(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。本実施形態の紙幣取扱装置100は、銀行窓口に設置されたATMに実装され、入出金に伴う機器操作や紙幣投入等は窓口係員が行うことが想定されている。
【0010】
A:全体構成;
図1は本実施形態の紙幣取扱装置100の概略外観を示す説明図、
図2は紙幣取扱装置100を平面視して窓口係員Mと顧客Kに対する位置関係を概略的に示す説明図、
図3は紙幣取扱装置100の上部領域を概略的に斜視にて示す説明図である。
図1に示すように、紙幣取扱装置100は、その外観上、上下に区別され、下部領域を金庫110とし、当該金庫が有する筐体部112より上の上部領域を入出金機構部116とする。筐体部112は、金属製鋼板から形成され、
図1における紙面手前側に、開閉並びに施錠可能な金属製の金庫扉113を備え、この金庫扉113と共に金庫110を構成する。紙幣取扱装置100は、金庫扉113で閉じられた筐体部112に後述の紙幣識別部170や紙幣収納部200などを収容することで、紙幣収納部200に対するセキュリティーを確保している。
【0011】
入出金機構部116は、窓口係員により操作される操作パネル118を備えるほか、後述の入金部120と出金部140とを、
図1における紙面手前側から紙面奥側、即ち装置前面側から後面側に掛けて、隣接して備える。また、紙幣取扱装置100は、
図2に示すように、顧客応対テーブルDにて装置後面側が覆われ、入出金機構部116の入金部120と出金部140とを顧客Kに視認可能としている。この顧客Kによる視認の様子は、
図3に示されており、紙幣取扱装置100は、顧客Kの側から、入金部120と出金部140とをこの順に入出金機構部116に隣接して備える。
図2に示すように、窓口係員Mは、顧客応対テーブルDを挟んで顧客Kと対面し、操作パネル118の所定操作の他、顧客Kから預かった紙幣Bの入金部120への投入や出金部140に出金された紙幣の顧客Kへの受渡を行う。以下、紙幣取扱装置100の構成について詳述する。
【0012】
図4は紙幣取扱装置100の内部構成と紙幣搬送経路を概略的に断面視して示す説明図である。図示するように、紙幣取扱装置100は、既述した入出金機構部116には、紙幣Bの入金を受け付ける入金部120と紙幣Bを出金する出金部140とを隣接配置して備え、金庫110の筐体部112には、紙幣識別部170と搬送機構部180と紙幣収納部200とを収容して備える。こうして金庫110に収容された紙幣識別部170と紙幣収納部200は、筐体部112により、入出金機構部116の入金部120と出金部140から区画され、筐体部112において、紙幣識別部170が紙幣収納部200の上方側に位置する。
【0013】
入金部120は、出金部140よりも紙幣識別部170の側に配置され、この入金部120と隣接配置された出金部140は、入金部120の側に壁部141を備える。この壁部141は、出金部140の内部を入金部120の側で覆い、その上端の基部141bに蓋体141cを隔てて備える。蓋体141cは、出金部140の開口上端を覆うよう開閉自在とされ、出金部140に搬送されてきた出金紙幣の飛び出しを防止する。壁部141は、入金部120の開口上端までしか延びておらず、蓋体141cにあってもその幅が狭くされている。よって、壁部141および蓋体141cは、顧客応対テーブルDを隔てた顧客K(
図2参照)が入金部120の側から出金部140を眺める際の視線を遮らない。
【0014】
紙幣識別部170は、搬送機構部180が形成する後述の第1主搬送経路183(
図8参照)の一部経路を形成する。換言すれば、第1主搬送経路183は、紙幣識別部170を通過する。そして、この紙幣識別部170は、紙幣Bの金種種別の他、記番号、紙幣真偽、破損状況(リジェクト要否)等を、入出金の過程で第1主搬送経路183を搬送される紙幣Bについ
て識別する。紙幣識別部170による紙幣識別は、例えば、紙幣Bをスキャンして得られる画像データ、紙幣Bの表面の凹凸形状、磁気特性、紫外線などに対する光学特性など種々の情報を利用して行うことができる。紙幣識別部170の識別結果は、後述の制御部300に出力され、紙幣搬送先のカセットの決定、リジェクト搬送等に用いられる。
【0015】
搬送機構部180は、入金部120および出金部140から紙幣収納部200に掛けて、紙幣入金経路180INと紙幣出金経路180OUTとを形成する。この両経路の詳細については後述するが、
図4に示すように、紙幣入金経路180INは、入金部120から紙幣識別部170に到る上流側入金経路181を備える。紙幣出金経路180OUTは、紙幣識別部170から出金部140に到る下流側出金経路186を備える。これら経路を有する搬送機構部180は、上記の入出金経路にて入金部120と出金部140とを紙幣識別部170と紙幣収納部200とに接続して、紙幣を搬送する。紙幣収納部200は、紙幣収納カセット201〜205を備え、それぞれのカセットに後述するように紙幣Bを収納する。
【0016】
B:電気的構成;
図5は紙幣取扱装置100の制御ブロックを示す説明図である。紙幣取扱装置100は、電気的な機能ブロックとして、入金部120と、出金部140と、紙幣収納部200の紙幣収納カセット201〜205と、紙幣識別部170と、操作パネル118と、搬送機構部180と、制御部300とを備える。搬送機構部180は、後述するように、各カセットごとのゲート201bを初めとするゲート群と、紙幣搬送経路に複数設置した検知センサー188の検知センサー群と、紙幣搬送を担う複数の駆動モーター189の駆動モーター群とを備える。制御部300は、主制御部301と、メモリ302と、操作端末Pと通信することができる上位通信部3033とを有する。主制御部301は、主に制御用のマイクロプロセッサからなる。主制御部301は、後述の入金部120に含まれる紙幣送出・搬送に関与する駆動機器等の他、搬送機構部180のゲート群、駆動モーター群を、紙幣の入出金搬送に伴い駆動制御する。検知センサー群に含まれる検知センサー188は、後述の紙幣入金経路180INや紙幣出金経路180OUTにて紙幣搬送状態を検知するほか、入金部120や出金部140における紙幣有無、紙幣収納カセット201〜205における紙幣収納枚数等を検知し、その検知信号を制御部300に出力する。
【0017】
C:紙幣送出構成;
図6は入金部120において紙幣送出に関与するローラー構成を概略的に斜視にて示す説明図、
図7は入金部120から上流側入金経路181への紙幣送出に関与する主要なローラー構成を概略的に断面視して示す説明図である。
【0018】
図示するように、入金部120は、上端側が開放された開口凹部121を備える。開口凹部121は、受け付けた紙幣Bを傾斜底面壁に堆積して保持し、凹部周囲の側壁122と紙幣端部側壁123とで紙幣Bを取り囲む。また、入金部120は、紙幣端部側壁123の下端と開口凹部121の傾斜底面壁とで送出経路部124を構成し、この送出経路部124で開口凹部121をその底部コーナーにおいて上流側入金経路181(
図4参照)に接続する。入金部120は、開口凹部121の傾斜底面壁に、紙幣送出第1ローラー125と、紙幣送出第2ローラー126と、紙幣送出第3ローラー127をそれぞれ複数備える。これら各送出ローラーは、開口凹部121の傾斜底面からローラー周壁を突出させて、それぞれ回転する。入金部120は、上記の各送出ローラーを
図7に記した図中矢印方向に回転駆動して、開口凹部121に堆積済みの紙幣Bを、堆積下方側の紙幣Bから送出経路部124、延いてはこれに接続する上流側入金経路181(
図4参照)に一枚ずつ送り出す。紙幣送出第1ローラー125は、一部外周円弧の半径を他の円弧箇所の半径より大きくしているので、開口凹部121に堆積済みの紙幣Bを、上下動させつつ堆積下方側の紙幣Bから送出経路部124に送り出す。なお、入金部120は、
図6に示すように、紙幣送出第1ローラー125に並んで、真円状の紙幣送出第1補助ローラー125aを備える。
【0019】
この他、入金部120は、紙幣端部側壁123の下端側に、羽根車128を備える。この羽根車128は、
図6に示すように、紙幣端部側壁123において複数配設され、紙幣端部側壁123の開口123hから、羽根129の先端を開口凹部121の内部に突出させている。こうして突出した羽根129は、開口凹部121に保持された紙幣Bに対して接触可能とされている。この羽根車128は、後述の制御部300の制御を受けて、入金部120からの紙幣Bの送り出しに際して回転駆動し、その有する複数の羽根129を、開口凹部121で堆積した下方側の紙幣Bに、詳しくは紙幣Bの端部側に接触させる。本実施形態では、羽根車128を
図7に記した図中矢印方向に回転させるので、羽根129は、開口凹部121で堆積した下方側の紙幣Bの端部に、羽根129を紙幣堆積の上方側から下方側に掛けて接触させる。このため、開口凹部121で堆積した紙幣Bは、紙幣送出第1ローラー125を始めとする送出ローラーの回転と、羽根129の端部接触により、堆積下方側の紙幣Bから一枚ずつ、順次、送出経路部124に送出される。紙幣送出に当たり、開口凹部121で受け入れた紙幣Bが一枚であったり、堆積紙幣の最上部の紙幣Bが一枚残ることが有り得る。こうした一枚の紙幣Bが或いは数枚程度の紙幣Bが図示するように仮に屈曲して上記の第1、第2の紙幣送出ローラーと非接触となると、この紙幣Bは、紙幣先端を紙幣端部側壁123の外表面に接触させたまま停止姿勢を取り、開口凹部121に留まることがあり得る。本実施形態の入金部120は、こうした停止姿勢にある紙幣Bの紙幣端部に羽根129を上記したように接触させるので、紙幣Bは停止姿勢からその姿勢を変化させて、紙幣端部は開口凹部121の底部コーナーの側に押し付けられる。これにより、それまで停止姿勢にあったために送出ローラーと非接触であった紙幣Bは、紙幣送出第1ローラー125と紙幣送出第2ローラー126のいずれか、或いは両者に接触する。
【0020】
D:入出金経路構成;
図8は紙幣搬送経路の構成のうち入金搬送に関与する経路構成を概略的に説明する説明図、
図9は紙幣搬送経路の構成のうち出金搬送に関与する経路構成を概略的に説明する説明図である。
【0021】
図8に示すように、紙幣入金経路180INは、入金部120から延びて筐体部112を経由し、紙幣識別部170に到る。その後、紙幣入金経路180INは、紙幣識別部170の経路下流の方向転換ローラー180rで折り返し、紙幣識別部170より下方側に位置する紙幣収納部200の各カセットの並びに沿って紙幣収納カセット205まで延びる。こうした経路軌跡を有する紙幣入金経路180INは、入金部120から紙幣識別部170に到るまでを上流側入金経路181とし、当該経路より下流の経路を下流側入金経路182とする。搬送機構部180は、下流側入金経路182を、紙幣識別部170を通過して方向転換ローラー180rまで延びる第1主搬送経路183と、方向転換ローラー180rで折り返して水平方向に延びて紙幣収納部200の紙幣収納カセット205に到る第2主搬送経路184とで、形成する。そして、搬送機構部180は、入金部120に投入された紙幣Bを、上記した紙幣入金経路180INの経路に沿って入金搬送し、紙幣識別部170の識別結果に応じて紙幣収納カセット201〜205のいずれかに入金搬送する。
【0022】
紙幣収納部200が備える紙幣収納カセット201〜205のそれぞれは、第2主搬送経路184から分岐した分岐搬送路201a〜205aと、カセットへの紙幣投入・繰り出しを図るゲート201b〜205bを備える。ゲート201b〜205bは、制御部300の制御を受けて駆動し、紙幣入金経路180INを入金搬送されてくる紙幣Bを、紙幣識別部170での識別結果に応じて取り込むように駆動する。本実施形態では、紙幣収納カセット204を、破損紙幣等のレジェクト紙幣の回収カセットとしているので、入金搬送される紙幣Bは、紙幣収納カセット201〜203と紙幣収納カセット205のいずれかに入金される。入金搬送過程でのリジェクトについては後述する。なお、紙幣収納カセット204を、内部に紙幣の収納部を上下二段に積層した構成とし、上部の収納部を、紙幣を一時的に保管する一時収納部として用いる構成としても良い。
【0023】
図9に示すように、紙幣出金経路180OUTは、紙幣収納部200の紙幣収納カセット205から延びて方向転換ローラー180rに到り、当該ローラーにて折り返して紙幣識別部170に到る。紙幣出金経路180OUTは、紙幣識別部以降の経路を下流側出金経路186とする。そして、搬送機構部180は、この下流側出金経路186の経路を、既述した第1主搬送経路183と第2主搬送経路184との間において2度折り返し、第2主搬送経路184の一部経路部分を共有した後に、上昇経路を採る経路とし、筐体部112を経由して出金部140まで延びる。こうした経路軌跡を有する紙幣出金経路180OUTは、紙幣収納部200の紙幣収納カセット205から紙幣識別部170に到るまでを上流側出金経路185とし、当該経路より下流で上記した折り返しを有する経路を下流側出金経路186とする。搬送機構部180は、上流側出金経路185を、既述した第2主搬送経路184と第1主搬送経路183とで、形成する。搬送機構部180は、紙幣収納部200の紙幣収納カセット201〜205から分岐搬送路201a〜205aおよびゲート201b〜205bにより繰り出された紙幣Bを、上記した紙幣出金経路180OUTの経路に沿って出金部140まで出金搬送する。搬送機構部180は、こうした出金搬送を行うに当たり、第1主搬送経路183と第2主搬送経路184とを入金搬送と共通して用いることから、制御部300の制御下で、後述するように紙幣搬送方向の反転(所定の駆動モーター189の逆転制御)を行って紙幣出金経路180OUTでの紙幣Bの出金搬送を行う。つまり、搬送機構部180は、第1主搬送経路183と第2主搬送経路184とにおいて、紙幣Bを双方向に搬送する。こうした入出金搬送を行うに当たり、搬送機構部180は、上記の各経路の適宜箇所に複数の後述の搬送駆動ローラー・従動ローラー対と複数の駆動モーター189と複数の検知センサー188とを備える。それぞれの検知センサー188は、センサー設置箇所での紙幣Bの通過状況を検知して、その検知結果を制御部300に出力する。制御部300は、検知センサー188の検知信号や紙幣識別部170の識別結果を受け取り、駆動モーター189やゲート201bの制御を経て、上記した入出金搬送制御を行う。
【0024】
E:入出金経路のローラー構成;
図10は上流側入金経路181と下流側出金経路186におけるローラー配置の様子とこれに伴う入出金経路形成の様子を概略的に示す説明図である。
【0025】
図示するように、搬送機構部180は、入金部120から紙幣識別部170まで延びる上流側入金経路181の経路に沿って、第1から第4の駆動ローラー151〜154を備える。それぞれの駆動ローラーは、向かい合う従動ローラーと対となり、ローラー間に挟み込んだ紙幣Bを上流側入金経路181に沿って入金搬送する。第1駆動ローラー151は、入金部120と上流側入金経路181を接続する送出経路部124の経路下流において、上流側入金経路181での紙幣入金搬送に関与する。そして、この第1駆動ローラー151は、筐体部112の貫通孔112hの孔内に位置する。
【0026】
上流側入金経路181は、貫通孔112hにおける第1駆動ローラー151と第2駆動ローラー152とを経て入金部120からほぼ鉛直下方に延び、第3駆動ローラー153で水平方向に折り返して紙幣識別部170における第1主搬送経路183に接続する。第3駆動ローラー153の周囲には、ゲート150が配設されている。ゲート150は、制御部300の制御を受けて駆動し、紙幣入金搬送時に上流側入金経路181に沿った紙幣搬送に切り替える。また、ゲート150は、紙幣出金搬送時にあっては、下流側出金経路186に沿った紙幣搬送に切り替える。搬送機構部180は、上記した各駆動ローラーを複数の駆動モーター189の適宜なモーターで駆動する。後述の下流側出金経路186における駆動モーターについても同様である。
【0027】
この他、搬送機構部180は、紙幣識別部170から出金部140まで既述したように折り返し経路で延びる下流側出金経路186の経路に沿って、第4駆動ローラー154と第3駆動ローラー153に加え、第5から第12の駆動ローラー155〜162を備える。第10駆動ローラー160は、第2駆動ローラー152から掛け渡された無端ベルト160bにより第2駆動ローラー152の駆動力が伝達され、第2駆動ローラー152と共に駆動する。下流側出金経路186における上記の駆動ローラーにあっても、向かい合う従動ローラーと共に紙幣Bを下流側出金経路186に沿って出金搬送する。第11駆動ローラー161は、下流側出金経路186での紙幣出金搬送に関与し、第1駆動ローラー151と同様、筐体部112の貫通孔112hの孔内に位置する。紙幣取扱装置100は、第1駆動ローラー151と第11駆動ローラー161を貫通孔112hにおいて異なる高さで配設して備える。
【0028】
下流側出金経路186は、紙幣識別部170において第1主搬送経路183と接続した上で、第4駆動ローラー154と第3駆動ローラー153とを経て紙幣識別部170からほぼ水平に延びる。その後、下流側出金経路186は、第5駆動ローラー155で紙幣識別部170の側に戻るよう斜めに折り返し(第1折り返し)、第6駆動ローラー156を経て第7駆動ローラー157に達する。そして、この第7駆動ローラー157で再度、折り返して(第2折り返し)水平方向に延び、この最下方の一端側の第2の折り返し以降の経路、具体的には第7駆動ローラー157と第8駆動ローラー158との間の経路を、上流側出金経路185(
図9参照)における第2主搬送経路184の一部経路と共有する。下流側出金経路186は、第8駆動ローラー158で経路方向を斜め上方とし、第9駆動ローラー159と第10駆動ローラー160との間でほぼ垂直に立ち上がって、第2駆動ローラー152に到る。その後、下流側出金経路186は、貫通孔112hにおける第11駆動ローラー161と第12駆動ローラー162を経て出金部140に到る。つまり、搬送機構部180は、貫通孔112hにおいて、上流側入金経路181と下流側出金経路186とを対向させて備え、上流側入金経路181での紙幣入金搬送に関与する第2駆動ローラー152を、下流側出金経路186での紙幣出金搬送にも関与させ、第2駆動ローラー152を紙幣入金搬送と紙幣出金搬送に共有して用いる。しかも、第2駆動ローラー152は、対向する上流側入金経路181と下流側出金経路186の間に位置することから、同一方向の回転駆動により、上流側入金経路181では入金搬送方向に紙幣Bを搬送し、下流側出金経路186では出金搬送方向に紙幣Bを搬送する。
【0029】
紙幣収納部200のカセットから繰り出された紙幣Bの出金搬送は、紙幣収納部200からの上流側出金経路185に含まれる第2主搬送経路184と第1主搬送経路183を紙幣Bが通過する状況と、上流側出金経路185を通過後に下流側出金経路186を紙幣Bが通過する状況とで、下流側出金経路186の最下端側の第2の折り返し以降で共有した一部経路における紙幣Bの搬送方向を反転してなされる。以下、この点について説明する。
【0030】
F:出金搬送制御;
図11は紙幣出金経路180OUTにおける紙幣Bの出金搬送の様子と搬送方向の反転の様子とを示す説明図である。なお、この
図11には、搬送経路に重ねて搬送過程の紙幣Bを示しているが、実際の経路長や紙幣長さに対応しているわけでは無く、搬送経路と紙幣搬送の様子を概略的に示している。
【0031】
図11の上段に示すように、紙幣出金経路180OUTに、例えば紙幣収納カセット205から繰り出されたna枚の紙幣B(紙幣B1〜Bna)が搬送過程にある状況下では、最先に紙幣出金経路180OUTで出金搬送される紙幣B1は、上流側出金経路185の第1主搬送経路183において、紙幣識別部170まで到達していない。この状態では、第1主搬送経路183に含まれるそれぞれの駆動ローラー(図視略)と、第7駆動ローラー157および第8駆動ローラー158を含む第2主搬送経路184におけるそれぞれの駆動ローラー(図示略)とは、いずれの駆動ローラーにあっても、最先の紙幣B1の搬送時から継続して出金搬送方向に回転駆動する。また、下流側出金経路186に含まれる第4駆動ローラー154とその下流側の各駆動ローラーは、第7駆動ローラー157と第8駆動ローラー158を除き、最先の紙幣B1の搬送時から継続して出金搬送方向に向けて回転駆動する。この際、各駆動ローラーを駆動する駆動モーター189は、制御部300にて逆回転駆動制御される。なお、下流側出金経路186には、この時点では、紙幣Bが一枚も搬送されていないので、第7駆動ローラー157と第8駆動ローラー158を除く下流側出金経路186の各駆動ローラーを、停止させておくようにしてもよい。
【0032】
紙幣収納カセット205からの紙幣繰り出しと繰り出された紙幣の出金搬送が進むと、
図11の下段に示すように、やがて最先の紙幣B1は紙幣識別部170に到達し、この状態では、紙幣出金経路180OUTの上流側出金経路185には、n枚の紙幣Bが搬送過程にあり、最後の紙幣Bnは、第7駆動ローラー157と第8駆動ローラー158の搬送駆動力を受ける範囲から既に出金搬送済みである。こうなると、出金搬送過程にあるn枚の内の所定枚数の紙幣Bが第2主搬送経路184から第1主搬送経路183に達したことになるので、制御部300は、下流側出金経路186の最下段の折り返し経路での紙幣搬送に関与する第7駆動ローラー157と第8駆動ローラー158だけを、紙幣Bの搬送方向が反転するように、駆動制御する。両駆動ローラーの駆動モーター189については、制御部300にて正回転駆動制御に切り替わる。この搬送方向反転により、第4駆動ローラー154を始めとして下流側出金経路186に含まれる総ての駆動ローラーは、出金搬送方向に回転駆動する。これにより、紙幣識別部170を通過した紙幣Bは、最先の紙幣B1から最後の紙幣Bnまで、順次、下流側出金経路186を出金搬送され、出金部140に出金される。そして、最後の紙幣Bnが下流側出金経路186を通過した上で第8駆動ローラー158の搬送駆動力を受ける範囲から出金搬送されると、制御部300は、次のn枚の紙幣Bの出金搬送に備え、第7駆動ローラー157と第8駆動ローラー158とを、紙幣Bの搬送方向が反転して出金搬送方向に戻るように、駆動制御する。最後の紙幣Bnまでの紙幣枚数や第2主搬送経路184から第1主搬送経路183に達したことになる紙幣枚数は、第1主搬送経路183と第2主搬送経路184を含む上流側出金経路185の経路長と紙幣長さにより定まり、所定枚数として予め設定されている。なお、
図11の上段に示す状態において、第7駆動ローラー157と第8駆動ローラー158を除く下流側出金経路186の各駆動ローラーを停止させておいた場合には、最初の紙幣B1が紙幣識別部170に到達した時点で、出金搬送方向に駆動すればよい。
【0033】
上記した出金搬送において、方向転換ローラー180rの側の紙幣収納カセット203や紙幣収納カセット201〜202から繰り出された紙幣Bは、カセットからの繰り出しの際は元より第2主搬送経路184での出金搬送に際し、第7駆動ローラー157と第8駆動ローラー158の搬送駆動力を受けない。よって、紙幣収納カセット201〜203からだけの紙幣出金に際しては、制御部300は、第7駆動ローラー157と第8駆動ローラー158を含め、上流側出金経路185と下流側出金経路186の各駆動ローラーを出金搬送方向側に回転制御する。
【0034】
G:入金時のリジェクト搬送制御;
図12は紙幣入金経路180INにおける紙幣Bの入金搬送の様子とリジェクト紙幣の出金搬送の様子とを示す説明図である。なお、この
図12にあっても、
図11と同様に搬送経路に重ねて搬送過程の紙幣Bを示しているが、実際の経路長や紙幣長さに対応しているわけでは無く、搬送経路と紙幣搬送の様子を概略的に示している。
【0035】
図12の上段に示すように、紙幣入金経路180INにて複数枚の紙幣Bが入金搬送されている場合、キズ、破損等があるリジェクト紙幣Br(払い戻し紙幣)が入金された状況下では、このリジェクト紙幣Brとその後に続く紙幣B2〜Bnの各紙幣は、いずれも下流側入金経路182において入金搬送の状態にある。つまり、この状態では、上流側入金経路181と下流側入金経路182の紙幣入金経路180INに含まれる総ての駆動ローラーは、最先の紙幣搬送時から継続して入金搬送方向に向けて回転駆動する。そして、
図12の下段に示すように、リジェクト紙幣Brが第7駆動ローラー157に到達すると、制御部300は、第8駆動ローラー158の下流のゲート205bを下流側出金経路186の側に切り替えると共に、下流側出金経路186に含まれる第9駆動ローラー159とその下流側の第9駆動ローラー159以降の駆動ローラーの出金搬送側への駆動を開始する。この際、制御部300は、上流側入金経路181に含まれる駆動ローラーについては、第3駆動ローラー153と第4駆動ローラー154を含め、継続的に入金搬送側に駆動する。こうすることで、リジェクト紙幣Brは、下流側出金経路186の後半経路に沿って搬送され、出金部140に出金されると共に、こうしたリジェクト紙幣出金と並行して、紙幣の入金搬送が継続される。なお、リジェクト紙幣Brの前に入金された図における紙幣B1やリジェクト紙幣Brの後に入金された紙幣B2〜Bnは、金種に応じて紙幣収納カセット201〜203、紙幣収納カセット205に搬送収納される。また、制御部300は、紙幣識別部170からの識別信号によりリジェクト紙幣Brであるとされた紙幣の入金搬送位置を、紙幣識別部170からの識別信号入力からの経過時間から算出し、既述したようなゲート切替や駆動ローラー制御を行う。
【0036】
H:紙幣充填搬送制御;
図13は下流側出金経路186を下流側入金経路182と併用してカセットへの紙幣充填搬送の様子を示す説明図である。なお、この
図13にあっても、
図11と同様に搬送経路に重ねて搬送過程の紙幣Bを示しているが、実際の経路長や紙幣長さに対応しているわけでは無く、搬送経路と紙幣搬送の様子を概略的に示している。
【0037】
本実施形態の紙幣取扱装置100では、金庫扉113に最も近い紙幣収納カセット205を、他のカセットへの紙幣充填用に取替装着可能とする。例えば、紙幣収納カセット205を始めとする紙幣収納カセット201〜203からの紙幣出金が進むと、カセット収納済み紙幣は枯渇する。こうした場合に、紙幣収納カセット205を取り外して、紙幣収納カセット201〜203に必要な充填紙幣を収納した状態で再装着し、この紙幣収納カセット205から紙幣充填を行う。こうした紙幣充填では、制御部300は、紙幣収納カセット205から第2主搬送経路184に繰り出した紙幣Bを、第8駆動ローラー158と第7駆動ローラー157とでゲート163まで搬送し、このゲート163の経路切替により、繰り出し紙幣Bを下流側出金経路186に導く。制御部300は、下流側出金経路186に含まれる駆動ローラーを出金搬送時と反転して回転制御するので、紙幣収納カセット205からの繰り出し紙幣Bは、第3駆動ローラー153と第4駆動ローラー154を経て紙幣識別部170に到り、それ以降においては、紙幣入金経路180INの下流側入金経路182に沿って搬送される。制御部300は、紙幣識別部170からの識別信号を受け取り、下流側入金経路182を搬送されつつある紙幣Bを紙幣収納カセット201〜203のいずれかに搬送して収納する。なお、紙幣収納カセット205の紙幣は銀行管理部にて収納された充填用紙幣であるので、リジェクト紙幣が含まれていることは想定されない。よって、紙幣収納カセット204は、充填対象から除外される。
【0038】
I:回収搬送制御;
図14は紙幣出金経路180OUTを用いて紙幣を回収する紙幣回収搬送の様子を示す説明図である。なお、この
図14にあっても、
図11と同様に搬送経路に重ねて搬送過程の紙幣Bを示しているが、実際の経路長や紙幣長さに対応しているわけでは無く、搬送経路と紙幣搬送の様子を概略的に示している。
【0039】
本実施形態の紙幣取扱装置100では、金庫扉113に最も近い紙幣収納カセット205を、他のカセットからの紙幣回収の際にも取替装着する。例えば、紙幣収納カセット201〜203への紙幣入金が進むと、カセット内は収納済み紙幣で満杯となる。こうした場合に、紙幣収納カセット201〜203から紙幣収納カセット205に紙幣を回収して、その紙幣収納カセット205ごと、紙幣を銀行内の紙幣管理庫に回収する。こうした紙幣回収では、制御部300は、紙幣収納カセット201〜203の各カセットから第2主搬送経路184に繰り出した紙幣Bを、上流側出金経路185に沿って紙幣識別部170まで搬送し、紙幣識別部170からは、下流側出金経路186に沿ってゲート163まで導く。この際、制御部300は、第7駆動ローラー157と第8駆動ローラー158を除く上流側出金経路185の各駆動ローラーと、下流側出金経路186に含まれる各駆動ローラーとを出金搬送の方向に駆動し、第7駆動ローラー157におけるゲート163については、下流側出金経路186から第2主搬送経路184への紙幣搬送側に切り替える。また、制御部300は、紙幣識別部170からの識別信号を受け取り、下流側出金経路186を出金搬送方向に搬送されつつある紙幣Bのうち、リジェクト紙幣Brについてはこれを紙幣収納カセット204に搬送収納し、正常な紙幣Bについては、金種を問わず、紙幣収納カセット205に総て搬送して収納する。紙幣収納カセット205が紙幣で満杯となれば、当該カセットは取り外されて、収納済み紙幣が回収される。
【0040】
以上説明した構成を備える本実施形態の紙幣取扱装置100は、入金部120と出金部140を除く紙幣識別部170および紙幣収納部200を金庫110の筐体部112に収容した上で、筐体部112を通過した紙幣収納部200への入金搬送と紙幣収納部200からの出金搬送を図る。これにより、本実施形態の紙幣取扱装置100は、紙幣収納部200に収納した紙幣Bに対するセキュリティーを確保する。その上で、本実施形態の紙幣取扱装置100は、入金部120と上流側入金経路181とを接続する送出経路部124への紙幣Bの送り出しに際し、入金部120に保持済みの紙幣Bに送出経路部124の側で羽根車128の羽根129を接触させる。このため、
図7に示すように、折癖や紙幣曲がりのために紙幣送出第1ローラー125等の紙幣送出ローラーと非接触で紙幣先端を紙幣端部側壁123の外表面に接触させたまま紙幣Bが開口凹部121に留まったとしても、こうした紙幣Bへの羽根129の接触により紙幣Bをその端部において開口凹部121の底部コーナーの側に押し付ける。この押し付けにより、開口凹部121に留まって停止姿勢にあった紙幣Bは、紙幣送出第1ローラー125と紙幣送出第2ローラー126のいずれか、或いは両者に接触することになる。よって、本実施形態の紙幣取扱装置100によれば、開口凹部121に留まっていた紙幣Bを送出経路部124に、延いては送出経路部124が接続した上流側入金経路181に確実に送り出すことができ、入金部120からの紙幣Bの送出性を高める。
【0041】
本実施形態の紙幣取扱装置100は、紙幣識別部170が含まれる第1主搬送経路183の経路上流から筐体部112を通過して出金部140に到る下流側出金経路186を形成するに当たり、次のようにした。まず、本実施形態の筐体部112において紙幣識別部170と紙幣収納部200を上下に配置する。その上で、本実施形態の紙幣取扱装置100は、
図10に示すように、紙幣識別部170を通過する第1主搬送経路183と、この第1主搬送経路183の経路下流から折り返して紙幣収納部200に到る第2主搬送経路184との間において、複数の折り返しを経て下流側出金経路186を形成し、この下流側出金経路186にて紙幣識別部170より経路下流側の紙幣搬送(出金搬送)を行う。このため、本実施形態の紙幣取扱装置100によれば、下流側出金経路186が複数の折り返し経路を有する分、少なくとも紙幣取扱装置100の装置高さ寸法を短寸化できると共に、下流側出金経路186の経路長を確保できる。こうした装置高さの短寸化により入金部120の設置高さを低くできるので、窓口係員M(
図2参照)は、入金部120への紙幣Bの投入を腕の小さな上下動作で遂行できるので、係員の身体的な負荷を軽減できる。
【0042】
本実施形態の紙幣取扱装置100は、羽根129を開口凹部121に保持済みの紙幣Bに接触させるに当たり、羽根車128を、
図7に示すように、紙幣Bに羽根129が紙幣堆積の上方側から下方側に掛けて接触するように駆動する。よって、本実施形態の紙幣取扱装置100によれば、開口凹部121で留まっていた紙幣Bを、たとえ単枚であっても、より確実に開口凹部121の底部コーナー側に押し付けることができるので、入金部120からの紙幣Bの送出性をより一層高めることができる。
【0043】
本実施形態の紙幣取扱装置100は、入金部120を出金部140よりも紙幣識別部170の側に配置することで、入金部120を顧客Kの側に位置させる(
図2参照)。よって、本実施形態の紙幣取扱装置100によれば、顧客Kと対面する窓口係員Mが入金部120に紙幣投入を行う際、把持した紙幣Bを入金部120に直接投入できるので、紙幣投入動作を簡便化できる。より具体的には、窓口係員Mは、顧客Kが顧客応対テーブルDに載置した紙幣B(
図3参照)を把持して、紙幣載置箇所から入金部120に紙幣Bを直接投入できる。この他、窓口係員Mは、入金搬送の際に出金部140にリジェクトされた紙幣Bを出金部140から入金部120に再投入したり、通常業務における紙幣計数の際に出金部140の側から入金部120に紙幣計数のための紙幣投入を行う場合がある。本実施形態の紙幣取扱装置100は、出金部140と入金部120との間の壁部141を入金部120の開口上端までしか延ばさず、この壁部141に設けた蓋体141cについてもその幅を狭くした。よって、上記した紙幣再投入や紙幣計数のための紙幣投入を行いやすくできる。これに加え、壁部141の上端における蓋体141cの隔たりを経て出金部140から入金部120に紙幣を再投入することも可能であるので、出金部140の側からの入金部120への紙幣投入の自由度が高まる。こうした出金部140の側からの入金部120への紙幣投入は、
図2において、蓋体141cを図中上下に避けるように行うことも可能であり、蓋体141cの幅が狭いことから、蓋体141cを避けるような紙幣投入も容易となる。
【0044】
本実施形態の紙幣取扱装置100は、入金部120と出金部140とを隣接配置した上で、出金部140における入金部120の側の壁部141を入金部120の開口上端までしか延ばさず、この壁部141に設けた蓋体141cについてもその幅を狭くした。これにより、次の利点もある。まず、入金部120を紙幣識別部170の側に配置して顧客Kの側に位置させるので、入金部120の側に位置する顧客Kに対して、入金部120での紙幣投入状況を直接視認させることができる。これに加え、入金部120の開口上端までしか延びていない壁部141や、所定の隔たりを持って配設された幅の狭い蓋体141cは、入金部120の側に位置する顧客Kに対して、出金部140における通常の紙幣出金状況や入金リジェクト紙幣の出金状況も直接視認させる。よって、本実施形態の紙幣取扱装置100によれば、紙幣入出金に立ち会う顧客Kに対して、紙幣取扱に対する安心感を付与できる。
【0045】
本実施形態の紙幣取扱装置100は、
図7に示すように、入金部120における紙幣保持を上端側が開放された開口凹部121で行い、この開口凹部121の底部において、羽根車128による羽根129の紙幣接触を図る。よって、本実施形態の紙幣取扱装置100によれば、入金部120への窓口係員Mによる紙幣Bの投入を簡便化できると共に、紙幣の投入枚数の多少に関わらず、羽根129を確実に紙幣に接触させることができる。
【0046】
本実施形態の紙幣取扱装置100は、紙幣識別部170から出金部140に到る下流側出金経路186を形成するに当たり、
図10に示すように、複数の折り返し経路うちの一端側の折り返し経路を第2主搬送経路184の一部経路と共有する。よって、本実施形態の紙幣取扱装置100によれば、経路共有の分だけ、装置高さをより短寸化できる。その上で、本実施形態の紙幣取扱装置100は、共有した一部経路を第7駆動ローラー157と第8駆動ローラー158の正逆駆動制御により双方向の紙幣搬送を可能とする。これにより、本実施形態の紙幣取扱装置100によれば、紙幣収納部200の各カセットからの出金搬送を支障なく行うことができる。
【0047】
本実施形態の紙幣取扱装置100は、紙幣収納部200から出金部140に到る紙幣出金経路180OUTでの出金搬送を次のように行う。まず、紙幣取扱装置100は、紙幣収納部200の紙幣収納カセット201〜205から紙幣Bを第2主搬送経路184に繰り出して、紙幣Bを第2主搬送経路184にて出金搬送する。この紙幣繰り出し・出金搬送を繰り返し、第2主搬送経路184を出金搬送されたn枚の紙幣Bの内の所定枚数の紙幣Bが第2主搬送経路184から第1主搬送経路183に達すると(
図11下段参照)、下流側出金経路186と第2主搬送経路184とで共有した一部経路での搬送方向を、第7駆動ローラー157と第8駆動ローラー158の回転方向を出金搬送時と逆方向とすることで、反転する。これにより、本実施形態の紙幣取扱装置100によれば、駆動ローラーの正逆駆動制御を経た双方向の紙幣搬送に際しての出金搬送の一時停止が不要となるので、出金搬送能力の維持、或いは向上も可能となる。
【0048】
本実施形態の紙幣取扱装置100は、入金部120から紙幣識別部170までの上流側入金経路181と紙幣識別部170から出金部140までの下流側出金経路186における出金搬送とを、両経路が通過する筐体部112の貫通孔112hにおいて対向させた上で(
図10山椒)、上流側入金経路181での入金搬送に供する第2駆動ローラー152を、下流側出金経路186での出金搬送に供する駆動ローラーとして共有して用いる。よって、本実施形態の紙幣取扱装置100によれば、上流側入金経路181と下流側出金経路186の設置スペースの省スペース化、延いては装置のコンパクト化を図ることができる。
【0049】
本実施形態の紙幣取扱装置100は、上流側入金経路181と下流側出金経路186とが対向する貫通孔112hにおいて、
図10に示すように、上流側入金経路181での入金搬送に関与する第1駆動ローラー151と、下流側出金経路186での出金搬送に関与する第11駆動ローラー161とを、異なる高さで配設した。よって、本実施形態の紙幣取扱装置100によれば、上流側入金経路181と下流側出金経路186の設置スペースの省スペース化をより促進できる。
【0050】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部または全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0051】
上述の実施形態において、羽根129の紙幣への接触を羽根車128の回転駆動にて行うようにしたが、こうした構成に限らない。
図15は羽根129を紙幣Bに接触させる他の実施形態を概略的に示す説明図である。
図15に示すように、この実施形態の入金部120は、羽根129を図中矢印方向に揺動自在に保持し、アクチュエーター128aにて、この羽根129を揺動駆動する。この実施形態の入金部120を備える紙幣取扱装置100にあっても、羽根129の揺動により、この羽根129を紙幣端部に接触させるので、既述した効果を奏することができる。
【0052】
上述の実施形態の紙幣取扱装置100では、羽根129を有する羽根車128の回転駆動による紙幣Bへの羽根129の接触を図る紙幣接触構成と、下流側出金経路186を折り返し経路とした上でその折り返し経路を第2主搬送経路184と共有する経路共有構成とを備えるが、上記の紙幣接触構成と経路共有構成のいずれかを採るようにしてもよい。
【0053】
次に、他の実施形態について説明する。
図16は他の実施形態の紙幣取扱装置100Aの概略外観を示す説明図、
図17は紙幣取扱装置100Aを平面視して窓口係員Mと顧客Kに対する位置関係を概略的に示す説明図、
図18は紙幣取扱装置100Aの上部領域を概略的に斜視にて示す説明図である。この紙幣取扱装置100Aでは、入金部120と出金部140との間の壁部141の配設の様子が相違する。図示するように、この実施形態の紙幣取扱装置100Aは、先の紙幣取扱装置100と同様に入金部120と出金部140とを隣接して備え、壁部141については、これを、出金部140の内部を入金部120の側で覆った上で、入金部120よりも高く突出させている。そして、出金部140は、
図18に示すように、壁部141の上端縁に開口142を備え、開口142の両側の上端縁に蓋体141cを備える。この開口142は、壁部141の上端の中央からその両側に掛けて凹形状に大きく開口し、顧客応対テーブルDを隔てた顧客K(
図17参照)が出金部140を眺める際の視線を遮らない。蓋体141cは、出金部140の開口上端を覆うよう開閉自在とされ、出金部140に搬送されてきた出金紙幣の飛び出しを防止する。
【0054】
この実施形態の紙幣取扱装置100Aにあっても、先の紙幣取扱装置100と同様に入金部120を顧客Kの側に位置させることで(
図17参照)、顧客Kと対面する窓口係員Mが入金部120に紙幣投入を行う際、把持した紙幣Bを入金部120に直接投入でき、紙幣投入動作を簡便化できる。より具体的には、窓口係員Mは、顧客Kが顧客応対テーブルDに載置した紙幣B(
図18参照)を把持して、紙幣載置箇所から入金部120に紙幣Bを直接投入できる。この他、この実施形態の紙幣取扱装置100Aによれば、開口142を壁部141の上端中央からその両側に大きく開口させることで、既述した紙幣再投入や計数のための紙幣投入を行いやすくできる。
【0055】
この実施形態の紙幣取扱装置100Aは、入金部120と出金部140とを隣接配置した上で、出金部140における入金部120の側の壁部141を入金部120よりも高く突出させ、この壁部141の上端に開口142を設けた(
図18参照)。よって、この実施形態の紙幣取扱装置100Aによれば、入金部120の側に位置する顧客Kに対して、先の紙幣取扱装置100と同様に、入金部120での紙幣投入状況を直接視認させることができると共に、開口142を通して、出金部140における通常の紙幣出金状況や入金リジェクト紙幣の出金状況も直接視認させることができる。こうすることで、紙幣入出金に立ち会う顧客Kに対して、紙幣取扱に対する安心感を付与できる。