(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも部分的に、前記増強ピークのレベルに基づいて、前記第2フェーズでの前記薬剤の前記希釈液に対する比を調整するか否かについての判定がなされる、請求項13に記載のパラメータ生成システム。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、本発明に用いられる多フェースグラフィカルインターフェイス(GUI)の実施例を示し、2本のシリンジを具えたインジェクタ用の複数フェーズに対するパラメータも
図1に示される。
【0044】
【
図2】
図2は、グラフィカルインターフェイスの実施例を示し、該インターフェイスから作業者は画像化の目標である血管領域を選択することができる。
【0045】
【
図3】
図3は、本発明に用いられるように、提案された流れ作業環境のグラフィカルインターフェイスの実施例を示す。
【0046】
【
図4】
図4は、本発明に用いられるヨウ素溶剤アルゴリズムの実施例を示す。
【0047】
【
図5】
図5は、本発明に用いられる体重に基づくアルゴリズムの実施例を示す。
【0048】
【
図6】
図6は、本発明に用いられる呼吸停止中の実施例を示す。
【0049】
【
図7】
図7は、オーダーを減じたコンパートメントモデル及び該モデルを記載する1次連立微分方程式システムの実施例を示す。
【0050】
【
図8A】
図8Aは、65cm、120kgの男性の心臓/大動脈コンパートメント内のシミュレートされた増強曲線を示す。
【0051】
【
図8B】
図8Bは、
図8Aのシミュレートされた患者からのテスト/タイミング注入への増強曲線を示す。
【0052】
【
図9】
図9は、記載された提案手法を用いて、
図8Aのシミュレートされた患者のシミュレートされた増強曲線を示す。
【0053】
【
図10】
図10は、120mlの単フェーズ注入から生じる時間増強曲線を示す。
【0054】
【
図11】
図11は、75mlの造影剤のボーラスに続く50mlの生理食塩水のプッシュ、即ちフラッシュから生じる時間増強曲線を示す。
【0055】
【
図12】
図12は、75mlのメインボーラスに続き、造影剤/生理食塩水の比が50/50である同じ流量の希釈された造影剤のフェーズを実行したことから生じるシミュレートされた時間増強曲線を示す。
【0056】
【
図13】
図13は、75mlのメインボーラスに続き、造影剤/生理食塩水の比が30/70である同じ流量の希釈された造影剤のフェーズを実行したことから生じるシミュレートされた時間増強曲線を示す。
【0057】
【
図14】
図14は、75mlのメインボーラスに続き、造影剤/生理食塩水の比が70/30である同じ流量の希釈された造影剤のフェーズを実行したことから生じるシミュレートされた時間増強曲線を示す。
【0058】
【
図15】
図15は、時間軸が一定の造影剤の注入工程を示し、底軸は造影剤注入のプロフィールを表し、中間の軸は左心及び右心コンパートメントの増強プロフィールを示し、頂部の軸は走査中を示す。
【0059】
【
図16】
図16は、テストボーラスのピーク増強に基づく混合、即ち2流フェーズの造影剤/生理食塩水の比を決定する発見を示す。
【0060】
【
図17】
図17は、本発明の単フェーズ注入、2フェーズ注入、及び多フェーズ注入、混合物注入についての予備臨床データを示す。
【0061】
【
図18】
図18は、単フェーズ注入、2フェーズ注入、及び造影剤/生理食塩水の混合物が注入されるフェーズを含む多フェーズ注入についての左心房及び右心房の幾つかの走査画像を示す。
【0062】
【
図19】
図19は、本発明のパラメータ生成器の実施例について用いるグラフィカルユーザインターフェイスの実施例を示す。
【0063】
【
図20】
図20は、本発明のパラメータ生成器の実施例について用いるグラフィカルユーザインターフェイスの他の部分を示す。
【0064】
【
図21】
図21は、本発明のパラメータ生成器の実施例について用いるグラフィカルユーザインターフェイスの他の部分を示す。
【0065】
【
図22】
図22は、本発明のパラメータ生成器の実施例について用いるグラフィカルユーザインターフェイスの他の部分を示す。
【0066】
【
図23】
図23は、本発明のパラメータ生成器の実施例について用いるグラフィカルユーザインターフェイスの他の部分を示す。
【0067】
【
図24A】
図24Aは、6ml/秒の流量限界(13秒走査持続時間)を有する370mgI/mlの造影剤について以下に述べるテーブル1の体重要素を用いたPBPKシミュレーション結果を示す。
【0068】
【
図24B】
図24Bは、6ml/秒の流量限界(13秒走査持続時間)を有する320mgI/mlの造影剤について以下に述べるテーブル1の体重要素を用いたPBPKシミュレーション結果を示す。
【0069】
【
図24C】
図24Cは、370mgI/mlの造影剤と6ml/秒の流量限界(12秒走査持続時間)について以下に示すテーブル1の体重要素を用いたPBPKシミュレーション結果を介して生成された左心房(L)と右心房(R)コンパートメントのプロフィールを示し、縦線はこの中及び13秒の走査持続時間内に記載された走査遅延演算によって決定されるものとして、走査窓を示す。
【0070】
【
図24D】
図24Dは、320mgI/mlの造影剤と6ml/秒の流量限界(12秒走査持続時間)について以下に示すテーブル1の体重要素を用いたPBPKシミュレーション結果を介して生成された左心房(L)と右心房(R)コンパートメントのプロフィールを示し、縦線はこの中及び13秒の走査持続時間内に記載された走査遅延演算によって決定されるものとして、走査窓を示す。
【0071】
【
図24E】
図24Eは、テーブル1に示された値及び2重流れ装填係数を用いた造影剤の装填結果の表を示す。
【0072】
【0073】
【
図24G】
図24Gは、20mlのテストボーラスを含む装填された造影剤に対する総ヨウ素投与量の表を示す。
【0074】
【0075】
【
図26】
図26は、スキャナ操作、患者管理操作及び注入システム操作を示す本発明の臨床ワークフローの実施例を示す。
【0076】
【
図27A】
図27Aは、本発明のプロトコル生成工程の実施例のフローチャートである。
【0077】
【
図27B】
図27Bは、心拍出量の関数として、時間増強カーブの下り勾配上のピークの3/4に達する時間のグラフである。
【0078】
【
図28】
図28は、CTA(CT血管造影)手順の代表的なタイミングの概略を示す。
【0079】
【
図29】
図29は、20人の患者についての臨床試験からの生データを示し、Y軸は希釈フェーズにて用いられる造影剤の実際の量であり、X軸はサンプルの患者の体重である(lbsで)。
【0080】
【
図30】
図30は、70人の患者について生体認証を用いたモンテカルロシミュレーションを示し、予め装填された量を用いて演算された診断上及び希釈された造影プロトコルである。
【0081】
【
図31】テストボーラス強化の特徴に基づいて、注入プロトコルに変化を与えるプロトコルの調整機能の実施例の機能的な記載を示す。
【0082】
【
図32A】適用可能な時に、体積を調整する工程の実施例を示す。
【
図32B】適用可能な時に、体積を調整する工程の実施例を示す。
【0083】
【
図33A】
図33Aは、
図26のワークフロー図を示し、患者の体重の入力工程は、円Aにて囲まれ、及び複数の体重範囲から患者の体重が選択され得る対応するグラフィカルユーザインターフェイスを示す。
【0084】
【
図33B】
図33Bは、
図26のワークフロー図を示し、造影剤の濃度の入力工程は、円Bにて囲まれ、及び複数の有用な選択から造影剤の濃度が選択され得る対応するグラフィカルユーザインターフェイスを示す。
【0085】
【
図33C】
図33Cは、
図26のワークフロー図を示し、シリンジローディング工程は、円Cにて囲まれ、演算された造影剤のシリンジ及び生理食塩水のシリンジの装填量がユーザ/医者のために示される対応するグラフィカルユーザインターフェイス又はスクリーンディスプレイを示す。
【0086】
【
図33D】
図33Dは、スカウト走査から本発明のプロトコル生成インターフェイスへのデータ転送工程が、円Dで囲まれる
図26のワークフロー図、及び走査持続時間を入力する対応するグラフィカルユーザインターフェイスを示す。
【0087】
【
図33E】
図33Eは、初期の診断プロトコル演算工程が、円Eで囲まれる
図26のワークフロー図、及びユーザがプロトコル生成システムをしてプロトコルを発生させるように指示する対応するグラフィカルユーザインターフェイスを示す。
【0088】
【
図33F】
図33Fは、テストボーラスからプロトコル生成インターフェイスへのデータ転送工程が、円Fで囲まれる
図26のワークフロー図、及びピークへの時間及び増強ピークのデータ手入力用の対応するグラフィカルユーザインターフェイスを示す。
【0089】
【
図33G】
図33Gは、プロトコル生成インターフェイスによって診断プロトコルの決定が終了し、診断注入が開始することができる地点が円Gで囲まれる
図26のワークフロー図、及び演算された診断プロトコルを示す対応するグラフィカルユーザインターフェイスを示す。
【0090】
【
図34A】
図34Aは、本発明に関連して用いられる他のグラフィカルユーザインターフェイス及び走査に関係する理想的な造影剤注入の実施例を示す。
【0091】
【
図34B】
図34Bは、本発明のプロトコル生成工程の実施例によって決定されるものとして、造影剤のみのフェーズ(フェーズ1)及び2つの流れ即ち混合フェーズについての容積測定流量及びヨウ素投与速度を示す。
【0092】
【
図35A】
図35Aは、単フェーズプロトコル、2フェーズプロトコル、及び一定の2つの流れプロトコルを用いて得られる結果と比較した本発明のプロトコル生成工程によって生成されたプロトコルを用いて得られる結果を示す。
【0093】
【
図35B】
図35Bは、2フェーズプロトコルを用いて得られる結果と比較した本発明のプロトコル生成工程によって生成されたプロトコルを用いて下行大動脈にて得られる増強結果を示す。
【0094】
【
図35C】
図35Cは、2フェーズプロトコルを用いて得られる結果と比較した本発明のプロトコル生成工程によって生成されたプロトコルを用いて右心房にて得られる増強結果を示す。
【0095】
【
図36A】
図36Aは、139ポンドの女性の被験者について、本発明のプロトコル生成工程によって生成されたプロトコルを用いて得られるCTA走査結果を示す。
【0096】
【
図36B】
図36Bは、202ポンドの男性の被験者について、本発明のプロトコル生成工程によって生成されたプロトコルを用いて得られるCTA走査結果を示す。
【0097】
【
図37】
図37は、2つのブラインドリーダーによって付与される質問への回答の要約を示し、質問はプロトコルが本発明のパラメータ生成システムを用いて決定された試験群について、及び標準プロトコルが用いられた対照群について、「患者の所望の診断について、造影剤送出プロトコルが生体組織及び診断した病状を視覚化するのに十分であったかと信じるか?」である。
【0098】
【
図38】
図38は、本発明のパラメータ生成システムを用いて生成された造影剤送出プロトコル(試験群)及び左冠状動脈の画像化についての標準的な造影剤プロトコル(対照群)の各々によって達成される画像化の2つのブラインドリーダーによるレーテイングのグラフィカル表示を示し、レーティング即ち「1」は質問の構造は視覚化できなかった結論に対応し、レーティング「2」は質問の構造は僅かに視覚化された結論に対応し、レーティング「3」は質問の構造は僅かに視覚化され且つ線引きが限定される結論に対応し、レーティング「4」は質問の構造が視覚化され且つ完全な線引きが可能な結論に対応し、レーティング「5」は質問の構造が見事に視覚化され且つ線引きが優れている結論に対応する。
【0099】
【0100】
【
図40】
図40は、本発明のパラメータ生成システムを用いて生成された造影剤送出プロトコル(試験群)について、対象の種々の領域を画像化するのに達成される減衰手段を示す。
【0101】
【
図41】
図41は、標準的な造影剤送出プロトコル(対照群)について、対象の種々の領域を画像化するのに達成される減衰手段を示す。
【0102】
【
図42】
図42は、各標準的な造影剤送出プロトコルについて、70mlの造影剤(Ultravist 370、シェーリング社)が流量5.0ml/秒(群1)で注入された種々の対象領域(冠状動脈)が達成した平均的な減衰、及び本発明のパラメータ生成システムを用いて生成された造影剤送出プロトコル(群3)を示す。
【0103】
【
図43】
図43は、各標準的な造影剤送出プロトコルについて、80mlの造影剤が流量6.0ml/秒(群2)で注入された種々の対象領域(冠状動脈)が達成した平均的な減衰、及び本発明のパラメータ生成システムを用いて生成された造影剤送出プロトコル(群3)を示す。
【0104】
【
図44】
図44は、各標準的な造影剤送出プロトコルについて、70mlの造影剤(Ultravist 370、シェーリング社)が流量5.0ml/秒(群1)で注入された種々の対象領域(左心室及び右心室)が達成した平均的な減衰、及び本発明のパラメータ生成システムを用いて生成された造影剤送出プロトコル(群3)を示す。
【0105】
【
図45】
図45は、各標準的な造影剤送出プロトコルについて、80mlの造影剤(Ultravist 370、シェーリング社)が流量6.0ml/秒(群2)で注入された種々の対象領域(左心室及び右心室)が達成した平均的な減衰、及び本発明のパラメータ生成システムを用いて生成された造影剤送出プロトコル(群3)を示す。
【0106】
【
図46】
図46は、各群1、群2及び群3について、注入の2フェーズ(造影剤のみのフェーズ−量A−2流フェーズ−量A/B)にて注入される造影剤の体積のグラフ表示を示す。
【0107】
【
図47】
図47は、本発明のパラメータ生成システムの他の研究について、32人の被験者の5つの冠動脈箇所に於ける平均的な造影増強を示す。
【0108】
【
図48】
図48は、右心室及び左心室の4箇所に於ける平均的な造影増強を示す。
【発明を実施するための形態】
【0109】
発明の詳細な記載
注入手順に関してここで用いられるように、語句「プロトコル」は、注入手順時に患者に送出されるべき流体の量を規定する流量、注入される体積、持続時間等のようなパラメータの群を指す。そのようなパラメータは注入手順の経過に亘って、変化することができる。ここで用いられるように、語句「フェーズ」は一般に、或る期間(又はフェーズ持続時間)中に患者に送出されるべき流体の量を規定するパラメータの群を指し、該期間は注入手順の総持続時間よりも短くなり得る。このようにして、フェーズのパラメータは、フェーズの持続時間に対応した時刻に亘って注入を記述する。特定の注入手順についての注入プロトコルは例えば、単フェーズ(単一のフェーズ)、2フェーズ(2つのフェーズ)又は多フェーズ(2以上のフェーズであるが、一般的に2を超えるフェーズである)として記載される。多フェーズ注入はまた、少なくとも1部の注入手順に亘ってパラメータが連続的に変化する注入を含む。
【0110】
本発明の種々の実施例において、注入システム(
図1に示すようなデュアルシリンジインジェクタシステム(100)、例えば、米国特許第6,643,537号や米国特許出願公報第2004−0064041号に開示されている)を本発明に用いることができ、2つの流体送出源(ここでは、そのようなシリンジについて、源”A”及び源”B”としばしば適宜称する)を含んでおり、第1の流体及び/又は第2の流体(例えば、造影剤、生理食塩水など)を患者に独立して導入(例えば、同時に、互いに異なる流量割合で同時に、又は、互いに順に若しくは交互に(即ちAの次にB、又は、Bの次にA))するように操作することができる。
【0111】
図1の実施例では、源Aは、駆動装置(110A)のような加圧機構に動作可能に接続されており、源Bは、駆動装置(110B)のような加圧機構に動作可能に接続されている。注入システムは、コントローラ(200)を含み、該コントローラ(200)は、インジェクションシステム(100)に作動可能に接続され、駆動装置(110A)(110B)の動作を制御することができ、源Aからの流体A(例えば、造影剤)の注入、源Bからの流体B(例えば、生理食塩水)の注入を夫々制御する。コントローラ(200)は、例えば、ディスプレイ(210)を具えたユーザインターフェイスを含むことができる。コントローラ(200)はまた、メモリ(230)に動作可能に接続されたプロセッサ(220)(例えば、当該技術分野で知られているデジタルマイクロプロセッサ)を含むことができる。画像化システム(300)は例えば、CTシステム、磁気共鳴映像装置(MRI)システム、超音波画像診断システム、ポジトロン放出型断層撮影(PET)システム又は他の画像化システムである。注入システムは、画像化システム(300)に通信可能に接続されており、1つ、複数又は全ての注入システムの構成要素及び画像化システム(300)は一体化されている。
【0112】
本発明の幾つかの実施例では、上記した位相変数又はパラメータは、対象となる1又は2以上のパラメータに基づく位相プログラム機構(
図1に示すように、例えばインジェクタシステム(100)とともに用いられ得るユーザインターフェイスについての実施例である
図1を参照)内に存在する。対象となるパラメータは例えば、造影剤濃度(例えば、CT手順の場合のヨウ素濃度)、患者パラメータ(体重、身長、性別、年齢、心拍出量等)、実施される走査のタイプ、血管内にアクセスするために患者に挿入されるカテーテルのタイプなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。上記のとおり、画像化又は他の手順時において、患者が異なれば、投薬要件も異なることが認識されてきた。例えば、米国特許第5,840,256号及び第6,385,483号は、本発明の譲受人が譲り受けたものであり、それらの開示内容は、引用を以て本願への記載加入とするが、これらは、注入の前又は注入時に、生じる患者の特定のデータを用いて、患者に応じて注入を誂えた装置及び方法を開示している。同様に、2005年11月16日に出願された発明の名称が「薬剤伝搬のモデリング」であるPCT国際特許出願PCT/US05/41913は、米国仮特許出願番号第60/628,201号の利益を主張しTE、本発明の譲受人が譲り受けたものであり、その開示内容は、引用を以て記載加入とするが、これはまた、患者の特定のデータを用いて、患者に応じて注入を誂えることを開示しており、また、所定の入力又はプロトコルに対する時間拡張出力(time enhancement output)を開示した多くのモデルを示している。
【0113】
流量及び量の最適な組合せは、インジェクタの操作者には、容易には判らないため、本発明では、実施される処置のタイプに効果的であると予め決められている一組の注入プロトコルを付与することにより、例えば画像化手順に於ける患者の走査に於ける操作者の仕事を楽にしている。例えば、そのようなプロトコルは、臨床文献によって確立され、経時的な患者のデータの収集(例えば、人工知能技術、統計手法、適応学習方法論などによって)によって確立され、又は、数学モデリングを通じて確立することができ、その他には、実施される処置のタイプで確立することができる。
【0114】
例えば作業者は、最初に、患者に送達されるべき造影剤の濃度(例えば、CT手順に用いられるヨウ素の濃度)を選択する。この選択は、例えば、選択機構により、又は、グラフィカルユーザインターフェイスの数値を直接入力することにより行なうことができる。 臨床作業者はまた、特定の患者に挿入されたカテーテルの規格を選択することができる。次の工程に於いて、カテーテルサイズが入力されると、体積流量が決定され、使い捨て流路セットに伸びる(developed)圧力ヘッドが下記に示すように(例えば、コンピュータプログラムを介して)計算される。或いは、1又は2以上のセンサを用いて、カテーテルサイズを検出し、この情報をインジェクタに提供することもできる。
【0115】
臨床作業者は、例えば、ユーザインターフェイス(
図1参照)に配備された領域に手入力で流量と流量を入力したり、ここに記載したように、「プロトコルウィザードモード」、「ヘルプモード」又は「作業者アシストモード」に入力することで、注入システムを制御することができる。作業者アシストモードでは、そのような領域は自動的に占められる(populated)。作業者が作業者アシストモードを入力することを選択した場合は、作業者には、走査される臓器又は脈管系を選択する機構又はモード(例えば、
図2参照)が提示される。
【0116】
本発明は、流量プロフィール(フェーズ中にて一定又は変化させることができる)と造影剤の体積を予測し、選択された手順及び対象領域に応じて送達するシステム、装置及び方法又はアルゴリズムを提供するものである。例えば、作業者は、心臓、下行大動脈又は上行大動脈(心臓の画像化、コンピュータ断層撮影血管コントラスト法(CTA)の形式が参照される)を選択することができる。作業者がそこから対象となる血管の領域を選択し、ここに記載したワークフローに従うグラフィカルインターフェイスの一実施例は、
図2に示される。作業者は例えば、ユーザインターフェイスに示された身体の図に対象領域を強調表示する(例えば、タッチスクリーンやマウスにより制御されたカーソルを用いる)ことにより、対象領域を選択することができ、また、プルダウンメニューのようなメニューから対象領域を選択することができる。対象領域の階層グルーピングが付与され得る。
【0117】
上記の特定された選択を達成するインジェクタシステムの使用に加えて、上記した選択もまた、或いはこれに代えて、画像化システム上のユーザインターフェイス又はスキャナ及び/又は画像化システム又はスキャナ上のデータベースから成される。選択がスキャナ上のインターフェイス又はデータベースを介して成された場合、データは次にインジェクタに送信され得る。更に、インターフェイスはもっぱらスキャナ/画像化システム上にあることができる。この場合、最終的なプロトコルはインジェクタシステムへ送信され得る。同様に、インターフェイス又はデータベースは、インジェクタ及びスキャナとは別個の機械かシステム上にあることができる。データ(例えばプロトコル)はそのシステムからインジェクタに送信することができる。ここに使用され得る通信インタフェースは米国特許6,970,735番に示され、それらの内容は、引用を以て本願への記載加入とする。
【0118】
画像化されるべき領域が選択されると、作業者は、例えば、他の変数(例えば、患者の体重、身長、性別のような患者の生理学的変数を)の値を入力するよう促される。この実施例又は実行例は、作業者が患者の体重をポンド又はキログラムで入力するユーザインターフェイスのキーパッドを付与することである。他の実施例として、作業者は、体重の範囲を、低、中又は高の範囲から選択する。そのような変数は、システムと関連する1又は複数の検出装置によって測定したり、及び/又は病院のデータベースが保存している患者の記録から電気的又はデジタル的に読み出すこともできる。造影剤注入を実施するために必要なこのステップは、
図3に示されるように、作業者に提示される。
図3の実施例では、作業者は、例えば、実行される画像化手順のタイプに合ったオーダー(例えば、提案される又は必要な連続オーダー)を指示することができる。作業者は、例えば、画像化する身体の血管領域又は臓器、注入を行なうアルゴリズムのタイプを選択することができ、造影剤、カテーテルの規格、患者の身体的特性のタイプを変更することができる。
【0119】
上記のように、作業者は、作業者がシステムに用いたいアルゴリズムのタイプの選択を提示され、システムに患者に対する流量と体積の組合せ(即ちフェーズパラメータ)を作成する。心臓の画像化の場合、アルゴリズム選択は、例えば、(i)ヨウ素フラックスアルゴリズム(
図4参照)、(ii)体重に基づくアルゴリズム(
図5参照)、又は、(iii)呼吸停止時間アルゴリズム(
図6参照)を含むことができる。1又は2以上のこれらのアルゴリズムは例えば、実験によって得られるデータ(例えば、放射線医学文献として発行されているように)に基づくことができる。追加のアルゴリズムは、他の画像化手順のタイプ又はクラスを含むことができる。上記した4つのアルゴリズムの実施例に対する方法論及び/又は論理は、
図4、
図5、
図6及び
図24A乃至
図35Bに夫々記載している。特定のアルゴリズムに必要なデータを入力すると、作業者は、テスト注入(又はタイミング注入)を行なうかどうか質問される。作業者がイエスを選択すると、ソフトウェアは、例えば、2つの追加のフェーズ(テスト注入に対応)が、注入プロトコルの開始に挿入されなければならない(例えば、1つのフェーズは、造影剤送出であり、次のフェーズは、生理的食塩水のフラッシュ注入)ことを提示する。
【0120】
選択に基づいて、本発明を実行するソフトウェアは、使用者のレビュー用の注入プロトコルを算出する。作業者が、テスト注入を行なうことを選択すると、例えば、プロトコルの最初の2つのフェーズには、4ml/秒で送達される造影剤の15ml又は20ml(例えば、患者の体重が90kg未満であれば15ml、90kgを越えると20ml)の注入が含められる。プロトコルの第2のフェーズでは、4ml/秒で注入される生理的食塩水の20mlの注入が含まれる。次のフェーズには、例えば、上記した4つのアルゴリズムの1つ、又は1又は2以上の他のアルゴリズムにより算出された体積又は流量が含まれる。
【0121】
本発明の複数の実施例に於いて、注入手順の注入パラメータは、造影剤と希釈/フラッシュ用流体(例えば、生理的食塩水)の混合物を算出するフェーズを含む。この点に於いて、例えば、心臓画像化である手順に関連する多くの問題を解決することが行なわれており、該手順には、造影剤ボーラスに続く生理的食塩水の注入、つい最近では、造影剤と生理的食塩水の同時注入によって造影剤と生理的食塩水を混合すること(ここでは適宜「2つの流れ」という)も含まれる。
【0122】
上記したとおり、非均一な増強の問題に提案された1つの解決策は、経時的に指数関数的に減少する流量で造影剤を注入することである。この技術は、実際に、大血管中に均一的な造影増強を生み出し、最大増強を減じるものであるが、必ずしも所望されるものではない。理論上は、指数関数的に減少する流量が、右心房の副作用(例えば、注入時に少しの造影剤を遅れて導入し、先に注入された造影剤とはあまり混合しないこと)に役立つと論理的に信じられているように思われるが、それは証明又は検証されてはいない。更に、減速された注入の後半部は流量が低いから、ボーラスの該部分に運動量の損失があり、右心房への入力を遅くしている。指数関数的に減少する注入を行なった後の生理的食塩水のプッシュは、造影剤が右心房に全て「プッシュ」されることになり、異なる流量で造影剤と血液が混合したことによる乱流が右心房で流れの副作用を引き起こす。
【0123】
右心房への副作用を減少させる代替策は、不連続な流量で多量の造影剤量を注入した後に、造影剤と生理的食塩水の混合物(生理的食塩水の最後のプッシュで)を注入することである。混合物は、造影剤の初期のボーラスと同じ流量で注入され得る。混合物は、例えば、デュアルシリンジ電動インジェクタを用いて造影剤と生理的食塩水を同時に注入することで生成することができ、造影剤と生理的食塩水の流量は、互いに比例するようにする。この技術は、近年、臨床設定で導入されており、初期の成果は、右心房の副産物(artifact)を減少していると提案している。しかしながら、そのような混合プロトコルの実施において、所定の患者に対して、適切な又は理想の注入パラメータ(例えば、初期の流量、体積、混合率、フェーズの時間、走査遅延)を決定する確立されたシステム又は方法はない。
【0124】
幾つかの実施例に於いて、本発明は、注入システムを相互作用させて、作業者が、所定の患者に対して適切又は最適な流量と体積のパラメータを「推測」することを減少させるシステム及び方法を提供するものである。本発明のシステム及び方法は、患者に特有のパラメータを含む多くの変数(これに限定されない)を考慮することを提供するものである。患者に特有のパラメータとして、患者の体重(及び身長、心拍出量等の他の体質的な指標)、タイミング注入からの造影剤の到着時間、造影剤の濃度、及び所望の造影剤(例えば、ヨウ素)装填総量を含むが、これらに限定されない。本発明のシステム及び方法は、例えば、患者毎の(per-patient)生理食塩水の混合プロトコル生成器を含んでいる。
【0125】
ヒトの男性の大動脈/心臓のコンパートメントに予測される造影の増強は、提案されたアルゴリズムの原則を詳細に説明すべく、この章で用いることができる。幾つかの研究に於いて、シミュレーションは、Bae等に記載されたように、全身生理学的薬物動態モデルである(PBPK)PKモデル(full body physiologic pharmacokinetic model)のSIMULINK(登録商標;MathWorks,Inc.of Natick マサチューセッツ州から入手可能)を実行することにより実行された。Bae,K.T.,J.P.Heiken,et al.(1998)”CT.Part Iに於ける大動脈及び肝臓の造影剤増強。コンピュータモデルを用いた予測” Radiology 207(3):647−55及びBae,K.T.,H.Q.Tran,et al.(2000)”CT血管造影法に於ける均一に伸びた血管増強についての多フェーズ注入法: pharmacokinetic analysis and experimental porcine model" Radiology 216(3):872-80(1998)、米国特許第5,583,902号、第5,687,208号、第6,055,985号、第6,470,889号及び第6,635,030号を参照。Bae, Heiken atal, 1998 supraに開示されている全身生理学的薬物動態モデルと認識されているその研究のモデリングアプローチは、非常に大きいものであり、また、患者毎に都合良く演算することができるには、あまりに多くの未知の部分を含んでいた。従って、Bae及び共同研究者は、生体組織の大部分を単一のコンパートメントを有する組織に近似させて、最初に通過する増強力学が重要であることから、毛細血管転移コンパートメントを除いている。結果の低次元モデルを
図7に示される。
図7では、Vは夫々の「コンパートメント」の流体体積であり、Cは、各「コンパートメント」で予測される濃度、及びQは身体中の血液の体積流量である。QとVは、解剖学的データから推定される。このモデルを表す一次の結合された微分方程式システムは、連続した時間プロセスを仮定して定式化され、
図7に示されている。
【0126】
本発明の研究の中には、大動脈/心臓コンパートメントは十分に混合されていたとする仮定があった。
図8A乃至
図9中、X軸は時間単位が付けられており、他の仮定では、時間軸が対象となるコンパートメント中で空間寸法に描かれている。
図8Aは、非均一の造影増強(造影剤の再循環によってコンパートメント中に生ずる)の現象を示す。
図8Bは、
図8Aに関連して走査された同じ患者に少量の「テスト」又は「タイミング」注入を行なった結果を示している(モデルの心拍出量及び中央血液容量は身体測定データテーブルに基づく)。造影増強のピークまでの時間は、
図8Bでは12秒と測定された。ピークの時間は、造影剤の少量のボーラスが、注入位置から、肺循環を通って右心房、及び左心房コンパートメントへ移動する通過時間を表している。増強のピークまでのシミュレート時間は、「実際の」患者のものに満たない。この点に於いて、
図7に示したモデルは、ヒトデータに直接有効なものではなく、豚のデータから相対的に見積もられたものであった。いずれにしても、これらのシミュレーションにおける絶対的な値は臨界的なものではない。むしろ、我々は、システムの動態性(dynamics)に興味がある。ボーラスのピーク(又は最初の瞬間)がコンパートメントに到達した後(>15秒)のコントラストの再循環を示している
図8Bは注目すべきものである。
図7に示した低次元モデルでは、再循環動態性(例えば2番目のピーク)を高い忠実度で再生していない。
【0127】
以前の研究は、注入時間が、タイミング注入から算出された造影剤の到達時間よりも長ければ、造影増強のピークまでの時間は、注入時間が増大するほど、直線的に増大すると結論付けた。注入時間が、テスト注入のピークまでの持続時間を越えると、更なる造影剤が、コンパートメントに既に存在する造影剤と混合するために、増強曲線の非対称性は顕著なものとなる。この現象は、混合物プロトコル(例えば、生理的食塩水に造影剤を加えた)を演算する本発明の1つのアルゴリズムの一実施例の基礎として役立つ。
【0128】
図9は、2フェーズプロトコルでシミュレートされた時間増強曲線を示している。第1フェーズの持続時間は、タイミングボーラスの増強のピークまでの時間に3秒(任意のオフセット時間)を加えた時間に等しくなるように算出された。第2フェーズは、希釈フェーズ(90%造影剤、10%生理的食塩水)であり、効果的な造影剤の濃度が288mgI/ml(希釈フェーズの濃度=所望又はプログラムされた比率(この例では90/100)×薬剤の濃度(320mgI/ml))となる。体積が設定され、総量120mlが患者に注入された。流量は、両フェーズで同じであり、造影剤の勢いが右心房の中で維持された。
図9は、注入の後半にある非対称の「ピーク」の低減を示しており、造影増強を約350HUに維持している。相対的に、指数関数的に流量を減少させる技術は、より低いピーク増強をもたらす。本発明の注入プロトコルの利点は(減速する注入流量プロトコルに比べて)、注入される流体の体積流量が減少しないので、心臓の前の末梢静脈系内での流れの副産物(flow artifacts)が殆んどないことから生じる。この点に於いて、ボーラスのある部分では、異なる速さで右心に到達するため、静脈系の内生流量よりも低速で移動する注入物質は、造影剤の分散をもたらす。本発明では、多フェーズ注入プロトコルが配備されて、1又は2以上のパラメータが、注入時間の少なくとも一定期間に亘って定期的に又は連続して変化し、総流量は、一定に維持される。この方法で、例えば、患者に送出される造影活性剤(例えば、ヨウ素、ガドリニウムなど)の濃度は、流量が一定に維持(例えば、その間に注入される生理的食塩水の一部の増加によって)されている間に亘って減少させることができる。それによって、増強の広範でより均一的なピークは維持される(例えば
図9参照)。さらに、その均一性は、注入手順の異なるフェーズ間で変化させることができる。例えば、肝臓の増強は、例えば肝臓の異なる部分に対応する画像化手順の異なるフェーズ中で変化させることができ、増強時間のピークは、血液供給の変化によって変えることができる。
【0129】
プロトコル決定又はパラメータ生成に関する本発明の他の実施例として、希釈/フラッシング流体と造影剤の混合物を2フェーズ流れ又は同時注入する場合について、
図10乃至
図18を用いて説明する。再度、合理的なCT造影プロトコル構成の第1の目的は、個人の血行動態の状態、対象となる画像化領域及び注入システムの制約などを考慮して、各患者に合わせた注入プロトコルを開発することである。注入方法は、例えば、Stellant(商標) D注入システム(Medrad,Inc.of Indianola, ペンシルベニア州から入手可能)の機能(ability)を利用して、造影剤と生理的食塩水の同時送達(及び希釈)を行なうことができる。下記に示すように、希釈された造影媒体の追加のフェーズにより、さらなる左心房の増強が許容されるが、右心房の副産物を減少又は排除するために、造影剤(ヨウ素)を減少させる。
【0130】
図10乃至
図14は、370mlI/mlの造影剤を注入された35歳の健康な男性(200lbs、身長6ft)に対する増強プロフィール(上記にてシミュレートされた)を示している。
図7に示したコンパートメントに分かれた薬物動態のモデルについて予測されるように、右心房コンパートメントと左心房コンパートメントについて、増強曲線を表している。
図10は、120mlの単フェーズ注入(unpihasic injection)についての増強を表しており、然るに
図11は、75mlボーラスの後に、50mlの生理的食塩水のプッシュ即ちフラッシュから生じる増強を表している。
図10中、左心房の増強は、走査時間を通して300ハウンスフィールドユニット(HU)以上であるが、右心房は、走査窓中、明るく増強されており、画像の副産物をより生じやすくなっている。
【0131】
図12乃至
図14は、75mlメインボーラスの後に、同じ流量の造影剤の希釈フェーズを行なった注入から生じるシミュレートされた時間−増強曲線を示しており、造影剤/生理食塩水の比は夫々以下のように、50/50、30/70及び70/30である。左心房及び右心房の増強は、希釈された造影剤の追加のフェーズによって明らかに改善されていた。70/30のフェーズ(
図14)は、良好な左心房の増強を示しているが、右心房の増強は、大きくなりすぎていた。30/70の比(
図13)では、右心房の増強は良好であったが、左心房の増強は走査窓中、十分ではなかった。50/50の比(
図12)は、このシミュレートされた患者に対して、右心房の増強及び左心房の増強について、最良のトレードオフを示している。
【0132】
図15は、造影材料の注入プロセスを時間軸を固定して表したものである。最下位の軸は、造影剤注入プロフィール(この例では、5ml/秒の単フェーズ注入)を表しており、中間の軸は、左心房のコンパートメントと右心房のコンパートメントの増強プロフィールを表し、最上位の軸は、走査時間を表している。2つの垂直線は、走査の開始時間と完了時間を表している。一実施例に於いて、本発明のアルゴリズムでは、臨床医学者が、少量の造影剤のテストボーラス注入(例えば、診察操作時に用いられている流量と同じ流量で造影剤20〜25mlのテスト注入)の後、生理的食塩水のプッシュを行なったと仮定している。動態性のCT走査は、テストボーラスのピークまでの時間とテストボーラスの増強のピークが測定/記録されることから、増強曲線が作成される。走査時間も、テストボーラス及び診察の注入が始まる前に判っているものと仮定している。
【0133】
一実施例に於いて、造影の最初のボーラスは、走査時間と等しい時間で行なわれる。流量は、作業者によって決められる(この研究では5ml/秒と仮定している)。従って、第1フェーズの量は、走査時間と流量の積となる。第2フェーズの量は、テスト注入のピークまでの時間、第1フェーズの時間、及び、走査の終了を考慮して決定される。造影剤注入は、走査の終了よりも長く続けるべきではない。注射側から右心房に造影剤の伝搬遅延が生じるため(一般的に約5〜8秒)、造影剤の注入は、スキャンの終了の5〜8秒前に止めることで、次の造影剤を右心房に充満させることができる。
図15の実施例に関連して採られるアプローチは、5ml/秒で40mlの生理的食塩水を排斥しているから(proscribed)、走査時間の前8秒で、希釈フェーズの造影剤注入を終了した。
【0134】
第2の希釈フェーズの体積は、次のように決定される。
【数1】
値T
SCAN ENDは、テストボーラスのピークまでの時間と走査時間を考慮して算出される。
【数2】
第2フェーズの比は、
図16に示したような造影剤/生理的食塩水の比に対して、テストボーラスの増強ピークを描くことで発見的に決定される。
【0135】
各患者に送達される造影剤の総量を制限するために(テスト増強のピークまでの時間が極端に長い場合)、希釈フェーズに使用可能な最大量を40mlとしている。上記計算によって、40mlを越える造影剤の体積が示されると、システムは、造影剤の体積を40mlに制限し、希釈比を考慮したフェーズ(生理的食塩水と共に)で、造影剤が40mlを越えないように総量を算出する。希釈フェーズで許容される造影剤の総量は、体重、推定される心拍出量、身体の質量指数(Body Mass Index)、又は、その他の生理機能的な指標の関数として設定することもできる。心拍出量を非侵入で測定するバイオインピーダンス測定が開発されてきた。カリフォルニア州、サンディエゴのCardioDynamicsインターナショナルコーポレイションから入手可能なBIOZ(商標)システムは例えば、インピーダンス心拍記録によって患者の心拍出量を測定するために使用され得る。胸部の電気的なバイオインピーダンス(TEB)として知られているインピーダンス心拍記録(ICG)は、胸のインピーダンスの変化を時間経過による量の変化に変換する技術である。このように、インピーダンス心拍記録は心臓周期中に生じるような容積測定の変更を追跡するために使用される。そのような測定は、非侵入で連続的に集められる。一般に、交流は胸を介して伝送される。交流は、最小の抵抗の経路である血液で満たされた大動脈を求める。交流への基線インピーダンスが測定される。大動脈内の血液量及び速度は、各心臓の鼓動とともに変化する。インピーダンスの対応する変化は、ECGを用いて使用され、血行力学のパラメータを付与する。http://www.impedancecardiography.com/icgover 10.html及びwww.cardiodynamics.comで利用可能なインピーダンス心拍記録の概要を参照されたい。
【0136】
図16中の閾値は、50テストボーラス注入のサンプルと、それに続く数値モデリングから臨床データを解析することで決定された。試行錯誤的に(heuristically)、ルールは、ピーク増強が小さい患者(左心房と右心房の十分な増強に更に造影剤が必要と仮定)に多くの造影剤を提供し、テスト増強が強い患者には、少ない造影剤を提供するように策定されている。薬剤の体積は、ピークまでの時間が長い又は短い患者に合わせて調整し、総ヨウ素装填量は、テストボーラス増強に基づいて調節しているので、患者間の増強のばらつきは、このアプローチでは減じられている。
図17は、この結果を示す予備診療データを表している。
図17中、最初の2つの棒は、右心房と左心房(夫々SF_LとSF_R)に対して記載されたアルゴリズムで生じたデータである。誤差バーは、+/−1の標準偏差を示している。 残りのデータポイントは、造影剤が120mlの単フェーズプロトコル(350mlI/ml、生理食塩水のプッシュなし;UNI_RとUNI_L)、2フェーズプロトコル(40mlの生理食塩水とともに350mlI/mlを75ml;BI_RとBRI_L)、最後は、すべての対象について、希釈率を30/70に固定した希釈プロトコル(初期フェーズ量350mlI/ml=スキャン時間×5ml/秒;DF_R、DF_L)で生ずる増強値を示している。第2フェーズの体積は、一定量の50mlの流体であった。生理食塩水のフラッシュ40mlを続けて行なった。
【0137】
図18は、単フェーズ注入プロトコル(造影剤のみ、生理的食塩水のフラッシュはなし)、2フェーズプロトコル(造影剤の後に生理食塩水のフラッシュ)及び上述した2つの流れ注入プロトコル(造影剤の後に、造影剤/生理食塩水の混合物、その後に、生理食塩水のフラッシュ)の場合の左心房と右心房の走査画像を表している。
図18に示すように、注入プロトコルが上記のように決定される2つの流れの注入手順は、右心房と左心房の画像化手順が改善されている。
【0138】
図19乃至
図23は、上記した2つの流れの注入プロトコルの決定をもたらすのに適したグラフィックユーザインターフェイスの幾つかのスクリーン記録(capture)を示している。
図19及び
図20では、
図10乃至
図18と関連して上記で説明しているアルゴリズムは、心臓CT1を指定することによって選択される。患者の体重65kgとスキャン時間30秒が入力される。ヨウ素フラックス1.0g/秒は、画像化手順注入によって定められる。造影流体の濃度が250mlI/mlであると、流量4ml/秒は、画像化手順注入に用いられる。
【0139】
図21に示すように、テスト注入の間の流量は、1.0ml/秒である。30秒のテスト注入の間、生理食塩水のボーラス(ソースBから)が、5秒間4.0ml/秒の流量で最初に注入される。次に造影剤のボーラス(源Aから)が、5秒間4.0ml/秒の流量で注入される。最後に、生理的食塩水のフラッシュボーラスが、20秒間4.0ml/秒の流量で注入される。テストボーラス注入が完了した後、ピークまでの時間とピーク増強が、
図22に示すように決定される。上記した値を用いて、診断注入プロトコルが、
図10乃至
図18と関連して説明したシステム/方法を用いて決定される。
図23は、決定された診断注入プロトコルを説明しており、次の3つのフェーズを含んでいる。(1)4ml/秒(18秒間)で70mlの量の造影剤(源A)を注入;(2)4ml/秒(9秒間)で50/50の造影剤/生理的食塩水の混合物35ml(源A及び源Bからの2つの流れ)を注入;及び(3)4ml/秒(20秒間)で80mlの量の生理食塩水(源B)を注入。 従って、185mlの合計流体が、47秒間(総時間)で注入される。また、
図23で説明したように、注入手順に用いられる流路の圧力限度は300psiとなるように設定されている。また、走査遅延は5秒に規定されている。
【0140】
本発明のプロトコル生成又は決定システム、装置及び方法(しばしば、システムと総称される)の他の実施例が以下に記載される。上記の如く、プロトコル生成システムは特定の患者に適しているか個別化される注入プロトコルを提供する。幾つかの実施例では、1,2又は3以上のフェーズ用のパラメータを含む最初のプロトコルは、利用可能な情報(例えば体重、身長、心拍出量などのような1又は2以上の患者パラメータ、例えばヨウ素のような造影増強物質である送出される薬剤の作用物質の濃度−走査持続時間等)に基づいて決定される。この初期プロトコルは例えば、薬剤、希釈液(例えば、生理食塩水)の量、及び/又は患者に送出されるべき他の流体の量を決定するのに用いられ、今度はそこから流体が送出される容器(例えば、シリンジ)内に装填されるそのような流体の体積を付与する。充填可能なシリンジを用いる造影剤の注入の幾つかの代表的な実施例が以下に示されて、本発明を説明する。そのような手順に於いて、臨床医は例えばテスト即ち識別ボーラスを実行する前に、シリンジを造影剤で予め装填しなければならない。識別ボーラスが実行された後に、臨床医が造影剤をシリンジ内に装填し又は再装填することを期待するのは非現実的である(少なくとも現行のインジェクタシステムの世代では)。本発明のプロトコル決定策は、臨床医が次に装填する投与量/体積を前もって決定することを可能にする。
【0141】
初期プロトコル及びシリンジの装填が決定された後に、上記の如く、識別ボーラス即ちテストボーラスが患者に投与される。再び識別即ちテストボーラスは、少量の造影剤の注入である。例えば、単一レベルの走査が、例えば心臓血管の対象領域又は地域にて実行され得る。生じる増強曲線の形態から、心臓血管システムの描画及び生体の薬剤内にて対象となる物質の伝搬の動態性を洞察することができ、そこから誂えた又は調整された注入プロトコルが生成され得る。
【0143】
代表的な実施例では、送出/装填されるべき造影剤の体積を計算するのに用いられた一次データは、走査持続時間、患者の体重のような1又は2以上の患者パラメータ及び造影剤の濃度であった。
【0144】
可変の重み要素(mgヨウ素/体重kg)が患者へのヨウ素投与量を決定するのに用いられた。一般に、ヨウ素の血漿濃度と血管内のハンスフィールドユニット内の増強(又はCT番号)の間には、線形の関係がある。体重は患者が操作される前に容易に得られ、造影剤の予備装填量を演算する実際的な手段として役立つ。予備装填量を演算する要求は、例えば造影剤及びフラッシュ用流体、即ち希釈液(例えば、生理食塩水)のバルク容器を用いる連続流れのシステムの使用により排除され、これは例えば米国特許第6,901,283号、第6,731,971号、第6,442,418号、第6,306,117号、第6,149,627号、第5,885,216号、第5,843,037号及び第5,806,519号、米国公開公報第2006/0211989号(米国特許出願第11/072,999号)、公開されたPCT国際出願WO/2006/096388(PCT国際出願番号PCT/US2006/00703)に記載されており、それらの内容は引用を以て、本願への記載加入とする。
【0145】
幾つかの実施例に於いて、本発明の工程ソフトウェアは、例えば7つの範囲中の被験者の体重範囲を区分けする(例えば、40kg、40−59kg、60−74kg、75−94kg、95−109kg、110−125kg、>125kg)。患者の体重に依存して変化するソフトウェアの装填係数又は関数は、以下のテーブル1(表1)に表示される。装填係数又は関数は、多重目的最適化ルーチンを、各重み範囲を表すシミュレートされた患者に適用することにより引き出された。(Gembickiの重み付けされたゴール達成方法(Gembicki,F.W.,「実行とパラメータ感度の索引を備えた制御のベクター最適化」ケースウエスタンリザーブユニバーシティ(1974))(
図7に上記した薬物動態学のモデルに基づいた生理学を用いて)。当業者には明らかなように、装填係数又は関数は公式を用いて決定される。多重目的最適化では、代表的な(representative)ゴールは、生理学のPKモデルの下行大動脈コンパートメントの少なくとも350HUピーク増強に到達し、かつ少なくとも走査時間中は300HU以上の増強に到達するように設定された。造影剤の濃度及び走査時間の全ての組み合わせをシミュレートし最適化するのではなく、代表的な最適化は心臓血管CTAについて一般的な370mgl/mlの造影剤濃度及び13秒の走査持続時間で行なわれた。テーブル1に報告された値は、最適化の中で生成されたものから僅かに修正され、シミュレーションを用い、エンジニアリング判断を適用して、他の濃度を受け入れた。シミュレーションの結果は
図24A乃至
図24Gに示される。上記ゴールは、2つの最も軽いケースには明らかには認められず、より小さな患者(おそらく小児科の患者)に造影剤の体積を制限する要求の結果として、認められた。
【表1】
【0146】
幾つかの実施例に於いて、以前の研究で公表された結果が、本発明のソフトウェアの投与規模の境界条件を付与するのに使用された。以前の研究は、一定の注入(及び血漿ヨウ素の重み付けされた投与量に達するように演算された流量)は増強値(サンプルを通る)及び患者の体質から独立した大動脈のピークへの時間を生成することを示している。公表された造影動態性の薬物動態学的な分析もまた、同じ結論に繋がる。幾つかの実施例に於いて、本発明のソフトウェアの注入持続時間は、演算された流量が臨床的に実現可能な値(臨床医によって決定されるように)以上でないときは、走査持続時間に基づいて(患者について)一定にされる。
【0147】
現在の一般的な臨床実務は、CTA注入プロトコルに、走査持続時間と等しい持続時間を具えることを要求する。この実務は、スキャナの活性化の決定的ではない遅延、及び造影剤のボーラスが心肺循環全体に分散するから、多くの場合に於いて次善の結果を達成する。造影剤が血管の中で分散することを認識しつつ、プロトコルを設計すること(ボーラスを「逃がす」ことを防ぐべく)の従来からのアプローチは、次に走査持続時間より長い持続時間で造影剤を注入することである。幾つかの実施例に於いて、本発明のプロトコル決定ソフトウェアは、最短持続時間が16秒であることが禁止されたので、走査が16秒以下でなければ、注入持続時間(患者への)は走査持続時間+4秒とのルールを用いた。
【0148】
以前の研究は、造影剤の伝搬と増強の線形の時間不変式特性を実証した。放射線記録にて報告された分析及び実験は、患者へのヨウ素流量はピークのヨウ素血漿濃度(及び続いて造影剤の増強)とは線形関係を有することを示す。現在の実務は、強健な冠状動脈CTA(>=400HU)について、ヨウ素の高い血漿濃度(及び増強値)を強制ずる(mandate)。従って、ヨウ素の高い入力フラックスが望まれる。しかし、入力フラックスは、造影剤注入の速度が一般的には6−7ml/秒を超過しないという認識で抑制されるべきである。現在の心臓の64 MSCT(多重スライスCT)の走査持続時間は10−20秒の範囲を変動する。
【0149】
ヨウ素送出フラックスが造影剤の濃度に投与流量[ml/秒]を乗算することにより演算されることを認識すると、当業者には高い入力フラックスを達成するには、濃度又は流量の何れかが増加すべきであることが理解される。単純な薬物動態学の理論及びフィックの原理(
図25を参照)はこの考えを明示的に実証する。CTA増強を理解するために、物質の濃度(Ci)と良く混合されたコンパートメント内に流量流量入力(Qi)を記載することにより、増強機構の概念モデルを作ることができる。物質が導入される血液の流量流量は、Qo(生理学的システム用の心拍出量)である。この状況を規定する微分方程式は、以下の式1に与えられる。1つのコンパートメント流れモデルのグラフ式の描写も以下に描かれる。t<tendについての微分方程式の解は、注入速度、心拍出量及び導入される種の入力濃度の相互作用に洞察を与える。
【数3】
【数4】
【0150】
式2は、時間内の濃度の入力関数が0から注入持続時間(injectDuration)秒(ステップ関数)まで拡張すると仮定する。式2の解の分析はQi又はCiが増加すると、良く混合された中央血液コンパートメントの濃度が増加することを示している(CTA内の増強レベルが造影剤の血漿濃度(1mgI/ml=120kVPで25HU))に正比例することを思い出されたい)。また、心拍出量(Qo)が増加すると、血漿濃度及びこのように増強レベルが減少する(以前の経験の豚での仕事に位置し、ヒトに見出される)ことに注意されたい。
【0151】
テーブル1に提案される重みスケールを用い(手順の前にシリンジを予備装填するのに最も便利な)且つ7ml/秒が注入速度には実際的な限界であることを認識して、最低の体重クラス(<40kg)に1pl/秒入力フラックスの最小の投与速度を課して、16秒である最短の注入持続時間は、流量を最小にしつつ、ヨウ素のフラックス速度を最大にする良好なトレードオフを提供する[mgl/秒]。薬物動態学のモデリング及び従来の研究は、75kgのヒトについて1.75gl/秒のヨウ素投与速度が心臓のCTAにとって理想的であることを示唆する。理想的には、造影剤プロトコル流量はgl/kg/秒の演算をアサートすることにより決定されるだろう。しかし、シリンジの装填時に於ける走査持続時間へのアクセスは保証することができない。しかし、1.75gl/秒(370の造影を有する75kgの患者について)を達成するゴールは、ここに示される装填要因及び注入持続ルールで実現される。12秒の走査持続を超えて、走査時間に4秒を加えるのは、患者毎の持続時間(102kg>の患者について6秒を加算)を演算する為の規則であり、注入が走査より長く続くことを確実にする。
【0152】
上記の如く、多くの市販のインジェクタは、造影剤とフラッシュ用流体の混合物と、生理食塩水のような希釈液を同時に注入することができ、それによって患者に入る造影剤のヨウ素濃度を希釈する。このアプローチは、心臓のMSCT走査で発せられた一続きの副産物の発生を減少する価値があり、それは、以前に注入された希釈された(中央の血液量によって)造影剤が冠循環(及び左心房)を通って循環している間に、それほど薄められていない造影剤が上大静脈(SVC)及び右心房に溢れることにより引き起こされる。注入中のヨウ素濃度を低くすることにより、一続きの副産物の減少及び右心房のより一貫した混濁が可能である。一般に、例えばペンシルベニア州、インディアノーラのメドラッド社から入手可能なSTELLANT(商標)インジェクタシステムに於ける希釈技術の現在の実行は、注入フェーズにて臨床医に送出に備えて、造影剤の生理食塩水に対する比を入力することを促す。臨床医は患者に対する「適切な」比率を選ぶ際に思慮深さが必要となる。幾つかの実施例に於いて、本発明のプロトコル決定戦略を具体化するソフトウェアは、識別(テスト)ボーラス増強、診断の注入持続時間、走査遅延、及び走査持続時間に基づいて比を選択することにより、造影剤の生理食塩水に対する比を合理化することを試みる。この点に於いて、より高いテスト増強ピークを有する患者は、もっと希釈された造影剤を要求するべきである。然るに、より低いテスト増強ピークを有する患者は、あまり希釈されない造影剤を要求する。
【0154】
本発明の臨床的な仕事流れの実施例は
図27Aに示される。当業者に明らかなように、例えばスキャナとインジェクタ間のデータ伝送は、電子通信リンク及び/又は使用者の入力によって生じる。幾つかの研究に於いて、プロトコルはテストボーラスを要求し、例えば200mlのシリンジの使用を要求し、各患者用に希釈された造影剤又は混合フェーズを用いた。ここで示す計算は、プロトコルの種々のフェーズを記載するのに、以下の名称を使用する。
【0158】
添字は注入される造影剤のタイプを示し、「C」は造影剤用、「S」は生理食塩水用であり、「T」は2つの流れ又は混合比である。添字はプロトコルの一部を示す。添字「TI」はテスト注入を表し、「TB」はテストボーラスを表し、「Diag」はプロトコルの第1フェーズの診断部分を表し、「DF」は2つの流れのフェーズを表し、「Flush」は最後の生理食塩水のフェーズを表す。例えば、以下のシンボルは混合物の流量、プロトコルの診断部分の2つの流れ又は比フェーズを表す。
【数5】
以下のサブセクションは、
図27Aに記載された対応して番号付けられた動作の詳細である。
【0160】
装填されるべき量の計算は、患者の体重を用い、体重要因に基づいて、第1フェーズ及び2つの流れの造影剤量を決定する。体重アルゴリズムは、臨場的な実施を容易にすべく、体重範囲を打ち切る(discretize)。表1は体重バケット、各体重バケットに用いる値及び体重要因を示す。或いは、アルゴリズム的な関係が示され得る。
【0161】
量の演算は、患者の体重、造影剤の濃度、及び演算に用いられるオプションに基づく。体重の関数である体重要因は、選択されたバケットに対する投与量の演算に基づいて全ての患者に用いられる。これ以降、特に示さない限り、全ての体重演算はキログラム又はkgsで行われる。
【数6】
【0163】
複数の研究が、十分な第1通過CTA増強に重要な制御パラメータは、ヨウ素質量流量(mgI/秒)及び注入持続時間を含むことを示す。幾つかの実施例に於いて、従って本発明のシステム及び方法は、ヨウ素フラックス及び注入持続時間を操作することにより造影剤の投与量を個人化する。造影剤の体積は従属的なパラメータである。走査時間はスキャナによって患者毎に演算され、それはスライス幅、ピッチ、空間分解能、対象となる空間、心拍数のような走査及び生理学的なパラメータに基づく。作業者は造影剤がシリンジ内に装填され得る前に、このデータにアクセスするのが理想的であるが、本発明ではデータが先験的に利用できない場合も受け入れ可能である。注入持続時間は走査持続時間と等しいのが理想的である。拡散、分散及び走査タイミングの不正確さ故に、「安全な」要
素は一般に、余分に造影剤を付与することが必要である。
【0164】
第1造影フェーズの演算された注入持続時間は、最短の持続時間を有する走査持続時間に基づく。例えば、MSCTシステム(ボーラス追跡ソフトウェアと共に、又は該ソフトウェア無しで)に於けるタイミングの不正確さを説明するのに、16秒は十分なボーラス幅である。保証された、決定的なタイミングメカニズムが存在し、又はタイミングボーラス全体の増強カーブが利用可能であったなら、この注入持続時間は走査持続時間にまで理論的に減じられる(又は短縮される)。本発明のシステム及び方法はまた走査トリガ時間を決定するのに当業者に公知のボーラス追跡ソフトウェアを使用するのに加えて、識別(即ち、タイミング)ボーラスの使用をも支持する。造影剤のボーラスは、12秒より短い走査用に16秒に延長され、一定持続時間要
素である「X」が更に長い走査用に付加される。
【数7】
【0165】
上記のような単純な薬物動態学の分析は、式4の要
素「X」を選ぶための洞察及び論理的根拠に役立つ(lend)ことができる。入力関数(式2中のinjectDuration)の終了に際して、血漿濃度の減衰は第1オーダーの減衰に続く。
【0166】
ヒトについての一般的な心拍出量は5L/分であり、平均的な中央の血液量(対象となる注入側及び血管領域の間の量)は、900mlである。式2にこれらのパラメータを用いて、1/2の時定数及び3/4の時定数を解くことができる。これらの時間は、対象の血管領域内で最大造影増強後に血漿濃度がどれだけ減少するかの洞察を与える。式5は1/2及び3/4の時定数を決定する演算を示す。標準的な中央の血液量を与えられて、一般的な生理学の領域上の心拍出量を変えて、
図27B中のt3/4について示すように、対応する1/2又は3/4の時定数を見出すことができる。
【数8】
【0167】
全ての心拍出量について、4秒
は更に「安全な」要
素を提供し(3/4増強への時間は心拍出量について演算された時間よりもなお長い)、血管領域で造影増強の「後部」中に3/4のピーク増強を達成する。
【0169】
流量は体積と持続時間の組み合わせである。第1の、即ち造影剤のみのフェーズの流量の演算は、
【数9】
【数10】
【数11】
【0170】
式6によって演算される体積流量は、プロトコルの全てのフェーズ(タイミングボーラス、生理食塩水のフラッシュ、2つの流れ等)に使用される。
【0172】
サイトは1人の患者、又は複数の患者への最大流量を制限することを選択することができる。そのようなオプションは例えば、システム構成オプションである。予め充填された造影剤の最大量を送出すべく、第1フェーズの持続時間は例えば、プリセットされた時間(例えば22秒)にのみ時間を延長させることができる。一定の(clamped)流量に於ける追加の造影剤の体積は送出されないだろう。22秒での注入持続時間の一定化は、20mlのテストボーラス注入のピークへの平均時間が18秒であることの結果であり、幾つかの実施例に於いて記載されたルールは、体重が重い被験者はピークへの走査遅延時間に6秒を加えることを命じる。18秒と6秒の合計は24秒であり、注入よりも2秒長く、希釈フェーズが副産物を願わくば減らす利益をもたらす。更に、以前の研究は古い世代MSCTスキャナを用いて、25秒の一定の注入持続時間プロトコルについて、300HUを超える好ましい大動脈の増強を生成した。以下のルールは、演算された流量が臨床医によって設定された最大値を超える状況時に適用される。
【数12】
【0173】
式9に於ける工程を実行すると、造影剤注入持続時間が一定化されることを確実にする。この動作はn秒の走査がある全ての被験者について、一定の造影剤注入持続時間の条件を課する(enforce)。これは、より高い大動脈の増強に余裕があるためには、注入量の増加が生じなければならないことを示した多くの研究の結果と一致する。臨床医が注入速度を制限することに決めれば、制限された流量にて(従って、大量の造影剤)非常に長い注入が実行されて、血液コンパートメントに蓄積する(また、脈管外のコンパートメントへ拡散する血液を交換するように)ように、造影剤の再循環を可能にする。しかし、この結果は、静脈の汚染及び対象の血管コンパートメントの非対称のピーク増強がある故に、血管造影法の適用には望ましくない。22秒に注入持続時間が固定化された場合に、以下のテーブル2A(表2A)は流量制限がない造影剤装填量を示し、然るにテーブル2B(表2B)は流量制限がある造影剤装填量を示す(5ml/秒の最大流量について)。
【表2A】
【表2B】
【0174】
2.3.2 造影剤と生理食塩水の2つの流れの演算
【0175】
2つの流れ、即ち混合流れは、診断プロトコルの付随的部分である。心臓手順のゴールは、上行大動脈と冠状動脈を完全に不透明にしつつ、部分的に右心房を不透明にすることである。これは、造影剤のボーラスが冠動脈にあり、その一方、比のボーラスが右心房にあることを欲する難しいタイミング状況である。従って、造影剤の充填から造影剤と生理食塩水の比に切り換える時間を決定する必要がある。これ以降、記号指示「^」を付けた全てのパラメータは、2つの流れの調整がなされた後の新たなパラメータである。
【0176】
2つの流れのフェーズの総注入速度は、式7に示したように、第1フェーズの速度と同じである。2つの流れの造影剤の体積は、プロトコル生成時に設定され、患者の体重に基づく。以下の関係は、2つの流れの造影剤装填量を付与する。
【数13】
【0177】
式10の0.20係数は収集された臨床試験データの分析によって計算された。実験の仮説は、ピークへの時間及び20mlのタイミングボーラスのピーク増強に基づいて、2つのフェーズの持続時間及び希釈比が調整されることであった。以下の表3に示す計算図表は、そのテストの結果に基づく。手順の前に装填する先験的な造影剤の体積を演算するために、従属的な変数として臨床的テスト及び独立変数として造影剤の体積から、右心房増強値上にて実行された。
【0178】
CTAのタイミング状況の概略は、
図28に記載される。カーブは、薬物動態学のシミュレーションによって決定される右心房及び左心房のコンパートメントについての予言された増強カーブである。幾つかの研究のゴールは、走査遅延と走査持続時間の合計であるTendに於ける流体注入の終了時に困難な制約を設定することであった。薬剤が画像の増強に寄与しないので、走査持続時間を超えた造影剤の送出は医学的に意味をなさない。希釈フェーズは患者毎に演算され、注入持続時間の終了時とTendとの間で圧搾された。研究では、造影剤のみの注入持続時間は走査の長さに設定された。記載した「診断の」造影剤のみのフェーズの持続時間は、走査持続時間よりも長いだろう。個別化された稀釈方策を使用する研究の結果が、満足な右心室の画像(右心室で定義された)及び左心室の画像を生成したので、稀釈フェーズの造影剤量は、標準群としてこの研究に使用された。
【0179】
図29は、20人の患者についての臨床試験からの生データを示す。Y軸は、希釈フェーズで使用される造影剤の実際の量であり、X軸はサンプルの患者の体重である(lbsで)。
図30は、70人の患者について生体認証を使用したモンテカルロ・シミュレーションを示しており、該シミュレーションはテーブル1の係数、及び式3及び式10で計算された量プロトコルで決定された予備装填された量を用いて、診断上及び希釈造影剤フェーズプロトコルを演算した。研究は、0.12ml/ポンドの装填要因が使用された場合に、手順の後にシリンジに残される残余の造影剤の体積を評価する為になされた。稀釈フェーズの残余の造影剤廃棄物が10ml未満であることは明白である。回帰の単位はポンドである。回帰係数のメートル、kg単位への変換は、(0.120[ml/ポンド]*2.204[ポンド/kg])係数=0.264ml/kgに帰着する。全体の造影剤投与量を減らすべく、また、臨床試験での画像の幾つかは所望の右心室の増強より明るいことを考えれば、2つの流れフェーズの装填係数は、0.20ml/kgでセットされた。装填要因の縮小には患者への総ヨウ素負担を縮小する更なる利益がある。
【0181】
考慮すべきDF生理食塩水体積の2つの例があり、それは装填体積と調整されたDF生理食塩水体積である。DF生理食塩水フェーズの装填体積は、生成の時間にて演算される値である。比が変化し、以下の表3に挙げられた2つのシナリオを有すれば、調整されたDF生理食塩水体積から変化する。
【表3】
【0182】
上記のテーブル2の全ての場合について、生理食塩水は以下に等しい。
【数14】
【0183】
上記の手順で演算された造影剤の総量が、システムのシリンジの容量を超えていれば、造影剤の体積を減じる工程が採られなければならない。
【0184】
2.4 シリンジの容量に基づく量の制限
【0185】
本発明の幾つかの研究に於いて、200mlのシリンジが用いられた。しかし、200ml以下の量を有するシリンジを含む他の量のシリンジが用いられ得る。シリンジを基本とするインジェクタシステムについて、演算された装填量がシリンジ量を超えることが可能である状況(例えば、低い造影剤濃度と重い患者)が受け入れられなければならない。表4は生成されたプロトコルと装填量がシリンジの容量を超えないことを確実にするように確立されたルール設定の一実施例を示す。200mlのシリンジを用いた幾つかの研究にて、最大装填量は195mlに設定された。
【表4】
【0187】
本発明のプロトコル調整サブルーチンは、上記の如く、心臓血管系の特性、又は心臓血管系を通る薬剤(例えば、造影増強薬剤を含む)の伝搬の特性に基づいて、ローディングされたプロトコルを修正する。そのような特性は例えば、1又は2以上の患者モデル(例えば、公開されたPCT出願WO/2006/055813号(PCT国際特許出願PCT/US2005/041913)に記載されたパラメトリックモデル又は非パラメトリックモデル)の使用、及び/又は少量タイミング、検証(identification)又はテストボーラス又は注入の使用によって作られる。幾つかの実施例に於いて、プロトコル調整はテスト注入にて得られるデータ(例えば、ピーク及びピーク増強への時間)に基づいた。
図31は、テストボーラス増強の検証に基づいて注入プロトコルを変更するプロトコル調整の実施例の機能的記載を示す。以下のサブセクションは、
図31に記載された番号付けられた動作に対応した詳細な記載である。
【0188】
3.1 2つの流れの比の演算と、その次の体積の演算
【0189】
テストボーラス調整は、テストボーラス注入及び使用者がピーク及びピーク増強への時間を入力した後に、プロトコルにされる調整である。或いは、ピーク及びピーク増強への時間は、スキャナ及びシステム間のワイヤ付き又はワイヤレスの通信接続によって本発明のプロトコル生成システムに伝えられ得る。この演算は、テストボーラスがないプロトコルには当てはまらない。
【表5】
【0190】
表5に示す発見に基づいて、希釈フェーズ(2つの流れ)にて送出される造影剤の実際の体積は、以下のように演算される。
【数15】
【0192】
走査遅延の概算は、注入時間のタイミングに基づく。以下の計算は、測定値又は概算値に基づいて、走査遅延(秒で)の概算を提供する。
重量>=102kg(体重が離散化された後)ならば
scanDelay=Tpeak+6
そうでなければ
scanDelay=Tpeak+4
終了
scanDuration<10秒(体重に関係なく)であれば
scanDelay=Tpeak+6
終了
【0193】
例えば、4秒及び6秒の付加時間は、ピークへの時間に付加されて、測定側から対象領域への造影剤の送出遅延を予想する。6秒の追加は、重い患者用であり、該患者には造影剤が血管構造を通ってゆっくりと伝搬することが期待され、造影剤が走査持続時間より長く注入される流量制限状況におそらく遭遇する。プロトコルが流量制限され、患者が102kg(体重が離散化された)以下の重さである状況では、注入の最後が20mlのテストボーラスのピークへの時間中に生じる機会がある(特に、低い濃度の造影薬剤について)。希釈されていない造影剤がSVC内にある間に、注入中に走査が開始しないのが好ましい。更なる時間遅延が、この状況を予測する。臨床医が非常に短い走査を実行する状況では、走査は増強のピーク中に開始するように、時間決定されるべきである。
【0194】
造影剤は体重に基づいて予め充填されるから、5秒の走査は左心室の増強ウィンドウ内にて遅れて開始することにより、造影増強を利用すべきである。10秒以下の短い走査についての条件は、ピークへの時間に6秒を加えるように、診断フェーズの持続時間を決定し、希釈された造影剤が該時間で周辺の血管構造から心臓コンパートメントに伝搬することを許し、これは希釈フェーズ又は2つの流れフェーズを付与する当初の目的である。更に、走査は非希釈造影プロトコルが終了し、希釈された(2つの流れ)造影剤の幾分かがSVCに達した後に開始するのが好ましい。この結果は、短い走査持続時間を用いて理解され得る、何故なら増強の下降傾斜中の画像化についての関与はあまり重要ではないからである。
【0195】
3.3 2つの流れフェーズに十分な時間があるかの決定
【0196】
テストボーラス特性が付与された後になされた注入タイミング調整は例えば、走査の終了時に、造影剤の注入を終了させようと試みる。以下の式は、注入タイミング調整に適用する。
Tend=ScanDelay+ScanDuration
【0197】
2つの流れのフェーズの持続時間は、以下の式を用いて、Tendと全造影フェーズ又は造影剤のみのフェーズとの間の間隔を演算することにより、決定される。
Dgap=ScanDelay+ScanDuration−D
CDiag
【0198】
適用可能であれば、
図32A及び
図32Bに示すように、量は調整され得る。
【0199】
図33A乃至
図33Gは、
図26に示すワークフローに沿った種々の地点又は工程に対応して、上記の本発明のプロトコル生成システムの実施例とともに用いられるグラフィカルユーザインターフェイスの例を示す。
【0200】
図33Aの上端部は、患者の体重入力の工程が円Aで囲まれているワークフロー図を示す。対応するグラフィカルユーザインターフェイスは
図33Aの下端部に示される。この実施例では、患者の体重は複数の体重範囲から選ばれる。
図33Bの上端部は、造影剤の濃度の入力工程が円Bで囲まれているワークフロー図を示す。対応するグラフィカルユーザインターフェイスは、
図33Bの下端部に示される。この実施例では、造影剤の濃度は複数の利用可能な選択から選ばれる。
図33Cの上端部は、シリンジローディング工程が円Cで囲まれているワークフロー図を示す。対応するグラフィカルユーザインターフェイス、又はスクリーンディスプレイは、
図33Cの下端部に示され、造影剤のシリンジ及び生理食塩水のシリンジの装填量(上記の方法を介して演算されるように)は、使用者/臨床医の為に示される。
図33Dの上端部は、ワークフロー図形を示し、スカウト走査からのデータがインターフェイスへ移されるデータ転送工程は、円Dで囲まれている。走査持続時間を入力する対応するグラフィカルユーザインターフェイスは、
図33Dの下端部に示される。
図33Eの上端部は、最初の診断のプロトコル計算工程(上記の如く、達成された)が円Eで囲まれているワークフロー図を示す。計算された最初、即ち予めローディングされたプロトコルは表示される必要はない。対応するグラフィカルユーザインターフェイスは、
図33Eの下端部に示され、使用者は例えばOKボタンを押すことにより、プロトコル生成システムがプロトコルを生成するように促される。
図33Fの上端部は、ワークフロー図形を示し、テストボーラスからのデータがインターフェイスに転送されるデータ転送工程が、円Fで囲まれている。当業者に明らかなように、このデータ(例えば、ピーク及びピーク増強への時間)は臨床医が関わることなく、又は臨床医の手入力によることなく、スキャナとインジェクタ間の通信リンクを介して転送され得る。ピーク及びピーク増強への時間のデータを手入力する為の対応するグラフィカルユーザインターフェイスは、
図33Fの下端部に示される。本実施例に於いて、複数の範囲のピーク増強が、臨床医による選択のために提供される。
図33Gの上端部は、ワークフロー図形を示し、インターフェイス及び診断注入によって調整された診断プロトコルの決定が終了した地点が、円Gで囲まれる。調整された診断プロトコルを示す対応するグラフィカルユーザインターフェイスは、
図33Dの下端部に示される。臨床医には、プロトコルパラメータを変更する機会が付与される。
【0201】
図34Aは、8秒の心臓CTA走査を経た180ポンドの男性患者に対するインジェクタの表示とスキャナ時間記録の実施例を示す。
図34Bは、プロトコル生成方法によって決定される造影剤のみのフェーズ(フェーズ1)及び2つの流れ、又は混合フェーズについての代表的な体積流量及びヨウ素投与速度を示す。
【0202】
要するに、上記の如く、心臓血管のMSCT血管造影法のような多くの走査手順は、獲得期間の減少及び造影剤の送出と使用に固有の課題の結果として、挑んでいる。更に、心血管のMSCT血管造影法の場合には、心臓の構造は走査中に移動している。スキャナ獲得のタイミングは、重要な解剖構造にて造影剤のボーラスが最大の造影増強を付与するときに、一致すべきである。本発明のプロトコル生成システム及び方法は、患者に個別化されたCT造影剤注入プロトコルを計算するか決定する。
【0203】
本発明のプロトコル生成システム及び方法の幾つかの研究に於いて、多数の対象物の最適化のゴールは、生理学のPKモデルの左心室コンパートメントにて、少なくとも350HUピーク増強、及び少なくとも走査中は300HU以上の増強に設定された。個別化された走査遅延は、個々の心臓関数の関数(走査遅延=テストボーラスのピークへの時間+患者の体重及び走査持続時間に依存した4又は6秒)として演算された。患者の心臓の反応は、稀釈フェーズの持続時間及び造影剤の生理食塩水に対する比率を決定した。最後に、造影剤の注入は、走査の終了期間を越えて伸びることを禁じられ、ほとんどの場合、5−6秒前に終了する。
【0204】
左心室及び右心室の造影増強が、本発明の心臓のプロトコル生成システム/方法を使用して、プロトコルパラメータを確立する一般的な方法に比して、被験者に亘ってより一定することが期待された。増強のレベル及び一貫性を評価するために、パイロット研究からの心臓のCE CTデータが分析された。対象となる2つの解剖領域(下行大動脈と右心室)が、半自動式の機械区分化アルゴリズムによって各被験者の走査(60%のRR間隔で改造された)で識別された。単一の時間ポイントで獲得した軸方向のスライスの全てのセットについては、各領域内の平均的な増強が計算され、時間増強カーブを生じた。心臓のCTA中に右心室増強の稀釈フェーズを有する造影注入プロトコルの患者毎の影響も研究された。右心室を評価するための十分な増強は、右心室病理学の評価を考慮に入れる。
図35Aに示すように、標準誤差によって測定されるような右心室内の被験者間の変わり易さは、本発明のプロトコル生成システム/方法が使用された群において最低だった(+/−13HU)。他の群中の標準誤差は次のとおりだった:単一フェーズ(+/−39HU)、2フェーズ(+/−39HU)、一定の稀釈フェーズ(+/−28HU)。一方向ANOVA(P<.005)は、注入プロトコル群間の平均増強値にかなりの違いが存在することを実証した(また、変動性について2つのサンプルF−テストでチェックした。P<.001)。左心室の増強は平均325HU±80となった。
【0205】
本発明のシステム/方法を使用して生成された注入プロトコルを用いた心血管のCTA(シーメンスセンセーション64)を経た20人の患者の研究、及び標準の2フェーズのプロトコル(Iopimidol 370造影剤体積=走査時間×5ml/秒、その後40mlの生理食塩水のフラッシュ)を経た19人の制御被験者の研究が成された。時間増強カーブの全ての値は、被験者に亘って格納され、2つの群が非対合のtテストによって比較された。本発明によって生成されたプロトコル及び2フェーズのプロトコルの平均の増強は、夫々357±69HU及び323±64HUであった(p=10
−8)。右心室の平均増強は、318±85HU及び212±96HUであった(p=10
−21)。
図35B及び
図35Cの中で示された結果は、夫々両方の領域で統計的に著しい増強の差を示す。
【0206】
図36Aは、139ポンドの女性の被験者について、本発明のプロトコル生成工程にて生成されたプロトコルを用いて得られた走査結果を示し、その一方、
図36Bは、202ポンドの男性の被験者について、本発明のプロトコル生成工程にて生成されたプロトコルを用いて得られた走査結果を示す。これらの画像において顕著なのは、左心室構造(左心房、左心室及び左前下行枝起源)の明るく均一な不透明化である。両方の画像に於いて、右心室、右心房及び上大静脈のさらに十分な増強があり、心室隔壁、心筋のマージンを区別する。また、右心室機能の機能分析に供給する、十分な不透明性がある。更に、右心室に十分な造影剤があり、塞栓血栓の診断を許す。更に、右心室の乳頭筋、調節帯及び三尖弁の視覚化は、均質な造影増強の存在によって可能である。両画像に於いて、CT走査獲得の間に上大静脈、右心房及び右心室に存在する造影剤にしばしば関連した一筋の副産物がない(
図36Aの円を参照)。右心室増強の均質化及び一筋の副産物の欠如は、本発明のシステム及び方法によって提供される、個別化された稀釈プロトコルの投与、及び最適な走査タイミング(生体内の造影剤の伝搬に関する)の結果である。
【0207】
本発明のシステム及び方法の他の研究では、注入プロトコルは心臓用の2つの源(DSCT)のために、インジェクタに統合された。心臓用のDSCTを経た40人の一続きの患者の研究群に於いて、メドラッド社のSTELLANTインジェクタ上にあるソフトウェアによって実行された上記の本発明のパラメーター生成システム/方法は、三フェーズ性の注入プロトコル(造影剤、造影剤/生理食塩水及び生理食塩水のフェーズ)について、個別化された造影剤(370mgI/ml)体積及び注入パラメータを決定するために将来を見越して評価された。研究群の40人の患者についてのワークフロー手順は
図33A乃至
図33Gに示したのと同様であった。
【0208】
他に連続した40人の患者の対照群が、標準造影プロトコルを使用して注入され、遡及的に分析されて、大動脈、冠状動脈、心筋及び心室内の増強のレベル及び同質性を比較した。標準プロトコルは第1フェーズが造影剤のみのフェーズであり、第2フェーズが混合フェーズ又は2つの流れのフェーズであり、第3フェーズが生理食塩水のみのフェーズであった。全てのフェーズについて流量は、6ml/秒に設定された。2つの流れのフェーズ(造影剤/生理食塩水)は、30%の造影剤と70%の生理食塩水を含む50mlの流体を6ml/秒で送出することによって特徴付けられた。生理食塩水のフェーズは、6ml/秒で注入された40mlの生理食塩水を送出することによって特徴付けられた。対照群の3フェーズの診断プロトコルの前に、6ml/秒で20mlの造影剤のテストボーラス、続いて6ml/秒で40mlの生理食塩水の注入が用いられて、上行大動脈の増強ピークへの時間として決定された走査遅延を決定した。
【0209】
心臓解剖の目標を診断的に表示する質は、各試験群と対照群について、評価された。
図37は、2つのブラインドリーダーの質問:「この患者の意図した診断については、造影剤送出プロトコルが解剖を視覚化し、かつ病理学を診断するのに十分だったと信じるか?」に対するグラフ表示を示す。イエスとノーの応答は、各対照群と試験群について蓄積され、イエス/診断、又はノー/非診断のパーセントとして示された。
図37に示すように、ブラインドリーダーは、本発明のパラメーター生成システムを使用して生成された造影剤送出プロトコルが100%の試験群の患者に、解剖を視覚化し、かつ病理学を診断するのに十分であったことを見出し、その一方、ブラインドリーダーは、標準方法論を用いて生成された造影剤配達プロトコルが、92%の対照群の患者のみに解剖を視覚化し、かつ病理学を分析するのに十分であったことを見出した。
【0210】
図38は、左冠状動脈の画像化用に、本発明のパラメータ生成システムを使用して生成された造影剤送出プロトコル、及び標準的な造影剤送出プロトコルの各々によって達成された画像化のブラインドリーダーによる格付けのグラフ表示を示す。
図38に於いて、「1」の格付けは、質問の構造は視覚化されなかったとの結論に相当し、「2」の格付けは、質問の構造は微かに視覚化されたとの結論に相当し、「3」の格付けは、問題の構造は微かに視覚化されるが、描写は制限されているとの結論に相当する。「4」の格付けは、問題の構造は視覚化され、完全な描写は可能であるとの結論に相当し、「5」の格付けは問題の構造がかなり視覚化され、且つ描写も優れているとの結論に相当する。
図38に示すように、統計的に有利な利点は本発明の方法及びシステムによって提供される。
図39は右冠状動脈の画像化について、同様の分析を示す。繰り返すが、統計的に有利な利点は本発明の方法及びシステムによって提供される。同様の結果は心臓の他の解剖学的構造の中で観察された。
【0211】
図40及び
図41に夫々示すように、試験群と対照群にて、平均的な冠状動脈の減衰は、359.5±17.7から450.6±19.9HU、及び297.3±11.1から429.8±10.9HUまで及んだ。
図40及び
図41にて、省略形Aoは上行大動脈に言及し、省略形LtMainは左冠動脈主幹部に言及し、省略形LADは左前下行枝に言及し、省略形RCAは右冠動脈に言及し、及び省略形LCxが回旋冠状動脈に言及する。符号Prox(Proximal)、Dist(Distal)、及びMidは、米国心臓病協会15部会冠状動脈モデルによって定義されるように、各冠状動脈の基端及び中央部に言及する。LADの先端の平均的な減衰、LCxの中央部及び先端部及び右心室は、対照群よりも試験群に於いてかなり高かった(p<0.05)。被験者内部の血管減衰の変化し易さは、対照群(SD=63.2±22.1)よりも試験群(SD=49±19.5)において著しく低かった(p<0.002)。右心構造(乳頭筋、肺動脈弁、心室の心筋)、左主幹部、LAD及び右冠動脈の基端部の診断上の表示は、対照群よりも試験群に於いてかなり高く評価された(P<0.05)。本発明のシステム及び方法によってこのように生成された患者に特定された造影剤プロトコルは、より高くより一定の冠状動脈の増強を提供し、心臓のDSCTの心臓の診断表示を改善した。
【0212】
また別の研究では、冠状動脈と心室中の増強は、固定パラメータを備えた2つの異なる3フェーズの注入プロトコル、及び本発明のパラメータ生成システム/方法によって決定された個々に最適化された注入パラメータを有する1つの注入プロトコルを使用する。
【0213】
その研究では、15人の患者が各群に含まれていた。群1では、造影剤のみのフェーズで70mlの造影剤(シェーリング社、Ultravist 370)が、流量5.0ml/秒で注入された。群2では、造影剤のみのフェーズで80mlの造影剤が、流量6.0ml/秒で注入された。群3については、注入パラメータは本発明のパラメータ生成システムを用いて演算された。増強は右冠動脈又はRCAの基端、中央、先端部、及び右心室及び左心室の頭蓋・尾部で測定された。測定はマン・ウィットニーUテストを使用して比較された。
【0214】
各対照群、群1及び群2にて、三フェーズ性の注入プロトコルが使用された。群1では、各3フェーズを通る流量は5ml/秒であった。上記の如く、70mlの造影剤が群1の最初、造影剤のみのフェーズにて注入された。2つの流れである群1の第2フェーズにて、50mlの造影剤と生理食塩水の混合物が注入された。生理食塩水のみの群1の第3フェーズでは、40mlの生理食塩水が注入された。群2では、3つのフェーズの各々の全体にわたる流量は6ml/秒だった。上に述べられるように、80mlの造影剤は、群2の最初の、造影剤のみのフェーズにて注入された。群2の2番目である2つの流れのフェーズでは、50mlの造影剤と生理食塩水の混合物が注入された。群2の3番目である生理食塩水のみのフェーズでは、40mlの生理食塩水が注入された。群1と群2の両プロトコルでは、時間/走査遅延を決定するのにテストボーラスが実行された。
【0215】
研究からのデータは
図42乃至
図46に示される。平均の走査時間は著しく異ならなかった。群3に用いられた平均的な造影剤の体積は、造影剤のみのフェーズで77.8mlだった。冠状動脈中の増強は、
図42の群1及び3、及び
図43の群2及び3に示される。
図42に示すように、RCA内の増強は群1に比して、群3のRCAの全ての部分に於いて著しく高かった(412.1、412.5、4220HU対358.3、345.4及び321.8HU)。
図43に示すように、先端のRCAの増強だけが群3と群2の間で著しく異なった。左心室及び右心室内の増強は、
図44の群1及び3、及び
図45の群2及び3について示される。群3では、著しく高い増強は、左心室尾部にて試験の終了時に向けて観察された。右心室内の増強は著しく異ならなかった。
【0216】
研究は、患者毎に決定された本発明の注入プロトコルが高い増強を生じたことを示し、特に一定の注入パラメータを用いた注入プロトコルに比して、冠状動脈の末端部が高い増強を生じたことを示す。
【0217】
図47は、32人の被験者の5つの冠動脈セグメントの他の研究に於ける平均的な造影増強を示す。
図47のエラーバーは、標準誤差を表す。
図47は、研究で使用される本発明のパラメーター生成アルゴリズムの様々な設計ゴールの達成を示す。例えば、望ましいレベルの造影増強(例えば少なくとも350HU)は、冠状動脈の生体組織に亘って達成された。さらに、増強レベルは、冠状動脈の生体組織の研究領域及び被験者に亘って不変であった(厳密な標準誤差によって証拠付けられるように)。
図48は、右心房及び左心房の4つの位置に於ける平均的は造影増強を示す。測定は、32人の被験者に夫々、右心房(RV)及び左心室(LV)の頭蓋(クラン)・尾部(カウド)部にROIを手動で配置することにより成された。
図48のエラーバーはプラス・マイナスの標準誤差を表す。
図48は、左心室に所望で不変の増強を提供する本発明のパラメーター生成システムの能力を示す。LVに於ける所望の増強は、一般的には心臓CTAについては300HU以上である。心臓のCTAでは、心臓の右側が左心室と同じくらいに増強されることを望まない。しかしながら、幾つかの造影増強は所望される。研究された実施例では、パラメーター生成システムは、現在の心臓CTA手順に関連して、光線の副産物やビーム硬化副産物を引き起こさずに、適切な右心室の増強を達成した。
図47に示す右心室の増強は被験者に亘って適切な一定の増強(厳密な標準誤差によって証拠付けられるように)と、左心室未満である少なくとも100HUの増強レベルを示す。
【0218】
上記の代表的な実施例が、CT画像化の場面にて、主に説明されている。しかし、本発明の装置、システム及び方法は、薬剤の注入に広範な適用がある。例えば、本発明のシステム、装置及び方法は、CT以外の(例えば、MRI、超音波、PET等)画像化手順についての造影剤の注入に関して用いられ得る。
【0219】
上記に簡単に記載したように、フェーズ(又は注入の時刻)について予想される流量は、システム又はモデルへの入力として用いられ、該システム又はモデルは、体積流量、流路特性(例えば、カテーテルの内径(ゲージ))及び造影剤の粘度の結果として、シリンジ又は他の容器内に生成した圧力量を予測するように構成され又は作動可能である。一般に、造影剤の粘度は、CT造影剤の場合は、造影剤のヨウ素濃度に対して幾何学的に増加する。粘度はデータテーブルから演算され、又は引き出され得る。これらの変数の一組の値から生じる圧力は、当該技術分野で公知の如く、流体動力学原理から演算され、又は以前の実験データから決定される。圧力モデルの議論は、PCT国際特許出願PCT/US05/42891号に示され、該出願は注入流路の種々の地点にて圧力を予想するモデル又はシステムの種々の実施例を示す。予測された圧力が作業者によって設定された圧力限界又は閾値、及び/又は電動インジェクタのメーカーによって決定された安全な圧力限界を超えれば、作業者は例えば流量入力領域のカラーコードによって、考えられる圧力超え表示で警告される。予測される圧力超え状況の種々の他の視覚的、聴覚的及び/又は触覚的表示が付与され得る。
【0220】
一般に、上記のパラメータ生成システムの実施例は、心臓血管システムの描画及び該心臓血管システムを通る薬剤の伝搬の前に利用可能な情報を用いて、初期プロトコルのパラメータを決定する。初期プロトコルは例えば、送出されるべき1又は2以上の流体の体積についての情報を付与して、1又は2以上のシリンジの予備装填を可能にする。心臓血管システムの描画が終了すると、プロトコルのパラメータは描画に基づいて調整される。本発明のパラメータ生成システムは、造影剤のみの注入の初期フェーズとそれに続く混合フェーズを含む注入に関して記載された。当業者に明らかなように、本発明のパラメータ生成システムは、1,2又は3以上のフェーズを含み得る注入プロトコルを介して、フラッシュ流体の希釈液の注入と共に、又は注入を伴わずに、種々の薬剤の注入に適用可能である。
【0221】
本発明は、上記の実施例及び/又は例と関連して詳細に説明されているが、詳細な説明は、一例であり限定されるものではなく、当業者であれば、本発明から離れることなく種々の変更を行なえることは理解されるべきである。本発明の範囲は、上記説明よりも、請求の範囲に示されている。各請求項と均等な目的及び範囲にある全ての変更、変形は、それらの範囲に含まれる。