(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0020】
(1)概要
図1に示すように、本発明の分離膜の製造方法は、モノリス型の基材10に、分離膜13を成膜するための成膜用スラリー12を付着させた後(
図2参照)に、基材10の端面の一部をマスク15で覆った状態で通風して成膜用スラリー12を乾燥させる乾燥工程を行って分離膜13を形成する。マスク15で覆った状態で通風して乾燥させる工程は、乾燥工程の一部で行うだけでもよい。マスク15は、連続的、または間欠的に移動させる。このように、基材10の端面の一部をマスク15で覆った状態で通風して乾燥させることにより、他の部分に集中して通風することができる。このため、通風装置16を大型化せずに、膜面積が大きくなった場合や、膜を形成するための成膜用スラリー12の粘度が高くなった場合でも、容易に対応可能である。
【0021】
(2)分離膜構造体
本明細書では、基材10に分離膜13を形成したものを分離膜構造体1と呼ぶ。
【0022】
(2−1)基材
本発明の分離膜の製造方法に用いる、分離膜13を形成するための基材10の全体的な形状やサイズについては、その分離機能を阻害しない限りにおいて特に制限はない。全体的な形状としては、例えば、円柱状、四角柱状(長手方向7に直交する断面が四角形の筒状)、三角柱状(長手方向7に直交する断面が三角形の筒状)等の形状が挙げられる。中でも、押出成形がし易く、焼成変形が少なく、ハウジングとのシールが容易な円柱状が好ましい。精密濾過や限外濾過に用いる場合には、長手方向7に直交する断面における直径(外径)が30〜60mm、長手方向7における長さが15〜2000mmの円柱状とすることが好ましい。なお、本発明の分離膜の製造方法では、乾燥工程において、径方向の乾燥のムラを少なくすることができるため、直径(外径)が60〜200mmの大型の基材10であっても、クラックの発生しにくい膜を形成することができる。
【0023】
本発明の分離膜の製造方法に用いる基材10としては、
図1に示すような、モノリス型(モノリス形状)を用いることができる。「モノリス型」とは、
図1に示すような長手方向7の第一の端面2aから第二の端面2bまで複数のセルが形成された形状あるいはハニカム状のものを言う。なお、外形は上記のように円柱状に限定されない。
【0024】
図1に示す実施形態の基材10は、長手方向7の一方の第一の端面2aから他方の第二の端面2bまで多孔質の隔壁3によって区画形成された、流体の流路となるセル4を複数個有する。基材10は長手方向7の両端側に貫通し、長手方向7と平行なセル4を、30〜2500個有していることが好ましい。
【0025】
基材10のセル4の断面形状(セル4の延びる方向に直交する断面における形状)としては、例えば、円形、楕円形、多角形等を挙げることができ、多角形としては四角形、五角形、六角形、三角形等を挙げることができる。尚、セル4の延びる方向は、基材10が円柱状の場合には、長手方向7と同じである。
【0026】
基材10のセル4の断面形状が円形の場合、セル4の直径は、1〜5mmであることが好ましい。セル4の断面が円でない場合は、断面積が同じ円の直径である。セル4の直径を1mm以上とすることにより、膜面積を十分に確保することができる。5mm以下とすることにより、強度を十分なものとすることができる。
【0027】
基材10の材料としては、多孔質セラミックを用いることができる。強度や化学的安定性の観点から、アルミナ、シリカ、コージェライト、ムライト、チタニア、ジルコニア、炭化珪素等のセラミックス材料が好ましい。基材10の気孔率は、強度と透過性の観点から25〜55%程度とすることが好ましい。また、基材10の平均細孔径は、0.005〜5μm程度とすることが好ましい。
【0028】
(2−2)分離膜
本発明の分離膜の製造方法において製造される分離膜13としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリカ膜、炭素膜、ゼオライト膜、チタニア膜等が挙げられる。以下の製造方法では、シリカ膜を例として説明する。
【0029】
(3)製造方法
(3−1)基材
次に、モノリス型の基材10を用いた分離膜構造体1の製造方法について説明する。最初に、基材10の原料を成形する。例えば、真空押出成形機を用い、押出成形する。これによりセル4を有するモノリス型の未焼成の基材10を得る。他にプレス成形、鋳込み成形などがあり、適宜選択できる。次いで、未焼成の基材10を、例えば、900〜1450℃で焼成する。
【0030】
付着工程の前に、基材10の長手方向7の両端面にガラスシールを設けることが好ましい。ガラスシールは、分離膜13の使用時に、分離膜13が形成されていない領域を通じて被処理流体が流入または流出することを防ぐ。
【0031】
(3−2)成膜用スラリー
次に、成膜用スラリー12を作製する。例えば、シリカ膜の場合、分離膜13を成膜するために、基材10に付着させ、乾燥させる対象となる成膜用スラリー12としては、シリカゾル液を用いることができる。シリカゾル液は、テトラエトシキシランを硝酸の存在下で、50℃にて5時間加水分解してゾル液とし、そのゾル液をエタノールで希釈し、シリカ換算で1.0質量%となるように調整することが好ましい。エタノール希釈後のシリカゾル液のエタノール濃度は96質量%であることが好ましい。エタノールで希釈する代わりに水で希釈することも可能ではあるが、エタノールで希釈する方が、1回の成膜において薄く成膜することができ、高透過速度の膜とすることができる。
【0032】
(3−3)付着工程
次に、成膜用スラリー12(例えば、シリカゾル液)をモノリス型の基材10のセル4内に付着させる。基材10のセル4内に、成膜用スラリー12を付着させる方法として、特に限定されるものではないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0033】
広口ロートの下端に基材10を固着し、広口ロートに成膜用スラリー12を供給して基材10の上部から成膜用スラリー12をセル4に流し込み、セル4内を通過させて成膜用スラリー12を付着させることができる。
【0034】
あるいは、送液ポンプを使用し、成膜用スラリー12を各セル4の一方の開口端から、0.3〜300cm/分程度の速度で各セル4内に送入するディップ成膜法を用いることもできる。
【0035】
図2は、付着工程によって、セル4内に成膜用スラリー12を付着させたところを示す。なお、成膜用スラリー12が後の乾燥工程、熱処理工程を経て分離膜13となる。
【0036】
(3−4)乾燥工程
次に、基材10に付着させた成膜用スラリー12を乾燥させる。
図1は、乾燥工程の一実施形態を示す模式図である。基材10の一方の端面2(第一の端面2a)側に通風装置16を配置し、基材10のセル4内に、通風装置16から風を送り込み、基材10の他方の端面2(第二の端面2b)側より排気する。通風は、基材10の下から上に向かって行ってもよいし、上から下に向かって行ってもよい。このようにして、セル4内に風を通過させながら成膜用スラリー12によって形成された膜の通風乾燥を行う。このようにして基材10のセル4に風を通すことにより、セル4の表面に成膜されたシリカ膜等の成膜用スラリー12によって形成される膜の全体が風にて乾燥される。なお、本発明において、一度の成膜及び乾燥で所望の膜厚が得られない場合には、所望の膜厚が得られるまで成膜及び乾燥の工程を複数回繰り返すようにしても良い。
【0037】
シリカ膜の場合、通風装置16から送り込む風の温度は、好ましくは10〜80℃である。10℃以上の風を通過させることにより、乾燥を進めて密な膜を得ることができる。また、80℃以下とすることにより、膜面にクラックが発生しにくい。乾燥のための風がセル4内を通過する速度は、0.1〜100m/秒で行うことが好ましく、5〜30m/秒がさらに好ましい。風がセル4内を通過する速度を0.1m/秒以上とすることにより、乾燥させやすい。また、風がセル4内を通過する速度を100m/秒以下とすることにより、クラックが発生しにくい。
【0038】
本発明の分離膜の製造方法では、乾燥工程において基材10の端面2の一部をマスク15で覆った状態で通風して乾燥させる。以下、マスク15を用いた方法について説明する。
【0039】
(3−4−1)第一の方法
本発明の分離膜の製造法の乾燥工程における第一の方法は、基材10の通風の対象となる部分である通風対象領域の一部をマスク15で覆ったカバー領域を設けて通風を行い、マスク15を移動させることによりカバー領域を移動させてさらに通風を行う。マスク15で基材10の風の入口側の端面2を覆っても良いし、出口側の端面2を覆っても良い。出口側の端面2を覆っても風の流通が遮られるため、入口側の端面2を覆うのと同様の効果が得られる。
【0040】
図1では、扇形の開口が形成されたマスク15を用いている。マスク15は、風の入口側の第一の端面2aを覆うように備えられている。
図3に通風装置16側から見た図を示す。マスク15は、扇形の開口領域以外の部分で基材10の端面2を覆っている。マスク15の中心軸と基材10の中心軸とが一致するようにマスク15が配置されている。そして、マスク15を連続的に移動させる、または間欠的に移動させて、カバー領域を移動させる。具体的には、中心軸を中心として、時計回り、または反時計回りにマスク15を回転させる。回転は、連続的に行ってもよいし、間欠的に行ってもよい。
【0041】
第一の方法の他の実施形態を
図4A及び
図4Bを用いて説明する。
図4Aでは、マスク15は、半円形である。左側がマスク15で覆われて、右側は、基材10の端面2が見えている。この状態で通風し、一定の時間の後、
図4Bに示すように、マスク15を反転する。なお、
図3で説明したように、マスク15を回転させてもよい。
【0042】
通風対象領域の面積に対する、前記マスクで覆われていない開口領域の開口面積割合が、10〜50%であることが好ましい。このような範囲とすることにより、通風装置16からの風を特定の領域に集中的に送ることができるため、通風装置16を大型化しなくても、膜を効率よく乾燥させることができる。
【0043】
ある領域へのマスク15の開口からの通風時間は、5〜80秒が好ましく、10〜60秒がさらに好ましい。5秒以上とすることにより、余剰スラリーを吹飛ばして厚膜化することを防止し、クラックが発生することを防止することができる。また、乾燥不足で焼成時に急激な膜収縮がおこり、クラックが発生することを防止することができる。80秒以下とすることにより、マスク15部分の余剰スラリーの自然乾燥が進んで厚膜化し、クラックが発生することを防止することができる。
【0044】
(3−4−2)第二の方法
本発明の分離膜の製造法の乾燥工程における第二の方法は、乾燥工程が、マスク15で覆わず基材10の通風の対象となる部分である通風対象領域のすべてに通風を行うマスクなし工程と、通風対象領域の一部をマスク15で覆ったカバー領域を設けて通風を行うマスクあり工程と、を含む方法である。第二の方法においても、マスク15は、基材10の入口側の端面2を覆っても良いし、出口側の端面2を覆っても良い。
【0045】
この場合、マスクなし工程を行った後に、マスクあり工程を行うことが好ましい。
図5A及び
図5Bを用いて、第二の方法を説明する。
図5Aは、マスクなし工程である。通風は、基材10の端面2の全領域に対して行われる。一定の時間経過後、
図5Bに示すように、通風対象領域の一部をマスク15で覆ったカバー領域を設ける。このとき、カバー領域は、端面2の中央部を覆うことが好ましい。通風装置16にて通風すると、通常、中央部に風が多く流れ、外周部は、風が弱い。そのため、膜の乾燥に中央部と外周部とにおいて差が生じやすい。カバーあり工程にて、中央部にカバー領域を設けることで、中央部と外周部における膜の乾燥の差を減少させることができる。これにより、均一的な膜を製造することができる。
【0046】
なお、マスクあり工程とマスクなし工程を繰り返し行ってもよいし、マスクなし工程の後、マスクあり工程を行ってもよいが、マスクなし工程の後、マスクあり工程を行うと、最初にスラリーをある程度吹き飛ばすことができるため好ましい。
【0047】
通風対象領域の面積に対する、マスク15で覆われていない開口領域の開口面積割合が、15〜50%であることが好ましい。このような範囲とすることにより、通風装置16からの風を特定の領域に集中的に送ることができるため、通風装置16を大型化しなくても、膜を効率よく乾燥させることができる。
【0048】
(3−4−3)第三の方法
本発明の分離膜の製造法の乾燥工程における第三の方法は、風の乱流を発生させる突出空洞部22、風の乱流を減衰させる整流胴部23、縮流ノズル部24のある風洞装置21を用いて基材10に送風する方法である。すなわち、突出空洞部22、整流胴部23、縮流ノズル部24のある風洞装置21を用いて基材10の一方の端面2側から送風して成膜用スラリー12を乾燥させる乾燥工程を行って分離膜13を形成する。突出空洞部22とは、風の乱流を発生させるためのもので、風の流通方向25と異なる方向に突出して形成された空洞部である。整流胴部23とは風の乱れを減衰させ、縮流ノズル部24とは、さらに風の乱れを減衰させる部分である。
図6A、および
図6Bは、突出空洞部22、整流胴部23、縮流ノズル部24を有する風洞装置21を用いた乾燥工程を示す。
図6Aの風洞装置21は、風の流出方向27が流入方向26に対し直角に折れ曲がって形成されている。流入方向26に突出形成された突出空洞部22が設けられ、風洞装置21は、T字形状に形成されている。
図6Bでは、突出空洞22部は、流路の径が拡径された拡径部22aとして形成されている。つまり、突出空洞部22は、風の流通方向とは異なる方向に突出して形成されている。
【0049】
突出空洞部22は、バッファとなる空間であり、整流胴部23と縮流ノズル部24は風の乱れを取り除く空間であり、これらの空間によって風の流れの不均一を取り除き、乱れを減衰させることが好ましい。
図6Aの実施形態では、風の流通方向25を変化させる(折れ曲がらせる)ことによって、さらに風の不均一を取り除く効果が得られる。風の流通方向25が変化する部分に、突出空洞部22が形成されていることにより、さらに効果が高まる。突出空洞部22の形状としては、球状、円柱状、四角柱などの形状が挙げられる。整流胴部23の中に、20メッシュ(1インチ当たりの目の数が20)程度の整流網などを複数枚挿入するとさらに好ましい。また、風の速度分布を一様にし、乱れを小さくするためには絞り比(整流空間である整流胴部の径28と流出口の径29の比(整流胴部の径28/流出口の径29))を5〜20程度にすることが好ましい。
図6Bは、絞り比を5以上とした実施形態を示す。
【0050】
第三の方法は、第一の方法や第二の方法と併用して行うこともできるし、単独で行うこともできる。第三の方法を第一の方法や第二の方法と併用する場合は、
図6A、および
図6Bに示すように、分離膜構造体1の風の出口側にマスク15を備える。出口側にマスク15を備えることでも、入口側に備えるのと同様の効果が得られる。
【0051】
(3−5)熱処理工程
上記のように成膜、乾燥を行った後、100℃/hrにて昇温し、500℃で1時間保持した後、100℃/hrで降温する。以上の成膜用スラリー12(例えば、シリカゾル液)の付着工程、乾燥工程、熱処理工程を3回〜5回繰り返し、分離膜13(シリカ膜)を得ることができる。
【0052】
最終的に得られる分離膜13の膜厚は、0.1〜10μmとすることが好ましく、0.1〜3μmとするとより好ましい。この範囲とすることにより、十分な選択性を得るとともに、透過流速を大きくすることができる。
【0053】
本発明の一実施形態により製造された分離膜13の用途については、特に限定されるものではないが、混合液体等を分離するフィルタとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
(基材)
モノリス型の基材10として、
図1に示すような、直径(外径)が180mm、長手方向7の長さが1000mmのアルミナからなる多孔質の基材10を用いた。また、基材10は長手方向7の両端側に貫通し、長手方向7と平行なセル4を、2000個有するものであった。セル4の内径は、2.0mmであった。
【0056】
基材10の両端面(第一の端面2a,第二の端面2b)に、ガラスシール材を塗布し、ガラスシール材を650℃で加熱することによりガラスシールを形成した。
【0057】
(成膜用スラリー)
テトラエトシキシランを硝酸の存在下で、50℃にて5時間加水分解してゾル液とし、そのゾル液をエタノールまたは水で希釈し、シリカ換算で1.0質量%となるように調整することによりシリカゾル液(成膜用スラリー12)を製造した。
【0058】
(付着工程)
セル4の長手方向7が鉛直方向で、第一の端面2aが上方、第二の端面2bが下方となるように基材10を設置した。基材10の上部から3〜23℃に温度を制御したセラミックゾルを約8000mlをセル4内に流し込み、通過させた。基材10の上部から通風を約5秒行い、余剰なゾル液を除去した。なお、この成膜工程により、
図2に示すように、セル4の内壁の全体に成膜されていることを確認した。
【0059】
(乾燥工程)
付着工程の後、
図1に示すように、シリカ膜を成膜した基材10の第一の端面2a側に通風装置16を配置し、45℃の風を送り、シリカ膜を乾燥させた。以下、詳しく説明する。
【0060】
(実施例1〜16、比較例1)
実施例1〜16については、上述の第一の方法を用いた。すなわち、マスク15で覆ったカバー領域を設けて通風を行い、マスク15を移動させることによりカバー領域を移動させた。
図3、
図4A、
図4Bに示すようなマスク15を用いた。マスク15を備えた位置、マスク15の開口面積割合や中心角15a(開口部分の角度)は、表1に示す。実施例1〜12,14,15は、マスク15を連続的に回転させた。実施例13は、マスク15を間欠的に反転させた。表1の「ある領域への通風時間」は、通風の対象となる、ある通風対象領域に通風していた時間である。例えば、実施例2は、中心角が90°の開口が設けられたマスク15を用いており、中心角が90°の通風対象領域に30秒通風した。マスク15を回転させて、残りの270°の領域も同様に乾燥させたので、全乾燥時間は、30秒×(360/90)=120秒である。比較例1〜4は、マスク15を用いなかった例である(開口面積割合100%、中心角360°)。比較例1〜4の表1の「ある領域への通風時間」とは、マスクを用いずに乾燥に要した全通風時間である。
【0061】
(熱処理工程)
次に、試料を、電気炉で100℃/hにて昇温し、500℃で1時間保持した後、100℃/hで降温して熱処理した。成膜用スラリー12(シリカゾル液)の付着工程、乾燥工程、熱処理工程を4回繰り返し、実施例、比較例の試料を得た。
【0062】
(評価)
分離膜13の欠陥量を調べるために、セル4の真空度を測定した。セル4の一方を真空ポンプ(アルバック機工(株)製:直結型油回転真空ポンプ、型番:G−20DA、排気速度24L/min、到達圧力1.3×10
-1Pa、2段式)で吸引し、他方のセル4に真空計(GE Sensing社製:キャリブレーター、型番:DPI800)を接続してセル4内を真空引きし、セル4内の到達真空度を測定した。
【0063】
真空度がマスクなしの比較例1よりも良いものを○(良)と評価した。さらに、特に真空度が良い−85kPa以下のものは、◎(優)と評価したが、真空度が良くても通風時間が長いものや風速が大きいものは、製造工程上好ましくないため、×(不可)と評価した。
【0064】
【表1】
【0065】
表1に示すように、開口面積割合が12.5〜50%であると特に良い結果が得られた。ある領域への通風時間は、10秒や60秒よりも、30秒が良かった。また、風速は、5m/秒や30m/秒よりも10m/秒の方が良かった。マスク15の移動の方法は、連続式(実施例4)と反転式(実施例13)で差はなかった。マスク15を出口側に備えた場合も入口側に備えた場合と同様の結果が得られた。
【0066】
比較例1〜4は、マスクを用いずに乾燥させたものであるが、比較例1、2は、真空度が良くなかった。比較例3、4は、真空度を良くすることができたものの、比較例3では、全通風時間が長く、比較例4では、風速を40m/秒と大きくする必要があった。
【0067】
(実施例17〜30、比較例5)
実施例17〜30については、実施例1等と同様に基材10を作製後、成膜用スラリー12を基材10に付着させ、上述の第二の方法による乾燥工程を行った。すなわち、
図5A及び
図5Bに示すように、マスクなし工程を30秒間行った後、マスクあり工程を行った。マスク15を備えた位置、マスク15の開口面積割合やマスクあり工程の時間は、表2に示す。比較例5は、マスク15を用いなかった例である(比較例5は、表1の比較例1と同じで、マスクなし工程30秒、マスクあり工程0秒である。)。
【0068】
実施例1等と同様に熱処理を行い、シリカ膜を得、そのシリカ膜を評価した。真空度がマスクなしの比較例5よりも良いものを○(良)と評価した。さらに、特に真空度が良い−85kPa以下のものは、◎(優)と評価した。
【0069】
【表2】
【0070】
表2に示すように、開口面積割合が16〜49%であると特に良い結果が得られた。また、風速は、5m/秒や30m/秒よりも10m/秒の方が良かった。マスク15を出口側に備えた場合も入口側に備えた場合と同様の結果が得られた。