特許第6189891号(P6189891)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189891
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/52 20060101AFI20170821BHJP
   E01C 19/48 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   F16F9/52
   E01C19/48 A
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-77139(P2015-77139)
(22)【出願日】2015年4月3日
(65)【公開番号】特開2015-203496(P2015-203496A)
(43)【公開日】2015年11月16日
【審査請求日】2015年4月15日
【審判番号】不服2016-15840(P2016-15840/J1)
【審判請求日】2016年10月24日
(31)【優先権主張番号】14164376.7
(32)【優先日】2014年4月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596068349
【氏名又は名称】ヨゼフ フェゲーレ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(72)【発明者】
【氏名】エックハルト ピーターズマン
【合議体】
【審判長】 中村 達之
【審判官】 内田 博之
【審判官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0322965(US,A1)
【文献】 特開平8−14308(JP,A)
【文献】 特開2006−349182(JP,A)
【文献】 特開2008−45738(JP,A)
【文献】 特開2009−19642(JP,A)
【文献】 実開昭50−83488(JP,U)
【文献】 特開平5−133431(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/52 , E01C 19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械であって、該建設機械は、材料ホッパ(36)と、少なくとも1つのダンパ装置(1)と、を含んで構成される路面仕上げ機(35)又はチャージャ(38)であり、
前記ダンパ装置(1)は、前記路面仕上げ機(35)又は前記チャージャ(38)のシャーシ(37)に固定され、前記材料ホッパ(36)の充填のために材料供給車両がドッキング可能な押し棒(32)を支持し、
前記ダンパ装置(1)はまた、一方側にピストンロッド(4)を変位可能に受容するピストン軸受(3)を有し、他方側に底部(5)を備えた、シリンダ(2)を含んで構成され、
前記シリンダ(2)と、前記ピストン軸受(3)と、前記底部(5)と、は圧縮性液体(7)を充填された密閉チャンバ(6)を形成し、前記ピストンロッド(4)は前記チャンバ(6)を第1チャンバ半体(9)と第2チャンバ半体(10)とに分割し、前記ピストンロッド(4)が前記シリンダ(2)に対して変位すると、前記液体(7)が前記第1チャンバ半体(9)と前記第2チャンバ半体(10)との間で移動可能であり、
前記密閉チャンバ(6)が、前記密閉チャンバ(6)の内部における温度起因の圧力変動を補償するよう、可変容積を有し、
前記ピストンロッド(4)が、前記シリンダ(2)の内部で前記ピストン軸受(3)と前記底部(5)との間において変位可能なピストン板(8)を含んで構成され、
前記ピストン板(8)が2つの絞りポート(11)を有し、
前記絞りポート(11)の一方に逆止弁(12)が配置され、
前記逆止弁(12)は、前記ピストンロッド(4)が前記シリンダ(2)内に移動するときに、開いて、前記圧縮性液体(7)が前記2つの絞りポート(11)を通って流れるようにし、
前記逆止弁(12)はまた、前記ピストンロッド(4)が前記移動した位置から初期位置に自動的に復帰するときに、閉じて、前記圧縮性液体(7)が前記逆止弁(12)が配置されていない絞りポート(11)のみを通って還流するようにする、
ことを特徴とする、建設機械
【請求項2】
前記底部(5)が前記シリンダ(2)の内部に変位可能に配置された隔壁(19)を含んで構成されることを特徴とする、請求項1に記載の建設機械
【請求項3】
前記底部(5)が蓋(17)とバネ要素(18)とを含んで構成され、前記バネ要素(18)が前記蓋(17)と前記隔壁(19)との間に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の建設機械
【請求項4】
前記隔壁(19)が端部(24)とガイド部(23)とを含んで構成され、前記ガイド部(23)が前記端部(24)よりも大きな外径を有することを特徴とする、請求項3に記載の建設機械
【請求項5】
前記隔壁(19)が、前記端部(24)と前記ガイド部(23)との間に、前記バネ要素(18)が連結可能な座部(25)を備えることを特徴とする、請求項4に記載の建設機械
【請求項6】
前記バネ要素(18)が少なくとも1つの皿バネ(22)を含んで構成されることを特徴とする、請求項3〜請求項5のいずれか1つに記載の建設機械
【請求項7】
前記隔壁(19)が前記シリンダ(2)に対して回転しないように取り付けられることを特徴とする、請求項2〜請求項6のいずれか1つに記載の建設機械
【請求項8】
前記隔壁(19)が前記ダンパ装置(1)の前記チャンバの容積の一部を規定する中空体(30)として形成されることを特徴とする、請求項2〜請求項7のいずれか1つに記載の建設機械
【請求項9】
前記圧縮性液体(7)がシリコーンであることを特徴とする、請求項1〜請求項8のいずれか1つに記載の建設機械
【請求項10】
前記ピストンロッド(4)が前記圧縮性液体(7)により前記ピストン軸受(3)に対して予張力がかけられることを特徴とする、請求項1〜請求項9のいずれか1つに記載の建設機械
【請求項11】
前記シリンダ(2)及び/又は前記底部(5)が、前記チャンバの容積が変化する場合に空気が通過して前記ダンパ装置(1)に出入りできる通気孔(29)を含んで構成されることを特徴とする、請求項1〜請求項10のいずれか1つに記載の建設機械
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械(特に路面仕上げ機又はチャージャ)に関し、特にそのダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種の自走式建設機械、例えば路面仕上げ機又はチャージャには、動作中に材料が供給されなければならないことが、慣例と、例えば特許文献1とから公知である。この処理はチャージングと称され、運転動作中に、例えばトラックが同時に前進する路面仕上げ機又はチャージャにバックして接近し、材料を積荷領域から路面仕上げ機又はチャージャの材料ホッパにあけることによって実施される。チャージングが行われている間、トラックは路面仕上げ機又はチャージャにより前方に押し出される。
【0003】
また、荷下ろしの際に材料を失くすことがないよう材料ホッパの上方に荷台を位置させるべく、チャージングのためにトラックが路面仕上げ機又はチャージャの押し棒にドッキングすることも公知である。トラックのドッキング中、もしくはトラックが前方に押し出されているときに、路面仕上げ機又はチャージャが地上で突然後方に位置ずれすることを防止するため、従来、押し棒は弾性的に、又は減衰するように取り付けられている。
【0004】
ドッキング部を有する路面仕上げ機は、例えば、特許文献2に開示されている。運転方向で見て、ドッキング部は前方、材料ホッパの下部に設けられている。このドッキング部は、エラストマ製の外形を有するダンパにより弾性的に取り付けられた押し棒を含んで構成される。このドッキング部の欠点は、エラストマ製の外形を有するダンパは時間が経つにつれて硬く脆弱になるため、特にドッキング部の減衰特性が不必要に変化してしまうことである。
【0005】
特許文献3及び特許文献4はそれぞれ、ドッキング部を含んで構成される路面仕上げ機を開示している。ドッキング部の押し棒は2つの制御可能な液圧シリンダにより支持されている。液圧シリンダはそれぞれピストンの反対側で路面仕上げ機において設けられた液圧システムに連結されている。したがって、液圧シリンダの各ピストンは、液圧流体を外部から液圧シリンダに導入することにより、走入位置と走出位置との間で摺動可能である。ここで不都合な点は、各液圧シリンダを路面仕上げ機の液圧システムに接続するにはコストがかかるということ、ならびに液圧シリンダに接続された液圧ラインは路面仕上げ機に十分な空間を必要とするということである。さらに、液圧システムを制御するため、すなわち各液圧シリンダを所望の通りに配置するためには、路面仕上げ機に追加的な電子部品が必要とされるので、製造コストが増大する。
【0006】
特許文献5には自動車用のバンパが開示されている。このバンパは液圧ラインによって互いに交差するように接続された第1及び第2のダンパを備えており、液圧流体が、第1のダンパのピストンロッド側から第2のダンパのピストン側へと移動され、且つ第1のダンパのピストン側から第2のダンパのピストンロッド側へと移動されるようにしている。各ダンパはさらに、ダンパ内の気体空間を区切り容積変化を補償する役割を果たす分割ピストンを備える。また、各ダンパは、衝撃後にダンパを当初の位置へと戻すべく外部からダンパに液圧流体を供給する復帰システムに接続されている。ここで不都合な点は、ダンパを互いに接続するとともに各ダンパを液圧復帰システムに連結するには、自動車内に十分な空間が必要であるということである。同時に、メンテナンスやサービスの必要性が大いにある。
【0007】
特許文献6には、ダンパにより支持された押し棒を含んで構成される路面仕上げ機が開示されている。このダンパは、バネ圧縮時の減衰率がバネ解放時の減衰率と異なる摩擦バネを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0667415号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102011120161号明細書
【特許文献3】米国特許第5,004,394号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第2295641号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第2243076号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第2527534号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来技術に関連した上述の不利な点を克服するとともに、特に、運転現場での大きな温度変動にさらされた場合であっても略一定の減衰特性を特徴とする、可能な限り簡単な構成手段を備えたダンパ装置を提供するという目的に基づくものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1の特徴を含んで構成されるダンパ装置によって達成される。本発明の有利な改良は従属請求項に定義される。
【0011】
本発明によれば、密閉チャンバは、該密閉チャンバの内部における温度起因の圧力変動を補償するよう、可変容積を有する。これは、密閉チャンバが、内部に封入された圧縮性液体の温度起因の体積増大又は体積減少に適応するよう構成されており、そのため、封入された液体の温度に関係なく、ダンパ装置のほとんど一定の力特性(減衰特性)を達成することが可能であるということを意味している。本発明によるダンパ装置はさらに、小型に製造することが可能であり、したがって車両、特に自走式建設機械、例えば路面仕上げ機又はチャージャでの使用に理想的であるという利点を有する。これはとりわけ、本発明によるダンパ装置が内蔵型であり、追加的に液圧システムと連結されることを要さない減衰システムを構成することに因る。よって、本発明によれば、圧縮性液体は常に密閉チャンバ内にとどまる。すなわち、密閉チャンバは外部の液圧システムとは接続されない。公知の液圧システムにおける減衰効果が、液圧シリンダに接続された液圧システム、例えば絞り弁により実現可能であるのに対し、本発明によるダンパ装置は、それ自体が減衰効果を可能にする。したがって、本発明によるダンパ装置は、路面仕上げ機又はチャージャに安価に後付けすることができ、あるいはメンテナンス及びサービスのために路面仕上げ機又はチャージャから取り外すことができる。
【0012】
好適には、底部は、シリンダの内部に変位可能に配置された隔壁を含んで構成される。本実施形態においては、密閉チャンバの可変容積は、シリンダ内部における隔壁の位置と直接関係している。隔壁は、チャンバ内に封入された圧縮性液体の圧力変化を補償可能にする簡単な手段を提供する。この圧力変化は、ピストンロッドを走入させることにより、及び/又は液体の温度起因の体積変化により、すなわち、密閉チャンバの容積を増大させるようピストンロッドをシリンダ内にさらに押し込むこと、あるいは密閉チャンバの容積を減少させるようピストンロッドをピストン軸受に向かって移動させることにより、引き起こされる。
【0013】
本発明の有利な変形された実施形態によれば、底部は蓋とバネ要素とを備え、該バネ要素は蓋と隔壁との間に配置されている。よって、底部については特に小型の設計が得られ、バネ要素は、シリンダ内部の所望の位置に、封入されている圧縮性液体の圧力に対して、隔壁を浮遊的に保持することができる。
【0014】
隔壁が端部とガイド部とを備え、ガイド部が端部よりも大きな外径を有していると特に有利である。これにより、端部は特に安定して底部のバネ要素に据え付けられる。理想的には、バネ要素は、シリンダ内で隔壁を安定的に支持するように、少なくとも部分的に隔壁の端部を包囲する。
【0015】
また、隔壁が、端部とガイド部との間に、バネ要素が当接する座部を備えると便利である。これにより、隔壁をシリンダ内部でバネ要素により直線方向に安定的にガイドすることができる。
【0016】
特に路面仕上げ機又はチャージャといった、ダンパ装置に対して大きな力が作用し得る場合に用いられるときには、バネ要素は少なくとも1つの皿バネを備えるのが賢明である。皿バネは、大きな力を吸収することができるが、小さな設置空間しか要さない。バネ範囲を拡大するため、バネ要素は、バネスタックを形成するよう、複数の皿バネを含んで構成されることが可能である。バネスタックは、より大きなバネ範囲、もしくは望ましいバネ定数を提供するよう、互いに反対方向に配置された個々の皿バネ、及び/又は、各々が互いに同じ方向に積み重ねて配置されたいくつかの皿バネを含んで構成される、互いに反対方向に配置されたいくつかのバネパック、を備えていてもよい。
【0017】
本発明の別の実施形態においては、隔壁は、シリンダに対して回転しないように取り付けられる。すなわち、隔壁はシリンダ内部で直線的には変位可能であるが、シリンダに対して回転はできない。これは例えばガイドによって実現可能であり、隔壁はこのガイドに沿ってシリンダ内部で直線的に変位することができる。例えば、そのようなガイドとして、シリンダと隔壁との間に、溝・バネ接続(a groove-spring connection)が設けられてもよい。
【0018】
また、隔壁が、チャンバの内側に向かって凹んでいる、すなわちダンパ装置のチャンバの容積の一部を規定する中空体として形成されていると有利である。こうして、ダンパ装置を拡大することなく、密閉チャンバの容積を最大限にすることが可能となる。さらに有利なことには、中空体内に受容された圧縮性液体によって、たとえピストンロッドに大きな力が作用する場合であっても、中空体として形成された隔壁は確実に、シリンダ内で滑らかに変位可能となる。また、隔壁の中空体の形状は、底部に対する密閉チャンバの封止に好影響を有する。これは、圧縮性の液体が中空体の内表面を圧迫し、外向きにシリンダを圧迫するためである。
【0019】
好適には、シリンダの内部の、ピストン軸受と底部との間において、ピストンロッドにピストン板が取り付けられる。ピストン板は、両チャンバ半体の間に変位可能な分割壁を形成し、好適には、ピストンロッドがシリンダに対して移動された場合の2つのチャンバ半体間での圧縮性液体の移動を確実にするよう、少なくとも1つの絞りポートを備える。
【0020】
特に、絞りポートの少なくとも1つに弁部材を配置することによって、ピストンロッドの走入挙動及び再調整挙動を精密に調整することができる。具体的には、この弁部材はボール逆止弁であり、ピストンロッドがシリンダに走入するときには開くことによって圧縮性液体を確実に通過させ、あるいはピストンロッドが走入位置から初期位置へと自動的に復帰するときには閉じる。これにより、ダンパ装置の減衰特性を所望のように良好に制御することができる。
【0021】
ダンパ装置は、大きな力を減衰させるために、特に圧縮性液体がシリコーンの場合に温度変動が比較的大きなときに、使用可能であることがわかっている。シリコーンは優れた弾性圧縮特性を有し、押し込み力がピストンロッドに作用する場合、あるいはピストンロッドから除去される場合に、2つのチャンバの間で容易に移動可能である。また、シリコーンは、ピストンロッドに作用する力が所定の力閾値を下回るまで下降すると直ちに、ピストンロッドが自動的に初期位置に戻ることを保証する。
【0022】
ピストンロッドの初期位置への自動再調整を加速するため、チャンバ内に封入された圧縮性液体は所定の圧力を受ける。したがって、ピストンロッドは、所望の初期位置でピストン軸受に対して予張力がかけられ得る。そのため、押し棒から押圧が除去されたとき、すなわちトラックがチャージング後に走り去ったときには、例えば、ピストンロッドにより支持される路面仕上げ機又はチャージャの押し棒を自動的に、すなわち追加的な液圧制御を伴わずに、初期位置に戻すことが可能である。
【0023】
本発明の、別の有利な変形した実施形態においては、シリンダ及び/又は底部は通気孔を含んで構成され、空気は該通気孔を通じて、移動可能であり、隔壁が変位されたときには底部に出入り可能である。これに伴い、底部には、減衰特性に影響を及ぼすエアクッションを形成する空気が封入されない。
【0024】
本発明によるダンパ装置は、路面仕上げ機又はチャージャにおいて、特に、材料ホッパと少なくとも1つの本発明によるダンパ装置とを含んで構成される路面仕上げ機又はチャージャにおいて、良好に使用可能である。該ダンパ装置は、路面仕上げ機又はチャージャのシャーシに固定され、材料ホッパの充填のために材料供給車両がドッキング可能な押し棒を支持する。
【0025】
以下において、本発明の有利な実施形態を、図面により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】弛緩状態における本発明によるダンパ装置
図2】押込み力がピストンロッドに作用しているときの本発明によるダンパ装置
図3】ピストンロッドが最大限に負荷をかけられ、押し込まれたときの本発明によるダンパ装置
図4】温度が降下した場合において、ピストンロッドに押し込みピストン力が作用し、浮遊隔壁によりチャンバ容積補償が実現されるときの本発明によるダンパ装置
図5】温度が上昇した場合において、ピストンロッドに押し込みピストン力が作用し、チャンバ容積が補償されるときの本発明によるダンパ装置
図6】中空体として形成された隔壁を備えた、本発明によるダンパ装置
図7】路面仕上げ機又はチャージャのドッキング部
図8図7に記載のドッキング部を有する路面仕上げ機
図9図7に記載のドッキング部を有するチャージャ
図10】本発明によるダンパ装置の力対距離の線図
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面において、同一の構成要素は同一の参照番号で示す。
【0028】
図1は、本発明によるダンパ装置1の断面図を示す。ダンパ装置1はシリンダ2を有し、該シリンダの一端には、シリンダ内部で変位可能に配置されたピストンロッド4とともに、ピストン軸受3が取り付けられている。シリンダ2の他端側には底部5が取り付けられている。シリンダ2はピストン軸受3及び底部5とともに密閉チャンバ6を形成し、その内部には圧縮性液体7が封入される。
【0029】
密閉チャンバ6内へと突出するピストンロッド4の一端には、ピストン板8が取り付けられている。ピストンロッド4、具体的にはこれに配置されたピストン板8は、密閉チャンバ6を第1チャンバ半体9と第2チャンバ半体10とに分割する(図3を参照)。第1チャンバ半体9は、ピストン板8の、ピストン軸受3とは反対の側に位置している。図3において容易にわかるように、密閉チャンバ6の第2チャンバ半体10は、ピストン板8の、ピストン軸受3の方を指す側に位置している。図1によれば、ピストンロッド4はピストン軸受3に当接する初期位置にある。初期位置においては、ほとんどすべての圧縮性液体7が第1チャンバ半体9内にある。
【0030】
ピストン板8は2つの絞りポート11を備えており、この絞りポート11の一方には逆止弁12が配置されている。したがって、ピストンロッド4がシリンダ2内へと押されると、密閉チャンバ6内の圧力が増大するとともに、圧縮性液体7が両絞りポート11を通って第1チャンバ半体9から第2チャンバ半体10へと流入することが達成される。ピストンロッド4に対して印加され、押し込まれたピストンロッド4に作用する押し込み力Fが除去されると直ちに、ピストンロッド4は自動的に図1に示す初期位置へと復帰し、密閉チャンバ6内の圧力は再び初期位置における当初の圧ポテンシャルに下がる。ピストンロッドの復帰運動の際、圧縮性液体7は、第2チャンバ半体10から第1チャンバ半体9へと、逆止弁12が配置されていない絞りポート11のみを通って還流することができる。他方の絞りポート11は逆止弁12により閉じられたままである。これによってピストンロッド4は、ピストンロッド4のピストン板8がピストン軸受3に当接する初期位置へ、減速され減衰されて復帰することができる。
【0031】
密閉チャンバに圧縮性液体7を充填するために、ピストン軸受3には充填孔13が形成されている。充填孔13には、圧縮性液体7を密閉チャンバ6内に充填し封入するための弁部材14、具体的には一方向弁が設けられている。また、ピストン板8の周囲にはピストン板ガスケット15が固定されていることが、図1において容易に認識できる。ピストン板ガスケット15は、ピストンロッド4がシリンダ2内で変位する場合に、圧縮性液体7が絞りポート11のみを通って2つのチャンバ半体9,10の間を往復することを確実にする。図1に示す本発明によるダンパ装置はねじ結合16をさらに含んで構成され、それによってピストン軸受3がシリンダ2に固定されている。代替的には、ピストン軸受3をシリンダ2と一体的に形成することも可能であろう。
【0032】
図1に示す底部5は、蓋17と、バネ要素18と、隔壁19とを含んで構成される。隔壁19はシリンダ2内に浮遊的に配置されており、密閉チャンバ6の変位可能なチャンバ境界を規定する。蓋17は、別のねじ結合21によってシリンダ2に固定されたガイド突起20を備えている。ねじ結合21の代替案としては、蓋17がシリンダ2と一体的に形成されてもよい。図1によれば、バネ要素18はいくつかの個々の皿バネ22を含んで構成される。図示するように、これらは個々に、あるいは同じ方向に互いに積み重ねて配置された2個、3個又はより多くの皿バネを含んで構成されるバネパックとして、互いに反対方向に配置されてもよい。これによって、バネ要素18の減衰もしくは弾性特性を容易に調整することが可能となる。皿バネ22は、とりわけ、大きな力の減衰に適しており、温度依存性の減衰特性を有する。
【0033】
隔壁19はガイド部23及び端部24を有する。ガイド部23と端部24との間には、バネ要素18に当接する座部25が規定されている。隔壁19のバネ要素18への取り付けを良くするため、バネ要素18は端部24の周りに配置されている。また、バネ要素18が隔壁19の端部24と蓋17のガイド突起20との間に配置され、これにより、バネ要素18のためのガイドが生じ、その内部をバネ要素18が狙い通りに圧縮及び弛緩可能であることが、図1において容易にわかる。
【0034】
隔壁19はさらに、圧縮性液体7を密閉チャンバ6内に確実に留まらせる少なくとも1つのシール要素27を備える。シリンダ2内での隔壁19の非回転支持を実現するため、シリンダ2と隔壁19との間にはガイド部材28が設けられる。ガイド部材28は、例えばバネ・溝接続であってもよい。
【0035】
また、図1によれば、蓋17には通気孔29が形成される。この通気孔29によって、シリンダ2内の隔壁19が往復運動するときに、バネ要素18が位置している空間に、空気が出入りすることができる。そして図1には、少なくとも1つの取り付け孔30aが蓋17に形成されることが示されており、該孔には、蓋17をシリンダ2にねじで取り付けるため、図示しないツールを導入することができる。
【0036】
図1において、圧縮性液体7の温度は+20℃である。この場合、バネ要素18は完全に弛緩している。弛緩状態では、バネ要素18は隔壁19を端位置に保持し、ここで隔壁19は任意的に設けられるシリンダ2の突起29aに当接する。ピストンロッド4はピストン軸受3に当接する。
【0037】
図2において、隔壁19は、図1に示された端位置からゼロ位置に定置されている。隔壁19は、図1に示された端位置に対してバネ移動Xの分だけ右方へ、底部5の蓋17に向かって変位している。所定の圧力をかけるチャンバ6内に封入された圧縮性液体7はゼロ位置に達し、これにより同時に、初期位置においてピストンロッド4が予張力によりピストン軸受3に当接することが保証される。例えば、バネ要素18が、ピストンロッド4に作用する300daN及び隔壁19に作用する2700daNの力Fに略相当する61.2barで予張力がかけられている場合には、バネ移動Xは6mmに達する。ダンパ装置1がそのような例示的な負荷を受ける場合、液体の温度が+20℃のままであれば、チャンバ6の容積は約26.56cm乃至約564.56cmだけ増大する。
【0038】
図3は最大負荷状態のダンパ装置1を示している。ピストンロッド4は完全に、例えば80mm、シリンダ2に押し込まれる。これは、約6500daNの力Fがピストンロッド4に作用することにより実現される。この場合、隔壁19は、最大バネ移動Yの分だけ、バネ要素18の予張力に逆らって、底部5の蓋17に向かって押される。この位置では、バネ要素18には約80%の負荷がかかる。液体の温度は依然として+20℃である。
【0039】
図2においては隔壁19がゼロ位置に位置しているのに対し、図4のダンパ装置は温度起因の容積補償を実行する。ここで、本発明によるダンパ装置1は−30℃の温度降下を考慮に入れており、したがって、図2に示される当初+20℃の液体温度は、−10℃まで冷たくなる。こうした温度降下の結果、密閉チャンバ6内に封入された圧縮性液体7の体積の収縮が生じる。そのため、チャンバ6の容積を圧縮性液体7の収縮に適応させるべく、隔壁19は、バネ要素18の予張力によって、図2に示すゼロ位置から左のピストンロッド4の方向に移動される。すると、図4において容易にわかるように、隔壁19はシリンダの突起29aに再び当接する。図2に示すように作用する300daNの予張力は、この容積補償によって、すなわちバネ要素18の弛緩によって、約125daNまで低減される。
【0040】
図5に示す本発明によるダンパ装置1は、温度上昇時に密閉チャンバ6の容積補償を実施する。これもやはり、図2に示す隔壁19のゼロ位置を基準にして実現される。図5において、バネ要素18は300daNの力Fによって予張力がかけられている。温度が+30℃上昇するとき、図2において当初想定された液体温度は+20℃から+50℃まで上昇するので、バネ要素18に作用する予張力Fは約400daNまで増大する。ここで、バネ要素18には約40%の負荷がかかる。+30℃の温度上昇の結果、密閉チャンバ6に封入された圧縮性液体7は約16.24cm膨張する。これは、図2に示すゼロ位置から蓋17へ向かって右方へ3.67mmのバネ移動に概ね相当する。チャンバ6の容積はこうして圧縮性液体の膨張に適合する。
【0041】
図4及び5によれば、本発明によるダンパ装置の隔壁19は、シリンダ内に浮遊的に配置されているため、圧縮性液体7の温度起因の収縮もしくは膨張を補償できることが証明された。これは、本発明によるダンパ装置1を用いれば、シリンダ2内のピストンロッド4の位置と無関係に実現することができる。
【0042】
図6に示すダンパ装置1においては、隔壁19は、凹状体もしくは中空体30として形成されている。したがって、中空体30は密閉チャンバ6の容積の一部を形成する。圧力は中空体30の内部表面に均一に散開するため、中空体30とシリンダ2との封止が向上する。また、中空体30を設けることによって、チャンバ6の容積も増大される。そのため、より大量の圧縮性液体7を密閉チャンバ6内に収容することができる。これは液体7の収縮もしくは膨張挙動に好ましい効果を有し得る。
【0043】
図7はドッキング部31を示し、これは図8に示す路面仕上げ機35、もしくは図9に示すチャージャ38に固定され得る。ドッキング部31は押し棒32を備え、該押し棒32には押しローラ33が回転可能に取り付けられている。チャージングの際には、押しローラ33がその前で駆動しているトラックを押して、トラックをチャージャ38もしくは路面仕上げ機35の前で前方へ押し出す。ドッキング部31はさらに、シャーシに固定可能なクロスメンバ34を備えており、該クロスメンバには本発明によるダンパ装置1が2台取り付けられている。各ピストンロッド4は押し棒32に固定されている。押し棒32に作用する力に対応して、ダンパ装置1は互いに独立して伸縮可能である。クロスメンバ34は、図7によると、ドッキング部31の一部を形成しており、路面仕上げ機35又はチャージャ38のシャーシ構成要素として設計されてもよく、各ダンパ装置1がこれに着脱可能に固定可能である。
【0044】
図8は、材料ホッパ36及びシャーシ37を備えた路面仕上げ機35を示す。ドッキング部31はシャーシ37に固定されており、前方で駆動するトラックが材料のチャージングのために路面仕上げ機35に向かって動くときに該トラックの後ろのタイヤに連結されるよう、運転方向Vで見て前方の材料ホッパ36の下に所定の長さだけ突出している。
【0045】
図9はチャージャ38を示す。チャージャ38もまた路面仕上げ機35と同様、材料ホッパ36を備えている。図7に示すドッキング部31が、前方で駆動するトラックの後ろのタイヤに連結されるよう、前方の材料ホッパ36の下でチャージャ38のシャーシ37に固定される。
【0046】
図10は、本発明によるダンパ装置1の力対距離の線図を示す。ピストンロッド4のシリンダ2への押し込み長さを[mm]単位で横座標に沿って示すとともに、力を[daN/kg]単位で縦座標に沿って示す。力対距離の特性を表すため、バネ要素18は11個の皿バネ(70×35.5×4)を含んで構成され、これは3つのバネを含む1個のバネパックと2つのバネを含む3個のバネパックとを同じ方向に、及び単一のバネを2つ反対方向に配置したものであった。完全に張力をかけられたバネのスタックの最大バネ予張力は9273daNとなる。本発明によるダンパ装置1は、−10℃,0℃,+8℃及び+50℃の温度でテストされた。図10において容易にわかるように、力対距離の特性はそれぞれ線形挙動を示し、ピストンロッド4が完全にシリンダ2外に走出されたときの初期力からピストンロッド4が最大限シリンダ2に押し込まれたときの最大制止力まで上昇している。例えば液体7の温度が+8℃のとき、ピストンロッド4は250daNの初期力から始めてダンパ装置1のシリンダ2内へと走入を開始し、力対距離の特性は、最大制止力が4000daN、ピストンロッド4の押し込み長さが80mmになるまで直線的に上昇する。
【0047】
封入された液体7の温度が激しく変化するにもかかわらず、図10に記載された直線的な力対距離の特性は略同様の挙動を示している。これはシリンダ2内で浮遊している隔壁19によって達成される。このように、本発明によるダンパ装置1は、たとえ異なる温度状況において用いられた場合であってもほとんど一定の減衰特性を維持するため、図8に示す路面仕上げ機35もしくは図9に示すチャージャ38の改良されたチャージングを達成することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10