特許第6189713号(P6189713)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6189713生体情報モニタ装置及びセントラルモニタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189713
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】生体情報モニタ装置及びセントラルモニタ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   A61B5/00 102E
   A61B5/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-224642(P2013-224642)
(22)【出願日】2013年10月29日
(65)【公開番号】特開2015-84876(P2015-84876A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和氣 眞悟
(72)【発明者】
【氏名】安丸 信行
(72)【発明者】
【氏名】荻野 芳弘
【審査官】 佐藤 高之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/044189(WO,A2)
【文献】 特開2004−129788(JP,A)
【文献】 国際公開第03/005265(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0239420(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0064342(US,A1)
【文献】 米国特許第05298021(US,A)
【文献】 国際公開第03/038566(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00−5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
被検者の生体情報を測定する測定部と、
所定の時刻からの経過時間を計測する計測部と、
前記被検者の容体に関連する複数のイベントを含むイベントリストを記録する記録部と、
各部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記表示部は、前記測定部により測定された生体情報を表示する第1領域と、複数の前記イベントを表示する第2領域と、前記経過時間を表示する第3領域と、を含んで表示可能であり、
前記制御部は、複数の前記イベントのうち実施が完了したイベントを前記第2領域から削除した後、複数の前記イベントのうち前記第2領域に表示されていなかったイベントを前記第2領域に表示させる、生体情報モニタ装置。
【請求項2】
複数の前記イベントには、前記測定部によって測定されている生体情報と関連するイベントが含まれており、
前記制御部は、前記生体情報と関連する前記イベントの設定条件が満たされたとき、当該イベントを前記第2領域から削除する、請求項1に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項3】
前記表示部は、更に前記測定部で測定された被検者の生体情報に基づくトレンドを表示する第4領域を表示可能である、請求項1または2に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項4】
前記記録部は、複数の前記イベントのうち実施が完了したイベントの履歴を記録し、
前記制御部は、前記イベントの履歴を前記表示部に表示させる、請求項1から3のいずれか一項に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項5】
報知部を備え、
前記制御部は、複数の前記イベントのうち実施予定時刻を経過しても実施が完了していないイベントがある場合、前記報知部に警告を報知させる、請求項1から4のいずれか一項に記載の生体情報モニタ装置。
【請求項6】
前記請求項1から5のいずれか一項に記載された生体情報モニタ装置とネットワークを介して接続され、前記生体情報モニタ装置を集中管理するセントラルモニタであって、
前記生体情報モニタ装置に表示される情報が、前記ネットワークを介して、前記生体情報モニタ装置と同じ表示態様で表示される、セントラルモニタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の生体情報を測定し、測定した生体情報を表示部に表示する生体情報モニタ装置及びセントラルモニタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療従事者は、学会や病院で定めたガイドラインに従って被検者に対して医療処置を行なっている。ガイドラインによれば、例えば被検者の疾病が敗血症と診断された場合、その被検者に対しては迅速かつ的確な医療処置を行なうことが求められる。
【0003】
一方で、医療従事者は、被検者の生体信号を生体情報モニタ装置によってモニタリングして、被検者の容体を把握している。例えば、特許文献1には、生体情報を被検者から測定し、その生体情報を表示部に表示する生体情報モニタ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−098189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、敗血症の被検者に対する処置が定められたガイドラインは、時系列順に行なうべき処置が長時間にわたり複数定められている。このため、医療従事者は、生体情報モニタ装置の表示画面に表示される生体情報を観察しながら被検者の容体を把握しつつ、ガイドラインに従って各処置を適切に実施できたか否かを記録し次の処置を行わなければならなかった。このため、被検者の処置における医療従事者にかかる負担が大きかった。
【0006】
そこで、本発明は、被検者に対する処置において医療従事者にかかる負担を軽減することが可能な生体情報モニタ装置及びセントラルモニタの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の生体情報モニタ装置は、
表示部と、
被検者の生体情報を測定する測定部と、
所定の時刻からの経過時間を計測する計測部と、
前記被検者の容体に関連する複数のイベントを含むイベントリストを記録する記録部と、
各部の動作を制御する制御部と、
を備え、
前記表示部は、前記測定部により測定された生体情報を表示する第1領域と、複数の前記イベントを表示する第2領域と、前記経過時間を表示する第3領域と、を含んで表示可能であり、
前記制御部は、複数の前記イベントのうち実施が完了したイベントを前記第2領域から削除した後、複数の前記イベントのうち前記第2領域に表示されていなかったイベントを前記第2領域に表示させる。
【0008】
この構成によれば、被検者から測定した生体情報、被検者の容体に関連するイベント、および所定の時刻からの経過時間が、生体情報モニタ装置の表示部にまとめて表示される。したがって、医療従事者は、生体情報モニタ装置の表示部の各領域に表示される各情報を見ながら、被検者の容体を把握しつつ次に実施すべき処置の内容を確認することができる。また、実施が完了したイベントは、表示部の第2領域から削除され、実施すべきイベントのみが第2領域に表示される。したがって、医療従事者にとって、イベントリストの表示内容を確認し易くなるとともに表示されたイベントの中から次に実施すべき特定のイベントを見つけ易くなる。このようにして、被検者に対する処置において医療従事者にかかる負担が軽減される。
【0009】
また、本発明の生体情報モニタ装置において、
複数の前記イベントには、前記測定部によって測定されている生体情報と関連するイベントが含まれており、
前記制御部は、前記生体情報と関連する前記イベントの設定条件が満たされたとき、当該イベントを前記第2領域から削除しても良い。
【0010】
この構成によれば、リアルタイムで測定している生体情報と関連したイベントについては、設定条件が満たされたときに表示部の第2領域の中からそのイベントの表示が自動的に削除される。このため、医療従事者によるイベントリストの管理が容易になる。
【0011】
また、本発明の生体情報モニタ装置において、
前記表示部は、更に前記測定部で測定された被検者の生体情報に基づくトレンドを表示する第4領域を表示可能としても良い。
【0012】
この構成によれば、医療従事者は、被検者から測定された生体情報に基づくトレンドを表示部の第4領域上で確認することができる。このため、医療従事者はトレンドを見ることで処置の効果等を確認したり、被検者の容体の変化をより迅速に確認することができる。このため、医療従事者は、例えば、同程度の優先順位の複数のイベントが第2領域に表示されている場合、最新のトレンドを確認しつつ、次に行なうべきイベント(処置)を判断しやすくなる。
【0013】
また、本発明の生体情報モニタ装置において、
前記記録部は、複数の前記イベントのうち実施が完了した前記イベントの履歴を記録し、
前記制御部は、前記イベントの履歴を前記表示部に表示させても良い。
【0014】
この構成によれば、実施が完了したイベントの履歴が記録部に記録されているため、履歴を記録部から読み出して再度、表示部に表示させることができる。これにより、第三者が、実施が完了したイベントの履歴やその内容等を表示部上で事後チェックすることができ、医療処置の作業性を向上させることができる。
【0015】
また、本発明の生体情報モニタ装置は、報知部を備え、
前記制御部は、複数の前記イベントのうち実施予定時刻を経過しても実施が完了していない前記イベントがある場合、前記報知部に警告を報知させても良い。
【0016】
この構成によれば、実施予定時刻が過ぎても実施されていないイベントを警告することで、医療従事者に対して注意喚起を促すことができる。
【0017】
また、本発明のセントラルモニタは、
生体情報モニタ装置とネットワークを介して接続され、前記生体情報モニタ装置を集中管理するセントラルモニタであって、
前記生体情報モニタ装置に表示される情報が、前記ネットワークを介して、前記生体情報モニタ装置と同じ表示態様で表示される。
【0018】
この構成により、医療従事者は各被検者のところまで移動しなくても各被検者の情報を確認することができる。これにより、医療従事者の作業効率を向上させることができ、医療従事者にかかる負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の生体情報モニタ装置及びセントラルモニタによれば、医療従事者にかかる負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る生体情報モニタ装置の構成を示す機能ブロック図である。
図2】生体情報モニタ装置の表示部に表示される画面の一例を示す図である。
図3】生体情報モニタ装置の表示部に表示される画面の別例を示す図である。
図4】生体情報モニタ装置の表示部に表示される画面の別例を示す図である。
図5】生体情報モニタ装置の表示部に表示される画面の別例を示す図である。
図6】生体情報モニタ装置の表示部に表示される画面の別例を示す図である。
図7】生体情報モニタ装置に接続されたセントラルモニタを示す構成図である。
図8】生体情報モニタ装置の表示部に表示される画面の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る生体情報モニタ装置及びセントラルモニタの実施形態の一例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る生体情報モニタ装置1の構成を示す機能ブロック図である。
図1に示すように、生体情報モニタ装置1は、測定部2と、計測部3と、記録部4と、報知部5と、表示部6と、これらの各部を制御する制御部7と、を備えている。
【0023】
生体情報モニタ装置1は、測定部2を介して、被検者20に装着された電極、カフ等を含む各種のセンサ21と接続される。生体情報モニタ装置1は、接続された各種のセンサ21によって生体情報に係る複数種の信号を取得し、取得した信号が生体情報モニタ装置1の測定部2に入力される。取得される信号としては、例えば、心拍数、血圧、呼吸数、体温、脈波、中心静脈圧(CVP:Central Venous Pressure)等が挙げられる。
【0024】
測定部2は、被検者の生体情報を測定する。測定部2は、センサ21から入力される信号に基づいて各種の生体情報に係る測定値を取得する。測定部2は、制御部7と通信可能に接続され、取得した生体情報の測定値を制御部7に出力する。
【0025】
計測部3は、所定の時刻からの経過時間を計測するカウンタによって構成されている。所定の時刻とは、例えば、生体情報モニタ装置1によって被検者の生体情報を測定し始めた時刻のことをいう。生体情報を測定し始めた時点から、カウンタの値をカウントアップすることにより経過時間を計測する。この場合、カウンタ値のカウントアップは、生体情報に係る測定値の取得をトリガーとして自動的に開始される。計測部3は、制御部7と通信可能に接続され、計測した経過時間を制御部7に出力する。
【0026】
なお、経過時間の計測が開始される所定の時刻は、被検者に対して医療従事者が治療を始めた時刻としても良い。この場合、医療従事者の判断によって治療の開始時刻を決定することができるように、スタートボタンを設けて、医療従事者のボタン操作をトリガーとしてカウンタ値のカウントアップを開始するようにしても良い。また、生体情報を測定し始めた時刻を所定の時刻とするか、あるいは医療従事者が治療を始めた時刻を所定の時刻とするかを、設定で選択できる構成としても良い。これにより、医療従事者における作業性を向上させることができる。
【0027】
記録部4は、被検者に関する情報を記録する。記録部4は、少なくとも、被検者に対して実施すべきイベントリストと、実施が完了して表示部6から表示が削除されたイベントの履歴と、を記録するように構成されている。本例のイベントとは、被検者の容体に関連する項目であってチェックリスト(Todoリスト)の一項目に相当するものである。例えば、培養検査の検体である血液を2種類以上採取して検査に出したか否かを確認するためのイベント「培養検体採取2検体以上」や、血液ガス検査を行ったか否かを確認するためのイベント「血液ガス測定」等がある。また、イベントリストとは、学会や病院独自のガイドラインに基づいて、疾病や治療ごとに作成された実施すべきイベントのリストのことをいう。イベントリストには被検者の容体に関連する複数のイベントが含まれる。
【0028】
報知部5は、イベントを実施すべき予定時刻を経過しても、そのイベントが表示部6から削除されずに表示されている場合、制御部7からの指令により警告として報知する。警告を報知する方法としては、例えば、スピーカから警告音を出力させる。警告音とともに表示部6におけるそのイベントの表示領域を点滅表示させても良い。
【0029】
表示部6は、生体情報モニタ装置1の前面に設けられ、タッチパネル式の液晶画面によって構成されている。表示部6は、制御部7と通信可能に接続され、制御部7から出力される制御信号によって表示制御される。表示部6は、制御部7からの指令により、複数の表示領域、例えば、第1領域11、第2領域12、第3領域13および第4領域14を表示可能である。
【0030】
第1領域11には、測定部2によって取得された生体情報の測定値が表示される。生体情報の測定値は波形および数値の態様で表示される。第2領域12には、被検者の容体に関連する複数の実施すべきイベントのうちの少なくとも一つのイベントが表示される。第3領域13には、計測部3によって所定の時刻から計測された経過時間が表示される。第4領域14には、測定部2によって測定された被検者の生体情報に関するトレンドと、トレンドの表示に対応したイベントの履歴が表示される。生体情報のトレンドは測定された過去の生体情報、及びリアルタイムで測定されている生体情報に基づいて表示可能である。
【0031】
制御部7は、CPU等の演算素子を含んで構成される演算処理回路である。生体情報モニタ装置1における各部の動作制御は、制御部7の基板等に配置された回路素子等のハードウェアの動作、演算素子に格納されたプログラム等のソフトウェアの動作、あるいはこれらの組合せによって実現され得る。
【0032】
次に、図2図6を参照して、医療従事者が敗血症の被検者に対して処置を行う場合における生体情報モニタ装置1の動作を説明する。
【0033】
図2に示すように、生体情報モニタ装置1が起動されると、制御部7は、表示部6の正面視において、左3/4程の領域に第1領域11を表示し、右1/4程の領域に第2領域12と第3領域13と第4領域14とを上下方向に並べて表示させる。さらに第2領域12は上1/6程の領域に表示させ、第3領域は第2領域12の下の1/6程の領域に表示させ、第4領域14は下2/3程の領域に表示させる。
【0034】
生体情報の測定が開始されると、第1領域11には、測定部2によって測定された生体情報に係る心拍数31、心電図32、血圧値33、平均血圧値34、血圧波形35、CVP値36、CVP波形37等がリアルタイムで表示される。
【0035】
また、第2領域12には被検者の疾病である敗血症に関連するイベントリスト42の一部が表示される。図2では、イベント「培養検体採取2検体以上」43aとイベント「血液ガス測定」43bの2個のイベントが表示されている。イベント「培養検体採取2検体以上」43aとは、敗血症の感染原因を突き止めるために行う培養検査の検体である血液を2種類以上採取して検査に出したか確認するためのチェック項目である。イベント「血液ガス測定」43bとは、血液ガス検査を行ったか確認するためのチェック項目である。
【0036】
イベント43aの左側に表示された「1:00」の時刻45は、イベントを実施すべき予定時刻を示しており、経過時間41における計時が1時間を経過するまでにイベント43aを実施すべきことを示している。また、左側に時刻45が表示されていないイベント43bは、その実施すべき予定時刻が制限されていないことを示している。
【0037】
また、第3領域13には生体情報を測定し始めた時刻からの経過時間41が表示される。図2に示された経過時間41の数値は、被検者の生体情報を測定し始めてから4分15秒経過したことを示している。経過時間41は、生体情報の測定開始時をゼロ(00:00:00)としてカウントアップされる。
【0038】
また、第4領域14には、例えば、過去の及びリアルタイムのPPVとCVPとの関係を示すグラフ51や、測定された複数の生体情報における波形履歴を表すグラフ52等の生体情報に関するトレンドが表示される。
【0039】
生体情報の測定が開始された後、医療従事者は、例えば、第2領域12の表示面積を拡大して表示させることができる。医療従事者が所定の操作をすると、制御部7は、その操作に応じて例えば図3に示すように、表示部6の右1/4程の領域における1/2程の領域に第2領域を表示させる。
【0040】
第2領域12の表示面積を図3に示す大きさに変更した場合、第2領域12に表示されるイベントの数は、図2の第2領域12に表示されたイベントの数より増加する。図2に示す第2領域12では2個のイベントしか表示されていないが、図3に示す第2領域12では8個のイベントが表示されている。第2領域12には、それまで表示されていなかった残りのイベントの中から優先順位の高い順に選択されたイベントが、既に表示されていたイベント(ここでは図2との対比においてイベント「血液ガス測定」43b)以降に順次表示される。
【0041】
すなわち、図3に示す第2領域には、残りのイベントの中から選択された「原因菌確定」43c,「ソースコントロール」43d,「心エコー評価」43e,「CVP挿入」43f,「平均血圧>65mmHg」43g,「CVP>8mmHg」43hのイベントが、イベントリスト42Aに表示される。その結果、合計8個のイベントが、実施すべき優先順位の高いものから順に上から下へと並べて表示される。
【0042】
なお、イベント「原因菌確定」43cとは、イベント「培養検体採取2検体以上」43aの検査の結果に基づいて敗血症の原因菌を確定できたか確認するためのチェック項目である。イベント「ソースコントロール」43dとは、イベント「原因菌確定」43cで確定された原因菌の治療を開始したか確認するためのチェック項目である。イベント「心エコー評価」43eとは、心エコーの検査を行って心機能を評価したか確認するためのチェック項目である。イベント「CVP挿入」43fとは、CVPを測定するためのカテーテルを大静脈に挿入したか確認するためのチェック項目である。イベント「平均血圧>65mmHg」43gとは、平均動脈血圧の値を65mmHg以上に保つように輸液管理を行ったか確認するためのチェック項目である。イベント「CVP>8mmHg」43hとは、CVPの値を8mmHg以上に保つように輸液管理を行ったか確認するためのチェック項目である。
【0043】
また、イベント43f〜43hの左側に表示された「6:00」の時刻45は、経過時間41における計時が6時間を経過するまでにイベント43f〜43hを実施すべきことを示している。また、時刻45が表示されていないイベント43b〜43eについては、実施する優先順位は定められているもののその実施予定時刻が制限されていないことを示している。
【0044】
また、生体情報の測定が開始された後、医療従事者は、実施が完了したイベントを第2領域12から削除することができる。例えば第2領域12に表示されている各イベントの表示領域を操作者がタッチして選択すると、選択されたイベントが第2領域から削除される。そして、上述のようにしてイベントが削除された場合、削除されたイベントの次に優先順位が高いイベントが第2領域12に追加で表示される。すなわち、削除されたイベントよりも下側の位置に表示されていたイベントは、順次繰り上げて表示される。そして、それまで表示されていなかったイベントの中で優先順位が最も高いイベントが第2領域12に表示されるイベントリスト42Aの一番下の位置に追加で表示される。
【0045】
また、医療従事者は、第2領域12に、被検者に対して処置する必要のないイベントが表示されていると判断した場合、そのイベントの×部分の削除部46をタッチすることで、そのイベントを第2領域から削除することができる。
【0046】
また、生体情報の測定が開始された後、第2領域12に表示される複数のイベントのうち測定部2を介してセンサ21によって測定されている生体情報と関連するイベントについては、所定の設定条件が満たされたときにイベントリスト42Aから自動的に削除される。例えば、第2領域12に表示されたイベントのうちイベント「CVP挿入」43f、イベント「平均血圧>65mmHg」43g、及びイベント「CVP>8mmHg」43hは、測定部2でリアルタイムに測定されている生体情報と関連するイベントである。
【0047】
このうちイベント「CVP挿入」43fの場合について説明する。被検者にカテーテルが挿入されるとCVPの測定が開始されて、第1領域11のCVP値36に測定数値が表示されるとともにCVP波形37に測定波形が表示される。医療従事者が、生体情報モニタ装置1に対して、CVPの数値及び波形が測定される(第1領域11に表示される)という設定条件をイベント「CVP挿入」43fの実施完了の条件として予め設定しておくことにより、この条件が満たされたときにイベントの実施が完了したと自動的に判断し「CVP挿入」43fの表示が第2領域12から自動的に削除される。
【0048】
また、イベント「平均血圧>65mmHg」43gについても同様に、測定されている平均血圧値が所定の時間継続して65mmHg以上に保たれたという設定条件をイベント「平均血圧>65mmHg」43gの実施完了の条件として予め設定しておくことにより、この条件が満たされたときにイベントの実施が完了したと自動的に判断し「平均血圧>65mmHg」43gの表示が第2領域12から自動的に削除される。
【0049】
また、イベント「CVP>8mmHg」43hについても同様に、測定されているCVP値が所定の時間継続して8mmHg以上に保たれたという設定条件をイベント「CVP>8mmHg」43hの実施完了の条件として予め設定しておくことにより、この条件が満たされたときにイベントの実施が完了したと自動的に判断し「CVP>8mmHg」43hの表示が第2領域12から自動的に削除される。
【0050】
制御部7は、上記のように、手動または自動的に第2領域12から削除されたイベントの履歴を記録部4に記録させる。
【0051】
上述のようにしてイベントが自動で削除された場合も手動で削除した場合と同様に、削除されたイベントの次に優先順位が高いイベントが第2領域12に追加で表示される。すなわち、削除されたイベントよりも下側の位置に表示されていたイベントは、順次繰り上げて表示される。そして、それまで表示されていなかったイベントの中で優先順位が最も高いイベントが第2領域12に表示されるイベントリスト42Aの一番下の位置に追加で表示される。
【0052】
また、図4に示すように、医療従事者は、さらに第2領域12の表示面積を拡大して表示させることができる。医療従事者が所定の操作をすると、制御部7は、その操作に応じて例えば図4に示すように、第4領域14を削除して第2領域12を下側に拡大する。そして、第2領域12に表示されるイベントの数が増加する。第2領域12には、上記と同様に優先順位の高い順に選択されたイベントが、既に表示されていたイベント(ここでは図3との対比においてイベント「CVP>8mmHg」43h)以降に順次表示される。図4に示す第2領域12に表示されるイベントリスト42Bには、選択された「尿量>0.5ml/kg/h:□ml/kg/h」43i,「ScvO>70%:□%」43j,「代謝性アシドーシス改善」43k,「血中乳酸値正常化」43lのイベントが追加されている。その結果、合計12個のイベントが第2領域12に表示される。第2領域12に表示される12個のイベントも上記と同様に実施すべき優先順位の高いものから表示されている。
【0053】
なお、さらに追加で表示されたイベント「尿量>0.5ml/kg/h:□ml/kg/h」43iとは、被検者の体重1kgにおける1時間あたりの尿量を0.5ml以上に保つように管理されているか確認するためのチェック項目である。イベント「ScvO>70%:□%」43jとは、中心静脈血酸素飽和度(ScvO)の値が70%以上に保たれているか確認するためのチェック項目である。これらのイベントは、本例の生体情報モニタ装置1では測定できない生体情報に関する処置の一例である。その他、イベント「代謝性アシドーシス改善」43kとは、代謝を原因とする酸塩基平衡の酸化状態が改善されるように管理されているか確認するためのチェック項目である。イベント「血中乳酸値正常化」43lとは、血中乳酸値の値が改善され、正常値に近づくように管理されているか確認するためのチェック項目である。
【0054】
また、イベント43i〜43lの左側に表示された「6:00」も上記と同様に経過時間41における計時が6時間を経過するまでに各イベントの実施を完了すべきことを示している。
【0055】
図5に示すように、医療従事者は、表示部6のイベントリスト42Cにおいて、イベント「尿量>0.5ml/kg/h:□ml/kg/h」43i及びイベント「ScvO>70%:□%」43jの空欄部分である□部61に対して、測定値を外部から入力することができる。これらのイベントの測定値は、本例の測定部2では測定できない測定値であるため、生体情報モニタ装置1とは別の装置によって測定される。
【0056】
医療従事者が、イベント43i,43jの表示領域内の□部61をタッチすると、第2領域12上に入力画面62が重ねて表示される。そして、医療従事者が測定されたイベントの測定値を数値キー63で入力すると、入力された数値が表示領域64に表示される。そして、医療従事者が入力キー65をタッチすることにより、入力した測定値がそのイベントの□部61に表示される値として確定し、一連の入力操作が完了する。
【0057】
図6は、被検者の生体情報を測定し始めてから1時間経過したときの表示部6を示している。イベント「培養検体採取2検体以上」43aは実施すべき時刻が「1:00」に設定されている。本例では、生体情報の測定が開始されてから1時間が経過してもイベント「培養検体採取2検体以上」43aは削除されていないため、制御部7は、イベント「培養検体採取2検体以上」43aの実施が完了していないと判定して、そのイベントの表示領域を点滅表示させる。さらに、報知部5がスピーカから警告音を出力させても良い。
【0058】
また、医療従事者は、図6に示すように、第4領域14の表示面積を拡大あるいは変形して表示させることができる。医療従事者が所定の操作をすると、制御部7は、その操作に応じて例えば図6に示すように、第1領域の下側を縮小し、第4領域14を第1領域11の下側に拡大して表示させている。
【0059】
そして、表示面積が拡大された第4領域14には、測定部2によって測定された生体情報の複数種の波形の履歴53が測定時間54とともに表示されている。また、実施が完了して第2領域12から削除されたイベントの履歴が、波形の履歴53の表示に対応して、例えば縦バー55,56によって表示されている。イベントの履歴の内容は、縦バーをタッチすることによって表示させることができる。図6では、縦バー56をタッチした場合が示されており、そのタッチにより内容表示部57に履歴の内容として、イベント「抗菌薬投与」の実施を15時22分に完了した旨が表示されている。
【0060】
ところで、従来、医療従事者は、生体情報モニタ装置の表示画面に表示される生体情報を観察しながら被検者の容体を把握しつつ、ガイドラインに従って各処置を適切に実施できたか否かを医療従事者自身のノートや別のシステムに保管された情報等を用いて管理している。しかしながら、例えば敗血症の被検者に対する処置が定められたガイドラインは、時系列順に行なうべき処置が長時間にわたり複数定められている。このため、ガイドラインに基づく処置の進捗状況や、被検者の生体情報、及び計測時間等を全て管理することは非常に負担が大きかった。また、医療従事者がガイドラインに従って全ての処置を実施できたか否かは、医療従事者の経験に依存するところが大きく、処置の内容にばらつきが生じる場合もあった。また、各処置を適切に実施できたか否かのチェック方法を統一できないため、第三者による事後チェックが困難な場合もあった。
【0061】
また、各被検者から取得された情報を収集するシステムによって管理する方法も考えられるが、システムによる管理では被検者の生体情報をリアルタイムで表示できない。したがって、医療従事者は、システムの表示画面だけでは、被検者の現在の容体を判断することができず、ガイドラインに沿って次に行なうべき処置を迅速に判断することが難しい。
【0062】
これに対し、本実施形態の生体情報モニタ装置1によれば、被検者から測定した生体情報、被検者に対して実施すべきイベント、及びイベントの実施時間を管理するための経過時間が、1台の生体情報モニタ装置1の表示部6に表示されている。したがって、医療従事者は、生体情報モニタ装置1の表示部6の各領域に表示される各情報を見ながら、被検者の容体を把握しつつ次に実施すべき処置の内容を確認することができる。
【0063】
また、実施が完了したイベント及び実施する必要のないイベントは、医療従事者の操作に基づいてあるいは自動的に表示部6の第2領域12に表示されているイベントリストから削除される。このため、実施すべきイベントのみが表示部6の第2領域12に表示されるため、イベントリストの表示内容を確認し易くできるとともに表示されたイベントの中から次に実施すべき特定のイベントを見つけ易くなる。
【0064】
また、表示部6の第2領域12においては、実施すべき優先順位の高いイベントが上から順番に表示され、上記のようにイベントが削除された場合には、次に優先順位の高いイベントが第2領域12に加えて表示される。このとき、イベントの削除に伴い、第2領域12に表示されているその他のイベントが順次繰り上がるとともにそれまで表示されていなかった残りのイベントの中から次に実施すべき優先順位の高いイベントが選択されて、第2領域12に追加表示される。このため、イベントリストは常に優先順位の高いイベントから順に表示されるので、実施すべきイベントを正確かつ迅速に認識することができる。
【0065】
また、リアルタイムで測定している生体情報と関連したイベントについては、予め設定された条件が満たされたときに表示部6の第2領域12から自動的に削除されるので、医療従事者によるイベントリストの管理が容易になる。
【0066】
また、医療従事者は、被検者から測定された生体情報に基づくトレンドを表示部6の第4領域14上で確認することができる。このため、医療従事者は被検者に対する処置の状況、処置の効果等を認識することができ迅速な診断を行えるようになる。さらに、トレンドを構成する生体情報にはリアルタイムで測定された生体情報も含まれているので、最新のトレンドを確認することができ、被検者の容体の変化をより迅速に認識することができる。例えば、同程度の優先順位の複数のイベントが第2領域12に表示されている場合、最新のトレンドを確認しつつ、次に行なうべきイベント(処置)を判断しやすくなる。
【0067】
また、表示部6の第2領域12から削除されたイベントは、その履歴が記録部4に記録されているため、履歴情報を記録部4から読み出して再度、表示部6に表示させることができる。これにより、第三者が、実施が完了したイベントの履歴やその内容等を表示部6上で事後チェックすることができ、医療処置の作業性を向上させることができる。
【0068】
また、実施予定時刻が過ぎても実施されていないイベントを点滅表示等によって警告することで、医療従事者に対して注意喚起を促すことができる。
また、生体情報モニタ装置1では測定できない生体情報に関するイベントについては、外部の測定器によって測定した値を第2領域12に表示されるイベントの空欄に入力可能な構成としたので、生体情報モニタ装置1で測定できないデータについてもまとめて管理することができる。
【0069】
また、第4領域14の表示面積を必要に応じて拡大あるいは変形して表示することができるので、生体情報の波形の視認性を高めることができる。これにより、実施したイベントの履歴と生体情報の波形との関係を容易に確認することができる。
【0070】
以上のようなことから、被検者への医療処置における医療従事者にかかる負担を軽減することができる。
【0071】
次に、図7を参照して、セントラルモニタ71の例を説明する。セントラルモニタ71は、ネットワーク72を介して複数台の生体情報モニタ装置1,1A,1B,1Cと接続されている。
【0072】
セントラルモニタ71は、ナースステーション、医師の控室等に設置されて、各被検者の生体情報を集中管理することができるモニタである。セントラルモニタ71には、各生体情報モニタ装置1,1A,1B,1Cで表示される全ての情報がネットワーク72を介して送信される。これにより、セントラルモニタ71は上述した生体情報モニタ装置1と同様の機能を有する。
【0073】
また、セントラルモニタ71は、各生体情報モニタ装置1,1A,1B,1Cで測定された各被検者の生体情報を、セントラルモニタ71の表示部上に各モニタ装置と同様の表示態様で表示することも、あるいは同時に表示することも可能である。また、表示部に表示した各被検者のイベントリストを、簡単な切換操作により他の被検者のイベントリストに切り替えて表示することも可能である。このため、医療従事者は各被検者のところまで移動しなくても各被検者の情報を確認することができる。これにより、医療従事者の作業効率を向上させることができ、医療従事者にかかる負担を軽減することができる。
【0074】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0075】
上記の例では、被検者の疾病が敗血症の場合について説明したが、これに限定されず、被検者の脳死判定、人工呼吸器の離脱判定等に適用させても良い。また、図8に示すように、第4領域14は、第1領域11に重ねて表示するポップアップ画面によって表示することができるようにしても良い。
また、図6において、縦バー55,56等をタッチして表示させるイベントの履歴の内容としては、医療従事者が実施を完了してイベントを削除したのか、実施の必要が無いと判断して削除したのか、自動的に削除されたのか等を表示するようにしても良い。
【符号の説明】
【0076】
1,1A〜1C:生体情報モニタ装置、2:測定部、3:計測部、4:記録部、5:報知部、6:表示部、7:制御部、11:第1領域、12:第2領域、13:第3領域、14:第4領域、21:各種センサ、33:血圧値、34:平均血圧値、36:CVP値、41:経過時間、42,42A〜42C:イベントリスト、43a〜43l:イベント、45:時刻、46:削除部、51,52:グラフ、53:履歴、55,56:縦バー、71:セントラルモニタ、72:ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8