【実施例】
【0083】
実施例1 Mab A精製その1(活性炭を含む非吸着モード精製)
予め精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab A)を含むCHO細胞培養上清約600mLを酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿を遠心分離及びフィルターで除去した。得られた清澄化液をトリス溶液で中和し、ペリコン3ウルトラセル膜(ミリポア社製、30kD、0.11m
2)で約6倍に濃縮した。濃縮後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)でバッファー交換し、濃縮/バッファー交換溶液を得た。
【0084】
次いで、以下の手順で活性炭を含むMab A精製を全て非吸着モードにて実施した。まず、得られた濃縮/バッファー交換溶液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm
2)に通液し、活性炭溶出液Aとしてプールした。
得られた活性炭溶出液Aを10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、11mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液としてプールした。
【0085】
得られたQ Sepharose溶出液にクエン酸ナトリウムを10mmol/L相当添加後、塩酸にてpH7.0に調整した。その後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)をクエン酸溶液にて、pH7.0に調整した平衡化緩衝液で平衡化した混合モードクロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Capto adhere、10mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分の一部をCapto adhere溶出液としてプールした。
【0086】
得られたCapto adhere溶出液を、酢酸を用いてpH4.5に調整後、活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm
2)に通液し、活性炭溶出液Bとしてプールした。得られた活性炭溶出液BをMab A最終精製品とした。
【0087】
Mab A最終精製品の重合体含有率及び分解物含有率についてゲルろ過HPLC法を用いて、宿主細胞蛋白質含有量についてELISA法を用いて分析した。
Mab A最終精製品の分析結果を
図1、2及び3に示す。本精製方法により、重合体含有率及び分解物含有率がそれぞれ1%未満、宿主細胞蛋白質含有量が10ng/mg蛋白質未満のMab A精製品が取得できた。
【0088】
実施例2 Mab B精製その1(活性炭を含む非吸着モード精製)
予め精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養上清約600mLを酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿を遠心分離及びフィルターで除去した。得られた清澄化液をトリス溶液で中和し、ペリコン3ウルトラセル膜(ミリポア社製、30kD、0.11m
2)で約6倍に濃縮した。濃縮後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)でバッファー交換し、濃縮/バッファー交換溶液を得た。
【0089】
次いで、以下の手順で活性炭を含むMab B精製を全て非吸着モードにて実施した。まず、得られた濃縮/バッファー交換溶液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm
2)に通液し、活性炭溶出液Aとしてプールした。
得られた活性炭溶出液Aを10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、11mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液Aとしてプールした。
【0090】
得られたQ Sepharose溶出液Aにクエン酸ナトリウムを10mmol/L相当添加後、塩酸にてpH7.0に調整した。その後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)をクエン酸溶液にて、pH7.0に調整した平衡化緩衝液で平衡化した混合モードクロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Capto adhere、10mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分の一部をCapto adhere溶出液としてプールした。
【0091】
得られたCapto adhere溶出液を、酢酸を用いてpH4.5に調整後、活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm
2)に通液し、活性炭溶出液Bとしてプールした。
【0092】
得られた活性炭溶出液Bを、トリス溶液を用いてpH8.0に調整後、フィルターろ過を行い、フィルターろ過液を得た。得られたフィルターろ過液を10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、11mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液Bとしてプールした。得られたQ Sepharose溶出液BをMab B最終精製品とした。
【0093】
Mab B最終精製品の重合体含有率、分解物含有率及び宿主細胞蛋白質含有量について実施例1と同様の方法を用いて分析した。
Mab B最終精製品の分析結果を
図1、2及び3に示す。本精製方法により、重合体含有率及び分解物含有率がそれぞれ1%未満、宿主細胞蛋白質含有量が10ng/mg蛋白質未満のMab B精製品が取得できた。
【0094】
実施例3 Mab C精製その1(活性炭を含む非吸着モード精製)
予め精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab C)を含むCHO細胞培養上清約600mLを酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿を遠心分離及びフィルターで除去した。得られた清澄化液をトリス溶液で中和し、ペリコン3ウルトラセル膜(ミリポア社製、30kD、0.11m
2)で約6倍に濃縮した。濃縮後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.1)でバッファー交換し、濃縮/バッファー交換溶液を得た。
【0095】
次いで、以下の手順で活性炭を含むMab C精製を全て非吸着モードにて実施した。まず、得られた濃縮/バッファー交換溶液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータプラスEXT荷電デプスフィルター、25cm
2)に通液し、活性炭溶出液Aとしてプールした。
得られた活性炭溶出液Aを10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.1)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、11mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液としてプールした。
【0096】
得られたQ Sepharoseプール液にクエン酸/クエン酸ナトリウムを10mmol/L相当添加後、塩酸にてpH6.0に調整した。その後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.1)をクエン酸溶液にて、pH6.0に調整した平衡化緩衝液で平衡化した混合モードクロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Capto adhere、10mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分の一部をCapto adhere溶出液としてプールした。
【0097】
得られたCapto adhere溶出液を、酢酸を用いてpH4.5に調整後、活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm
2)に通液し、活性炭溶出液Bとしてプールした。得られた活性炭溶出液BをMab C最終精製品とした。
【0098】
Mab C最終精製品の重合体含有率、分解物含有率及び宿主細胞蛋白質含有量について実施例1と同様の方法を用いて分析した。
Mab C最終精製品の分析結果は
図1、2及び3に示す。本精製方法により、重合体含有率及び分解物含有率がそれぞれ1%未満、宿主細胞蛋白質含有量が10ng/mg蛋白質未満のMab C精製品が取得できた。
【0099】
実施例4 Mab A精製その2(活性炭を含む非吸着モード精製)
予め精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab A)を含むCHO細胞培養上清約100mLを酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿を遠心分離で除去し、清澄化液を得た。
【0100】
次いで、以下の手順で活性炭を含むMab A精製を全て非吸着モードにてを実施した。まず、得られた清澄化液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm
2)に通液し、活性炭溶出液Aとしてプールした。
【0101】
得られた活性炭溶出液Aを10mmol/L酢酸緩衝液(pH4.5)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(ミリポア社製、ProRes S、3mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、7カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分の一部をProRes S溶出液としてプールした。
【0102】
得られたProRes S溶出液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm
2)に通液し、活性炭溶出液Bとしてプールした。
得られた活性炭溶出液Bを5mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)で4倍に希釈後、トリス溶液で中和し、フィルターろ過した。その後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、11mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液としてプールした。得られたQ Sepharose溶出液をMab A最終精製品とした。
【0103】
Mab A最終精製品の重合体含有率、分解物含有率及び宿主細胞蛋白質含有量について実施例1と同様の方法を用いて分析した。
Mab A最終精製品の分析結果を
図4、5及び6に示す。本精製方法により、重合体含有率及び分解物含有率がそれぞれ1%未満、宿主細胞蛋白質含有量が10ng/mg蛋白質未満のMab A精製品が取得できた。
【0104】
実施例5 Mab B精製その2(活性炭を含む非吸着モード精製)
予め精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養上清約100mLを酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿を遠心分離で除去し、清澄化液を得た。
【0105】
次いで、以下の手順で活性炭を含むMab B精製を全て非吸着モードにて実施した。まず、得られた清澄化液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm
2)に通液し、活性炭溶出液Aとしてプールした。
【0106】
得られた活性炭溶出液Aを10mmol/L酢酸緩衝液(pH4.5)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(ミリポア社製、ProRes S、3mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、7カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分の一部をProRes S溶出液としてプールした。
【0107】
得られたProRes S溶出液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm
2)に通液し、活性炭溶出液Bとしてプールした。
得られた活性炭溶出液Bを5mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)で4倍に希釈後、トリス溶液で中和し、フィルターろ過した。その後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、11mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharos溶出液としてプールした。得られたQ Sepharose溶出液をMab B最終精製品とした。
【0108】
Mab B最終精製品の重合体含有率、分解物含有率及び宿主細胞蛋白質含有量について実施例1と同様の方法を用いて分析した。
Mab B最終精製品の分析結果を
図4、5及び6に示す。本精製方法により、重合体含有率及び分解物含有率がそれぞれ1%未満、宿主細胞蛋白質含有量が10ng/mg蛋白質未満のMab B精製品が取得できた。
【0109】
実施例6 Mab C精製その2(活性炭を含む非吸着モード精製)
予め精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab C)を含むCHO細胞培養上清約100mLを酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿を遠心分離で除去し、清澄化液を得た。
【0110】
次いで、以下の手順で活性炭を含むMab C精製を全て非吸着モードにて実施した。まず、得られた清澄化液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm
2)に通液し、活性炭溶出液Aとしてプールした。
【0111】
得られた活性炭溶出液Aを10mmol/L酢酸緩衝液(pH4.5) からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(ミリポア社製、ProRes S、3mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分の一部をProRes S溶出液としてプールした。
【0112】
得られたProRes S溶出液を活性炭フィルター(キュノ社製、ゼータカーボンフィルター、25cm
2)に通液し、活性炭溶出液Bとしてプールした。
得られた活性炭溶出液Bを5mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)で4倍に希釈後、トリス溶液で中和し、フィルターろ過した。その後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、11mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液としてプールした。得られたQ Sepharose溶出液をMab C最終精製品とした。
【0113】
Mab C最終精製品の重合体含有率、分解物含有率及び宿主細胞蛋白質含有量について実施例1と同様の方法を用いて分析した。
【0114】
Mab C最終精製品の分析結果を
図4、5及び6に示す。本精製方法により、重合体含有率及び分解物含有率がそれぞれ1%未満、宿主細胞蛋白質含有量が10ng/mg蛋白質未満のMab C精製品が取得できた。
【0115】
実施例7 Mab A精製その3(活性炭を含む精製)
精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab A)を含むCHO細胞培養上清約200mLを酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿を遠心分離で除去し、清澄化液Aを得た。
【0116】
次いで、得られた清澄化液A約60mLに活性炭(日本エンバイロケミカル社製、白鷺P)を添加し、混合した。その後、混合した溶液を遠心分離及びフィルターろ過し、活性炭溶出液を得た。
【0117】
得られた活性炭溶出液を5mmol/Lトリス緩衝液で4倍に希釈後、トリス溶液でpH8.0に調整した。その後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液としてプールした。
【0118】
得られたQ Sepharose溶出液を、酢酸溶液でpH5.0に調整した。その後、10mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(アプライドバイオシステムズ社製、POROS XS、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。次に0.3mol/L塩化ナトリウムを含む10mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)から塩濃度を徐々に増加させる塩濃度勾配(10カラム容量)にて溶出した。カラム溶出画分の一部をPOROS XS溶出液としてプールした。POROS XS溶出液をMab A最終精製品とした。
【0119】
実施例8 Mab B精製その3(活性炭を含む精製)
精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養上清約225mLを酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿を遠心分離で除去し、清澄化液Bを得た。
【0120】
次いで、得られた清澄化液B約60mLに活性炭(日本エンバイロケミカル社製、白鷺P)を添加し、混合した。その後、混合した溶液を遠心分離及びフィルターろ過し、活性炭溶出液を得た。
【0121】
得られた活性炭溶出液を5mmol/Lトリス緩衝液で4倍に希釈後、トリス溶液でpH8.0に調整した。その後、10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液としてプールした。
【0122】
得られたQ Sepharose溶出液を、酢酸溶液でpH5.1に調整した。その後、10mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(アプライドバイオシステムズ社製、POROS XS、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。次に0.3mol/L塩化ナトリウムを含む10mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)から塩濃度を徐々に増加させる塩濃度勾配(10カラム容量)にて溶出した。カラム溶出画分の一部をPOROS XS溶出液としてプールした。POROS XS溶出液をMab B最終精製品とした。
【0123】
実施例9 Mab A精製品、Mab B精製品の分析
実施例7及び比較例1により得られたMab A精製中間体及び最終精製品、実施例8及び比較例2により得られたMab B精製中間体及び最終精製品について、以下の分析を行った。精製各工程の回収率及び精製工程全体を通じた総回収率をプロテインAアフィニティHPLC法により分析した。
【0124】
Mab A及びMab BのプロテインA精製、活性炭精製での各工程回収率及び総回収率の結果を
図7及び
図8に示す。活性炭精製の総回収率は、プロテインA精製の総回収率とほぼ同程度であり、40%以上の高回収率であった。
【0125】
精製中間体及び最終精製品の重合体含有率及び分解物含有率を、ゲルろ過HPLC法を用いて分析した。Mab A及びMab BのプロテインA精製、活性炭精製での精製中間体及び最終精製品の重合体含有率を
図9及び
図11、分解物含有率を
図10及び
図12にそれぞれ示す。
【0126】
いずれのモノクローナル抗体についても、最終精製品(陽イオン)において、重合体含有率および分解物含有率は両精製方法で同程度であった。一方で、プロテインA精製工程と活性炭精製工程での重合体含有率および分解物含有率を比較した場合、活性炭精製工程の方がプロテインA精製工程より重合体含有率および分解物含有率は低く、2%未満であった。
【0127】
精製中間体及び最終精製品の蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量をELISA法により分析した。Mab A及びMab BのプロテインA精製、活性炭精製での精製中間体及び最終精製品の蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量を
図13及び
図14に示す。
【0128】
いずれのモノクローナル抗体についても、プロテインA精製工程と活性炭精製工程での宿主細胞蛋白質含有量は同程度であった。また、最終精製品においても、宿主細胞蛋白質含有量は同程度であり10 ng/mg蛋白質未満であった。
【0129】
以上の結果から、プロテインAを用いた精製と比べて活性炭を用いた精製によって得られた精製中間体の宿主細胞蛋白質の含有量は同程度である一方、重合体含有率および分解物含有率は活性炭を用いた精製は低く、活性炭を用いた精製によってより不純物含量が低下した蛋白質を取得できることが確認された。
【0130】
実施例10 活性炭による抗体の分解抑制
モノクローナル抗体(Mab B)を含む培養上清を酢酸でpH4.5に調整した。生成した沈殿をフィルターを用いて除去し、清澄化液を得た。
【0131】
次いで、得られた清澄化液に活性炭(日本エンバイロケミカル社製、白鷺P)を添加し、混合した。24時間保持後、活性炭を除いた上清をSDS−PAGE分析に供した。コントロールとして、活性炭を添加していないものを上記と同一の操作をし、非還元条件下SDS−PAGE分析に供した。
【0132】
SDS−PAGE分析の結果を
図15に示す。コントロール(C)は、清澄化液(A)と比較して分解物のバンドが増加したが、活性炭添加(B)は、分解物バンドが増加しなかった。
【0133】
以上の結果から、活性炭の添加により分解物の生成が抑制されることが確認された。
【0134】
実施例11 活性炭による抗体の還元抑制
モノクローナル抗体(Mab D)を含む培養上清に活性炭(日本エンバイロケミカル社製、白鷺P)を添加し、混合した。活性炭除去後、24時間嫌気状態とした。24時間保持後、上清を非還元条件下SDS−PAGE分析に供した。コントロールとして、活性炭を添加していないものを上記と同一の操作をし、SDS−PAGE分析に供した。
【0135】
SDS−PAGE分析の結果を
図16に示す。培養上清(A)と比較してコントロール(C)では抗体が還元したバンド(H鎖、L鎖)が観察されたが、活性炭処理(B)では、抗体が還元したバンド(H鎖、L鎖)が認められなかった。
【0136】
以上の結果から、活性炭の添加により還元体の生成が抑制されることが確認された。
【0137】
実施例12 Mab A精製品、Mab B精製品のDNA分析
実施例7により得られたMab A最終精製品、比較例1により得られたMab A精製品、実施例8により得られたMab B最終精製品及び比較例2により得られたMab B精製品について、Threshold法によるDNA分析を行った。
【0138】
Mab A及びMab Bに関する活性炭精製での最終精製品およびProtein A精製での精製品の蛋白質1mgあたりのDNA含有量を
図17に示す。いずれの最終精製品及び精製品についてもDNA含有量は同程度であり10pg/mg以下であった。
【0139】
実施例13 活性炭精製におけるpHの影響
精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養上清を酸またはアルカリでpH4、pH5、pH6、pH7、pH8にそれぞれ調整した。生成した沈殿をフィルターろ過で除去し、各pH調整清澄化液を得た。
【0140】
次いで、得られた各pH調整清澄化液約10mLに活性炭(日本エンバイロケミカル社製、白鷺P)を添加し、混合した。その後、混合した各溶液を遠心分離し、各活性炭溶出液を得た。各pH調整清澄化液で活性炭を添加していないものを各pHコントロールとした。
【0141】
得られた各pH活性炭溶出液および各pHコントロールの蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量をELISA法により分析した。得られた蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量より以下の計算式にて宿主細胞蛋白質の低減率(HCP LRV)を算出した。
【0142】
(計算式) 宿主細胞蛋白質の低減率(HCP LRV)=−log
10(活性炭溶出液の蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量/コントロールの蛋白質1mgあたりの宿主細胞蛋白質含有量)
【0143】
活性炭処理による各pHにおける宿主細胞蛋白質の低減率(HCP LRV)を
図18に示す。pH4および5でHCP LRVは2以上であった。pH6、pH7およびpH8ではHCP LRVは1〜2の範囲であった。従って、pH6、pH7及びpH8に比べて、pH4及びpH5の方が活性炭処理による宿主細胞蛋白質低減の効果が高いことが確認された。
【0144】
得られた各pH活性炭溶出液の抗体濃度をプロテインAアフィニティHPLC法により分析した。pH7の活性炭溶出液での抗体濃度を100とした場合の各pHでの相対抗体濃度(%)を
図19に示す。
【0145】
pH4での抗体濃度は、他のpHの抗体濃度より低く、pH7の約70%となった。その他のpHでは、pH7の±10%の範囲内であり、pH4に比べて、pH5、pH6、pH7及びpH8の方が活性炭処理における相対抗体濃度が高く、抗体回収率が高いことが確認された。
【0146】
以上の各pHにおける宿主細胞由来蛋白質の低減率及び相対抗体濃度の結果から、活性炭処理はpH4〜8のいずれのpHでも実施可能であり、特にpH4〜6が好ましいと考えられた。
実施例14 活性炭精製における活性炭原材料の影響
【0147】
精密ろ過により清澄化したモノクローナル抗体(Mab B)を含むCHO細胞培養上清を酢酸でpH4.6に調整した。生成した沈殿を遠心分離及び、フィルターろ過で除去し、清澄化液Bを得た。
【0148】
次いで、得られた清澄化液B約10mLに表1に示す活性炭をそれぞれ添加し、混合した。その後、混合した溶液を遠心分離及びフィルターろ過し、活性炭溶出液を得た。
【0149】
【表1】
【0150】
各活性炭溶出液の重合体含有率及び分解物含有率はゲルろ過HPLC法を用いて、宿主細胞蛋白質含有量はELISA法を用いて分析した。各活性炭溶出液の分析結果を
図20、
図21及び
図22に示す。
【0151】
白鷺P、白鷺DO−2及び白鷺DO−5を用いた活性炭溶出液はともに、重合体含有率、分解物含有率及び宿主細胞蛋白質含量が培養上清より低下した。特に原材料が木質である白鷺Pを用いた活性炭溶出液は、他の活性炭に比べて分解物含有率及び宿主細胞蛋白質含有量がより低下した。
【0152】
比較例1 Mab A精製(プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含む精製)
実施例7で得た清澄化液Aをトリス溶液でpH6.4に調整した。この溶液約60mLを10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化したプロテインAアフィニティクロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、MabSelect SuRe、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の1mol/L塩化ナトリウムを含む10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)及び平衡化緩衝液でカラムを洗浄した。次に、5カラム容量の100mmol/Lグリシン緩衝液(pH3.2)により溶出した。カラム溶出画分をMabSelect SuRe溶出液としてプールした。
【0153】
得られたMabSelect SuRe液をトリス溶液でpH8.0に調整した。この溶液を10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液としてプールした。
【0154】
得られたQ Sepharose溶出液を、酢酸溶液でpH5.0に調整した。この溶液を10mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(アプライドバイオシステムズ社製、POROS XS、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。次に0.3mol/L塩化ナトリウムを含む10mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)から塩濃度を徐々に増加させる塩濃度勾配(10カラム容量)にて溶出した。カラム溶出画分の一部をPOROS XS溶出液としてプールした。POROS XS溶出液をMab A精製品とした。
【0155】
比較例2 Mab B精製(プロテインAアフィニティクロマトグラフィーを含む精製)
実施例8で得た清澄化液Bをトリス溶液でpH6.4に調整した。この溶液約60mLを10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化したプロテインAアフィニティクロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、MabSelect SuRe、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の1mol/L塩化ナトリウムを含む10mmol/Lトリス緩衝液(pH7.0)及び平衡化緩衝液でカラムを洗浄した。次に、5カラム容量の100mmol/Lグリシン緩衝液(pH3.2)により溶出した。カラム溶出画分をMabSelect SuRe溶出液としてプールした。
【0156】
得られたMabSelect SuRe液をトリス溶液でpH8.0に調整した。この溶液を10mmol/Lトリス緩衝液(pH8.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陰イオン交換クロマトグラフィーカラム(GEヘルスケア社製、Q Sepharose、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。カラム非吸着画分をQ Sepharose溶出液としてプールした。
【0157】
得られたQ Sepharose溶出液を、酢酸溶液でpH5.0に調整した。この溶液を10mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)からなる平衡化緩衝液で平衡化した陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(アプライドバイオシステムズ社製、POROS XS、5mm IDx20cm)に添加した。添加終了後、5カラム容量の平衡化緩衝液をカラムに通液した。次に0.3mol/L塩化ナトリウムを含む10mmol/L酢酸緩衝液(pH5.0)から塩濃度を徐々に増加させる塩濃度勾配(10カラム容量)にて溶出した。カラム溶出画分の一部をPOROS XS溶出液としてプールした。POROS XS溶出液をMab B精製品とした。
【0158】
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。
【0159】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2012年8月7日付けで出願された米国仮出願(61/680433号)に基づいており、その全体が引用により援用される。