特許第6189849号(P6189849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6189849初期窒化段階に広範な温度範囲が設けられている低圧浸炭窒化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189849
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】初期窒化段階に広範な温度範囲が設けられている低圧浸炭窒化方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 8/34 20060101AFI20170821BHJP
   C23C 8/02 20060101ALI20170821BHJP
   C21D 1/06 20060101ALI20170821BHJP
   C21D 1/18 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C23C8/34
   C23C8/02
   C21D1/06 A
   C21D1/18 Z
【請求項の数】10
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-539273(P2014-539273)
(86)(22)【出願日】2012年10月8日
(65)【公表番号】特表2014-532808(P2014-532808A)
(43)【公表日】2014年12月8日
(86)【国際出願番号】EP2012069888
(87)【国際公開番号】WO2013064335
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年9月14日
(31)【優先権主張番号】1159875
(32)【優先日】2011年10月31日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514072621
【氏名又は名称】イーシーエム テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】ラピエレ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ランディノワ,ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】ジラール,イブ
(72)【発明者】
【氏名】ラロ,アルフレッド
【審査官】 祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−028541(JP,A)
【文献】 特開2006−002194(JP,A)
【文献】 特開平02−294461(JP,A)
【文献】 特表2008−538386(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/131487(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0126049(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/130484(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0103473(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0036462(US,A1)
【文献】 特開2010−189686(JP,A)
【文献】 特開2000−178710(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0016525(US,A1)
【文献】 特許第3931276(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0250921(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 8/00−12/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製部品の低圧浸炭窒化方法において、
温度上昇工程の後であって焼入れ工程の前に、交互に行う浸炭工程及び窒化工程を備え、
前記温度上昇工程は温度上昇のみの段階を有し、
該温度上昇のみの段階の後に、温度上昇が継続される初期窒化段階が続き、
該初期窒化段階は、700℃から750℃までの範囲内の温度から、860℃から1,000℃までの範囲内の温度まで実行されること
を特徴とする低圧浸炭窒化方法。
【請求項2】
前記初期窒化段階の直後に最初の浸炭工程が続くこと
を特徴とする請求項1に記載の低圧浸炭窒化方法。
【請求項3】
前記初期窒化段階の間、前記温度上昇は、前記温度上昇のみの段階と比べて小さい温度勾配で実行されること
を特徴とする請求項1に記載の低圧浸炭窒化方法。
【請求項4】
前記初期窒化段階の間、前記温度上昇は、3.5℃/分から16℃/分までの範囲内の温度勾配で実行されること
を特徴とする請求項3に記載の低圧浸炭窒化方法。
【請求項5】
前記温度上昇のみの段階は、8℃/分から70℃/分までの範囲内の温度勾配で実行されること
を特徴とする請求項3に記載の低圧浸炭窒化方法。
【請求項6】
前記初期窒化段階は、ある温度のステージを有すること
を特徴とする請求項3に記載の低圧浸炭窒化方法。
【請求項7】
前記焼入れの直前に行われ、温度低下を伴う最後の窒化工程を備えること
を特徴とする請求項1に記載の低圧浸炭窒化方法。
【請求項8】
前記温度低下は、900℃から800℃の間の温度に低下するまで実行されること
を特徴とする請求項7に記載の低圧浸炭窒化方法。
【請求項9】
前記温度低下は、10℃/分から1℃/分の間の温度勾配で実行されること
を特徴とする請求項7に記載の低圧浸炭窒化方法。
【請求項10】
前記最後の窒化工程は、ある温度のステージを有すること
を特徴とする請求項7に記載の低圧浸炭窒化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製部品、特に、限定はされないが、自動車の製造で用いられる部品の低圧浸炭窒化方法に関する。具体的には、本発明は、農業機械、工作機械、又は、航空分野の部品の製造で用いられる部品にも適用される。
【背景技術】
【0002】
一定温度で交互に行う浸炭工程及び窒化工程を備える鋼製部品の低圧浸炭窒化方法は欧州特許第1885904号明細書から知られている。交互に行う浸炭工程及び窒化工程は、温度上昇工程及び温度均等化工程の後であって、焼入れ工程の前に行われる。変形例として、温度上昇工程の間、及び/又は、温度均等化工程の間に温度800℃から窒化ガスを注入することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第1885904号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前述の欧州特許第1885904号明細書の方法を改善すること、即ち、好ましくは、処置時間の短縮と共に、取得する部品の品質を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明は、鋼製部品、特に、自動車の製造で用いられる部品の低圧浸炭窒化方法を提供する。該低圧浸炭窒化方法は、温度上昇工程の後であって焼入れ前に、一定温度で交互に行う浸炭工程及び窒化工程を備える。温度上昇工程は温度上昇のみの段階を有し、温度上昇のみの段階の後に、温度上昇が継続される初期窒化段階が続く。初期窒化段階は、700℃から750℃までの範囲内の温度から、860℃から1,000℃までの範囲内の温度まで実行される。
【0006】
従って、温度上昇工程の継続時間を増加させることなく、良好な窒化を推進する状態で行われる窒素濃縮が高まる。これにより、後続の窒化工程の1つを短くするか又は取り除くことが可能となり、総処置時間を減らすことが可能となる。
【0007】
本発明の有益なバージョンによれば、初期窒化段階の直後に第1浸炭工程が続く。従って、温度均等化段階を全てなくすことにより、窒化に最適な温度範囲内の初期窒化段階を長くすることができる。
【0008】
本発明の他の有益な態様によれば、初期窒化工程の間、温度上昇は、温度上昇のみの段階と比べて小さい温度勾配で実行される。従って、窒化に最適な温度範囲での処置時間は更に増加する。
【0009】
本発明の更に他の有益な態様によれば、本方法は、焼入れ直前に行われて温度低下を伴う最後の窒化工程を備える。従って、最後の窒化工程もまた、最適な温度範囲で実行されるので、処置の品質が改善される。
【0010】
前述の目的、特徴及び利点と、他の目的、特徴及び利点とは、本発明に係る低圧浸炭窒化方法の種々の具体的な限定されない実施の形態についての下記説明を読むことで明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る本発明の低圧浸炭窒化方法の様々な工程を示す簡略図である。
図2】他の実施の形態に係る本発明の低圧浸炭窒化方法の様々な工程を示す簡略図である。
図3】更に他の実施の形態に係る本発明の低圧浸炭窒化方法の様々な工程を示す簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照すると、本発明に係る低圧浸炭窒化方法は、周囲温度から、図中Ni1で示される温度700℃の点までの連続した直線によって示される最初の温度上昇のみの段階Mを有する最初の温度上昇工程を備える。処置されるべき鋼鉄の組成によれば、温度上昇のみの段階を、700℃から750℃までの範囲内の温度に到達するまで実行してもよい。温度上昇のみの段階は、10分から90分までの範囲内の継続時間を有する。即ち、温度上昇のみは8℃/分から75℃/分までの範囲内の温度勾配で実行される。
【0013】
そして、本方法は初期窒化段階N1を備え、初期窒化段階N1の間、温度上昇が、図示された例では、温度940℃まで継続される。実際には、温度940℃は、より良質の処置を達成することが可能な温度860℃から、より速い処置を行うことが可能な温度1,000℃の間の妥協点に相当する。
【0014】
初期窒化段階の第1実施の形態に対応する図1の実施の形態では、温度上昇は、規則的にではあるが、温度上昇のみの間の温度勾配よりも小さい3.5℃/分から16℃/分までの範囲内の温度勾配で継続する。初期窒化段階の継続時間は、この初期工程で固着することが望まれる窒素の量と、処置されるべき鋼鉄の組成とに応じた15分から45分までの範囲内である。
【0015】
周知であるように、初期窒化段階は、拡散段階と交互に行われる窒化ガス、例えばアンモニアの注入段階を有する。
【0016】
図2に示される初期窒化段階の第2実施の形態によれば、温度上昇のみの間と同じ温度勾配で、温度上昇が、750℃から850℃までの範囲内の温度の点まで継続する。ここで、750℃から850℃までの範囲内の温度の点は、800℃であり、図2中でNi2と示されている。そして、温度は図2中でNi3と示される時間まで、ある温度のステージに維持される。Ni3で示される時間から浸炭温度への到達が、強い温度上昇によって実現される。ステージの温度は、処置されるべき部品の組成を考慮した最適状態で初期窒化段階を行うために、周知の方法で選択される。なお、この点では、このステージを考慮して、部品に、受け入れることができない圧力を与えることがないように、最後の温度上昇を非常に速く、例えば、80℃/分から100℃/分で実行してもよい。
【0017】
図3によって示される初期窒化段階の第3実施の形態によれば、温度上昇は、点Ni1から、第1実施の形態での温度勾配よりも小さい温度勾配、好ましくは、2℃/分から8℃/分までの範囲内の温度勾配で、Ni4で示される時間まで継続する。ここで、Ni4で示される時間は温度850℃に対応する。強い温度上昇によって、温度850℃から浸炭温度への到達が、第2実施の形態の温度勾配と同様の温度勾配に従って実現される。
【0018】
初期窒化段階で用いられる如何なる実施の形態でも、本方法は、窒化段階と交互に行うn回の浸炭段階を備える。周知のように、浸炭工程及び窒化工程は、拡散段階と交互に行う図示しない処置ガスの注入段階を有する。図中には、線図が窒化工程N1と最後の浸炭工程Cnとの間に挿入されている。この最後の浸炭工程Cnの終わりに、本方法は、焼入れTの直前に行われて温度低下を伴う最後の窒化工程Nnを備える。
【0019】
図中の破線によって示される最後の窒化工程Nnの第1実施の形態によれば、温度低下によって、窒化に最適な温度範囲内にある温度への連続的な低下が実現される。一方で、この温度は、効果的な焼入れが可能である程、十分に高い。図示された例では、焼入れ前の最後の温度は840℃である。実際には、900℃から800℃までの範囲内における焼入れ前の最後の温度で、申し分のない結果が得られる。このように制限された温度の低下によって、焼入れの間の部品への圧力が下がることが観測されている。
【0020】
最後の窒化工程は、好ましくは15分から60分の間の継続時間を有する。これは、10℃/分から1℃/分までの範囲内の温度勾配に対応する。初期窒化段階と同様に、最後の窒化工程は、好ましくは、拡散段階と交互に行う窒化ガスの注入段階を有する。
【0021】
図2中の破線によって示される最後の窒化工程Nnの第2実施の形態によれば、温度低下は、最初、強く、鋼鉄に過度な圧力を引き起こさない、可能な限り大きな温度勾配で、処置されている鋼鉄に最適な窒化温度まで下げる。処置されている鋼鉄に最適な窒化温度は、図中Nn1で示され、ここでは840℃である。温度低下の後、温度は焼入れの開始まで、ある温度のステージに維持される。
【0022】
実際には、初期窒化段階の任意の実施の形態を、最後の窒化段階の任意の実施の形態と組み合わせることで本発明に係る低圧浸炭窒化方法を実施することができる。または、たとえ従来通りに、処置サイクルを終わらせても、即ち、初期窒化段階の任意の実施の形態を、浸炭温度から直接に行われる焼入れと組み合わせても、本発明に係る低圧浸炭窒化方法を実施することができる。
【0023】
なお、本発明に係る窒化段階の増加された効率に起因して、2つの浸炭工程間に含まれる少なくとも1つの窒化工程を、単純な拡散工程に置き換えることが可能となる。この工程は、窒化工程よりも短いので、処置の総継続時間は短くなる。
【0024】
当然のことながら、本発明は前述した実施の形態に限定されず、例えば、特許請求の範囲で定義される本発明の枠組みから逸脱しない別の実施の形態に本発明を適用してもよい。具体的には、図中の破線で示すように、一定の勾配に従って初期温度上昇を実行してもよい。この場合、注目すべきは、図中の縞の点線で示されるように、窒化段階の継続時間が短縮されることである。
【0025】
初期窒化段階の間の小さな温度勾配に起因して、処置されるべき部品の温度が均等になる時間を有するので、前述の欧州特許第1885904号明細書で提供された均等化工程を削除することが可能であることが認められている。しかしながら、必要であれば、例えば、処置されるべき部品の具体的な構成に起因して、短い温度均等化工程を、初期窒化段階と、最初の浸炭段階との間に設けてもよい。
【0026】
本発明は、2011年10月31日に出願されて、その内容(本文、図面及び特許請求の範囲)が参照によって本明細書に組み込まれる仏国特許出願第11/59875号明細書の優先権を主張する。
図1
図2
図3