(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記切り返し走行は非作業状態での走行であり、前記切り返し走行における作業状態から非作業状態への移行点が前記親作業車の切り返し走行開始点とみなされ、前記切り返し走行における非作業状態から作業状態への移行点が前記親作業車の切り返し走行完了点とみなされ、
前記子作業車の切り返し走行開始点と切り返し走行完了点とは、前記親作業車の切り返し走行開始点と切り返し走行完了点とに基づいて算定される請求項1に記載の作業車協調システム。
前記子作業車の切り返し走行における切り返し走行完了点に至る後進走行は、前記親作業車の走行軌跡とは無関係に行われる1から3のいずれか一項に記載の作業車協調システム。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による作業車協調システムの具体的な実施形態を説明する前に、
図1を用いて回り作業走行領域での子作業車の親作業車に対する追従の基本原理を説明する。この作業車協調システムでは、有人操縦式の親作業車1Pと、この親作業車1Pに追従する無人操縦式の子作業車1Cとにより対地作業を行う。つまり、先行する親作業車1Pの左後方から子作業車1Cが親作業車1Pを追従走行することで、親作業車1Pの作業幅と子作業車1Cの作業幅とを合わせた幅(実際にはわずかな幅のオーバーラップが生じる)での対地作業が実現する。
【0016】
図1で示された対地作業地は、外周囲を畦によって境界づけられ圃場である。簡略化して示されているが、この圃場は、直進作業走行とUターンとを繰り返して作業が実施される長方形状のUターン作業領域Aと、このUターン作業領域Aの周囲に規定される四角形環状の回り作業領域Bとに区分けされている。この作業地区分けは、圃場作業において一般的に行われているもので、回り作業領域Bは枕地作業とも呼ばれる。この例では、対地作業としてトラクタによる耕耘作業を例としており、Uターン作業領域に対する作業を最初に行い、その後に回り作業領域Bに対する作業を行う。このUターン作業領域Aの作業から回り作業領域Bの作業に移行する際に、Uターン作業領域Aの作業終了点から、回り作業領域Bにおける作業出発点への切り返し走行が行われる。なお、
図1では、親作業車1Pの走行軌跡は黒太線で示され、子作業車1Cの走行軌跡は白太線で示されて、さらに、切り返し走行軌跡は点線描画で区別されている。
【0017】
回り作業が効率的に行われるように、適切な経路をとって行われる親作業車1Pの切り返し走行を、子作業車1Cが追従する必要がある。その際に実施される協調制御を以下に説明する。
まず、
図1の(b)に示されているように、親作業車1Pは、非作業状態(耕耘装置を上昇)で、Uターン作業領域の作業終了点である切り返し走行開始点Pp1から出発して、圃場の1つのコーナ部に設定された回り作業開始点(切り返し走行完了点でもある)Pp3に作業車後端を向き合わせるように前進旋回走行し、作業車後端が回り作業開始点に向き合った切り返し点Pp2で停止する。次に、回り作業開始点となる切り返し走行完了点Pp3に達するまで後進走行する。切り返し走行を完了すると、親作業車1Pは、作業状態(耕耘装置を下降)で、回り作業領域を前進走行する。この回り作業走行は実質的には直線状の走行軌跡となるように行われる。
【0018】
上述した親作業車1Pの走行軌跡から親作業車1Pが切り返し走行を実施したことが検知されると、当該走行軌跡と、親作業車1P及び子作業車1Cの対地作業幅(以下単に作業幅と略称し、
図1ではそれぞれWPとWcで示されている)とから、
図1の(c)に示されているように、子作業車1Cの切り返し走行開始点Pc1と切り返し走行完了点Pc3とが算定される。切り返し走行開始点Pc1と切り返し走行完了点Pc3とが算定されると、親作業車1Pの切り返し走行と同じ方向での旋回前進走行の停止点(切り返し点)Pc2も算定され、この停止点(切り返し点)Pc2まで子作業車1Cを、非作業状態で旋回前進走行させる。その際、子作業車1Cの旋回前進走行は、回り作業走行を行っている親作業車1Pとの干渉が避けられるまで、禁止される。子作業車1Cの旋回前進走行の停止点(切り返し点)Pc2から切り返し走行完了点Pc3までの後進走行における目標走行位置は、子作業車1Cの轍が親作業車1Pの回り作業幅に入り込まないという条件下で、親作業車1Pの切り返し後進走行の走行軌跡とは無関係に算定される。切り返し走行完了点Pc3でもある回り作業走行開始点からの回り作業走行における走行目標位置は、親作業車1Pの作業幅及び子作業車1Cの作業幅と、親作業車1Pの回り作業走行軌跡とから、互いの作業幅の所定のオーバーラップを維持する条件下で算定される。算定された回り作業走行における走行目標位置に基づいて、子作業車1Cの回り作業走行が、実行される。
【0019】
図1で示された例では、親作業車1Pの作業幅である親作業幅と子作業車1Cの作業幅である子作業幅とは同じであるが、相違してもよい。親作業車1Pと子作業車1Cとの走行横断方向の位置ずれ量は、理想的には(親作業幅+子作業幅)/2であるが、追従誤差による作業残しを避けるために、例えば数十cm程度のオーバーラップが設定されている。
【0020】
次に、本発明の作業車協調システムの具体的な実施形態の1つを説明する。この実施形態では、作業車は、
図2で示されているように、畦によって境界づけられた田畑を耕耘する耕耘装置5を対地作業装置として装備したトラクタである。耕耘装置5は車体3の後部に油圧式の昇降機構4を介して装備されている。親作業車1Pとしての親トラクタ1Pと、子作業車1Cとしての子トラクタ1Cとは、実質的に同形であり、前輪2aと後輪2bとによって支持された車体3の中央部に操縦部30が形成されている。親トラクタ1Pと子トラクタ1Cの操縦部30には、従来通りのステアリングホイールや各種操作レバー、さらに運転者が着座するシートなどが備えられている。本発明の作業車協調システムに基づく追従制御の実行時には、親トラクタ1Pは運転者によって操縦され、子トラクタ1Cは無人操縦される。
【0021】
図3で示すように、この実施形態では、作業車協調システムを構築するための電子コントロールユニットが、親トラクタ1Pに装備される親機コントロールユニット6と子トラクタ1Cに装備される子機コントロールユニット7とに分割されている。親機コントロールユニット6と子機コントロールユニット7とは、互いに無線方式でデータ伝送できるように、それぞれ通信モジュール60と70を備えている。
【0022】
親機コントロールユニット6は、さらに、親位置検出モジュール61、親走行軌跡算定部62、Uターン作業領域走行制御モジュール63、回り作業領域走行制御モジュール64などの機能部を備えている。これらの機能部は、ハードウエアとの連携動作を行うこともあるが、実質的にはコンピュータプログラムの起動によって実現する。
【0023】
親位置検出モジュール61は、GPSを利用して、自身の位置つまり親トラクタ1Pの位置を検出する。親走行軌跡算定部62は、親位置検出モジュール61で検出された位置(方位座標)から親トラクタ1Pの走行軌跡を算定して記録する。なお、親位置検出モジュール61及び後で記載される子位置検出モジュール71は、この実施形態では、位置検出のためにGPSが利用されているが、これに限定されるわけではなく、例えば方位センサやジャイロセンサなど他の機体位置を検出する方法を利用してもよい。
【0024】
Uターン作業領域走行制御モジュール63は、Uターン作業領域Aにおける走行を制御する制御モジュールであり、Uターン作業領域記録部63aと、Uターン走行検知部63bと、Uターン走行目標算定部63cとを備えている。Uターン作業領域記録部63aは、Uターン作業領域Aの外形を特定する方位座標を記録している。Uターン走行検知部63bは、Uターン作業領域Aにおける親トラクタ1P及び子トラクタ1CのUターンを検知する。このUターンは、Uターン作業領域Aにおける作業状態での実質的に直線状の往路走行と復路走行との間で必要となる方向転換であり、回り作業領域において非作業状態で行われる。Uターン走行目標算定部63cは、親トラクタ1Pの耕耘幅及び子トラクタ1Cの耕耘幅と、親トラクタ1Pの作業走行軌跡と、子トラクタ1Cの位置とに基づいて、互いの耕耘幅のオーバーラップも考慮して、子トラクタ1Cの目標走行位置を算定する。このため、Uターン走行目標算定部63cは、子トラクタ1CのUターン作業領域Aにおける直線状往復走行経路を算定する往復走行経路算定機能と、子トラクタ1Cの回り作業領域におけるUターン走行経路を所定のUターン走行経路演算アルゴリズムに基づいて算定するUターン走行経路算定機能とを有している。このUターン走行経路演算アルゴリズムは、基本的には、親トラクタ1PのUターン開始点P1とUターン終了点P2とから算定される子トラクタ1CのためのUターン開始点Q1とUターン終了点Q2とを結ぶように子トラクタ1Cの旋回半径を考慮してその走行経路を求める。Uターン作業領域走行制御モジュール63は、算定した子トラクタ1Cの目標走行位置を、通信モジュール60を介して子機コントロールユニット7に送信する。
【0025】
回り作業領域走行制御モジュール64は、回り作業領域における走行を制御する制御モジュールであり、回り走行検知部64aと、切り返し走行目標算定部64bと、回り作業走行目標算定部64cとを備えている。回り走行検知部64aは、親トラクタ1P及び子トラクタ1Cの回り作業領域における、前進と後進とからなる切り返し走行と回り作業走行とを含む回り走行を検知する。当該検知のために、回り走行検知部64aは、Uターン作業領域Aの外形を特定する位置座標及び作業対象となっている圃場の外形を特定する位置座標を利用する。切り返し走行目標算定部64bは、親トラクタ1Pの作業幅及び子トラクタ1Cの作業幅と、親トラクタ1Pの切り返し走行における切り返し走行開始点と切り返し走行完了点とを含む切り返し走行軌跡とから、子トラクタ1Cの切り返し走行開始点と切り返し走行完了点とを算定する。回り作業走行目標算定部64cは、親トラクタ1Pの作業幅及び子トラクタ1Cの作業幅と、親トラクタ1Pの回り作業走行軌跡とから、切り返し走行完了点から次の切り返し走行開始点までの子トラクタ1Cの回り作業走行における目標走行位置を算定する。回り作業領域走行制御モジュール64は、算定した子トラクタ1Cの目標走行位置を、通信モジュール60を介して子機コントロールユニット7に送信する。
【0026】
子機コントロールユニット7は、通信ジュール70と、子位置検出モジュール71と、操縦制御部72とを備えている。子位置検出モジュール71は、親位置検出モジュール61と同様に、GPSを利用して自身の位置つまり子トラクタ1Cの位置(方位座標)を検出する。得られた子トラクタ1Cの位置データは通信ジュール70を介して親機コントロールユニット6に送信される。操縦制御部72は、親機コントロールユニット6から無線送信されてきた走行目標位置に基づいて、子トラクタ1Cの前輪2aの操向や後輪2bの駆動を制御して、子トラクタ1Cを順次設定される目標走行位置に無人操縦する。
【0027】
Uターン作業領域Aでの走行においては、耕耘装置5は、作業走行から非作業Uターンに入る時点で上昇され、Uターン走行から作業走行に入り時点で下降される。この耕耘装置5の昇降は、親トラクタ1Pに搭載された作業装置制御部31からの制御指令による昇降機構4の昇降動作によって実現する。この実施形態では、作業装置制御部31は車載LANを通じて親機コントロールユニット6と接続されており、作業装置制御部31の昇降機構4に対する動作指令は、Uターン作業領域走行制御モジュール63及び回り作業領域走行制御モジュール64によって管理される。したがって、Uターン走行検知部63bは、昇降機構4に対する上昇指令の出力タイミングでUターンの開始を確認し、下降指令の出力タイミングでUターンの終了を確認することも可能である。また、回り作業領域Bでの走行においては、耕耘装置5は、切り返し走行時に上昇され、切り返し走行時から回り作業走行時に移行する時点で下降される。したがって、回り走行検知部64aは、昇降機構4に対する上昇指令の出力タイミングで切り返し走行の開始を確認し、下降指令の出力タイミングで切り返し走行の終了を確認する。
【0028】
次に、
図4、
図5、
図6を用いて、有人操縦の親トラクタ1Pと無人操縦の子トラクタ1Cとの間の協調制御における基本的なデータの流れを説明する。
図4は、実質的に直線状の走行軌跡を残す作業走行のための協調制御におけるデータの流れを模式的に示している。
図5は、Uターン走行のための協調制御におけるデータの流れを模式的に示している。
図6は、切り返し走行のための協調制御におけるデータの流れを模式的に示している。
【0029】
直線状の走行軌跡を残す作業走行における協調制御では、
図4に示すように、所定のサンプリング周期で生成された親トラクタ1Pの実際の走行位置を示す親位置から親走行軌跡が算定される(#a)。算定された親走行軌跡と各時点での、子トラクタ1Cの実際の走行位置を示す子位置とを用い、さらに親作業車対地作業幅(親対地作業幅)と子作業車対地作業幅(子対地作業幅)と双方の作業幅のオーバーラップ量とを考慮して、作業走行目標位置が算定される(#b)。この算定された作業走行目標位置が操縦制御目標値となって、子トラクタ1Cは、親トラクタ1Pと共同して幅広の対地作業を行うべく無人操縦される(#c)。なお、親トラクタ1Pの走行中に実施された運転者による走行及び作業に関する操作情報は、走行・作業パラメータ(親パラメータ)として生成され、子トラクタ1Cのための走行・作業パラメータ(子パラメータ)に変換された後、子トラクタ1Cの走行制御及び作業制御のために利用される。
【0030】
図8でその走行軌跡が示されているUターン走行における協調制御では、
図5に示すように、親位置に関連付けられた、親トラクタ1PにおけるUターン開始操作及びUターン終了操作とから、親トラクタ1PのUターン開始点(
図8ではP1で示されている)とUターン終了点(
図8ではP2で示されている)が算定される(#a1)。なお、Uターン開始操作やUターン終了操作などの操作データは、走行・作業パラメータ(親パラメータ)として親トラクタ1Pで生成される。この算定された両データに親作業車作業幅と子作業車作業幅を考慮して、Uターン走行経路が生成される(#a2)。Uターン走行経路の生成時に、回り作業領域Bの形状データが考慮される。生成された子Uターン走行経路データと各時点での子作業車位置とからUターン走行目標位置が算定される(#b)。この算定された作業走行目標位置が操縦制御目標値となって、子トラクタ1Cは、Uターン領域内で適切なUターン走行をすべく無人操縦される(#c)。
【0031】
図1の(b)と(c)とでその走行軌跡が示されている、回り作業領域Bにおける切り返し走行時には、
図6に示すように、親トラクタ1Pにおける親トラクタ1Pの切り返し走行での停止、前進、後進などの走行操作に基づいて、親トラクタ1Pの切り返し走行開始点、切り返し点、切り返し走行完了点(
図1の(b)ではそれぞれPp1、Pp2、Pp3で示されている)が親位置に関連付けられて算定される(#a1)。なお、ここでも、停止、前進、後進などの走行操作は、走行・作業パラメータ(親パラメータ)として親トラクタ1Pで生成される。算定された切り返し走行の各点と親作業幅と子作業幅とを考慮して、子トラクタ1Cの切り返し走行経路が生成される(#a2)。生成された切り返し走行経路データと各時点での子位置とから切り返し走行目標位置が算定される(#b)。この算定された切り返し走行目標位置が操縦制御目標値となって、子トラクタ1Cは、適切な切り返し走行をすべく、無人操縦される(#c)。
【0032】
次に、この実施形態における親トラクタ1Pと子トラクタ1Cとの協調走行の制御の流れの一例を説明する。
図7に、Uターン作業領域Aで実施される親トラクタ1Pと子トラクタ1Cとの協調走行制御のフローチャートが示されており、その際の互いの走行軌跡が
図8に示されている。回り作業領域Bで実施される親トラクタ1Pと子トラクタ1Cとの走行パターンを説明する模式図が
図9〜14に示されている。
【0033】
協調制御がスタートすると、まず初期設定処理が行われる(#10)。この初期設定処理では、例えば、耕耘作業を行う圃場の形状から、直進作業走行とUターンとを繰り返しながら耕耘作業が実施されるUターン作業領域Aと、このUターン作業領域Aの周囲の回り作業領域Bとが設定され、記録される。なお、回り作業領域Bは、Uターン作業領域Aに対する耕耘作業時の非作業Uターン走行のための領域としても利用される。なお、通常、Uターン作業領域Aは圃場の中央に位置するので、Uターン作業領域Aを簡単に中央領域Aとも呼び、回り作業領域Bは圃場の周辺近くに位置するので、回り作業領域Bを簡単に周辺領域Bとも呼ぶ。
【0034】
親トラクタ1Pによる中央領域Aの作業走行(実質的には直線走行)が開始される(#11)。所定時間遅れて、子トラクタ1Cによる追従作業走行が開始される(#12)。これにより、親トラクタ1Pの作業幅と子トラクタ1Cの作業幅とによる協調的な耕耘作業が行われていく。そして、
図8に示されているように、親トラクタ1Pが周辺領域Bに到達すると、耕耘装置5が上昇させられ、親トラクタ1PのUターン走行が開始される(#21)。その時点の親トラクタ1Pの位置が、親Uターン開始点P1として記録される(#22)。親トラクタ1PがUターン走行し、中央領域Aに再び進入すると、耕耘装置5が下降させられ、親トラクタ1Pの作業走行が再開される(#23)。その時点の親トラクタ1Pの位置が、親Uターン終了点P2として記録される(#24)。親Uターン開始点P1及び親Uターン終了点P2が記録されると、子トラクタ1Cの子Uターン開始点Q1及び子Uターン終了点Q2が算定される。対応する図示された周辺領域Bでは、子Uターン開始点Q1は、親トラクタ1Pと子トラクタ1Cの横方向の間隔及びオーバーラップ量を考慮して、親Uターン開始点P1からずらせた位置となる。子Uターン終了点Q2は、親Uターン終了点P2と子Uターン開始点Q1とのの間の位置となり、例えば
図8では中間位置としている。なお、図示されていないが、反対側でUターンを行うさいには、親Uターン開始点P1及び親Uターン終了点P2と子Uターン開始点Q1及び子Uターン終了点Q2との位置関係はちょうど逆となり、子Uターン終了点Q2は親Uターン終了点P2よりさらに外側の位置で、親トラクタ1Pと子トラクタ1Cの耕耘幅及びそのオーバーラップ量から求められる。
【0035】
子Uターン開始点Q1及び子Uターン終了点Q2が算定されると子Uターン開始点Q1から子Uターン終了点Q2に至る子Uターン走行経路が算定される(#25)。さらに、子Uターン終了点Q2の手前で、子トラクタ1Cがほぼ作業走行の方向姿勢に達する位置を追従開始点Qsとして算定する(#26)。つまり、この追従開始点Qsは、ここから親トラクタ1Pへの追従を開始することにより、Uターン終了点Q2から始まる子トラクタ1Cの作業走行軌跡が親トラクタ1Pの作業走行軌跡に正確に対応することができる位置である。
【0036】
子トラクタ1Cが子Uターン開始点Q1に達すると、子トラクタ1CのUターン走行が開始される(#27)。子トラクタ1CのUターン走行においては、子トラクタ1Cが追従開始点Qsに到達するかどうかがチェックされる(#28)。子トラクタ1Cが追従開始点Qsに到達すると(#28Yes分岐)、子トラクタ1CのUターン走行が終了し、子トラクタ1Cの追従走行、つまり作業走行が再開される(#12へのジャンプ)。
【0037】
なお、親トラクタ1PのUターン走行が終了して作業走行が開始されない限り、子トラクタ1CのUターン終了点Q2(作業走行開始点)を算定することができないので、このことを考慮して、親トラクタ1Pと子トラクタ1Cとの間の距離を設定している。親トラクタ1PのUターン走行中に子トラクタ1CがUターン走行するために回り作業領域Bに達した場合には子トラクタ1Cがその時点での位置で停止して親トラクタ1PがUターン走行を終了するまで待機するような待機制御が組み込まれているが、このフローチャートでは省略されている。
【0038】
さらに、このフローチャートは説明目的のものであり、ルーチンの終了がなく、無限ループとなっているが、実際には、この中央領域Aの耕耘作業の終了を意味する指令が入力されたかどうかが割り込み処理としてチェックされており、そのような終了指令が入力されると、次に、以下に示す回り作業における協調制御が実行される。
【0039】
周辺領域Bでの回り作業における協調制御の開始時の親トラクタ1Pの停止点である切り返し走行開始点Pp1と子トラクタ1Cの停止点Pc0は、
図9に示すように、中央領域Aの耕耘作業の終了時の停止点である。なお、この実施形態では、周辺領域Bの作業幅は、トラクタ3台分であり、親トラクタ1Pの二周の回り作業走行と子トラクタ1Cの一周の回り作業走行が要求される。
【0040】
まず、親トラクタ1Pが、耕耘装置5を上昇させた状態(非作業状態)で、最外周の作業幅区域の切り返し点Pp2まで旋回前進を行い、その後ほぼ直線状の後進で、切り返し走行完了点Pp3に達する(
図10参照)。この切り返し走行完了点Pp3が回り作業走行の出発点となるので、ここで、耕耘装置5を下降させ(作業状態)、前進することで、直線状の回り作業走行が開始する。
【0041】
子トラクタ1Cの切り返し走行は、親トラクタ1Pとの干渉を避けるため、親トラクタ1Pが子トラクタ1Cの前方を過ぎるまで待つ必要があるが、その間に子トラクタ1Cの切り返し走行開始点Pc1と切り返し走行の目標となる切り返し点Pc2と切り返し走行完了点Pc3が算定される(
図12参照)。子トラクタ1Cの切り返し走行開始点Pc1までの走行は、中央領域Aにおける親トラクタ1Pを追従する作業走行と同じであるため、親トラクタ1Pと干渉しない場合は、子トラクタ1Cは、切り返し走行開始点Pc1まで前進し、そこで耕耘装置5を上昇させて、待機する。
【0042】
図11を用いて、子トラクタ1Cの切り返し走行の目標となる切り返し点Pc2と切り返し走行完了点Pc3の算定方法を説明する。親トラクタ1Pが耕耘装置5を下降させた位置、つまり回り作業走行の出発点(切り返し走行完了点)Pp3からの親トラクタ1Pの走行軌跡を、親トラクタ1Pと子トラクタ1Cとの作業幅の半分の距離だけ平行移動させた線を切り返し補助線として算定する。この切り返し補助線と回り作業領域Bの外縁との交点が子トラクタ1Cの切り返し走行完了点Pc3となる。子トラクタ1Cの切り返し走行開始点Pc1から切り返し旋回用切れ角で子トラクタ1Cが切り返し補助線上に達する位置を切り返し点Pc2として算定する。子トラクタ1Cの切り返し走行制御が開始されると、
図12に示すように、子トラクタ1Cは、耕耘装置5を上昇させた非作業状態で、切り返し走行開始点Pc1から切り返し点Pc2まで旋回前進し、その後、切り返し点Pc2から切り返し走行完了点Pc3まで後進する。当該後進は、切り返し走行完了点Pc3を走行目標位置として、直線的に行われる。切り返し走行完了点Pc3は回り作業走行の出発点となるので、この位置で耕耘装置5を下降させた作業状態で、親トラクタ1Pの走行軌跡から算定される走行目標位置に基づいて親トラクタ1Pを追従しながら、回り作業走行を行う。
【0043】
先行する親トラクタ1Pが次のコーナ領域の外周端まで作業走行すると、
図13に示すように、次いで、耕耘装置5を上昇させた非作業状態で、切り返し走行開始点Pp1まで後進する。ここから2回目の切り返し走行が開始する。つまり、この切り返し走行開始点Pp1から非作業状態で、切り返し点Pp2まで旋回前進する。次いで、回り作業領域Bの外縁まで後進して、停止する。この停止点が次の回り作業走行の出発点となるので、親トラクタ1Pは耕耘装置5を下降させた作業状態で、前進走行を始める。その際、この親トラクタ1Pの前進走行(回り作業走行)の走行軌跡を、親トラクタ1Pと子トラクタ1Cとの作業幅の半分の距離だけ平行移動させた線を、ここでの切り返し補助線として算定するともに、その切り返し補助線上に切り返し点Pc2を算定する。さらに、切り返し旋回用切れ角で当該切り返し点Pc2に到達できる切り返し走行開始点Pc1を算定しておく。
【0044】
次のコーナ領域に接近した子トラクタ1Cは、切り返し走行時に親トラクタ1Pと干渉しないように親トラクタ1Pが所定地点に達するまで待機する。その後、
図14に示すように、子トラクタ1Cは、切り返し走行開始点を超えてできるだけ回り作業領域Bの外縁まで作業状態のままで、前進する。次いで、耕耘装置5を上昇させた非作業状態で、切り返し走行開始点Pc1まで後進する。切り返し走行開始点Pc1からの切り返し走行は、前回の切り返し走行と同様に、切り返し点Pp2まで旋回前進する。次いで、回り作業領域Bの外縁まで後進して、停止する。この停止点が、回り作業走行の開始点なので、耕耘装置5を下降させた作業状態で、前進走行する。
【0045】
同様にして、回り作業領域Bの全てのコーナ部を経て一周回すると、この例では、回り作業領域Bの未作業地は親トラクタ1Pだけで行うことができるので、先に子トラクタ1Cは、圃場から退出する。
【0046】
〔別実施の形態〕
(1)上述した実施形態では、子トラクタ1Cは一台であったが、類似する制御方法で複数台の子トラクタ1Cにも本発明を適用することは可能である。その際、子トラクタ1Cが2台とすれば、2つの追従制御方法が可能である。その1つでは、第1の子トラクタ1
Cは、親トラクタ1Pの軌跡に基づいて親トラクタ1Pの作業幅を考慮して追従制御され、第2の子トラクタ1Cは、親トラクタ1Pの軌跡に基づいて、第1の子トラクタ1Cの
作業幅も考慮して追従制御される。他の1つでは、第1の子トラクタ1Cは、親トラクタ
1Pの軌跡に基づいて追従制御され、第2の子トラクタ1Cは、第1の子トラクタ1Cを
親トラクタ1Pとして追従制御される。つまり、子トラクタ1Cが複数台ある場合には、先行する子トラクタ1Cを、親トラクタ1Pとする追従制御も可能である。
(2)本発明による作業車協調システムでは、親トラクタ1Pと子トラクタ1Cの切り返し走行軌跡は、上述した実施形態における走行軌跡に限定されるわけではない。親トラクタ1Pの作業幅及び子トラクタ1Cの作業幅と、親トラクタ1Pの切り返し走行における切り返し走行開始点Pp1と切り返し点Pp2と切り返し走行完了点Pp3とを含む切り返し走行軌跡とから、子トラクタ1Cの切り返し走行開始点Pc1と切り返し点Pc2と切り返し走行完了点Pc3とが算定可能な種々の切り返し走行軌跡を採用することができる。また、親トラクタ1P及び子トラクタ1Cの切り返し点Pp2、Pc2は単一でも複数でもよい。
(3)上述した実施の形態では、親トラクタ1Pは有人操縦式であったが、この親トラクタ1Pも、プログラム制御方式やリモコン制御方式を採用して、無人運転することも可能である。本発明は、親トラクタ1P、つまり親作業車も無人運転される形態も対象としている。
(4)上述した実施形態では、作業車として耕耘装置5を搭載したトラクタを取り上げたが、耕耘装置5に代えて散布装置や施肥装置など他の作業装置を搭載しても、本発明の特徴を有効に利用することができる。さらにはその他の作業車、例えばコンバイン、田植機、芝刈機、除草機、ブルドーザなどの土木建設機械などにも本発明は適用可能である。また、親作業車と子作業車は同機種でなくてもよい、例えばコンバインと搬送トラックなどの組み合わせでもよい。
(5)対地作業装置が耕耘装置などの場合には、親作業幅と子作業幅との重なり長さであるオーバーラップは、基本的には必須であるが、散布装置や施肥装置などの場合、オーバーラップを設けずに、むしろ親作業幅と子作業幅との間に所定間隔をとる、いわゆるアンダーラップが設定される。したがって、本発明では、オーバーラップOLを設定することは必須ではなく、親作業車1Pと子作業車1Cの互いの経路間隔が所定範囲を保持するような追従制御の実現が要点である。