【文献】
Thomas E. Wales et al., High-Speed and High-Resolution UPLC Separation at Zero Degrees Celsius,Anal. Chem.,2008年,Vol.80,p.6815-6820
【文献】
Ma J. et al.,Recent advances in immobilized enzymatic reactors and their applications in proteome analysis,Anal. Chim. Acta.,2009年,Vol.632,p.1-8
【文献】
Mellors J. Scott et al.,Use of 1.5-microm porous ethyl-bridged hybrid particles as a stationary-phase support for reversed-phase ultrahigh-pressure liquid chromatography,Anal. Chem.,2004年,Vol.76,p.5441-5450
【文献】
Ma J,et al.,Organic-inorganic hybrid silica monolith based immobilized trypsin reactor with high enzymatic activity.,Anal Chem. ,2008年 4月15日,80(8),2949-56.
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
液体サンプルを流動しながら、(i)約172barから約2410barの間の圧力および(ii)約172bar未満の第2の圧力の間を循環させることをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本技術は、ポリマー分析物を含む液体サンプルの分析において酵素に共有結合している固体固定相を使用する高圧連続流(例、オンライン)IMERシステムのための装置、方法およびキットを含んでいる。このようなオンライン法は、従来法に比較してより単純な運転およびサンプル調製を含む利点を有する。このような高圧法は、改良されたタンパク質消化効率および低圧での消化に抵抗性であるポリマーを消化する能力を含む利点をさらに有している。ポリマー分析物は、生体高分子、例えばタンパク質、ポリペプチド、炭水化物、デオキシリボ核酸またはリボ核酸であってよい。ポリマー分析物は、酵素によって開裂できる結合を有する非天然型ポリマー(ヘテロもしくはホモポリマー)であってよい。
【0020】
IMERは、例えばプロテオミクスおよびバイオテクノロジーにおいて数多くの用途を有する。IMERシステムのための1つの一般的用途は、(例えばLC−MSによる分析前の)タンパク質特性解析における重要なサンプル調製ステップであるタンパク質分解である。タンパク質消化は、一般に、サンプルタンパク質をより小さく分画化されたペプチドへ開裂するためにプロテアーゼおよびサンプルタンパク質を接触させることによってオフラインで実施される。オフラインタンパク質消化法は、標準プロトコールであるが、望ましくない厄介な問題、例えばポリペプチドの修飾および減少を有する場合がある。オフライン消化法のこの他の不利点には、本技術による方法と比較した場合に、より長いオペレータ時間およびより多量の酵素使用(例、より高額のコスト)が含まれる。タンパク質消化法は具体例として提供したが、本技術は、酵素工程を利用する本質的にあらゆる分析物調製または分析に適用することができる。
【0021】
タンパク質消化は、IMER内で実施することもできる。市販で入手できるIMER媒体には、APPLIED BIOSYSTEMS社(米国カリフォルニア州)から入手可能な20μmのPOROSZYME媒体(ポリスチレンジビニルベンゼン粒子)、OraChrom社(米国マサチューセッツ州)から入手可能なSTYROSZYME(商標)媒体(完全透水性のポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)マトリックス、およびアガロースビーズ媒体が含まれる。しかしこれらの媒体は、高圧が該媒体を破壊してIMERを非機能性にさせるために、相当に低圧(例、2,000psi未満)でしか使用することができない。このため、このような媒体はこれらの用途および操作条件が、基本的に限定される。
【0022】
先行技術とは対照的に、本技術は、高圧下でのオンライン運転のために適合した固体固定相を利用する。高圧は、2,500から35,000psi、例えば8,000から15,000psiの範囲内の圧力を含むことができる。耐圧性固体支持体の1つの例は、BEH粒子である。固体支持体の修飾は、リンカー、例えばトリエトキシシリルブチルアルデヒドなどの有機官能性シラン化学リンカーを用いて達成でき、プロテアーゼを固定化するために使用できる。この固体固定相は、IMERを生成するためにカラム内に充填することができ、該IMERはこの後オンラインLCシステム内でタンパク質を消化するために使用できる。オンライン消化は高圧下で、例えば重水素交換質量分析法(HDX MS)のためのWaters Corporation社(米国マサチューセッツ州)製UPLC−MSシステム内で実施できる。
【0023】
重要なことに、固体固定相もしくは支持体は、高圧運転下で破壊されない、または非機能性にされない。本技術は、オンライン運転(例えばオフライン法、例えば別個のサンプル調製もしくはサンプルサイクリングを用いる静的加圧カラムとは対照的に、サンプルを該固体支持体上を連続的に流しながらの圧力下での運転)をさらに維持する。オンライン運転は、分画化ペプチドを捕捉カラム内に収集し、この後に迅速および連続方法でクロマトグラフによって分離することを可能にすることによって、効率を上昇させることができる。同様に、高圧運転は、例えば、タンパク質消化の効率を増加させ、分析測定を改良し、および該機器の運転速度を増加させることによってさらに効率を上昇させることができる。
【0024】
(用語の定義)
上記で使用したように、用語「脂肪族基」には、典型的には1から22個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖を特徴とする有機化合物が含まれる。
【0025】
脂肪族基には、アルキル基、アルケニル基およびアルキニル基が含まれる。複雑な構造では、鎖は分枝状または架橋状であってよい。アルキル基には、直鎖状アルキル基および分枝状アルキル基を含む、1個以上の炭素原子を有する飽和炭化水素が含まれる。このような炭化水素部分は、1個以上の炭素上で、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、チオール、アミノ、アルコキシ、アルキルカルボキシ、アルキルチオ、またはニトロ基と置換されてよい。炭素の数が他に特定されない場合は、本明細書で使用する「低級脂肪族」は、上記に規定したような、しかし1から6個の炭素原子を有する脂肪族基(例、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル)を意味する。このような低級脂肪族基の代表、例えば低級アルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−クロロプロニル、n−ブチル、sec−ブチル、2−アミノブチル、イソブチル、tert−ブチル、3−チオフェニルなどである。本明細書で使用する用語「ニトロ」は−NO
2を意味する;用語「ハロゲン」は、−F、−Cl、−Brもしくは−Iを意味する;用語「チオール」はSHを意味する;および「ヒドロキシル」は−OHを意味する。そこで本明細書で使用する用語「アルキルアミノ」は、上記で規定したように、これに付着した1つのアミノ基を有するアルキル基を意味する。適切なアルキルアミノ基には、1から約12個の炭素原子、または1から約6個の炭素原子を有する基が含まれる。用語「アルキルチオ」は、上記で規定したように、これに付着した1つのスルフヒドリル基を有するアルキル基を意味する。適切なアルキルチオ基には、1から約12個の炭素原子、または1から約6個の炭素原子を有する基が含まれる。本明細書で使用する用語「アルキルカルボキシル」は、上記で規定したように、これに付着した1つのカルボキシル基を有するアルキル基を意味する。本明細書で使用する用語「アルコキシ」は、上記で規定したように、これに付着した1個の酸素原子を有するアルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基には、1から約12個の炭素原子、または1から6個の炭素原子を有する基、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert−ブトキシなどが含まれる。用語「アルケニル」および「アルキニル」は、アルキル類に類似するが、少なくとも1つの二重もしくは三重結合を各々含有する不飽和脂肪族基を意味する。適切なアルケニルおよびアルキニル基には、2から約12個の炭素原子、または1から約6個の炭素原子を有する基が含まれる。
【0026】
用語「脂環式基」には、3個以上の炭素原子の閉環構造が含まれる。脂環式基には、飽和環式炭化水素であるシクロパラフィン類もしくはナフタレン類、2個以上の二重結合を備えて不飽和であるシクロオレフィン類、および三重結合を有するシクロアセチレン類が含まれる。これらは芳香族基を含んでいない。シクロパラフィン類の例には、シクロプロパン、シクロヘキサンおよびシクロペンタンが含まれる。シクロオレフィン類の例には、シクロペンタジエンおよびシクロオクタテトラエンが含まれる。脂環式基には、さらにまた縮合環構造および置換脂環式基、例えばアルキル置換脂環式基が含まれる。脂環式基の例では、このような置換基は低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、−CF
3、−CNなどをさらに含むことができる。
【0027】
用語「複素環基」には、環内の1個以上の原子が炭素以外の元素、例えば窒素、硫黄または酸素である閉環構造が含まれる。複素環基は、飽和もしくは不飽和であってよく、複素環基、例えばピロールおよびフランは芳香族の性質を有していてよい。これらには、縮合環構造、例えばキノリンおよびイソキノリンが含まれる。複素環基の他の例には、ピリジンおよびプリンが含まれる。複素環基は、さらにまた1つ以上の構成元素で、例えばハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、−CF
3、−CNなどで置換されてもよい。適切な複素環式芳香族および複素脂環式基は、一般には環1個当たり3から約8員および1つ以上のN、OもしくはS原子を備える1から3個の別個もしくは縮合環、例えばクマリニル、キノリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、モルホリノおよびピロリジニルを有する。
【0028】
用語「芳香族基」には、1つ以上の環を含有する不飽和環状炭化水素が含まれる。芳香族基には、0から4個のヘテロ原子を含むことのできる5および6員の単環式基、例えばベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが含まれる。芳香族環は、1つ以上の環位置で、例えば、ハロゲン、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、低級アルキルアミノ、低級アルキルカルボキシル、ニトロ、ヒドロキシル、−CF
3、−CNなどで置換されてよい。
【0029】
用語「アルキル」には、飽和脂肪族基が含まれ、直鎖状アルキル基、分枝状アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基およびシクロアルキル置換アルキル基を含んでいる。幾つかの実施形態において、直鎖状または分枝状アルキルは、この骨格内に30個以下の炭素原子、例えば直鎖状についてはC
1−C
30または分枝状についてはC
3−C
30を有する。幾つかの実施形態において、直鎖状または分枝状アルキルは、この骨格内に20個以下の炭素原子、例えば直鎖状についてはC
1−C
20または分枝状についてはC
3−C
20を有し、一部の実施形態において18個以下である。同様に、特定のシクロアルキル類はこれらの環構造内に4から10個の炭素原子を有し、一部の実施形態において該環構造内に4から7個の炭素原子を有する。用語「低級アルキル」は、鎖内に1から6個の炭素を有するアルキル基および環構造内に3から6個の炭素を有するシクロアルキル類を意味する。
【0030】
さらに、本明細書および特許請求の範囲を通して使用する用語「アルキル」(「低級アルキル」を含む。)には、「未置換アルキル類」および「置換アルキル類」が含まれ、後者は該炭化水素骨格の1個以上の炭素上の水素を置換する置換基を有するアルキル部分を意味する。このような置換基は、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスフォナト、ホスフィナト、シアノ、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む。)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む。)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、スルフォナト、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくは複素環式芳香族部分を含むことができる。当業者であれば、炭化水素鎖上で置換された部分は、適切であればこれら自体が置換されてよいことを理解するであろう。シクロアルキル類は、例えば上述した置換基とさらに置換されてよい。「アラルキル」部分は、例えば1から3個の別個もしくは縮合環および6から約18個の炭素環原子を有するアリール、例えばフェニルメチル(ベンジル)と置換されたアルキルである。
【0031】
用語「アリール」には、0から4個のヘテロ原子を含むことのできる5および6員の単環式芳香族基、例えば未置換もしくは置換ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが含まれる。アリール基には、多環式縮合芳香族基、例えばナフチル、キノリル、インドリルなどがさらに含まれる。芳香族環は、1個以上の環位置で、例えばアルキル基について上述したような置換基で置換されてよい。適切なアリール基には、未置換および置換フェニル基が含まれる。本明細書で使用する用語「アリールオキシ」は、上記で規定したように、これに付着した1個の酸素原子を有するアリール基を意味する。
【0032】
本明細書で使用する用語「アラルコキシ」は、上記で規定したように、これに付着した1個の酸素原子を有するアラルキル基を意味する。適切なアラルコキシ基は、1から3個の別個もしくは縮合環および6から約18個の炭素環原子、例えばO−ベンジルを有する。
【0033】
本明細書で使用する用語「アミノ」は、式−NR
aR
b(式中、R
aおよびR
bは、独立して水素、アルキル、アリール、もしくはヘテロシクリルである、またはR
aおよびR
bはこれらが付着している窒素原子と一緒に環内に3から8個の原子を有する環状部分を形成する。)の未置換もしくは置換部分を意味する。そこで、用語「アミノ」には、環状アミノ部分、例えば他に特に規定されない限りピペリジニルまたはピロリジニル基が含まれる。「アミノ置換アミノ基」は、R
aおよびR
bの内の少なくとも1つがアミノ基とさらに置換されているアミノ基を意味する。
【0034】
本明細書で使用する用語「保護基」は、有機合成の分野において周知である官能基の化学修飾を意味する。典型的な保護基は変動してよく、概してProtective Groups in Organic Synthesis[T.W.Green and P.G.M.Wuts,John Wiley & Sons,Inc,1999]に記載されている。
【0035】
「有機−無機ハイブリッド材料」を含む「ハイブリッド」には、無機に基づく構造が含まれるが、このとき有機官能基は内部もしくは「骨格」無機構造ならびに該ハイブリッド材料表面の両方に不可欠である。ハイブリッド材料の無機部分は、例えば、アルミナ、シリカ、チタン、セリウム、もしくはジルコニウムまたはこれらの酸化物、またはセラミック材料であってよい。上述したように、典型的なハイブリッド材料は、米国特許第4017528号、同第6528167号、同第6686035号、同第7175913号および同第7919177号に示されており、前記特許の開示は参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0036】
本明細書で使用する用語「BEH」は、エチレン架橋ハイブリッド材料である有機−無機ハイブリッド材料を意味する。
【0037】
本明細書で使用する用語「吸着基」は、コア材料に非共有的に付着している架橋もしくは非架橋のモノマー、オリゴマーまたはポリマーを意味する。Zが吸着基を表す幾つかの実施形態において、該基はコア材料X、コア材料Xの表面、または固定相材料の表面上に吸着されてよい。例には、アルコール類、アミン類、チオール類、ポリアミン類、デンドリマー類、またはポリマー類が含まれるがこれらに限定されない。
【0038】
用語「官能化基」もしくは「官能化可能基」には、固定相へ幾つかのクロマトグラフィー官能性を付与する有機官能基が含まれる。
【0039】
本明細書で使用する用語「末端基」は、これ以上の反応を受けることのできない基を表す。幾つかの実施形態において、末端基は、親水性末端基であってよい。親水性末端基には、アルコール、ジオール、グリシジルエーテル、エポキシ、トリオール、ポリオール、ペンタエリトリトール、ペンタエリトリトールエトキシレート、1,3−ジオキサン−5,5−ジメタノール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンポリグリコールエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、一価、二価、もしくは多価炭水化物基、多触覚炭水化物、末梢親水性基を含有するデンドリマー、末梢親水性基を含有するデンドリグラフ、または両性イオン基の保護形もしくは脱保護形が含まれるがこれらに限定されない。
【0040】
本明細書で使用する用語「表面付着基」は、反応してコア材料、該コア材料の表面、または固体固定相材料の表面に共有結合する、非共有結合する、吸着する、またはさもなければ付着することのできる基を表している。幾つかの実施形態において、表面付着基は、シロキサン結合によって該コア材料の表面に付着している。表面付着基は、固体固定相と酵素との間の共有結合を提供できる。
【0041】
固体固定相
本技術によるIMER装置、方法およびキットは、ポリマー分析物を含む液体サンプルの高圧連続流運転および分析を達成するために様々な固体固定相、リンカーおよび酵素を利用することができる。1つの例は、BEH(例、Waters Corporation社、米国マサチューセッツ州、BEH 130Å、BEH 200Å、またはBEH 300Å)である。圧力は、実際チャンバー圧(例、固体固定相床1mm当たりの圧力とは対照的に)を意味することができる。
【0042】
一般に、固体固定相は、高圧IMER運転および酵素への共有結合のために選択された、および/または適合する本質的にあらゆる材料を含むことができる。高圧には、例えば、約2,000、2,250、2,500、2,750、3,000、3,250、3,500、3,750、4,000、4,250、4,500、4,750、5,000、5,250、5,500、5,750、もしくは6,000psiより高い圧力、または約5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000、15,000、16,000、17,000、18,000、19,000、20,000、22,500、25,000、27,500、30,000、32,500もしくは35,000psiまでの圧力またはこれらの間のあらゆる個別値もしくは範囲を含むことができる。より高い圧力もまた本技術によって企図されている。例えば、約40,000、45,000、50,000、75,000、100,000、125,000、150,000以上までの圧力。一般に、圧力は、固体支持体、機器システムおよび所望の流量を顧慮して選択すべきである。酵素への共有結合は、固体固定相の表面上の官能基またはリンカー分子を通して達成することができる。
【0043】
様々な実施形態において、固体固定相は、無機/有機ハイブリッド粒子を含むことができる。1つの典型的な無機/有機ハイブリッドは、エチレン架橋(BEH)粒子(Waters Corporation社、米国マサチューセッツ州)である。固体固定相は、モノリス、粒子、多孔質粒子、および/または表面多孔質粒子を含むことができる。粒子は、球形または非球形であってよい。固体固定相は、シリカ、無機シリカ、および/または金属酸化物を含むことができる。一部の実施形態において、チャンバーには固定相材料を含有するために1つ以上のフリットが装備されている。固定相材料がモノリシック構造である実施形態において、ハウジングは1つ以上のフリットを含めずに使用できる。
【0044】
固体固定相は、例えば、1から10μの範囲内の平均径を有する粒子を含むことができるが、適切であれば所望される用途により小さな、またはより大きな径を選択することができる。例えば、平均粒径は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8、8.6、9、9.5、または10μである。一般に、粒径は、所望の圧力および/または流量を考慮して選択することができる。例えば、大きな粒径は高圧消化中のカラムヘッドから末端への一貫した圧力を達成するために使用することができる。固体固定相は、0.1から2.5cm
3/gの範囲内の平均細孔容積を有する孔を含むことができる。例えば、平均細孔容積は、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、または2.5cm
3/gである。一部の実施形態において、多孔質粒子は、これらが高圧に抵抗する能力と同時にタンパク質被覆のための相当に大きな表面積(単位質量またはカラム容積当たり)を提供するので、有益な場合がある。
【0045】
固体固定相は、100から1,000Åの範囲内の平均孔径を有する孔を含むことができる。例えば、平均孔径は、約100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000、またはこれらの間のあらゆる数値もしくは範囲であってよい。
【0046】
幾つかの実施形態において、前記固定相材料は、式1:
W−[X]−Q 式1
(式中、Xは、シリカコア材料、金属酸化物コア材料、有機−無機ハイブリッドコア材料もしくは一群のこれらのブロックコポリマーを含む表面を有するコア組成物である;Wは、水素もしくはヒドロキシルである;およびQは、非存在、または分析物との静電相互作用、ファン・デル・ワールス(Van der Waals)相互作用、水素結合相互作用または他の相互作用を最小限に抑える官能基である。)によって表されるコア組成物および表面組成物を有する粒子またはモノリスを含んでいる。
【0047】
さらに、幾つかの実施形態において、WおよびQは、コア組成物Xまたは該コア組成物の表面の自由原子価を使用する。一部の実施形態において、WおよびQは、表面組成物を形成するために選択される。他の実施形態において、Xは、1つのブロックコポリマーまたは1群のブロックポリマーを形成するために選択することができる。
【0048】
幾つかの実施形態において、Xは、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム、または脂肪族架橋シランを含む有機−無機ハイブリッドコアである。特定の実施形態において、Xは、脂肪族架橋シランを含む有機−無機ハイブリッドコアである。幾つかの他の特定の実施形態において、脂肪族架橋シランの脂肪族基は、エチレンである。
【0049】
幾つかの実施形態において、コア材料Xは、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、またはセラミック材料である。幾つかの他の実施形態において、コア材料Xは、クロマトグラフィー向上性細孔形状(CEPG)を有することができる。CEPGは、例えば当分野における他のクロマトグラフィー媒体とは区別されるように、材料のクロマトグラフィー分離能力を強化することが見出されている形状を含んでいる。例えば、形状は、形成する、選択する、もしくは構築することができ、様々な特性および/または因子を使用すると、材料のクロマトグラフィー分離能力が、当分野において公知または従来法で使用される形状と比較して「向上している」かどうかを決定することができる。これらの因子の例には、高分離効率、より長いカラム寿命および高質量移動特性(例えば、減少した帯域拡張および良好なピーク形状によって証明される。)が含まれる。これらの特性は、当分において認識された技術を使用して測定または観察することができる。例えば、多孔質無機/有機ハイブリッド粒子のクロマトグラフィー向上性細孔形状は、先行技術粒子からは、どちらも例えば質量移動速度を低下させてより低効率をもたらすために望ましくない「インク瓶」または「シェル形」の細孔形状もしくは形態の非存在によって識別される。クロマトグラフィー向上性細孔形状は、微小孔の小集団しか含有していないハイブリッド材料内で見出されている。微小孔の小集団は、ハイブリッド材料において約34Å未満の径の全ての孔が該材料の比表面積に約110m
2/g未満しか寄与しない場合に達成される。このような低微小孔表面積(MSA)を備えるハイブリッド材料は、高分離効率および良好な質量移動特性(例えば、減少した帯域拡張および良好なピーク形状によって証明される。)を含むクロマトグラフィー向上を生じさせる。微小孔表面積(MSA)は、バレット−ジョイナー−ヘレンダ(BJH:Barrett−Joyner−Halenda)法を使用して等温の吸着脚からの多点窒素収着分析によって決定された、34Å以下の径を備える孔内の表面積であると規定されている。本明細書で使用する頭字語「MSA」および「MPA」は、「微小孔表面積」を意味するために互換的に使用される。
【0050】
幾つかの実施形態において、コア材料Xは、式Z’a(R’)bSi−R’’(式中、Z’=Cl、Br、I、C
1−C
5アルコキシ、ジアルキルアミノもしくはトリフルオロメタンスルホネートである;aおよびbは、a+b=3であることを前提に、各々0から3の整数である;R’は、C
1−C
6直鎖状、環式もしくは分枝状アルキル基である、およびR’’は、官能化基である。)を有する表面修飾剤を用いて表面修飾されてよい。また別の実施形態において、コア材料Xは、ポリマーでコーティングすることによって表面修飾されてよい。
【0051】
幾つかの実施形態において、表面修飾剤は、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、オクチルジメチルクロロシランおよびオクタデシルジメチルクロロシランから成る群から選択される。一部の実施形態において、表面修飾剤は、オクチルトリクロロシランおよびオクタデシルトリクロロシランから成る群から選択される。他の実施形態において、表面修飾剤は、イソシアネートまたは1,1’−カルボニルジイミダゾール(特に、ハイブリッド基が(CH
2)
3OH基を含有する場合)から成る群から選択される。
【0052】
他の実施形態において、材料は、有機基およびシラノール基修飾の組み合わせによって表面修飾されている。さらに他の実施形態において、材料は、有機基修飾およびポリマーを用いたコーティングの組み合わせによって表面修飾されている。別の実施形態において、有機基は、キラル部分を含んでいる。さらに他の実施形態において、材料は、シラノール基修飾およびポリマーを用いたコーティングの組み合わせによって表面修飾されている。
【0053】
他の実施形態において、材料は、材料上の有機基と修飾試薬との間の有機共有結合の形成を介して表面修飾されている。さらに他の実施形態において、材料は、有機基修飾、シラノール基修飾およびポリマーを用いたコーティングの組み合わせによって表面修飾されている。他の実施形態において、材料は、シラノール基修飾によって表面修飾されている。幾つかの実施形態において、表面修飾層は、多孔質または非多孔質であってよい。
【0054】
固定相材料の他の実施形態において、Qは、親水性基、疎水性基または非存在である。Qが親水性基である固定相材料の一部の実施形態において、Qは、脂肪族基である。他の実施形態において、前記脂肪族基は、脂肪族ジオールである。さらに他の実施形態において、Qは、式2:
【0055】
【化1】
(式中、n
1は、0から30の整数である;n
2は、0から30の整数である;R
1、R
2、R
3およびR
4の各発生は、独立して水素、フルオロ、低級アルキル、保護もしくは脱保護アルコール、両性イオン、または基Zを表す;Zは:
a)固定相材料の表面と式3:
(B
1)
x(R
5)
y(R
6)
zSi− 式3
(式中、xは、1から30の整数である、
yは、0から2の整数である、
zは、0から2の整数である、
およびx+y+z=3である、
R
5およびR
6の各発生は、独立してメチル、エチル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、iso−プロピル、テキシル、置換もしくは未置換アリール、環状アルキル、分枝状アルキル、低級アルキル、保護もしくは脱保護アルコール、または両性イオンを表す;
B
1は、−OR
7、−NR
7’R
7’’、−OSO
2CF
3、もしくは−Clである;このときR
7、R
7’およびR
7’’は、水素、メチル、エチル、n−ブチル、iso−ブチル、tert−ブチル、iso−プロピル、テキシル、フェニル、分枝状アルキルもしくは低級アルキルである。)の1部分との間の共有結合もしくは非共有結合の形成によって生成された表面付着基;
b)直接炭素−炭素結合形成を通して、またはヘテロ原子、エステル、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、イミド、ウレア、カーボネート、カルバメート、複素環、トリアゾール、もしくはウレタン結合を通してのXの表面ハイブリッド基への直接結合;または
c)固定相材料の表面に共有結合していない吸着基;
d)Wが水素である場合に、固定相材料の表面とビニルもしくはアルキニル基との反応による共有結合の形成によって生成された表面結合基)を表す;
Yは、直接結合;ヘテロ原子結合;エステル結合;エーテル結合;チオエーテル結合;アミン結合;アミド結合;イミド結合;ウレア結合;チオウレア結合;カーボネート結合;カルバメート結合;複素環結合;トリアゾール結合;ウレタン結合;ジオール結合;ポリオール結合;スチレン、エチレングリコール、もしくはプロピレングリコールのオリゴマー;スチレン、エチレングリコール、もしくはプロピレングリコールのポリマー;炭水化物基、多触角炭水化物、デンドリマーもしくはデンドリグラフ、または両性イオン基を表す;および
Aは、
i.)親水性末端基;
ii.)水素、フルオロ、フルオロアルキル、低級アルキル、もしくは基Z;または
iii.)官能化可能基を表す。
【0056】
Qが式2の脂肪族ジオールである幾つかの実施形態において、n
1は、2から18、または2から6の整数である。Qが式2の脂肪族ジオールである他の実施形態において、n
2は、0から18、または0から6の整数である。Qが式2の脂肪族ジオールであるさらに他の実施形態において、n
1は、2から18の整数であり、n
2は0から18の整数であり、n
1は2から6の整数である、およびn
2は、0から18の整数であり、n
1は、2から18の整数であり、およびn
2は、0から6の整数である、またはn
1は、2から6の整数であり、n
2は0から6の整数である。
【0057】
Qが式2の脂肪族ジオールである固定相材料のさらに他の実施形態において、Aはi)親水性末端基を表し、前記親水性末端基は、アルコール、ジオール、グリシジルエーテル、エポキシ、トリオール、ポリオール、ペンタエリトリトール、ペンタエリトリトールエトキシレート、1,3−ジオキサン−5,5−ジメタノール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンポリグリコールエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、一価、二価、もしくは多価炭水化物基、多触覚炭水化物、末梢親水性基を含有するデンドリマー、末梢親水性基を含有するデンドリグラフ、または両性イオン基の保護形もしくは脱保護形である。
【0058】
Qが式2の脂肪族ジオールである固定相材料のさらに他の実施形態において、Aはii.)水素、フルオロ、メチル、エチル、n−ブチル、t−ブチル、i−プロピル、低級アルキル、または基Zを表す。
【0059】
Qが式2の脂肪族ジオールである固定相材料のさらになお他の実施形態において、Aはiii.)官能化可能基を表し、前記官能化可能基は、アミン、アルコール、シラン、アルケン、チオール、アジド、もしくはアルキンの保護形もしくは脱保護形である。一部の実施形態において、前記官能化可能基は、この後の反応ステップにおいて新規な表面基を生じさせることができるが、前記反応ステップはカップリング、メタセシス、ラジカル付加、ヒドロシリル化、縮合、クリック、または重合である。
【0060】
さらに他の実施形態において、基Qは、表面修飾剤であってよい。これらの材料のために使用できる表面修飾剤の非限定的例には:
A.)親水性表面装飾を生じさせるシラン類
【0062】
【表1】
Aは、以下から選択される:
【0063】
【化3】
または
B)疎水性もしくは混合親水性/疎水性表面装飾
【0065】
【表2】
(式中、Aは、以下の:H、フェニル、NHC(O)NHR
8、NHC(O)R
8、OC(O)NHR
8、OC(O)OR
8、もしくは−R
8(式中、R
8は、オクタデシル、ドデシル、デシル、オクチル、ヘキシル、n−ブチル、t−ブチル、n−プロピル、i−プロピル、フェニル、ベンジル、フェネチル、フェニルエチル、フェニルプロピル、ジフェニルエチル、ビフェニルから選択される。)を生じさせるシラン類が含まれる。
【0066】
幾つかの実施形態において、Zは、直接炭素−炭素結合形成を通して、またはヘテロ原子、エステル、エーテル、チオエーテル、アミン、アミド、イミド、ウレア、カーボネート、カルバメート、複素環、トリアゾール、もしくはウレタン結合を通しての表面有機官能性ハイブリッド基への付着を表す。
【0067】
他の実施形態において、Zは、材料の表面に共有結合していない吸着表面基を表す。この表面基は、架橋結合ポリマー、または他の吸着表面基であってよい。例には、アルコール類、アミン類、チオール類、ポリアミン類、デンドリマー類、またはポリマー類が含まれるがこれらに限定されない。
【0068】
酵素
本技術によるIMER装置、方法およびキットは、ポリマー分析物を含む液体サンプルの高圧連続流運転および分析を達成するために様々な酵素を利用することができる。1つの例は、サンプル調製のためにHDX MSにおいて使用されるペプシンである。
【0069】
一般に、酵素は、サンプル調製または分析のために機能できる本質的にあらゆるタンパク質触媒を含むことができる。1つの典型的な酵素は、プロテアーゼである。プロテアーゼは、特異的開裂プロテアーゼ(例、トリプシン)または非特異的開裂プロテアーゼ(例、ペプシン)であってよい。本技術は、数多くの様々なタイプの酵素、例えばトリプシン、キモトリプシン、lysC、アミダーゼ類、PNGase、PNGase F、V8ならびにこれらおよび/または他の酵素の混合物とともに様々なプロテオミクス用途において使用することができる。プロテアーゼは、以下の広範囲の群:セリンプロテアーゼ類、トレオニンプロテアーゼ類、システインプロテアーゼ類、アスパラギン酸プロテアーゼ類、メタロプロテアーゼ類、およびグルタミン酸プロテアーゼ類のいずれか1つから選択することができる。または、プロテアーゼは、以下の広範囲の群:酸性プロテアーゼ類、中性プロテアーゼ類、または塩基性プロテアーゼ類(もしくはアルカリプロテアーゼ類)のいずれか1つから選択することができる。酵素は、1つより多いプロテアーゼの組み合わせを含む(例、蓄積的および/または相補的機能を有する)ことができる。酵素(もしくは酵素類)は、所望の機能(例、1つ以上の特異的結合を開裂する。)を達成するため、および/または所望の条件下(例、酵素の運転pHをサンプルのpHに適合させる。)で運転するために選択することができる。
【0070】
酵素に加えて、固体固定相は、さらに捕捉基を結合させることができる。捕捉基は、高親和性/特異的捕捉剤(例、抗体もしくは抗体複合体)または低親和性/非特異的捕捉剤であってよい。捕捉基は、固体固定相に共有結合させることができる。捕捉基は、第2作用様式(例、ポリマー分析物の共鳴時間を増加させ、これによりIMERの効率を増加させる。)を提供することができる。
【0071】
共有リンカー
本技術によるIMER装置、方法およびキットは、当該の酵素を固体固定相上に固定化するために様々なリンカーを使用することができる。1つの例は、トリエトキシシリルブチルアルデヒド(bALD−TEOS、Gelest社から入手できる。)である。
【0072】
一般に、共有リンカーは、固体固定相および酵素を共有結合(例、カルボン酸およびアミンによって形成されるアミド結合)させることのできる本質的にあらゆる化学的成分を含むことができる。他の例は、アミンおよびNHS−アルデヒド類、例えばスクシンイミジルp−ホルミルベンゾアート(SFB)もしくはスクシンイミジルp−ホルミルフェノキシアセテート(SFPA)ならびにアミン類およびグルタルアルデヒド類を含んでいた。幾つかの実施形態において、共有リンカーは、有機官能化シランリンカーを含むことができる。有機官能化シランリンカーは、トリエトキシシリルブチルアルデヒドであってよい。一般に、酵素はシッフ(Schiff)塩基形成および還元アミノ化を通してリンカーに共有結合することができる。一般に、シランリンカーは、ヒドロキシル基を有する固体支持体に、該リンカーおよび固体支持体を接触させることならびに反応混合物をエタノールアミンを用いてクエンチさせることを通して共有結合することができる。この他の酵素は、固体支持体上、例えばBEH上に適切な固定化プロトコール(例えば、固体支持体の化学的機能性およびタンパク質上の結合部位に合わせて選択される。)を使用して固定化することができる。標的pHでの酵素活性に依存して、固定化プロトコール中には様々なpHが必要になる場合がある。例えば、BEHトリプシンカラムは、酸性pHではなくむしろ中性pHで調製することが必要になる。
【0073】
図1は、典型的な固体固定相の調製反応を示している。第1に、酵素(ペプシン)は、NaCNBH
3によるシッフ塩基形成および還元アミノ化を通してリンカー(トリエトキシシリルブチルアルデヒド、bALD−TEOS)と反応させられる。第2に、酵素−リンカーは、固体支持体(酸処理BEH)の表面上でアルコール基と反応させられ、エタノールアミンを用いてクエンチさせられる。
【0074】
bALD−TEOSは、第1級もしくは第2級アミン(NH−)とともにシッフ塩基を形成するアルデヒド化合物である。あらゆるタンパク質は遊離アミンを備えるN末端を含有するので、そこでペプシンのN末端およびあらゆる利用可能な側鎖アミン基は、bALD−TEOSとのシッフ塩基複合体を形成させられる。
【0075】
ALDカップリング溶液(Sterogene Bioseparation社)を温和な還元剤(NaCNBH
3)としての複合混合物に加え、還元アミノ化を開始させた。シッフ塩基が2時間にわたる攪拌インキュベーションを通して還元されると、このタイプの結合は安定性になる。
【0076】
酸処理BEH(5μ径、300Åの孔径)を、bALD−TEOSおよびペプシンの還元複合体を含有する溶液中に加えた。bALD−TEOSの他方の端は、BEH粒子の表面上のシラノールのヒドロキシル基と反応させるために利用できるトリエトキシシリル基を含有している。この反応は、一晩にわたる回転後に完了したので、この後に未反応アルデヒド基を遮断するために1Mエタノールアミンを加えることによってクエンチした。
【0077】
ペプシンBEHのバッチをNa
3クエン酸塩、NaClを用いて洗浄し、最後に0.08% TFA水溶液中で洗浄して保存した。ペプシンは、塩基性条件下で不可逆的に非活性化した。そこでペプシン溶液のpHはバッチ合成を通してpH5下の酸性で保持した。
【0078】
酵素に結合した固体固定相を次にIMERシステムにおいて使用するためにチャンバー(例、カラム、例えば0.1%ギ酸水溶液を含む2.1×30mmのUPLCハウジング)内に配置した。様々な実施形態において、チャンバーはUPLCハウジングであってよい。しかし一般には、チャンバーはオンライン高圧運転のために適合しさえすればよく、様々な幾何学的形態(例、短い共鳴時間のためにはずんぐりして短い、または長い共鳴時間のためには細長い形態)を想定することができる。
【0079】
高圧システム
IMERは、高圧下で、例えば高圧LCシステム内で使用できる。1つの例は、Waters Corporation社製SYNAPT(商標)Q−TOF(商標)質量分析法と結合され、上昇エネルギー質量分析法(MSE)モードで獲得され、Waters Corporation社製ProteinLynx Global SERVER(商標)(PLGS、定量的および定性的プロテオミクス研究のための完全統合化Mass−Informatics(商標)プラットホームである。)を使用して処理される、Waters Corporation社(米国マサチューセッツ州)から入手できるnanoCQUITY UltraPerformance LC(登録商標)(UPLC(登録商標))システムである。
【0080】
図2AからCは、典型的なIMERシステムの概略図である。ペプシンカラムは、
図1に示した方法によって、ペプシン、bALD−TEOS、およびBEH 5μ、300Å粒子を用いて調製した。ペプシン−BEH粒子をUPLCカラムハードウエア(2.1×30mm)内に装填し、このハードウエアを次にnanoACQUITY UltraPerformance LC(登録商標)上に据え付けた。IMERシステムをHDX−MSのためにセットアップしてオンラインで運転させると、分析の速度および便宜性が増加した。
【0081】
IMERシステム成分は、実験段階に対応する位置に示されている、2個の6ポート弁(つまり、
図2AからCに示した略図における1から6と表示された各ポート)を含んでいた。100μL/分の0.05%ギ酸(pH2.5)をペプシンカラムに通して補助溶媒マネージャー内に流した。二成分溶媒マネージャーにおいて、勾配を40μL/分で流した。各場合において、タンパク質サンプルをペプシンカラム内に装填し、およそ30秒間にわたり消化させた。
図2Aおよび2Bは、捕捉モードで弁を機能させているシステムを示している。
図2Aは、低圧(900psi)での実験セットアップを示し、
図2Bは、高圧(9,500psi)での実験セットアップを示している。
図2Bに示した実験では、2.1×150mmカラムは、流動制限装置(例、圧力モジュレーター)として機能させるために、捕捉カラムの後に配置した。
【0082】
2.1×150mmカラムは捕捉カラムの後に配置された典型的な流動制限装置(例、圧力モジュレーターを図示したが、流動制限装置は、システム内で圧力を作り出す、および/または維持する本質的にあらゆる構造または機器であってよい。例えば、流動制限装置は、キャピラリーチュービング、充填カラム、またはマイクロ流体素子であってよい。
【0083】
Waters Corporation社(米国マサチューセッツ州)製捕捉カラム201(2.1×5mm BEH C18、1.7μ径)は、脱塩ステップにおいて消化されたペプチドから塩を除去するために使用した。消化および結果として起こる捕捉(3分間)後に、弁を捕捉モードから溶出モードに切換え、MS分析のためにペプチドを分析カラム内で分離した。
【0084】
図2Cは、弁が溶出モードにあるIMERシステムを示している。捕捉されたペプチドは、捕捉カラムから放出され、分析カラム内で溶媒勾配を使用して分離された。溶出モード中、ペプシンカラムに高圧を適用しなかった。溶媒はペプシンカラムを通って廃棄物内に方向付けた。二成分溶媒マネージャー(BSM)は、捕捉ペプチドを溶出するために流れを捕捉カラムへ駆動した。最後に、ペプチドが分析カラム内で分離された。
【0085】
また別の実験セットでは、トリプシンカラムを、
図2AからCに図示したインラインIMERシステム内のペプシンカラムの代わりに使用した。トリプシンカラムを用いると、補助溶媒マネージャー(ASM)は、10μL/分の流量で20mM重炭酸アンモニウムをpH7.9で送達した。
【0086】
図2AからCと結び付けて記載した装置および方法を使用して、ホスホリラーゼb、ウシ血清アルブミン、シトクロームCおよびモノクローナル抗体を含む複数のモデルタンパク質を消化した。各場合に、オンライン高圧IMERは、固体固定相の劣化を伴わずに高い消化効率および実験再現性ならびに95%までの配列包括度(sequence coverage)を示した。
【0087】
HDX MSは、このためにIMERシステムを使用できる1つの典型的分析技術である。また別の実施例では、トリプシンIMERは、様々なプロテオミクス用途を有する、オンライントリプシン消化機器(例、広範に使用されるオフライントリプシン消化法の代替法として)として使用できる。さらに別の実施例では、本技術は、タンパク質同定および/または特性解析のための2D LCオンライン消化のために使用できる。サンプル調製法に加えて、本技術は、屈折率検出器、UV検出器、光散乱検出器および質量分析計を含む様々な分析法とともに使用できる。
【0088】
実験結果
図3Aは、
図2Aと結び付けて記載した900psiペプシン消化後のホスホリラーゼbのクロマトグラムを示している。900psiでホスホリラーゼbを消化すると118種の共通ペプチドで、76%の配列包括度が生じたのみである。これとは対照的に、
図3Bは、
図2Bと結び付けて記載した9,500psiペプシン消化後のホスホリラーゼbのクロマトグラムを示している。9,500psiでホスホリラーゼbを消化すると、無傷タンパク質が全く残留することなく、139種の共通ペプチドで、82%の配列包括度が生じた。このため、高圧消化は、より多数のペプチドおよびより高い配列包括度を生じさせた。
【0089】
図4は、900psi消化(
図2Aおよび3Aに対応する、右側の明色バー)および9,500psi消化(
図2Bおよび3Bに対応する左側の暗色バー)についての4から23の各ペプチド長に対するペプチド数のプロット図を示している。さらに、この図は、高圧法がホスホリラーゼbの消化においてより多数の短ペプチド(例、より高い配列包括度)をもたらすことを証明している。
【0090】
一般に、加圧消化は、低圧で消化するのが困難なタンパク質を含むタンパク質についての消化効率を増加させることができるために、さらに有益である。さらに、本技術の高圧オンライン装置および方法の結果として生じる向上した配列包括度および消化効率は、より高次のタンパク質構造における局在性立体構造変化の向上した分解能を提供できるため、プロテオミクス用途、例えばHDX MSにおいて有益である。
【0091】
HDX MS中、「逆交換」と呼ばれる現象が発生する可能性がある;タンパク質骨格からの水素が重水素と交換されると、標識重水素は、温度、pHおよびペプシンカラム媒体が適正に制御されない場合は急速に水素へ戻される可能性がある。逆交換は、より高次のタンパク質構造における局所性立体構造変化に関する情報の消失を引き起こす。そこで、HDX MS内における迅速な消化および/または急速な脱塩(例、10分間未満の分離)を通してより低レベルの逆交換を達成することが重要である。
【0092】
図5は、十分に重水素化されたブラディキニンのHDX MS分析における様々な温度での逆交換率(%)を示している。この図は、本技術(
図2Bに記載したオンライン高圧ペプシンIMER)の実施形態における逆交換率(%)と低圧POROS(登録商標)ペプシンカラム(Applied Biosystems社(米国カリフォルニア州)から市販で入手できる、
図2Aに類似するセットアップ)からの逆交換率(%)とを比較している。比較における両方の実験は、同一流量、温度および試薬を用いて実施した。唯一の変量は、固体固定相および圧力であった−Poros装置は低圧で運転したが、本技術の実施形態による装置はオンライン、高圧で運転した。37℃未満の全温度で、本技術の実施形態はPOROS(登録商標)カラムより低い逆変換率を示した。何らかの特定の理論によって拘束されることを意図しなくても、本技術の優れた運転は、少なくとも一部には、高圧での増加したタンパク質消化効率に起因する。
【0093】
上記の例示および実施例は、HDX MSの状況における本技術の利点−減少した実験アーチファクトおよび信号消失(例、逆交換)と結び付けた、増加したタンパク質消化速度および効率を証明している。様々なプロテオミクスおよびバイオテクノロジー用途におけるこれらやこの他の利点は、当業者には明白になるであろう。
【0094】
本技術は、特定の実施形態を参照しながら詳細に図示および記載してきたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって規定された本技術の精神および範囲から逸脱せずに、形態および詳細において様々に変更され得ることを理解できるはずである。