特許第6189674号(P6189674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189674
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】液封マウント
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   F16F13/10 J
   F16F13/10 L
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-168738(P2013-168738)
(22)【出願日】2013年8月14日
(65)【公開番号】特開2015-36578(P2015-36578A)
(43)【公開日】2015年2月23日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177900
【氏名又は名称】山下ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089509
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 清光
(72)【発明者】
【氏名】久保田 洋介
【審査官】 村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−234968(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/069131(WO,A1)
【文献】 特開2005−172202(JP,A)
【文献】 特開2000−257665(JP,A)
【文献】 独国特許発明第19930726(DE,C1)
【文献】 実開昭63−166738(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 11/00−13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性本体部(30)とダイヤフラム(50)の間に形成される液室を仕切部材(40)により主液室(38)と副液室(52)に区画するとともに、オリフィス通路(48)にて連絡する液封マウントにおいて、
前記仕切部材(40)及びダイヤフラム(50)とその外側を覆う部材(60)との間をシールして、組立時に前記仕切部材(40)及びダイヤフラム(50)に付着した付着液(80)が漏れ出すことを防ぐための付着液専用シール(75・76)を、少なくとも前記ダイヤフラム(50)に設けるとともに、
前記仕切部材(40)に前記付着液専用シールの一つをなす付着液専用第1シール(71)を設けたことを特徴とする液封マウント。
【請求項2】
前記仕切部材(40)は弾性部材からなる弾性仕切部材(44)を備え、この弾性仕切部材(44)の外周壁(44e)に前記付着液専用第1シール(71)を径方向外方へ突出させて一体に設けるとともに、
前記ダイヤフラム(50)は前記外筒(20)もしくはこの外筒(20)の内側へ一体化される部材(60)からなる外側を覆う部材により支持される外周厚肉固定部(54)を備え、この外周厚肉固定部(54)に前記付着液専用シールが設けられることを特徴とする請求項1の液封マウント。
【請求項3】
弾性本体部(30)とダイヤフラム(50)の間に形成される液室を仕切部材(40)により主液室(38)と副液室(52)に区画するとともに、オリフィス通路(48)にて連絡する液封マウントにおいて、
前記仕切部材(40)は弾性部材からなる弾性仕切部材(44)を備え
前記ダイヤフラム(50)は前記外筒(20)もしくはこの外筒(20)の内側へ一体化される部材(60)からなる外側を覆う部材により支持される外周厚肉固定部(54)を備え、
前記弾性本体部(30)、前記仕切部材(40)、前記ダイヤフラム(50)は、
前記外筒(20)内へ積み上げられ、前記外周厚肉固定部(54)を前記外筒(20)の一端で固定されて一体化される液室構成部(18)を構成し、
この液室構成部18が前記外筒(20)内に収容されたとき、前記仕切部材(40)及び前記外周厚肉固定部54の外周部と前記外側を覆う部材との間に、組立時に前記仕切部材(40)及び前記ダイヤフラム(50)に付着した付着液(80)が閉じこめられる接合面が形成され、
この接合面部分では、前記弾性仕切部材(44)の外周壁(44e)及び前記外周厚肉固定部(54)の外周部が前記外側を覆う部材に当接するとともに、
前記液室構成部(18)における前記仕切部材(40)と前記弾性本体30及び前記ダイヤフラム50との積み重なる面に、中心軸線軸方向へ突出して環状に液室を囲み、作動液の漏れを防止するメインシール(70・77)が設けられ、
このメインシールとは別に、前記接合面をシールして前記付着液(80)が漏れ出すことを防ぐための付着液専用シール(71・75・76)が設けられ、
この付着液専用シールは、前記外側を覆う部材(60)へ向かって突出形成され、
少なくとも前記ダイヤフラム(50)の前記外周厚肉固定部(54)に設けられることを特徴とする液封マウント。
【請求項4】
前記弾性仕切部材(44)の外周壁(44e)に前記付着液専用シールの一つをなして径方向外方へ突出する付着液専用第1シール(71)を一体に設けたことを特徴とする請求項3の液封マウント。
【請求項5】
記外周厚肉固定部(54)の外周部に、前記付着液専用シールの一つをなして径方向外方へ突出する付着液専用第2シール(75)を一体に設けたことを特徴とする請求項2又は4に記載した液封マウント。
【請求項6】
前記外周厚肉固定部(54)に中心軸線方向へ突出して前記付着液専用シールの一つをなす付着液専用第3シール(76)を一体に設けたことを特徴とする請求項5の液封マウント。
【請求項7】
前記外側を覆う部材は、前記外筒(20)の内側へ挿入されて一体化される固定リング(60)であり、この固定リング(60)の一部で前記外周厚肉固定部(54)を当接支持するとともに、
前記付着液専用シールは前記仕切部材(40)及び前記外周厚肉固定部(54)と前記固定リング(60)の間をシールすることを特徴とする請求項5又は6の液封マウント。
【請求項8】
前記固定リング(60)を外筒(20)の爪(28)により固定したことを特徴とする請求項7の液封マウント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンマウント等に使用する液封マウントに係り、特に組立中に付着した液体が製品表面に漏れ出すことを防止する付着液漏出防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
液封マウントは、少なくとも液室の一部を形成する弾性本体部と、この液室側開口を覆うダイヤフラムと、液室内を複数に区画する仕切部材とを備え、複数の液室を連絡するオリフィス通路にて液柱共振を発生させることにより、高減衰・低動バネを実現する液封防振装置である。
この液封マウントを組み立てるとき、液中にて円筒状の外筒内へ、弾性本体部、仕切部材、ダイヤフラムを順に挿入し、ダイヤフラムを外筒で固定することにより全体を一体化して組み立てる、積み上げ式の組立方法がある。
また、仕切部材、ダイヤフラム及び外筒を液外にて一体化し、その後液中にて、この一体化品と弾性本体部を組立一体化するものもある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−227328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記液中組立するときには、仕切部材及びダイヤフラムの外周部に液体が付着し、この付着液が仕切部材及びダイヤフラムの外周を覆う外筒との接合面に閉じこめられ、組立後に製品の表面に漏れ出すことがある。
この漏出液自体は、液室の作動液が漏れ出たものとは異なり、付着液に由来するものなので、漏出液が出現しても液封マウントの性能には全く問題がない。しかし、漏出液が漏れ出した状態では、それが付着液に因るものか液室からの漏れなのか判別できず、製品の品質を疑って精密な液漏れ検査をしなければならない。したがって、このような手間を省くとともに、外観的にも高品質の製品を提供するためには、付着液の漏れ出しを防いで付着液に因る漏出液が生じないような付着液専用シールを設けることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため請求項1に記載した発明は、弾性本体部(30)とダイヤフラム(50)の間に形成される液室を仕切部材(40)により主液室(38)と副液室(52)に区画するとともに、オリフィス通路(48)にて連絡する液封マウントにおいて、
前記仕切部材(40)及びダイヤフラム(50)とその外側を覆う部材(60)との間をシールして、組立時に前記仕切部材(40)及びダイヤフラム(50)に付着した付着液(80)が漏れ出すことを防ぐための付着液専用シール(75・76)を、少なくとも前記ダイヤフラム(50)に設けるとともに、
前記仕切部材(40)に前記付着液専用シールの一つをなす付着液専用第1シール(71)を設けたことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載した発明は上記請求項1において、
前記仕切部材(40)は弾性部材からなる弾性仕切部材(44)を備え、この弾性仕切部材(44)の外周壁(44e)に前記付着液専用第1シール(71)を一体に設けるとともに、
前記ダイヤフラム(50)は前記外筒(20)もしくはこの外筒(20)の内側へ一体化される部材(60)からなる外側を覆う部材により支持される外周厚肉固定部(54)を備え、この外周厚肉固定部(54)に前記付着液専用シールが設けられることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載した発明は、
弾性本体部(30)とダイヤフラム(50)の間に形成される液室を仕切部材(40)により主液室(38)と副液室(52)に区画するとともに、オリフィス通路(48)にて連絡する液封マウントにおいて、
前記仕切部材(40)は弾性部材からなる弾性仕切部材(44)を備え、
前記ダイヤフラム(50)は前記外筒(20)もしくはこの外筒(20)の内側へ一体化される部材(60)からなる外側を覆う部材により支持される外周厚肉固定部(54)を備え、
前記弾性本体部(30)、前記仕切部材(40)、前記ダイヤフラム(50)は、
前記外筒(20)内へ積み上げられ、前記外周厚肉固定部(54)を前記外筒(20)の一端で固定されて一体化される液室構成部(18)を構成し、
この液室構成部(18)が前記外筒(20)内に収容されたとき、前記仕切部材(40)及び前記外周厚肉固定部54の外周部と前記外側を覆う部材との間に、組立時に前記仕切部材(40)及び前記ダイヤフラム(50)に付着した付着液(80)が閉じこめられる接合面が形成され、
この接合面部分では、前記弾性仕切部材(44)の外周壁(44e)及び前記外周厚肉固定部(54)の外周部が前記外側を覆う部材に当接するとともに、
前記液室構成部(18)における前記仕切部材(40)と前記弾性本体30及び前記ダイヤフラム50との積み重なる面に、中心軸線軸方向へ突出して環状に液室を囲み、作動液の漏れを防止するメインシール(70・77)が設けられ、
このメインシールとは別に、前記接合面をシールして前記付着液(80)が漏れ出すことを防ぐための付着液専用シール(71・75・76)が設けられ、
この付着液専用シールは、前記外側を覆う部材(60)へ向かって突出形成され、
少なくとも前記ダイヤフラム(50)の前記外周厚肉固定部(54)に設けられることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は上記請求項3において、前記弾性仕切部材(44)の外周壁(44e)に前記付着液専用シールの一つをなして径方向外方へ突出する付着液専用第1シール(71)を一体に設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は上記請求項2又は4において、前記外周厚肉固定部(54)の外周部に、前記付着液専用シールの一つをなして径方向外方へ突出する付着液専用第2シール(75)を一体に設けたことを特徴とする請求項2又は4に記載した液封マウント。
【0010】
請求項6の発明は上記請求項5において、前記外周厚肉固定部(54)に中心軸線方向へ突出して前記付着液専用シールの一つをなす付着液専用第3シール(76)を一体に設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載した発明は上記請求項5又は6において、前記外筒(20)の内側へ一体化される前記外側を覆う部材は、前記外筒(20)の内側へ挿入される固定リング(60)であり、この固定リング(60)の一部で前記外周厚肉固定部(54)を当接支持するとともに、
前記付着液専用シールは前記仕切部材(40)及び前記外周厚肉固定部(54)と前記固定リング(60)の間をシールすることを特徴とする。
【0012】
請求項8に記載した発明は上記請求項7において、前記固定リング(60)を外筒(20)の爪(28)により固定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、仕切部材及びダイヤフラムの外周部とその外側を覆う部材との間をシールして付着液の漏れ出しを防ぐ付着液専用シール(71・75・76)を、少なくともダイヤフラムに設けたので、液中組立時に仕切部材及びダイヤフラムの外周面に付着液が付着しても、この付着液の漏れ出しを付着液専用シールによって防ぐことができる。このため、組立後の漏出液出現が無くなるため、外観的に品質が大幅に向上する。しかも、付着液専用シールをダイヤフラムの弾性を利用して容易に形成できる。
【0014】
また、仕切部材(40)に、付着液専用シールの一つをなす付着液専用第1シール(71)を設けたので、仕切部材(40)の外周部に付着した付着液をより確実にシールできる。
【0015】
請求項2及び4の発明によれば、仕切部材を構成する弾性仕切部材(44)の弾性を利用して、その外周壁に付着液専用第1シール(71)を一体に設けることができる。
【0016】
また、請求項2、4及び5の発明のように、付着液専用シールが径方向外方へ突出するもの(71・75)を含むと、仕切部材及びダイヤフラムが中心軸線と直交方向へ移動した場合でも、この径方向外方へ突出する付着液専用シールが、仕切部材及びダイヤフラムの外周部を覆う部材(60)と径方向にて密着を保ち、シール性能を維持できる。
【0017】
請求項5の発明によれば、ダイヤフラムの外周厚肉固定部(54)に付着液専用第2シール(75)を一体に設けたので、外周厚肉固定部(54)における弾性がある厚肉部を利用して付着液専用第2シール(75)を容易に形成できる。
【0018】
請求項6の発明によれば、外周厚肉固定部(54)に中心軸線方向へ突出する付着液専用第3シール(76)を一体に設けたので、中心軸線方向にて外周厚肉固定部(54)とこれを支持する部材との間をシールでき、付着液のさらに確実なシールができる。そのうえダイヤフラムの弾性を利用して付着液専用第3シール(76)を容易に形成できる。
【0019】
請求項7の発明によれば、前記外筒(20)の内側へ挿入される固定リング(60)の一部(64)で外周厚肉固定部(54)を当接支持し、付着液専用シールで仕切部材(40)及び外周厚肉固定部(54)と固定リング(60)の間をシールするので、固定リング(60)により外周厚肉固定部(54)を固定してダイヤフラムを支持する場合でも、固定リング(60)とダイヤフラムとの間における付着液の漏出をシールできる。
【0020】
請求項8の発明によれば、固定リング(60)を外筒(20)の爪(28)により固定するので、ダイヤフラムの周囲に取付部材を一体化した場合のようにダイヤフラムを大型・重量化することなく確実に固定できるとともに、弾性本体部(30)、仕切部材(40)、ダイヤフラム(50)及び固定リング(60)の抜け荷重を大きくして信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態に係る液封マウントの斜視図
図2】同正面図
図3】同平面図
図4】同底面図
図5図3の5−5線断面図
図6】全体の組立図
図7】弾性本体部と仕切部材の組立図
図8】仕切部材の組立図
図9図5における付着液専用シール部の拡大断面図
図10】弾性本体部における下部シール部の拡大断面図
図11】弾性仕切部材におけるシール部の拡大断面図
図12】ダイヤフラムにおけるシール部の拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、図1〜3に示すように、液封マウント10は、マウント軸線CT上にて上部をボルト12によりエンジンブラケット14へ取付けられ、エンジンブラケット14は延出端部の取付穴15にて、ボルトでエンジン(それぞれ図示省略)へ取付けられる。
【0023】
下部は脚形状のブラケット16a、16bにて図示しない車体へ取付けられている。マウント軸CTは液封マウント10の中心軸線であり、この方向が防振すべき主たる振動の入力方向となる。ブラケット16a、16bは液封マウント10を車体へ取付けるための第2取付金具をなし、取付穴17にて図示しないボルトにより車体へ取付けられる。
【0024】
なお、本願において上下方向は、図2及び5の状態を規準とし、図の上方側を液封マウント10の上方側とする。すなわち、マウント軸CTは上下方向に向けて配置され、このマウント軸CT上にて後述する第1取付金具34側が上方になる。
【0025】
以下、図5及び図6を中心にして液封マウント10の構造を説明する。液封マウント10は筒状の長い外筒20内へ、弾性本体部30、仕切部材40、ダイヤフラム50及び固定リング60を組み込んで一体化される。
外筒20は上下両端に上端部開口21及び下端部開口23を備え、上方側の細径部22と下方側の太径部24とからなる2段に太さが変化する金属製の円筒状部材である。
【0026】
細径部22はストッパとして機能する部分であり、その上端部26は上端部開口部21を囲み、その周囲は部分的に中心方向へ折れ曲がって内フランジ状をなすストッパ部27になっている。上端部開口部21はボルト12が通るための開口部として上下に開放されている。細径部22と太径部24の境界部は段差部25をなしている。
【0027】
太径部24は外筒20の下部をなし、周囲にブラケット16a、16bが溶接されるとともに、内側には液室構成部18(図6)が嵌合される。液室構成部18は弾性本体部30の下部、仕切部材40、ダイヤフラム50及び固定リング60からなり、外筒20の内部にて液室を形成する部分である。このうち固定リング60は直接液室を形成しないが、液室を形成するダイヤフラム50を固定することにより実質的に液室の維持に必要な部材であるため、これも液室構成部18に含めるものとする。
【0028】
太径部24の下端部24aは上下に開放された下端部開口23を囲み、その開口縁部は若干外方へめくれるように曲がっている。下端部24aの一部は爪28をなし、組立時に内方へ折り曲げられるようになっている(図4参照)。
【0029】
弾性本体部30は図7にもその外観形状を示すように、防振主体をなす略円錐台状のゴム等からなる弾性体32と、その上部中央に一体化された第1取付金具34と、下部周囲に一体化されたリング36とを備える。
弾性体32の内側は下方へ開放された液室凹部33が形成され、この液室凹部33内に作動液が充填されて主液室38が形成される。
【0030】
第1取付金具34にはネジ穴が形成され、ここにボルト12が締結されるようになっている。また、第1取付金具34の上部は径方向へ拡大する張り出し部35をなし、この上方にストッパ部27が重なり、リバウンド時のストッパをなしている。なお、バウンド時は、第1取付金具34の上端部開口21から突出する上部周囲に嵌合されるフランジ部材13がストッパ部27へ当接するようになっている。
【0031】
液室凹部33の開口部周囲はリング36によって補強されている。リング36は弾性本体部30の下端部37に一体化されている。下端部37は下方へ向かって裾状に広がる弾性体32の下端外周部であり、ここにリング36が埋設一体化される。下端部37の外周面は太径部24の内周面と略平行であり、太径部24の内周面へ圧入されて嵌合密着する。下端部37の上端部は弾性体32の裾状部外表面へ繋がる肩部をなし、ここが段差部25に当接支持される。
【0032】
仕切部材40は、弾性本体部30の液室凹部33を閉じる部材であり、図7にその一体化状態の外観形状を示じ、図8に分解した各構成部の外観形状を示すように、蓋部材42、弾性仕切部材44、下部ホルダ46を一体化したものである。
仕切部材40にはオリフィス通路48が設けられ、このオリフィス通路48により、仕切部材40及びダイヤフラム50間に形成される副液室52と主液室38間を連絡し、所定の共振周波数にて液柱共振を生じるようになっている。仕切部材40の詳細構造は後述する。
【0033】
ダイヤフラム50は、仕切部材40の下方から副液室52を覆うとともに、副液室52の容積変化に応じて変形自在であり、仕切部材40との間に形成される副液室52の容積変化に追随するようになっている。ダイヤフラム50の外周部は厚肉の外周厚肉固定部54をなし、この外周厚肉固定部54を仕切部材40(下部ホルダ46)の下面へ当接するようになっている。
【0034】
ダイヤフラム50の外周厚肉固定部54は、固定リング60にて固定される。固定リング60は円筒状の本体部62からなる金具であり、下端部は内方へ内フランジ状に折り曲げられたフランジ部64をなし、ここが底部となって外周厚肉固定部54へ重なるようになっている。
【0035】
さらに、本体部62は外筒20の太径部24の内側へ圧入固定され、上端は蓋部材42の外周部下面へ当接する。また本体部62の外周面は一部を除いて太径部24の内周面に密接する。
【0036】
次に、図5〜8により仕切部材の詳細構造を説明する。なお。図6において仕切部材40を構成する各部(42・44・46)の断面は、図8中において、蓋部材42が6A−6A線に沿うものであり、弾性仕切部材44が6B−6B線に沿うものであり、下部ホルダ46が6C−6C線に沿うものである。
【0037】
図8に示すように、蓋部材42は金属製等の剛性材料からなる円板状をなし、外径は弾性仕切部材44及び下部ホルダ46の各外径よりも大きくなっている。蓋部材42の中央部には開口42bが設けられている。
開口42bには十文字形の変形規制部材42cが設けられている。開口42bの外側にはオリフィス通路の主液室側開口42dが形成されている。
【0038】
弾性仕切部材44はゴム等の弾性に富む部材からなる上方へ開放されたカップ状部材である。弾性仕切部材44の中央部は、開口42bに臨む可動膜部44bであり、その周囲には内周壁44cが形成され、この内周壁44cと外周壁44eの間にオリフィス通路48を構成するオリフィス溝44dが形成されている。
【0039】
下部ホルダ46は樹脂等からなる上方へ開放されたカップ状の剛性部材である。下部ホルダ46の中央部には、可動膜部44bの下方となる位置に開口46bが設けられ、ここに十文字形の変形規制部材46cが設けられている。
【0040】
開口46bと外周壁46eの間は、リング状の底部46dをなし、オリフィス溝44dの底部を支持するようになっている。また、底部46dには、図では見えないが、オリフィス通路48を副液室52へ連通するための副液室側開口が形成されている。
【0041】
46fは位置決め突起であり、内周壁44cの形成された位置決め穴44fを貫通し、蓋部材42に形成された位置決め穴42fへ上端が嵌合することにより、蓋部材42、弾性仕切部材44及び下部ホルダ46の3部材が位置決めされて一体化する。
【0042】
この仕切部材40が一体化された状態では、主液室38の作動液は開口42bを通して可動膜部44bの上方へ移動可能であり、かつ副液室52の作動液も、開口46bを介して可動膜部44bの下方へ移動可能なため、可動膜部44bが主液室38の内圧変動を吸収する。
【0043】
次に、この液封マウントの組立方を説明する。まず、図8における仕切部材40の構成各部を重ねて一体化する。一体化した状態は図7中に示されている。
この仕切部材40の下側にダイヤフラム50を重ね、これらに固定リング60を外嵌する。
【0044】
図5に示すように、固定リング60の内側に仕切部材40とダイヤフラム50が嵌合される。フランジ部64はダイヤフラム50外周厚肉固定部54を下方から支持している。
ダイヤフラム50外周厚肉固定部54、これが当接する下部ホルダ46及びこれに嵌合する弾性仕切部材44の各外周部は、環状壁をなす本体部62の内側へ嵌合する。本体部62の上端は、蓋部材42の外周部下面へ当接する。
【0045】
次に、外筒20を図6における図示状態と上下が反対になるように上下反転させて液中に配置し、上側となる太径部24の下部開口23側から、上下反転させた弾性本体部30を第1取付金具34側から挿入し、下端部37の肩部を段差部25に当接支持させる。
続いて、仕切部材40とダイヤフラム50及び固定リング60を一体化した小組体を、仕切部材40が下になるようにして、下端部24a側から太径部24の内側へ圧入する。
【0046】
これにより、予めダイヤフラム50と仕切部材40を嵌合した固定リング60が太径部24の内側へ圧入固定され、仕切部材40が液室凹部33を塞ぐ。
また、固定リング60が太径部24の内側へ圧入固定されるので、仕切部材40とダイヤフラム50及び固定リング60を一体化した小組体は、外筒20へ仮止めされる。
【0047】
続いて、太径部24の下端部24aに設けられた爪28を内側へ折り曲げることにより、固定リング60の底部であるフランジ部64が固定される。この爪28による固定で、弾性本体部30、仕切部材40、ダイヤフラム50及び固定リング60は、外筒20の内側へ圧入されて積み上げられ、段差部25と爪28の間で液密に組立一体化され、十分に高い抜け荷重が得られる。
【0048】
次に、付着液専用シールについて図9図12を中心に詳説する。
図9は、シール部分について図5の一部を拡大した図、図10は弾性本体部30の下部37における断面を一部拡大した図、図11は弾性仕切部材44の断面を一部拡大した図、図12はダイヤフラム50のリング54における断面を一部拡大した図である。
【0049】
図9において、仕切部材40及びダイヤフラム50の外周部と固定リング60の間に付着液漏出防止構造が設けられる。この液封マウント10の液中組立時において、仕切部材40及びダイヤフラム50の外周部に付着して固定リング60との接合面に閉じこめられた付着液80が、組立後に製品の表面に漏れ出せば漏出液となる。付着液80のシールは後述する付着液専用第1シール71、付着液専用第2シール75及び付着液専用第3シール76によっておこなわれる。
【0050】
以下、付着液漏出防止構造に関係する各部のシール構造を説明する。
図10は弾性体32の下端部37におけるシール部分を示す。下端部37の外周側にはリング36が一体化されている。下端部37の下端面37aとリング36の下端面36aとは面一であり、蓋部材42の外周部表面に当接する。
下端部37の下端面37aには下方へ突出する第1メインシール70が一体に形成されている。第1メインシール70も下端部37と連続して一体に形成される環状のシールであり、第1液室38の開口部周囲を囲み、蓋部材42の外周面へ密着することにより、第1液室38をシールする。
【0051】
図11は、弾性仕切部材44のシール構造を示す。弾性仕切部材44の外周壁44eにおける外周面上部には、径方向外方へ突出する付着液専用第1シール71が設けられている。付着液専用第1シール71は本体部62の内周面へ密着して、付着液80が外周壁44eと本体部62の間からリング36と太径部24の間へ漏れ出すことを防ぐものである。
【0052】
弾性仕切部材44の内周壁44c及び外周壁44eの各上端面には、第2及び第3メインシール72、73が上方へ突出して設けられている。第2メインシール72、第3メインシール73は、オリフィス溝44dを囲み、その内外周へ環状に形成されるシールであり、それぞれ蓋部材42の下面へ密接して、オリフィス溝44dからの液漏れを防いでいる。
【0053】
オリフィス溝44dの底部における外周部にも下方へ突出する第4メインシール74が設けられている。第4メインシール74は、下部ホルダ46の底部46d上面へ密接することにより、オリフィス溝44dの副液室側開口(図示省略)と底部46d間における作動液の漏れ出しを防いでいる。
【0054】
図12はダイヤフラム50における外周厚肉固定部54のシール構造を示す。外周厚肉固定部54は、略水平に拡がる内周部54aと、この外周側に連続して上方へ拡大する外周肥大部54bが一体に形成され、外周肥大部54bには、付着液専用第2シール75が径方向外方へ突出して外周肥大部54bの外周へ環状をなして形成されている。
付着液専用第2シール75は固定リング60における本体部62の内周面へ密接して、外周壁44e及び外周肥大部54の外周面54bと本体部62内周面間の付着液80が下方へ漏れ出すことを防いでいる。
【0055】
内周部54aの下面にも、付着液専用第3シール76が下方へ突出して環状に形成されている。このシールは、フランジ部64の上面へ密接し、内周部54a及び外周肥大部54bと本体部62の内周面及びフランジ部64の上面間における付着液80がダイヤフラム50と固定リング60の間から外部へ漏れ出すことを防いでいる。
なお、外周肥大部54bの上面にも、第6メインシール77が上方へ突出して環状に形成され、底部46d((図11参照)の裏面へ密接し、副液室52の作動液が漏れないように外周肥大部54b上端面との間をシールしている。
【0056】
このように、付着液専用第1シール71、付着液専用第2シール75、付着液専用第3シール76を設けることにより、液中組立時に仕切部材40及びダイヤフラム50の外周面に付着した付着液80の漏出をシールすることができる。
このため、製品の組立後に付着液80が漏れ出すことによる漏出液が出現しなくなるので、製品の品質を向上できる。
【0057】
また、付着液専用第1シール71及び付着液専用第2シール75が径方向外方へ突出しているので、仕切部材40及びダイヤフラム50が中心軸線CTと直交方向へ移動した場合でも、固定リング60の本体部62に対する密着を維持することによりシール性能を維持できる。
【0058】
しかも、仕切部材40を構成する弾性仕切部材44の弾性を利用して、その外周壁44eに付着液専用第1シール71を一体に設けることができる。
【0059】
さらに、ダイヤフラム50の外周厚肉固定部54に付着液専用第2シール75を一体に設けたので、ダイヤフラム50の弾性を利用して付着液専用第2シール75を容易に形成できる。
【0060】
さらにまた、外周厚肉固定部54に中心軸線方向へ突出する付着液専用第3シール76を一体に設けたので、ダイヤフラムの弾性を利用して付着液専用第3シール76を容易に形成できるとともに、中心軸線CT方向にて外周厚肉固定部54と固定リング60のフランジ部64との間をシールで
きる。
【0061】
また、外筒20の内側へ挿入される固定リング60の一部であるフランジ64で外周厚肉固定部54を当接支持し、付着液専用第1〜第3シール71・75・76で仕切部材40及び外周厚肉固定部54と固定リング60の間をシールするので、固定リング60を介して、ダイヤフラム50を支持する場合でも、付着液の漏出を確実にシールできる。
【0062】
このとき、固定リング60を外筒20の爪28により固定することにより、ダイヤフラム50の周囲に取付部材を一体化した場合のようにダイヤフラム50を大型・重量化することなく確実に固定できるとともに、弾性本体部30、仕切部材40、ダイヤフラム50及び固定リング60の抜け荷重を大きくして信頼性を高めることができる。
【0063】
なお、本願発明は上記説明したものに限定されるものではなく、発明の原理内において種々に変形や応用が可能である。例えば、固定リング60を省略してもよい。この場合には、ダイヤフラム50の外周部に金属製等のリングを一体化しておき、これを外筒20の爪28で固定するようにしてもよい。
【0064】
さらに、ダイヤフラム50の外周部にカップ状の部材(固定リング60と同様の部材)を一体化し、このカップ状の部材の周壁部を外筒20の大径部24内側へ圧入して全体を一体化してもよい。このとき、要求される抜け荷重の程度に応じて爪28による固定を併用もしくは省略することができる。
【0065】
また、ダイヤフラムの外周部を中心軸線CT方向へ筒状に長く伸ばして仕切部材40の外周部を覆うとともに、このダイヤフラムの筒状部外周に付着液専用シールを形成してもよい。この場合には、仕切部材の外周側における付着液専用シールは省略される




【符号の説明】
【0066】
10:液封マウント、20:外筒、22:細径部、24:太径部、25a:突部、28:爪、30:弾性本体部、32:弾性体、36:リング、37:下部、40:仕切部材、42:蓋部材、44:弾性仕切部材、44e:外周壁、46:下部ホルダ、50:ダイヤフラム、54:外周厚肉固定部、54a:内周部、54b:外周拡大部、60:固定リング、62:本体部、64:フランジ部、71:付着液専用第1シール、75:付着液専用第2シール、76:付着液専用第3シール、80:付着液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12