(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189801
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】エレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20170821BHJP
B66B 5/02 20060101ALI20170821BHJP
B66B 1/34 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B5/02 S
B66B1/34 C
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-151171(P2014-151171)
(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公開番号】特開2016-23084(P2016-23084A)
(43)【公開日】2016年2月8日
【審査請求日】2016年6月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂井 和道
(72)【発明者】
【氏名】内山 祐作
(72)【発明者】
【氏名】中川 公人
【審査官】
三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/100802(WO,A1)
【文献】
特開2001−261251(JP,A)
【文献】
特開2002−211847(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/34
B66B 5/00
B66B 5/02
B66B 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごが戸開状態のまま走行することを防止する戸開走行保護装置が、昇降路に配置された制御盤の上部に設けられたエレベータにあって、
前記制御盤は、前記昇降路のピット内の専門技術者がアクセス可能な位置に配置されており、
前記戸開走行保護装置と前記制御盤の内部に設けられた制御装置とを接続するコネクタに前記戸開走行保護装置との接続に代えて接続され、専門技術者が携行し前記乗りかごの低速運転のみを可能にさせる復旧専用コネクタを設けたことを特徴とするエレベータ。
【請求項2】
前記コネクタは、前記制御盤の最上部と最下部の少なくとも1以上の位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記コネクタは、前記制御盤の前記乗りかごによって同時に覆われることがない部位に複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は
、戸開走行保護装置を備えたエレベー
タに関す
る。
【背景技術】
【0002】
エレベー
タの戸開走行保護装置は、戸開走行を検知した場合と、戸開走行保護装置自身が故障した場合においてもエレベータの動力を遮断し起動不能状態を保持する機能を有している。この場合、専門技術者によるエレベータ及び戸開走行保護装置の復旧作業が必要となるが、種々の保守点検作業を行なうにあたってはこの仕様については改善の余地があった。
【0003】
従来この問題の解決策として、エレベータの乗りかごの戸開走行条件の発生を検出した際に前記乗りかごの起動不能(制止)状態を維持する機能を、保守点検作業における戸開走行保護装置の制御盤カバー脱着作業に連動して解除または復帰するようにした技術が特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−184052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術の方式では、制御盤カバーの脱着作業は専門技術者だけでなく、誰もが可能な作業であり、解除する条件が制御盤カバーの脱着のみである場合、意図せず解除されてしまうという問題があった。
【0006】
また、戸開走行保護装置がエレベータシャフト(昇降路)内のピットから簡単にアクセスできない高所などの位置に設置されている場合、戸開走行保護装置が故障してエレベータが起動不能となった時の乗りかごの位置によっては、戸開走行保護装置へのアクセスが困難となり、故障復旧までに多大な時間を要する可能性があるという問題があった。
【0007】
本発明では、上記課題を解決するために、戸開走行保護装置の設置位置によらず、専門技術者のみが実施可能な作業でエレベータを一時的に低速運転可能とすることで、専門技術者が早期
に復旧
させることができるエレベー
タを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明は、
乗りかごが戸開状態のまま走行することを防止する戸開走行保護装置
が、昇降路に配置された制御盤の上部に設け
られたエレベータに
あって、
前記制御盤は、前記昇降路のピット内の専門技術者がアクセス可能な位置に配置されており、前記戸開走行保護装置と前記制御盤
の内部に設けられた制御装置とを接続するコネクタ
に前記戸開走行保護装置との接続に代えて接続され、専門技術者が携行し前記乗りかごの低速運転のみを可能
にさせる復旧専用コネクタを
設けたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記コネクタは、前記制御盤の最上部と最下部の少なくとも1以上の位置に設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記コネクタは、前記制御盤の前記乗りかごによって同時に覆われることがない部位に複数設けられていることを特徴とする。
【0011】
これらの特徴により、戸開走行保護装置が動作したり、戸開走行保護装置が故障した状況おいても、保守員は乗りかごを低速運転で移動させることが可能となり、戸開走行保護装置がアクセスが難しい位置に設置されていても、乗りかご上からアクセスできるように乗りかごを移動できるため、戸開走行保護装置の復旧を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエレベー
タによれば、戸開走行保護装置が動作または故障してエレベータが起動できなくなっている状態においても、専門技術者による低速運転操作のみを実施可能とできるため、短時間でエレベー
タの復旧作業を実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係るエレベータの
一実施形態の概略構成例を示す図である。
【
図2】本
実施形態に係る戸開走行保護装置とエレベータ動力電源の関連の一例を示す概略図である。
【
図3】本
実施形態に係る一時的に低速運転を実施可能とする装置の一例を示す図である。
【
図4】本
実施形態に係る
図3に示す装置の動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るエレベー
タを実施するための形態を
図1〜
図4に基づき説明する。
【0015】
図1は本発明に係るエレベータの
一実施形態の概略構成例を示す図、
図2は本
実施形態に係る戸開走行保護装置とエレベータ動力電源の関連の一例を示す概略図、
図3は本
実施形態に係る一時的に低速運転を実施可能とする装置の一例を示す図、
図4は本
実施形態に係る
図3に示す装置の動作フローを示す図である。
【0016】
図1の
本実施形態に係るエレベータの概略構成例においては、機械室レスタイプのエレベータの一般的な機器の配置を示している。一般に、機械室レスタイプのエレベータにおいては、エレベータ制御盤1は、専門技術者がエレベータが設置されている昇降路9の最下部のピット10の床面に立ったり、または図示しない作業台に乗ってアクセス可能な位置に設置されている。
【0017】
このようなエレベータに対して、戸開走行保護装置2を追加設置する場合には、制御盤1の上部に設置されることが多い。
【0018】
しかしながら、このような位置に戸開走行保護装置2を設置した場合、乗りかご8が昇降路
9内に停止している位置によっては、専門技術者が戸開走行保護装置2にアクセスできない状況が発生し得る。戸開走行保護装置2は、戸開走行動作の検出時、または戸開走行保護装置2自身の故障が発生した場合には、
図2に示すように、制御盤1の制御装置5に対して巻上機3に供給する動力電源を遮断させる構成となっているため、戸開走行保護装置2を復旧できない場合は乗りかご8の位置を移動できず、またこのような状態では、乗りかご8を手動で移動させることも非常に困難な状況である。
【0019】
本
実施形態のエレベー
タは、戸開走行保護装置2の動作または戸開走行保護装置2の故障によって乗りかご8の移動ができない状況においても、専門技術者が携行する一時低速運転用復旧用コネクタ7を使用して、一時的に乗りかご8を低速で移動させることを可能とするものである。具体的な構成としては、制御盤1と戸開走行保護装置2との間を接続するコネクタ6を、制御盤1の乗りかご8によって同時に覆われることが無い位置、例えば制御盤1の最下部や制御盤1の最上部1aと最下部1b等、乗りかご8が最下階に位置しても同時に乗りかご8によって覆われることが無くアクセスが容易な位置に設ける。そして、戸開走行保護装置2に換えて一時低速運転用復旧用コネクタ7をコネクタ6に接続することにより、
図3に示す回路接続として一時的に乗りかご8の低速運転を可能とする構成としている。このような構成により、専門技術者は、乗りかご8を低速で運転して容易に戸開走行保護装置2にアクセス可能な位置に移動させることにより、早急な復旧が可能となる。
【0020】
図4は本
実施形態を実施する際の制御装置5における動作フローである。
図4において、制御装
置5は、戸開走行保護装置2が正常運転信号を出力している場合はエレベータを正常運転させる(ステップS101〜ステップS102)。―方、戸開走行保護装置2が戸開走行を検知したり戸開走行保護装置2が故障した場合には、戸開走行保護装置2からの正常運転信号が出力されなくなるため、制御装置5は巻上機3への動力電源を遮断させ、エレベーダを制止させる(ステップS101〜ステップS103〜ステップS104)。
【0021】
ここで、戸開走行保護装置2に換えて一時低速運転用復旧用コネクタ7がコネクタ6に接続された場合は、制御装置5は低速運転のみを許可するモードとなり(ステップS105)乗りかご8や乗場11などに設置された低速運転を指示するスイッチが操作された場合には、乗りかご8を低速で運転して移動させる(ステップS106)。このような動作により、戸開走行保護装置2が動作または戸開走行保護装置2が故障した状況においても、乗りかご8を低速で安全に移動し、戸開走行保護装置2に容易にアクセス可能な位置に移動させることができ、これによって、短時間でエレベー
タの復旧作業を実施することが可能となる。
【符号の説明】
【0022】
1 制御盤
1a 制御盤最上部
1b 制御盤最下部
2 戸開走行保護装置
3 巻上機
4 巻上機電源遮断用電磁継電器接点
5 制御装置
6 制御盤と戸開走行保護装置間を接続するコネクタ
7 一時低速運転用復旧コネクタ
8 乗りかご
9 昇降路
10 ピット
11 乗場