【文献】
Bikash Ranjan Sahu et al.,A flow cytometry based method for studying embryogenesis and immune reactivity to embryogenic stages in filarial parasites,Filaria Journal,2005年11月 7日,Vol.4/No.1,Page.1-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測定試料中のフィラリア幼虫を検出するステップでは、前記少なくとも1つの特徴パラメータに基づいて、測定試料中の血球と区別して、フィラリア幼虫を検出する、請求項1に記載の血中フィラリア幼虫の検出方法。
測定試料中のフィラリア幼虫を検出するステップでは、前記少なくとも2つの特徴パラメータに基づいて、測定試料中の粒子を血球とフィラリア幼虫とに分類し、分類された血球及びフィラリア幼虫のそれぞれを個別に計数する、請求項1に記載の血中フィラリア幼虫の検出方法。
前記少なくとも2つの特徴パラメータそれぞれの座標軸を有し、前記座標軸で規定される座標空間におけるフィラリア幼虫の分布を示す分布図と、フィラリア幼虫の計数結果とを含む画面を出力するステップをさらに有する、請求項1、3又は4に記載の血中フィラリア幼虫の検出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した直接鏡検法によるフィラリア症の検査では、獣医師等の検査者が血液検体中のミクロフィラリアを目視で観察する必要があり、手間と時間がかかり、検査者の負担が大きいという問題があった。免疫検査キットによる検査では試薬に抗体を使用しているため、一般的に試薬が高価であり、コストがかかる。
【0006】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、従来に比して
獣医師等の作業者の負担が少なく、低コストで迅速に
ヒト以外の動物血中
のフィラリア幼虫を血球と区別して検出することができる血中フィラリア幼虫の検出方法、血液分析装置、及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の一の態様の血中フィラリア幼虫の検出方法は、
ヒト以外の動物から採取された血液検体中のフィラリア幼虫の検出方法であって、
ヒト以外の動物から採取された血液検体から免疫学的手法を用いることなく測定試料を調製するステップ血液検体から免疫学的手法を用いることなく測定試料を調製するステップと、調製された測定試料をフローセルに流すステップと、前記フローセルを流れる測定試料に光を照射するステップと、光が照射された測定試料から発せられる前方散乱光、側方散乱光および/または蛍光を検出するステップと、検出された光の特徴パラメータである前方散乱光強度、前方散乱光パルス幅、側方散乱光強度、側方散乱光パルス幅、蛍光強度および蛍光パルス幅のうちの少なくとも1つの特徴パラメータまたは少なくとも2つの特徴パラメータに基づいて、測定試料中の血球と区別してフィラリア幼虫を検出するステップと、を有し、少なくとも1つの特徴パラメータは、前方散乱光パルス幅、側方散乱光パルス幅または蛍光パルス幅であり、少なくとも2つの特徴パラメータは、側方散乱光強度と蛍光強度、側方散乱光強度と前方散乱光強度、前方散乱光パルス幅と前方散乱光強度、蛍光強度と前方散乱光強度、側方散乱光パルス幅と前方散乱光強度、または、蛍光パルス幅と前方散乱光強度である。
【0008】
これにより、フィラリア幼虫を直接目視で観察したり、高価な免疫検査キットを使用したりする必要がなく、検査者の負担を低減しつつ低コストで迅速にフィラリア幼虫を検出することが可能となる。
【0009】
この態様において、測定試料中のフィラリア幼虫を検出するステップでは、
少なくとも1つの特徴パラメータに基づいて、測定試料中の血球と区別して、フィラリア幼虫を検出してもよい。これにより、高精度にフィラリア幼虫を検出することが可能となる。
【0010】
また、上記態様において、測定試料中のフィラリア幼虫を検出するステップでは、少なくとも2
つの特徴パラメータに基づいて、測定試料中の粒子を血球とフィラリア幼虫とに分類し、分類された血球及びフィラリア幼虫のそれぞれを個別に計数してもよい。これにより、フィラリア幼虫だけでなく、血液検体に含まれる血球も検出することができる。また、血球及びフィラリア幼虫を定量的に測定することができる。
【0011】
また、上記態様において、前記血球は白血球であり、測定試料中のフィラリア幼虫を検出するステップでは、測定試料中の白血球を複数種類に分類し、分類された各種類の白血球を種類毎に計数してもよい。これにより、血液検体の1回の測定で、フィラリア幼虫の検出だけでなく、白血球の分類も行うことができる。
【0012】
また、上記態様において、前記少なくとも2
つの特徴パラメータそれぞれの座標軸を有し、前記座標軸で規定される座標空間におけるフィラリア幼虫の分布を示す分布図と、フィラリア幼虫の計数結果とを含む画面を出力するステップをさらに有してもよい。これにより、検査者は、フィラリア幼虫がどのような分布により出現しているかを視覚的に確認することができ、また、検出されたフィラリア幼虫の数を把握することができる。
【0015】
また、上記態様において、測定試料を調製するステップでは、血中の粒子を染色する染色試薬を血液検体に混和して測定試料を調製し
、測定試料中のフィラリア幼虫を検出するステップでは、
前方散乱光
強度または側方散乱光強度と
、蛍光
強度または蛍光パルス幅とに基づいて、測定試料中の血球と区別して、フィラリア幼虫を検出してもよい。
【0016】
また、上記態様において、
側方散乱光強度または前方散乱光強度
と、蛍光強度
とに基づいて、測定試料中の血球と区別して、フィラリア幼虫を検出してもよい。
【0019】
また、上記態様において、測定試料を調製するステップでは、血液検体に溶血剤を混和して測定試料を調製してもよい。
【0020】
また、上記態様において、前記血液検体は、イヌから採取されたものであってもよい。
【0021】
また、上記態様において、自動血球分析装置を用いて、上記各ステップを自動的に実行するようにしてもよい。
【0023】
また、本発明の一の態様の血液分析装置は、
ヒト以外の動物から採取された血液検体中のフィラリア幼虫を検出できる
ヒト以外の動物用の血液分析装置であって、
ヒト以外の動物から採取された血液検体から免疫学的手法を用いることなく測定試料を調製する試料調製部と、試料調製部によって調製された測定試料が供給されることにより、試料流を形成するフローセルと、フローセルに形成された試料流に光を照射する光源と、光源によって光が照射された測定試料から発せられる光を受け、受光量に応じた信号を出力する光検出部と、光検出部からの出力信号に含まれる特徴パラメータである前方散乱光強度、前方散乱光パルス幅、側方散乱光強度、側方散乱光パルス幅、蛍光強度および蛍光パルス幅のうちの少なくとも1つの特徴パラメータまたは少なくとも2つの特徴パラメータに基づいて、測定試料中の血球と区別してフィラリア幼虫を検出する制御部と、を備え、光検出部は、前方散乱光検出部、側方散乱光検出部および/または蛍光検出部を備えており、少なくとも1つの特徴パラメータは、前方散乱光パルス幅、側方散乱光パルス幅または蛍光パルス幅であり、少なくとも2つの特徴パラメータは、側方散乱光強度と蛍光強度、側方散乱光強度と前方散乱光強度、前方散乱光パルス幅と前方散乱光強度、蛍光強度と前方散乱光強度、側方散乱光パルス幅と前方散乱光強度、または、蛍光パルス幅と前方散乱光強度である。
【0024】
また、本発明の一の態様のコンピュータプログラムは、
ヒト以外の動物から採取された血液検体から免疫学的手法を用いることなく調製された測定試料をフローセルに流し、フローセルを流れる測定試料に光を照射し、光が照射された測定試料から発せられる光を前方散乱光検出部、側方散乱光検出部および/または蛍光検出部を含む光検出部によって検出したときに、コンピュータに、血中のフィラリア幼虫を検出させるためのコンピュータプログラムであって、光検出部により検出された光の特徴パラメータを含む測定データを取得するステップと、取得された前記測定データに含まれる特徴パラメータである前方散乱光強度、前方散乱光パルス幅、側方散乱光強度、側方散乱光パルス幅、蛍光強度および蛍光パルス幅のうちの少なくとも1つの特徴パラメータまたは少なくとも2つの特徴パラメータに基づいて、測定試料中の血球と区別してフィラリア幼虫を検出するステップと、をコンピュータに実行させ、少なくとも1つの特徴パラメータは、前方散乱光パルス幅、側方散乱光パルス幅または蛍光パルス幅であり、少なくとも2つの特徴パラメータは、側方散乱光強度と蛍光強度、側方散乱光強度と前方散乱光強度、前方散乱光パルス幅と前方散乱光強度、蛍光強度と前方散乱光強度、側方散乱光パルス幅と前方散乱光強度、または、蛍光パルス幅と前方散乱光強度である。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る血中フィラリア幼虫の検出方法、血液分析装置、及びコンピュータプログラムによれば、従来に比して検査者の負担を低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。本実施形態の方法は、フローサイトメータを搭載した自動血液分析装置を用いて、動物から採取された血液に含まれるフィラリア幼虫の一種であるミクロフィラリアを検出する方法である。
【0028】
[血液分析装置の構成]
図1は、本実施の形態に係る血液分析装置の構成を示す模式図である。本実施の形態に係る血液分析装置1は、動物から採取された全血検体に含まれる血球を種類毎に検出し、各血球を計数する、動物用多項目血球分析装置である。血液分析装置1は、イヌ、ネコ、ウサギなどの種々の動物種の中から一の動物種の指定を受け付けることで、指定された動物種に応じた測定モードで動作する多動物種対応型の血液分析装置である。
図1に示すように、血液分析装置1は、測定ユニット2と、測定ユニット2を制御可能な情報処理ユニット5とを備えている。
【0029】
動物(例えば、イヌ)から採取された末梢血である全血検体は、検体容器(採血管)Tに収容される。この検体容器Tに収容された全血検体が、測定ユニット2によって測定される。なお、本実施形態の血液分析装置は、イヌ、ネコ、ウサギ等の飼育用及び家畜用の動物を主な検査対象としている。
【0030】
<測定ユニットの構成>
測定ユニットの構成について説明する。
図1に示すように、測定ユニット2は、検体容器Tを測定ユニット2の筐体内に取り込む検体容器設置部21と、血液検体を検体容器Tから吸引する検体吸引部22と、検体吸引部22により吸引した血液から測定に用いられる測定試料を調製する試料調製部23と、試料調製部23により調製された測定試料から血球を検出する検出部24と、CPU及びメモリ等からなる制御部25とを有している。
【0031】
検体容器設置部21は、検体容器Tを挿入可能な穴部21aを有しており、検体容器Tをこの穴部21aに挿入することで設置可能である。また、検体容器設置部21は、測定ユニット2の筐体の内外を移動可能である。検体容器Tが設置された検体容器設置部21が測定ユニット2の外側から内側へと移動することで、検体容器Tが測定ユニット2に取り込まれる。また、検体容器Tを測定ユニット2から排出する場合には、検体容器Tが設置された検体容器設置部21が測定ユニット2の内側から外側へと移動する。
【0032】
検体容器設置部21は、測定ユニット2の内部の吸引位置21bへ移動可能である。検体容器設置部21が吸引位置21bへ移動したときには、検体吸引部22により、検体容器Tから血液検体が吸引される。
【0033】
検体吸引部22は、吸引管221を有している。また、検体吸引部22はシリンジポンプ(図示せず)を備えている。吸引管221は、鉛直方向に移動可能であり、下方に移動されることにより、吸引位置21bまで搬送された検体容器T内の血液検体を吸引するように構成されている。
【0034】
試料調製部23は、図示しない混合チャンバを備えている。吸引管221は、シリンジポンプによって検体容器Tから所定量の全血検体を吸引し、吸引された検体は、混合チャンバの位置へ移送され、前記シリンジポンプによって、混合チャンバへ所定量の全血検体を供給する。また、試料調製部23は、混合チャンバを加温するためのヒータを備えている。
【0035】
試料調製部23には、試薬容器23aがチューブを介して接続されている。詳細には、溶血剤を収容する試薬容器、染色試薬を収容する試薬容器、及びシース液(希釈液)を収容する試薬容器等が試料調製部23に接続されている。上記の溶血剤及び染色試薬は、後述するような白血球分類及びミクロフィラリア測定用の試薬である。これら溶血剤および染色試薬は、いずれも免疫学的手法を用いることなくミクロフィラリアを検出できる試薬である。「免疫学的手法を用いることなく」とは、ミクロフィラリアの細胞表面抗原を認識して結合可能な抗体を用いないことをいう。試料調製部23の混合チャンバには、かかる試薬容器23aから試薬が供給されるようになっている。
【0036】
検出部24は、白血球分類及びミクロフィラリア測定を行うことができる光学検出器Dを有している。白血球分類及びミクロフィラリア測定では、血液検体中に存在する白血球がLYMPH(リンパ球)、EO(好酸球)、NEUT(好中球)、BASO(好塩基球)、及びMONO(単球)の5つのサブクラスに分類される。また、白血球分類及びミクロフィラリア測定では、上記の白血球の5分類と共に、血液検体中のミクロフィラリアが検出される。
【0037】
かかる白血球分類及びミクロフィラリア測定においては、全血検体、上記の溶血剤、及び上記の染色試薬が混合された測定試料が試料調製部23によって調製され、調製された測定試料が光学検出器Dに供給され、このときに光学検出器Dによって特徴パラメータ(蛍光強度、前方散乱光強度、前方散乱光パルス幅、及び側方散乱光強度)が検出される。測定によって得られた特徴パラメータは測定データとして制御部25を介して情報処理ユニット3に供給され、情報処理ユニット3が測定データを解析することによって全血検体中の白血球の検出及び分類、並びにミクロフィラリアの検出が行われる。
【0038】
図2は、光学検出器Dの概要構成を示す図である。この光学検出器Dは、フローセル231に測定試料及びシース液を送り込み、フローセル231中に液流を発生させ、フローセル231内を通過する液流に含まれる粒子にレーザ光を照射して測定するものであり、シースフロー系232、ビームスポット形成系233、前方散乱光受光系234、側方散乱光受光系235、蛍光受光系236を有している。
【0039】
シースフロー系232は、測定試料中の粒子がシース液に包まれた状態で流れるように、測定試料とシース液をフローセル231内に流すよう構成されている。ビームスポット形成系233は、レーザ光源237から照射された光が、コリメータレンズ238とコンデンサレンズ239とを通って、フローセル231に照射されるよう構成されている。また、ビームスポット形成系233は、ビームストッパ240も備えている。
【0040】
前方散乱光受光系234は、前方への散乱光を前方集光レンズ241によって集光し、ピンホール242を通った光を前方散乱光受光部243で受光するように構成されている。前方散乱光受光部243は、受光した前方散乱光の強度に応じたパルス信号を出力する。
図3は、前方散乱光受光部243により出力されるパルス信号を模式的に示すグラフである。この図に示すように、所定の閾値を超えたパルスのピークの高さが前方散乱光信号強度にあたり、所定の閾値を超えたパルスの幅が前方散乱光パルス幅にあたる。前方散乱光受光部243としては、フォトダイオード又はフォトマルチプライヤチューブが用いられる。
【0041】
側方散乱光受光系235は、側方への散乱光を側方集光レンズ244にて集光するとともに、一部の光をダイクロイックミラー245で反射させ、側方散乱光受光部246で受光するよう構成されている。側方散乱光受光部246は、受光した側方散乱光の強度に応じたパルス信号を出力する。
図3の説明と同様に、所定の閾値を超えたパルスのピークの高さが側方散乱光強度にあたり、所定の閾値を超えたパルスの幅が側方散乱光パルス幅にあたる。側方散乱光受光部243としては、フォトダイオード又はフォトマルチプライヤチューブが用いられる。
【0042】
光散乱は、粒子が光の進行方向に障害物として存在すると、光がその進行方向を変えることによって生じる現象である。この散乱光を検出することによって、粒子の大きさ及び成分に関する情報を得ることができる。前方散乱光強度は、粒子の表面積及び大きさを反映する。側方散乱光強度は、粒子内部の複雑さ(核の形状、核の大きさ、密度及び顆粒の量)を反映する。前方散乱光パルス幅は、粒子がビームスポットを通過するのに要した時間、つまり粒子の全長を反映する。
【0043】
ミクロフィラリアは、糸状に細長い形状を有しており、白血球その他の血球よりも全長が長い。このため、ミクロフィラリアがシースフローセル231中を通過するときの前方散乱光パルス幅は、白血球を含む他の血球がシースフローセル231中を通過するときの前方散乱光パルス幅よりも大きい。したがって、前方散乱光パルス幅は、ミクロフィラリアの検出に特に好適に利用することができる。側方散乱光パルス幅も前方散乱光パルス幅とほぼ同様の粒子性状を反映するため、前方散乱光パルス幅に代えて側方散乱光パルス幅をミクロフィラリアの検出に用いてもよい。
【0044】
蛍光受光系236は、ダイクロイックミラー245を透過した光をさらに分光フィルタ247に通し、蛍光受光部248で受光するよう構成されている。蛍光受光部248は、受光した側方散乱光の強度に応じたパルス信号を出力する。
図3の説明と同様に、所定の閾値を超えたパルスのピーク高さが蛍光強度にあたり、所定の閾値を超えたパルスの幅が蛍光パルス幅にあたる。蛍光受光部248としては、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、又はフォトマルチプライヤチューブが用いられる。
【0045】
全血検体と溶血剤と染色試薬とが混合されると、染色試薬に含まれる蛍光物質により、血球の核が染色され、また、ミクロフィラリアの表面に蛍光物質が付着する。一般的には、血球の核の方が、ミクロフィラリアよりも強く染色される。蛍光物質により染色された粒子(血球又はミクロフィラリア)に光を照射すると、照射した光の波長より長い波長の光を発する。蛍光の強度はよく染色されていれば強くなり、この蛍光強度を測定することによって粒子の染色度合いに関する情報を得ることができる。したがって、蛍光強度の差は、白血球の分類及びミクロフィラリアの検出に利用することができる。
【0046】
検出部24は、光学検出部Dの各受光部243、246、248が出力したアナログのパルス信号をデジタル信号に変換して制御部25に与える。
【0047】
制御部25は、CPU及びメモリ等から構成されており、制御プログラムを実行することにより、測定ユニット2の各部の制御を行うようになっている。また、制御部25は、図示しない通信部を備えており、情報処理ユニット3とのデータ通信が可能となっている。検出部24によってA/D変換されたパルス信号は制御部25に与えられ、当該制御部25がそれを波形解析することにより、
図3を参照して説明したように、各粒子の特徴パラメータを求めて測定データを生成し、この測定データを情報処理ユニット3へ送信する。特徴パラメータは、各粒子について、蛍光強度、蛍光パルス幅、前方散乱光強度、前方散乱光パルス幅、側方散乱光強度、側方散乱光パルス幅を含む。
【0048】
<情報処理ユニットの構成>
次に、情報処理ユニット5の構成について説明する。情報処理ユニット5は、コンピュータにより構成されている。
図1に示すように、コンピュータ5は、CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、及び画像出力インタフェース51hを備えており、CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、及び画像出力インタフェース51hは、バス51jによって接続されている。
【0049】
ハードディスク51dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU51aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いられるデータがインストールされている。後述する測定データ解析用のコンピュータプログラム54aも、このハードディスク51dにインストールされている。ハードディスク51dに格納されたアプリケーションプログラムは、イヌ、ネコ、ウサギなどの複数の動物種に対応して複数の測定モードを持っている。より詳細には、アプリケーションプログラムが起動され、オペレータによって複数の動物種の中から一の動物種が選択されると、その動物種に対応する測定モードが設定される。ハードディスク51dには、各測定モード用の測定シーケンス及び解析アルゴリズムに基づくプログラムコードが格納されており、CPU51aは、設定された測定モードに応じたプログラムコードを読み出し、それに基づいて測定ユニット2の制御と、測定ユニット2から得られた測定データの解析を行う。本実施の形態に係るコンピュータプログラム54aは、ハードディスク51dに格納されたオペレーティングシステム上で動作する。
【0050】
読出装置51eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されている。読出装置51eは、コンピュータを情報処理ユニット5として機能させるためのコンピュータプログラム54aが格納されたCD又はDVD等の可搬型記録媒体から、前記コンピュータプログラム54aを読み出し、コンピュータプログラム54aをハードディスク51dにインストールすることが可能である。
【0051】
入出力インタフェース51fには、キーボード、マウス、タッチパネル等からなる入力部53が接続されており、オペレータが当該入力部53を使用することにより、コンピュータ5aにデータを入力することが可能である。上述した動物種の入力は、オペレータが入力部53を操作することにより、CPU51aに与えられる。
【0052】
通信インタフェース51gはLANを介して測定ユニット2の制御部25に接続されている。これにより、情報処理ユニット5は、測定ユニット2に対して、動作指示データを送信し、また測定データを受信することが可能である。
【0053】
画像出力インタフェース51hは、LCDまたはCRT等で構成された表示部52に接続されており、CPU51aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部52に出力するようになっている。表示部52は、入力された映像信号にしたがって、画像を表示する。
【0054】
[血液分析装置の測定動作]
以下、本実施の形態に係る血液分析装置1の動作について説明する。
【0055】
図4は、血液分析装置1の白血球分類及びミクロフィラリア検出測定における動作手順を示すフローチャートである。まず、情報処理ユニット5のCPU51aは、表示部52に動物種の選択画面を表示させ、オペレータからの動物種の入力を受け付ける(ステップS1)。動物種が入力されると、CPU51aは入力された動物種に応じた測定モードを設定する(ステップS2)。つぎに、測定ユニット2の制御部25は、測定開始の指示を待機する(ステップS3)。測定開始の指示は、測定ユニット2に設けられた、図示しない測定開始スイッチを押下することにより与えられる。制御部25は、測定開始スイッチの押下がない場合には(ステップS3においてNO)、ステップS3の処理を繰り返す。
【0056】
オペレータが、イヌ等の動物から採取された全血検体を収容する検体容器Tを、測定ユニット2の外側に出ている検体容器設置部21の穴部21aに挿入し、測定開始スイッチを押下する(ステップS3においてYES)。これにより、検体の測定動作が開始される。
【0057】
検体の測定動作が開始されると、検体容器設置部21が測定ユニット2の内部に後退し、検体容器Tが測定ユニット2に取り込まれる。検体容器設置部21が吸引位置21bまで移動されると、吸引管221が検体容器Tの内部に挿入され、全血検体が吸引される(ステップS4)。
【0058】
次に、測定ユニット2では、制御部25の制御によって、測定試料が調製される(ステップS5)。この処理では、検体吸引部22によって吸引された全血検体が試料調製部23の混合チャンバに所定量供給され、また溶血剤及び染色試薬が試薬容器23aから混合チャンバに供給され、混合チャンバ内で血液検体と溶血剤と染色試薬とが混合撹拌されて、測定試料が調製される。
【0059】
次に、調製された測定試料を対象に光学検出器Dにて光学測定が行われる(ステップS6)。ステップS6の処理においては、具体的には、レーザ光源237がフローセル231にレーザ光を照射している状態で測定試料とシース液とが同時に光学検出器Dのフローセル231に供給され、そのときに生じる前方散乱光が前方散乱光受光部243で受光され、側方散乱光が側方散乱光受光部246で受光され、蛍光が蛍光受光部248で受光される。このような光学検出器Dの各受光素子により出力される出力信号(アナログ信号)は検出部24が備えるA/D変換器によりデジタル信号に変換され、検出部24が備える信号処理回路により所定の信号処理が施されてデジタル信号として制御部25に与えられる。制御部25は、かかるデジタル信号から、各粒子に対応する前方散乱光強度、前方散乱光パルス幅、側方散乱光強度、及び蛍光強度を含む各種の特徴パラメータを抽出し、特徴パラメータを含む測定データを生成する。そして、制御部25が、測定データを情報処理ユニット5へ送信する(ステップS7)。
【0060】
血液分析装置1の情報処理ユニット5は、測定ユニット2から測定データを受信する(ステップS8)。
【0061】
ステップS9において、CPU51aは、測定データを用いて白血球を5つのサブクラスに分類し、各サブクラスに属する血球の数を計数する。また、ステップS9の処理では、ミクロフィラリアが他の血球とは区別されて検出され、検出されたミクロフィラリアの数が計数される。
【0062】
ステップS9の処理について詳しく説明する。
図5は、前方散乱光パルス幅及び前方散乱光強度を軸にしたスキャッタグラムにおけるクラスターの出現領域を模式的に示した図である。
図5に示すスキャッタグラムでは、ミクロフィラリアのクラスターと、白血球のクラスターとが互いに異なる位置に現れる。上述したとおり、ミクロフィラリアは白血球に比べて全長が長いため、白血球に比べて前方散乱光パルス幅において高値の領域に現れる。前方散乱光パルス幅及び前方散乱光強度のスキャッタグラムにおいてミクロフィラリアが出現する位置は決まっている。このため、本実施の形態では、ミクロフィラリア検出用のゲート(検出領域)Gが予め設定されている。ミクロフィラリア検出用のゲートGを定義する数値範囲が、ハードディスク51dに記憶されている。ステップS9の処理では、CPU51aは、前方散乱光パルス幅及び前方散乱光強度のそれぞれの値が、ミクロフィラリア検出用のゲートGとして定義された数値範囲内に属する粒子を、ミクロフィラリアとして検出する。また、ステップS9の処理では、このようにして検出されたミクロフィラリアの数がCPU51aによって計数される。
【0063】
図6は、側方散乱光強度及び蛍光強度を軸にしたスキャッタグラムにおけるクラスターの出現領域を模式的に示した図である。
図6に示すスキャッタグラムでは、好酸球のクラスター、好中球のクラスター、好塩基球のクラスター、リンパ球のクラスター、単球のクラスター、及びミクロフィラリアのクラスターが現れる。CPU51aは、
図6のスキャッタグラムに示されるように、白血球をミクロフィラリアから区別して、好酸球、好中球、好塩基球、リンパ球、及び単球に分類する。また、ステップS9の処理では、このようにして分類された各サブクラスの白血球の数がCPU51aによって計数される。ミクロフィラリアのクラスターは、白血球サブクラスのクラスターと重複していないため、白血球の分類に影響を及ぼすことがない。
【0064】
次にステップS10において、CPU51aは、計数したミクロフィラリアの数に基づいて、当該検体の採取元の被検動物が、フィラリア症に罹患している疑いがあるかないかを判別する(ステップS10)。この処理では、計数したミクロフィラリアの数CNが、所定の基準値T以上であるか否かが判定される。ミクロフィラリア数CNが基準値T以上である場合には、フィラリア症に罹患している疑いがあると判断され、ミクロフィラリア数CNが基準値T未満である場合には、フィラリア症に罹患している疑いはないと判断される。
【0065】
次に、ステップS11において、CPU51aは、上述のようにして得た分析結果をハードディスク51dに格納する(ステップS11)。さらにCPU51aは、ハードディスク51dに記憶した分析結果を示す分析結果画面を表示部52に表示させ(ステップS12)、処理を終了する。
【0066】
分析結果画面には、上記のようにして得られた粒子(血球及びミクロフィラリア)の数及び割合等の数値データ、並びに粒子の分布図が表示される。数値データには、リンパ球、好酸球、好中球、好塩基球、単球、及びミクロフィラリアの各計数値と、リンパ球、好酸球、好中球、好塩基球、単球のそれぞれについての白血球全体の総数に対する割合が含まれる。また、分布図には、側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラム、側方散乱光強度及び前方散乱光強度のスキャッタグラム、並びに前方散乱光パルス幅及び前方散乱光強度のスキャッタグラムが含まれる。
【0067】
図7は、分析結果画面の一例を示す図である。
図7に示すように、分析結果画面Rには、検体に付与された検体ID及び被検動物の種類(イヌ、ネコ等)の表示領域A1が、上部に設けられている。また、表示領域A1の下方には、数値データを表示するための表示領域A2と、メッセージを表示するための表示領域A3と、分布図を表示するための表示領域A4とが設けられている。
【0068】
表示領域A2には、白血球、赤血球、血小板、好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球等の各計数値(WBC、RBC、PLT、NEUT#、LYMP#、MONO#、EOSI#、BASO#)、及び好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球それぞれについての白血球総数に対する割合(NEUT%、LYMP%、MONO%、EOSI%、BASO%)等の数値データが示される。ミクロフィラリアの計数値は、M−FILAの項目名で表示されている。
【0069】
表示領域A3には、上述したステップS10において、被検動物がフィラリア症に罹患している疑いがあると判断された場合に、この旨を示すメッセージ「filariasis?」が示される。
【0070】
表示領域A4には、ミクロフィラリアの検出に利用されたスキャッタグラム、つまり、前方散乱光パルス幅及び前方散乱光強度のスキャッタグラムSが示される。
【0071】
上記のような分析結果画面Rが示されることにより、検査者は、表示領域A3に「filariasis?」のメッセージが表示されていれば、被検動物がフィラリア症に罹患している疑いがあることを把握することができる。また、検査者は表示領域A2のミクロフィラリアの計数値又は表示領域A4のスキャッタグラムSを確認することで、上記の判断が正しいかどうかを検証することもできる。
【0072】
また、検査者は、白血球サブクラスの測定結果を確認することで、ミクロフィラリアによる白血球の計数値への影響がないかどうかを判断することもできる。あるいは、白血球サブクラスの計数値を確認することで、フィラリア症に罹患しているとした装置の判断の検証をすることもできる。フィラリア症に感染すると好酸球が増加する傾向にあるため、好酸球の計数値及び比率を基にして分析結果を検証することも可能である。
【0073】
上記した白血球分類は、健康診断においてほぼ必須の項目とされている血液検査の項目の一つであり、異常が疑われる検体と正常な検体とを弁別する、いわゆるスクリーニング検査の一部として行われる。本実施形態によれば白血球分類と同時にフィラリア症の罹患の有無を検査することが可能になるため、直接検鏡又は専用の検査キットを使用する従来のフィラリア検査を別途行うことなく、一般の健康診断でフィラリア症検体をスクリーニングすることができる。したがって、健康診断を契機にフィラリア症の罹患が疑われる検体をスクリーニングでき、従来は見逃されていたフィラリア感染検体を見つけ、精密検査に付すことができる。また、フィラリア症の早期発見も期待できる。さらに、本実施形態では血液分析装置によって測定試料の調製、ミクロフィラリアの検出、フィラリア症の疑いの判定までを自動化できるため、直接検鏡法又は検査キットを用いる従来法に比べて、検査者の負担を減らすことができる。本実施の形態に係る血液分析装置では、免疫学的な手法を用いることなく測定試料を調製するためコストを抑えることができ、しかもフローサイトメトリー法により迅速な検査が可能である。
【0074】
さらに本法は定量性の点においても従来のフィラリア検査法より優れている。直接検鏡法又は専用の検査キットを用いる従来のフィラリア検査は、いずれも感染の有無を確認することを目的とする半定量的又は定性的な検査であり、血中ミクロフィラリア数を定量できる検査法はこれまで存在しなかった。従来のフィラリア症の治療は、末梢血中の半定量的なミクロフィラリア指数又は動物の症状から投薬量及び薬剤の種類を判断していたが、ミクロフィラリアの定量的な検査が可能となれば、投薬量及び薬剤の種類といった治療方針を適切に決定できるようになる。本実施形態によるフィラリア検査法によれば、全血検体に含まれるミクロフィラリア数を定量することができ、よって従来のフィラリア検査よりも適切な治療方針の決定に貢献できる。
【0075】
また、白血球分類用の試薬を使用した1回の検体の測定で、白血球分類と共にミクロフィラリアの検出を行うことが可能であるので、ミクロフィラリアの検出のためだけに試薬を消費することがなく、試薬の消費量を抑制することが可能となる。このことは、試薬の製造量、廃液の処理量を抑制することにつながり、環境に与える負荷を抑制することが可能となる。また、従来の直接鏡検法で消費されていた染料又は検査キットの使用量の低減につながるため、環境に与える負荷を抑制することができる。また、本法は従来の免疫検査キットのような免疫学的手法を用いる方法ではないため、抗体を獲得するための実験動物も不要である。
【0076】
なお、上述した実施形態では、ミクロフィラリアの検出に用いる特に好適な特徴パラメータの組み合わせとして、前方散乱光パルス幅と前方散乱光強度の組み合わせを例示し、また、蛍光強度と側方散乱光強度の組み合わせにより白血球分類を行う例を示した。このように、白血球分類とは異なる特徴パラメータの組み合わせ、特に前方散乱光パルス幅をミクロフィラリア検出に利用する利点は、ミクロフィラリアが他の血球と最も顕著に相違する粒子全長に着目してミクロフィラリアを検出できる点にある。仮にフィラリア症と他の疾病の合併症などによって血液に異常血球(たとえば幼若球や血小板凝集など)が含まれていたとしても、それら異常血球の全長がミクロフィラリアに比肩することはあり得ないため、ミクロフィラリア以外の異常血球を含む検体であっても信頼性の高いミクロフィラリア検出が可能である。
【0077】
したがって、前方散乱光パルス幅を用いてミクロフィラリアを検出する形態が最も好ましいが、
図6に示すように、前方散乱光信号のパルス幅以外の特徴パラメータであっても、ミクロフィラリアは他の血球と区別して検出することができるため、必ずしも上述の実施形態のように前方散乱光パルス幅を用いる必要はないし、ミクロフィラリア検出と白血球分類とで互いに異なる特徴パラメータを用いる必要もない。後述する
図8のS11のように蛍光強度と側方散乱光強度の組み合わせでミクロフィラリアを検出してもよいし、後述する
図8のS12のように前方散乱光強度と側方散乱光強度の組み合わせでミクロフィラリアを検出してもよい。
【0078】
さらに、上述した実施形態では、白血球分類用に調製した測定試料からミクロフィラリアの検出と白血球分類とを行っているが、ミクロフィラリアの検出は白血球分類と同時にする必要はない。ミクロフィラリア検出のためだけに測定試料を調製してもよいし、後述する
図9のS14、S15のように、白血球を分類することなく、総白血球数(WBC)を測定するための測定試料を測定することによって得られた特徴パラメータからミクロフィラリアを検出してもよい。
【0079】
[検証試験]
発明者らは、本実施の形態に係る血中ミクロフィラリアの検出方法(以下、「本方法」という)の性能を検証する試験を実施した。以下、検証試験について説明する。
【0080】
シスメックス社製の多項目自動血球分析装置XN−1000を改造(ミクロフィラリアを測定可能とするようにソフトウェアを変更)したものを使用して、フィラリア症の被検動物から採取した検体(検体1)と正常検体(検体2)とを分析した。これらの6つの検体のそれぞれについて、XN−1000のWDFチャンネル(白血球分類用のチャンネル)及びWNRチャンネル(白血球及び網状赤血球測定用のチャンネル)の両方で測定を行った。WDFチャンネルでの測定では、XN−1000専用の白血球分類用の試薬(溶血剤及び染色試薬)を使用し、WNRチャンネルでの測定では、XN−1000専用の白血球及び網状赤血球測定用の試薬(溶血剤及び染色試薬)を使用した。
【0081】
図8は、上記の検体1及び2をWDFチャンネルで分析した結果のスキャッタグラムを示す図である。
図8において、S11は検体1の側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラムであり、S12は検体1の側方散乱光強度及び前方散乱光強度のスキャッタグラムであり、S13は検体1の前方散乱光パルス幅及び前方散乱光強度のスキャッタグラムである。また、S21は検体2の側方散乱光強度及び蛍光強度のスキャッタグラムであり、S22は検体2の側方散乱光強度及び前方散乱光強度のスキャッタグラムであり、S23は検体2の前方散乱光パルス幅及び前方散乱光強度のスキャッタグラムである。
【0082】
図8に示すように、スキャッタグラムS11において、リンパ球のクラスター、単球のクラスター、好酸球のクラスター、好中球と好塩基球とによって構成された血球群のクラスター、及びミクロフィラリアのクラスターが、別々の位置に出現している。その一方で、スキャッタグラムS21においては、リンパ球のクラスター、単球のクラスター、好酸球のクラスター、及び好中球と好塩基球とによって構成された血球群のクラスターは出現しているが、ミクロフィラリアのクラスターは出現していない。このため、WDFチャンネルでは、側方散乱光強度及び蛍光強度を使用すれば、リンパ球、単球、好酸球、好中球、及び好塩基球と区別して、ミクロフィラリアを検出可能であることが分かる。
【0083】
また、スキャッタグラムS12においては、白血球(リンパ球、単球、好酸球、好中球、及び好塩基球)のクラスターと、ミクロフィラリアのクラスターとが、別々の位置に出現している。その一方で、スキャッタグラムS22においては、白血球のクラスターは出現しているが、ミクロフィラリアのクラスターは出現していない。このため、WDFチャンネルでは、側方散乱光強度及び前方散乱光強度を使用することによっても、白血球と区別して、ミクロフィラリアを検出可能であることが分かる。
【0084】
また、スキャッタグラムS13においては、白血球のクラスターと、ミクロフィラリアのクラスターとが、別々の位置に出現している。その一方で、スキャッタグラムS23においては、白血球のクラスターは出現しているが、ミクロフィラリアのクラスターは出現していない。このため、WDFチャンネルでは、前方散乱光パルス幅及び前方散乱光強度を使用することによっても、白血球と区別して、ミクロフィラリアを検出可能であることが分かる。
【0085】
さらに、スキャッタグラムS13において、前方散乱光強度(縦軸)については白血球が概ね全体に亘って分布しており、白血球の出現領域とミクロフィラリアの出現領域とが重なっている。その一方で、前方散乱光幅(横軸)については、白血球は低レベルの領域に出現しており、ミクロフィラリアは白血球に比べて高レベルの領域に出現していて、両者の領域は重なっていない。このことから、WDFチャンネルでは、前方散乱光幅のみを使用することで、白血球と区別してミクロフィラリアを検出可能であることが分かる。
【0086】
図9は、上記の検体1及び2をWNRチャンネルで分析した結果のスキャッタグラムを示す図である。
図9において、S14は検体1の蛍光強度及び前方散乱光強度のスキャッタグラムであり、S15は検体1の側方散乱光強度及び前方散乱光強度のスキャッタグラムである。また、S24は検体2の蛍光強度及び前方散乱光強度のスキャッタグラムであり、S25は検体2の側方散乱光強度及び前方散乱光強度のスキャッタグラムである。
【0087】
図9に示すように、スキャッタグラムS14において、リンパ球、単球、好酸球、及び好中球によって構成された血球群のクラスターと、ミクロフィラリアのクラスターとが、別々の位置に出現している。その一方で、スキャッタグラムS24においては、リンパ球、単球、好酸球、及び好中球によって構成された血球群のクラスターは出現しているが、ミクロフィラリアのクラスターは出現していない。このため、WNRチャンネルでは、蛍光強度及び前方散乱光強度を使用すれば、リンパ球、単球、好酸球、及び好中球と区別して、ミクロフィラリアを検出可能であることが分かる。
【0088】
また、スキャッタグラムS15においては、白血球のクラスターと、ミクロフィラリアのクラスターとが、別々の位置に出現している。その一方で、スキャッタグラムS25においては、白血球のクラスターは出現しているが、ミクロフィラリアのクラスターは出現していない。このため、WNRチャンネルでは、側方散乱光強度及び前方散乱光強度を使用することによっても、白血球と区別して、ミクロフィラリアを検出可能であることが分かる。
【0089】
なお、発明者らは、WNRチャンネルにおいても、前方散乱光幅のみを使用することで、白血球と区別してミクロフィラリアを検出可能であることを確認している。
【0090】
次に、ミクロフィラリアと白血球とを同一の測定試料から検出した場合の白血球の計数値の精度を検証した。XN−1000のWDFチャンネルにおける測定では、ミクロフィラリア数の計数と共に、好酸球数(EO#)、好中球数(NEUT#)、好塩基球数(BASO#)、リンパ球数(LYMPH#)、及び単球数(MONO#)の計数を行い、好酸球、好中球、好塩基球、リンパ球、及び単球のそれぞれについて白血球全体(WBC)に対する割合(EO%、NEUT%、BASO%、LYMPH%、MONO%)を算出した。XN−1000のWNRチャンネルにおける測定では、ミクロフィラリア数の計数と共に、白血球数(WBC)の計数を行った。また、本方法の比較実験として、シスメックス社製のXT−4000iV及びアイデックスラボラトリーズ社製のProcyte DXによって検体1及び2を測定し、EO#、NEUT#、BASO#、LYMPH#、MONO#、EO%、NEUT%、BASO%、LYMPH%、MONO%、及びWBCを得た。これらの比較実験では、それぞれの装置の専用試薬を用いた。下表に、その比較結果を示す。
【表1】
【0091】
検体1についてみると、XN−1000による白血球の計数値は、いずれもXT−4000iV及びProcyte DXによる計数値とほぼ同様の数値が得られている。つまり、本方法によれば、ミクロフィラリアと同時に計数される総白血球数及び白血球サブクラスについても、正確に測定されていることが分かる。
【0092】
次に、3つのフィラリア感染検体(上述の検体1に加えて、検体3、4)を用意し、それぞれについてXN−1000による分析結果を比較した。
図10は、検体1、3、4について、XN−1000のWDFチャンネル、WNRチャンネル、及び目視によるミクロフィラリアの各測定値を比較したグラフである。
【0093】
図10に示すように、目視による検出方法(以下、「鏡検法」という)では、検体1μL中のミクロフィラリアの数が、検体1では51.6、検体3では35.2、検体4では19.4であり、検体1、3、4の順番で少なくなっている。これに対して、WDFチャンネルでの本方法の検出結果は、検体1で68.5、検体3で49.4、検体4で31.9であった。また、WNRチャンネルでの本方法の検出結果は、検体1で64.7、検体3で43.3、検体4で30.9であった。つまり、本方法では、それぞれの数値が鏡検法の結果に比べて大きくなっているものの、WDFチャンネル及びWNRチャンネルの何れの結果も、検体1、3、4の順番で少なくなっており、鏡検法による結果との相関が認められる。したがって、本方法が十分な定量精度を有していることが分かる。
【0094】
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態においては、血中に存在するフィラリア幼虫としてミクロフィラリアを検出する例を示したが、血中に現れるフィラリア幼虫である限り、被鞘幼虫(広義のミクロフィラリア)を検出してもよいし、キャリアから体内に侵入した感染幼虫を検出してもよい。
【0095】
また、上述した実施の形態においては、1つの測定試料から、ミクロフィラリアの検出と共に白血球分類を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。白血球分類用の測定試料とは別にミクロフィラリアの検出に用いる測定用試料を調製し、それぞれの測定試料の測定を個別に行う構成とすることもできる。
【0096】
また、上述した実施の形態においては、ミクロフィラリア検出用の測定試料では、溶血剤を使用する構成について述べたが、これに限定されるものではない。溶血剤を使用せずにミクロフィラリアを検出することも可能である。この場合には、蛍光強度が低いレベルの領域に赤血球が出現することになるが、赤血球の出現領域はミクロフィラリアの出現領域とは異なるため、ミクロフィラリアを検出することが可能である。また、染色試薬を使用せずに検体を測定し、ミクロフィラリアを検出することも可能である。この場合には、前方散乱光幅を使用したり、側方散乱光強度及び前方散乱光強度を使用したりすることにより、ミクロフィラリアを検出することができる。
【0097】
また、上述した実施の形態においては、前方散乱光パルス幅、前方散乱光強度、側方散乱光強度および蛍光強度を組み合わせてミクロフィラリアを検出する構成について述べたが、これに限定されるものではない。前方散乱光パルス幅に代えて側方散乱光パルス幅又は蛍光パルス幅を用いることもできる。また、散乱光及び蛍光のパルス幅に代えて、粒子の全長を反映する他の特徴パラメータを用いることもできる。
図11は、前方散乱光に関する他の特徴パラメータの例を模式的に説明するためのパルス信号のグラフである。例えば、
図11に示すように、所定の閾値を超えたパルスの曲線下面積を、ミクロフィラリアを検出するための特徴パラメータとして用いることもできる。
【0098】
また、上述した実施の形態においては、ミクロフィラリアの検出用のゲートGを固定で設け、このゲートGの内部に存在する粒子をミクロフィラリアとして検出する構成について述べたが、これに限定されるものではない。米国特許第5555196号明細書に記載されている方法によって粒子のクラスタリングを行うことで、ミクロフィラリアを他の粒子と区別して検出する構成とすることも可能である。米国特許第5555196号は参照として本明細書に組み込まれる。
【0099】
また、上述した実施の形態においては、ミクロフィラリア検出用のゲートGが、動物種に関係なく固定で設けられている構成について述べたが、複数の動物種のそれぞれに対応したミクロフィラリア検出用ゲートGを用いてもよい。この場合、ハードディスク51dには、複数の動物種のそれぞれに対応づけてゲートを定義する数値範囲を格納しておき、オペレータによって指定された動物種に応じたゲートを読み出してミクロフィラリア検出の解析に適用するように構成することができる。また、
図4のステップS10で用いられる、フィラリア症の罹患の判別の基準値Tを、動物種によって異なる値に設定してもよい。
【0100】
また、上述した実施の形態においては、制御部25が測定ユニット2の各部の動作制御を行い、CPU51aが測定データの解析処理を行う構成について述べたが、これに限定されるものではない。1つの制御部(CPU)によって、測定ユニット2の各部の動作制御及び測定データの解析処理を実行する構成とすることも可能である。この場合、測定ユニット2と情報処理ユニット5とを別々に設ける構成ではなく、測定ユニット2と情報処理ユニット2の機能を一体化した1つの装置とすることも可能である。
【0101】
また、上述した実施の形態においては、単一のコンピュータ5aによりコンピュータプログラム54aの全ての処理を実行する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、上述したコンピュータプログラム54aと同様の処理を、複数の装置(コンピュータ)により分散して実行する分散システムとすることも可能である。