(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189670
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】飲料ディスペンサ
(51)【国際特許分類】
B67D 1/08 20060101AFI20170821BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
B67D1/08 A
F25D11/00 102G
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-166638(P2013-166638)
(22)【出願日】2013年8月9日
(65)【公開番号】特開2015-34040(P2015-34040A)
(43)【公開日】2015年2月19日
【審査請求日】2016年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一
(72)【発明者】
【氏名】野村 知仁
(72)【発明者】
【氏名】奥田 祐
【審査官】
正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−284294(JP,A)
【文献】
特開2010−208680(JP,A)
【文献】
特開2005−003240(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/00− 3/04
F25D 11/00−16/00、27/00−31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に冷却水を貯える冷却水槽と同冷却水槽内の冷却水を冷却する冷凍装置とを収容し、
前記冷却水槽内には飲料を冷却する飲料冷却管を設け、飲料容器から供給された飲料を該飲料冷却管内を通過させて前記冷却水槽内の冷却水と熱交換をして冷却し、該飲料冷却管の導出端部に接続した注出コックから冷却した飲料を注出するようにした飲料ディスペンサにおいて、
前記ハウジングは前記冷却水槽に対向する部分の少なくとも一部を前記冷却水槽から離間させた離間部と、この離間部から前記冷却水槽に向けて突出して前記離間部が前記冷却水槽に対して離間した状態を維持するリブと、前記離間部を設けた同一面に形成した通気口とを設け、
前記ハウジングの離間部と前記冷却水槽との間に断熱空間を形成するとともに、前記離間部を前記通気口が形成された部分より外側に張り出すようにして前記冷却水槽から離間させたことを特徴とする飲料ディスペンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール等の飲料を冷却水槽内の飲料冷却管により冷却し、飲料冷却管の導出端部に接続した注出コックから冷却した飲料を注出する飲料ディスペンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には飲料ディスペンサが開示されている。この飲料ディスペンサは、ハウジング内に冷却水を貯える冷却水槽と同冷却水槽内の冷却水を冷却する冷凍装置とを収容し、冷却水槽内には飲料を冷却する飲料冷却管を設け、ビア樽等の飲料容器から供給された飲料を飲料冷却管内を通過させて冷却水槽内の冷却水と熱交換をして冷却し、飲料冷却管の導出端部に接続した注出コックから冷却した飲料を注出するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−284294
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この飲料ディスペンサのハウジングの前面及び側面前部は冷却水槽の外周面に密着している。冷却水槽の外周面には断熱材が取り付けられているが、冷却水槽の冷熱が断熱材を通過してハウジングの前面及び側面前部に伝わり、冷却水槽を充分に保冷することができないとともに、ハウジングの前面及び側面前部に結露が生じることがあった。本発明は、冷却水槽の保冷効果を高め、ハウジングの周壁外面に結露を生じにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、ハウジング内に冷却水を貯える冷却水槽と冷却水槽内の冷却水を冷却する冷凍装置とを収容し、冷却水槽内には飲料を冷却する飲料冷却管を設け、飲料容器から供給された飲料を該飲料冷却管内を通過させて冷却水槽内の冷却水と熱交換をして冷却し、該飲料冷却管の導出端部に接続した注出コックから冷却した飲料を注出するようにした飲料ディスペンサにおいて、ハウジングは冷却水槽に対向する部分の少なくとも一部を冷却水槽から離間させた離間部と、この離間部から冷却水槽に向けて突出して離間部が冷却水槽に対して離間した状態を維持するリブと
、離間部を設けた同一面に形成した通気口とを設け、ハウジングの離間部と冷却水槽との間に断熱空間を形成
するとともに、離間部を通気口が形成された部分より外側に張り出すようにして冷却水槽から離間させたことを特徴とする飲料ディスペンサを提供するものである。
【0006】
上記のように構成した飲料ディスペンサにおいては、ハウジングは冷却水槽に対向する部分の少なくとも一部を冷却水槽から離間させた離間部と、この離間部から冷却水槽に向けて突出して離間部が冷却水槽に対して離間した状態を維持するリブと
、離間部を設けた同一面に形成した通気口とを設け、ハウジングの離間部と冷却水槽との間に断熱空間を形成
するとともに、離間部を通気口が形成された部分より外側に張り出すようにして冷却水槽から離間させたので、冷却水槽はハウジングの離間部と冷却水槽との間の断熱空間によって保冷効果を高めることができるとともに、冷却水槽の冷熱がハウジングに伝わりにくくなることで、ハウジングに結露が生じにくくな
るだけでなく、ハウジングの離間部を設けた周面を設置場所の壁面に密着させても、通気口が壁面により塞がれることがなく、ハウジング内の温度の上昇を抑えることができた。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明による飲料ディスペンサの一実施形態の斜視図である。
【
図2】
図1の右側のサイドパネルを取り外し、冷却水槽内が見えるようにした縦方向の一部破断断面図である。
【
図4】ハウジングのサイドパネルとトップパネルとを取り外した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明による飲料ディスペンサの一実施形態を図面を参照して説明する。
図1及び
図2に示すように、本発明に係る飲料ディスペンサ10は、ハウジング11内の前部に冷却水を貯える冷却水槽20と、後部を機械室12として冷却水槽20内の冷却水を冷却する冷凍装置30とを収容したものである。冷却水槽20の外周部には発泡剤よりなる断熱材21が取り付けられている。冷却水槽20内には飲料を冷却する飲料冷却管22が設けられている。飲料冷却管22はコイル状に巻回されており、導入端部がハウジング11の外部に設けた図示しないビア樽等の飲料容器に接続され、導出端部がハウジング11の前面に設けた注出コック23に接続されている。
【0010】
図2に示したように、冷却水槽20には撹拌装置24が設けられている。撹拌装置24は、冷却水槽20の上縁の前後方向の中間部から後部を覆うようにして左右両縁部に架設した支持板24aの上面に撹拌モータ24bを備えている。撹拌モータ24bにより回転する回転軸24cは支持板24aを貫通してコイル状に巻回された飲料冷却管22の中央部となる位置で冷却水槽20内に延び、先端には冷却水を撹拌する撹拌羽根24dが固定されている。撹拌モータ24bにより回転軸24cを回転させると、回転軸24cの先端部の撹拌羽根24dが冷却水槽20内の冷却水を撹拌する。
【0011】
図2に示したように、冷凍装置30は、冷媒を圧縮する圧縮機31と、圧縮した冷媒ガスを冷却するワイヤコンデンサよりなる凝縮器32と、液化冷媒を膨張させるキャピラリチューブ33と、冷却水槽20の内周面に巻回されて膨張させた液化冷媒を気化させて冷却水を冷却する蒸発管34とからなり、これらを連結して冷媒が循環する冷媒回路を構成している。冷凍装置30は、冷媒回路の冷媒を循環させることにより、冷却水槽20内にて蒸発管34の周囲の冷却水を冷却し、蒸発管34の周囲に所定の厚みの氷層を形成している。
【0012】
冷凍装置30は凝縮器32を通過する冷媒を冷却するための冷却ファン35を備えている。冷却ファン35はハウジング11の後部の機械室12にて上下方向の略中間部に配設されており、取付ブラケット36により冷却水槽20の後部に固定されている。冷却ファン35は下側から吸引した空気を上側に吹き出させ、ワイヤコンデンサよりなる凝縮器32の隙間を通過させることにより冷媒を冷却する。
図2に示したように、ハウジング11の後部の機械室12の上部には冷却ファン35の送風を後方及び側方に案内する導風板37が設けられている。
【0013】
図2に示したように、ハウジング11の上部には撹拌装置24と導風板37の上側を覆うトップカバー26が設けられている。トップカバー26は、ハウジング11の上面を構成するトップパネル17を取り外したときに、電気部品である撹拌装置24及びコントロールボックス25が露出することを防ぎ、ユーザが撹拌装置24及びコントロールボックス25に触れないようにするためのものである。また、トップカバー26は、ハウジング11の上面から水が漏水しても電気部品である撹拌装置24及びコントロールボックス25に水が掛からないようにする機能も有している。トップカバー26は長方形状をした平板部26aの周縁部を下側に折り曲げてフランジ部26bを形成したものである。トップカバー26の平板部26aは撹拌装置24の前側から導風板37の後端部まで延び、平板部26aの前後方向の中央部が導風板37を介して冷却水槽20に固定されている。
【0014】
図2及び
図4に示したように、飲料ディスペンサ10のハウジング11は、底部を構成して前部に冷却水槽20と後部に冷凍装置30とを設置したベース体13と、左右両側面部を構成する左右一対のサイドパネル14,15と、前面部を構成するフロントパネル16と、背面部を構成する背面体と、天井部を構成するトップパネル17とを備えている。なお、この実施形態では背面体には冷凍装置30の凝縮器32を構成するワイヤコンデンサを用いている。
【0015】
ベース体13は長方形状をした平板部13aの周縁部を上側に折り曲げてフランジ部13bを形成したものであり、平板部13aの前部に断熱材21を取り付けた冷却水槽20が載置され、後部に蒸発管34を除いた冷凍装置30が設置されている。
【0016】
図2〜
図4に示したように、サイドパネル14,15は冷却水槽20と機械室12の側部を覆うものである。サイドパネル14,15は、下端部がベース体13のフランジ部13bに各々2つのねじにより固定され、上端部がトップカバー26のフランジ部26bに各々2つのねじにより固定されている。
図3に示したように、サイドパネル14,15の前端部の内面にはフロントパネル16の左右方向の端部を係合させる上下方向に延びる溝部14a,15aが形成されている。また、サイドパネル14,15の後端部の内面には内側、すなわち互いに向き合う方向に延び、ワイヤコンデンサよりなる凝縮器32の後面部の左右方向の端部に係止して凝縮器32が後側に傾倒するのを防ぐ傾倒防止部14b,15bが形成されている。
【0017】
サイドパネル14,15の前半部は冷却水槽20の側部を覆うものであり、冷却水槽20(の外周面を覆う断熱材21)と対向する前半部は外側に湾曲するように張り出して冷却水槽20(の断熱材21)から離間する離間部14c,15cとなっている。また、サイドパネル14,15の離間部14c,15cの内周面には冷却水槽20の断熱材21に向けて突出して離間部14c,15cが冷却水槽20(の断熱材21)に対して離間した状態を維持する複数のリブ14d,15dが設けられている。サイドパネル14,15の離間部14c,15cと冷却水槽20(の断熱材21)と間には複数のリブ14d,15dにより仕切られた断熱空間14e,15eが形成されている。
【0018】
サイドパネル14,15の後半部は機械室12の側部を覆う部分であり、サイドパネル14,15の後半部は上部及び下部に通気口14f,14f及び15f,15fが形成されている。サイドパネル14,15の内周面には下側の通気口14f,15fを塞ぐ位置に遮蔽板14g,15gが着脱可能に取り付けられている。
【0019】
フロントパネル16は冷却水槽20の断熱材21の前面に密着した状態で、左右方向の両端部がサイドパネル14,15の前端部の溝部14a,15aに係合して固定されている。フロントパネル16の前面上部には注出コック23が設けられており、この注出コック23はフロントパネル16を挟むようにして冷却水槽20の前側上部に固定されている。フロントパネル16の前面下部にはドレンパン18が設けられており、ドレンパン18はフロントパネル16を挟むようにしてベース体13の前側のフランジ部13bにねじにより固定さている。トップパネル17は長方形状の天板部17aと、天板部17aの前端縁及び後端縁を下方に折り曲げた折曲部17bとを有している。トップパネル17は天板部17aの左右両縁が左右のサイドパネル14,15の内側縁部に載置して支持されている。
【0020】
上記のように構成した飲料ディスペンサ10の作動について説明する。飲料ディスペンサ10の冷凍装置30の作動により、圧縮機31から圧送された冷媒ガスが凝縮器32で冷却されて液化冷媒となり、この液化冷媒がキャピラリチューブ33を通過するときに膨張し、膨張した液化冷媒が蒸発管34を通過するときに冷却水槽20内の冷却水と熱交換することにより気化してから圧縮機31に戻る。このとき、冷却水槽20内の冷却水は蒸発管34の周囲で徐々に冷却され、蒸発管34の周囲で所定の厚みの氷層が形成される。
【0021】
飲料冷却管22には炭酸ガスボンベ(図示しない)から供給される炭酸ガスの圧力が加えられた状態のビア樽等の飲料容器(図示しない)が接続されており、注出コック23の操作レバーを操作して注出ノズルから飲料を注出すると、ビア樽等の飲料容器から炭酸ガスの圧力により押し出された飲料が飲料冷却管22を通って注出コック23から注出される。このとき、飲料冷却管22を通過する飲料は冷却水槽20内の冷却水と熱交換して冷却される。
【0022】
上記のように構成した飲料ディスペンサ10においては、ハウジング11のサイドパネル14,15の前半部となる冷却水槽20(の断熱材21)に対向する部分には冷却水槽20(の断熱材21)から離間させた離間部14c,15cと、この離間部14c,15cから冷却水槽20(の断熱材21)に向けて突出して離間部14c,15cが冷却水槽20(の断熱材21)に対して離間した状態を維持するリブ14d,15dとを設け、ハウジング11のサイドパネル14,15の離間部14c,15cと冷却水槽20(の断熱材21)との間に断熱空間14e,15eを形成した。これにより、冷却水槽20はハウジング11のサイドパネル14,15の離間部14c,15cと冷却水槽20(の断熱材21)との間の断熱空間14e,15eによって保冷効果を高めることができるとともに、冷却水槽20の冷熱がサイドパネル14,15に伝わりにくくなることで、サイドパネル14,15に結露が生じにくくなった。また、サイドパネル14,15は離間部14c,15cを外側に湾曲するように張り出すとともに、内周面にリブ14d,15dを設けたことによって強度を高くすることができた。特に、リブ14d,15dが冷却水槽20の断熱材21に当接していることで、離間部14c,15cに外側から衝撃が加わっても、衝撃がリブ14d,15dを介して断熱材21で受けられ、サイドパネル14,15が破損にくくなった。
【0023】
ハウジング11には離間部14c,15cを設けた同一面に通気口14f,15fを形成した。すなわち、ハウジング11のサイドパネル14,15には離間部14c,15cとともに通気口14f,15fを形成している。離間部14c,15cは通気口14f,15fが形成された後半部より外側に張り出すように湾曲して冷却水槽20から離間している。冷却ファン35を作動させたときには、ベース体13に形成した通気口から吸い込まれた空気が上昇しながら圧縮機31を冷却し、サイドパネル14,15の上側の通気口14f,15f及び背面の凝縮器32を通過して排出される。サイドパネル14,15を設置場所の壁面に密着させても、通気口14f,15fが設置場所の壁面によって塞がれることがなく、ハウジング11内の機械室12内の温度の上昇を抑えることができた。
【0024】
上記のように構成した飲料ディスペンサ10においては、ハウジング11の前部に冷却水槽20と後部に冷凍装置30とを設置したが、本発明はこれに限られるものでなく、ハウジング11の下部に冷凍装置30と上部に冷却水槽20を、ハウジング11の下部に冷却水槽20と上部に冷凍装置30とを設置したものであってもよい。ハウジング11の下部に冷凍装置30と上部に冷却水槽20を設置したときには、離間部14c,15cをハウジング11のサイドパネル14,15の上部にて冷却水槽20と対向する位置に設け、通気口14f,15fをサイドパネル14,15の下部に設ければよく、ハウジング11の下部に冷却水槽20と上部に冷凍装置30を設置したときには、離間部14c,15cをハウジング11のサイドパネル14,15の下部にて冷却水槽20と対向する位置に設け、通気口14f,15fをサイドパネル14,15の上部に設ければよい。
【0025】
上記のように構成した飲料ディスペンサ10においては、冷却水槽20の外周面に断熱材21を取り付けるようにしているが、本発明はこれに限られるものでなく、断熱部材よりなる冷却水槽20を用いれば、外周面に断熱材を取り付けないようにすることができる。
【0026】
上記のように構成した飲料ディスペンサ10においては、ハウジング11のフロントパネル16とサイドパネル14,15と背面体とを別部材により構成したが、本発明はこれに限られるものでなく、例えばフロントパネルとサイドパネルとを1枚の板金を折り曲げて加工したものであってもよい。
【0027】
上記のように構成した飲料ディスペンサ10においては、ハウジング11の冷却水槽20に対向する部分の一部として、サイドパネル14,15の前半部に離間部14c,15cを設けたが、これに限られるものでなく、例えばフロントパネル16にも冷却水槽20(の断熱材21)と離間する離間部を設け、フロントパネル16の内面にリブを設けるようにしてハウジング11の冷却水槽20と対向する部分の全部に離間部とリブとを設けてもよい。
【符号の説明】
【0028】
10…飲料ディスペンサ、11…ハウジング、14c,15c…離間部、14d,15d…リブ、14e,15e…断熱空間、14f,15f…通気口。