包装容器、さらに具体的にはカップ状の容器に入れられて所謂カップ麺として商品化されるものである。この麺1の場合にも、図5(a)の装置により受け渡されると図5(b)の場合と同様に麺1は前後の向きと上下の向きが逆になって次工程に搬送されることになる。なお、図5(c)に記載される麺1を搬送する熱処理コンベヤ100はバスケット102の内側が麺1の外面と同一の形状をしていて、熱処理時に麺1がバスケット102によって成形されるようになっている。
【0006】
また、図6(a)に示されたものは、熱処理コンベヤ100と面板200とは図5(a)に記載のものと同一であるが、ここでは熱処理コンベヤ100にプッシュバータイプのコンベヤ400が直接連続している。すなわち、熱処理コンベヤ100の先端転回部の下側に、プッシュバータイプのコンベヤ400の後端が臨み、同コンベヤ400の後端転回部の外側に面板404が配置されるとともに、同内側にも面板405が配置されて、これらに挟まれる間に平行な無端チェン401とこれに架設されたプッシュバー402が通過するようになっている。内側の面板405は前記面板200が途切れる位置から前記後端転回部が終了する位置まで連続し、また外側の面板404は後端転回部の開始位置から簀の子状のガイドレール403の始端位置まで連続している。
【0007】
そこで、この例では熱処理コンベヤ100の先端転回部の下部においてバスケット102から落下する麺1が、プッシュバータイプのコンベヤ400の後端転回部の内側の面板405の上向き面に供給される。その後、麺1はプッシュバー402に押されて面板404、405間を転回しつつ移動してガイドレール403上に至り、引き続き次工程に向けて供給されるようになっている。
【0008】
そこで、この例においても麺1の姿勢について注目すると、図6(a)の例においては、熱処理コンベヤ100により搬送されてきた麺1は2度にわたって転回されて2度の裏返しがあったから、コンベヤ400によって次工程に供給される麺1は図6(b)(c)に示す通りに、いずれも表裏と前後が熱処理コンベヤ100により搬送されてきたときと同じ状態になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−179010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の特許文献1に記載され且つ図5及び図6に記載された装置によれば次のような不具合がある。すなわち図5の装置では、揺動板300の自重と麺1の重量により下方に揺動しようとする力に対するカム301の作用によって揺動板300が麺1を1個扱うごとに上下に繰り返し揺動する。このため、揺動板300は上下という相互に反対方向に繰り返して往復運動するから、これに麺1を載せてガイドレール403へ案内するためには揺動板300の往復運動の速度をあまり高くない速度(発明者らの実験によれば毎分40往復程度まで、すなわち、麺1を毎分40個程度まで搬送する速度)に抑制する必要がある。つまり前記速度を(毎分の往復数を前記の40回程度よりも)高くすると麺1が安定した状態で揺動板300上に載らないし、また載ったとしても安定して円滑にガイドレール403に移動しないからである。したがって、図5(a)の装置においては麺1の受け渡し効率が充分ではないという不具合がある。
【0011】
一方、図6に記載された装置によれば、図5(a)の揺動板300のように、1個の麺1を取り扱うごとに反対方向に繰り返し往復運動する部材がなく、移動する部材は一定の方向に円滑に移動しつつ麺1を移動させるものであるから、麺1の搬送速度は図5(a)の装置に比して大きく向上させることができる。発明者らの実験によれば毎分90個の麺1をガイドレール403上に移動することが可能であった。しかしながら、図6(a)に記載された装置においては、コンベヤ400で次工程に送り出す麺1が、図6(c)に示すように熱処理コンベヤ100により搬送されてきたときと表裏を同じ向きのままになる。このため、麺1がカップ状の容器に入れられる麺のように上下において形状と麺線の密度が顕著に相違する場合には、次のような不具合がある。
【0012】
すなわち、麺1が図6(b)のように平坦な場合にはあまり問題にならないが、カップ状の容器に入れられる麺1(カップ麺)の場合には麺1上面の径に対して高さの割合が前記の袋に入れられる麺より大きくなると、麺1の下部における麺線の密度が低くなって脆くなる。なぜなら、熱処理装置により麺1が熱処理されるときには、例えば油揚げされると麺線の浮力と油中を上昇する気泡などの影響により生じる上昇流によって麺線はバスケット102の図示されない蓋に下から押し付けられ、そのまま硬化されるため、麺1の組織は上が密になり下が粗になるからである。油揚げに代えて熱風により熱処理する場合でも、熱風をバスケット102の下から吹き上げると同様に粗密が形成されることになる。すると、この脆い下部を下にしてコンベヤ403に載せて次工程に送り出すと、麺1の重量がこの脆い下部に負荷され、或いは振動などが加わることにより、麺1が折れ易くなり、麺1の折れ屑が多量に出るという不具合がある。
【0013】
かくして、図5(a)の装置によれば、麺1がカップ麺の場合のように下部の麺線の組織が粗である場合にも、組織が密で全体として強度が大な上部が下向きになってコンベヤ403上に載せられて送り出されるが、単位時間当たりの受け渡し数が充分でないため、麺1の製造効率がよくないという不具合がある。一方、図6(a)の装置によれば、単位時間当たりの受け渡し数は充分になるが、下部の麺線の組織が粗で脆い麺1の場合に、その脆い下部が下向きになってコンベヤ403上に載せられて送り出されるから、麺1が折れやすく歩留まりが悪いという不具合がある。
【0014】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、単位時間における次工程への麺の受け渡し数を充分にするとともに、下部の麺線の組織が粗で脆い麺の場合でも組織が密で強度のある上部を下向きにして次工程に送り出す装置と方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様に係る麺の受け渡し装置は、無端運動するチェンその他の無端体により進行方向にバスケットを多数連続させてなり、フライヤーその他の熱処理装置から前記バスケットに収容したまま麺を送り出す熱処理コンベヤと、受け入れ部が熱処理コンベヤの先端下側に臨み、前記先端での反転により下向きになった前記バスケットから供給される麺を受け入れ部で受け入れ、その麺を押し出し部で次工程に送り出す受け渡しコンベヤとを備え、前記受け渡しコンベヤを、無端運動するチェンその他の無端体と、この無端体に対してその進行方向に多数が等間隔に吊り下げられ、それぞれが上面の搭載面に麺を載せて移動するパレットとを有する吊り下げタイプのものとし、前記受け渡しコンベヤの前記押し出し部に、前記パレットの移動方向に沿って進退して前進により、前記受け渡しコンベヤで搬送中の麺をパレットから押し出す押具を配置し、前記押し出し具は、前記パレットの移動よりも早く前進して、麺をパレットから押し出す構成となっている。
【0016】
この態様によれば、図5(a)の揺動板のように、1個の麺を扱うごとに上下に往復運動をする部材を用いていないから、次工程への麺の受け渡し効率を高くして麺の大量生産に貢献できる。また、受け渡しコンベヤに吊り下げタイプのパレットを用いて、この受け渡しコンベヤの転回部の前後を通して麺の搭載面が上向きになるようにしたから、熱処理コンベヤから下向きの姿勢で受け入れた麺をそのまま下向きのまま次工程に受け渡すことができる。
【0017】
また、前記パレットは、前記受け渡しコンベヤの押し出し部における移動方向の前部が解放されていて、麺は押具に押されてパレットの搭載面から前記の解放されている前部を経て滑り落ちるようになっているとよい。これにより、麺を搭載面から円滑に送り出すことができる。
また、前記受け渡しコンベヤには、少なくとも前記受け入れ部と前記押し出し部とに、前記パレットの揺動を規制する揺動規制具を配置するとよい。これにより、吊り下げタイプのパレットの姿勢が安定するので、搭載面への麺の供給と送り出しを円滑にすることができる。
【0018】
また、前記受け渡しコンベヤの前記受け入れ部では、前記パレットは前記熱処理コンベヤの先端下側と同一の方向に移動するとともに、前記受け渡しコンベヤの前記押し出し部では前記パレットは反転して前記受け入れ部とは逆方向の、熱処理装置から遠ざかる方向に移動するように前記受け渡しコンベヤを配置するとよい。これにより、熱処理コンベヤから受け渡しコンベヤへの麺の乗り移りは両コンベヤが同一方向に移動しているときに行われるから容易になる。また、次工程に麺を押し出すときには麺は熱処理装置から離れる方向に移動しているから、熱処理装置に続く次の処理装置へ麺を供給するのに便利となる。
【0019】
さらに、本発明の麺の受け渡し方法の一態様は、フライヤーその他の熱処理装置からバスケットに収容したまま熱処理後の麺を送り出した後、前記バスケットを下向きにして麺を排出し、無端運動するチェンその他の無端体に対してこの無端体の進行方向に多数が等間隔に吊り下げられたパレットの上面の搭載面に前記排出された麺を受け入れて移動させ、その後、麺を次工程に送り出す押し出し部で、前記パレットの移動方向に沿って進退して前進により麺を移動中のパレットから押し出す押具により、パレット上の麺を次工程に押し出し、前記押し出し具は、前記パレットの移動よりも早く前進して、麺をパレットから押し出す方法である。
【0020】
この方法によっても、1個の麺を扱うごとに上下に往復運動をする部材を用いないから、次工程への麺の受け渡し効率を向上させることができる。また、熱処理コンベヤから下向きの姿勢で受け入れた麺をそのまま下向きのまま次工程に受け渡すことができる。
また、前記麺は後工程で包装容器に入れられる麺であって、前記バスケットから排出されて前記パレットに受け入られるときには下向きをなし、この下向きのまま前記押し出し具により次工程に押し出されるものであれば、麺線の組織が密な部分をコンベヤ等に載せて扱うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、単位時間における次工程への麺の受け渡し数を充分に維持し、且つ下部の麺線の組織が粗で脆い麺の場合でも組織が密で強度のある上部を下向きにして次工程に送り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態を示す正面図。
図2図1のA−A線断面図。
図3図1のB−B線断面図。
図4図1の装置を二つ折りの麺に適用した変形例の概略を示す正面図。
図5】従来技術を示すもので、(a)は装置の概略を示す正面図、(b)は二つ折り麺の姿勢の変化を示す説明図、(c)はカップ状容器に入れる麺の姿勢の変化を示す説明図。
図6】他の従来技術を示すもので、(a)は装置の概略を示す正面図、(b)は二つ折り麺の姿勢の変化を示す説明図、(c)はカップ状容器に入れる麺の姿勢の変化を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1から図3は第1の実施形態を示す図であり、機枠2の上段に熱処理コンベヤ10が備えられ、その先端下側の中段に、熱処理コンベヤ10から麺1を受け入れて次の工程に送り出す受け渡しコンベヤ40が備えられ、さらにその下側の下段に押し出し装置70が備えられる。
【0024】
熱処理コンベヤ10は、無端運動する左右の平行な無端チェン11間に支持枠12が架設され、この支持枠12はチェン11の連続方向に等間隔に多数が架設されていて、各支持枠11内に左右方向に複数(図の場合は2個)のバスケット13が固定されて支持されてなる。左右の無端チェン11はローラチェンからなり、そのローラが機枠2の上部枠21に固定されたアングル材からなる案内レール22上を転動することにより、図示しないモータを駆動源として無端運動するようになっている。前記支持枠12は無端チェン11のうちの前後2つのピンに固定されてなるから、バスケット13は無端チェン11の前後のピン間のプレートと同一の向きをなす。したがって、熱処理コンベヤ10先端の、無端チェン11が噛み合うスプロケット14による転回部分ではチェン11の転回と共にバスケット13も一体に転回し、上向きから下向きになるようになっている。
【0025】
この熱処理コンベヤ10は、中途が熱処理装置としてのフライヤーを経由して麺1を油揚げするものであり、図示された熱処理コンベヤ10の部分はフライヤーから出て、すでに油揚げされた麺1を次の工程に転移させるための先端部分である。したがって、図1において図示された熱処理コンベヤ10の左方に図示されないフライヤーがある。なお、フライヤーを通過中の熱処理コンベヤ10はバスケット13上面に図示しない蓋が被せられて、麺1がバスケット13内に留まるようになっている。またバスケット13の底と前記蓋には小穴が開設されていて、フライヤー内で熱油がバスケット13内に出入りできるようになっている。このため、図示された麺1はバスケット13を成形用の型としてカップ麺として成形されて麺線の密度が上面に近いほど高くなり、下面に近いほど低く粗になっている。
【0026】
前記熱処理コンベヤ10の先端下側には受け渡しコンベヤ40の後端部の上側を臨ませている。この受け渡しコンベヤ40の後端部の上側にある受け入れ部41が熱処理コンベヤ10の先端下側に臨み、熱処理コンベヤ10の先端での反転により下向きになった前記バスケット13から供給される麺1を前記受け入れ部41で受け渡しコンベヤ40に受け入れるようになっている。熱処置コンベヤ10では前端のスプロケット14でバスケット13が上向きから横向きになり、さらに下向きになるに及んで、中の麺1がバスケット13内に留まるように、バスケット13の開口面に沿って案内板20が機枠2の前記上部枠21の下部に支持されている。この案内板20が途切れた部分が受け渡しコンベヤ40の受け入れ部41になっている。
【0027】
前記受け渡しコンベヤ40は、前後のスプロケット42、43間に架け渡されて無端運動する左右の平行な無端チェン44と、これら平行なチェン44間に架設された吊り下げ機構5を介して吊り下げられたパレット6とからなる。吊り下げ機構5とパレット6とはチェン44の連続方向に等間隔に多数設けられて受け渡しコンベヤ40を無端状に構成している。この受け渡しコンベヤ40は図1における左方(図示しないフライヤに近い方)の端部が後端をなし、同右方(図示しないフライヤから遠い方)の端部が先端をなす。
【0028】
吊り下げ機構5は、十字状をなして相互に固定された縦材51及び横材52と、縦材51及び横材52の交点と無端チェン44のピンとを貫通してこれら縦材51及び横材52を無端チェン44に回転自在に連結する連結軸53と、左右の無端チェン44に連結された縦材51及び横材52のうち左右の縦材51の下部間に架設された梁54とからなる。梁54は連結軸53より下方に位置してこれが錘の機能を有するため、吊り下げ機構5は前記の梁54とパレット6等の重量により、梁54とパレット6が連結軸53より常時は下方に吊り下げられた状態にあり、かくしてパレット6を連結軸53により揺動可能な吊り下げタイプとしている。
【0029】
パレット6は、前記梁54の外側に上から嵌まり込んで固定される嵌着部61と、この嵌着部61の上側に一体をなし前後に延びて水平な複数本の棒材からなるスノコ62と、スノコ62をなす各棒材の後端(受け渡しコンベヤ40の後端側の端部)から立ち上がった立ち上げ部63とからなる。スノコ62の上面により麺1の搭載面を形成している。この搭載面は前記後端の立ち上げ部63により、受け渡しコンベヤ40の先端方向へのパレット6の移動時における後側が閉塞される一方、同前側は前記のような立ち上げ部がなく解放されているから、麺1は受け渡しコンベヤ40の先端方向への移動時には搭載面の前部からは滑り落ちることが可能になっている。なお、搭載面の左右にも立ち上げ部はないが、搭載面は前後に延在する棒材からなるため、麺1は左右方向には滑り難い構造になっている。また、パレット6には前記の立ち上げ部63が形成されているため、これとの干渉を避けるために前記案内板20の終端は図3に示すように櫛歯状になっている。同図において符号20aで示すのが案内板20の終端部である。
【0030】
図1においては、構造を理解しやすくするために、一部のパレット6については吊り下げ機構5の一部(例えば縦材51と横材52)を省略して図示している。
上記のようにパレット6は無端チェン44に対して連結軸53を介して揺動可能に吊り下げられていて、通常は梁54とパレット6等の重量により姿勢が安定しているが、パレット6の揺動を抑制する必要のある部分においては揺動規制具23を配置している。この揺動規制具23は機枠2に設けたアーム24に支持された水平な長板状をなしていて、上辺又は下辺が、移動する前記十字状の前記横材52の下面又は上面に接して当該横材52が水平を維持するようになっている。この横材52が水平を維持することによりパレット6が揺動することなく水平を維持して移動するようになっている。この実施形態においては受け渡しコンベヤ40の前後の転回部分以外、つまりパレット6が水平に移動する部分には全体に揺動規制具23が配置されている。
【0031】
なお、図2において受け渡しコンベヤ40を構成するチェン44は、下側の前進する経路においては、前記アーム24に支持された案内レール28上を案内されて移動するようになっているが、上側の後進する経路においても図示しない案内レールによって案内されている。
受け渡しコンベヤ40の先端部には受け渡しコンベヤ40から次工程に麺1を案内する通路7が形成されており、押し出し部45において受け渡しコンベヤ40から通路7に麺1を押し出すようになっている。
【0032】
この押し出し部45にてパレット6から麺1を通路7に押し出すのが押し出し装置70である。押し出し装置70は、機枠2の底をなす機台25上に設けられており、図示しない駆動源に連結されて回転するフライホイール71と、このフライホイール71に後端が連結されたクランクアーム72と、上端がクランクアーム72の中途に連結され且つ下端が機台25上の図示しない部材に枢着された揺動アーム73と、機台25上の左右のブロック26に設置された各案内レール27に個別且つ進退自在に係合する2つのスライダー74と、各スライダー74から立設された垂直棒75にそれぞれ昇降可能に支持され且つ前記クランクアーム72の先端が連結された昇降枠76と、昇降枠76の上端から前方に延びる左右の押し出しアーム77と、両押し出しアーム77の前端に横架された棒状の押し出し具78とからなる。前記昇降枠76は、前記左右の垂直棒75に昇降可能に外嵌する各昇降ブロック76aと、両昇降ブロック76a間に架設される下梁76bと、下梁76bから立ち上がる左右の柱76cと、両柱76cの上端間に架設される上梁76dとからなり、前記クランクアーム72の前端は下梁76bにボルトナット79をもって連結されている。
【0033】
かくして、フライホイール71の回転によりクランクアーム72が揺動アーム73の揺動を伴いながら揺動すると、クランクアーム72先端のボルトナット79が図1の矢印Xの軌道を描いて進退運動をする。これに伴い昇降枠76もこれと同じ動きをして、押し出し具78も図1の矢印Yに示すように同一の軌道を描いて進退運動をする。このとき押し出し具78は、受け渡しコンベヤ40における押し出し部45において、前記軌道Yの動きによりパレット6よりも早く前進してパレット6上の麺1をパレット6から通路7に押し出し、次いで後続の麺1の押し出しのために後続の麺1の上側を迂回して後退する動作をするようになっている。
【0034】
上記の熱処理コンベヤ10と受け渡しコンベヤ40と押し出し装置70の各駆動源は同一の電動モータからなり、この電動モータと各装置10、40、70は図示しない伝動装置を介して接続されている。
こうして構成された麺の受け渡し装置は、次のように動作する。熱処理コンベヤ10に搭載されたままフライヤーにおいて油揚げされた麺1は、そのまま熱処理コンベヤ10によりフライヤーから出されて前進する。この麺1は、熱処理コンベヤ10の先端でバスケット12と共に転回し、バスケット12から出るのを面板20により抑えられながら下向きになって一旦後退する(フライヤー方向に戻る)。バスケット12が下向きになった状態では麺1は下向きになった上面が面板20上を滑っている。そこで面板20の終端を過ぎた位置の受け入れ部41で受け渡しコンベヤ40に下向きのまま受け入れられる。
【0035】
ここでは受け渡しコンベヤ40のパレット6がタイミングよく麺1を受け入れるように受け入れ部41に移動してきて、パレット6の搭載面上に麺1を転移させる。この麺1が転移される受け入れ部41では、パレット6は上側のバスケット13と同一方向に移動しているから、麺1とパレット6の移動方向も同じくなっている。この位置ではパレット6は揺動規制具23によって姿勢が制御されているから、パレット6の搭載面が傾斜することはない。次いで、パレット6は受け渡しコンベヤ40の後端転回部に至って下降した後に前方に方向転換する。このときパレット6はチェン42に吊り下げられた状態のまま転回して前方に移動するから、パレット6上の麺1は下向きのまま前方に搬送される。
【0036】
パレット6で搬送された麺1は押し出し部45に至って押し出し装置70の押し出し具78によりパレット6から押し出される。
押し出し装置70は、フライホイール71の回転によりクランクアーム72が揺動アーム73の揺動を伴いながら揺動すると、クランクアーム72の先端が図1における矢印Xの軌跡を描いて進退運動をする。昇降枠76も姿勢を同じくしたまま同一の軌跡で進退運動をする。このとき、垂直棒75はスライダー74の案内レール27に沿う進退をし、昇降枠76は昇降ブロック76aにおいて垂直棒75に沿って昇降する。この昇降枠76も前記の昇降と進退とにより矢印Xと同一の軌跡となる。このため、昇降枠76の上端に取り付けられた押し出しアーム77とその前端の押し出し具78も同一の軌跡を描いて進退をすることになるが、押し出し具78の軌跡は矢印Yの通りとなる。この押し出し具78の前進によりパレット6上の麺1をパレット6よりも早い速度で後から押し出し、その後に後続の麺1の上を迂回して後退し、この後続の麺1を再度同様に押し出す。
【0037】
パレット6の搭載面から押し出された麺1は通路7に至り、上面が下を向いたままここを滑って後続の工程に供給される。後続の工程では、麺1は下向きの姿勢のままカップ供給装置の台の上に至り、ここで上から容器としてのカップが下向きになって麺1を抱き込むように供給される。この状態では、台の上で下向きの麺1に下向きのカップが被さり、麺1はカップ内に位置した状態にあり、次いで、台とカップが反転し、これに伴って麺1も反転して、麺1とカップが上向きになる。この状態では、上向きのカップ内に上向きの麺1が収容された状態になり、そのまま次の工程に移動されて、カップ内への具や調味料等の供給が行われる。
【0038】
前記のように、この実施形態においては、麺1の受け渡し部41においては熱処理コンベヤ10と受け渡しコンベヤ40とが同一の方向へ移動しているから、熱処理コンベヤ10から受け渡しコンベヤ40への麺1の乗り移りが容易になり、両コンベヤ10、40の麺1の搬送速度を(例えば毎分90個程度に)大にすることができる。また、熱処理コンベヤ10から出た麺1は、麺線の密度が大になって強度が高い上面が下向きのまま受け渡しコンベヤ40のパレット6の搭載面及びその後続の通路7に接して後工程に搬送されるから、麺線の折れなどの不具合を回避することができる。
【0039】
図4は、前記の実施形態の変形例を示している。すなわち、熱処理コンベヤ10と受け渡しコンベヤ40と押し出し装置70は図1図3のものと同一であり、相違するのは熱処理コンベヤ10のバスケット13の形状と、通路7がプッシュバータイプのコンベヤ80のガイドレール83をなす点である。
図4の装置で扱う麺1は、長方形にまとめられた麺線の集合体が二つ折りされた状態で油揚げされて平面四角形で全体が平坦になっていて、1個ごとに袋に入れられて商品化されるものである。したがって熱処理コンベヤ10のバスケット13はこの麺1の形状を特定するために、図1から図3の麺1よりも平坦で平面積が大きく且つ四角形をしている。かかる袋麺のための麺1を扱う装置としても、この発明を適用することができる。
【0040】
また、コンベヤ80は、平行な無端チェン81間にプッシュバー82が架設されてなる。プッシュバー82は無端チェン81の連続方向に多数が同一間隔で架設され、無端チェン81の往路(図4において右方に進行する部分)の下側には、簀の子状のガイドレール83が平行に設置されている。これにより、受け渡しコンベヤ40から供給された麺1がガイドレール83上をプッシュバー82により押されて図の右方の次工程に供給されるようになっている。他の構成と動作は図1図3のものと同一であるので、重複した説明は省略する。
【0041】
以上の実施形態においては、熱処理装置をフライヤーの例で説明したが、熱風乾燥装置等の他の熱処理装置であってもよい。また熱処理コンベヤ10のバスケット13を多数連続させる無端体としてチェン11を用い、且つ受け渡しコンベヤ40のパレット6を多数吊り下げる無端体としてチェン44を用いているが、これらチェン11、44以外の、例えば無端状に連続させたロープやベルトを使用することも、本発明としては排除していない。また、上記実施形態の押し出し装置70は、フライホイール71から押し出しアーム77までの機構により押し出し具78を進退させて麺1を押し出すようにしたが、押し出し具78が繰り返して麺1を押し出す動作をさせる構造のものであれば他の機構を採用することができる。さらに、図1から3の実施形態では、熱処理コンベヤ10の各支持枠12には2個のバスケット13が支持され、且つ受け渡しコンベヤ40の吊り下げ機構5には2つのパレット6が設置されて、装置全体が麺1を2列にして搬送し受け渡しているが、3列以上の列数にすることは勿論可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 麺
10 熱処理コンベヤ
11 無端チェン
12 支持枠
13 バスケット
20 案内板
40 受け渡しコンベヤ
41 受け入れ部
44 無端チェン
45 押し出し部
5 吊り下げ機構
6 パレット
62 スノコ
63 立ち上げ部
70 押し出し装置
71 フライホイール
72 クランクアーム
78 押し出し具
図1
図2
図3
図4
図5
図6