特許第6189853号(P6189853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189853
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】仕切り流体分離
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/02 20060101AFI20170821BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20170821BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   B01D71/02
   B01D69/12
   B01D69/10
【請求項の数】2
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-543612(P2014-543612)
(86)(22)【出願日】2012年11月28日
(65)【公表番号】特表2014-534069(P2014-534069A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】US2012066746
(87)【国際公開番号】WO2013082077
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年11月27日
(31)【優先権主張番号】61/563,860
(32)【優先日】2011年11月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】514311586
【氏名又は名称】エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ExxonMobil Research and Engineering Company
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100090468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐久間 剛
(72)【発明者】
【氏名】ドゥルーリー,ケネス ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ダニング,ダリル エル
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ポール オークリー
(72)【発明者】
【氏名】ルチェッシ,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】パートリッジ,ランダール ディー
(72)【発明者】
【氏名】スターンキスト,ブランドン ティー
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−169679(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/134514(WO,A1)
【文献】 特開2004−306020(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 71/02
B01D 69/10
B01D 69/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体分離膜エレメント(100)であって
セラミックモノリス(120)の軸線方向長さ(123)に沿って延在する多孔質体流路壁群(124)により隔てられた配列平行流路群(122)を有するセラミックモノリス(120)と、
第1の複数の前記多孔質体流路壁(124)を前記セラミックモノリス(120)の前記軸線方向長さ(123)に沿って被覆する機能膜(126)であって、該機能膜(126)が、流体(90)を非透過部分(90B)及び透過部分(90A)に分離するように機能する、前記機能膜(126)と、
前記セラミックモノリス(120)の軸線方向端部に配置され、かつ複数の開口部(134)を有する分割エンドキャップ(130)と、を備え
前記分割エンドキャップ(130)の前記複数の開口部(134)は、前記セラミックモノリス(120)の多孔質体流路壁群(124)の複数の離散配置貫通セグメント(128)を画定し、
前記分割エンドキャップ(130)は、前記流体(90)を誘導して前記複数の離散配置貫通セグメント(128)に流入させ、前記離散配置貫通セグメント群(128)の各離散配置貫通セグメントは、互いから複数の非被覆多孔質体流路壁(124B)により隔てられ、前記分割エンドキャップ(130)は、前記複数の開口部(134)から前記複数の離散配置貫通セグメント(128)が露出し、そして前記複数の非被覆多孔質体流路壁(124B)を覆うように配置され、
前記分割エンドキャップ(130)における前記セラミックモノリス(120)の側とは反対側において、前記分割エンドキャップ(130)に接触する端面シール(160)を備え、前記端面シール(160)は、流体密閉壁部分群(164)により隔てられた複数の窓(162)を有し、前記窓群(162)は、前記複数の離散配置貫通セグメント(128)を露出させるように配置され、そして流体密閉壁部分群(164)は、流体(90)が前記複数の窓(162)の間で遮断される状態を維持し、
前記離散配置貫通セグメント群(128)に流入する流体(90)は、殆どの部分が前記離散配置貫通セグメント群(128)を通って出て行く非透過部分(90B)、及び前記セラミックモノリス(120)から、前記セラミックモノリス(120)の外周面(125)を通って半径方向外側に出て行く透過部分(90A)に分離される、
流体分離膜エレメント(100)。
【請求項2】
前記多孔質セラミックモノリス(120)が中に配置されるハウジングアセンブリ(140)であって、
流入側流体ポート(142)と、
流出側非透過ポート(144)と、
流出側透過ポート(146)と、
を含むハウジングアセンブリ(140)を更に備えた、請求項に記載の流体分離膜エレメント(100)。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2011年11月28日に出願された米国仮特許出願第61/563,860号の優先権の利益を米国特許法第119条に基づいて主張するものであり、この仮特許出願の内容は、本明細書で参照することにより、当該出願の内容全体が援用され、そして本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、概して、仕切られたセラミックモノリスに関するものであり、特に流体を流体成分に分離するために仕切られたセラミックモノリスに関するものである。
【背景技術】
【0003】
一般的に、ガソリン燃料使用内燃機関は、点火を圧縮行程中に開始して燃焼室内の気化ガソリンに点火する。幾つかの運転状態では、幾つかの内燃機関は、駆動出力を、圧縮行程の点火時期を遅角させる要求に応じて下げて、エンジンノッキングを起こす燃料の早期点火を防止する。点火時期を進角させるためには、耐ノッキング性を向上させた、リサーチ法オクタン価(RON)がより高い燃料を使用することができる。しかしながら、RONがより高い燃料は一般的に、RONがより低い燃料の場合よりも購入費用が高く付く。高RON燃料の入手可能性も、市場状況によって制限される虞がある。
【0004】
特許文献1に記載されているような燃料分離装置は、混合燃料流を、燃料分離膜を通過させることにより、燃料流を高RON燃料及び低RON燃料を有する燃料流に分離する。しかしながら、このような燃料分離装置は、燃料の高RON燃料及び低RON燃料の分離能力が低下し易く、かつコストが高く付いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,107,942号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、コスト効率が良く、かつ仕切られたセラミックモノリスの能力を向上させて流体成分の分離に使用されるようにする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
種々の実施形態によれば、浸透気化分離膜エレメントは、モノリスの軸線方向長さに沿って延在する多孔質体流路壁群により隔てられた配列平行流路群と、そして第1の複数の前記多孔質体流路壁を、前記モノリスの前記軸線方向長さに沿って被覆する機能膜と、を有するセラミックモノリスを含む。前記機能膜は、流体を非透過部分及び透過部分に分離するように機能する。前記機能膜で被覆される前記多孔質体流路壁群は、複数の離散配置貫通セグメントを画定し、前記離散配置貫通セグメント群の各離散配置貫通セグメントは、互いから複数の非被覆多孔質体流路壁により隔てられる。前記離散配置貫通セグメント群に流入する流体は、殆どの部分が前記離散配置貫通セグメント群を通って出て行く非透過部分、及び前記セラミックモノリスから、前記非被覆多孔質体流路壁群、多孔質モノリス担体を通って、そして前記モノリスの外周面を通って半径方向外側に出て行く透過部分に分離される。
【0008】
別の実施形態によれば、車載用燃料分離装置は、浸透気化分離膜エレメントと、燃料加熱器と、そして燃料冷却器と、を含む。前記浸透気化分離膜エレメントは、モノリス長さに沿って延在する多孔質体流路壁群により隔てられた配列平行流路群と、そして複数の多孔質体流路壁を前記モノリス長さに沿って被覆するポリマー膜と、を有するセラミックモノリスを含む。前記浸透気化分離膜エレメントの前記ポリマー膜は、複数の被覆多孔質体流路壁から成る複数の離散配置貫通セグメントを画定する。前記浸透気化分離膜エレメントの前記離散配置貫通セグメント群の各離散配置貫通セグメントは、互いから非被覆多孔質体流路壁群により隔てられる。
【0009】
更に別の実施形態によれば、浸透気化分離膜エレメント用セラミックモノリスは、前記モノリスの軸線方向長さに沿って延在する多孔質体流路壁群により隔てられた配列平行流路群を含む。前記セラミックモノリスは更に、第1の複数の前記多孔質体流路壁を、前記モノリスの前記軸線方向長さに沿って被覆する機能膜を含み、該機能膜は、流体を非透過部分及び透過部分に分離するように機能する。前記機能膜で被覆される前記多孔質体流路壁群は、複数の離散配置貫通セグメントを画定し、前記離散配置貫通セグメント群の各離散配置貫通セグメントは、互いから複数の非被覆多孔質体流路壁により隔てられる。前記離散配置貫通セグメント群に流入する流体は、殆どの部分が前記離散配置貫通セグメント群を通って出て行く非透過部分、及び前記セラミックモノリスから、前記非被覆多孔質体流路壁群を通って、そして前記モノリスの外周面を通って半径方向外側に出て行く透過部分に分離される。
【0010】
これらの実施形態の更に別の特徴及び利点は、以下の詳細な説明に開示され、そしてかなりの部分が、この技術分野の当業者には、当該説明から容易に明らかになる、または以下の詳細な説明、請求項のみならず添付の図面を含む、本明細書において記載される実施形態を実施することにより容易に認識される。
【0011】
これまでの概略説明、及び以下の詳細な説明は共に、種々の実施形態を記述し、そして特許請求する主題の本質及び特徴を理解するための概要または概略を提供するために行なわれる。添付の図面は、種々の実施形態に関する更なる理解を可能にするために取り入れられ、そして本明細書の一部に組み込まれ、かつ本明細書の一部を構成する。これらの図面は、本明細書において記載される種々の実施形態を例示し、そして当該説明とともに、特許請求する主題の原理及び動作を説明するために利用される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本明細書において示され、かつ記載される1つ以上の実施形態による仕切られたセラミックモノリスを有する浸透気化分離膜エレメントの切り欠き図の概要を示している。
図2図1に示す仕切られたセラミックモノリスを有する浸透気化分離膜エレメントをA−A線に沿って切断して見た部分側部断面図の概要を示している。
図3図1に示す仕切られたセラミックモノリスを有する浸透気化分離膜エレメントの1つの実施形態をB−B線に沿って切断して見た前面部分断面図の概要を示している。
図4図1に示す仕切られたセラミックモノリスを有する浸透気化分離膜エレメントの1つの実施形態をB−B線に沿って切断して見た前面部分断面図の概要を示している。
図5図1に示す仕切られたセラミックモノリスを有する浸透気化分離膜エレメントの1つの実施形態をA−A線に沿って切断して見た部分側部断面図の概要を示している。
図6】本明細書において示され、かつ記載される1つ以上の実施形態による端面シールの斜視図の概要を示している。
図7A】本明細書において示され、かつ記載される1つ以上の実施形態による端面シールの斜視図の概要を示している。
図7B】本明細書において示され、かつ記載される1つ以上の実施形態による端面シールの斜視図の概要を示している。
図8】本明細書において示され、かつ記載される1つ以上の実施形態による仕切られたセラミックモノリスを有する浸透気化分離膜エレメントの部分側部断面図の概要を示している。
図9】本明細書において示され、かつ記載される1つ以上の実施形態による浸透気化分離膜エレメントの部分側部断面図の概要を示している。
図10】本明細書において示され、かつ記載される1つ以上の実施形態による浸透気化分離膜エレメントを含む車載用燃料分離装置の概要を示している。
図11】本明細書において示され、かつ記載される1つ以上の実施形態によるガソリンを、仕切りエレメントの個別セグメント群を使用して分離する浸透気化分離能を示している。
図12】本明細書において示され、かつ記載される1つ以上の実施形態によるガソリンを浸透気化分離法で分離するために使用される仕切りエレメントのA)未使用状態の画像、B)1セクションを使用した状態の画像、及びC)2セクションを使用した状態の画像を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図1を参照するに、仕切られたセラミックモノリスを組み込んだ浸透気化分離(パーベーパレーション)装置が、本明細書において示され、かつ説明される1つ以上の実施形態に従って模式的に描かれている。セラミックモノリスは、多孔質体流路壁により隔てられた複数の平行流路を備えるハニカム型構造である。複数の多孔質体流路壁は、機能膜でモノリスの軸方向長さに沿って被覆されている。モノリスの離散配置貫通セグメント群を画定するために、当該機能膜は、モノリス内を流れる流体を非透過部分と透過部分に分離する。離散配置貫通セグメント群の各離散配置貫通セグメントは、互いから、複数の非被覆多孔質体流路壁により隔てられる。離散配置貫通セグメント群のうちの1つの離散配置貫通セグメントに流れ込む流体は、離散配置貫通セグメント群に沿って流れる非透過部分と被覆多孔質体流路壁及び非被覆多孔質体流路壁を通って流れる透過部分に分離される。特定の浸透気化分離膜エレメント、及び浸透気化分離膜エレメントを形成する方法が、本明細書において更に詳細に説明される。
【0014】
“パーベーパレイション(pervaporation)”という用語は、目標流体を、モノリス壁の膜を透過させることができることを指す。この現象は、溶液拡散プロセスであり、この溶液拡散プロセスは、供給液成分が膜に吸着される現象(所定の成分の溶解性Sで特徴付けられる)、膜を透過して拡散する現象(所定の成分の拡散性Dで特徴付けられる)、及び成分が膜の裏面から吸着解放されてモノリス担体に向かって流れる現象により特徴付けられる。S及びDは、アセンブリへの供給液の各化学種について異なっている。これは、所定の材料の透過性または透過度PをD×Sとして与える。更に、別種類の化学種に対する或る種類の化学種の比を表わす選択性αi/jは、P/Pで与えられる。
【0015】
図1を詳細に参照するに、浸透気化分離膜エレメント100の一部が描かれている。浸透気化分離膜エレメント100はモノリスアセンブリ110を含み、このモノリスアセンブリ110は、セラミックモノリス120と、上流側分割エンドキャップ130と、そして下流側分割エンドキャップ132と、を含む。セラミックモノリス120は、軸線方向長さ123、及び固有外周部または外周面125を有する。上流側分割エンドキャップ130及び下流側分割エンドキャップ132は、セラミックモノリス120の軸線方向両端部121に沿って配置される。モノリスアセンブリ110は、切り欠いて図示されるハウジングアセンブリ140の内部に配置される。ハウジングアセンブリ140はモノリスアセンブリ110を取り囲み、そして流体密閉接続状態を流入側流体ポート142、流出側非透過ポート144、及び流出側透過ポート146の間に実現する。以下に説明するように、セラミックモノリス120に流れ込む流体は、2つの流体流に分離される。一方の流体流は、セラミックモノリス120の複数の平行流路122を軸線方向に流れ、そして浸透気化分離膜エレメント100から流出側非透過ポート144を通って流出する。他方の流体流は、セラミックモノリス120の複数の多孔質体流路壁124を透過し、そして浸透気化分離膜エレメント100から流出側透過ポート146を通って流出する。
【0016】
図1及び図3〜4を参照するに、複数の平行流路122は断面が略円形である。しかしながら、別の実施形態では、製品内の複数の流路は、矩形、正方形、長円形、三角形、八角形、六角形、またはこれらの形状の組合せを含む他の断面形状を有することができる。
【0017】
本明細書において記載される実施形態では、セラミックモノリス120は、最大約500流路/平方インチ(channels per square inch:cpsi)の流路密度を有するように形成することができる。例えば、幾つかの実施形態では、セラミックモノリス120は、約70cpsi〜約400cpsi(約11流路/平方センチメートル〜約62流路/平方センチメートル)の範囲の流路密度を有することができる。他の実施形態では、セラミックモノリス120は、約200cpsi〜約250cpsi(約31流路/平方センチメートル〜約39流路/平方センチメートル)の範囲の流路密度を有することができる、または約70cpsi〜約150cpsi(約11流路/平方センチメートル〜約23流路/平方センチメートル)の範囲の流路密度を有することもできる。
【0018】
本明細書において記載される実施形態では、セラミックモノリス120の多孔質体流路壁124は、約10ミル(254マイクロメートル)超の厚さを有することができる。例えば、幾つかの実施形態では、これらの多孔質体流路壁124の厚さは、約10ミル(254マイクロメートル)〜最大約30ミル(762マイクロメートル)の範囲とすることができる。幾つかの他の実施形態では、これらの多孔質体流路壁124の厚さは、約15ミル(381マイクロメートル)〜約26ミル(660マイクロメートル)の範囲とすることができる。
【0019】
本明細書において記載される浸透気化分離膜エレメント100の実施形態では、セラミックモノリス120のこれらの多孔質体流路壁124は、コーティングをセラミックモノリス120に塗布する前には必ず、目詰まりを生じていない場合の気孔率(すなわち、コーティングをセラミックモノリス120に塗布する前に必ず得られる気孔率)%P≧35%を有することができる。幾つかの実施形態では、これらの多孔質体流路壁124の目詰まりを生じていない場合の気孔率は、20%≦%P≦60%が成り立つようにすることができる。他の実施形態では、これらの多孔質体流路壁124の目詰まりを生じていない場合の気孔率は、25%≦%P≦40%が成り立つようにすることができる。
【0020】
一般的に、セラミックモノリスを、約1マイクロメートル超の平均細孔サイズを有するように形成すると、有望な膜コーティングを基材の上に形成することが非常に難しくなる。従って、一般的に、これらの多孔質体流路壁の平均細孔サイズを約0.01マイクロメートル〜約0.80マイクロメートルに維持することが望ましい。
【0021】
本明細書において記載される実施形態では、セラミックモノリス120のハニカム担体は、例えばコージェライト、ムライト、炭化珪素、酸化アルミニウム、チタン酸アルミニウム、または高温微粒子濾過用途への使用に適する任意の他の多孔質材料のようなセラミック材料により形成される。
【0022】
次に、図1及び2を参照するに、分割エンドキャップ130,132は、セラミックモノリス120の複数の平行流路122を露出させるように配置される複数の開口部134を含むと同時に、セラミックモノリス120の複数の他の平行流路を覆い、かつ密閉する。分割エンドキャップ130,132は、セラミックモノリス120の軸線方向の両端部に、流密状態を分割エンドキャップ130,132とセラミックモノリス120との間に形成する接着剤136で固定される。
【0023】
図2を参照するに、モノリスアセンブリ110の一部が描かれている。セラミックモノリス120は、多孔質体流路壁群124により隔てられた配列平行流路122を含む。これらの多孔質体流路壁124は、セラミックモノリス120の軸線方向長さに沿って延在する。これらの多孔質体流路壁124によって、流体は、隣接する平行流路122の間のこれらの多孔質体流路壁124を透過することができる。複数の多孔質体流路壁124は、機能膜126で被覆される。機能膜126は、流体流の幾つかの構成部分を透過させることができ、そして他の構成部分を透過させない。流体90がモノリスアセンブリ110内を流れることにより、機能膜126は、当該流体を、複数の平行流路122内を流れる非透過部分90Bと、被覆多孔質体流路壁群124を透過する透過部分90Aに分離する。
【0024】
幾つかの実施形態では、これらの多孔質体流路壁124は、塗布中間層である無機コーティング層127で被覆され、この塗布中間層は、これらの多孔質体流路壁124への機能膜126の接着性を向上させる。これらの例として、米国特許出願公開第2008/0035557号明細書に開示される無機膜、及び同様の膜を挙げることができる。
【0025】
ジエポキシ−n−オクタン−ポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエチル)(MW400)を含む機能膜126の例
(DENO−D400),架橋有機ポリマー材料。1つの例では、多孔質媒体上で固化されると、DENO−D400は、高RON(例えば、約100超のRONを有する燃料部分)を有する液体及び蒸発燃料のような流体流を、固化ポリマー及び多孔質媒体を選択的に透過させるとともに、低RONを有する液体及び蒸発燃料が、固化ポリマー及び多孔質媒体を透過するのを抑制することができる。従って、機能膜126は、燃料流を、低RONを有する非透過部分と、高RONを有する透過部分に分離する。機能膜126の1つの例がDENO−D400であるが、例えば米国特許第5,550,199号明細書に記載されているようなポリエステルポリイミド、及び例えば、米国特許第8,119,006号明細書及び米国特許出願第61/476,988号明細書に記載されているような他のポリエステル−エポキシアミンのような他の機能膜を使用することができることを理解されたい。
【0026】
これらの多孔質体流路壁124にコーティングされる機能膜126の透過性は、これらの平行流路122に流れ込む流体の温度に応じて変わり得る。一般的に、流体の温度が高くなると、機能膜126の透過流量が大きくなる。しかしながら、機能膜126の透過流量が大きくなると、流体流の透過部分の平均RONが変化する。平均RONと透過流量の関係をバランスさせる最適な運転設定点を実現することができる。浸透気化分離膜エレメント100に流れ込む約60〜約200℃の温度、かつ約200〜約1000kPaの圧力、好ましくは約120〜約160℃の温度、かつ約400〜約600kPaの圧力の流体流は、殆どの市販ガソリンから得られる95超のRON、好適には約100超のRONを有する有効量の燃料透過部分を供給することができる。
【0027】
図2及び3に示すように、セラミックモノリス120の幾つかの多孔質体流路壁124Aが機能膜126で被覆されているのに対し、セラミックモノリスの他の多孔質体流路壁群124Bは、機能膜126で被覆されていない。図2に示すように、分割エンドキャップ130の固体部分の後方に配置されるこれらの多孔質体流路壁124が、機能膜126で被覆されないままになっているのに対し、分割エンドキャップ130の開口部群134の後方に配置されるこれらの多孔質体流路壁124は、機能膜126で被覆されている。
【0028】
図3を参照するに、被覆多孔質体流路壁124A、及び非被覆多孔質体流路壁124Bの位置のレイアウトが模式的に描かれている。これらの被覆多孔質体流路壁124Aは、公称境界129に接触する、または公称境界129の内側にある多孔質体流路壁124及び平行流路122として図示される複数の離散配置貫通セグメント128を画定する。これらの離散配置貫通セグメント128の各々は、互いから、公称境界129の外側に全体がある多孔質体流路壁124として図示される複数の非被覆多孔質体流路壁124Bにより隔てられる。幾つかの実施形態では、複数の非被覆多孔質体流路壁124Bは、セラミックモノリス120の外周面125に沿って配置される。固有外周面125に沿って配置されるこれらの非被覆多孔質体流路壁124Bによって流体の透過部分を、半径方向外側に向かって外周面125を透過させることができ、そしてハウジングアセンブリ140で捕集することができ、そして流出側透過ポート146(図1)に向かって引き出すことができる。
【0029】
本明細書において記載される実施形態では、機能膜126は、これらの多孔質体流路壁124に、多種多様な塗布方法を用いてコーティングすることができる。機能膜126は、セラミックモノリス120に、米国特許出願公開第2008/0035557A1号明細書に記載の通りに塗布する、または別の構成として、米国特許出願第61/476,988号明細書に記載されるスリップコーティング法により塗布することができる。機能膜は、セラミックモノリス120に、水性エマルジョンコーティング剤として塗布することができる。水性エマルジョンコーティングはセラミックモノリス120に、セラミックモノリス120を水性エマルジョン“浴”に少なくとも一部を沈めることにより施すことができる。次に、水性エマルジョンを硬化させて、機能膜126を多孔質体流路壁124の周りで固化させる。この水性エマルジョンコーティングは、水性スリップコーティングのような他のコーティングプロセスと組み合わせることができる。
【0030】
別の実施形態では、機能膜126は、“噴霧(fogging)”プロセスにより塗布することができ、この噴霧プロセスでは、機能膜を形成する浸透気化分離膜用未硬化ポリマー材料の液滴を空気中に噴霧してエアロゾルを形成する。セラミックモノリス120を、浸透気化分離膜用ポリマー材料のエアロゾルに曝し、そしてこれらの液滴が、凝縮液を多孔質体流路壁124上に形成する。次に、この凝縮液を硬化させて、機能膜126をこれらの多孔質体流路壁124の周りで固化させる。
【0031】
非被覆多孔質体流路壁124Bで取り囲まれる平行流路122は、浸透気化分離膜用ポリマー材料をセラミックモノリス120に塗布する前にマスクされる。幾つかの実施形態では、分割エンドキャップ130は、これらの非被覆多孔質体流路壁124Bに浸透気化分離膜用ポリマー材料がコーティングされないように、これらの非被覆多孔質体流路壁124Bをマスクする。他の実施形態では、ブロッキングプレートで、これらの非被覆多孔質体流路壁124Bに浸透気化分離膜用ポリマー材料がコーティングされないように、これらの非被覆多孔質体流路壁124Bをマスクする。このブロッキングプレートは、消耗品とすることができる、または基材にコーティングを施すために使用される装置の装備品とすることができる。
【0032】
固化して機能膜126を形成する浸透気化分離膜用ポリマー材料をこれらの多孔質体流路壁124に、約1〜約10マイクロメートルの厚さで塗布する。例えば、幾つかの実施形態では、機能膜126は、約2〜約9マイクロメートルの厚さを有する。更に、多孔質体流路壁124が、これらの多孔質体流路壁124と機能膜126の中間に塗布される無機コーティング層127を含む場合、当該無機コーティング層は、最大約5マイクロメートルの厚さに塗布される。無機コーティング層127は普通、これらの多孔質体流路壁124の透過性を低下させる。
【0033】
セラミックモノリス120を使用して燃料分離を行なう実施形態では、セラミックモノリス120、機能膜126、及び無機コーティング層127は、もし有しているとすれば、浸透気化分離膜エレメントに流れ込むいずれの燃料による化学的腐食に対しても耐久性が大きい。ガソリンは、広い沸点範囲を有する芳香族炭化水素及び脂肪族炭化水素の複雑な混合物であり、そしてこれらには限定されないが、酸化防止剤、金属不活性剤、洗浄剤、色素、メチルtert−ブチルエーテル、エチルtert−ブチルエーテル、メタノール、エタノール、n−ブタノール、テトラエチル鉛、及びメチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニルを含む多種多様な成分及び添加剤を含むことができる。更に、燃料に接触するようになる可能性がある浸透気化分離膜エレメント100の構成部品は、浸透気化分離膜エレメントに流れ込む燃料による化学的腐食に対する耐久性が大きい材料により形成される。例えば、ハウジングアセンブリ140は、ステンレス鋼により形成することができる。端面シール160は、Viton(登録商標)フルオロエラストマーにより形成することができる。
【0034】
図4を参照するに、被覆多孔質体流路壁124A及び非被覆多孔質体流路壁124Bの他のパターンが、セラミックモノリス120について、例えば図4に示す通りに、被覆多孔質体流路壁124A及び非被覆多孔質体流路壁124Bのパターンを変えることにより想到され、離散配置貫通セグメント128の数を変更することができる。
【0035】
再度、図1〜3を参照するに、一般的に、流体は、液体及び/又は蒸気として離散配置貫通セグメント群128のうちの1つの離散配置貫通セグメント128の被覆多孔質体流路壁124Aに流れ込む。1つの実施形態では、流体は燃料、例えばガソリンである。燃料がセラミックモノリス120内を流れるとき、高RON成分を有する燃料部分は、これらの被覆多孔質体流路壁124Aを選択的に透過して浸透気化分離され、そしてこれらの非被覆多孔質体流路壁124Bに流れ込む。これらの非被覆多孔質体流路壁124Bは、これらの被覆多孔質体流路壁124Aに比べて透過性が高いので、高RONを有し、かつこれらの非被覆多孔質体流路壁124Bを通り抜ける燃料部分は、モノリスアセンブリ110から半径方向に流れ出して、ハウジングアセンブリ140に流れ込む。高オクタン価成分を多量に含む燃料部分は、当該燃料部分が浸透気化分離膜エレメント100から出て行く先の流出側透過ポート146に回収される。
【0036】
これとは異なり、機能膜126は、低RONを有する燃料部分が、これらの被覆多孔質体流路壁124Aを透過するのを選択的に抑制するので、燃料の低RON成分のみが、セラミックモノリス120内を、これらの離散配置貫通セグメント128内の平行流路群122の軸線方向長さに沿って流れる。低RONを有する燃料部分は、これらの離散配置貫通セグメント128内の複数の平行流路122の内部にセラミックモノリス120の軸線方向長さに沿って滞留し、そして当該燃料部分が浸透気化分離膜エレメント100から出て行く先の流出側非透過ポート144に誘導される。
【0037】
仕切られたモノリス120を燃料分離装置に利用する場合、燃料分離装置の分離能力は時間と共に低下する。機能膜126を取り入れた燃料分離装置の分離能力は、当該膜が、燃料の高沸点芳香族成分及び添加剤成分によって汚れることにより悪影響を受ける。高RON燃料の分離能力を長期間に亘って高く維持するために、本開示の浸透気化分離膜エレメント100は、セラミックモノリス120を貫通する複数の離散配置貫通セグメント128を含む。燃料は、単一の離散配置貫通セグメント128内を、当該離散配置貫通セグメント128によって分離される高RON燃料の分離能力が閾値を下回るようになるまで、通過するように誘導される。一旦、第1離散配置貫通セグメント128による分離能力が当該閾値を下回ると、当該離散配置貫通セグメント128は、準最適状態で動作するとして分類することができる。次に、燃料を、準最適状態で動作する離散配置貫通セグメント128から離れるように誘導して、正常状態で動作する離散配置貫通セグメント128に流れ込ませることにより、同じモノリスアセンブリ110による高RON燃料の必要な分離能力を確保する。従って、単一のセラミックモノリス120の使用期間は、セラミックモノリス120を複数の離散配置セクションに分けることにより長くすることができる。
【0038】
次に、図5及び6を参照するに、モノリスアセンブリ110をハウジングアセンブリ140内に配置して、浸透気化分離膜エレメント100が流密状態を維持して、流体の透過部分が、流体の供給部分及び非透過部分の両方と混合するのを防止する。環状O−リング112をモノリスアセンブリ110とハウジングアセンブリ140との間に配置して、セラミックモノリス120から半径方向外側に流れる流体の透過部分が全て、モノリスアセンブリ110とハウジングアセンブリ140との間の境界が形成する流体密閉ゾーン内に捕集されるようにする。流体密閉ゾーン内に捕集された流体の透過部分は、浸透気化分離膜エレメント100から流出側透過ポート146に誘導される。
【0039】
図5に示す実施形態では、浸透気化分離膜エレメント100は端面シール160を含み、この端面シール160は、モノリスアセンブリ110に接触し、そして流密状態をハウジングアセンブリ140の結合リング147とモノリスアセンブリ110との間に形成する。端面シール160は、離散配置貫通セグメント群128のうちの1つの離散配置貫通セグメント128に流れ込む流体が、離散配置貫通セグメント群128のうちの別の離散配置貫通セグメント128に流入するのを防止する。図5に示すように、端面シール160は、上流側分割エンドキャップ130に接触し、そして壁部分164により隔てられた複数の窓162を含む。図6を参照するに、端面シール160の幾つかの実施形態は、セラミックモノリス120の離散配置貫通セグメント群128の形状及びサイズ(すなわち、図3に示すような)に略一致する形状及びサイズを有する複数の窓162を含む。図5に示すように、結合リング147は、結合リング147の接触面149の陥凹部に収納されるシールグランド148を含む。シールグランド148は、端面シール160に略一致する形状及びサイズを有することにより、端面シール160がシールグランド148の内部に、モノリスアセンブリ110が結合リング147の接触面149に接触すると配置されるようになる。シールグランド148は、端面シール160の支持体となることにより、端面シール160がモノリスアセンブリ110との接触から外れるのを防止するので、モノリスアセンブリ110とハウジングアセンブリ140の結合リング147との間の流密状態が破れるのを防止する。特に、端面シール160及びシールグランド148の配置について上に説明してきたが、シールグランド148は、浸透気化分離膜エレメント100の多種多様な構成部品内に配置することができることを理解されたい。
【0040】
次に、図7A及び7Bを参照するに、端面シール群の別の実施形態が模式的に描かれている。これらの実施形態では、これらの端面シール160は、対応するモノリスアセンブリ110内の離散配置貫通セグメント群128の数と比較して、少ない数の窓162を有する。例えば、図7Aは、1個の窓162を有する端面シール160を模式的に描いている。端面シール160の壁部分164は、流密状態を結合リング147とモノリスアセンブリ110との間に形成し、そしてモノリスアセンブリ110の未使用離散配置貫通セグメント群128をマスクして、不所望な流体の流入を防止する。従って、図7Aの端面シール160を用いて、端面シール160の取り付け先のモノリスアセンブリの1個の貫通セグメントを切り離すことにより、流体がモノリスアセンブリに流入して窓162から覗いている貫通セグメントのみを流れるように制限し、そして他の貫通セグメント群をマスクすることができることを理解されたい。図7Bは、2個の窓162を備える端面シール160を描いており、これらの窓162で、端面シール160の取り付け先のモノリスアセンブリの対応する貫通セグメント群を切り離している。この実施形態では、端面シール160は、流体が、これらの窓162から覗いているモノリスアセンブリの貫通セグメント群だけに流入するのを許可し、そして流体が、端面シール160でマスクされる貫通セグメント群に流入するのを防止する。
【0041】
図6、7A、及び7Bは、それぞれ4個、1個、及び2個の窓を備えるシールマスクを描いているが、これらのシールマスクは、任意の個数の窓を備えるように形成して、モノリスアセンブリ110の所望の個数の貫通セグメントを容易に露出させ、そして/またはマスクすることができることを理解されたい。特定の個数の貫通セグメントに流入する流体流を制御するためにこれらのシールマスクを使用して、浸透気化分離膜エレメントの分離能力、浸透気化分離膜エレメントの透過/非透過分離速度、及び分離流体の透過部分及び非透過部分の揮発濃度を制御することができる。例えば、露出貫通セグメントの個数を2個(すなわち、図7Bのシールマスクを使用する場合)から1個(すなわち、図7Aのシールマスクを使用する場合)に減らすと、浸透気化分離膜エレメントの透過能力は、半分だけ小さくなり、そして更に、分離速度も低くなる。しかしながら、透過物質は、2個の貫通セグメントを利用する浸透気化分離膜エレメントから生じる透過物質よりも低い揮発性物質濃度を有することができる。
【0042】
浸透気化分離膜エレメント100の他の実施形態は、上流側及び/又は下流側分割エンドキャップ130,132を排除したモノリスアセンブリ110を含む。これらの実施形態では、セラミックモノリス120は、図3及び4に図示されるものと同様のパターンの被覆多孔質体流路壁124A及び非被覆多孔質体流路壁124Bを含むことにより、これらの被覆多孔質体流路壁124Aが、複数の非被覆多孔質体流路壁124Bにより隔てられた離散配置貫通セグメント群128を画定する。しかしながら、これらの実施形態では、端面シール160は、セラミックモノリス120の軸線方向端部群121に直接接触して流密状態を形成し、これにより流体を離散配置貫通セグメント群128のうちの1つの離散配置貫通セグメント128に、流体がこれらの非被覆多孔質体流路壁124Bに誘導されるのを防止しながら誘導することができる。
【0043】
図8を参照するに、浸透気化分離膜エレメント100の選択可能な流入側プレナム170が描かれている。選択可能な流入側プレナム170は、複数の流路172を含み、これらの流路172は、流体を離散配置貫通セグメント群128のうちの1つの離散配置貫通セグメント128に誘導するように配置される。これらの流路172の各流路はバルブアセンブリ174を含み、このバルブアセンブリ174は、開くか、または閉じるように選択的に配置することができる。これらの流路172のうちの1つの流路のバルブアセンブリ174が開くと、選択可能な流入側プレナム170が離散配置貫通セグメント128と流体連通して、流入側流体ポート142に流れ込む流体が、当該流路172に沿って誘導されて、モノリスアセンブリ110の対応する離散配置貫通セグメント128に流入する。バルブアセンブリ174が閉じると、選択可能な流入側プレナム170は、当該離散配置貫通セグメント128との流体連通が遮断されて、流入側流体ポート142に流れ込む流体が、閉バルブアセンブリ174に対応するモノリスアセンブリ110の離散配置貫通セグメント128を避けて流れるようになる。従って、選択可能な流入側プレナムは、モノリスアセンブリ110の対応する離散配置貫通セグメント群128のうちのいずれかの離散配置貫通セグメント128と流体連通するように、またはいずれかの離散配置貫通セグメント128との流体連通が遮断されるように選択可能である。
【0044】
次に、図9を参照するに、複数のインジェクタ182を組み込んだ浸透気化分離膜エレメント100の選択可能な流入側プレナム170の別の実施形態が描かれている。モノリスアセンブリ110は、ハウジングアセンブリ140内に配置されて、各インジェクタ182が、モノリスアセンブリ110の離散配置貫通セグメント群128のうちの1つの離散配置貫通セグメント128と流体連通するようになる。これらのインジェクタ182は、流体の流れを制御して、流体が、モノリスアセンブリ110の離散配置貫通セグメント群128のうちの1つの離散配置貫通セグメント128に流れ込むように選択可能である。
【0045】
上に説明したように、本明細書において記載される浸透気化分離膜エレメント100は、車両の車載用燃料分離装置に利用することができる。図10を参照するに、浸透気化分離膜エレメント100を含む車載用燃料分離装置200の模式図が図示されている。燃料は、車載用燃料分離装置200を通って、複数の燃料配管212から供給される。これらの燃料配管212は、車載用燃料分離装置200の接続部品群を互いに対して流密状態にする。燃料は燃料タンク210に車両のオペレータによって貯留される。燃料は、高圧で、燃料タンク210から燃料加熱器220に給送され、この燃料加熱器220では、燃料の温度を上昇させる。次に、加熱された燃料は浸透気化分離膜エレメント100に誘導され、この浸透気化分離膜エレメント100では、燃料が、選択可能な流入側プレナム170に流れ込み、そしてモノリスアセンブリ110の離散配置貫通セグメント群128のうちの1つの離散配置貫通セグメント128に誘導される。燃料がモノリスアセンブリ110内を通って給送されるとき、燃料は高RONを有する透過部分と低RONを有する非透過部分に分離される。非透過部分及び透過部分は共に、燃料冷却器222に誘導され、この燃料冷却器222は、燃料の非透過部分及び透過部分を、燃料流の2つの部分の間の分離状態を保ちながら冷却する。非透過部分は、非透過燃料配管212Aを通って給送され、そして透過部分は、透過燃料配管212Bを通って給送される。冷却された後、燃料流の非透過部分は、燃料タンク210に戻る方向に誘導されるか、またはエンジン300に誘導されるかのいずれかである。燃料流の透過部分は、燃料タンク210の透過燃料貯留室210Bに誘導され、この透過燃料貯留室210Bには、透過部分が、エンジン300からの要求があるまで貯留される。
【0046】
ここで、機能膜で被覆されたセラミックモノリスを使用して流体を構成成分に分離することができることを理解されたい。これらの多孔質体流路壁のうちの或る部分は、機能膜で被覆される。この機能膜は、流体流の特定成分を、他の成分を、セラミックモノリス内を軸線方向に流動させながら、これらの多孔質体流路壁を半径方向に透過させることができる。被覆多孔質体流路壁の複数の領域は、セラミックモノリス内に配置し、そして複数の非被覆多孔質体流路壁を挟んで離間させることにより、これらの領域が互いの流体連通を遮断されるようにすることができる。流体はこれらの領域に、流体の分離効率が閾値レベルを下回るまで流れ込むことができる。流体を分離するために使用されるセラミックモノリスは、これらには限定されないが、RONごとの流体分離、溶媒の浄化、または浄水、及び水/アルコール分離を含む多種多様な用途に使用することができる。
【0047】
第1の態様では、本開示は、浸透気化分離膜エレメントを提供し、当該浸透気化分離膜エレメントは:モノリスの軸線方向長さに沿って延在する多孔質体流路壁により隔てられた配列平行流路群と;そして第1の複数の多孔質体流路壁をモノリスの軸線方向長さに沿って被覆し、かつ流体を非透過部分及び透過部分に分離するように機能する機能膜と、を有するセラミックモノリスを備え:機能膜で被覆されるこれらの多孔質体流路壁は、複数の離散配置貫通セグメントを画定し;これらの離散配置貫通セグメントの各離散配置貫通セグメントは、互いから複数の非被覆多孔質体流路壁により隔てられ;そしてこれらの離散配置貫通セグメントに流入する流体は、これらの離散配置貫通セグメント内を通って殆どの部分が出て行く非透過部分と、非被覆多孔質体流路壁及びモノリスの外周面を通って半径方向外側にセラミックモノリスから流出する透過部分に分けられる。
【0048】
第2の態様では、本開示は、浸透気化分離膜エレメントと、燃料加熱器と、そして燃料冷却器と、を備える車載用燃料分離装置を提供し:当該浸透気化分離膜エレメントは、モノリス長さに沿って延設される多孔質体流路壁群により隔てられた配列平行流路群と、そして複数の多孔質体流路壁をモノリス長さに沿って被覆するポリマー膜と、を有するセラミックモノリスを備え;当該浸透気化分離膜エレメントのポリマー膜は、複数の被覆多孔質体流路壁から成る複数の離散配置貫通セグメントを画定し;そして当該浸透気化分離膜エレメントの離散配置貫通セグメント群の各離散配置貫通セグメントは、互いから非被覆多孔質体流路壁群により隔てられる。
【0049】
第3の態様では、本開示はセラミックモノリスを提供し、当該セラミックモノリスは:当該モノリスの軸線方向長さに沿って延設される多孔質体流路壁群により隔てられた配列平行流路群と;そして第1の複数の多孔質体流路壁を、当該モノリスの軸線方向長さに沿って被覆し、かつ流体を非透過部分と透過部分に分離するように機能する機能膜と、を備え:当該機能膜で被覆されるこれらの多孔質体流路壁は、複数の離散配置貫通セグメントを画定し;これらの離散配置貫通セグメントの各離散配置貫通セグメントは、互いから複数の非被覆多孔質体流路壁により隔てられ;そしてこれらの離散配置貫通セグメントに流入する流体は、これらの離散配置貫通セグメント内を通って殆どの部分が出て行く非透過部分と、そして当該セラミックモノリスから、これらの非被覆多孔質体流路壁及び当該モノリスの外周面を通って半径方向外側に出て行く透過部分に分離される。
【0050】
第4の態様では、本開示は、第1の態様〜第3の態様のうちのいずれかの態様のセラミックモノリスを提供し、この場合、これらの非被覆多孔質体流路壁は、当該セラミックモノリスの外周部の少なくとも一部に配設される。
【0051】
第5の態様では、本開示は、第1、第2、または第4の態様のうちのいずれかの態様の浸透気化分離膜エレメントを提供し、当該浸透気化分離膜エレメントは更に、当該モノリスの軸線方向端部に配置される分割エンドキャップを備え、当該分割エンドキャップは、複数の離散配置貫通セグメントを露出させ、かつ複数の非被覆多孔質体流路壁を覆うように配置される複数の開口部を有し、当該分割エンドキャップは、流体を誘導して、複数の離散配置貫通セグメントに流入させる。
【0052】
第6の態様では、本開示は、第5の態様の浸透気化分離膜エレメントを提供し、当該浸透気化分離膜エレメントは更に、当該分割エンドキャップに接触する端面シールを備え、当該端面シールは、流体密閉壁部分により隔てられた複数の窓を有し、これらの窓は、対応する複数の離散配置貫通セグメントを露出させるように配置され、そして流体密閉壁部分は、複数の窓の間の流体遮断状態を保つ。
【0053】
第7の態様では、本開示は、第6の態様の浸透気化分離膜エレメントを提供し、当該浸透気化分離膜エレメントは更に、当該分割エンドキャップに隣接配置される結合リングを備え、当該結合リングは、接触面の陥凹部に収納されるシールグランドを備え、当該シールグランドは、当該端面シールと略同様の形状を有する。
【0054】
第8の態様では、本開示は、第5の態様の浸透気化分離膜エレメントを提供し、当該浸透気化分離膜エレメントは更に、当該分割エンドキャップに接触する端面シールを備え、当該端面シールは、当該モノリスの離散配置貫通セグメントに対応する少なくとも1つの窓と、そして複数の離散配置貫通セグメントのうちの残りの離散配置貫通セグメントを少なくとも1つの窓から遮断する流体密閉壁部分と、を有する。
【0055】
第9の態様では、本開示は、第8の態様の浸透気化分離膜エレメントを提供し、当該浸透気化分離膜エレメントは更に、当該分割エンドキャップに隣接配置される結合リングを備え、当該結合リングは、接触面の陥凹部に収納されるシールグランドを備え、当該シールグランドは、当該端面シールと略同様の形状を有する。
【0056】
第10の態様では、本開示は、第1、第2、または第4〜第9の態様のうちのいずれかの態様の浸透気化分離膜エレメントを提供し、当該浸透気化分離膜エレメントは更に、当該多孔質セラミックモノリスが配置されるハウジングアセンブリを備え、当該ハウジングアセンブリは:流入側流体ポートと;流出側非透過流体ポートと;そして流出側透過流体ポートと、を備える。
【0057】
第11の態様では、本開示は、第1、第2、または第4〜第9の態様のうちのいずれかの態様の浸透気化分離膜エレメントを提供し、当該浸透気化分離膜エレメントは更に、選択可能な流入側プレナムを備え、当該選択可能な流入側プレナムは、流入側流体ポートを第1離散配置貫通セグメントと流体連通の状態にする。
【0058】
第12の態様では、本開示は、第11の態様の浸透気化分離膜エレメントを提供し、当該選択可能な流入側プレナムは、流入側流体ポートを第2離散配置流路部分と流体連通の状態にし、そして流入側流体ポートを第1離散配置流路部分との流体連通が遮断された状態にするように選択可能である。
【0059】
第13の態様では、本開示は、第11の態様の浸透気化分離膜エレメントを提供し、当該浸透気化分離膜エレメントは更に、選択可能な流入側プレナムを備え、当該選択可能な流入側プレナムは、流入側流体ポートを、これらの離散配置貫通セグメントのうちの1つの離散配置貫通セグメントとの流体連通が遮断された状態にする。
【0060】
第14の態様では、本開示は、第1、第2、または第4〜第13の態様のうちのいずれかの態様の浸透気化分離膜エレメントを提供し、当該浸透気化分離膜エレメントは更に、複数のインジェクタを備え、各インジェクタは、これらの離散配置貫通セグメントのうちの少なくとも1つの離散配置貫通セグメントと流体連通する。
【0061】
第15の態様では、本開示は、第1〜第14の態様のうちのいずれかの態様のセラミックモノリスを提供し、この場合、これらの多孔質体流路壁は、液状ガソリン及び/又は蒸発ガソリンによる化学的腐食に対する耐久性が大きい。
【0062】
第16の態様では、本開示は、第1〜第14の態様のうちのいずれかの態様のセラミックモノリスを提供し、この場合、当該機能膜は、液状ガソリン及び蒸発ガソリンを構成成分に分離するポリマー材料を含む。
【0063】
第17の態様では、本開示は、第1〜第15の態様のうちのいずれかの態様のセラミックモノリスを提供し、この場合、当該機能膜は、液状ガソリン及び蒸発ガソリンを構成成分に分離する有機コーティングを含む。
【0064】
第18の態様では、本開示は、第1〜第15の態様、または第17の態様のうちのいずれかの態様のセラミックモノリスを提供し、この場合、当該機能膜はDENO−D400を含む。
【0065】
第19の態様では、本開示は、第1〜第18の態様のうちのいずれかの態様のセラミックモノリスを提供し、この場合、当該セラミックモノリスはムライトを含む。
【0066】
第20の態様では、本開示は、第1〜第18の態様のうちのいずれかの態様のセラミックモノリスを提供し、この場合、当該セラミックモノリスはコージェライトを含む。
【0067】
第21の態様では、本開示は、第1〜第18の態様のうちのいずれかの態様のセラミックモノリスを提供し、この場合、当該セラミックモノリスはチタン酸アルミニウムを含む。
【0068】
第22の態様では、本開示は、第1〜第21の態様のうちのいずれかの態様のセラミックモノリスを提供し、当該セラミックモノリスは更に、複数の多孔質体流路壁を、モノリス長さに沿って被覆する無機コーティング層を備え、当該無機コーティング層は、これらの多孔質体流路壁と当該機能膜との間に散在させる。
【0069】
第23の態様では、本開示は、第1〜第22の態様のうちのいずれかの態様のセラミックモノリスを提供し、この場合、当該セラミックモノリスは、35%の気孔率を有する。
【0070】
第24の態様では、本開示は、第2の態様の車載用燃料分離装置を提供し、この場合、当該燃料加熱器及び当該燃料冷却器は当該浸透気化分離膜エレメントと流体連通し、そして当該浸透気化分離膜エレメントの上流及び下流にそれぞれ配置される。
【0071】
第25の態様では、本開示は、第2〜第24の態様のうちのいずれかの態様の車載用燃料分離装置を提供し、この場合、当該浸透気化分離膜エレメントは更に、選択可能な流入側プレナムを備え、そして当該選択可能な流入側プレナムは、燃料流を誘導して、これらの離散配置貫通セグメントのうちの1つの離散配置貫通セグメントに流入させる。
【0072】
第26の態様では、本開示は、浸透気化分離膜エレメントを製造する方法を提供し、当該方法は:モノリス長さに沿って延設される多孔質体流路壁群により隔てられた配列平行流路群を備えるセラミックモノリスを押し出し成形する工程と;複数の多孔質体流路壁をマスクする工程と;そして浸透気化分離膜ポリマー材料を、マスクされない複数の多孔質体流路壁に塗布する工程と、を含む。
【0073】
第27の態様では、本開示は、第26の態様の方法を提供し、この場合、浸透気化分離膜ポリマー材料を流体コーティングとして塗布する。
【0074】
第28の態様では、本開示は、第26または第27の態様のうちのいずれかの態様の方法を提供し、この場合、浸透気化分離膜ポリマー材料をエアロゾルとして塗布する。
【0075】
第29の態様では、本開示は、第26〜第28の態様のうちのいずれかの態様の方法を提供し、当該方法は更に、無機コーティング層を複数の多孔質体流路壁に塗布する工程を含む。
【0076】
第30の態様では、本開示は、第26〜第29の態様のうちのいずれかの態様の方法を提供し、当該方法は更に:セラミックモノリスをハウジングアセンブリに挿入する工程と;そしてシール部材を当該ハウジングアセンブリに挿入して、浸透気化分離膜ポリマー材料で被覆される多孔質体流路壁群により画定され、かつ非被覆多孔質体流路壁群により互いから隔てられた複数の離散配置貫通セグメントが互いに流体連通が遮断される状態を維持する工程と、を含む。
【0077】
第31の態様では、本開示は、高RON燃料を低RON燃料から分離する方法を提供し、当該方法は:高RON部分及び低RON部分を有する燃料を浸透気化分離膜エレメントに流し込む工程であって、該浸透気化分離膜エレメントが、多孔質体流路壁群により隔てられた配列平行流路群と、そして複数の多孔質体流路壁を被覆する機能膜と、を有するセラミックモノリスを備え、当該機能膜で被覆されるこれらの多孔質体流路壁が、複数の離散配置貫通セグメントを画定し、そしてこれらの離散配置貫通セグメントの各離散配置貫通セグメントが互いから、複数の非被覆多孔質体流路壁群により隔てられる、前記流し込む工程と;燃料を、浸透気化分離膜エレメントの複数の離散配置貫通セグメントのうちの1つ以上の離散配置貫通セグメント内を流して、低RONを有する燃料の非透過部分が、離散配置貫通セグメントまたは離散配置貫通セグメント群に沿って流れるようにし、そして高RONを有する透過燃料が、被覆多孔質体流路壁群及び非被覆多孔質体流路壁群を透過して流れるようにする工程と;そして燃料が、浸透気化分離膜エレメントの複数の離散配置貫通セグメントの他の離散配置貫通セグメントから離れるように誘導する工程と、を含む。
【0078】
第32の態様では、本開示は、第31の態様の方法を提供し、当該方法は更に:高RON部分及び低RON部分を有する燃料を加熱する工程と;そして燃料の非透過部分、及び燃料の透過部分を冷却する工程と、を含む。
【0079】
この技術分野の当業者であれば、種々の変形及び変更を、本明細書において記載される実施形態に対して、特許請求する主題の思想及び範囲から逸脱しない限り加えることができることを理解できるであろう。従って、本明細書は、本明細書において記載される種々の実施形態の変形及び変更を、このような変形及び変更が添付の請求項、及び請求項の均等物の範囲に含まれる場合には包含するものである。
【実施例】
【0080】
実施例1.DENO−D400プレポリマーの合成
脂肪族エポキシ−ポリエーテルアミン架橋膜ポリマーを、略当量の47.0gの1,2,7,8−ジエポキシ−n−オクタンまたはDENO(Aldrich社製)、及び63.0gの400mwポリプロピレングリコールビス2アミノプロピルエチルまたはD400(Aldrich/Huntsman社製)を用いて作製した。これらを、12.0gのベンジルアルコール触媒及び331.2gのトルエンと、凝縮器及び250rpmで回転する撹拌機(Eurostar(ユーロスター)社製PWR CV81)を備える1000mlの反応フラスコ内で混合し、そして2時間かけて100℃で反応させた。この混合液は、撹拌しながら、かつトルクを監視しながら60℃に冷却することができた。この反応液をトルエンで希釈することにより急冷して、トルク増加が、nmr換算で54%(トルク読み取り値=10)に一致したときに最終的な25%のプレポリマー濃度を得た。最終的なエポキシ:NHの比は1.05であった。生成物は、使用前に0℃で冷蔵した。
【0081】
実施例2.仕切られたモノリスへのコーティング
米国特許出願公開第2008/0035557号明細書に記載の通りに、公称1.8mmの流路径を有する公称2.4”(約6.1cm)径×8”(約4.3cm)長さの多孔質ムライトモノリスに一連の金属酸化物微粒子スラリーをコーティングし、そして当該多孔質ムライトモノリスを焼成して、公称0.01マイクロメートルの細孔を持つチタニア表面を有する多孔質基材を得た。当該モノリスは、端部リング群をセラミック充填エポキシセメントで固定し、そして密閉することにより仕切って4象限セグメントとした。各象限セグメントは、表面積が0.087mであり、かつ合計面積が0.348mである82本の流路を有していた。仕切られたセラミックモノリスは、2L2R−33Mと表記された。
【0082】
0.01マイクロメートルの細孔を持つ仕切られたモノリスに、実施例1において記載した通りに調製されたDENO−D400ポリマー前駆体をコーティングし、かつ2011EM006に基づく米国仮特許出願の実施例4に記載されている方法と同様の方法でコーティングした。幾種類かのコーティング(7)が、漏れのないポリマーフィルムを得るために必要であった。最初の2種類のコーティングの前に、表面を水で、15kPaの窒素背圧に逆らって濡らし、続いてこれらの流路の排水及びブローを行ない、次にこれらの流路に、トルエン中の12.5%プレポリマー溶液を満たした。更に別のコーティングを、プレポリマー溶液を表1に記載の通りに希釈することにより作製した。2.31gの最終的なDENO−D400ポリマー重量が、150℃で12時間かけて硬化させた後に得られた。当該モノリスは、−92kPaから、10分間で12kPaの許容可能な真空損失を有していた。
【0083】
【表1】
【0084】
実施例3.仕切られたモノリスに対する浸透気化分離試験
実施例2の仕切り膜モノリスを、浸透気化分離能について、45重量%のn−ヘプタン、45重量%のトルエン、及び10重量%のエタノールからなる供給モデルを使用して評価した。各セグメントの仕切り膜を、未使用セクションを密閉して切り離すことにより個別に試験した。0.5g/sの供給速度、145℃の流入側温度、ゲージ圧で400kPa、及び約20kPaの透過真空圧力の試験条件を使用した。供給液は、供給液を使用セクションに送液するために配置されるWL1/2−90Beteスプレーノズル(マサチューセッツ州のグリーンフィールドにあるBete Fog Nozzle社製)を介して流し込んだ。全ての4つのセグメントは、同じ分離能力で比較した場合に、同様の流束挙動、及びほぼ同じ芳香族選択性及びエタノール選択性を有していたことが判明した。
【0085】
【表2】
【0086】
実施例3.仕切られたモノリスに対するガソリン試験
実施例3の仕切り膜モノリスを、ガソリンを米国特許第7,803,275B2号明細書に記載の通りに高オクタン価成分及び低オクタン価成分に分離する動作について評価した。当該モノリスを、流入口をハウジングの上部に位置させ、そして非透過流体の流出口及び透過流体の流出口を下側にして、垂直に立つように取り付けた。レギュラーグレード87AKI(92.6RON)US E10ガソリンを供給ガソリンとして用いた。給油速度が、ゲージ圧で400kPaの圧力、及び約155℃の流入側温度において0.35g/sというプロセス条件を設定した。これらの条件では、供給ガソリンの約80%が蒸発した。供給気液混合物を、WL1/2−90Beteスプレーノズル(マサチューセッツ州のグリーンフィールドにあるBete Fog Nozzle社製)を介して供給して、供給混合物を選択セグメントのモノリス流路群に供給した。未使用セクションは、図6及び7において既に説明し、そして図示した通りに、Viton端面シール(160)で、モノリスの両側の端部においてマスクした。膜モジュールを分離し、そして断熱して動作させた。膜ハウジングの外側環状体の真空を、ゲージ圧で500kPaの圧力で供給される冷却透過生成物を使用するFox0.031”(約0.79mm) 超小型オリフィス排出ポンプ(ニュージャージー州のドーバーにあるFox Valve Development社製)により維持して、透過蒸発生成物を約30kPaの圧力で取り込んだ。透過サンプル及び非透過サンプルを収集し、秤量し、そしてガスクロマトグラフィーで分析した。
【0087】
セグメント#2を、まず試験し、続いて検査し、そして次に、セグメント#1の試験を行なった。各試験は、約100時間かけて継続し、その間、分離能力は図11に示すように低下した。セグメント#2の試験を行なっている間、透過能力は、65%から39%に低下した。セグメント#1に対する試験を再開すると、56%の初期透過能力が39%に低下した最初の試験と非常に類似する特性が得られた。この結果は、2つのセグメントが、互いに同様に、かつ個別に効果的に機能したことを示している。各試験の最後に得られた生成物の分析から、各セグメントの特性の類似性が表3に示す通りであることが確認された。高オクタン価のエタノールは、殆どが透過部分に集中し、それに応じて低オクタン価C6+の非芳香族成分が少なくなった。
【0088】
【表3】
【0089】
各試験後の仕切られたモノリスの検査から、供給ガソリンに使用されるセクションのポリマーコーティングが黒くなり、残りの未使用セグメント群がより明るい色のままであることが明確に分かる。検査写真を図12a(未使用の仕切り膜)、及び図12b(セグメント#2を使用した後)、図12c(セグメント#2及び#1の両方を使用した後)に示す。全ての場合において、透過生成物が無色のままであったのに対し、非透過生成物は、明るい黄色の供給ガソリンよりも暗い黄色を有していた。
【符号の説明】
【0090】
90 流体
90A 透過部分
90B 非透過部分
100 浸透気化分離膜エレメント
110 モノリスアセンブリ
112 環状O−リング
120 セラミックモノリス
121 軸線方向端部
122 平行流路
123 軸線方向長さ
124 多孔質体流路壁
124A 被覆多孔質体流路壁
124B 非被覆多孔質体流路壁
125 外周面
126 機能膜
127 無機コーティング膜
128 離散配置貫通セグメント
129 公称境界
130 上流側分割エンドキャップ
132 下流側分割エンドキャップ
134 開口部
140 ハウジングアセンブリ
142 流入側流体ポート
144 流出側非透過ポート
146 流出側透過ポート
147 結合リング
148 シールグランド
149 接触面
160 端面シール
162 窓
164 壁部分
170 流入側プレナム
172 流路
174 バルブアセンブリ
182 インジェクタ
200 車載用燃料分離装置
210 燃料タンク
210B 透過燃料貯留室
212 燃料配管
212A 非透過燃料配管
212B 透過燃料配管
220 燃料加熱器
222 燃料冷却器
300 エンジン
%P 気孔率
拡散性
溶解性
αi/j 選択性
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C