特許第6189709号(P6189709)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189709
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】痒み抑制剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/25 20060101AFI20170821BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20170821BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   A61K31/25
   A61P17/04
   A61K9/06
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-218771(P2013-218771)
(22)【出願日】2013年10月22日
(65)【公開番号】特開2015-81234(P2015-81234A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年6月3日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日 平成25年4月30日 刊行物名 日本皮膚科学会雑誌,第123巻,第5号,第943頁 発行者 社団法人 日本皮膚科学会事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】関口 瑠名
(72)【発明者】
【氏名】高橋 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】宮田 民恵
(72)【発明者】
【氏名】松熊 祥子
(72)【発明者】
【氏名】浅井 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】平松 正浩
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 彰
(72)【発明者】
【氏名】向井 秀樹
【審査官】 新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/135841(WO,A1)
【文献】 特開2012−056853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−33/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A61P 17/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを有効成分とする老人性乾皮症によって発生する痒み抑制剤。
【請求項2】
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを構成するダイマージリノール酸とジエチレングリコールの比率が、ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5モル:1.0モル〜0.8モル:1.0モルであることを特徴とする請求項1記載の老人性乾皮症によって発生する痒み抑制剤。
【請求項3】
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを構成するダイマージリノール酸とジエチレングリコールの比率が、ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5モル:1.0モルであることを特徴とする請求項1記載の老人性乾皮症によって発生する痒み抑制剤。
【請求項4】
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの25℃における粘度が2,500〜4,500mPa・sであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の老人性乾皮症によって発生する痒み抑制剤。
【請求項5】
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを5〜30質量%含有する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の老人性乾皮症によって発生する痒み抑制剤。
【請求項6】
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを10〜20質量%含有する請求項1〜請求項4のいずれかに記載の老人性乾皮症によって発生する痒み抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、痒み抑制剤に関する。
【背景技術】
【0002】
痒みは、多くの皮膚疾患において重要な症状の一つであるが、非常に不快な感覚であり、これを抑制するため、患者は爪や手指による意識的あるいは無意識の掻破行動をとり、その結果、皮膚のバリアを破壊し、刺激物質の経皮的浸入を助長して皮膚症状を悪化させる。したがって、痒みを制御することは、皮膚症状の悪化を防ぎ、皮膚疾患の患者の苦痛を軽減する上で極めて重要である。
【0003】
痒みを伴う皮膚疾患として、例えばアトピー性皮膚炎、老人性皮膚掻痒症、老人性皮膚乾皮症、湿疹、蕁麻疹、皮膚掻痒症、虫さされ等が挙げられる。特に、アトピー性皮膚炎は激しい痒みを伴い、憎悪・寛解を繰り返しながら慢性化することが多い。アトピー性皮膚炎や乾皮症など慢性的な痒みや掻痒感の治療には、主に外用剤としてステロイド剤やタクロリムスが使用されているが、ステロイド剤には、皮膚萎縮、紫斑、毛細血管拡張などの副作用の問題があるため、その使用は望ましいものではない。タクロリムスは、免疫抑制などの副作用の懸念がある。
【0004】
一方、アトピー性皮膚炎などの皮膚炎症状を抑制する成分としてはダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルが知られている。ダイマージリノール酸ジエチレングリコールエステルを含有する化粧料はアトピー性皮膚炎患者の皮膚に対する刺激物の反応を抑制し、経皮水分蒸散量を抑制し、アトピー性皮膚炎を改善することが知られている(特許文献1:特許第4288306号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4288306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、新たな痒み抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルについて痒み抑制作用の検討を行ったところ、該物質が慢性的な皮膚の痒みを抑制することを見出した。
【0008】
本発明は、次の構成からなる。
(1)ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを有効成分とする老人性乾皮症によって発生する痒み抑制剤。
(2)ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを構成するダイマージリノール酸とジエチレングリコールの比率が、ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5モル:1.0モル〜0.8モル:1.0モルであることを特徴とする(1)記載の老人性乾皮症によって発生する痒み抑制剤。
(3)ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを構成するダイマージリノール酸とジエチレングリコールの比率が、ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5モル:1.0モルであることを特徴とする(1)記載の老人性乾皮症によって発生する痒み抑制剤。
(4)ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの25℃における粘度が2,500〜4,500mPa・sであることを特徴とする(1)または(2)に記載の老人性乾皮症によって発生する痒み抑制剤。
(5)ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを5〜30質量%含有する(1)〜(4)のいずれかに記載の老人性乾皮症によって発生する痒み抑制剤。
(6)ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを10〜20質量%含有する(1)〜(4)のいずれかに記載の老人性乾皮症によって発生する痒み抑制剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、新規な痒み抑制剤が提供される。さらに本発明の痒み抑制剤は慢性的な痒みに対して抑制効果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】アトピー性皮膚炎患者に対する痒み抑制試験の結果を示すグラフである。
図2】痒みを愁訴とする乾皮症患者への塗布による皮膚所見(掻破痕スコア)変化を示すグラフである。
図3】痒みを愁訴とする乾皮症患者への塗布による、痒みVASの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳述する。
本発明のダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルはダイマージリノール酸とジエチレングリコールをエステル化して得られる。
【0012】
<ダイマージリノール酸>
ダイマージリノール酸は、一般的にはダイマー酸と呼ばれる2塩基酸で、2分子のリノール酸[(9Z,12Z)−オクタデカ−9,12−ジエン酸]等の不飽和脂肪酸を重合させたリノール酸の2量体である。リノール酸の重合反応の生成物にはリノール酸の2量体の他に、未反応のリノール酸や3量体、さらに高重合のリノール酸重合体が含まれる。分子蒸留によりリノール酸の2量体の含有量を90質量%以上に高めることができる。また、得られたリノール酸の2量体の不飽和結合に水素を添加して安定化させることができる。これらのリノール酸の2量体を水素添加したものは、一般的には水添ダイマー酸と呼ばれている。本発明のダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの合成に用いるダイマージリノール酸としては、これらのダイマー酸、及び、水添ダイマー酸の何れをも使用することができるが、酸化安定性の観点から水添ダイマー酸を使用することがより好ましい。水添ダイマー酸は市販品、例えばユニケマ社PRIPOL1006、PRIPOL1009、PRIPOL1025等を用いることが可能である。
【0013】
<ジエチレングリコール>
ジエチレングリコールはO(CHCHOH)の化学式で表される化合物であり、有機合成原料として市販されている。
【0014】
ダイマージリノール酸とジエチレングリコールをエステル化反応で重合することによりダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを得ることができる。エステル化法は特に限定されないが、例えば、無触媒若しくは触媒としてパラトルエンスルホン酸、硫酸、塩酸、メタンスルホン酸等を用いて、無溶媒若しくは溶媒としてトルエン、ヘキサン、ヘプタン等を用いて、50〜260℃の温度で反応すれば良い。
【0015】
ダイマージリノール酸とジエチレングリコールの構成するダイマージリノール酸とジエチレングリコールの比率は、0.5モル:1.0モル〜0.8モル:1.0モルが好ましい。ダイマージリノール酸:ジエチレングリコールの比率が0.5モル:1.0モルのときは、ダイマージリノール酸の両端にジエチレングリコールが結合したものを中心とした分布のオリゴマーとなる。ダイマージリノール酸:ジエチレングリコールの比率が0.8モル:1.0モルのときはダイマージリノール酸4つとジエチレングリコール5つがエステル結合したものを中心とした分布のオリゴマーとなる。
いずれにしてもダイマージリノール酸と比べてジエチレングリコールが過剰なので、カルボキシル基はほとんど残存せず、オリゴマーの末端に残存する官能基はほとんど水酸基となる。ダイマージリノール酸とジエチレングリコールのモル比が1に近づくと重合度が増大し、油剤の粘性が増大し好ましくない。また、ジエチレングリコールと比べてダイマージリノール酸のモル濃度が過剰になると、残存する官能基がカルボキシル基となり、安全性の点で好ましくない。
【0016】
本発明の痒み抑制剤は、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールは、慢性的な掻痒感を感じる皮膚の部位にそのまま塗布して痒み抑制剤とすることができる。またより塗布しやすくするために、皮膚外用剤として製剤化することが好ましい。痒み抑制剤に配合するダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルの配合量は痒み抑制剤あたり1〜40質量%、好ましくは5〜35質量%である。
【0017】
皮膚外用剤とする場合は、乳液、スキンクリーム、軟膏などの製剤の形態を例示できる。
皮膚外用剤には、2価のアルコールを配合することが好ましい。
本発明の皮膚外用剤に配合する2価のアルコールとしては、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、プロピレングリコール等が挙げられる。
皮膚外用剤の調製に当たってはダイマージリノール酸ジエチレングリコールの物理化学的特性から皮膚外用剤にしばしば用いられるオイルゲルを利用した軟膏製剤とすることが好ましい。
オイルゲル製剤は、油性ゲルとも呼ばれ、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを含む油剤を油性増粘剤でゲル化して調製することができる。
皮膚外用剤の調製に当たっては、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールを界面活性剤により乳化することにより、乳液、スキンクリームとすることが好ましい。
【0018】
本発明の痒み抑制剤には、その用途、使用目的、剤形などに応じて、植物油のような油脂類、高級脂肪酸、高級アルコール、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、防腐剤、糖類、金属イオン封鎖剤、粉体成分、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、ヒアルロン酸のような保湿剤、香料、pH調整剤等を含有させることができる。ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分を含有させることもできる。
【0019】
油脂類としては、例えば、ツバキ油、月見草油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、トウモロコシ油、ゴマ油、ホホバ油、胚芽油、小麦胚芽油、トリオクタン酸グリセリン等の液体油脂、カカオ脂、ヤシ油、硬化ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウクロウ核油、硬化油、硬化ヒマシ油等の固体油脂、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、ヌカロウ、ラノリン、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ等のロウ類、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス等があげられる。
高級脂肪酸として、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)等があげられる。
【0020】
高級アルコールとして、例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、オクチルドデカノール等の分岐鎖アルコール等があげられる。
【0021】
アニオン界面活性剤として、例えば、ラウリン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン等のアルキルエーテル硫酸エステル塩、N−アシルサルコシン酸、スルホコハク酸塩、N−アシルアミノ酸塩等があげられる。
カチオン界面活性剤として、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム等のアルキルトリメチルアンモニウム塩、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等があげられる。
【0022】
両性界面活性剤として、例えば、アルキルベタイン、アミドベタイン等のベタイン系界面活性剤等があげられる。
非イオン界面活性剤として、例えば、ソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体があげられる。
防腐剤として、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン等をあげることができる。
金属イオン封鎖剤として、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩等のエデト酸塩をあげることができる。
べたつきを抑えたり、色を付けたりするために、粉末成分として、例えば、タルク、カオリン、雲母、シリカ、ゼオライト、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、セルロース粉末、無機白色顔料、無機赤色系顔料、酸化チタンコーテッドマイカ、酸化チタンコーテッドタルク、着色酸化チタンコーテッドマイカ等のパール顔料、赤色201号、赤色202号等のタール色素をあげることができる。
【0023】
紫外線吸収剤として、例えば、パラアミノ安息香酸、サリチル酸フェニル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等をあげることができる。
紫外線遮断剤として、例えば、酸化チタン、タルク、カルミン、ベントナイト、カオリン、酸化亜鉛等をあげることができる。
【0024】
保湿剤として、例えば、キシリトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、ピロリドンカルボン酸、シクロデキストリン等があげられる。
薬効成分として、例えば、ビタミンA油、レチノール等のビタミンA類、リボフラビン等のビタミンB2類、ピリドキシン塩酸塩等のB6類、パントテン酸カルシウム等のパントテン酸類、ビタミンD2、コレカルシフェロール等のビタミンD類、α−トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸DL−α−トコフェロール等のビタミンE類等のビタミン類をあげることができる。
【0025】
そのほかに、ローヤルゼリー、ぶなの木エキス等の皮膚賦活剤、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸、γ−オリザノール等の血行促進剤、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、アズレン等の消炎剤、アルギニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸類、常在菌コントロール剤のマルトースショ糖縮合物、塩化リゾチーム等をあげることができる。
さらに、カミツレエキス、パセリエキス、ワイン酵母エキス、グレープフルーツエキス、スイカズラエキス、コメエキス、ブドウエキス、ホップエキス、コメヌカエキス、ビワエキス、オウバクエキス、ヨクイニンエキス、センブリエキス、メリロートエキス、バーチエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、トウガラシエキス、レモンエキス、ゲンチアナエキス、シソエキス、アロエエキス、ローズマリーエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、マロニエエキス、ハマメリスエキス、クワエキス等の各種抽出物を配合することができる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例、参考例、試験例を示し、本発明を詳細に説明する。
<参考例1>
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5モル:1.0モル)を参考例1とし、その製造を示す。
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた1Lの反応器に、ダイマージリノール酸(ユニケマ社製、PRIPOL1025)349g(0.6モル)及びジエチレングリコール127g(1.2モル)を仕込み、窒素気流中210〜220℃に加熱し、生成する水を留去しながら12時間エステル化反応を行い、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.5:1.0)416gを淡黄色高粘度油状物として得た。
得られた3ロットの油剤の物性値を以下の表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
<参考例2>
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.8モル:1.0モル)を参考例2とし、その製造を示す。
攪拌機、温度計、ガス導入管を備えた1Lの反応器に、ダイマージリノール酸(ユニケマ社製、PRIPOL1025)372g(0.64モル)及びジエチレングリコール84.8g(0.8モル)を仕込み、窒素気流中210〜220℃に加熱し、生成する水を留去しながら14時間エステル化反応を行い、ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル(ダイマージリノール酸:ジエチレングリコール=0.8:1.0)375gを淡黄色高粘度油状物として得た。
得られた油剤の物性値を以下の表2に示す。
【0029】
【表2】
【0030】
<痒み抑制試験1>
試験方法
1.対象
被験者は、軽度、中程度のアトピー性皮膚炎または皮脂欠乏症と診断された男女とした。重篤な基礎疾患がなく、担当医師が本試験に適当と判断し、かつ試験開始前に本試験内容及び目的について十分に説明を受け、対象者本人が自発的に参加を希望する者とした。
【0031】
2.試験期間
連続した14日で評価した。
【0032】
3.被験品及び方法
3−1 被験品
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを35%含有するオイルゲル剤(実施例1)、対照として白色ワセリン(日本薬局方)を用いた。
【0033】
3−2 被験品の調製方法
下記表3の組成のオイルゲル剤を調製した。
【0034】
オイルゲル剤の処方
【0035】
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル、イソノナン酸イソトリデシル、ジプロピレングリコール、トリ(ベヘン酸/イソステアリン酸/エイコサン二酸)グリセリル、ダイマージリノール酸ジ(イソステアリル/フィトステリル)、ベヘン酸/エイコサン二酸)グリセリル、トコフェロール、セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド、グリチルレチン酸ステアリルを80℃で加熱溶解し、撹拌して冷却し、被験品(実施例1)として用いた。
【0036】
3−3 試験方法
被験者は、乾燥症状が見られる顔面及び身体の右半身にオイルゲル剤、左半身にワセリンを使用した。被験品を1日2回(朝/夕)連続2週間使用した。
【0037】
VAS(Visual Analog Scale)法による『痒み』評価
試験前後の被験品の、「痒み」の程度についてVAS法を用いて評価した。結果は、Wilcoxonの符号付き順位和検定を用いて解析した。
【0038】
<試験結果>
1. 被験者背景
被験者は、男性3例、女性25例の合計28例で、被験品による重篤な副反応は認められなかった。
【0039】
2.VAS法による痒み評価
被験者のうち1名は試験後のデータが未解答のため解析対象から除去し、27例を結果として用いた。試験前後の推移をWilcoxonの符号付順位検定を用いて検定した結果、かゆみの程度が有意に減少した。結果を図1に示す。
【0040】
<痒み抑制試験2>
試験方法
1.対象
被験者は、老人性乾皮症と診断され、下腿に痒み、乾燥を申告する50歳以上の男女とした。重篤な基礎疾患がなく、担当医師が本試験に適当と判断し、かつ試験開始前に本試験内容及び目的について十分に説明を受け、対象者本人が自発的に参加を希望する者とした。
【0041】
2.試験期間
連続した25日で評価した。
【0042】
3.被験品及び方法
3−1 被験品
ダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルを10%及び20%含有するクリーム、白色ワセリン(日本薬局方)
【0043】
3−2 群設定
無処置 5例、白色ワセリン 5例、10%D/DCクリーム(実施例2) 20例、20%D/DCクリーム(実施例3)40例とした。
【0044】
3−2 被験品の調製方法
表3に示す組成のクリーム製剤を調製した。
【0045】
【表3】
【0046】
水相にグリセリン、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、カルボキシビニルポリマー、アルギニン、水を加えて80℃で溶解し、油相にダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステル、スクワラン、ベヘニルアルコール、ステアリン酸、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60を加えて、80℃で加熱溶解した。水層に油相を徐々に添加して、ホモミキサーにより乳化させ、撹拌して冷却し、被験品(実施例2、実施例3)として用いた。
【0047】
3−3 試験方法
被験者は、下腿全体に朝、昼、入浴後の1日3回、2 finger tip unit:約1gを塗布した。
【0048】
3−4 皮膚所見
評価部位を下腿とし、担当医師は、試験開始時、試験終了時に被験者を診察し、掻破痕の程度を「4:重度」「3:中等度」「2:軽度」「1:軽微」「0:なし」の5段階で判定した。
【0049】
3−5 VAS(Visual Analog Scale)法による『痒み』評価
試験前後の被験品の、「痒み」の程度についてVAS法を用いて評価した。群間比較はBonferroniの多重比較検定を用いて解析した。
【0050】
<試験結果>
1.被験者背景
被験者は、男性24例、女性26例の合計50例で、平均年齢は57.3歳であった。4週間の連続使用を完遂し、試験品による重篤な副反応は認められなかったため、全被験者を解析対象とした。
【0051】
2.皮膚所見
掻破痕について、試験開始時(0週)、試験終了時(4週)の各々5段階評価の平均スコアを被験品ごとに示す(図2)。10%及び20%D/DCクリーム群で、0週と比較し、4週で平均スコアが有意に減少した。掻破痕における群間比較では、無処置群と比較して10%及び20%D/DCクリーム群で有意に症状が改善した。10%D/DCクリーム群では掻破痕スコアは0であったことから、痒みをほぼ完全に抑制できたものと評価できる。
【0052】
3.痒み軽減効果及び乾燥改善効果(VAS評価)
痒みのVASスコアの経時変化を図3に示す。
各被験者の評価部位における痒みの平均VASスコアについて、痒みは、20%D/DCクリーム群において、試験開始1週目から、無処置群と比較して有意にVASスコアが低下した。そして、10%D/DCクリーム群では3週目から、有意にVASスコアが低下した。
【0053】
試験1、2からダイマージリノール酸ジエチレングリコールオリゴマーエステルは慢性的な皮膚の痒みを抑制できることが確認できた。
図1
図2
図3