特許第6189845号(P6189845)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189845
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】疎水性細孔を有する減圧キャニスタ
(51)【国際特許分類】
   A61M 27/00 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
   A61M27/00
【請求項の数】31
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-529726(P2014-529726)
(86)(22)【出願日】2012年8月10日
(65)【公表番号】特表2014-526309(P2014-526309A)
(43)【公表日】2014年10月6日
(86)【国際出願番号】US2012050369
(87)【国際公開番号】WO2013039623
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2015年8月6日
(31)【優先権主張番号】61/534,232
(32)【優先日】2011年9月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508268713
【氏名又は名称】ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ロック,クリストファー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン,ティモシー,マーク
(72)【発明者】
【氏名】ジャエブ,ジョナサン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】クルサード,リチャード ダニエル ジョン
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0152799(US,A1)
【文献】 特開2005−131137(JP,A)
【文献】 特表2010−531698(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0305523(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0106027(US,A1)
【文献】 特表2013−515573(JP,A)
【文献】 特開2001−116334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧治療システムにおいて、
減圧キャニスタであって、
ボウルと、
前記ボウルに嵌合して流体貯蔵部を形成するように構成された蓋であって、当該蓋を貫通して前記流体貯蔵部と流体連通して複数の細孔を有する蓋と
患者からの流体を受ける入口であって、前記流体貯蔵部と流体連通する入口と、
記複数の細孔に塗布された疎水性コーティングと、
を具える減圧キャニスタと;
前記流体貯蔵部に流体連結された減圧源と;
前記入口に流体連結され、前記患者からの流体を前記減圧キャニスタへと送達する減圧送達導管と;
具えることを特徴とする減圧治療システム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムにおいて、
前記細孔の直径が0.5〜1マイクロメートルであることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシステムにおいて、
前記疎水性コーティングがフルオロカーボンを含むことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記疎水性コーティングがヘプタデカフルオロデシルアシレートを含むことを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記システム、前記複数の細孔を覆うように塗布された抗微生物コーティングをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記システム、前記複数の細孔を覆うように塗布された抗菌コーティングをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記システム、前記複数の細孔を覆うように塗布されたプロテアーゼコーティングをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記システム、前記複数の細孔に塗布された活性炭コーティングをさらに含むことを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載のシステムにおいて、
前記細孔の直径が0.5〜1マイクロメートルの範囲内であり、前記複数の細孔にわたる破過圧が等式、P(b)=4g(cos q)/Dで定義され、式中、
P(b)は前記複数の細孔にわたる破過圧であり、
gは液体の表面張力であり、
qは前記液体と前記複数の細孔にわたる表面の間の接触角であり、
Dは細孔の直径である
ことを特徴とするシステム。
【請求項10】
減圧キャニスタの製造方法において、
流体貯蔵部を有するキャニスタ本体と、患者からの流体を受ける入口と、を形成するステップと、
前記キャニスタ本体に通気部を形成するステップであって、当該通気部を形成するステップは、順に
前記キャニスタ本体の境界領域に複数の細孔を形成するステップと、
前記複数の細孔を覆うように疎水性コーティングを塗布するステップと、
を含むステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、
前記複数の細孔を覆う疎水性コーティングを塗布する前記ステップが、プラズマ処理工程で前記疎水性コーティングを塗布するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の方法において、
前記複数の細孔を覆う疎水性コーティングを塗布する前記ステップが、フルオロカーボンコーティングを塗布するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10乃至12の何れか1項に記載の方法において、
前記複数の細孔を覆う疎水性コーティングを塗布する前記ステップが、ヘプタデカフルオロデシリアシレートコーティングを塗布するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10乃至13の何れか1項に記載の方法において、
複数の細孔を形成する前記ステップが、直径0.5〜1マイクロメートルの複数の細孔を形成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項10乃至14の何れか1項に記載の方法において、
キャニスタ本体を形成する前記ステップが、PETポリマーから形成されたキャニスタ本体を提供するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項10乃至15の何れか1項に記載の方法において、
プラズマ処理工程で前記複数の細孔を覆うように抗微生物コーティングを塗布するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項10乃至16の何れか1項に記載の方法において、
プラズマ処理工程で前記複数の細孔を覆うように抗菌コーティングを塗布するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項10乃至17の何れか1項に記載の方法において、
前記複数の細孔を覆うように疎水性コーティングを塗布する前記ステップが、プラズマ処理工程で前記複数の細孔を覆うようにプロテアーゼコーティングを塗布するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項10乃至18の何れか1項に記載の方法において、
プラズマ処理工程で前記複数の細孔を覆うように活性炭コーティングを塗布するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
減圧キャニスタであって
ボウルと、
前記ボウルに嵌合して流体貯蔵部を形成するように構成された蓋と、
患者からの流体を受けるために前記流体貯蔵部に流体連結された入口と、
前記蓋を貫通する複数の細孔と、
前記複数の細孔に塗布された疎水性コーティングと、
を含むことを特徴とする減圧キャニスタ。
【請求項21】
請求項20に記載の減圧キャニスタにおいて、
前記複数の細孔が0.5〜1マイクロメートルの実質的に均一な直径を有することを特徴とする減圧キャニスタ。
【請求項22】
請求項20または21に記載の減圧キャニスタにおいて、
前記疎水性コーティングがヘプタデカフルオロデシルアシレートを含むことを特徴とする減圧キャニスタ。
【請求項23】
請求項20乃至22の何れか1項に記載の減圧キャニスタにおいて、
前記減圧キャニスタが、前記複数の細孔を覆う抗微生物コーティングをさらに含むことを特徴とする減圧キャニスタ。
【請求項24】
請求項20乃至23の何れか1項に記載の減圧キャニスタにおいて、
前記減圧キャニスタが、前記複数の細孔を覆う抗菌微生物コーティングをさらに含むことを特徴とする減圧キャニスタ。
【請求項25】
請求項20乃至24の何れか1項に記載の減圧キャニスタにおいて、
前記減圧キャニスタが、前記複数の細孔を覆うプロテアーゼコーティングをさらに含むことを特徴とする減圧キャニスタ。
【請求項26】
減圧キャニスタに疎水性通気口を形成する方法において、
キャニスタ本体に複数の開口部を形成するステップと、
前記複数の開口部に疎水性コーティングを塗布するステップと、
を含み、
疎水性コーティングを塗布する前記ステップが、プラズマ処理工程でフルオロカーボンコーティングを塗布するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法において、
前記複数の開口部が複数の円形の穴を含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項26に記載の方法において、
前記複数の開口部が複数の平行なスリットを含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項26に記載の方法において、
前記複数の開口部が第一の複数の平行なスリットを含み、前記方法がさらに、
第二の複数の平行なスリットを有する格子部材に前記疎水性コーティングを塗布するステップと、
前記格子部材を前記第一の複数の平行なスリットを覆うように取り付けて、前記第二の複数の平行なスリットが前記第一の複数の平行なスリットに実質的に重なり、それに対して垂直になるようにするステップと、
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項26乃至29の何れか1項に記載の方法において、
前記フルオロカーボンコーティングがヘプタデカフルオロデシルアシレートを含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項26乃至30の何れか1項に記載の方法において、
前記複数の開口部にプロテアーゼコーティングを塗布するステップを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2011年9月13日にLockeらにより出願された“Reduced−Pressure Canisters Having Hydrophobic Pores”と題する米国仮特許出願第61/534,232号明細書の、35USC§119(e)に基づく利益を請求するものであり、あらゆる目的のために同仮出願を参照によって本願に援用する。
【0002】
本願は一般に、医療用治療システムに関し、より詳しくは、ただし、これに限定されないが、疎水性細孔を有する減圧キャニスタに関する。
【背景技術】
【0003】
臨床的研究と実践から、組織部位付近に減圧をかけることによって、その組織部位における新しい組織の成長が増進され、加速されることがわかっている。この現象の応用は多数あるが、減圧の付与は創傷の治療において特に成果を上げている。この治療(医療界では「陰圧創傷閉鎖療法」、「減圧療法」または「真空療法」と呼ばれることが多い)は数多くの利益を提供し、その中には治癒の迅速化と肉芽組織形成の促進が含まれる。一般に、減圧は多孔質パッドまたはその他のマニホルド手段を通じて組織に付与される。多孔質パッドはセルまたは細孔、すなわち組織に減圧を分散させ、組織から吸引された流体を通過させることのできる通路を含む。減圧はまた、流体の排出やその他の用途にも使用してよい。除去された流体は通常、キャニスタへと運ばれる。
【発明の概要】
【0004】
ある例示的実施形態によれば、減圧治療システムは減圧キャニスタを含む。減圧キャニスタは、流体貯蔵部を形成するキャニスタ本体と、患者からの流体を受ける入口と、を含む。減圧キャニスタはまた、複数の細孔と複数の細孔を覆う疎水性コーティングを有する通気部分も含む。減圧源が減圧キャニスタに流体連結される。減圧治療システムはまた、入口に流体連結された、患者からの流体を減圧キャニスタへと送達する減圧送達導管を含む。
【0005】
ある例示的実施形態によれば、減圧キャニスタの製造方法は、流体貯蔵部を有するキャニスタ本体と患者から流体を受ける入口を形成するステップを含む。この方法はまた、キャニスタ本体に通気部を形成するステップも含む。通気部を形成するステップは、キャニスタ本体の境界領域に複数の細孔を形成するステップと、複数の細孔を覆うように疎水性コーティングを塗布するステップと、を含む。
【0006】
ある例示的実施形態によれば、減圧キャニスタは、流体貯蔵部を有するキャニスタ本体を含む。減圧キャニスタは、患者からの流体を受ける入口と、キャニスタ本体の側部または上部の中に形成された一体構造の疎水性フィルタと、を有する。一体構造の疎水性フィルタは、複数の細孔と、複数の細孔に塗布された疎水性コーティングと、を含む。
【0007】
ある例示的実施形態によれば、減圧キャニスタに疎水性通気口を形成する方法は、キャニスタ本体に複数の開口部を形成するステップと、複数の開口部に疎水性コーティングを塗布するステップと、を含む。この例示的実施形態において、疎水性コーティングを塗布するステップは、プラズマ処理工程でフルオロカーボンコーティングを塗布するステップを含む。
【0008】
例示的実施形態のその他の特徴と利点は、図面と以下の詳細な説明を参照することによって明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、ある例示的実施形態による減圧キャニスタを有する減圧治療システムの、一部が断面で示された概略斜視図である。
図2図2は、図1の減圧キャニスタの概略分解斜視図である。
図3A図3Aは、図1〜2の減圧キャニスタの概略側面図である。
図3B図3Bは、図1〜3Aの減圧キャニスタの一部の、図3Aの線3B−3Bに沿って切断した断面の概略側面図である。
図4図4は、図1の減圧キャニスタの蓋部の概略側面(内部)斜視図である。
図5A図5Aは、減圧キャニスタの通気口の一部の概略詳細図である。
図5B図5Bは、減圧キャニスタの通気口の一部の代替的な概略詳細図である。
図5C図5Cは、減圧キャニスタの通気口の一部の代替的な概略詳細図である。
図6A図6Aは、減圧キャニスタの、格子部材を有する蓋部の(内側に面する)一部分解概略斜視図である。
図6B図6Bは、図6Aの概略詳細図である。
図6C図6Cは、図6Aの概略詳細図である。
図7図7は、減圧キャニスタの通気部に疎水性コーティングを塗布するためのプラズマ処理工程の、一部が斜視図として示される概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の例示的で非限定的な実施形態の詳細な説明では、本願の一部を形成する添付の図面を参照する。これらの実施形態は、当業者が本発明を実施できるように十分に詳しく説明されており、その他の実施形態を利用してもよく、本発明の主題または範囲から逸脱することなく、論理構造的、機械的、電気的、化学的変更を加えることができる。当業者が本明細書に記載の実施形態を実施する上で不要な詳細を回避するために、説明では、当業者の間で知られている特定の情報は割愛され得る。以下の詳細な説明はしたがって、限定的な意味でとられるべきではなく、例示的実施形態の範囲は付属の特許請求の範囲のみによって定義される。
【0011】
ここで図面、まず、主として図1を参照すると、ある例示的実施形態の減圧治療システム110が示されており、これは患者の組織部位114と流体連通する減圧送達導管112を含む。組織部位は、たとえば、ただし、これに限定されないが、骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、皮膚組織、血管組織、結合組織、軟骨、腱、靭帯をはじめとする何れの組織上またはその中にある創傷または欠損であってもよい。組織部位はまた、何れの組織の領域であってもよく、これには負傷または欠損した領域のほか、追加組織の成長の増大または促進が望ましい領域が含まれる。たとえば、減圧治療システム110は特定の組織領域において、摘出され、他の組織位置に移植される可能性のある追加組織を成長させるために使用してもよい。
【0012】
減圧送達導管112は、管接続アダプタ118と分散マニホルド122を通じて組織部位114と流体連通できる。分散マニホルド122は、生体吸収性でも非生体吸収性でも、組織部位114に減圧を供給(manifolding)できる材料であれば何れの材料でもよい。一実施形態において、分散マニホルド122は、連続気泡型網状発泡ポリウレタンであってもよい。ドレープ128は、分散マニホルド122を、分散マニホルド122を覆うように設置し、組織部位114の周縁に沿って密着させてもよく、それによって組織部位114での減圧状態が保持される。
【0013】
連結手段によって減圧送達導管112と減圧源134の間が流体連通する。一実装形態において、減圧源134はモータにより駆動される減圧または真空ポンプであってもよい。他の実施形態では、減圧源は圧縮ベローズポンプ等の手動式ポンプであってもよい。また別の実施形態では、減圧源134は病院およびその他の医療施設で利用可能であるものなどの壁埋め込み式吸引ポートであってもよい。
【0014】
減圧源134は、減圧治療ユニット136の中に格納されていてもよく、その中にはまた、組織部位114への減圧治療の施行をさらに支援するセンサ、処理ユニット、アラームインディケータ、メモリ、データベース、ソフトウェア、表示ユニット、ユーザインタフェースも含まれていてよい。一例において、センサ(図示せず)を減圧源134に、またはその付近に設置して、減圧源134によって生成される元圧を測定してもよい。センサは、減圧源134によって供給される減圧をモニタし、制御する処理ユニットと連通していてもよい。減圧を組織部位に供給すると新しい組織の成長が促進され、これは、組織部位からの滲出液を排出し続け、その組織部位の周辺組織への血流を増大させ、分散マニホルドを組織部位の中に圧迫することによって、その組織部位に新しい組織の成長を刺激するマイクロストレインが作られることによる。
【0015】
引き続き図1と、それだけでなく図2〜3Bも参照すると、キャニスタ本体142を有するキャニスタ137が減圧源134と組織部位114の間に流体連結され、組織部位114から吸引された滲出液およびその他の流体を回収する。キャニスタ137は、減圧源134を組織部位114に位置する減圧マニホルド122とつながり、組織部位114の創傷からの流体を回収してもよい。キャニスタ137は、減圧キャニスタと呼ぶことができる。
【0016】
図1〜3Bに示される実施形態において、キャニスタ本体142はボウル部144と蓋部146を含む。蓋部146はボウル部144と嵌合可能な実質的に平坦な出口壁148によって形成されてもよい。ボウル壁150は、ボウル部144を形成し、湾曲した輪郭を含み、三日月形を作る。ボウル部144と蓋部146はその代わりに、円筒形、立方体、直方体またはその他の形状のキャニスタ本体を形成してもよい。また、キャニスタ本体142が別々のボウル部と唇部(lip)を含んでいなくてもよく、むしろ、実質的に一体の筐体から形成されてもよいことにも留意されたい。
【0017】
キャニスタ本体142は、減圧送達導管112に流体連結された入口152と、出口または通気部160と、を含む。減圧治療システム110は、減圧源134への流体の流入を防止するキャニスタフィルタまたはその他のインライン保護フィルタを含んでいてもよい。キャニスタ本体142の通気部160は、通気部160を通じたキャニスタ本体142からの流体の流出を防止する疎水性フィルタを含む。入口152は、ボウル部144の窪み領域180に配置された壁178に位置付けられていてもよい。
【0018】
通気部160の疎水性フィルタは、キャニスタ本体142からの液体の流出を防止し、その一方で気体や蒸気は排出できる。疎水性フィルタは、キャニスタ本体142の窓または開口部に溶接された疎水性膜であってもよい。あるいは、複数の細孔162をキャニスタ本体142に形成し、疎水性コーティング(たとえば、図7の疎水性コーティング271)で被覆し、溶接不要な疎水性フィルタを形成する。
【0019】
このような実施形態において、通気部160は、出口壁148の中に形成された一体構造の疎水性フィルタを含む。疎水性フィルタを含むか、またはその他の方法で疎水性フィルタとして機能する通気部160を出口壁148に組み込むことは、多くの理由から有利となりうる。一体構造の疎水性フィルタによって、別の製造ステップとしてフィルタを適所に溶接または固定する必要がなくなり、その結果、所定の位置へのフィルタの溶接、機械的固定手段の使用、または接着剤の使用に関する問題が軽減する。このような問題としては、応力の局所集中、溶接に関わる脆弱さ、溶接材料に関わる材料の制約が含まれる場合がある。これに加えて、一体構造のフィルタによって減圧キャニスタの全体的コストが削減される可能性があり、これは、減圧治療システム110または減圧キャニスタ必要とするその他の医療システムの中で使用するためにキャニスタ本体142を組み立てるのに必要な部品と労力が少なくて済むからである。
【0020】
通気部160によりキャニスタ本体142と減圧源134の間が流体連通し、それによってキャニスタ本体142により形成される回収室または貯蔵部166が減圧状態を保持することができる。この減圧は、入口152を通じて組織部位(または、医療応用のためのその他の位置)に送達されてもよい。減圧治療システム110の中で、入口152は減圧を減圧送達導管112、管接続アダプタ118、分散マニホルド122に送達する。減圧により、組織部位114からの滲出液とその他の流体がキャニスタ本体142へと吸引される。疎水性フィルタによって、キャニスタ本体142の中に吸引される液体が、通気部160を通じてキャニスタ本体142から出ることと、減圧源134を汚染することが防止される。
【0021】
図4〜6に関してより詳しく述べるように、通気部160は、出口壁148に形成された複数の細孔162または開口部と疎水性コーティングで形成される。疎水性コーティングは複数の細孔162に塗布されてもよく、それによって疎水性フィルタが形成され、これは通気部160と出口壁148と一体である(すなわち、その中に形成される)。溶接は不要である。一体構造の疎水性フィルタによって、通気部160は液体空気分離装置として機能し、出口壁148から減圧源134への流体の通過を防止することができる。
【0022】
ここで主として図2、3A、3Bを参照すると、キャニスタ本体142はキャニスタ本体142の中に流体を回収するための回収室166、すなわち流体貯蔵部を含む。入口室170は、回収室166の上方に位置付けられる。開口部190によって、入口室170と回収室166の間が流体連通する。入口152は壁178の中に、減圧送達導管112の主要ルーメンによって組織部位114と入口室170の間が連通しやすくなるように配置されてもよい。入口室170はさらに床186を含み、これは少なくとも部分的に入口室170を回収室166から分離する。床186の存在にかかわらず、入口室170と回収室166の間は開口部190を通じて流体連通できる。開口部190は、入口室170と回収室166の間の連通を可能にするスロット、穴、通路またはその他の開口部であってもよい。
【0023】
入口152、通気部160、入口室170の位置と形状は、キャニスタの形状と構成に応じて多様でありうる。そのため、入口152、通気部160、入口室170の位置と形状は、上で説明され、関連する図1〜7に示される位置、形状、全体的構成とは異なっていてもよい。
【0024】
バッフル156は、蛋白質の気泡生成を減らし、生成された蛋白質の気泡を潰して、通気部160の早期閉塞を極小化するために提供されてもよい。バッフル156は、気泡の表面エネルギーを減少させるための界面活性剤コーティングを有していてもよい。
【0025】
図3Bは、キャニスタ本体142に入る流体の流路を示している。線192は流路を概略的に示している。流体は、入口152を通って入口室170に入る。入口室170から出た流体は、入口室170の端の開口部190を通って(図の向きで)下方に向けられる。流体は回収室166に入る。流体が回収室166に入ると、流体流の中のすべての液体が重力によって下方に引っ張られ、回収室166の(図の向きで)底部分に回収される。流体流の中の気体は、バッフル156の周囲で上方へと引っ張られ、通気部160においてキャニスタ本体142から出てもよい。
【0026】
バッフル156は、流体がキャニスタ本体142に入り、その中を流れる蛇行した通路(たとえば線192で示される)を作る。この蛇行した通路により、キャニスタ本体142に入る流体によって疎水性フィルタが早期に閉塞する危険性が極小化する。これに加えて、バッフル156は滲出液内の蛋白質の気泡生成を防止するか、または生成された気泡が通気部160に到達しないようにするのに役立つ。バッフル156はまた、入口室170と通気部160の間が見えないように、または実質的に見えないようにする。
【0027】
流体がキャニスタ本体142に入るための蛇行した通路を作る手段はほかにもあることに留意されたい。たとえば、発泡ポリウレタン等の多孔性の網状発泡体を入口室170の中に位置付けてもよい。発泡体の網状の性質から、入口室170の開放端付近での気泡生成が極小化され、通気部160への蛋白質の堆積が制限される。同様に、その他の発泡体または材料を入口室170の中または入口室170と通気部160の間に設置して、疎水性フィルタが早期に閉塞するのを防止してもよい。分離した入口室を持たなくてもよいキャニスタでは、通気部160への蛋白質の堆積を防止または削減するために、多孔性発泡体はキャニスタの中のどこに設置してもよい。
【0028】
ここで主として図4を参照すると、図1のキャニスタ本体142の蓋部146の概略的な側面(内部)斜視図が示されている。図4は、蓋部146(または壁)の内面に様々な方法で形成できる通気部160を示しており、その詳細は図5A〜5Cにある。通気部160を形成するために、複数の細孔162が蓋部146の出口壁148の一部に形成される。複数の細孔162はマイクロドリルにより加工でき、したがって、概して円形の形状であってもよい。この例示的実施形態において、出口壁148は、キャニスタ本体142の蓋部146の一部であり、射出成形工程で形成されてもよい。出口壁148は、フィルタを位置付けることのできる、正確な一定の壁厚の平坦領域である。
【0029】
ここで主として図5A〜5Cを参照すると、通気部160の各種の代替的実施形態が示されている。通気部160は、一体構造の疎水性フィルタ、すなわち出口壁148の中に形成された疎水性フィルタを含み、または形成する。図5Aでは、通気部160は出口壁148に形成された微細穴である複数の細孔162から形成される。細孔162は、エキシマレーザまたはその他の何れの適当な製造技術で形成してもよい。細孔162はまた、光または化学的エッチングによって形成してもよい。複数の細孔162の各々の直径(D)は0.25〜1マイクロメートルの間でも、その他の適当な何れの大きさでもよく、細孔162の数は、細孔162を通じた積算流量がシステムの流量にとって十分となるように様々であってもよい。細孔162は、あるパターンでも、ランダムにも形成してよい。
【0030】
細孔162は、細菌またはウイルスに対するバリアとして機能する大きさであってもよい。疎水性フィルタを細菌に対するバリアとして機能させようとする場合、複数の細孔162の直径は、たとえば0.5〜1マイクロメートルであってもよい。疎水性フィルタをウイルスに対するバリアとして機能させようとする場合、複数の細孔162の直径はより小さく、たとえば0.25マイクロメートルであってもよい。細孔の大きさは、特定の種類の細菌に対する保護を提供するように調節することさえできる。一般に、蛇行する通路に配置された直径1マイクロメートルの穴は、低レベルの差圧で動作する疎水性フィルタを通じたある種の細菌と流体の通過を防止するのに十分に小さい。
【0031】
図5Bは、通気部160が、穴ではなく、出口壁148に形成された複数のマイクロスリット262から形成される他の例示的実施形態を示している。マイクロスリット262は、マイクロスリット262が細孔162と同様に機能するような横方向のギャップを有する大きさである。マイクロスリット262は、細孔に関して本明細書に記載した何れかの技術または機械加工を使って形成してもよい。
【0032】
図5Cは、第二の集合のマイクロスリット362を含む別個の格子部材364を含む他の例示的実施形態を示し、これは図6にも示されている。格子部材364は、出口壁148とは別に形成されて出口壁148に取り付けられてもよく、その際、格子部材364のマイクロスリット362が出口壁148の格子のマイクロスリット262と実施質的に重なり、それに対して垂直となる。このような構成では、マイクロスリット262と362の交差によってマイクロホール363の集合が作られ、これによって気体が出口壁148の通気部160を通過できる。マイクロホール363は細孔162と同様に機能する。他の例示的実施形態においては、通気部160全体が格子部材364の中に形成されてもよく、これがキャニスタ本体142の端壁148の中の開放領域に密閉可能に連結されてもよい。
【0033】
表面処理工程を減圧キャニスタの通気部160の開口部、たとえば細孔162、マイクロスリット262またはマイクロホール363を覆うように施行することによって、所望の疎水特性を通気部160に付与してもよい。このような表面処理工程の一例が以下の図7に示されている。
【0034】
ここで図6Aを参照すると、キャニスタ137の例示的な蓋部146が示されており、これは通気部160の出口壁148に形成される複数のマイクロスリット262を有する。図6Cに示されるような複数のマイクロスリット362を有する格子部材364が出口壁148に、マイクロスリット262を覆うように連結されて、図5Cのマイクロホール363と同様の複数のマイクロホールが形成される。本明細書における他の例示的実施形態と同様に、複数の穴を疎水性コーティングで被覆してもよい。
【0035】
ここで主に図7を参照すると、疎水性コーティングを供給するための1つの例示的工程が示されている。特に、減圧キャニスタの蓋部146は、プラズマ処理チャンバ(明確には示されていない)の中で処理されるように示されている。プラズマ処理工程の中で、プラズマコーティングユニット270はガス272を受け、ガス272は陰極274を含むノズルと陽極273の間を通過する。陰極274と陽極273の間のアークによってガスがイオン化し、ガスが解離してプラズマ気流275が形成され、その中にコーティング材料271が注入される。プラズマ気流はコーティング材料を加工可能または堆積可能な状態まで加熱する。疎水性コーティングを提供するには、他の工程を使用してもよい。たとえば、疎水性コーティングを供給するための他のプラズマ工程では、被覆対象品をチャンバ内に設置してもよく、その中に処理用化学物質が導入され、イオン化される。
【0036】
加熱されたプラズマ気流275は、プラズマ気流275がプラズマコーティングユニット270から遠ざかる間に冷える。加工対象物、たとえばキャニスタ蓋部146は、プラズマコーティングユニット270からある距離だけ離れており、そこでキャニスタ蓋部146は堆積のための理想温度のコーティング材料271を受けることができる。ある例示的実施形態によれば、プラズマ堆積工程で疎水性コーティングをキャニスタ137の蓋部146の通気部160の部分に堆積させる。コーティングは、フルオロカーボン、ヘプタデカフルオロデシルアシレート、アクリレート含有ハロアルキル(フルオロアルキル等)またはパーハロアルキル(パーフルオロアルキル等)基、ヘキサメチルジシロキサン、およびその他の置換炭化水素、たとえば1,2−エポキシ−3−フェノキシ−プロパンであってもよい。プラズマ処理工程では、疎水性コーティングは基板、すなわちキャニスタの蓋部146の出口壁148に化学的に結合し、基板からの疎水性コーティングの移動や剥離に抵抗する。
【0037】
ほとんどの用途において、液体が通気部160から減圧源134へと通過することは望ましくない。そのため、減圧治療ユニット136は、減圧治療ユニット136の圧力をモニタする圧力センサを含んでいてもよい。キャニスタが疎水性フィルタを含んでいれば、疎水性フィルタは、キャニスタ本体142の流体貯蔵部と減圧治療ユニット136の間の圧力差がフィルタの破過圧「P(b)」に到達するまで、液体による出口壁の通過を防止する。そのため、減圧ユニットは、キャニスタ本体142と減圧治療ユニット136の間の圧力差をモニタしてもよい。圧力差が疎水性フィルタの破過圧P(b)に到達するまでは、減圧治療ユニット136は減圧源を作動させず、それによって流体の減圧治療ユニット136への流入を阻止してもよい。
【0038】
プラズマ処理工程によって得られる疎水性フィルタの破過圧P(b)は、フィルタを形成する穴の大きさ、液体の表面張力、表面接触角によって決まる。この表面接触角は表面疎水性の尺度である。ここで、等式「P(b)=4g(cos q)/D」で疎水性フィルタの破過圧が定義され、式中、gは液体の表面張力、qは液体と表面の間の接触角、Dは細孔の直径である。1つの例示的な非限定的例において、疎水性フィルタの「水破過圧」は約500mmHgである。プラズマ処理工程で疎水性フィルタを形成した結果として、堆積した疎水性コーティングは、有利には、有効な疎油性または疎水性コーティングを提供する、より一般的なPTFEベースのフィルタより高い撥水性を示す可能性がある。
【0039】
創傷からの流体を減圧治療システム内で回収する時には消臭も問題となりうる。創傷の流体に関わる臭いを消すために、活性炭フィルタを、キャニスタ本体142の蓋部146の内面の複数の細孔162の上方の所定の位置に溶接してもよい。活性炭フィルタの使用により、穴を通って移動する空気が臭いを発生しないようにするのに役立つ。活性炭フィルタはまた、キャニスタ本体142の密閉外面上の同じ位置に溶接してもよい。一実施形態において、活性炭コーティングを、図7に関して述べた工程と同様のプラズマ表面処理を使って、通気部を含んでもよいキャニスタ本体142の一部に塗布し、またはその中に含めてもよい。
【0040】
本明細書で説明するように、キャニスタ本体142は主として、組織部位114からの滲出物を回収するか、または他の医療応用での液体を回収する役割を果たす。一部の患者の滲出物には固有の化学的および物理的特性がある。これらの特性は、流体がキャニスタに入る時の気泡生成と発泡を促進し、また流体には、多くの疎水性フィルタ膜に付着する可能性のある蛋白質が含まれていてもよい。通常の条件下では蛋白質の膜が徐々に形成されるが、蛋白質の膜の形成は、滲出液を泡立たせる原因となる発泡が生じると増進され得る。「滲出液の気泡」の存在により、気泡が破裂した時に、蛋白質を含む滲出液の微細な小滴が噴霧され、それによって蛋白質の付着率が最大となる。このような小滴の大きさが小さいために、疎水性フィルタの液体剥離効果が限定される。小滴が蒸発することにより、蛋白質の残留物は小滴が存在した後の表面に残る。疎水性フィルタの表面に残留物が蓄積されると、残留物はフィルタの性能と気流の障害となる。この閉塞は、キャニスタの能力のうちの一部しか回収していなくても発生する可能性があり、キャニスタを早期に処分することが必要となったり、運転コストが増大したりする。厳しい条件下では、フィルタが完全に閉塞することもありえ、それによってシステムは所期の治療を提供できなくなる。極端な場合には、閉塞によってフィルタ膜が完全に故障し、流体を空気から分離するという主な要求を満たせなくなり、下流の構成要素の汚染を招く。
【0041】
通気部160とこれに関連する疎水性フィルタの閉塞を防止するその他の手段として、通気部160をプラズマ処理工程中にプロテアーゼで被覆してもよい。プロテアーゼコーティングは酵素の効果を有し、それによってフィルタのその領域で蛋白質を分解し、堆積とフィルタの閉塞を防止する。このようなコーティングは、蛋白質によるフィルタの目詰まりを防止することに加えて、汚損防止層としても機能しうる。
【0042】
プラズマ処理工程中に通気部160の一態様として一体構造の疎水性フィルタを形成することに加えて、代替的なコーティングを塗布することにより、キャニスタ本体142の他の部分に他のコーティングを塗布してもよい。たとえば、キャニスタ本体142の他の部分を固化剤で被覆し、キャニスタ本体142の中に回収される流体の状態を安定化させ、または変化させてもよい。このようなコーティングによって、一部の減圧治療システムの超吸収性パウチの必要性が減る可能性がある。同様に、キャニスタ本体142の内部を、細菌を殺すか、または不活性化し、臭いを軽減または除去する殺菌剤で被覆してもよい。活性炭コーティングを塗布してもよく、それによって消臭用活性炭フィルタの必要性が減る。
【0043】
これに加えて、導管とキャニスタ本体に入る流体がキャニスタに入る時に引きずられることが少なくなるように、減圧導管をプラズマ処理工程で処理してもよい。この種のコーティングは、管の効率を増大させ、ひいては減圧治療ユニットがより正確かつ効率的に機能する能力を増大させることができる。
【0044】
キャニスタ本体142と一体構造の疎水性フィルタは、溶接されたフィルタや他の製造工程を使ってキャニスタ本体に組み付けられたフィルタと比較して、その他にも有利な属性を持ちうる。たとえば、材料の溶接が不要となるため、フィルタの形成により広い範囲から選択される材料を使用できる。さらにフィルタは、より溶接しにくい表面上に形成でき、それによってフィルタをキャニスタの湾曲した壁に容易に形成できる。溶接されたフィルタの場合、溶接によって、キャニスタ内に脆弱点ができる可能性があり、フィルタの溶接不良は液体が減圧治療ユニットに浸入する原因となる。
【0045】
プラズマ処理工程によるコーティングはまた、「ガンマ線に対して安定」であってもよく、すなわち、ガンマ線に不安定化されずに耐えることができる。たとえばPTFE等、疎水性コーティングの形成に使用される材料の中には、ガンマ線を保持するのに、そのポリマー構造に望ましくない変化が必ず生じうるものもある。プラズマ処理工程では、PTFE以外の材料のほうが、より塗布しやすいこともある。たとえば、ガンマ線安定性がより高いポリマーであるヘプタデカフルオロデシルアシレートをプラズマ処理工程で塗布してもよい。そのため、ガンマ線を用いた滅菌に、分解されずに耐えられる疎水性フィルタ要素を作製できる。これに加えて、プラズマコートソリューションは、いったん堆積させると動かないという有利な属性を有する。塗布されたコーティングは、蓋部146にすでに形成されたマイクロホールまたはその他の開口部(細孔162等)の内面を含めた、通気部160の表面全体に結合し、これを被覆する。被覆された細孔162は液体浸入に対してはるかに大きな撥水性を提供でき、これは細孔162が名目上、より小さな直径を有するため、フィルタの破過圧P(b)が増大するからである。細孔162と接触することになるどの液体の表面張力もまた、液体がフィルタを通過するには克服されなければならない。
【0046】
プラズマ処理工程を使って、複数のコーティングを塗布して、異なる化学基を塗布し、複数の機能性を持たせることができる。そのため、疎水性、親水性、抗蛋白、抗菌コーティングを塗布できる。
【0047】
ある例示的実施形態によれば、減圧キャニスタ本体の中に疎水性フィルタを形成する方法がさらに提供される。この方法は、その指定された領域が通気部160としての役割を果たすキャニスタ本体142を形成するステップを含む。この方法はまた、指定された領域を穿孔して、非常に小さい開口部、たとえば直径が0.25〜1マイクロメートルの細孔162をその領域に設けるステップを含む。その領域に疎水性フィルタの特性を持たせるために、この方法は、前述のように、指定された領域に疎水性コーティングを塗布するステップを含む。ある実施形態において、疎水性コーティングはフルオロカーボン、たとえばヘプタデカフルオロデシルアシレート等である。
【0048】
キャニスタ本体の一体構造の疎水性フィルタは、液体排出口と、気体はキャニスタの外に出られるが、液体はキャニスタの内部に保持できる液体空気分離手段の両方の機能を果たす。この方法は、創傷の滲出液の蛋白質が通気部160に堆積することによるフィルタの閉塞しやすさを極小化するステップを含んでもよい。蛋白質堆積の極小化または防止は、いくつかの方法で行うことができ、たとえば、バッフルまたは多孔性発泡体を提供する方法、またはキャニスタの疎水性コーティングと共にプロテアーゼを堆積させる方法がある。このようにすれば、蛋白質の疎水性フィルタへの到達が阻止されることによって、またはフィルタに到達した蛋白質が酵素により分解されることによって、蛋白質の堆積がさらに極小化または防止される。
【0049】
本明細書に記載の例示的実施形態は、いずれの種類、形状または大きさの減圧治療システムにも、かついずれの種類、形状または大きさのキャニスタにも使用できる。入口、排出口、および一体構造の疎水性フィルタを備える通気部の位置はまた、特定の減圧キャニスタの設計に応じて様々であってもよい。同様に、通気部と疎水性フィルタの形状は、減圧キャニスタの高低や形状に適合するように、必要に応じて変更できる。通気部と疎水性フィルタは、減圧治療システムへの使用に限定されないことにも留意されたい。通気部と疎水性フィルタはまた、液体空気分離手段を含むその他の医用回収キャニスタにも使用できる。
【0050】
本発明とその利点について、特定の例示的で非限定的な実施形態に関して説明したが、付属の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲から逸脱することなく、各種の変更、置換、順列、代替を加えることができると理解するべきである。当然のことながら、何れか1つの実施形態に関して説明した特徴はどれも、他の何れの実施形態にも当てはまる。
【0051】
当然のことながら、上述の利益と利点は、1つの実施形態に関していても、複数の実施形態に関していてもよい。さらに当然のことながら、「ある」項目に関する記載は、1つまたは複数のその項目を指す。
【0052】
本明細書に記載の方法のステップは、どのような適切な順序でも、適当であれば、同時にも実行できる。
【0053】
適当であれば、上記の実施形態の何れかの態様を上記の他の実施形態の何れかの態様と組み合わせて、同等または異なる特性を有し、同じまたは異なる問題に対応するまた別の例を形成することもできる。
【0054】
当然のことながら、好ましい実施形態の上記の説明は例として示されたにすぎず、当業者は様々な改良を加えることができる。上記の仕様、例、データは、本発明の例示的実施形態の構造と使用を十分に説明している。本発明の各種の実施形態をある程度の具体性で、または1つまたは複数の個々の実施形態に関連して上で説明したが、当業者であれば、特許請求の範囲から逸脱することなく、開示された実施形態に多くの改変を加えることができるであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図7