(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
搬送機構が、アダプタを含み、前記アダプタが、シリンジ針および注射針に結合され、シリンジ針と注射針との間に滅菌流体導管を確立する、請求項1に記載の装着型自動注入装置。
容器が、注入状態において搬送機構に向かって移動して、シリンジ針を穿通可能な隔膜に穿通させ、シリンジ針と注射針との間に流体連絡を確立する、請求項10に記載の装着型自動注入装置。
容器を注入前状態における第一位置から注入状態における第二位置まで自動的に作動させるための容器アクチュエータをさらに含む、請求項11に記載の装着型自動注入装置。
減衰機構が、容器に向かう流量制限器の下流の液圧を作動流体源に向かう流量制限器の上流の液圧よりも低い圧力に維持するための流量制限器を含む、請求項29に記載の装着型自動注入装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
皮下注射は、治療薬送達の主要な形態であり、患者への治療薬のボーラス投与を伴う。皮下注射は、インスリン、ワクチン、およびモルヒネなどの薬物を含む、様々な治療薬の投与において非常に有効である。自動注入装置は、治療薬を送達するためのシリンジの代替手段を提供し、患者が治療薬の皮下注射を自己投与できるようにする。従来の自動注入装置は、携帯型自動注入装置およびパッチポンプを含み、これらは自己接着型の、患者実装式自動注入器である。使用中、治療薬を収容するパッチポンプが患者の皮膚または着衣に実装され、患者の体内に治療薬を注入するために起動される。従来のパッチポンプは、一般的に使用前に患者によって充填される。加えて、特定の従来型パッチポンプは、ポンプ内に露出した針を有し、このため無菌性を維持するための二次的な無菌封入を必要とする。
【0019】
研究は、特定の治療薬の注入速度と、治療薬または治療剤の注入時に患者が認識する疼痛との間に直接的な相関関係があることを示している。いくつかの治療薬は、患者に急速に注入されると、たとえば灼熱感または刺痛などの疼痛を生じる。痛覚は、治療薬の皮下注射に対する患者の皮膚の生理学的反応の結果であるかも知れない。1ミリリットルを超える、いずれか大量の治療薬もまた、皮膚に注入されるときに疼痛を生じる可能性がある。抗体、およびその部分は、低い注入速度で送達されるときに最も疼痛の少ない、例示的な治療薬である。現在、携帯型自動注入装置の速い注入速度に関わる不快症状を効果的に解消する、商業的に実現可能な従来型パッチポンプは、存在しない。
【0020】
特定の具体的実施形態を参照して、例示的実施形態が以下に記載される。1回分の液剤の注入を提供するための装着型自動注入装置の使用に関して例示的実施形態が記載されるものの、当業者は、例示的実施形態が具体的実施形態に限定されるものではないこと、および例示的な自動注入装置が患者の体内にいずれの適切な物質を注入するためにも使用されてよいことを、認識するだろう。加えて、例示的な自動注入装置の構成要素、および例示的な自動注入装置を製造および使用する方法は、以下に記載される具体的実施形態に限定されるものではない。
【0021】
例示的な自動注入装置のシリンジアセンブリは、1回分のTNFα阻害剤を収容してもよい。一例示的実施形態において、TNFα阻害剤は、ヒトTNFα抗体、またはその抗原結合部であってもよい。一例示的実施形態において、ヒトTNFα抗体またはその抗原結合部は、アダリムマブまたはゴリムマブであってもよい。
【0022】
例示的実施形態は、患者の皮膚または着衣に付着して、たとえば単回低速ボーラスなどの低く制御された注入速度の皮下注射によって患者の体内に治療薬を送達してもよい、装着型自動注入装置を提供する。例示的な装置によって実現される低く制御された注入速度は、患者の組織に侵入する治療薬の量に関わる痛覚を最小限に抑える。例示的な装置によって実現される低速送達の例示的な持続時間は、約5分から約30分の範囲であってもよいが、この例示的範囲に限定されるものではない。例示的な装置によって送達可能な治療薬の例示的な量は、約0.8ミリリットルから約1ミリリットルの範囲であってもよいが、この例示的範囲に限定されるものではない。加えて、例示的な装置は有利なことに、治療薬の時間に対する送達プロファイルの変化を最小限に抑える可能性がある。
【0023】
例示的実施形態は、例示的な自動注入装置のサイズエンベロープを最小限に抑え、治療薬粘度の範囲に使用されてもよい、構成可能な送達時間および送達プロファイルを用いて、拡張可能な解決法を提供する。
【0024】
例示的実施形態は、たとえば電池の電力または動作するための電流または電荷を必要とするその他の構成要素を用いない単回低速ボーラスでなど、低く制御された注入速度での皮下注射によって患者の体内に治療薬を送達する、装着型自動注入装置を提供する。例示的実施形態はまた、低速の制御された治療薬送達のために装着型自動注入装置を使用する方法も、提供する。例示的実施形態によって提供される装着型自動注入装置は、患者への送達に先立って予備充填可能であり、無菌組み立ての必要性を回避するために治療薬およびすべての皮下接触表面(すなわち、皮下注射針および1つ以上の隔膜)の無菌性を維持し、従来の携帯型自動注入装置を用いる注入によって認識される患者の不快症状を解消する。例示的な装着型自動注入装置は、無菌性を維持し、したがって無菌組み立てを必要としない、主要な治療バレル部を含む。例示的な装着型自動注入装置は、使い捨てで、使いやすく、予備充填可能であり、装着型自動注入装置を使用する患者によってしばしば感じられる灼熱感を、実質的にまたは完全に解消する可能性がある。例示的実施形態によって提供される装着型自動注入装置は、抗体またはインスリンなどを含むがこれらに限定されない、皮下に送達されてもよいいずれかの治療薬を送達するために、使用されることが可能である。
【0025】
I.定義
例示的実施形態の理解を容易にするために、ここで特定の用語が定義される。
【0026】
例示的実施形態の装着型自動注入装置は、本発明の抗体または抗体部分の「治療有効量」または「予防有効量」を含んでもよい。「治療有効量」とは、所望の治療結果を達成するために、必要な投与量および期間にわたる、有効な量を指す。抗体、抗体部分、またはその他のTNFα阻害剤の治療有効量は、患者の病状、年齢、性別、および体重、ならびに患者の望ましい反応を引き出すための抗体、抗体部分、またはその他のTNFα阻害剤の能力などの要因に応じて、異なってもよい。治療有効量は、治療的に有効な効果が、抗体、抗体部分、またはその他のTNFα阻害剤のいかなる毒性または有害作用をも上回るものでもある。「予防有効量」とは、所望の予防効果を達成するために必要な投与量および期間にわたる、有効な量を指す。通常、予防投与は、病気の前に、またはその初期段階で使用されるので、予防有効量は治療有効量よりも少なくなる。
【0027】
「物質」または「治療薬」という用語は、例示的な自動注入装置を採用する患者に対して治療有効量で投与されることが可能な、いずれかのタイプの薬物、生理活性物質、生物学的物質、化学物質、または生化学物質を指す。例示的な物質は、液体状態の薬剤を含むが、これに限定されない。このような薬剤は、アダリムマブ(ヒュミラ(HUMIRA)(R))、およびたとえば融合タンパク質および酵素など、溶液中のタンパク質を含んでもよいが、これらに限定されない。溶液中のタンパク質の例は、プルモザイム(ドルナーゼアルファ)、レグラネクス(ベカプレルミン)、アクチバーゼ(アルテプラーゼ)、アルドラザイム(ラロニダーゼ)、アメビブ(アレファセプト)、アラネスプ(ダルベポエチンアルファ)、濃縮ベカプレルミン、ベタセロン(インターフェロンベータ−1b)、ボトックス(A型ボツリヌス毒素)、エリテック(ラスブリカーゼ)、エルスパー(アスパラギナーゼ)、エポジェン(エポエチンアルファ)、エンブレル(エタネルセプト)、ファブラザイム(アガルシダーゼベータ)、インファージェン(インターフェロンアルファコン−1)、イントロンA(インターフェロンアルファ−2a)、キネレット(アナキンラ)、マイオブロック(B型ボツリヌス毒素)、ニューラスタ(ペグフィルグラスチム)、ニューメガ(オプレルベキン)、ニューポジェン(フィルグラスチム)、オンタック(デニロイキンジフチトクス)、ペガシス(ペグインターフェロンアルファ−2a)、プロロイキン(アルデスロイキン)、プルモザイム(ドルナーゼアルファ)、レビフ(インターフェロンベータ−1a)、レグラネクス(ベカプレルミン)、レタバーゼ(レテプラーゼ)、ロフェロンA(インターフェロンアルファ−2)、TNKase(テネクテプラーゼ)、およびザイグリス(ドロトレコギンアルファ)、アーカリスト(リロナセプト)、NPlate(ロミプロスチム)、ミルセラ(メトキシポリエチレングリコールエポエチンベータ)、シンライズ(C1エステラーゼ阻害剤)、エラプレース(イデュルスルファーゼ)、マイオザイム(アルグルコシダーゼアルファ)、オレンシア(アバタセプト)、ナグラザイム(ガルスルファーゼ)、ケピバンス(パリフェルミン)、およびアクティミューン(インターフェロンγ−1b)を含むが、これらに限定されない。
【0028】
溶液中のタンパク質はまた、免疫グロブリンまたはその抗原結合断片、たとえば抗原またはその抗原結合部など、であってもよい。例示的な自動注入装置において使用されてもよい抗体の例は、キメラ抗体、非ヒト抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、およびドメイン抗体(dAbs)を含むが、これらに限定されない。一例示的実施形態において、免疫グロブリンまたはその抗原結合断片は、抗TNFαおよび/または抗IL−12抗体である(たとえば、二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD)IgTMであってもよい)。例示的実施形態の方法および構成要素において使用されてもよい免疫グロブリンまたはその抗原結合断片の別の例は、1D4.7(抗IL−12/IL−23抗体;アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories));2.5(E)mg1(抗IL−18;アボット・ラボラトリーズ);13C5.5(抗IL−13抗体;アボット・ラボラトリーズ);J695(抗IL−12;アボット・ラボラトリーズ);アフェリモマブ(Fab2抗TNF;アボット・ラボラトリーズ);ヒュミラ(アダリムマブ)アボット・ラボラトリーズ);キャンパス(アレムツズマブ);CEA−Scanアルシツモマブ(fab断片);アービタックス(セツキシマブ);ハーセプチン(トラスツズマブ);マイオシント(Myoscint)(イムシロマブペンテテート);プロスタシント(ProstaScint)(カプロマブペンデチド);レミケード(インフリキシマブ);レオプロ(アブシキシマブ);リツキサン(リツキシマブ);シムレクト(バシリキシマブ);シナジス(パルビズマブ);ベルルマ(Verluma)(ノフェツモマブ);ゾレア(オマリズマブ);ゼナパックス(ダクリズマブ);ゼヴァリン(イブリツモマブ・チウキセタン);オルソクローンOKT3(ムロモナブCD3);パノレックス(エドレコロマブ);マイロターグ(ゲムツズマブ・オゾガマイシン);ゴリムマブ(セントコア);シムジア(セルトリズマブペゴール);ソリリス(エクリズマブ);CNTO 1275(ウステキヌマブ);ベクチビックス(パニツムマブ);ベキサール(トシツモマブおよびヨウ素131トシツモマブ);およびアバスチン(ベバシズマブ)を含むが、これらに限定されない。
【0029】
例示的実施形態の方法および構成要素において使用されてもよい、免疫グロブリンまたはその抗原結合断片の付加的な例は、以下のうち1つ以上を含むタンパク質を含むが、これらに限定されない:D2E7軽鎖可変領域(SEQ ID NO:1)、D2E7重鎖可変領域(SEQ ID NO:2)、D2E7軽鎖可変領域CDR3(SEQ ID NO:3)、D2E7重鎖可変領域CDR3(SEQ ID NO:4)、D2E7軽鎖可変領域CDR2(SEQ ID NO:5)、D2E7重鎖可変領域CDR2(SEQ ID NO:6)、D2E7軽鎖可変領域CDR1(SEQ ID NO:7)、D2E7重鎖可変領域CDR1(SEQ ID NO:8)、2SD4軽鎖可変領域(SEQ ID NO:9)、2SD4重鎖可変領域(SEQ ID NO:10)、2SD4軽鎖可変CDR3(SEQ ID NO:11)、EP B12軽鎖可変CDR3(SEQ ID NO:12)、VL10E4軽鎖可変CDR3(SEQ ID NO:13)、VL100A9軽鎖可変CDR3(SEQ ID NO:14)、VLL100D2軽鎖可変CDR3(SEQ ID NO:15)、VLL0F4軽鎖可変CDR3(SEQ ID NO:16)、LOE5軽鎖可変CDR3(SEQ ID NO:17)、VLLOG7軽鎖可変CDR3(SEQ ID NO:18)、VLLOG9軽鎖可変CDR3(SEQ ID NO:19)、VLLOH1軽鎖可変CDR3(SEQ ID NO:20)、VLLOH10軽鎖可変CDR3(SEQ ID NO:21)、VL1B7軽鎖可変CDR3(SEQ ID NO:22)、VL1C1軽鎖可変CDR3(SEQ ID NO:23)、VL0.1F4軽鎖可変CDR3(SEQ ID NO:24)、VL0.1H8軽鎖可変CDR3(SEQ ID NO:25)、LOE7.A軽鎖可変CDR3(SEQ ID NO:26)、2SD4重鎖可変領域CDR(SEQ ID NO:27)、VH1B11重鎖可変領域CDR(SEQ ID NO:28)、VH1D8重鎖可変領域CDR(SEQ ID NO:29)、VH1A11重鎖可変領域CDR(SEQ ID NO:30)、VH1B12重鎖可変領域CDR(SEQ ID NO:31)、VH1E4重鎖可変領域CDR(SEQ ID NO:32)、VH1F6重鎖可変領域CDR(SEQ ID NO:33)、3C−H2重鎖可変領域CDR(SEQ ID NO:34)、およびVH1−D2.N重鎖可変領域CDR(SEQ ID NO:35)。
【0030】
「ヒトTNFα」(本明細書内ではhTNFα、または単にhTNFと略される)という用語は、17kD分泌型および26kD膜結合型として存在するヒトサイトカインを指し、その生物学的活性型は、非共有結合した17kD分子の三量体からなる。hTNFαの構造は、たとえばPennica,D.ら(1984)Nature 312:724−729;Davis,J.M.ら(1987)Biochem.26:1322−1326;およびJones,E.Y.ら(1989)Nature 338:225−228に、さらに記載されている。ヒトTNFαという用語は、組換えヒトTNFα(rhTNFα)を含むように意図され、これは標準的な組換え発現方法によって調製されるか、または商業的に購入されることが可能である(ミネソタ州ミネアポリス、R&D Systems、カタログ番号210−TA)。TNFαは、TNFとも称される。
【0031】
「TNFα阻害剤」という用語は、TNFα活性を阻害する薬剤を指す。この用語はまた、本明細書に記載される抗TNFαヒト抗体(本明細書においてTNFα抗体と同義に用いられる)および抗体部分、ならびに米国特許第6,090,382号明細書、米国特許第6,258,562号明細書、米国特許第6,509,015号明細書、米国特許第7,223,394号明細書、および米国特許第6,509,015号明細書に記載されるものの、各々を含む。一実施形態において、本発明で使用されるTNFα阻害剤は、インフリキシマブ(レミケード(R)、ジョンソンエンドジョンソン;米国特許第5,656,272号明細書に記載);CDP571(ヒト化モノクローナル抗TNFアルファIgG4抗体);CDP870(ヒト化モノクローナル抗TNFアルファ抗体断片);抗TNFdAb(Peptech);CNTO148(ゴリムマブ;セントコア、国際公開第02/12502号および米国特許第7,521,206号明細書および米国特許第7,250,165号明細書参照);およびアダリムマブ(ヒュミラ(R)アボット・ラボラトリーズ、ヒト抗TNF mAb、米国特許第6,090,382号明細書にD2E7として記載)を含む、抗TNFα抗体、またはその断片である。本発明において使用されてもよい付加的なTNF抗体は、米国特許第6,593,458号明細書、米国特許第6,498,237号明細書、米国特許第6,451,983号明細書、および米国特許第6,448,380号明細書に記載されている。別の実施形態において、TNFα阻害剤は、TNF融合タンパク質、たとえばエタネルセプト(エンブレル(R)、アムジェン(Amgen);国際公開第91/03553号および国際公開第09/406476号に記載)である。別の実施形態において、TNFα阻害剤は、組換えTNF結合タンパク質(r−TBP−1)(Serono)である。
【0032】
一実施形態において、「TNFα阻害剤」という用語は、インフリキシマブを除外する。一実施形態において、「TNFα阻害剤」という用語は、アダリムマブを除外する。別の実施形態において、「TNFα阻害剤」という用語は、アダリムマブおよびインフリキシマブを除外する。
【0033】
一実施形態において、「TNFα阻害剤」という用語は、エタネルセプト、および随意的に、アダリムマブ、インフリキシマブ、およびアダリムマブとインフリキシマブとを、除外する。
【0034】
一実施形態において、「TNFα抗体」という用語は、インフリキシマブを除外する。一実施形態において、「TNFα抗体」という用語は、アダリムマブを除外する。別の実施形態において、「TNFα抗体」という用語は、アダリムマブおよびインフリキシマブを除外する。
【0035】
「抗体」という用語は、一般的に4つのポリペプチド鎖、すなわちジスルフィド結合によって相互接続された2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖からなる、免疫グロブリン分子を指す。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書内ではHCVRまたはVHと略される)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、CH1、CH2、およびCH3の3つのドメインを含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書内ではLCVRまたはVLと略される)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は、1つのドメイン、CLを含む。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称される、より保存されている領域が散在している、相補性決定領域(CDR)と称される、超可変性の領域に、さらに細分化されることが可能である。各VHおよびVLは、以下の順でアミノ末端からカルボキシ末端まで配置されている、3つのCDRおよび4つのFRからなる:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。本発明の抗体は、米国特許第6,090,382号明細書、米国特許第6,258,562号明細書、および米国特許第6,509,015号明細書に、さらに詳細に記載されている。
【0036】
抗体の「抗原結合部」(または単に「抗体部分」)という用語は、抗原と特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す(たとえば、hTNFα)。完全長抗体の断片は、抗体の抗原結合機能を実行することができる。抗体の「抗原結合部」という用語に包含される結合断片の例は、(i)Fab断片、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片;(ii)F(ab’)2断片、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって結合した2つのFab断片を含む二価断片;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の単腕のVLおよびVHドメインからなるFv断片;(v)VHまたはVLドメインからなる、dAb断片(Wardら(1989)Nature 341:544−546);(vi)単離相補性決定領域(CDR);および(vii)二重可変ドメイン免疫グロブリン(DVD−Ig)、を含む。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは個別の遺伝子によってコードされるものの、これらは組換え法を用いて、VLおよびVH領域が対になって一価分子を形成する単一タンパク鎖として作られることを可能にする合成リンカによって、連結されることが可能である(単鎖Fv(scFv)として知られる;たとえば、Birdら(1988)Science 242:423−426;およびHustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883参照)。このような単鎖抗体は、抗体の「抗原結合部」という用語にも包含される。ダイアボディなどの単鎖抗体の別の形態もまた包含される。ダイアボディは、VHおよびVLドメインが単一ポリペプチド鎖上に発現するが、しかし同じ鎖上の2つのドメインの間で対形成させるには短すぎるリンカを使用し、そのためドメインは別の鎖の相補ドメインと対形成させられて、2つの抗原結合部位を形成する、二価の二重特異性抗体である(たとえば、Holligerら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448;Poljakら(1994)Structure 2:1121−1123参照)。本発明の抗体部分は、米国特許第6,090,382号明細書、米国特許第6,258,562号明細書、および米国特許第6,509,015号明細書に、さらに詳細に記載されている。
【0037】
「組換えヒト抗体」という用語は、宿主細胞に形質移入された組換え発現ベクタを用いて発現された抗体(後に詳述される)、組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体(後に詳述される)、ヒト免疫グロブリン遺伝子が導入された動物(たとえば、マウス)から単離された抗体(たとえば、Taylorら(1992)Nucl.Acids Res.20:6287参照)、またはヒト免疫グロブリン遺伝子配列のその他のDNA配列へのスプライシングを伴うその他いずれかの手段によって調製、発現、生成、または単離された抗体など、組換え手段によって調製、発現、生成、または単離されたすべてのヒト抗体を指す。このような組換えヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する、可変および定常領域を有する。しかしながら特定の実施形態において、このような組換えヒト抗体は、インビトロ突然変異誘発(またはヒトIg配列導入動物が用いられるときはインビボ体細胞突然変異誘発)に曝され、このため組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列VHおよびVL配列に由来または関連しながら、インビボでヒト抗体生殖細胞系列レパートリ内に自然に存在することはない配列である。
【0038】
このようなキメラ、ヒト化、ヒト、および二重特異性抗体は、たとえばPCT国際出願第PCT/US86/02269号明細書;欧州特許出願第184,187号明細書;欧州特許出願第171,496号明細書;欧州特許出願第173,494号明細書;PCT国際出願第WO86/01533号;米国特許第4,816,567号明細書;欧州特許出願第125,023号明細書、Betterら(1988)Science 240:1041−1043;Liuら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liuら(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sunら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimuraら(1987)Cancer Res.47:999−1005;Woodら(1985)Nature 314:446−449;Shawら(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559;Morrison(1985)Science 229:1202−1207;Oiら(1986)BioTechniques 4:214;米国特許第5,225,539号明細書;Jonesら(1986)Nature 321:552−525;Verhoeyanら(1988)Science 239:1534;およびBeidlerら(1988)J.Immunol.141:4053−4060,Queenら(1989)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:10029−10033(1989);米国特許第5,530,101号明細書;米国特許第5,585,089号明細書;米国特許第5,693,761号明細書;米国特許第5,693,762号明細書;国際公開第90/07861号;および米国特許第5,225,539号明細書に記載される方法を用いて、当該技術分野において周知の組換えDNA技術を用いて生成されることが可能である。
【0039】
「単離抗体」という用語は、異なる抗原特異性を有するその他の抗体と実質的に結合しない抗体を指す(たとえば、hTNFαを特異的に結合し、hTNFα以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含んでいない、単離抗体)。hTNFαに特異的に結合する単離抗体は、別の種からのTNFα分子など、別の抗原との交差反応を有してもよい。さらに、単離抗体は、別の細胞物質および/または化学物質と実質的に含まなくてもよい。
【0040】
「中和抗体」(または「hTNFα活性を中和した抗体」)という用語は、hTNFαとの結合がhTNFαの生物活性の抑制をもたらす抗体を指す。hTNFαの生物活性のこの抑制は、hTNFα誘発細胞毒性(インビトロまたはインビボのいずれか)、hTNFα誘発細胞活性化、およびhTNFα受容体とのhTNFα結合などの、hTNFα生物活性の1つ以上の指標を測定することによって、評価されることが可能である。hTNFα生物活性のこれらの指標は、当該技術分野において周知のインビトロまたはインビボアッセイのいくつかの基準のうちの1つ以上によって、評価されることが可能である(米国特許第6,090,382号明細書参照)。好ましくは、hTNFα活性を中和する抗体の能力は、L929細胞のhTNFα誘発細胞毒性の抑制によって、評価される。hTNFα活性の追加または代替パラメータとして、hTNFα誘発細胞活性化の尺度としての、HUVEC上のELAM−1のhTNFα誘発発現を抑制する抗体の能力が、評価され得る。
【0041】
「表面プラズモン共鳴」という用語は、たとえばBIAcoreシステム(スエーデン、ウプサラ、およびニュージャージー州ピスカタウェイ、Pharmacia Biosensor AB)を用いる、バイオセンサマトリクス内のタンパク質濃度の変化の検出によって、リアルタイム生体特異的相互作用の分析を可能にする、光学現象を指す。さらなる記載については、米国特許第6,258,562号明細書の実施例1、およびJoenssonら(1993)Ann.Biol Clin.51:19;Joenssonら(1991)Biotechniques 11:620−627;Johnssonら(1995)J.Mol.Recognit.8:125;およびJohnnsonら(1991)Anal.Biochem.198:268を参照されたい。
【0042】
「Koff」という用語は、抗体/抗原複合体からの抗体の解離の解離速度定数を指す。
【0043】
「Kd」という用語は、特定の抗体−抗原相互作用の解離定数を指す。
【0044】
「IC50」という用語は、対象とする生物効果を抑制するため、たとえば細胞毒性活性を中和するために必要とされる、阻害剤の濃度を指す。
【0045】
「分量(dose)」または「投与量(dosage)」という用語は、好ましくは本発明の装着型自動注入装置を用いて患者に投与される、TNFα阻害剤などの物質の量を指す。一実施形態において、分量は、たとえば20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、および160mgのTNFα阻害剤アダリムマブを含むがこれらに限定されない、有効量を含む。
【0046】
「投与(dosing)」という用語は、治療目的(たとえば、リウマチ性関節炎の治療)を達成するための物質(たとえば、抗TNFα抗体)の投与を指す。
【0047】
「投与計画」という用語は、たとえばTNFα阻害剤などの物質の治療計画、たとえば0週目の1回目の分量のTNFα阻害剤に続いて隔週投与計画に基づく2回目分量のTNFα阻害剤を投与するなど、長期間にわたるおよび/または治療過程を通じての治療計画を、記載する。
【0048】
「隔週投与計画」、「隔週投与(dosing)」、および「隔週投与(administration)」という用語は、たとえば治療過程を通じて、治療目的を達成するために患者に物質(たとえば抗TNFα抗体)を投与する、時間経過を指す。隔週投与計画は、毎週投与計画を含むようには意図されない。好ましくは、物質は9から19日ごと、より好ましくは11から17日ごと、さらに好ましくは13から15日ごと、最も好ましくは14日ごとに投与される。一実施形態において、隔週投与計画は、治療の0週目に患者に対して開始される。別の実施形態において、隔週投与計画に基づいて維持量が投与される。一実施形態において、負荷量および維持量の両方が、隔週投与計画に従って投与される。一実施形態において、隔週投与は、0週目から始まって1週間おきにTNFα阻害剤の投与量が患者に投与される投与計画を含む。一実施形態において、隔週投与は、たとえば4週間、8週間、16週間、24週間、26週間、32週間、36週間、42週間、48週間、52週間、56週間など、所定期間にわたって連続して1週間おきにTNFα阻害剤の投与量が患者に投与される投与計画を含む。隔週投与方法は、米国特許出願公開第2003/0235585号明細書にも記載されている。
【0049】
「第二剤と組み合わせた第一剤」の句で使用されるような「組み合わせ」という用語は、第一剤と第二剤との同時投与を含み、これはたとえば、製薬上許容可能な同じ担体中に溶解または混合されてもよく、第一剤に続いて第二剤を投与すること、または第二剤に続いて第一剤を投与することであってもよい。
【0050】
「併用療法」の句で使用されるような「併用」という用語は、第二剤の存在下で薬剤を投与することを含む。併用療法は、第一、第二、第三、または追加物質が同時投与される方法を含む。併用療法はまた、第一または追加物質が第二物質または追加物質の存在下で投与される方法であって、たとえば第二または追加剤が先に投与済みである方法も、含む。併用療法は、異なる患者によって段階的に実行されてもよい。たとえば、一対象者が患者に第一剤を投与して第二対象者がその患者に第二剤を投与してもよく、第一物質(および追加物質)が第二物質(および追加物質)の存在下での投与後である限り、投与ステップは同時に、またはほぼ同時に、または異なる時間に、実行されてもよい。施術者および患者は、同じ実体(たとえば、ヒト)であってもよい。
【0051】
「複合療法」という用語は、たとえば抗TNFα抗体および別の薬物など、2つ以上の治療剤の投与を指す。(1つまたは複数の)別の薬物は、抗TNFα抗体の投与と併用して、これに先立って、またはこれに続いて、投与されてもよい。
【0052】
「治療」という用語は、たとえばリウマチ性関節炎など、TNFαが有害となる疾患などの疾患の治療のための、治療的処置、ならびに予防または抑制措置を指す。
【0053】
「患者」または「ユーザ」という用語は、例示的な自動注入装置を用いて物質が注入され得る、いずれかのタイプの動物、ヒト、または非ヒトを指す。
【0054】
「装着型自動注入装置」および「装着型自動注入器」という用語は、患者の皮膚に装着型装置を直接固定するか、または皮下注射針の貫通を許容する着用品に装着型装置を固定することによって、治療有効投与量の治療薬を患者が自己投与できるようにする、患者によって装着される装置を指し、装着型装置は、機構が係合すると注入によって患者に治療薬を自動的に送達する機構を含むことによって、従来のシリンジとは異なっている。
【0055】
「シリンジ」および「カートリッジ」という用語は、患者への治療薬投与のための患者またはその他の非医療専門家への流通または販売に先立って1回分の治療薬が充填された、滅菌バレル部を包含する。一例示的実施形態において、シリンジのバレル部の遠位末端は滅菌皮下注射針に結合されていてもよい。一例示的実施形態において、カートリッジのバレル部の遠位末端は、針に結合されていなくてもよい。つまり、例示的実施形態において、シリンジは、そのバレル部に結合された取り付け済み中空針を備えるカートリッジであってもよい。
【0056】
シリンジアセンブリを参照して本明細書に記載される例示的実施形態はまた、カートリッジアセンブリを用いて実現されてもよい。同様に、カートリッジアセンブリを参照して本明細書に記載される例示的実施形態また、シリンジアセンブリを用いて実現されてもよい。
【0057】
「容器」という用語は、1回分の治療薬を保持するために例示的な装着型自動注入装置で使用されてもよい、シリンジまたはカートリッジのいずれかを指す。
【0058】
「注射針」という用語は、患者の体内に1回分の治療薬を送達するために患者の体内に挿入される、装着型自動注入装置の針を指す。一例示的実施形態において、注射針は、投与量の治療薬を保持するシリンジまたはカートリッジアセンブリに直接、またはこれと接触して、結合されてもよい。別の例示的実施形態において、注射針は、たとえばシリンジまたはカートリッジと注射針との間に流体連絡を提供する、シリンジ針および/または搬送機構を通じて、シリンジまたはカートリッジに間接的に結合されてもよい。
【0059】
「シリンジ針」という用語は、シリンジまたはカートリッジアセンブリから注射針に1回分の治療薬を運搬するためのシリンジまたはカートリッジアセンブリに結合されるかまたはこれと接触している、装着型自動注入装置の針を指し、そうして注射針が治療薬を患者の体内に送達する。一例示的実施形態において、シリンジ針は患者の体内に挿入されない。別の例示的実施形態において、シリンジ針は患者の体内に挿入されてもよい。
【0060】
シリンジアセンブリを含む例示的な装着型自動注入装置において、シリンジ針は、シリンジのバレル部に直接結合されてもよく、バレル部と流体連絡していてもよい。カートリッジアセンブリを含む例示的な装着型自動注入装置において、シリンジ針は、たとえば注入ボタンまたは搬送機構の内部に、カートリッジのバレル部とは別に設けられてもよい。注入段階の間、シリンジ針は、シリンジ針とバレル部との間に流体連絡を確立するために、カートリッジのバレル部の遠位末端に挿入されてもよい。
【0061】
「注入前状態」という用語は、装置に収容された治療薬の送達の開始に先立つ、装着型自動注入装置の状態を指す。
【0062】
「注入状態」という用語は、装置に収容された治療薬の送達中の、装着型自動注入装置の1つ以上の状態を指す。
【0063】
「注入後状態」という用語は、装置に収容された治療有効投与量の治療薬の送達の完了、および治療有効投与量の治療薬の送達の完了に先立つ患者からの装置の取り外しを指す。
【0064】
「低速」という用語は、ある量の治療薬の送達速度を指す。一例示的実施形態において、約0.1ミリリットルから約1ミリリットル以上の量が、約10秒から約12時間の送達期間に送達されてもよい。好適な実施形態において、送達期間は、約5分から約30分の範囲であってもよい。
【0065】
「着衣」という用語は、例示的な装着型自動注入装置が結合または取り付けられてもよい、患者の身体上のいずれか適切な覆いを指す。着用品はこのように、装置と患者の皮膚との間の中間層を形成してもよく、装置を患者の皮膚に間接的に結合させるために使用されてもよい。一例示的実施形態において、着用品は、たとえばナイロン靴下など、患者の身体上に密着する着衣であってもよい。別の例示的実施形態において、着用品は、医療用テープ、包帯などを含むがこれらに限定されない、患者の皮膚上の覆いであってもよい。別の例示的実施形態において、着用品は、患者の身体の一部の周りに密着してもよい袖、ベルト、ストラップ(たとえばベルクロストラップ)などを含むがこれらに限定されない、患者の皮膚の近傍に装置を付着させる結合機構であってもよい。
【0066】
II.例示的実施形態
図1から
図10を参照して、特定の例示的な装着型自動注入装置が記載される。治療薬を運搬するために例示的な装着型自動注入装置で使用されてもよい特定の例示的な針システムは、
図11から
図23を参照して記載される。シリンジまたはカートリッジから治療薬を放出するために例示的な装着型自動注入装置で使用されてもよい特定の例示的なプランジャ作動システムは、
図24から
図51を参照して記載される。注射針を注入後状態の後退位置に保持するために例示的な装着型自動注入装置で使用されてもよい特定の例示的な針保護システムは、
図52から
図55を参照して記載される。
【0067】
例示的な装着型自動注入装置は、注射針を通じて患者の体内に送達されてもよい1回分の治療薬を保持するための、シリンジアセンブリ(
図1Aから
図1Fに示されるとおり)またはカートリッジアセンブリ(
図2Aから
図2Fに示されるとおり)を採用してもよい。
【0068】
図1Aから
図1Fは、患者の体内に1回分の治療薬を注入するために使用されてもよいシリンジアセンブリを含む、装着型自動注入装置100の例示的実施形態を示す。
図1Aは、封入済み注入前状態の例示的な装着型装置100の第一端面図および第一側面図を示す。
図1Bは、注入に備えて注射針を覆う針シールドが取り外されている注入前状態の、例示的な装置100の第一端面図および第一側面図を示す。
図1Cは、患者の皮膚が注射針によって穿通されている注入状態の、注入中の例示的な装置100の第一端面図および第一側面図を示す。
図1Dは、1回分の治療薬を収容しているバレル部が装置100の筐体内で前方に展開されている注入状態の、注入中の例示的な装置100の第一端面図および第一側面図を示す。
図1Eは、バレル部から1回分の治療薬を放出するために栓がプランジャアクチュエータによって作動されている注入状態の、注入中の例示的な装置100の第一端面図および第一側面図を示す。
図1Fは、注射針が装置100の筐体内で後退させられている注入後状態の、注入後の例示的な装置100の第一端面図および第一側面図を示す。
【0069】
装着型自動注入装置100は、筐体102を含んでもよい。一例示的実施形態において、筐体102は長尺構成を有してもよいが、ただし当業者は、筐体102が、注入される1回分の治療薬を収容するバレル部を収納するためのいずれの適切なサイズ、形状、および構成を有してもよいことを、認識するだろう。一例示的実施形態において、筐体102は、プラスチックおよびその他の周知の材料を含むがこれらに限定されない、いずれの適切な材料で形成されてもよい。
【0070】
装着型自動注入装置100の筐体102は、患者の皮膚または患者の着用品の近傍に配置された筐体102の底部の患者接触部に沿って設けられた、接着層124を含んでもよい。いくつかの例示的実施形態において、接着層124は、投与量の治療薬を送達するために筐体102を患者に付着させるため、患者の皮膚上に配置されるように構成されてもよい。接着層124は、接着性ではない非接着タブ126を含んでもよい。非接着タブ126は、患者によって把持されて、患者の皮膚または着衣から装着型自動注入装置100を取り外すために引っ張られてもよい。
【0071】
装着型自動注入装置100が、たとえば
図1Aに示される封入状態で、使用される前に、接着層124は、接着層124の接着性を保つ保護膜128によって被覆されてもよい。保護膜128は、患者によって把持されて接着層124から保護膜128を除去するために引っ張られてもよい、タブ130を含んでもよい。これは接着層124を露出させ、接着層124を備える側を皮膚または着用品上に配置することによって、患者が自身の皮膚または着用品に筐体102を取り付けられるようにする。
【0072】
筐体102は、実質的に近位末端(注射針から最も遠い)と遠位末端(注射針に最も近い)との間の長手軸Lに沿って延在するシリンジアセンブリを収納してもよい。シリンジアセンブリは、患者の皮膚に注入される投与量108の治療薬を保持するためのバレル部106を含んでもよい。バレル部106は、実質的に近位末端(注射針から最も遠い)と遠位末端(注射針に最も近い)との間の長手軸に沿って延在してもよい。一例示的実施形態において、バレル部106は、円形断面を有する実質的に円筒形の部材であってもよいが、ただし当業者は、バレル部106がいずれの適切な形状または構成を有してもよいことを認識するだろう。
【0073】
一例示的実施形態において、バレル部106は、注入プロセスの結果としてバレル部106が筐体102の内部でこれに対して移動することがないように、筐体102内で静止していてもよい。別の例示的実施形態において、バレル部106は、最初に、すなわち注入前状態で注入の前に、装置100の近位末端に向かって後退位置にあってもよく(
図1Aから
図1Cに示されるとおり)、注入状態で注入中に、装置100の遠位末端に向かって伸長位置に作動されてもよい。
【0074】
バレル部106内に投与量の治療薬を封止し、バレル部106から投与量を放出するために投与量に力を印加するため、バレル部106の近位末端に栓110が設けられてもよい。栓110は、注入状態で注入中にバレル部106から投与量を放出するために、バレル部106の遠位末端に向かってバレル部106の内部で移動可能であってもよい。一例示的実施形態において、栓110は、投与量を封止して投与量をバレル部106から押し出すという両方の機能を実行するように構成されてもよい。別の例示的実施形態において、栓はバレル部106内に投与量を封止するために設けられてもよく、別のピストンまたはプランジャが、投与量をバレル部106から押し出すために栓に力を付与するために設けられてもよい。
【0075】
シリンジアセンブリは、その遠位末端上またはその付近に、シリンジ針120およびシリンジ針120を覆うための針カバー134を含んでもよいシリンジストッパまたはシリンジ114の遠位部を、含んでもよい。針カバー134は、軟質針シールド、硬質針シールド、またはその両方を含んでもよい。一例示的実施形態において、シリンジ針120は、装置100の長手軸Lと平行に位置合わせされてもよい。シリンジ針120は、隔膜を穿通するのに適したいずれの適切なサイズ、形状、および構成を有してもよく、具体的実施形態に限定されるものではない。
【0076】
シリンジアセンブリは、その近位末端上またはその付近に、バレル部106に収容された治療有効投与量を患者の皮膚に注入するために、遠位末端に向かってバレル部106の内部で前方に向かって栓110を選択的に作動させるための、プランジャアクチュエータ112を含んでもよい。プランジャアクチュエータ112は、栓110を作動させるためにエネルギー貯蔵および制御エネルギー解放機構を採用してもよい。例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ112は、バレル部106の外部に、あるいは部分的または完全にバレル部106の内部に、位置してもよい。一例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ112は、直接的に、または栓110とプランジャアクチュエータ112との間に設けられたプランジャの使用を通じて間接的に、栓110を駆動してもよい。
【0077】
一例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ112は、注入前には後退しており、注入中にはバレル部106の内部で栓110を前方に向かって作動させるために解放される、たとえばバネなどの付勢機構を含んでもよい。別の例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ112は、注入前には非膨張相であって、注入中にはバレル部106の内部で栓110を前方に向かって作動させるために膨張する、たとえば発泡体などの化学ガス発生器を含んでもよい。別の例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ112は、作動流体の液圧、圧縮ガスのガス圧、浸透圧、ハイドロゲル膨張、などを採用してもよい。
【0078】
一例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ112は、実質的に直線的に、すなわち実質的に一定の速度で、バレル部106の内部で前方に向かって移動させられてもよい。これは、実質的に一定の送達速度で投与量が患者に送達されることを可能にするだろう。プランジャアクチュエータ112は、たとえばエネルギーの初期解放などのエネルギーを吸収し、プランジャアクチュエータ112によるエネルギー解放の間によりよく制御されたエネルギーの解放を提供するために使用されてもよい、減衰機構を含んでもよく、あるいは減衰機構に結合されてもよい。制御されたエネルギーの解放は、実質的に線形の送達プロファイル、すなわち長時間にわたって実質的に一定の速度の投与量の送達をもたらし、送達速度の急激な変化を防止するだろう。一例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ112は作動流体の液圧を採用してもよく、減衰機構は作動流体と栓110との間の流体通路内に配置された流量制限器を採用してもよい。別の例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ112は付勢機構を採用してもよく、減衰機構は粘性減衰器、スイスレバー脱進機、ランナウェイ脱進機などを採用してもよい。別の例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ112は、一定な線形送達プロファイルを提供するために、歯車駆動システムに接続されたステッパモータを採用してもよい。
【0079】
装着型自動注入装置100の筐体102は、患者の皮膚を穿通するように構成された中空の皮下注射針を担持する注入ボタン116も、収納してよい。一例示的実施形態において、注射針118は、装置100の長手軸Lに対して直角に位置合わせされてもよい。一例示的実施形態において、注射針118は、注入ボタン116内に、または注入ボタン116とは別に設けられた、注射針キャリア(図示せず)によって、所定位置に保持されてもよい。注射針118は、治療薬を送達するために患者の皮膚を穿通するのに適したいずれの適切なサイズ、形状、および構成を有してもよく、具体的実施形態に限定されるものではない。適切な針は、所望の治療に適した注入深度を提供するように構成または選択された長さを有してもよい。皮下注射は通常、皮膚内に約6から10ミリメートル進入する。一例示的実施形態において、注射針118は約12mmの長さを有してもよく、皮膚内に約7mmの深さまで注入されてもよい。その他の例示的実施形態において、注射針118は、皮内、その他の皮下、または筋肉内治療に適した長さを有してもよい。適切な注射針は、十分な機械強度を提供するのに適した壁厚、患者の感覚を最小限に抑えながら注入物質の所望の流量を許容するのに適した直径、および患者の感覚を最小限に抑えながら所望の治療に適した先端形状を、有してもよい。適切な注射針は、治療によって許容される程度に患者の感覚を最小限に抑えるために、必要に応じて被覆されてもよい。注射針118は、針カバー122、たとえば硬質針シールド、軟質針シールド、またはその両方によって覆われ、無菌状態、すなわち滅菌状態に維持されてもよい。
【0080】
注入ボタン116は、シリンジ針120の近傍に設けられた穿通可能な隔膜も含んでよい。注入前状態において、シリンジ針120は隔膜を穿通せず、こうしてバレル部106とシリンジ針120との間の流体連絡を防止する。注入状態において、たとえばシリンジ針120などの針によって穿通されると、隔膜は投与量をバレル部106から放出し、シリンジ針120に進入させてもよい。一例示的実施形態において、1つ以上のカバー115は、無菌障壁内に隔膜を包囲してもよい。カバー115は、シリンジ針120が隔膜を穿通するときに穿通されてもよい。
【0081】
一例示的実施形態において、注射針118およびシリンジ針120は、注入ボタン116の本体を通じて互いに結合され、流体連絡してもよい。別の例示的実施形態において、注射針118およびシリンジ針120は、1つ以上の流体導管(図示せず)を通じて互いに結合され、流体連絡してもよい。別の例示的実施形態において、注射針118およびシリンジ針120は、互いに直接結合され、流体連絡してもよい。
【0082】
一例示的実施形態において、注入前状態で注入の前に、注入ボタン116は、
図1Aおよび
図1Bに示されるように注入ボタン116が筐体102の上部から突起するように、筐体102に対して垂直上昇位置にあってもよい。この位置において、注射針118は筐体102の内部で後退してもよく、患者の皮膚に挿入されなくてもよい。この位置において、シリンジ針120は、シリンジストッパ114内で隔膜の下方に垂直に位置合わせされてもよく、隔膜を穿通しなくてもよい。注入プロセスの始めに、注入ボタン116は、たとえば装置のユーザによってまたは自動的に、下方に押されてもよい。これは、
図1Cから
図1Eに示されるように、注入ボタン116がもはや筐体102の上部から突起しないように、患者の皮膚に近づくように筐体102に対して垂直押下位置まで注入ボタン116を押してもよい。この位置において、注射針118は筐体102の底部から突起していてもよく、患者の皮膚に挿入されていてもよい。この位置において、シリンジ針120は、シリンジストッパ114内で隔膜に位置合わせされてもよく、隔膜を穿通してもよい。
【0083】
一例示的実施形態において、隔膜は最初に注入ボタン116から離間されていてもよい。この実施形態において、シリンジ針120を担持するシリンジストッパ114が隔膜に向かって筐体102の内部を前進するとき、シリンジ針120は隔膜を穿通してもよい。つまり、注入前状態で注入の前に、シリンジ針120は、バレル部106と注入ボタン116に結合された注射針118との間に流体連絡がないように、隔膜から離間していてもよい。注入状態において、バレル部106は、シリンジ針120が隔膜を穿通してバレル部106と注入ボタン116に結合された注射針118との間に流体連絡を確立するように、装置100の遠位末端に向かって筐体102の内部を前進してもよい。この流体連絡は、注入状態で注入中に栓110によって投与量に圧力が印加されたときに、投与量の治療薬がバレル部106からシリンジ針120および注射針118を通じて患者の皮膚内に流入できるようにしてもよい。
【0084】
ここで
図1Fを参照すると、一例示的実施形態において、装着型自動注入装置100の筐体102は皮膚センサ足部132を含んでもよく、これは注入部位の近位の筐体102の部分の下または内部に収納された構造である。治療薬の注入の前および注入中には、皮膚センサ足部132は筐体102の下側の部分に保持されるかまたはその部分を形成する。装着型自動注入装置100が注入部位に取り付けられて始動されると、皮膚センサ足部132は自由に動いてもよいが、しかし注入部位によって拘束されてもよい。装着型自動注入装置100が注入部位から取り外されると、薬物送達が完了したか否かにかかわらず、皮膚センサ足部132はもはや拘束されず、筐体102の周囲の外側に延在および突起する。これはひいては後退トリガをトリップさせる。後退トリガが始動させられると、後退機構は注射針120を後退させ、これは注入ボタン116が筐体102の上部から突起して注射針118が筐体102内に後退させられるように、やはり注入ボタン116を垂直下降位置から垂直上昇位置まで引き上げてもよい。
【0085】
図1Aは、バレル部106が投与量108の治療薬で予備充填可能および/または予備充填済みであってもよく、使用に備えて後退位置にあってもよい、たとえば封入された、注入前状態の装着型自動注入装置100を示す。バレル部106は、バレル部106の1つまたは複数の壁と栓110との間に定義された内部空間に、投与量108の治療薬を収容してもよい。一実施形態において、プランジャアクチュエータ112は、解放されたときに栓110を作動させてもよいエネルギーを貯蔵してもよい。注入ボタン116は、注入部位の上方の垂直上方位置で部分的に筐体102の内部に設けられてもよく、注射針118は筐体102の内部で後退してもよい。筐体102の上部からの注入ボタン116の突起は、装着型自動注入装置100が動作していないという視覚的指標を患者に提供してもよい。
【0086】
図1Bは、針カバー122および隔膜カバーが取り外された、注入前状態の装着型自動注入装置100を示す。例示的実施形態において、保護膜128は、針カバー122に接続された連結部材、ならびにシリンジストッパ114内の隔膜およびシリンジ針カバーを含んでもよい。連結部材は、テザーまたはその他の連結機構を含んでもよい。保護膜128が取り外されると、保護膜128の連結部材は針カバー122ならびにシリンジストッパ114内の隔膜およびシリンジ針カバーを取り外してもよい。
【0087】
図1Cは、注入ボタン116が筐体102の内部の垂直下降位置にある注入状態で注入中の、装着型自動注入装置100を示す。垂直下降位置において、注入ボタン116は注入部位の上方の押下または垂直下降位置で筐体102の内部に設けられてもよく、注射針118は、注入部位で皮膚を貫通することができるように、筐体102内の開口を通じて筐体102の底部から突起してもよい。垂直下降状態において、注入ボタン116は筐体102の上部から突起しなくてもよく、これは装着型自動注入装置100が動作しているという視覚的指標を患者に提供してもよい。
【0088】
図1Dは、投与量108の治療薬を収容するバレル部106が装置100の筐体内で後退位置から伸長位置まで前方に向かって展開されている注入状態で注入中の、装着型自動注入装置100を示す。バレル部106の前進は、バレル部106の遠位末端またはシリンジストッパ114を、注入ボタン116の近傍に持ってくるか、または接触させてもよい。一例示的実施形態において、シリンジ針120は、バレル部106と注射針118との間に流体連絡を確立するために、シリンジストッパ114内に保持された隔膜を穿通してもよい。
【0089】
図1Eは、プランジャアクチュエータ112が栓110を移動させるために起動されている注入状態で注入中の、装着型自動注入装置100を示す。プランジャアクチュエータ112の起動は、バレル部106内の栓110を装置100の遠位末端に向かって移動させるために、プランジャアクチュエータ112内の貯蔵エネルギーを解放してもよい。栓110の移動は、バレル部106の遠位末端を通じてバレル部106から投与量の治療薬を注出させてもよい。プランジャアクチュエータ112を起動するために、注入ボタン116の押下によって、または針カバー122の取り外しによって結合または始動させられる連結部材、ユーザによって使用されてもよい起動ボタンなどを含むがこれらに限定されない、いずれの適切な機構が使用されてもよい。
【0090】
図1Fは、注入ボタン116が垂直上昇位置にある、たとえば治療有効投与量の治療薬を注入した後、または治療有効投与量の治療薬の送達前に患者から装着型自動注入装置100を取り外した後など、注入後状態で注入後の、装着型自動注入装置100を示す。垂直上昇位置において、注入ボタン116は、注入部位の上方の引き上げまたは垂直上昇位置で部分的に筐体102の内部に設けられてもよく、注射針118は筐体102の内部で後退してもよい。注入ボタン116の一部は、装着型自動注入装置アセンブリ100が動作していない(すなわち注入後状態である)という視覚的指標を患者に提供するために、筐体102の上部から突起してもよい。バレル部106は治療薬がなくなっていてもよく、プランジャアクチュエータ112はもはやエネルギーを貯蔵していなくてもよい。皮膚センサ足部132は、注入部位からの装置100の抜去の際に、筐体102の底部から延伸してもよい。
【0091】
筐体102は、垂直下降した注入状態(
図1Cから
図1Eに示す)から垂直上昇した注入後状態(
図1Fに示す)まで注入ボタン116を自動的に持ち上げる、後退機構を含んでもよい。一例示的実施形態において、後退機構は、後退機構が起動したときに注入部位から離れるようにシリンジアセンブリを付勢する、たとえばバネなどの付勢機構を含んでもよい。
【0092】
後退トリガは、始動すると、垂直下降状態から垂直上昇状態に注入ボタン116を持ち上げるために、後退機構を起動してもよい。一例示的実施形態において、栓110および/またはプランジャアクチュエータ112は、後退トリガに接続された連結部材を含んでもよい。連結部材は、テザーまたはその他の連結機構を含んでもよい。連結部材は、栓110がバレル部106の末端まで移動したときに(1回分の投与量を送達)、連結部材がラッチを起動して後退トリガをトリップするように、適切な長さであってもよい。別の例示的実施形態において、筐体102の底部からの皮膚センサ足部132の延伸が、後退トリガをトリップしてもよい。
【0093】
一例示的実施形態において、後退機構は、トリップしたときに後退機構を起動する、投与終了後退トリガを含んでもよい。投与終了後退トリガは、装着型自動注入装置内の治療有効投与量の治療薬が送達されたときにトリップされてもよい。一例示的実施形態において、投与終了後退トリガは、薬物送達終了時に解放される、たとえば可撓性プラスチックフックなどのラッチを含んでもよい。後退機構はまた、トリップしたときに後退機構を起動する、早期抜去後退トリガも含んでよい。早期抜去後退トリガは、治療有効投与量の治療薬が完全に送達される前に装着型自動注入装置が注入部位から抜去されるときに、トリップされてもよい。一例示的実施形態において、早期抜去後退トリガは、注入部位からの装着型自動注入装置100の抜去時に解放される、たとえば可撓性プラスチックフックなどのラッチを含んでもよい。後退機構は、シリンジアセンブリを注入部位から自動的に後退させるために、投与終了後退トリガに反応し、早期抜去後退トリガに反応する。
【0094】
一例示的実施形態において、垂直上昇位置への注入ボタン116の上昇は、シリンジ針120を上方に曲げてもよく、こうしてシリンジ針および装着型自動注入装置の望ましくない再利用を防止する。
【0095】
図2Aから
図2Fは、患者の体内に1回分の治療薬を注入するために使用されてもよいカートリッジアセンブリを含む、装着型自動注入装置200の例示的実施形態を示す。
図2Aは、封入済み注入前状態の例示的な装着型装置200の第一端面図および第一側面図を示す。
図2Bは、注入に備えて注射針を覆う針シールドが取り外された注入前状態の、例示的な装置200の第一端面図および第一側面図を示す。
図2Cは、患者の皮膚が注射針によって穿通されている注入状態の、注入中の例示的な装置200の第一端面図および第一側面図を示す。
図2Dは、1回分の治療薬を収容しているバレル部が装置200の筐体内で前方に展開されている注入状態の、注入中の例示的な装置200の第一端面図および第一側面図を示す。
図2Eは、バレル部から1回分の治療薬を放出するために栓がプランジャアクチュエータによって作動されている注入状態の、注入中の例示的な装置200の第一端面図および第一側面図を示す。
図2Fは、注射針が装置200の筐体内で後退させられている注入後状態の、注入後の例示的な装置200の第一端面図および第一側面図を示す。
【0096】
装着型自動注入装置200は、筐体200を含んでもよい。一例示的実施形態において、筐体202は長尺構成を有してもよいが、ただし当業者は、筐体202が、注入される1回分の治療薬を収容するバレル部を収納するためのいずれの適切なサイズ、形状、および構成を有してもよいことを、認識するだろう。一例示的実施形態において、筐体202は、プラスチックおよびその他の周知の材料を含むがこれらに限定されない、いずれの適切な材料で形成されてもよい。
【0097】
装着型自動注入装置200の筐体202は、患者の皮膚または患者の着用品の近傍に配置された筐体202の底部の患者接触部に沿って設けられた、接着層224を含んでもよい。いくつかの例示的実施形態において、接着層224は、投与量の治療薬を送達するために筐体202を患者に付着させるため、患者の皮膚上に配置されるように構成されてもよい。接着層224は、接着性ではない非接着タブ226を含んでもよい。非接着タブ226は、患者によって把持されて、患者の皮膚または着衣から装着型自動注入装置200を取り外すために引っ張られてもよい。
【0098】
装着型自動注入装置200が、たとえば
図2Aに示される封入状態で使用される前に、接着層224は、接着層124の接着性を保つ保護膜228によって被覆されてもよい。保護膜228は、患者によって把持されて接着層224から保護膜228を除去するために引っ張られてもよい、タブ230を含んでもよい。これは接着層224を露出させ、接着層224を備える側を皮膚または着用品上に配置することによって、患者が自身の皮膚または着用品に筐体202を取り付けられるようにする。
【0099】
筐体202は、実質的に近位末端(注射針から最も遠い)と遠位末端(注射針に最も近い)との間の長手軸Lに沿って延在する、治療薬カートリッジアセンブリを収納してもよい。カートリッジアセンブリは、患者の皮膚に注入される投与量208の治療薬を保持するためのバレル部206を含んでもよい。バレル部206は、実質的に近位末端(注射針から最も遠い)と遠位末端(注射針に最も近い)との間の長手軸に沿って延在してもよい。一例示的実施形態において、バレル部206は、円形断面を有する実質的に円筒形の部材であってもよいが、ただし当業者は、バレル部206がいずれの適切な形状または構成を有してもよいことを認識するだろう。
【0100】
一例示的実施形態において、バレル部206は、注入プロセスの結果としてバレル部206が筐体202の内部でこれに対して移動することがないように、筐体202内で静止していてもよい。別の例示的実施形態において、バレル部206は、最初に、すなわち注入前状態で注入の前に、装置200の近位末端に向かって後退位置にあってもよく(
図2Aから
図2Cに示されるとおり)、注入状態で注入中に、装置200の遠位末端に向かって伸長位置に作動されてもよい。
【0101】
バレル部206内に投与量の治療薬を封止し、バレル部206から投与量を放出するために投与量に力を印加するため、バレル部206の近位末端に栓210が設けられてもよい。栓210は、注入状態で注入中にバレル部206から投与量を放出するために、バレル部206の遠位末端に向かってバレル部206の内部で移動可能であってもよい。一例示的実施形態において、栓210は、投与量を封止して投与量をバレル部206から押し出すという両方の機能を実行するように構成されてもよい。別の例示的実施形態において、栓はバレル部206内に投与量を封止するために設けられてもよく、別のピストンが、投与量をバレル部206から押し出すために栓に力を付与するために設けられてもよい。
【0102】
カートリッジアセンブリは、その近位末端上またはその付近に、バレル部206に収容された治療有効投与量を患者の皮膚に注入するために、遠位末端に向かってバレル部206の内部で栓210を前方に向かって選択的に作動させるための、プランジャアクチュエータ212を含んでもよい。プランジャアクチュエータ212は、栓210を作動させるためにエネルギー貯蔵および制御エネルギー解放機構を採用してもよい。例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ212は、バレル部206の外部に、あるいは部分的または完全にバレル部206の内部に、位置してもよい。一例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ212は、直接的に、または栓210とプランジャアクチュエータ212との間に設けられたプランジャの使用を通じて間接的に、栓210を駆動してもよい。
【0103】
一例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ212は、注入前には後退しており、注入中にはバレル部206の内部で栓210を前方に向かって作動させるために解放される、たとえばバネなどの付勢機構を含んでもよい。別の例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ212は、注入前には非膨張相であって、注入中にはバレル部206の内部で栓210を前方に向かって作動させるために膨張する、たとえば発泡体などの化学ガス発生器を含んでもよい。その他の例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ212は、作動流体の液圧、圧縮ガスのガス圧、浸透圧、ハイドロゲル膨張、などを採用してもよい。
【0104】
一例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ212は、実質的に直線的に、すなわち実質的に一定の速度で、バレル部206の内部で前方に向かって移動させられてもよい。これは、実質的に一定の送達速度で投与量が患者に送達されることを可能にするだろう。プランジャアクチュエータ212は、たとえばエネルギーの初期解放などのエネルギーを吸収し、プランジャアクチュエータ212によるエネルギー解放の間によりよく制御されたエネルギーの解放を提供するために使用されてもよい、減衰機構を含んでもよく、あるいは減衰機構に結合されてもよい。制御されたエネルギーの解放は、実質的に線形の送達プロファイル、すなわち長時間にわたって実質的に一定の速度の投与量の送達をもたらし、送達速度の急激な変化を防止するだろう。
【0105】
一例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ212は、カートリッジのバレル部の内部で栓を移動させるために作動流体の液圧が栓に力を印加する、作動流体を収容する1つ以上の流体回路を採用してもよい。減衰機構は、作動流体源と栓との間の流体回路に配置された流量制限器を採用してもよい。
【0106】
別の例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ212は、たとえば渦巻きバネまたは圧縮コイルバネなどの付勢機構を採用してもよい。減衰機構は、粘性減衰器、スイスレバー脱進機、ランナウェイ脱進機、などを採用してもよい。
【0107】
別の例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ212は、一定な線形送達プロファイルを提供するために、歯車駆動システムに接続されたステッパモータを採用してもよい。
【0108】
カートリッジアセンブリは、その遠位末端上またはその付近に、隔膜および隔膜のカバー215を含んでもよい、カートリッジストッパ214を含んでもよい。隔膜は、バレル部206内に投与量を封止するためにバレル部206の遠位末端に隣接して設けられた材料の穿通可能な層であってもよい。無傷のとき、隔膜はバレル部206内に投与量を封止してもよい。たとえばシリンジ針などの針で穿通されると、隔膜は投与量をバレル部206から解放してシリンジ針に進入させる。隔膜は、シリンジ針によって穿通されてもよい材料で形成されてもよい。
図2Aに示されるように装置200が封入済み注入前状態にあるときにシリンジ針による偶発的な穿通から隔膜を保護的に被覆するために、カバーが設けられてもよい。一例示的実施形態において、カートリッジストッパ214はまた、カートリッジストッパ214の近傍に設けられたシリンジ針を保護的に被覆するためのカバーも含んでよく、それによって、
図2Aに示されるように装置200が封入済み注入前状態にあるときにシリンジ針による偶発的な隔膜の穿通を防止する。
【0109】
装着型自動注入装置200の筐体202は、患者の皮膚を穿通するように構成された中空の皮下注射針218を担持する注入ボタン216も、収納してよい。一例示的実施形態において、注射針218は、装置200の長手軸Lに対して直角に位置合わせされてもよい。一例示的実施形態において、注射針218は、注入ボタン216内に、または注入ボタン216とは別に設けられた、注射針キャリア(図示せず)によって、所定位置に保持されてもよい。注射針218は、治療薬を送達するために患者の皮膚を穿通するのに適したいずれの適切なサイズ、形状、および構成を有してもよく、具体的実施形態に限定されるものではない。適切な針は、所望の治療に適した注入深度を提供するように構成または選択された長さを有してもよい。皮下注射は通常、皮膚内に約6から10ミリメートル進入する。一例示的実施形態において、注射針218は、約12mmの長さを有してもよく、皮膚内に約7mmの深さまで注入されてもよい。その他の例示的実施形態において、注射針218は、皮内、その他の皮下、または筋肉内治療に適した長さを有してもよい。適切な注射針は、十分な機械強度を提供するのに適した壁厚、患者の感覚を最小限に抑えながら注入物質の所望の流量を許容するのに適した直径、および患者の感覚を最小限に抑えながら所望の治療に適した先端形状を、有してもよい。適切な注射針は、治療によって許容される程度に患者の感覚を最小限に抑えるために、必要に応じて被覆されてもよい。注射針218は、針カバー222、たとえば硬質針シールド、軟質針シールド、またはその両方によって覆われ、無菌状態に維持されてもよい。
【0110】
注入ボタン216は、隔膜を穿通してバレル部206との流体連絡を確立するように構成された、中空のシリンジ針220も担持してよい。一例示的実施形態において、シリンジ針220は、装置200の長手軸Lと平行に位置合わせされてもよい。シリンジ針220は、隔膜を穿通するのに適したいずれの適切なサイズ、形状、および構成を有してもよく、具体的実施形態に限定されるものではない。
【0111】
一例示的実施形態において、注射針218およびシリンジ針220は、注入ボタン216の本体を通じて互いに結合され、流体連絡してもよい。別の例示的実施形態において、注射針218およびシリンジ針220は、1つ以上の流体導管(図示せず)を通じて互いに結合され、流体連絡してもよい。別の例示的実施形態において、注射針218およびシリンジ針220は、互いに直接結合され、流体連絡してもよい。
【0112】
一例示的実施形態において、注入前状態で注入の前に、注入ボタン216は、
図2Aおよび
図2Bに示されるように注入ボタン216が筐体202の上部から突起するように、筐体202に対して垂直上昇位置にあってもよい。この位置において、注射針218は筐体202の内部で後退してもよく、患者の皮膚に挿入されなくてもよい。この位置において、シリンジ針220は、カートリッジストッパ214内で隔膜の上方に垂直に位置合わせされてもよく、隔膜を穿通しなくてもよい。注入プロセスの始めに、注入ボタン216は、たとえば装置のユーザによってまたは自動的に、下方に押されてもよい。これは、
図2Cから
図2Eに示されるように、注入ボタン216がもはや筐体202の上部から突起しないように、患者の皮膚に近づくように筐体202に対して垂直押下位置まで注入ボタン216を押してもよい。この位置において、注射針218は筐体202の底部から突起していてもよく、患者の皮膚に挿入されていてもよい。この位置において、シリンジ針220は、カートリッジストッパ214内で隔膜に位置合わせされてもよく、隔膜を穿通してもよい。
【0113】
一例示的実施形態において、隔膜は最初に注入ボタン216から離間されていてもよい。この実施形態において、隔膜を担持するカートリッジストッパ214が注入ボタン216に向かって筐体202の内部を前進するとき、シリンジ針220は隔膜を穿通してもよい。つまり、注入前状態で注入の前に、シリンジ針220は、バレル部206と注入ボタン216に結合された注射針218との間に流体連絡がないように、隔膜から離間していてもよい。注入状態において、バレル部206は、シリンジ針220が隔膜を穿通してバレル部206と注入ボタン216に結合された注射針218との間に流体連絡を確立するように、装置200の遠位末端に向かって筐体202の内部を前進してもよい。この流体連絡は、注入状態で注入中に栓210によって投与量に圧力が印加されたときに、投与量の治療薬がバレル部206からシリンジ針220および注射針218を通じて患者の皮膚内に流入できるようにしてもよい。
【0114】
ここで
図2Fを参照すると、一例示的実施形態において、装着型自動注入装置200の筐体202は皮膚センサ足部232を含んでもよく、これは注入部位の近位の筐体202の部分の下または内部に収納された構造である。治療薬の注入の前および注入中には、皮膚センサ足部232は、筐体202の下側の部分に保持されるかまたはその部分を形成する。装着型自動注入装置200が注入部位に取り付けられて始動されると、皮膚センサ足部232は自由に動いてもよいが、しかし注入部位によって拘束されてもよい。装着型自動注入装置200が注入部位から取り外されると、薬物送達が完了したか否かにかかわらず、皮膚センサ足部232はもはや拘束されず、筐体202の周囲の外側に延在および突起する。これはひいては後退トリガをトリップさせる。後退トリガが始動させられると、後退機構は注射針220を後退させてもよく、これは注入ボタン216が筐体202の上部から突起して注射針218が筐体202内に後退させられるように、やはり注入ボタン216を垂直下降位置から垂直上昇位置まで引き上げてもよい。
【0115】
図2Aは、バレル部206が投与量208の治療薬で予備充填可能および/または予備充填済みであってもよく、使用に備えて後退位置にあってもよい、たとえば封入された、注入前状態の装着型自動注入装置200を示す。バレル部206は、バレル部206の1つまたは複数の壁と栓210との間に定義された内部空間に、投与量208の治療薬を収容してもよい。一実施形態において、プランジャアクチュエータ212は、解放されたときに栓210を作動させてもよいエネルギーを貯蔵してもよい。注入ボタン216は、注入部位の上方の垂直上昇位置で部分的に筐体202の内部に設けられてもよく、注射針218は筐体202の内部で後退してもよい。筐体202の上部からの注入ボタン216の突起は、装着型自動注入装置200が動作していないという視覚的指標を患者に提供してもよい。
【0116】
図2Bは、針カバー222および隔膜カバーが取り外された、注入前状態の装着型自動注入装置200を示す。例示的実施形態において、保護膜228は、針カバー222に接続された連結部材、ならびにカートリッジストッパ214内の隔膜およびシリンジ針カバーを含んでもよい。連結部材は、テザーまたはその他の連結機構を含んでもよい。保護膜228が取り外されると、保護膜228の連結部材は針カバー222ならびにカートリッジストッパ214内の隔膜およびシリンジ針カバーを取り外してもよい。
【0117】
図2Cは、注入ボタン216が筐体202の内部の垂直下降位置にある注入状態で注入中の、装着型自動注入装置200を示す。垂直下降位置において、注入ボタン216は注入部位の上方の押下または垂直下降位置で筐体202の内部に設けられてもよく、注射針218は、注入部位で皮膚を貫通することができるように、筐体202の開口を通じて筐体202の底部から突起してもよい。垂直下降位置において、注入ボタン216は筐体202の上部から突起しなくてもよく、これは装着型自動注入装置200が作動しているという視覚的指標を患者に提供してもよい。
【0118】
図2Dは、投与量208の治療薬を収容するバレル部206が装置200の筐体内で後退位置から伸長位置まで前方に向かって展開されている注入状態で注入中の、装着型自動注入装置200を示す。バレル部206の前進は、バレル部206の遠位末端またはカートリッジストッパ214を、注入ボタン216の近傍に持ってくるか、または接触させてもよい。一例示的実施形態において、シリンジ針220は、バレル部206と注射針218との間に流体連絡を確立するために、カートリッジストッパ214内に保持された隔膜を穿通してもよい。
【0119】
図2Eは、プランジャアクチュエータ212が栓210を移動させるために起動されている注入状態で注入中の、装着型自動注入装置200を示す。プランジャアクチュエータ212の起動は、バレル部206内の栓210を装置200の遠位末端に向かって移動させるために、プランジャアクチュエータ212内の貯蔵エネルギーを解放してもよい。栓210の移動は、バレル部206の遠位末端を通じてバレル部206から投与量の治療薬を注出させてもよい。プランジャアクチュエータ212を起動するために、注入ボタン216の押下によって、または針カバー222の取り外しによって結合または始動させられる連結部材、ユーザによって使用されてもよい起動ボタンなどを含むがこれらに限定されない、いずれの適切な機構が使用されてもよい。
【0120】
図2Fは、注入ボタン216が垂直上昇位置にある、たとえば治療有効投与量の治療薬を注入した後、または治療有効投与量の治療薬の送達前に患者から装着型自動注入装置200を取り外した後など、注入後状態で注入後の、装着型自動注入装置200を示す。垂直上昇位置において、注入ボタン216は、注入部位の上方の引き上げまたは垂直上昇位置で部分的に筐体202の内部に設けられてもよく、注射針218は筐体202の内部で後退してもよい。注入ボタン216の一部は、装着型自動注入装置アセンブリ200が動作していない(すなわち注入後状態である)という視覚的指標を患者に提供するために、筐体202の上部から突起してもよい。バレル部206は治療薬がなくなっていてもよく、プランジャアクチュエータ212はもはやエネルギーを貯蔵していなくてもよい。皮膚センサ足部232は、注入部位からの装置200の抜去の際に、筐体202の底部から延伸してもよい。
【0121】
筐体202は、垂直下降した状態(
図2Cから
図2Eに示す)から垂直上昇した注入後状態(
図2Fに示す)まで注入ボタン216を自動的に持ち上げる、後退機構を含んでもよい。一例示的実施形態において、後退機構は、後退機構が起動したときに注入部位から離れるようにカートリッジアセンブリを付勢する、たとえばバネなどの付勢機構を含んでもよい。
【0122】
後退トリガは、始動すると、垂直下降状態から垂直上昇状態に注入ボタン216を持ち上げるために、後退機構を起動してもよい。一例示的実施形態において、栓210および/またはプランジャアクチュエータ212は、後退トリガに接続された連結部材を含んでもよい。連結部材は、テザーまたはその他の連結機構を含んでもよい。連結部材は、栓210がバレル部206の末端まで移動したときに(1回分の投与量を送達)、連結部材がラッチを起動して後退トリガをトリップするように、適切な長さであってもよい。別の例示的実施形態において、筐体202の底部からの皮膚センサ足部232の延伸が、後退トリガをトリップしてもよい。
【0123】
一例示的実施形態において、後退機構は、トリップしたときに後退機構を起動させる、投与終了後退トリガを含んでもよい。投与終了後退トリガは、装着型自動注入装置内の治療有効投与量の治療薬が送達されたときにトリップされてもよい。一例示的実施形態において、投与終了後退トリガは、薬物送達終了時に解放される、たとえば可撓性プラスチックフックなどのラッチを含んでもよい。後退機構はまた、トリップしたときに後退機構を起動する、早期抜去後退トリガも含んでよい。早期抜去後退トリガは、治療有効投与量の治療薬が完全に送達される前に装着型自動注入装置が注入部位から抜去されるときに、トリップされてもよい。一例示的実施形態において、早期抜去後退トリガは、注入部位からの装着型自動注入装置200の抜去時に解放される、たとえば可撓性プラスチックフックなどのラッチを含んでもよい。後退機構は、カートリッジアセンブリを注入部位から自動的に後退させるために、投与終了後退トリガに反応し、早期抜去後退トリガに反応する。
【0124】
例示的実施形態において、装着型自動注入装置100(
図1)/200(
図2)のバレル部は、内皮、皮下、または筋肉注射にとって望ましい、たとえば治療抗体など、いずれかの量の治療薬で予備充填可能および/または予備充填済みであってもよい。一例示的実施形態において、バレル部106は、約0.1ミリリットルから約1.0ミリリットルの間の量で予備充填可能および/または予備充填済みであってもよいが、ただし例示的な装置はこの例示的な範囲の治療薬量に限定されるものではい。
【0125】
例示的実施形態において、装着型自動注入装置100(
図1)/200(
図2)は、約10秒から約12時間の範囲の期間にわたって治療有効量の治療薬を注入するために使用されてもよい。特定のその他の例示的実施形態は、治療薬を低速で患者に送達するために、低速でのシリンジプランジャの作動を生じる、作動装置およびシステムを提供する。例示的な低速実施形態は、約5分から約30分の間に約0.1ミリリットルから約1ミリリットル以上の治療薬量を送達してもよいが、ただし例示的な送達速度はこの例示的範囲に限定されるものではない。
【0126】
例示的実施形態は、送達速度が長時間にわたって実質的に一定であるように、治療薬の線形送達プロファイルを提供してもよい。場合により、線形送達プロファイルは、患者が感じる不快症状を軽減するかも知れない。一例示的実施形態において、治療薬は単回低速ボーラスで送達されてもよい。
【0127】
治療薬の送達速度は、周囲温度に依存してもよい。室温、すなわち華氏約72°では、送達時間の精度は約3パーセントから約10パーセントの範囲になる可能性がある。
【0128】
例示的な装置の例示的寸法は、表1から表6を参照して記載される。しかしながら、当業者は、例示的寸法が説明目的のために提供されること、ならびに例示的な自動注入装置は説明的寸法に限定されないことを、認識するだろう。
【0129】
一例示的実施形態において、装着型自動注入装置は、約4.37インチの例示的長さ、約2.12インチの例示的幅、および約1.25インチの例示的高さを有してもよい。一例示的実施形態において、バレル部の直径は約1.470インチであり、バレル部の長さは約2.520インチである。表1から表3は、2つの例示的なタイプの例示的な装置について、長さ、幅、および高さの成分をそれぞれまとめたものである。
【0133】
一例示的実施形態において、製造中のバレル部の直径は約1.470インチから約0.125インチだけ増加してもよく、バレル部の長さは製造中に約2.520インチから約0.732インチだけ減少してもよい。表4から表6は、2つの例示的なタイプの例示的な装置について、長さ、幅、および高さの成分をそれぞれまとめたものである。
【0137】
図3は、例示的な自動注入装置100を組み立てる例示的な方法300のフローチャートである。ステップ302において、シリンジまたはカートリッジアセンブリは、滅菌されて組み立てられてもよい。ステップ304において、注入ボタンが滅菌されて組み立てられてもよい。ステップ306において、シリンジまたはカートリッジアセンブリのバレル部は、患者に投与される治療薬の投与量で充填されてもよい。ステップ308において、バレル部内に治療薬を封止するために、シリンジまたはカートリッジアセンブリのバレル部内に滅菌栓が配置されてもよい。滅菌バレル部および滅菌栓による装着型自動注入装置内への治療薬の封じ込めは、治療薬の無菌性を維持する。このため、一例示的実施形態において、装着型自動注入装置の残りの構成要素は、バレル部が治療薬で予備充填可能および/または予備充填済みとなった後に、非滅菌環境で組み立てられてもよい。たとえば、ステップ310において、非滅菌プランジャアクチュエータ、たとえば付勢機構が、栓の後に挿入されてもよい。
【0138】
ステップ312において、シリンジまたはカートリッジアセンブリは、非滅菌筐体内に挿入されてもよい。筐体は、たとえば接着層、保護膜、皮膚センサ足部など、その他の非滅菌構成要素を用いて予備組み立てされてもよい。ステップ314において、注入ボタン(封入された滅菌流体路および1つ以上の針を備える)は、非滅菌筐体内に挿入されてもよい。例示的実施形態において、バレル部、封入された皮下注射針、シリンジ針、針カバー、および栓は、治療薬および流体路に無菌障壁を提供してもよい。こうして、一旦バレル部が治療薬で充填され、栓がバレル部内に挿入されると、装置の残部の組み立ては無菌状態を必要としない。治療薬搬送ステップがユーザによって実行される必要はない。ステップ316において、組み立て済み自動注入装置は、必要であれば上包みされてもよく、その後販売のため商用に包装されてもよい。
図1Aは、封入済み注入前状態の組み立て済み自動注入装置の例示的実施形態を示す。
【0139】
図4は、例示的な自動注入装置を使用する例示的な方法400のフローチャートである。包装されて治療薬が予備充填可能および/または予備充填済みの装着型自動注入装置は、通常は使用前に冷蔵保管庫で保管されてもよい。ステップ402において、包装済み自動注入装置は保管庫から取り出されてもよい。ステップ404において、装着型自動注入装置は、その包装およびいかなる上包みからも取り出されてよく、たとえば包装の外部に室温で装着型装置を放置することによって、または装着型装置を暖めることによって、室温まで暖められてもよい。ステップ406において、患者は、装置筐体に設けられた治療薬検査窓を通じてバレル部が一定量の治療薬を収容していることを確認してもよく、必要であれば治療薬の透明度も確認してよい。
【0140】
ステップ408において、患者の皮膚の注入部位が、治療薬の送達のために選択および準備されてもよい。ステップ410において、患者は治療薬を注入部位に注入するために装着型自動注入装置を使用する。ステップ410に一般的に包含されるステップは、
図5に関連して以下に記載される。ステップ412において、注入を実行した後、装着型自動注入装置は、患者から取り外されて、適切に廃棄されてもよい。
【0141】
図5は、患者に治療有効量の治療薬を注入するために例示的な自動注入装置を使用する、例示的な方法500のフローチャートである。例示的な方法500は、
図4のステップ410の詳細な概要である。ステップ502において、患者は、装着型自動注入装置の接着層を被覆して保護する保護膜を除去する。いくつかの例示的実施形態において、保護膜の除去は、シリンジまたはカートリッジストッパ内の針カバーおよび隔膜カバーも除去してよい。
【0142】
ステップ504において、患者は、治療有効投与量の治療薬の注入中に装置が注入部位上に確実に保持されるように、接着層を備える装着型自動注入装置の患者接触部を注入部位(または注入部位の周りの着用品)に適用する。
【0143】
ステップ506において、一旦装着型自動注入装置が注入部位に取り付けられると、患者は、筐体内の注入前状態の垂直上昇位置から注入状態の垂直下降位置まで注入ボタンを押下してもよい。垂直上昇位置において、注射針を担持する注入ボタンの末端は、筐体内で後退させられ、筐体の外側には露出しない。押下されると、注射針を担持する注入ボタンの末端は、注射針が筐体の開口から出現して露出するように、筐体内で線形にまたは回転的に、下方に向かって移動させられる。これは、治療薬の注入のために適切な深さまで注射針が患者の皮膚に貫通できるようにする。筐体内の注入ボタンの下方移動は、線形(すなわち垂直下方移動)または回転的(すなわち枢動点を中心とする円形運動で)であってもよい。
【0144】
一例示的実施形態において、注入ボタンは、患者が手動で注入ボタンを押し下げることによって、筐体内に押下される。別の例示的実施形態において、患者は、たとえば筐体の上部などのアクセスしやすい位置にある起動ボタンなどの注入トリガを始動してもよく、これは注入トリガに自動的に注入ボタンを筐体内に押下させ、同様に注射針に患者の皮膚を穿通させる。一例示的実施形態において、注入起動ボタンの押下は、バネが筐体内で注入ボタンを下方に付勢できるようにする注入トリガのラッチを解放してもよい。注入ボタンの同じ動作は、注射針が適切な深さまで注入部位に挿入されるようにしてもよい。
【0145】
ステップ508において、注入ボタンの押下は、シリンジまたはカートリッジアセンブリ、より具体的にはバレル部を、(シリンジまたはカートリッジアセンブリの遠位末端が注入ボタンから離間している)後退位置から(シリンジまたはカートリッジアセンブリの遠位末端が注入ボタンに隣接および/または接触している)伸長位置まで、筐体内で、および筐体に対して、前方に向かって移動させる、シリンジまたはカートリッジアクチュエータを起動してもよい。別の例示的実施形態において、シリンジまたはカートリッジアクチュエータは、注入ボタンの押下によってではなく、ユーザが、たとえば起動ボタンの形態のトリガを始動することによって、起動される。一例示的実施形態において、注入ボタンに向かうシリンジまたはカートリッジアセンブリの運動は、シリンジ針に隔膜を穿通させてもよい。
【0146】
ステップ510において、バレル部の遠位末端が注入ボタンと接触すると、プランジャアクチュエータは、栓とバレル部の1つまたは複数の内壁との間の静止摩擦(すなわち静摩擦)を突破して、注射針を通じて治療薬を送達するために注入ボタン内のシリンジ針に向かって前方に栓を移動させてもよい。プランジャアクチュエータは、あるステップで栓静摩擦を克服してその後のステップで栓を作動させてもよく、あるいはプランジャアクチュエータは、同時に栓静摩擦を克服して栓を作動させてもよい。栓の移動は、シリンジ針を通じて注射針内へ、さらには患者の皮膚内へ、投与量を解放させてもよい。
【0147】
一例示的実施形態において、筐体内のシリンジまたはカートリッジアセンブリの前方への前進、およびバレル部内の栓の前方への前進は、異なるステップで行われてもよい。別の例示的実施形態において、筐体内のシリンジまたはカートリッジアセンブリの前方への前進、およびバレル部内の栓の前方への前進は、同じステップで、たとえば同時に、行われてもよい。
【0148】
治療薬送達速度は、プランジャアクチュエータの特性に依存してもよい。プランジャアクチュエータは、いくつかの例示的実施形態の形態を取ってもよい。いくつかの例示的実施形態において、プランジャアクチュエータは、たとえば付勢機構(たとえば渦巻きバネまたは圧縮コイルバネなどの1つ以上のバネを含むがこれらに限定されない)、圧縮ガス、化学ガス発生器(発泡体など)、浸透圧、ハイドロゲル膨張などの、エネルギー貯蔵および解放手段を採用してもよい。たとえばエネルギーの初期解放などのエネルギーを吸収し、プランジャアクチュエータによるエネルギー解放の間によりよく制御されたエネルギーの解放を提供するために、減衰または制御機構(粘性減衰器または脱進機を含むがこれらに限定されない)が使用されてもよい。たとえばプランジャアクチュエータが作動流体を通じて非拘束バネ力を送達する場合など、治療薬送達速度をさらに調整するために、針と栓との間の流体通路に配置された流量制限器が使用されてもよい。このように、まったくまたは実質的に灼熱感のない単回低速ボーラスなどの制御された速度で投与量を患者に送達するために、適切なプランジャアクチュエータおよび適切な制御機構が選択されてもよい。
【0149】
一例示的実施形態において、注入ボタンの押下は、起動したときに、注入後状態で注入後に注入ボタンを筐体102内に後退させる後退機構を、作動可能にしてもよい。
【0150】
ステップ512において、治療有効投与量の送達時に、栓および/またはプランジャアクチュエータは、後退機構の投与終了後退トリガをトリップしてもよい。栓および/またはプランジャアクチュエータは、投与終了後退トリガに接続された連結部材を含んでもよい。連結部材は、テザーまたはその他の連結機構を含んでもよい。連結部材は、栓がシリンジまたはカートリッジアセンブリの末端まで移動したときに(1回分の投与量を送達)、連結部材がラッチを起動して後退トリガをトリップするように、適切な長さであってもよい。
【0151】
ステップ514において、一旦投与終了後退トリガがトリップすると、後退機構は、シリンジまたはカートリッジアセンブリが注入後状態となるように、筐体内で上方に向かって、および患者接触部から離れるように、注入ボタンを後退させてもよい。一例示的実施形態において、注入状態から注入後状態への注入ボタンの移動は、たとえば「カチッ」という可聴音を発生し、これは治療薬送達完了の聴覚的指標を提供する。一旦後退すると、注入ボタンは筐体の外側に突起し、これはたとえば治療薬送達完了などの装着型自動注入装置の状態の視覚的指標、または注入後状態にある装置の視覚的指標を提供する。
【0152】
しかしながら、治療有効投与量の治療薬の完了前に装着型装置が患者の皮膚から抜去される場合には、皮膚センサ足部が筐体の外側に延在して、後退機構の早期抜去後退トリガをトリップしてもよい。一旦早期抜去後退トリガがトリップすると、後退機構は、シリンジまたはカートリッジアセンブリが注入後状態となるように、患者接触部から離れて筐体内で上方に向かって注入ボタンを展開する。一例示的実施形態において、治療有効投与量の治療薬送達の完了前に装置が患者から抜去されるとき、プランジャアクチュエータは、バレル部内をシリンジ針に向かって前方に移動し続けてもよい。
【0153】
ステップ516において、後退時に、針刺し保護を提供するために注射針の再展開を防止するため、針ロックが注射針と係合する。針ロックは、一旦係合すると注射針が筐体から脱出するのを防止する部材であってもよく、注射針の付近で筐体内に位置してもよい。例示的な針ロックは、プラスチック板、金属板、クリップなどを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0154】
図6Aから
図6Cは、患者の皮膚への針の線形挿入に適した装着型自動注入装置600の例示的実施形態を示す。線形挿入によって、針を担持するカートリッジアセンブリの末端は、針が患者に挿入されるように、装着型自動注入装置の筐体内を線形に下降する。より具体的には、
図6Aは、たとえば封入済みの、注入前状態の例示的な装着型装置を示し;
図6Bは、治療薬を患者に注入する直前、最中、または直後の、注入状態の例示的な装着型装置を示し;
図6Cは、患者への治療薬の送達が完了した後、または治療薬の送達の完了に先立って患者から取り外された後の、注入後状態の例示的な装着型装置を示す。
【0155】
装着型自動注入装置600は、患者に皮下注射される1回分の治療薬を収容する、治療薬カートリッジアセンブリ610を収納するための筐体635を含む。一例示的実施形態において、治療薬カートリッジアセンブリ610の外側には1つ以上の隆起が設けられてもよく、筐体635の内側には、カートリッジアセンブリが筐体635の内部を移動する際にカートリッジアセンブリ610の隆起の平滑な通路を提供する、1つ以上の溝またはチャネルが設けられてもよい。カートリッジアセンブリ610の外側の1つ以上の隆起は、カートリッジアセンブリ610上の盛り上がった線の形態を取ってもよい。筐体635の内側の1つ以上の溝またはチャネルは、U字型凹状または谷状の線の形態を取ってもよい。溝またはチャネルの上部は、隆起が溝またはチャネルの上部に出入りするように摺動してもよいように、開放していてもよい。
図6Aから
図6Cに示される線形挿入実施形態において、隆起および溝/チャネルは直線であってもよい。
図7Aから
図7Cに示される回転挿入実施形態において、隆起および溝/チャネルは、回転中心、すなわちカートリッジアセンブリ610の枢動点を中心に湾曲している線であってもよい。
【0156】
別の例示的実施形態において、カートリッジアセンブリ610の外側はいかなる隆起も有していなくてもよく、筐体635の内側はいかなる溝またはチャネルも有していなくてもよい。
【0157】
筐体635は好ましくは長尺構成を有するが、ただし当業者は、筐体635が、注入される治療薬のバレル部と結合可能な皮下注射針を収納するためのいずれの適切なサイズ、形状、および構成を有してもよいことを、認識するだろう。筐体635は、プラスチックおよびその他の周知の材料を含むがこれらに限定されない、いずれの適切な材料で形成されてもよい。別の実施形態において、治療薬カートリッジ610は、ガラスおよびその他の周知の材料を含むがこれらに限定されない、滅菌に適したいずれの適合材料で形成されてもよい。
【0158】
筐体635は、患者の皮膚または患者の着用品の近傍に配置された筐体635の患者接触部に沿って設けられた、接着層640を含む。いくつかの実施形態において、接着層640は、治療薬を送達するために筐体635を患者に付着させるため、患者の皮膚上に配置されるように構成されている。接着層640は、接着性ではない非接着タブ645を含む。非接着タブ645は、患者によって把持されて、接着層640およびしたがって患者の皮膚または着衣から装着型自動注入装置600を取り外すために引っ張られてもよい。
【0159】
装着型自動注入装置600が、たとえば注入前状態で、使用される前に、接着層640は、接着層640の接着性を保つ保護膜650によって被覆されてもよい。保護膜650は、患者によって把持されて接着層640から保護膜650を除去するために引っ張られてもよい、タブ655を含んでもよい。これは接着層640を露出させ、接着層640を備える側を皮膚または着用品上に配置することによって、患者が自身の皮膚または着用品に筐体635を取り付けられるようにする。
【0160】
例示的実施形態において、保護膜650(
図6A)/750(
図7A)は、プランジャアクチュエータ630(
図6A)/730(
図7A)に接続された連結部材を含んでもよい。連結部材は、テザーまたはその他の連結機構を含んでもよい。保護膜650(
図6A)/750(
図7A)が取り外されると、保護膜650(
図6A)/750(
図7A)の連結部材は、栓615(
図6A)/715(
図7A)とバレル605(
図6A)/705(
図7A)の内壁との間の静止摩擦を緩和し、プランジャアクチュエータ630(
図6A)/730(
図7A)を起動する。
【0161】
治療薬カートリッジアセンブリ610は、注入される治療有効投与量の治療薬を保持するための中空のバレル部605を含んでもよい。図示されるバレル部605は実質的に円筒形の形状だが、ただし当業者は、バレル部605がいずれの適切な形状または構成を有してもよいことを、認識するだろう。栓615は、投与量の治療薬をバレル部605内に封止する。
【0162】
治療薬カートリッジアセンブリ610は、バレル部605に接続可能または接続された、およびこれと流体連絡している、中空の皮下注射針625も含んでよく、これを通じて、栓615に圧力を印加することによって投与量が注出され得る。針625は、治療薬を皮下的に送達するために患者の皮膚を穿通するのに適したいずれの適切なサイズ、形状、および構成を有してもよく、具体的実施形態に限定されるものではない。適切な針は、所望の治療に適した注入深度を提供するように構成または選択された長さを有してもよい。皮下注射は通常、皮膚内に約6から10ミリメートル進入する。一例示的実施形態において、針625は約12mmの長さを有してもよく、皮膚内に約7mmの深さまで注入されてもよい。その他の例示的実施形態において、針625は、皮内、その他の皮下、または筋肉内治療に適した長さを有してもよい。適切な針は、十分な機械強度を提供するのに適した壁厚、患者の感覚を最小限に抑えながら注入物質の所望の流量を許容するのに適した直径、および患者の感覚を最小限に抑えながら所望の治療に適した先端形状を、有してもよい。適切な針は、治療によって許容される程度に患者の感覚を最小限に抑えるために、必要に応じて被覆されてもよい。針625は、軟質および硬質針シールドアセンブリ620によって覆われ、無菌状態に維持されてもよい。
【0163】
図6Aから
図6Cに示される例示的実施形態において、針625は、装着型装置600の長手軸に対して実質的に直角に突起している。この例示的実施形態において、バレル部605は、装置600の長手軸に対して実質的に直角に延在するL字継手607を含む。この実施形態において、針625はL字継手607に接続されている。
【0164】
装着型自動注入装置600は、バレル部605に収容された治療有効投与量を患者に注入するために、治療薬カートリッジアセンブリ610の遠位末端に向かって前方に栓615を選択的に作動させるための、プランジャアクチュエータ630を含んでもよい。プランジャアクチュエータ630は、栓615を作動させるために、エネルギー貯蔵および制御エネルギー解放機構を採用してもよい。一例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ630は、注入前には後退しており、注入中にはバレル部605内で前方に向かって栓615を作動させるために解放される、たとえばバネなどの付勢機構を含んでもよい。別の例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ630は、注入前には非膨張相であって、注入中にはバレル部605の内部で栓615を治療薬カートリッジアセンブリ610の遠位末端に向かって前方に作動させるために膨張する、たとえば発泡体などの化学ガス発生器を含んでもよい。その他の例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ630は、圧縮ガス圧、浸透圧、ハイドロゲル膨張などを採用してもよい。たとえばエネルギーの初期解放などのエネルギーを吸収し、プランジャアクチュエータ630(
図6A)/730(
図7A)によるエネルギー解放の間によりよく制御されたエネルギーの解放を提供するために、減衰機構が使用されてもよい。針と栓615(
図6A)/715(
図7A)との間の流体通路に配置された流量制限器は、たとえばプランジャアクチュエータ630(
図6A)/730(
図7A)が非拘束バネ力を送達する場合など、治療薬送達速度をさらに調整するために使用されてもよい。
【0165】
一例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ630は、一定な線形運動をしながらバレル部605の内部を前方に向かって前進させられてもよい。歯車駆動システムに接続されたステッパモータを含むがこれに限定されない、一定な線形運動を提供するための機構は、装着型自動注入装置600の内部または外部で、いくつ使用されてもよい。制御された方式で実質的に一定な線形運動を提供するためのその他の例示的な機構は、
図24から
図25を参照して記載される。
【0166】
栓615(
図6A)/715(
図7A)および/またはプランジャアクチュエータ630(
図6A)/730(
図7A)は、後退トリガに接続された連結部材を含んでもよい。連結部材は、テザーまたはその他の連結機構を含んでもよい。連結部材は、栓615(
図6A)/715(
図7A)がカートリッジアセンブリ610(
図6A)/710(
図7A)の末端まで移動したときに(1回分の投与量を送達)、連結部材がラッチを起動して後退トリガをトリップするように、適切な長さであってもよい。
【0167】
ここで
図6Cを参照すると、一例示的実施形態において、筐体635は皮膚センサ足部660を含み、これは注入部位の近位の筐体635の一部の下または内部に収容された構造である。治療薬の注入の前および注入中には、皮膚センサ足部660は、筐体635の下側の部分に保持されるかまたはその部分を形成する。装着型自動注入装置600が注入部位に取り付けられて始動されると、皮膚センサ足部660は自由に動いてもよいが、しかし注入部位によって拘束されてもよい。装着型自動注入装置600が注入部位から取り外されると、薬物送達が完了したか否かにかかわらず、皮膚センサ足部660はもはや拘束されず、筐体635の周囲の外側に延在および突起する。これはひいては抜去後退トリガをトリップさせる。
【0168】
図6Aは、たとえば封入済みで使用に備えた、または封入に備えた、注入前状態の装着型自動注入装置600を示す。装置600は、予備充填可能および/または予備充填済みのシリンジまたはカートリッジアセンブリを含んでもよい。一例示的実施形態において、注入前状態で、シリンジまたはカートリッジアセンブリは、使用に備えた後退位置にあってもよい。注入前状態において、治療薬カートリッジアセンブリ610は、注入部位から遠位の上昇位置で部分的に筐体635の内部に設けられ、針625は筐体635の内部で後退する。装着型自動注入装置600が動作していないという患者への視覚的指標は、注入前状態での筐体635の外側に突起している治療薬カートリッジアセンブリ610の一部を含んでもよい。バレル部605は、バレル部605の1つまたは複数の壁と栓615との間に定義された内部空間によって封じ込められた1回分の治療薬を収容する。一実施形態において、プランジャアクチュエータ630はエネルギーを貯蔵する。
【0169】
図6Bは、治療薬カートリッジアセンブリ610が押下位置にある、治療有効投与量の治療薬を注入する準備が整った、注入中の、または注入直後の、注入状態の装着型自動注入装置600を示す。押下位置において治療薬カートリッジアセンブリ610は、注入部位の近位の押下位置で筐体635の内部に設けられ、針625は、注入部位において皮膚を貫通することができるように、筐体635の開口を通じて筐体635の外側に突起している。注入状態において、治療薬カートリッジアセンブリ610は、装着型自動注入装置600が動作しているという視覚的指標を患者に提供するために、筐体635の外側に突起していない。プランジャアクチュエータ630は、栓615を作動させるためにその貯蔵エネルギーを解放する。プランジャアクチュエータ630および栓615のこの協働運動は、針625を通じてバレル部605内の治療薬を注出させる。
【0170】
図6Cは、治療薬カートリッジアセンブリ610が後退位置にある、たとえば治療有効投与量の治療薬を注入した後、または治療有効投与量の治療薬の送達前の装着型自動注入装置600の患者からの抜去の後の、注入後状態の装着型自動注入装置600を示す。後退位置において、治療薬カートリッジアセンブリ610は、注入部位から遠位の上昇位置で筐体635の内部に設けられ、針625は筐体635の内部で後退する。治療薬カートリッジアセンブリ610の一部は、装着型自動注入装置アセンブリ600が動作していない(すなわち注入後状態である)という視覚的指標を患者に提供するために、筐体635の外側に突起する。バレル部605は治療薬がなくなっていてもよく、プランジャアクチュエータ630はもはやエネルギーを貯蔵していなくてもよい。
【0171】
筐体635は、注入状態(
図6Bに示される押下位置)から注入後状態(
図6Cに示される後退位置)まで治療薬カートリッジアセンブリ610を自動的に持ち上げる、後退機構を含む。一例示的実施形態において、後退機構は、後退機構が起動したときに注入部位から離れるようにカートリッジアセンブリを付勢する、たとえばバネなどの付勢機構を含んでもよい。
【0172】
後退機構は、トリップすると後退機構を起動する、投与終了後退トリガを含む。投与終了後退トリガは、装着型自動注入装置内の治療有効投与量の治療薬が送達されるときにトリップされる。一例示的実施形態において、投与終了後退トリガは、薬物送達終了時に解放される、たとえば可撓性プラスチックフックなどのラッチを含んでもよい。後退機構はまた、トリップしたときに後退機構を起動する、早期抜去後退トリガも含む。早期抜去後退トリガは、治療有効投与量の治療薬が完全に送達される前に装着型自動注入装置が注入部位から抜去されるときに、トリップされる。一例示的実施形態において、早期抜去後退トリガは、注入部位からの装着型自動注入装置600の抜去時に解放される、たとえば可撓性プラスチックフックなどのラッチを含んでもよい。後退機構は、カートリッジアセンブリを注入部位から自動的に後退させるために、投与終了後退トリガに反応し、早期抜去後退トリガに反応する。
【0173】
図7Aから
図7Cは、患者の皮膚への針の回転挿入に適した装着型自動注入装置700の例示的実施形態を示す。回転挿入において、針725を担持する治療薬カートリッジアセンブリ710の末端は、針725を患者の皮膚に挿入するために、枢動点を中心に回転的に下降する。より具体的には、
図7Aは、たとえば予備充填済みで湾曲した滅菌皮下注射針、および治療薬を保持するバレル部とともに封入された、注入前状態の例示的な装着型装置を示し;
図7Bは、治療薬を患者に注入する直前、最中、または直後の、注入状態における例示的な装着型装置を示し;
図7Cは、患者への治療薬の送達後、または患者への治療薬の送達の完了に先立って患者からの装着型装置の抜去後の、注入後状態の例示的な装着型装置を示す。
【0174】
治療薬カートリッジアセンブリ710は、筐体内の枢動点765を中心に筐体735の内部で回転的に移動可能である。一例示的実施形態において、治療薬カートリッジアセンブリ710の外側には1つ以上の隆起が設けられてもよく、筐体735の内側には、様々な状態のうち、カートリッジが筐体735の内部を移動する際にカートリッジ710の隆起の通路を提供する、1つ以上の溝またはチャネルが設けられてもよい。別の例示的実施形態において、カートリッジアセンブリ710の外側には隆起がなく、筐体735の内側には溝またはチャネルがない。
【0175】
治療薬カートリッジアセンブリ710が筐体735内に押下されると、治療薬カートリッジアセンブリ710は、針725が露出して患者の皮膚を貫通するように、枢動点765を中心として下方に向かって回転的に移動する。この例示的実施形態において、針725は、90°からずれた角度で患者の皮膚に進入する。同様に、治療薬カートリッジアセンブリ710が後退させられるとき、治療薬カートリッジアセンブリ710は、針725が筐体735の内部で後退するように、枢動点765を中心として上方に向かって回転的に移動する。治療薬カートリッジアセンブリ710のこの回転運動を実現する機構は、
図6Aから
図6Cの線形挿入に必要とされる機構よりも単純かつ堅牢であるかも知れない。
【0176】
針725は、枢動点765および筐体735の長手軸に沿った針715から枢動点765までの距離によって半径が定義された、曲線状である。針725の曲率は、針の挿入中の患者の快適さを増加させる。針725は、枢動点765に最も近い鋭い針先に、優先的に合わせられてもよい。
【0178】
例示的実施形態において、
図6Aから
図6Cおよび
図7Aから
図7Cの治療薬カートリッジアセンブリ610および720はそれぞれ、内皮、皮下、または筋肉注射にとって望ましい、たとえば治療抗体など、いずれかの量の治療薬で予備充填可能および/または予備充填済みであってもよい。一例示的実施形態において、カートリッジアセンブリ610および720は、約0.8〜0.85ミリリットルの量で予備充填可能および/または予備充填済みであってもよいが、ただし例示的なカートリッジアセンブリはこれらの例示的な量に限定されるものではない。別の例示的実施形態において、カートリッジアセンブリ610および720は、約1ミリリットル以上の量で予備充填可能および/または予備充填済みであってもよい。
【0179】
例示的実施形態において、装着型自動注入装置600(
図6A)/700(
図7A)は、約10秒から約12時間の範囲の期間にわたって治療有効量の治療薬を注入するために使用されてもよい。一例示的実施形態において、治療薬は、約5分から約30分の送達時間の間、定められた速度で送達されてもよい。装着型自動注入装置600(
図6A)/700(
図7A)は、単回低速ボーラスで一定量の治療薬を注入するために使用されてもよい。
【0180】
治療薬の送達速度は、周囲温度に依存してもよい。室温、すなわち華氏約72°では、送達時間の精度は約3パーセントから約10パーセントの範囲になる可能性がある。
【0181】
図8は、例示的な装着型自動注入装置600または700を組み立てる例示的な方法800のフローチャートである。ステップ805において、バレル部605/705、針625/725、および針シールド620/720が滅菌される。ステップ810において、バレル部605/705は、患者に投与される1回分の治療薬で充填される。ステップ815において、バレル部605/705内に治療薬を封止するために、バレル部605/705内に滅菌栓615/715が配置される。滅菌バレル部605/705、滅菌栓615/715、および針シュラウド620/720による装着型自動注入装置600または700内への治療薬の封じ込めは、治療薬および針625/725の無菌性を維持する。このため、装着型自動注入装置の残りの構成要素は、バレル部605/705が治療薬で予備充填された後に、非滅菌環境で組み立てられてもよい。たとえば、ステップ820において、非滅菌プランジャアクチュエータ630/730が、治療薬カートリッジアセンブリ610/710内の栓615/715の後に挿入される。
【0182】
ステップ825において、治療薬カートリッジアセンブリ610/710は、非滅菌筐体635/735に挿入される。筐体635/735は、たとえば接着層640/740、保護膜650/750、皮膚センサ足部660/760など、その他の非滅菌構成要素を用いて予備組み立てされてもよい。例示的実施形態において、治療薬カートリッジアセンブリ610/710のバレル部605/705、針625/725、針シールド620/720、および栓615/715は、治療薬および皮下接触表面に無菌障壁を提供する。こうして、一旦バレル部605/705が治療薬で充填されると、プランジャ615/715はバレル部605/705に挿入され、針シュラウド620/720は所定位置につく:治療薬カートリッジアセンブリ610/710の残部の組み立て、および筐体635/735の組み立ては、無菌状態を必要としない。治療薬搬送ステップがユーザによって実行される必要はない。
図6Aおよび
図7Aは、注入前状態の装着型組み立て済み自動注入装置600/700の例示的実施形態を示す。
【0183】
ステップ830において、組み立て済み装着型自動注入装置600/700は、必要であれば上包みされてもよく、その後販売のため商用に包装される。
【0184】
図9は、例示的な装着型自動注入装置600または700を使用する例示的な方法900のフローチャートである。治療薬が封入および予備充填された装着型自動注入装置600/700は、通常は使用前に冷蔵保管庫で保管される。ステップ905において、封入済み装着型自動注入装置600/700は、保管庫から取り出される。ステップ910において、装着型自動注入装置600/700は、その包装およびいかなる上包みからも取り出され、たとえば包装の外部に室温で装着型装置を放置することによって、または装着型装置を暖めることによって、室温まで暖められる。ステップ915において、患者は、装着型装置筐体に設けられた治療薬検査窓を通じて治療薬カートリッジアセンブリ610/710が一定量の治療薬を装着型装置600/700に含んでいることを確認し、必要であれば治療薬の透明度も確認してよい。ステップ920において、患者の皮膚の注入部位が、治療薬の送達のために選択および準備される。ステップ925において、患者は治療薬を注入部位に注入するために装着型自動注入装置600/700を使用する。ステップ920に一般的に包含されるステップは、
図10に関連して以下に記載される。ステップ930において、装着型自動注入装置600/700が患者から取り外された後、取り外された装着型自動注入装置600/700は適切に廃棄される。
【0185】
図10は、患者に治療有効量の治療薬を注入するために例示的な装着型自動注入装置600または700を使用する、例示的な方法1000のフローチャートである。例示的な方法1000は、
図9のステップ920の詳細な概要である。ステップ1005において、患者は、装着型自動注入装置600/700の接着層640/740を被覆して保護する保護膜650/750を除去する。いくつかの例示的実施形態において、保護膜650/750の除去は、針シールド620/720も除去して注入のために針625/725を露出する。いくつかの例示的実施形態において、保護膜650/750の除去はまた、栓615/715とバレル605/705の内壁との間の静止摩擦(すなわち静摩擦)を突破して、プランジャアクチュエータ630/730を起動する。例示的実施形態において、保護膜650/750は、プランジャアクチュエータ630/730に接続された連結部材を含んでもよい。連結部材は、テザーまたはその他の連結機構を含んでもよい。保護膜650/750が除去されると、保護膜650/750の連結部材は栓615/715とバレル605/705の内壁との間の静止摩擦を緩和し、プランジャアクチュエータ630/730を起動する。
【0186】
ステップ1010において、患者は、治療有効投与量の治療薬の注入中に装着型装置が注入部位上に確実に保持されるように、接着層640/740を備える装着型自動注入装置600/700の患者接触部を注入部位(または注入部位の周りの着用品)に適用する。
【0187】
ステップ1015において、一旦装着型自動注入装置600/700が注入部位に取り付けられると、治療薬カートリッジアセンブリ610/710は、筐体635/735内で注入前状態の準備位置から注入状態の押下位置まで押下される。準備位置において、針625/725を担持する治療薬カートリッジアセンブリ610/710の末端は、筐体635/735内で後退させられ、筐体の外側には露出しない。押下されると、針625/725を担持する治療薬カートリッジアセンブリ610/710の末端は、針625/725が筐体635/735の開口から出現して露出するように、筐体635/735内で線形にまたは回転的に、下方に向かって移動させられる。これは、治療薬の注入のために適切な深さまで、針625/725が患者の皮膚に貫通できるようにする。筐体635/735内の治療薬カートリッジアセンブリ610/710の下方移動は、線形(すなわち垂直下方移動)または回転的(すなわち枢動点を中心とする円形運動で)であってもよい。
図6Bおよび
図7Bは、ステップ1015が実行された後に治療薬カートリッジ610/710が筐体635/735内に押下された注入状態の、装着型自動注入装置600および700の例示的実施形態を示す。
【0188】
一例示的実施形態において、治療薬カートリッジアセンブリ610/710は、患者が手動で治療薬カートリッジアセンブリ610/710を押し下げることによって、筐体635/735内に押下される。別の例示的実施形態において、患者は、たとえば筐体635/735の上部などのアクセスしやすい位置にある挿入起動ボタンなどの挿入トリガを始動してもよく、これは挿入トリガに自動的に治療薬カートリッジアセンブリ610/710を筐体635/735内に押下させ、同様に針625/725に患者の皮膚を穿通させる。一例示的実施形態において、挿入起動ボタンの押下は、バネが筐体635/735内でカートリッジアセンブリ610/710を下方に付勢できるようにする挿入トリガのラッチを解放してもよい。カートリッジアセンブリ610/710の同じ動作は、注射針625/725が適切な深さまで注入部位に挿入されるようにしてもよい。
【0189】
一例示的実施形態において、治療薬カートリッジアセンブリ610/710の押下は、協働的に治療有効投与量を患者に注入するために栓615/715の運動を開始するため、プランジャアクチュエータ630/730を起動する。治療薬カートリッジアセンブリ610/710の押下は、プランジャアクチュエータ630/730に、栓615/715とバレル部605/705の1つまたは複数の内壁との間の静止摩擦(すなわち静摩擦)を突破させ、針625/725を通じて治療薬を送達するために治療薬カートリッジアセンブリ610/710内で針625/725に向かって前方に、栓615/715を移動させる。プランジャアクチュエータ630/730は、あるステップで栓静摩擦を克服してその後のステップで栓を作動させてもよく、あるいはプランジャアクチュエータ630/730は、同時に栓静摩擦を克服して栓を作動させてもよい。別の例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ630/730は、治療薬カートリッジを押下することによってではなく、たとえば注入起動ボタンの形態の、注入トリガをユーザが始動することによって、起動する。
【0190】
治療薬送達速度は、プランジャアクチュエータ630/730の特性に依存してもよい。プランジャアクチュエータ630/730は、いくつかの例示的実施形態の形態を取ってもよい。いくつかの例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ630/730は、たとえば付勢機構(バネなど)、圧縮ガス、化学ガス発生器(発泡体など)、浸透圧、ハイドロゲル膨張などの、エネルギー貯蔵および解放手段を採用してもよい。たとえばエネルギーの初期解放などのエネルギーを吸収し、プランジャアクチュエータ630/730によるエネルギー解放の間によりよく制御されたエネルギーの解放を提供するために、減衰機構が使用されてもよい。たとえばプランジャアクチュエータ630/730が非拘束バネ力を送達する場合など、治療薬送達速度をさらに調整するために、針と栓615/715との間の流体通路に配置された流量制限器が使用されてもよい。このように、まったくまたは実質的に灼熱感のない単回低速ボーラスなどの制御された速度で投与量を患者に送達するために、適切なプランジャアクチュエータ630/730および適切な流量制限器が選択されてもよい。
【0191】
一例示的実施形態において、治療薬カートリッジアセンブリ610/710の押下はまた、起動したときに、治療薬カートリッジアセンブリ610/710を筐体635/735内に後退させる後退機構を、作動可能にする。
【0192】
ステップ1020において、治療薬カートリッジアセンブリ610/710が筐体635/735の外側に突起して、針625/725が筐体635/735の内部に後退させられるかまたは皮膚センサ足部660/760によって保護されるかまたはその両方となるように、治療薬カートリッジアセンブリ610/710は注入後状態で押下位置から後退位置に後退させられる。
図6Cおよび
図7Cは、ステップ1020の後の後退位置における、自動注入装置600および700のそれぞれの例示的実施形態を示す。ステップ1020は、治療有効投与量の治療薬が送達されたとき、または治療有効投与量が完全に送達される前に装着型自動注入装置600/700が注入部位から抜去されたときのいずれかに、実行される。
【0193】
治療有効投与量の送達時に、栓615/715および/またはプランジャアクチュエータ630/730は、後退機構の投与終了後退トリガをトリップする。栓615/715および/またはプランジャアクチュエータ630/730は、後退トリガに接続された連結部材を含んでもよい。連結部材は、テザーまたはその他の連結機構を含んでもよい。連結部材は、栓615/715がカートリッジアセンブリ610/710の末端まで移動したときに(1回分の投与量を送達)、連結部材がラッチを起動して後退トリガをトリップするように、適切な長さであってもよい。
【0194】
一旦投与終了後退トリガがトリップすると、後退機構は、治療薬カートリッジアセンブリ610/710が注入後状態となるように、筐体635/735内で上方に向かって、および患者接触部から離れるように、治療薬カートリッジアセンブリ610/710を展開する。一例示的実施形態において、注入状態から注入後状態への治療薬カートリッジアセンブリ610/710の移動は、たとえば「カチッ」という可聴音を発生し、治療薬送達完了の聴覚的指標を提供する。一旦後退すると、治療薬カートリッジアセンブリ610/710は筐体635/735の外側に突起し(
図6Cおよび
図7Cに示されるとおり)、これはたとえば治療薬送達完了などの装着型自動注入装置600/700の状態の視覚的指標、または注入後状態にある装置の視覚的指標を提供する。
【0195】
しかしながら、治療有効投与量の治療薬の完了前に装着型装置600/700が患者の皮膚から抜去される場合には、皮膚センサ足部660/760が筐体635/735の外側に延在して、後退機構の早期抜去後退トリガをトリップする。一旦早期抜去後退トリガがトリップすると、後退機構は、治療薬カートリッジアセンブリ610/710が後退位置に戻るように、患者接触部から離れて筐体635/735内で上方に向かって治療薬カートリッジアセンブリ610/710を展開する。一例示的実施形態において、治療有効投与量の治療薬送達の完了前に装着型装置600/700が患者から抜去されるとき、プランジャアクチュエータ630/730は、治療薬カートリッジ610/720内を針625/725に向かって前方に移動し続けてもよい。
【0196】
ステップ1025において、後退時に、針刺し保護を提供するために針625/725の再展開を防止するため、自動針ロックが注射針625/725と係合する。針ロックは、一旦係合すると針625/725が筐体635/735から脱出するのを防止する部材であってもよく、針625/725の付近で筐体635/735内に位置してもよい。例示的な針ロックは、プラスチック板、金属板、クリップなどを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0197】
III.例示的な針システム
例示的実施形態は、1回分の治療薬を患者の皮膚に注入するための、異なる例示的な針アセンブリを提供する。いくつかの例示的実施形態において、患者の皮膚に投与量を注入するために、投与量を収容する例示的な自動注入装置のバレル部に結合された注射針が患者の皮膚に挿入されてもよい。その他の例示的実施形態において、バレル部から投与量を導出するために、投与量を収容するバレル部にシリンジ針が結合されてもよく、患者の皮膚に投与量を注入するために、シリンジ針に結合された注射針が患者の皮膚に挿入されてもよい。
【0198】
いくつかの例示的実施形態において、
図11および
図12に示されるように、シリンジは、バレル部、およびバレル部の遠位末端に結合された注射針を含んでもよい。注射針は、シリンジのバレル部に収容された治療薬を送達するために、患者の皮膚に挿入されてもよい。注射針は、約0度から約180度の範囲の、バレル部の長手軸に対するいずれか適切な角度で位置合わせされてもよい。
【0199】
図11は、例示的な自動注入装置での使用に適した例示的なシリンジ1100を示す。シリンジ1100は、1回分の治療薬を保持するように構成され、長手軸Lに沿って近位末端と遠位末端との間に延在する、バレル部1102を含む。バレル部1102の遠位末端は、長手軸Lに沿って延在する注射針1104に結合されている。
【0200】
図12は、例示的な自動注入装置での使用に適した例示的なシリンジ1200を示す。シリンジ1200は、1回分の治療薬を保持するように構成され、長手軸Lに沿って近位末端と遠位末端との間に延在する、バレル部1202を含む。バレル部1202の遠位末端は、長手軸Lから実質的に90度で延在するL字継手部1204を含んでもよい。L字継手部1204の遠位末端は、長手軸Lから実質的に90度で延在する注射針1206に結合されている。当業者は、例示的な自動注入装置が、シリンジの長手軸Lに沿って延在するかまたはシリンジの長手軸Lに対していずれか適切な角度で延在する注射針を含んでもよいことを、認識するだろう。例示的な角度は約70度から約110度を含んでもよいが、これらに限定されるものではない。
【0201】
いくつかの例示的実施形態において、
図13および
図14に示されるように、シリンジは、バレル部、およびバレル部の遠位末端に結合された注射針を含んでもよい。注射針は、シリンジのバレル部に収容された治療薬を送達するために、患者の皮膚に挿入されてもよい。注射針は、約0度から約180度の範囲の、バレル部の長手軸に対するいずれか適切な角度で位置合わせされてもよい。
【0202】
いくつかの例示的実施形態において、
図13および
図14に示されるように、シリンジは、バレル部、およびバレル部の遠位末端に直接的または間接的に結合された注射針を含んでもよい。シリンジ針は、シリンジのバレル部に収容された治療薬を注射針まで運搬してもよく、注射針は、治療薬を患者の皮膚に送達してもよい。シリンジ針と注射針との結合は、1つ以上の中間構成要素によって提供されてもよい。例示的な結合構成要素は、たとえば、バレル部の遠位末端と注射針との間に設けられた、アダプタを含んでもよい。
【0203】
図13は、例示的な自動注入装置での使用に適した例示的なシリンジ1300を示す。シリンジ1300は、長手軸Lに沿って近位末端から遠位末端まで延在するように構成され、1回分の治療薬を保持するように構成された、バレル部1302を含む。バレル部1302の遠位末端は、中空のシリンジ針1304に結合されている。シリンジ針1304は、同様に、例示的な中間アダプタ1308を通じて、皮下注射針1306に結合されている。より具体的には、アダプタ1308の近位部はシリンジ針1304に結合され、アダプタ1308の遠位部は注射針1306に結合される。アダプタ1308は、バレル部1302の長手軸Lと皮下注射針1306との間で実質的に90度のアライメントを確立してもよい。
【0204】
例示的なアダプタ1308は、バレル部1302から長手軸Lと実質的に平行に延在する第一部分1310、および第一部分1310から長手軸Lに対して実質的に直角に延在する第二部分1312を含む、構成要素である。より具体的には、第一部分1310の近位末端は、バレル部1302の遠位末端に結合されている。一例示的実施形態において、第一部分1310の近位末端は、バレル部1302の遠位末端を包んでもよい。第一部分1310の遠位末端は、第二部分1312の近位末端に結合されている。第二部分1312の遠位末端は、注射針1306の近位末端に結合されている。一例示的実施形態において、アダプタ1308の第一部分1310および第二部分1312は、一体に形成されてもよい。
【0205】
例示的なアダプタは、プラスチック材料、鋼などを含むがこれらに限定されない、剛性材料で形成されてもよい。あるいは例示的なアダプタは、ゴムなどを含むがこれらに限定されない、可撓性材料で形成されてもよい。
【0206】
注射針1306に結合されたアダプタ1308の構成は、注射針1306をシリンジの長手軸Lに対して約90度で延在できるようにする。この構成は、曲がった注射針の必要性を排除するので、装着型自動注入装置の製造を簡素化する。例示的な注射針1306は、注入状態での注入中に患者の皮膚への適切な挿入を可能にしながら、患者に対する低プロファイルを維持する。当業者は、シリンジの長手軸から、たとえば約70度から約110度など、約90度に限定されないいずれか適切な角度まで、例示的な注射針が曲げられてもよいことを、認識するだろう。
【0207】
いくつかの例示的実施形態において、シリンジ針を通じてバレル部から注射針までの治療薬の流れを可能にするために、シリンジ針と注射針との間に1つ以上の流体導管が設けられてもよい。シリンジ針と注射針との間に1つ以上の流体導管を確立するために、いずれの適切な流体導管または流体搬送機構が使用されてもよい。一例示的実施形態において、無傷の状態の穿通可能な隔膜は、シリンジ針を注射針からの流体連絡から分離してもよい。注入状態で注入中にシリンジ針が隔膜を穿通するとき、流体導管を通じてシリンジ針と注射針との間に流体連絡が確立されてもよい。
【0208】
図14は、流体導管がシリンジ針および注射針を結合させる、例示的な自動注入装置の一部を示す。装置は、1回分の治療薬を保持するバレル部1400を有するシリンジまたはカートリッジアセンブリを含む。バレル部1400の遠位末端は、シリンジ針1402に結合されている。搬送機構1404は、シリンジ針1402と接触するかまたはその近傍に、ならびに注射針(図示せず)と接触するかまたはその近傍に、設けられている。搬送機構1404は、シリンジ針1402と注射針との間に流体連絡を確立する、流体導管または通路1406を含む。
【0209】
一例示的実施形態において、搬送機構1404は、注入前状態で注入の前に搬送機構1404の流体導管1406からシリンジ針1402を分離する、穿通可能な隔膜1408を含む。一例示的実施形態において、注入状態で注入中に、シリンジまたはカートリッジは、バレル部1400、搬送機構1404の流体導管1406、および注射針の間に流体連絡路を形成するためにシリンジ針1402が隔膜1408を穿通するように、搬送機構1404に向かって移動させられてもよい。治療薬はそれによってシリンジ針1402を通じてバレル部1400から流体導管1406内に流れてもよい。治療薬はその後、患者への治療薬の送達のために、流体導管1406を通じて注射針内へ搬送されてもよい。
【0210】
図15は、シリンジ針(図示せず)と注射針(図示せず)との間に流体導管1502を提供する、例示的な搬送機構1500を示す。流体導管1502は、その内部を治療薬がシリンジ針から注射針まで流れる、中央に延在するチャネル1504、およびチャネル1504への流体を強制するためにチャネル1504の縁に沿って延在する上昇壁部1506を、含んでもよい。流体導管1502は、いずれの適切な形態および寸法を取ってもよい。具体的実施形態において、流体導管1502は、第二の実質的直線部1510から約90度で位置合わせされた第一の実質的直線部1508を有する。
【0211】
流体導管1502は、シリンジ針からの治療薬の進入のための流入口1512、および注射針への治療薬の脱出のための流出口1514を、含んでもよい。流入口1512は、シリンジ針の近位末端に、直接的または間接的に結合されてもよい。一例示的実施形態において、隔膜が無傷であるときに流体がシリンジ針から流出するのを防止するために、および隔膜がシリンジ針によって穿通されたときに流体がシリンジ針から流出できるように、流入口1512に穿通可能な隔膜(図示せず)が設けられてもよい。流出口1514は、流体導管1502と注射針との間に流体流路を確立するために、注射針の遠位末端に直接的または間接的に結合されてもよい。
【0212】
あるいは、1512が流出口として使用されてもよく、1514が流入口として使用されてもよい。この例示的実施形態において、流入口1514はシリンジ針に直接的または間接的に結合されてもよく、流出口1512は注射針に直接的または間接的に結合されてもよい。
【0213】
搬送機構1500は、重ね合わされた2つの筐体部1516および1518で形成されてもよい。一例示的実施形態において、流体導管1502は部分1516の表面上に形成されてもよく、部分1518は、流体導管からの流体漏洩を防止するために流体導管1502の縁を封止するように、流体導管1502の上に重ねられてもよい。2つの筐体部1516および1518の間の圧縮は、たとえば1つ以上の締め具、スナップ、化学結合、超音波溶接など、1つ以上の機械的インターロック機構によって提供されてもよい。
【0214】
流体導管1502は、いずれか適切な技術を用いて筐体部1516の表面上に形成されてもよい。一例示的実施形態において、流体導管1502の上昇壁部1506は、治療薬の流路を封止するためのガスケットとして成型された、低デュロメータ材料で形成されてもよい。別の例示的実施形態において、同時にチャネル1504の周りにシールを形成して2つの筐体部1516および1518を互いに接合するために、チャネル1504の外周の周りの通路を辿るためのレーザ溶接が使用されてもよい。
【0215】
図16は、バレル部1606に結合されたシリンジ針1604を備えるシリンジと注射針(図示せず)との間に流体導管1602を提供する、例示的な搬送機構1600を示す。搬送機構1600は、シリンジ針1604の近傍に設けられた隔膜1610を有する第一部分1608を含んでもよい。
【0216】
搬送機構1600の第一部分1608は、治療薬を収容するための内部中空空間、および中空管1614の一端に結合された流入ポート1612を、含んでもよい。中空管1614の他方の末端は注射針に直接的または間接的に(たとえば第一部分1608と類似の第二部分を通じて)結合されている。中空管1614は、シリンジ針1604から注射針までの流体路を提供する。中空管1614は、いずれか適切な形態、アライメント、および寸法を取ってもよい。具体的実施形態において、中空管1614は、バレル部1606の長手軸に対して実質的に直角に延在する。
【0217】
一例示的実施形態において、搬送機構1600は、垂直軸に沿って上方および/または下方に向かって移動可能であってもよい。この実施形態において、注入前状態で注入の前に(たとえば、シリンジ針が針カバーで覆われているとき)、搬送機構1600は、シリンジ針1604が搬送機構1600内で隔膜1610に位置合わせされないようにシリンジ針1604の上方の垂直上昇位置にあってもよく、それによってシリンジ針1604と搬送機構1600との間の流体連絡を妨げる。注入の開始時に(たとえば、シリンジ針1604からシリンジカバーを取り外したとき)、搬送機構1600は、シリンジ針1604が搬送機構1600内で隔膜1610と位置合わせされるように垂直下降位置まで自動的に下降してもよく、こうしてシリンジ針1604が隔膜1610を穿通できるようにする。例示的実施形態は、注入の開始時に搬送機構1600を垂直上昇位置から垂直下降位置まで下降させるための、いずれか適切な作動機構を提供してもよい。
【0218】
一例示的実施形態において、シリンジ針1604は、第一部分1608に最初から結合されているか、またはこれに直接隣接して設けられてもよい。別の実施形態において、シリンジは装着型自動注入装置内の後退位置にあってもよく、シリンジ針1604は最初に搬送機構1600の第一部分1608から分離していてもよい。この実施形態において、注入前状態で注入の前に、シリンジ針1604は、第一部分1608内で隔膜1610から分離していてもよく、搬送機構1600と流体連絡していなくてもよい。注入の開始時に、シリンジは、装置の内部の伸長位置までカートリッジまたはシリンジアクチュエータによって前方に移動させられてもよく、シリンジ針1604は隔膜1610を穿通して、バレル部1606から搬送機構1600まで治療薬を流動させてもよい。例示的実施形態は、隔膜を穿通して注射針を通じて患者の皮膚まで治療薬を運搬するために、後退位置と伸長位置との間で筐体内でバレル部および/またはカートリッジアセンブリを前進させるための、いずれか適切なシリンジまたはカートリッジ作動機構を提供してもよい。
【0219】
例示的な搬送機構1600の利点は、シリンジ針1604および注射針の運動が互いに分離して独立していることである。たとえば、シリンジ針1604を流入ポート1612に結合させる機構は、この結合が注射針に結合された搬送機構1600の出口にどのように影響するかを考慮する必要がない。
【0220】
図17は、バレル部1706に結合されたシリンジ針1704を有するシリンジと注射針(図示せず)との間に流体導管を提供する、例示的な搬送機構1700を示す。搬送機構1700は、シリンジ針1704と結合可能な入り口部分(図示せず)、および注射針と結合可能な出口部分(図示せず)を含んでもよい。中空管1708、たとえばジャンプ管は、搬送機構の入り口部分を搬送機構の出口部分に結合するために使用されてもよい。中空管1708は、シリンジ針1704から注射針までの流体路を提供する。中空管1708は、いずれか適切な形態、アライメント、および寸法を取ってもよい。具体的実施形態において、中空管1708は、バレル部1706の長手軸に対して実質的に直角に延在する。
【0221】
一例示的実施形態において、搬送機構1700の入り口部分は、シリンジ針1704の近傍に設けられた隔膜(図示せず)を含んでもよい。シリンジ針1704による隔膜の穿通は、バレル部1706と搬送機構1700との間に流体連絡を確立してもよい。一例示的実施形態において、搬送機構の出口部分は、注射針の近傍に設けられた隔膜(図示せず)を含んでもよい。注射針による隔膜の穿通は、搬送機構1700と患者の皮膚との間に流体連絡を確立してもよい。
【0222】
一例示的実施形態において、搬送機構1700は、垂直軸に沿って上方および/または下方に向かって移動可能であってもよい。この実施形態において、注入前状態で注入の前に(たとえば、シリンジ針が針カバーで覆われているとき)、搬送機構1700は、シリンジ針1704が搬送機構1700内で隔膜に位置合わせされないようにシリンジ針1704の上方の垂直上昇位置にあってもよく、それによってシリンジ針1704と搬送機構1700との間の流体連絡を妨げる。注入の開始時に(たとえば、シリンジ針1704からシリンジカバーを取り外したとき)、搬送機構1700は、シリンジ針1704が搬送機構1700内で隔膜と位置合わせされるように垂直下降位置まで自動的に下降してもよく、こうしてシリンジ針1704が隔膜を穿通できるようにする。例示的実施形態は、注入の開始時に搬送機構1700を垂直上昇位置から垂直下降位置まで下降させるための、いずれか適切な作動機構を提供してもよい。
【0223】
一例示的実施形態において、シリンジ針1704は、第一部分1708に最初から結合されているか、またはこれに直接隣接して設けられてもよい。別の実施形態において、シリンジは装着型自動注入装置内の後退位置にあってもよく、シリンジ針1704は最初に搬送機構1700から分離していてもよい。この実施形態において、注入前状態で注入の前に、シリンジ針1704は、隔膜から分離していてもよく、搬送機構1700と流体連絡していなくてもよい。注入の開始時に、シリンジは、装置の内部の伸長位置までカートリッジまたはシリンジアクチュエータによって前方に移動させられてもよく、シリンジ針1704は隔膜を穿通して、バレル部1706から搬送機構1700まで治療薬を流動させてもよい。例示的実施形態は、隔膜を穿通して注射針を通じて患者の皮膚まで治療薬を運搬するために、後退位置と伸長位置との間で筐体内でバレル部および/またはカートリッジアセンブリを前進させるための、いずれか適切なシリンジまたはカートリッジ作動機構を提供してもよい。
【0224】
15から17に示される例示的実施形態において、密封性で信頼できる流体路は、シリンジまたはカートリッジのバレル部から、穿通された隔膜および搬送機構の管またはチャネルを通じて、最終的に注射針内へ、治療薬を運搬する。この構成は、シリンジ針アセンブリおよび注射針アセンブリが互いに独立して移動できるようにし、これは、隔膜を穿通する位置にシリンジを残しながら、注入が実行された後の注入後状態での筐体内への注射針の後退を容易にする。
【0225】
図18Aおよび
図18Bは、シリンジおよび例示的な搬送機構を含む、例示的な装着型自動注入装置を示す。
図18Aは、装置の斜視図を示す。
図18Bは、装置の構成要素を示す分解図を示す。自動注入装置1800は、装置を患者の身体または着衣に取り付けるために取り外されてもよい患者接触領域の接着層1804を含む、筐体部1802を含む。
【0226】
筐体部1802は、装置1800内で静止的または移動可能にシリンジ1806を保持する。シリンジ1806は1回分の治療薬を保持し、これはその遠位末端でシリンジ針1808に結合されている。シリンジ針1808は、実質的にシリンジ1806の長手軸に沿って延在してもよい。封入済み注入前状態において、シリンジ針1808はシリンジ針カバー1805によって覆われていてもよく、これは注入前に患者によって取り外されてもよい。注入状態において、シリンジ針1808はカバーを外されてもよい。一例示的実施形態において、接着層1804の取り外しは、シリンジ針カバー1805も取り外してよい。
【0227】
注入ボタン1810は、シリンジ針1808の近傍に設けられる。注入ボタン1810は、シリンジ針1808に対して実質的に90度で注射針1812を含み保持し、シリンジ針1808と注射針1812との間に流体導管を提供する搬送機構を含む。封入済み注入前状態において、注射針1812は注射針カバー1813によって覆われていてもよく、これは注入前に患者によって取り外されてもよい。注入状態において、注射針1812はカバーを外されてもよい。一例示的実施形態において、接着層1804の取り外しは、注射針カバー1813も取り外してよい。
【0228】
注入ボタン1810はまた、シリンジ針1808が注入ボタン1810内の流体導管との流体連絡を確立するのを防止する、隔膜1811も含んでよい。注入前状態で隔膜1811を覆うためにカバー1813が設けられてもよく、これは注入前に患者によって取り外されてもよい。一例示的実施形態において、隔膜カバー1813およびシリンジ針カバー1805は、一方の取り外しで他方も取り外すように、結合されてよい。
【0229】
一例示的実施形態において、注入前および注入後状態で、シリンジ針カバー1805はシリンジ針1808を覆い、注入ボタン1810は、注射針1812が筐体1802内で後退させられるように、シリンジ針カバー1805によって移動させられる際に垂直上昇位置にあってもよい。この状態において、注入ボタン1810の隔膜1811は、シリンジ針1808の垂直上方にあってもよい。加えて、シリンジ1806は、注入ボタン1810の隔膜1811から離間したアセンブリ1806の長手軸に沿って後退位置にあってもよい。
【0230】
シリンジ針カバー1805がシリンジ針1808から取り外されると、注入ボタン1810は、注射針1812が筐体1802の外側に患者接触領域内に突起するように、垂直下降位置まで下降する。一例示的実施形態において、注入ボタン1810は、シリンジ針カバー1805の取り外しによって自動的に下降してもよい。別の例示的実施形態において、注入ボタン1810は、患者が注入ボタン1810を下方に向かって押すことによって、下降する。
【0231】
一例示的実施形態において、注入ボタン1810の下降は、シリンジ針1808を注入ボタン1810の隔膜1811に位置合わせされる。注入ボタン1810の下降はまた、注入ボタン1810の隔膜1811に向かってその長手軸に沿ってシリンジ1806を前進させるシリンジアクチュエータも、起動する。これは、シリンジ針1808に隔膜1811を穿通させ、注射針1812との流体連絡を確立させる。
【0232】
図19Aおよび
図19Bは、シリンジおよび例示的な搬送機構を含む、例示的な装着型自動注入装置を示す。
図19Aは、装置の側面図を示す。
図19Bは、装置の構成要素を示す斜視図を示す。自動注入装置1900は、筐体1902に対して静止的または移動可能にシリンジ1904を保持する筐体1902を含む。注入ボタン1906は、シリンジ1904の近傍で筐体1902内に設けられ、注射針(図示せず)を保持する。筐体1902は、患者接触領域に付着のための接着層1908を含む。
【0233】
装置1800の構成要素と類似の装置1900のその他の構成要素は、
図18Aおよび
図18Bを参照して記載されている。
【0234】
図20Aから
図20Cは、カートリッジアセンブリおよび例示的な搬送機構を含む、例示的な装着型自動注入装置を示す。
図20Aは、装置の斜視図を示す。
図20Bは、装置の上面図を示す。
図20Cは、装置の搬送機構の側面図を示す。自動注入装置2000は、患者接触領域での付着のための接着層2003を有する筐体2002を含む。筐体2002は、筐体2002に対して静止的または移動可能に、カートリッジ2004を保持する。カートリッジ2004は、1回分の治療薬を保持するように構成されている。
【0235】
注入ボタン2006は、カートリッジ2004の近傍で筐体2002内に設けられている。注入ボタン2006は、カートリッジ2004の長手軸に対して実質的に90度で延在する注射針2008、およびカートリッジ2004の長手軸と実質的に平行に延在するシリンジ針2010を保持するか、またはこれらに結合されてもよい。注入ボタン2006は、シリンジ針2010を通じてカートリッジ2004から注射針2008までの間で流体連絡を確立する搬送機構を形成するか、または含んでもよい。
【0236】
注入ボタン2006は、注入状態で注入中に注入ボタン2006が押下されたときに筐体部2014と係合する、筐体係合部2012を含んでもよい。
図20Cに示される一例示的実施形態において、筐体係合部2012と筐体部2014との間の係合は、筐体部2014をカートリッジ2004の長手軸と平行にカートリッジ2004の遠位末端に向かって移動させ、こうしてシリンジ針2010がカートリッジ2004のバレル部との流体連絡を確立できるようにする。別の例示的実施形態において、筐体係合部2012と筐体部2014との間の係合は、カートリッジ2004をカートリッジ2004の長手軸と平行にシリンジ針2010に向かって移動させ、こうしてシリンジ針2010がカートリッジ2004のバレル部との流体連絡を確立できるようにする。
【0237】
装置1800の構成要素と類似の装置2000のその他の構成要素は、
図18Aおよび
図18Bを参照して記載されている。
【0238】
図21Aから
図21Cは、例示的なカートリッジアセンブリを含む例示的な装着型自動注入装置を示す。
図21Aは、例示的な装着型自動注入装置の斜視図を示す。
図21Bは、長手軸に沿ったカートリッジアセンブリの断面図を示す。
図21Cは、装置の搬送機構の透視上面図を示す。自動注入装置2100は、患者接触領域での付着のための接着層2103を有する筐体2102を含む。筐体2102は、筐体2102に対して静止的または移動可能に、カートリッジ2104を保持する。カートリッジ2104は、1回分の治療薬を保持するように構成されている。カートリッジ2104の近位末端は栓2106を含み、カートリッジ2104の遠位末端は、カートリッジ2104内に投与量を協働して封止する隔膜2108を含む。
【0239】
注入ボタン2110は、カートリッジ2104の近傍で筐体2102内に設けられている。注入ボタン2110は、カートリッジ2104の長手軸に対して実質的に90度で延在する、近位末端の注射針を保持する。注入ボタン2110は、カートリッジ2104の近傍にシリンジ針2112を保持する搬送機構2111と結合されている。シリンジ針2112は、カートリッジ2104の長手軸と実質的に平行に延在する。搬送機構2111は、シリンジ針2110を通じてカートリッジ2104から注射針2108までの間で流体連絡を確立するための流体導管を含む。注入前状態において、シリンジ針2112は、部分的にカートリッジ2104の遠位末端内まで延在してもよいが、しかし隔膜2108から離間してもよい。注入状態において、栓2106は、カートリッジ2104内の流体圧力がシリンジ針2112に向かって隔膜2108を前方に移動させるように、カートリッジ2104内で移動させられてもよい。これは、シリンジ針2112に隔膜2108を穿通させ、シリンジ針2112を通じてカートリッジ2104と注射針との間に流体連絡を確立する。
【0240】
装置1800の構成要素と類似の装置2100のその他の構成要素は、
図18Aおよび
図18Bを参照して記載されている。
【0241】
図22は、装着型自動注入装置の筐体内でシリンジ2202またはカートリッジアセンブリを後退位置から伸長位置まで前進させるために使用されてもよい、例示的なシリンジまたはカートリッジアクチュエータ2200を示す。バレル部および/またはカートリッジアセンブリの近位末端は、バレル部および/またはカートリッジアセンブリを搬送機構の隔膜(図示せず)に向かって移動させるためにシリンジおよび/またはカートリッジアセンブリのバレル部に力を印加する、たとえば駆動バネなどの付勢部材2204に結合されてもよい。シリンジまたはカートリッジアクチュエータ2200は、付勢部材の付勢力に対抗してもよく、安定的かつ信頼できる方式で、バレル部および/またはカートリッジアセンブリを後退位置に保持および係止してもよい。
【0242】
起動されると、シリンジまたはカートリッジアクチュエータ2200は、付勢部材の力の下でバレル部および/またはカートリッジアセンブリが隔膜に向かって前方に移動できるようにしてもよい。一例示的実施形態において、シリンジまたはカートリッジアクチュエータ2200は、バレル部および/またはカートリッジアセンブリを後退位置から伸長位置まで前進させるために必要とされる起動力のレベルを制御するために、特定の距離に構成および/または設定されてもよい。
【0243】
シリンジまたはカートリッジ作動システムを起動するために、いずれの適切なトリガ機構が使用されてもよい。一例示的実施形態において、トリガ機構は、装着型自動注入装置が注入前状態から注入状態に移動したときに、自動的にシリンジまたはカートリッジ作動システムを起動してもよい。一例示的実施形態において、シリンジまたはカートリッジアセンブリと注射針との間に流体路を提供するための筐体内での注入ボタンの下方垂直運動は、プランジャ作動システムを起動するための起動力を提供するだろう。別の例示的実施形態において、シリンジまたはカートリッジアセンブリと注射針との間に流体路を確立するための筐体内でのシリンジまたはカートリッジアセンブリの前進運動は、シリンジまたはカートリッジシステムを起動するための起動力を提供するだろう。別の例示的実施形態において、シリンジまたはカートリッジシステムは、ユーザによって手動で起動されてもよい。
【0244】
注入前状態で注入の前に、シリンジの遠位末端に設けられた針カバー、たとえば軟質および硬質針シールドアセンブリ(図示せず)は、シリンジ針を保護的に覆ってもよい。この段階において、シリンジ針は針カバーで覆われているので、シリンジの遠位末端は第一の大きい直径を有する。このため、隔膜を含む搬送機構は針カバーの上方の垂直上昇位置に保持され、隔膜はシリンジ針と位置合わせされていない。注入に備えて針カバーがシリンジから取り外されると(たとえばユーザによる手動で、または自動機構によって)、搬送機構は、もはや硬質針シールドによってずらされていないので垂直下降位置まで下降することができ、搬送機構内の隔膜はシリンジ針に位置合わせされる。針カバーの取り外しは、このようにして搬送機構をその上昇位置からその下降位置まで下降させる。搬送機構の下降は、同様に、シリンジまたはカートリッジアクチュエータ2200に起動力を印加し、シリンジまたはカートリッジアクチュエータ2200のトリガ機構として動作する。
【0245】
図23は、第一部分2302、第二部分2304、ならびに第一および第二部分の間に設けられた蝶番部2306を含む、例示的なシリンジまたはカートリッジアクチュエータ2300を示す。蝶番部2306は、第一および第二部分が互いに対して蝶番を中心に回転できるようにする。異なる回転構成において、第一および第二部分は、互いの間に0度から180度の間の例示的な角度を有してもよい。アクチュエータ2300は、シリンジに、ならびに隔膜および/または搬送機構に、結合されてもよい。隔膜および/または搬送機構がその第一上昇位置にあるとき、アクチュエータ2300はシリンジをその後退位置の所定位置に保持してもよい。隔膜および/または搬送機構がその第二下降位置にあるとき、アクチュエータ2300は、隔膜を穿通するために付勢部材がその伸長位置に向かってシリンジを前方に押してもよいように、シリンジを解放してもよい。
【0246】
IV.例示的なプランジャ作動システムおよび針後退システム
例示的実施形態は、栓がバレル部内を前方に移動して、バレル部に収容されている投与量の治療薬を放出するように、装着型自動注入装置のバレル部内の栓を作動させる、プランジャ作動システムを提供する。プランジャ作動システムを起動するために、いずれの適切なトリガ機構が使用されてもよい。一例示的実施形態において、トリガ機構は、装着型自動注入装置が注入前状態から注入状態に移動するときに、プランジャ作動システムを自動的に起動してもよい。一例示的実施形態において、シリンジまたはカートリッジアセンブリと注射針との間に流体路を提供するための筐体内での注入ボタンの下方垂直運動は、プランジャ作動システムを起動するための起動力を提供するだろう。別の例示的実施形態において、シリンジまたはカートリッジアセンブリと注射針との間に流体路を確立するための筐体内でのシリンジまたはカートリッジアセンブリの前進運動は、プランジャ作動システムを起動するための起動力を提供するだろう。別の例示的実施形態において、プランジャ作動システムは、ユーザによって手動で起動されてもよい。
【0247】
特定のその他の例示的実施形態は、治療薬を低速で患者に送達するために、低速でのシリンジプランジャの作動を生じる、プランジャ作動装置およびシステムを提供する。例示的な低速実施形態は、約5分から約30分の間に約0.1ミリリットルから約1ミリリットル以上の治療薬量を送達してもよいが、ただし例示的な送達速度はこの例示的範囲に限定されるものではない。
【0248】
例示的実施形態は、送達速度が長時間にわたって実質的に一定であるように、治療薬の線形送達プロファイルを提供してもよい。場合により、線形送達プロファイルは、患者が感じる不快症状を軽減するかも知れない。
【0249】
図24は、フュージおよび粘性減衰機構を採用するプランジャ作動機構を含む、例示的な自動注入装置2400の一部の模式図を示す。装着型自動注入装置2400は、シリンジまたはカートリッジアセンブリ2404を装着型自動注入装置2400内の所定位置に保持するための機械構造であるプラットフォーム2410を有する、筐体2402を含む。シリンジまたはカートリッジ2404は、1回分の治療薬を保持するためのバレル部、および投与量をバレル部内に封止するための栓2408を含む。プランジャ作動機構2406は、バレル部から投与量を放出するためにバレル部内で栓2408を移動させるために、設けられている。減衰機構2422、たとえば粘性減衰器は、治療薬が線形に、すなわち実質的に一定の流量で送達されるように、栓2408の運動を調整するために設けられている。プランジャ作動機構2406を減衰機構2422に結合するために、1つ以上の歯車を含む歯車列2420が設けられてもよい。歯車列2420は、いずれか適切な歯車比を提供するために、適切な歯車をいくつか含んでもよい。
【0250】
装着型自動注入装置2400のプラットフォーム2410は、静止的または移動可能であってもよい。一例示的実施形態において、プラットフォーム2410は、シリンジまたはカートリッジ2402を収容するための内部空間を備える、実質的に箱形または円筒形の構造であってもよい。内部空間を包囲する周囲壁は、シリンジまたはカートリッジアセンブリ2404を所定位置に保持するように構成されてもよい。プラットフォーム2410は、シリンジまたはカートリッジ2404を所定位置に保持するための1つ以上のクランプ機構2412を含んでもよい。プラットフォーム2410は、シリンジまたはカートリッジ2404の近位末端に設けられた、フランジ軸受け2414も含んでよい。シリンジまたはカートリッジ2404の近位末端に設けられたフランジは、フランジ軸受け2414に対して後方に摺動してもよい。
【0251】
一例示的実施形態において、プラットフォーム2410は、シリンジまたはカートリッジ2404を、プラットフォーム2410の内部に、およびこれに対して、静止的に保持してもよい。別の例示的実施形態において、プラットフォーム2410は、シリンジまたはカートリッジ2404がプラットフォーム2410に対して、たとえば流体搬送機構(図示せず)に向かってまたはこれから離れるように、移動できるようにしてもよい。この例示的実施形態において、プラットフォーム2410の内部空間は、プラットフォーム2410内でのシリンジまたはカートリッジ2404の移動を容易にするための、1つ以上の溝、軌道、またはチャネルを含んでもよい。一例示的実施形態において、プラットフォーム2410は、患者がシリンジまたはカートリッジ2404を視認できるようにするために、たとえば切り抜きまたは透明部など、窓2416を含んでもよい。
【0252】
エネルギーを貯蔵し、シリンジまたはカートリッジ2404の遠位末端に向かってシリンジまたはカートリッジ2404内で栓2408を駆動する力を提供するために、シリンジまたはカートリッジ2404の近傍に、1つ以上のプランジャアクチュエータ2406が設けられてもよい。一例示的実施形態において、栓2408を駆動するために、たとえば圧縮コイルバネなどのプランジャアクチュエータ2406が使用されてもよい。プランジャアクチュエータ2406は、少なくとも部分的にシリンジまたはカートリッジ2404の内部に設けられてもよい。注入前状態で注入の前に、プランジャアクチュエータ2406は、圧縮状態で維持されてもよい。注入状態で、注入の開始時または注入中に、プランジャアクチュエータ2406は、圧縮状態から解放状態に拡張できてもよい。プランジャアクチュエータ2406の拡張は、シリンジまたはカートリッジ2404の遠位末端に向かって栓2408を押してもよく、こうしてシリンジまたはカートリッジ2404から治療薬を送出する。有利なことに、シリンジまたはカートリッジ2404内のプランジャアクチュエータ2406の構成は、シリンジまたはカートリッジ2404を保持するために必要とされる筐体の長さを増加させない。しかしながら、いくつかの例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ2406は、栓2408を駆動するために一定の力を提供しないかも知れない。
【0253】
別の例示的実施形態において、栓2408を駆動するために、渦巻きバネが使用されてもよい。渦巻きバネは、プラットフォーム2410のシリンジまたはカートリッジ2404の外側だがこれと並んで設けられてもよく、これは筐体2402の空間要求を増大する可能性がある。注入前状態で注入の前に、バネは圧縮状態で維持されていてもよい。注入状態で、注入の開始時または注入中に、バネは圧縮状態から解放状態に拡張できてもよい。バネの拡張は、シリンジまたはカートリッジ2404の遠位末端に向かって栓2408を押してもよく、こうしてシリンジまたはカートリッジ2404から治療薬を送出する。有利なことに、渦巻きバネは、栓2408を駆動するための実質的に一定の力を提供するだろう。
【0254】
治療薬を送達するための送達速度および/または送達時間を制御するために、プランジャアクチュエータ2406内のエネルギーの解放を調整するための、1つ以上の減衰機構が設けられてもよい。一例示的実施形態において、低速の、および/または制御された送達を実現するために、プランジャアクチュエータ2406は、その圧縮状態から解放状態に抵抗なく加速することが禁じられている。プランジャアクチュエータ2406の運動は、たとえば線形の減衰値を提供することによって、一定の速度に維持されてもよい。プランジャアクチュエータ2406の加速に対する抵抗を提供するために、いずれの適切な機構が使用されてもよい。一例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ2406の加速に対抗するために、回転型粘性減衰器2422が使用されてもよい。粘性減衰器2422は、抵抗を提供するために、たとえばシリコングリースなど、1つ以上の粘性流体を使用してもよい。粘性減衰器2422は、「ロータ」と称される固体回転要素を保持する、静止筐体を含んでもよい。ロータの外周は、歯車列2420の歯車の歯によって係合されるように構成された、複数の歯を含んでもよい。ロータは、筐体の内部に封止された粘性流体の薄膜によって包囲されてもよい。ロータの回転は、粘性流体を剪断することによって、プランジャアクチュエータ2406の加速に対する抵抗を提供してもよい。一例示的実施形態において、粘性減衰器2422は、異なるレベルの減衰を提供する、異なる粘性減衰器に置き換えられてもよい。
【0255】
回転型粘性減衰器2422を回転させるために必要とされる力は、x=0をバネの自由長とする、座標系xを参照して記載される。mがシステムの慣性、cが減衰係数、およびkがバネ定数とすると:
【0260】
減衰が回転減衰器によって駆動される場合には、減衰材を回転させるために必要とされるトルクTは、ある定数Cによって角速度と線形比例すると見なされてもよい:
【0262】
回転減衰器が、減速Nの歯車列および直径Dのスプールによってプランジャアクチュエータに結合されている場合には:
【0264】
別の例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ2406の加速に対抗するために、脱進機が使用されてもよい。脱進機は、主バネのエネルギーを増加的に解放するために、はずみ車および螺旋ひげぜんまいの周知の振動周期を使用してもよい。脱進機は、エネルギーの解放において、信頼できる設計および直線性を提供してもよい。別の例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ2406の加速に対抗するために、ランナウェイ脱進機が使用されてもよい。別の例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ2406の加速に対抗するために、スイスレバー脱進機が使用されてもよい。
【0265】
調整装置2422、すなわち粘性減衰器または脱進機にプランジャアクチュエータ2406を結合するために、歯車列2420が設けられてもよい。歯車列2420は、きつい滑り嵌めで装着型自動注入装置2400の筐体2402に結合されてもよい軸2424を含んでもよい。一例示的実施形態において、軸2424は、たとえばスプールまたは軸などの円筒形構造2426、およびスプール2426の下に設けられた歯車2428を、支持してもよい。一例示的実施形態において、スプール2426は、カムスプールまたはフュージであってもよい。スプール2426および歯車2428を軸2424上に保持するために、1つ以上のスナップリング2430が使用されてもよい。スプール2426および歯車2428は、スプール2426および歯車2428の回転中心が互いにおよび軸2424に対して位置合わせされるように、軸2424を中心に設けられてもよい。スプール2426および歯車2428は、歯車2428およびスプール2426が一緒に軸2424を中心に回転してもよいように、互いにおよび軸2424に協働的に結合されてもよい。一例示的実施形態において、スプール2426および歯車2428は、軸2424から外されて、異なる組のスプールおよび歯車と置き換えられてもよい。プランジャアクチュエータ2406は、1つ以上のテザーまたはケーブル2442を用いて、たとえばスプール2426など、歯車列に結合されてもよい。
【0266】
一例示的実施形態において、スプール2426は、定直径スプール、カムスプール、またはフュージを含むがこれらに限定されない、いずれの適切な回転機構であってもよい。カムまたはフュージが使用される場合には、カムまたはフュージの外径は、線形変位Dにしたがって変化してもよい。線形減衰係数の数式を用い、歯車減速Nおよび回転減衰係数定数を保持すると、その結果は:
【0267】
【数7】
ここでaは定数である。上記を運動方程式に代入し、χの一次導関数が一定であると仮定すると、その結果は:
【0268】
【数8】
ここでC
1、C
2、およびbは、速度をほぼ一定にするために異なってもよい定数である。この変数を運動方程式に当てはめ、時間関数としてのxを解くと、xは時間関数としてのD、D
tを決定するために、数式(8)に代入されてもよい。瞬間速度は以下のように表される:
【0269】
【数9】
ここでφはカムまたはフュージの角度位置である。D
tおよびφ
tは、カムプロファイルの極座標である。
【0270】
例示的実施形態は、いずれか適切な機構を用いて、シリンジまたはカートリッジのバレル部内の栓にプランジャアクチュエータ2406を結合してもよい。プランジャアクチュエータ2406として圧縮バネが使用される場合には、プランジャアクチュエータ2406を栓に結合するために、1つ以上のテザーまたはケーブルが使用されてもよい。プランジャアクチュエータ2406として渦巻きバネが使用される場合には、プランジャアクチュエータ2406を栓に結合するために平歯車装置が使用されてもよい。渦巻きバネによって発生するトルクは、シリンジまたはカートリッジの角の周りの可撓性ラックを押すためにピニオンを用いて、栓に結合されてもよい。
【0271】
一例示的実施形態において、スプール2426は、爪車装置2434および爪2436と接触および/または結合してもよい。ねじりバネ(図示せず)は、爪車装置2434に対して爪2436を予備荷重するために、爪2436の下に設けられてもよい。装着型自動注入装置2400の組み立て中にスプール2426が巻かれているとき、ねじりバネは所定位置に保持されてもよい。スプール2426が巻かれた後および注入前状態で注入の前に、爪車装置2434および爪2436は、スプール2426を所定位置に保持して、スプール2426の回転運動を防止してもよい。これはテザー2442を所定位置に保持し、それがひいてはプランジャアクチュエータ2406をその圧縮状態に保ち、プランジャの運動を防止する。注入状態で、注入の開始時または注入中に、爪2436は、たとえばユーザによって、または注入ボタンの押下時に自動的に、爪車装置2434を分離するために回転させられてもよい。これは、プランジャアクチュエータ2406のバネ力によって生じるテザー2442の引張力の下で、スプール2426を回転させる。プランジャアクチュエータ2406のバネ力は、シリンジまたはカートリッジ2404の遠位末端に向かってテザー2442を引っ張る。
【0272】
1つ以上の追加歯車が、スプール2426に結合された歯車と接触および/または結合して提供されてもよく、こうして歯車列2438を形成する。歯車列2438の各歯車は、装着型自動注入装置2400の筐体2402に結合された対応する軸上に設けられてもよい。一例示的実施形態において、歯車列2438の歯車は、その対応する軸から外されて、異なる組の歯車と置き換えられてもよい。当業者は、その他の例示的な装置がより少ないかまたはより多い歯車を含んでもよいことを、認識するだろう。
【0273】
歯車列2438は、栓2408の加速に対抗する粘性減衰器2422または脱進機に結合されてもよい。つまり、歯車列は、栓2408がプランジャアクチュエータ2406の力の下で移動させられるときにプランジャアクチュエータ2406の加速が粘性減衰器2422または脱進機によって抵抗されるように、粘性減衰器2422または脱進機を、栓2408を保持するテザー2442に結合してもよい。
【0274】
一例示的実施形態において、歯車列2438は、歯車列の角変位または位置および対応する時間を検出および記録する、たとえば回転エンコーダなどの符号化装置2440に結合されてもよい。符号化装置2440によって取得されたデータに基づいてシリンジプランジャの位置を判定するために、計算装置が装着型自動注入装置に関連づけられてもよい。計算装置はまた、符号化装置2440によって取得されたデータに基づいて、シリンジまたはカートリッジ2404からの治療薬の流量、および対応する時間も判定してもよい。計算装置には、符号化装置2440と一体に、または符号化装置2440とは別に、提供されてもよい。装着型自動注入装置の組み立ておよび検査の間、符号化装置2440は、異なる歯車列、粘性減衰器、および付勢要素を評価し、数学モデルを実証し、数学モデルで解決されなかった変数を解明するために、使用されてもよい。注入を実行するために装着型自動注入装置を使用する間、符号化装置2440は、たとえば治療薬の流量、装置の誤作動(たとえば、流量が高すぎたり低すぎたりした場合)など、ユーザに1つ以上の状態を表示するために使用されてもよい。
【0275】
図25および
図26に示される一例示的実施形態において、装着型自動注入装置は、装置内でプラットフォームに対して移動可能なシリンジアセンブリを含んでもよい。装着型自動注入装置は、プラットフォーム2500、プラットフォーム2500に結合された摺動可能キャリッジ2502、および摺動可能キャリッジ2502上に実装されたシリンジ2504を含む。シリンジ2504の遠位末端は、シリンジ針2512に結合されてもよい。シリンジ2504は、栓2508によって封止された1回分の治療薬を収容するバレル部2506を含んでもよい。プランジャアクチュエータ2510は、バレル部2506内で栓2508を前方に向かって移動させるために、栓2508の近傍に、またはこれと接触して、設けられてもよい。一例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ2510は、テザーによって歯車列に結合され、それによって減衰機構に結合された、付勢機構を含んでもよい。
【0276】
装置はまた、注射針(図示せず)を担持し、シリンジ針2512によって穿通されてもよい穿通可能な隔膜を含む、注入ボタンも含んでよい。隔膜は、シリンジ針2512によって穿通されたときに隔膜がバレル部2506と注射針との間に流体連絡を確立するように、直接的にまたは導管を通じて、注射針に結合されてもよい。
【0277】
一例示的実施形態において、注入前状態で、シリンジ針2512は、すでに隔膜を穿通して、注射針と流体連絡していてもよい。注入状態で注入中に、プランジャアクチュエータ2510が始動してバレル部2506内で栓2508を前方に移動させるとき、投与量の治療薬がバレル部2506から放出されてもよい。この実施形態において、キャリッジ2502はプラットフォーム2500上で静止していてもよい。
【0278】
別の例示的実施形態において、注入前状態で、シリンジ針2512は、隔膜から離間していてもよく、注射針と流体連絡していなくてもよい。注入状態で注入中に、シリンジ2504は、シリンジ針2512で隔膜を穿通するために、隔膜に向かってプラットフォーム2500の内部でまたはこれに対して前方に移動してもよい。この例示的実施形態において、キャリッジ2502は、隔膜に向かってプラットフォーム2500に対して移動可能であってもよく、移動してもよい。
【0279】
一例示的実施形態において、プランジャアクチュエータ2510を歯車列2518に結合するために、テザー2516が使用されてもよい。歯車列2518は同様に、治療薬の線形送達プロファイルを提供するための減衰機構2520に結合されてもよい。注入前状態において、ロックアウト機構2522は、歯車列2518を所定位置に保持して歯車の回転を防止してもよい。これは、テザー2516にプランジャアクチュエータ2510を所定位置に保持させてプランジャアクチュエータ2510の解放を防止し、それによって栓2508の移動を防止する。注入状態で注入中に、ロックアウト機構2522は、たとえばユーザによって手動で、または自動的に、解放されてもよく、それによって歯車2518がプランジャアクチュエータ2510の付勢力の下で回転できるようにする。これは、移動可能なキャリッジ2502が自動的に隔膜に向かって移動できるようにしてもよく、その結果としてシリンジ針2512が隔膜を穿通する。栓2508もまた、シリンジ針2512を通じて投与量を放出するために、プランジャアクチュエータ2510の付勢力の下で隔膜に向かってバレル部2506内を移動してもよい。
【0280】
図27から
図29は、装置の筐体に対して静止しているシリンジアセンブリを含んでもよい、例示的な自動注入装置の一部の模式図を示す。装着型自動注入装置2800は、バレル部2804内の栓2802を自動的に作動させるためのプランジャ作動機構を含む。
図27は装置2800のカバーを通した上面図である。
図28は装置2800の側面図である。
図29は装置2800のカバーを通した斜視図である。
【0281】
プランジャ作動機構は、プランジャアクチュエータとして動作する付勢機構2806を含んでもよい。一例示的実施形態において、付勢機構2806を拡張させるためにほどかれる、たとえばフュージなど、ステージ3歯車2810に付勢機構2806を結合させるために、1つ以上のテザーまたはケーブル2812が使用されてもよい。たとえば粘性減衰器または脱進機などのステージ1減衰器2808は、治療薬の線形流量を実現するために、注入状態で注入中に、栓2802の移動を調整する。ステージ3歯車2810およびステージ1減衰器2808を結合するために、1つ以上のステージ2歯車およびピニオン2814が使用されてもよい。
【0282】
表7は、例示的な自動注入装置で使用されてもよい、例示的なステージ1減衰器、例示的なステージ2歯車、例示的なステージ2ピニオン、および例示的なステージ3歯車の例示的な特徴をまとめたものである。
【0284】
例示的なプランジャ作動機構について、故障解析が行われた。一例示的実施形態において、歯車列(ステージ2歯車を含む)は、歯車の歯が先端で歯当たりする単純なカンチレバーであると仮定する、ルイス曲げ故障モードを想定して設計されている。表7にまとめられた故障解析の結果は、歯車列の最小安全率が3であること、および総歯車比が4.04であることを、示している。
【0285】
治療薬の送達速度に対するその影響を判断するために、異なるタイプのプランジャアクチュエータ(バネ1およびバネ2)、スプール(定直径スプールまたはカムスプール)、および減衰機構(粘性減衰器または脱進機)の異なる組み合わせがテストされた。
図30は、(i)バネ1および粘性減衰器の組み合わせ、(ii)バネ1および脱進機の組み合わせ、(iii)バネ2および粘性減衰器の組み合わせ、ならびに(iv)バネ2および脱進機の組み合わせの、カムプロファイルのxおよびy座標(インチ単位)を示す。
【0286】
図31は、(i)バネ1および粘性減衰器の組み合わせ、(ii)バネ1、粘性減衰器、およびカムスプールの組み合わせ、(iii)バネ1および脱進機の組み合わせ、(iv)バネ1、脱進機、およびカムスプールの組み合わせ、(v)バネ2および粘性減衰器の組み合わせ、(vi)バネ2、粘性減衰器、およびカムスプールの組み合わせ、(vii)バネ2および脱進機の組み合わせ、(viii)バネ2、脱進機、およいカムスプールの組み合わせ、ならびに(ix)実質的に一定の速度で治療薬が送達される理想的な流量、によって送達される、治療薬流量(毎分ミリリットル単位)対時間(秒単位)のグラフを示す。
図32は、
図31の構成要素の組み合わせによって送達される治療薬の量(ミリリットル単位)対時間(秒単位)のグラフを示す。
【0287】
図31および
図32は、実質的に線形の治療薬の流量がカムスプールまたはフュージの使用によって実現され得ることを示している。粘性減衰器に対して脱進機の使用は、流量の直線性を向上させるために使用されてもよい。治療薬の合計送達時間は、歯車比を構成することによって制御されてもよい。
【0288】
例示的なプランジャ作動機構における例示的な減衰器および例示的な歯車比の異なる組み合わせがテストされた。例示的な減衰器は、(i)減衰機構G、(ii)減衰機構B、(iii)減衰機構K、および(iv)減衰機構Vを含んでいた。例示的な歯車比は、(i)4:1、(ii)6.25:1、および(iii)16:1を含んでいた。
図33は、(i)歯車比4:1で約10.3lbf*s/inの減衰係数を有するG減衰機構、(ii)歯車比4:1で約15.1lbf*s/inの減衰係数を有するB減衰機構、(iii)歯車比4:1で約18.9lbf*s/inの減衰係数を有するK減衰機構、(iv)歯車比4:1で約24.9lbf*s/inの減衰係数を有するV減衰機構、(v)歯車比6.25:1で約25.1lbf*s/inの減衰係数を有するG減衰機構、(vi)歯車比6.25:1で約37.0lbf*s/inの減衰係数を有するB減衰機構、(vii)歯車比6.25:1で約46.2lbf*s/inの減衰係数を有するK減衰機構、(viii)歯車比6.25:1で約60.7lbf*s/inの減衰係数を有するV減衰機構、(ix)歯車比16:1で約164lbf*s/inの減衰係数を有するG減衰機構、(x)歯車比16:1で約242lbf*s/inの減衰係数を有するB減衰機構、(xi)歯車比16:1で約303lbf*s/inの減衰係数を有するK減衰機構、(xii)歯車比16:1で約398lbf*s/inの減衰係数を有するV減衰機構、および(xiii)実質的に一定の速度で治療薬が送達される理想的な流量、を用いて送達される、時間(秒単位)に対する治療薬の量(ミリリットル単位)のグラフを示す。
【0289】
図33は、同じ歯車比で減衰係数を増加させると同じ量の治療薬の送達時間を増加させることを、示している。場合により、減衰係数の増加は送達速度をより線形にすることもある。たとえば、6:25:1の歯車比では、約60.7lbf*s/inの最大減衰係数は、より低い減衰係数よりも線形の送達速度を生じる。
【0290】
図34は、増加する減衰係数を有するG、B、K、およびVモデル減衰器の、減衰器速度(rpm単位)に対する例示的な減衰器トルク(プランジャアクチュエータの変位から逆算されてもよい)のグラフを示す。点は実際のトルク値を示し、点線は想定される製造者の減衰トルク値を示し、これは製造者の値が低めに見積もられていることを表している。データは、0から約20rpmの範囲でトルク値が実質的に線形であることを示している。これは、グラフに示される線形適合方程式の高い相関係数によって証明される。線形適合によって与えられる減衰器トルクの新しい線形適合方程式を使用することは、減衰係数を修正し、静的トルク値を含む。これらの新しい値をコンピュータモデルに代入することで、システム応答の非常に近い近似値を可能にする。
【0291】
静的トルクは歯車比によって乗じられてバネ力から直接減じられるので、たとえばVモデル減衰器および4:1歯車比など、一例示的実施形態において最高速度の減衰器および最低の歯車比を選択することが望ましいかも知れない。
図35は、約24.9lbf*s/inの減衰係数および4:1の例示的な歯車比を有するVモデル減衰器を用いて異なる例示的シリンジによって送達される、時間(秒単位)に対する治療薬の量(ミリリットル単位)のグラフを示す。
【0292】
測定された減衰器トルクを反映するためにコンピュータモデルを修正した後、フュージは治療薬の送達速度を線形化するように設計された。
図36は、送達される治療薬の量(ミリリットル単位)およびフュージまたはカムスプールの直径(インチ単位)対時間(秒単位)のグラフを示す。フュージの直径は送達の間に変化するので、角度位置データは、各データ点でプランジャアクチュエータの線形位置データを生じるように、フュージ曲線に沿って数値積分された。
【0293】
図36は、実測送達速度がモデルによって予測されたよりも約10%低いが、しかし高相関係数(0.9995)によって証明されるとおりほぼ一定であることを、示している。測定および予測データの間の相違は、たとえばグラフ中の勾配において歯車結合が急峻な変化として見られるであろう領域など、歯車の非効率性によって説明されるかも知れない。相違はまた、フュージをプランジャアクチュエータに結合するテザーがプランジャアクチュエータと完全に位置合わせされていないこと、またはプランジャアクチュエータのバネ定数が計算されたよりも実際には低いことによって、説明されてもよい。誤算原因にかかわらず、プランジャアクチュエータのバネ定数を約5%減少させることで、ほぼ完璧な相関(1.0)を生じるだろう。
【0294】
減衰効果に対する温度の影響、すなわち治療薬の送達の直線性を判定するために、異なる例示的な減衰機構が異なる温度でテストされた。粘性回転減衰トルクは、回転減衰器の内部のシリコングリースの粘度に依存する。シリコングリースの粘度は、部分的に周囲環境の温度に依存する。減衰効果に対する減衰機構の製造ばらつきの影響、すなわち治療薬の送達の直線性を判定するために、やはり異なる例示的な減衰機構がテストされた。減衰器製造のばらつきは、減衰器によって提供される抵抗トルクに影響する可能性がある。
【0295】
図37は、(i)室温の第一減衰器、(ii)華氏約40度(冷蔵庫内)の第一減衰器、(iii)第二減衰器、(iv)華氏約0度(冷凍庫内)の第二減衰器、(v)第一および第二減衰器に対して製造ばらつきを有する第三減衰器、および(vi)第一および第二減衰器に対して製造ばらつきを有する第四減衰器、によって実現される、送達される治療薬の量(ミリリットル単位)対時間(秒単位)のグラフを示す。
【0296】
図37は、温度の変化が減衰効果、すなわち治療薬の送達の直線性に対して実質的に影響しなかったことを示している。しかしながら、いくつかのケースにおいて送達速度は、たとえば第一減衰器の温度の低下による影響を受けた。同様に、減衰機構の製造ばらつきも、減衰効果、すなわち治療薬の送達の直線性に対して実質的に影響しなかった。しかしながら、いくつかのケースでは送達速度は製造ばらつきの影響を受けた。減衰器トルク値は、テスト対象サンプル群の中で約5%のばらつきがあった。
【0297】
このため、1つ以上の要因は、歯車比、減衰係数、減衰器の製造ばらつき、プランジャアクチュエータの製造ばらつきなどを含むがこれらに限定されない、治療薬の直線性および/または送達速度を制御するように構成されてもよい。加えて、治療薬の直線性および/または流量を制御するために、プランジャアクチュエータのその他の特性が異なってもよい。
【0298】
図38は、フュージおよび脱進機構を採用する例示的な自動注入装置2600の一部の模式図を示す。装置2600は、シリンジまたはカートリッジ2404に収容された栓2408を自動的に作動させるためのプランジャ作動機構を含む。例示的なプランジャ作動機構において、線形減衰を提供することによってプランジャアクチュエータ2406の加速に対抗するために、ランナウェイ脱進機2602が使用されてもよい。例示的なランナウェイ脱進機2602において、その外周上に複数の歯を有する雁木車が設けられ、雁木車の近傍にパレットが設けられる。一例示的実施形態において、雁木車は30本の歯を有してもよいが、ただし例示的な雁木車は30本の歯に限定されない。雁木車は、歯車列を形成する1つ以上の歯車を通じてスプール2426に結合されてもよい。一例示的実施形態において、50:1の歯車比がスプール2426を雁木車に結合してもよいが、しかし別の例示的な歯車比が使用されてもよい。パレットは、たとえば鋼のドエルピンなど、1つ以上のピンによって進められてもよいピンホールによって、調節可能な質量慣性モーメントを有してもよい。
【0299】
動作中、雁木車にトルクが印加されたとき、雁木車は回転し、雁木車の歯はパレットの運動エネルギーが保存されるように、パレットにインパルストルクを付与する。歯はパレットのアームを脇に押しやる。これはパレットを振動させ、それが雁木車の歯を解放し、同時にパレットの他方のアームに雁木車の第二の歯を妨害させる。このように、雁木車が回転すると、その運動はパレットの周期的な衝撃によって拘束され、こうしてパレットが自由に振動するときにのみ雁木車を回転させる。雁木車に印加されるトルクが増加するに連れて、雁木車はパレットにより強いインパルスを付与し、こうして振動速度パレットを増加させ、そのため雁木車がより高速で運動できるようにする。
【0300】
雁木車の歯とパレットとの間の衝突が完全に弾性であると仮定すると、各衝撃についてパレットが吸収するのは:
【0302】
パレットが振動するたびに雁木車とパレットとの間で2つの衝突が発生するので、パレットの力消散はパレットの振動数ωに正比例する。このため:
【0304】
インパルス時間をゼロとすると、衝突は完全に弾性なので、角速度
【0305】
【数12】
の大きさは一定であってφ
maxに関連づけられていると見なされてもよく、衝突の間の角距離(ラジアン単位)は:
【0306】
【数13】
によって表されてもよい。
【0310】
【数15】
は歯の数nおよび振動数ωに関連づけられており:
【0316】
【数19】
これは非線形微分方程式を形成する。
【0317】
別の例示的なプランジャ作動機構において、プランジャアクチュエータの加速に対抗するために、スイスレバー脱進機が使用されてもよい。θ=0の座標系がはずみ車に取り付けられたコイルバネの平衡状態であると仮定する。このシステムにおいて減衰が無視できる程度だとすると:
【0319】
ここでkはコイルバネのねじりバネ定数であり、Jは質量慣性モーメントである:
【0321】
ここでrは回転中心からの距離であり、mは質量であり、システムの固有振動数は:
【0323】
雁木車がn本の歯を有し、減速Nの平歯車列は直径Dのスプールに脱進機を結合する場合には、スプールは:
【0325】
θをxに関連づける数式の導関数を用いると:
【0330】
図24と共通の、
図38に示される構成要素は、
図24を参照して記載されている。
【0331】
図39は、装着型自動注入装置のバレル部3902から治療薬を排出するための力を供給するために1つ以上の線形付勢機構を採用する、例示的なプランジャ作動機構3900を示す。バレル部3902は、近位末端と遠位末端との間に長手方向に延在し、1回分の治療薬を保持するように構成されている。バレル部3902の遠位末端は、シリンジ針3904に結合されている。投与量の治療薬を封止するために、バレル部3902内に栓3906が移動可能に設けられている。
【0332】
注入状態で注入中に、バレル部3902内の栓3906をシリンジ針3904に向かって移動させるために、栓3906に対して付勢力を提供するための、1つ以上の線形バネ3908が設けられている。線形バネ3908の遠位末端は、減衰機構と係合するように構成された複数の歯を有するプランジャ3916の近傍に、および/またはこれと接触している。プランジャ3916は、たとえば1つ以上の玉軸受け3910など、力伝達機構の遠位末端の近傍に、および/またはこれと接触して設けられてもよい。
【0333】
玉軸受け3910の遠位末端もまた、バネ3908の付勢力が玉軸受け3910を通じて栓3906に伝達されるように、栓3906の近傍に、および/またはこれと接触していてもよい。玉軸受け3910は、玉軸受け3910の横方向または側方運動を制限する、封鎖軌道3912内に封鎖されてもよい。つまり、バネ3908の付勢力は、プランジャ3916およびひいては玉軸受け3910を、実質的に前後方向に、すなわち栓3906に向かってまたはこれから離れるように、移動させる。玉軸受け3910の使用は、付勢力の栓3906に対する再配向を可能にし、装置の小型化を可能にする。作動させられると、バネ3908は、栓3906の方向に付勢力を課す。付勢力は、プランジャ3916および玉軸受け3910によって栓3906に伝達され、バレル部3902内でシリンジ針3904に向かって栓3906を移動させる。これは、シリンジ針3904を通じてバレル部3902の外部に治療薬を送出させる。
【0334】
治療薬の送達速度を調整するために、減衰機構3914、たとえば回転型粘性減衰器が提供され、バネ3908および/またはプランジャ3916に関連づけられてもよい。減衰器3914は、ハブ、およびハブの周りに放射状に延在する複数の歯を含んでもよい。減衰器3914の歯は、プランジャ3916の歯と係合するように構成されてもよい。減衰器3914は、送達速度を調整するために、プランジャ3916の運動速度に比例する力を供給してもよい。このように、バネ3908および/または減衰器3914の特性によって供給される力を構成することで、治療薬の低速で制御された送達を提供するために、例示的なシステム3900が使用されてもよい。
【0335】
図40は、バレル部から治療薬を排出するためにバレル部の栓に力を供給するため、1つ以上の時計バネを採用する、例示的なプランジャ作動機構4000を示す。バネが圧縮されたときに時計バネの要領でコイルが互いの内部に収まり、それによって最小限の空間を占有するように、直径が漸次的に増加するバネコイルを特徴とする圧縮螺旋コイルバネによって、付勢手段4002が提供される。バネ4002の回転付勢力が機械的脱進機構4004の線形変位に変換されるように、バネ4002の一部は機械的脱進機構4004の近傍に、および/またはこれと接触している。バネ4002の付勢力が、機械的脱進機構4004の運動を通じて線形変位として栓に伝達されるように、機械的脱進機構4004は栓の近傍に、および/またはこれと接触していてもよい。つまり、バネ4002の付勢力は、機械的脱進機構4004を、実質的に前後方向に、すなわち栓に向かってまたはこれから離れるように、移動させる。機械的脱進機構4004の使用は、付勢力の栓に対する再配向を可能にし、装置の小型化を可能にする。
【0336】
作動させられると、バネ4002は、栓の方向に、機械的脱進機構4004によって前後方向の力に変換される付勢力を課す。付勢力は、直接的または間接的に栓に伝達され、バレル部内で針に向かって栓を移動させる。これは、針を通じてバレル部の外部に治療薬を送出させる。このように、例示的システム4000は、バネ4002によって供給される力、および/または機械的脱進機構4004によって提供される線形変位を構成することによって、治療薬の低速で制御された送達を提供するために、使用されてもよい。機械的脱進機構4004は、たとえば周期ごとの前進量を制御するように、構成されてもよい。バネ4002は、スティックスリップ力に打ち勝つようなサイズであってもよい。
【0337】
図41および
図42は、シリンジまたはカートリッジのバレル部内で栓を移動させるために作動流体の流体圧力および/または運動が使用される、流体ベースのプランジャ作動機構を採用する、例示的な自動注入装置4100を示す。プランジャ作動機構は、シリンジまたはカートリッジのバレル部4104から1回分の治療薬を送出するための力を栓に供給するために、1つ以上の流体回路を含む。
図41は例示的な自動注入装置4100の模式図であり、
図40は例示的な自動注入装置4100の斜視図である。装着型自動注入装置4100は、流体圧力を提供する非圧縮性作動流体を収容する、圧力要素4106を含んでもよい。例示的な作動流体は、水、空気、油などを含んでもよいが、これらに限定されない。例示的な圧力要素4106は、弾性気槽、マスタシリンダ、バネ式シリンジなどを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0338】
圧力要素4106は、配管4110を通じて流量制限器4108に結合されてもよい。流量制限器4108は、流量制限器の上流の流体圧力が流量制限器の下流の流体圧力よりも大きくなるように、作動流体の流れを制限してもよい。流量制限器4108は、約0.001インチから約0.01インチの範囲の直径のオリフィスを含んでもよいが、しかし例示的な流量制限器オリフィスの直径は、この例示的な範囲に限定されるものではない。流量制限器4108のオリフィスは、約10mmから約50mmの範囲の長さを有してもよいが、しかし例示的な流量制限器オリフィスの長さは、この例示的な範囲に限定されるものではない。
【0339】
例示的実施形態は、治療薬の合計送達時間を制御するための送達システムの多くの特徴を構成してもよい。例示的実施形態はまた、作動流体および/または治療薬の粘度に基づいて、送達システムの多くの特徴を構成してもよい。例示的な特徴は、オリフィスの直径、オリフィスの長さ、作動流体の粘度などを含んでもよいが、これらに限定されない。たとえば、流量制限器のオリフィスの直径は、合計送達時間を延長するために縮小されてもよい。
【0340】
流量制限器4108はまた、配管4112を通じて栓に結合されてもよい。作動流体が流量制限器4108を通じて圧力要素4106から解放されると、作動流体の流体圧力は、バレル部4104から投与量の治療薬を放出するために、バレル部4104内で栓を前方に向かって駆動する。
【0341】
一例示的実施形態において、注入前状態で注入の前に、作動流体は圧力要素4106から解放されなくてもよい。この例示的実施形態において、送達トリガの作動時に、作動流体が圧力要素4106から配管4110および4112内に解放されるように、送達トリガ(図示せず)は圧力要素4106に結合されてもよい。作動流体の流体圧力はバレル部4104内で栓を前進させ、こうして投与量を患者の皮膚に注入する。このように、作動流体の流れおよび流量制限器によって確立された流体回路は、調整された力を栓に供給してもよい。
【0342】
一例示的実施形態において、投与量は、線形送達プロファイルで、すなわち実質的に一定の送達速度で、送達される。送達プロファイルの直線性は、流量制限器4108の上流の圧力要素4106によって提供される作動流体の高い圧力、および流量制限器4108によって提供される減衰効果によって、実現されてもよい。流量制限器4108の上流の圧力は、高度に減衰されたシステムが実現されるように、推定されるスティックスリップ力に対して高レベルに維持されてもよい。栓がバレル部4104内で前方に移動させられるために、栓は流量制限器4108とバレル部4104との間の作動流体に対して真空引きする必要があり、これは、作動流体が本質的に非圧縮性なので、相当程度まで実現することは困難である。
【0343】
例示的な減衰液圧送達回路は、力の直接的な印加によるよりもむしろ体積計量を通じて、栓の運動を許容し、それによって治療薬の送達プロファイルにおけるスティックスリップ現象を最小限に抑える。
【0344】
一例示的実施形態において、0.8ミリリットルの例示的な量の治療薬が、約12分の例示的な持続時間内に約16.5psiの例示的な送達圧力で送達されてもよい。別の例示的実施形態において、0.8ミリリットルの例示的な量の治療薬は、約17分の例示的な持続時間内に約5psiの例示的な送達圧力で送達されてもよい。
【0345】
図43は、約16.5psiの例示的な送達圧力で例示的な送達システムによって送達されたときの、時間(秒単位)に対する治療薬の累積量(グラム単位)のグラフを示す。
図44は、約0.008インチの例示的な直径および約34.3mmの例示的な長さを有する第一の例示的な流量制限器を含む例示的な送達システムによって送達されたときの、時間(秒単位)に対する治療薬の累積量(ミリリットル単位)のグラフを示す。約1ミリリットルの治療薬を送達するための合計送達時間は、約20秒であった。
図45は、約0.002インチの例示的な直径および約34.3mmの例示的な長さを有する第二の例示的な流量制限器を含む例示的な送達システムによって送達されたときの、時間(秒単位)に対する治療薬の累積量(ミリリットル単位)のグラフを示す。約1ミリリットルの治療薬を送達するための合計送達時間は、約15分であった。図示されるグラフにおいて、送達プロファイルは実質的に線形、すなわち長時間にわたって実質的に一定であり、一貫性のない送達速度を表す初期ボーラスまたは急峻な変化または変曲を表示していない。
【0346】
図46は、カートリッジアセンブリから治療薬を排出するための力を供給するために1つ以上の流体回路を採用する、例示的な自動注入装置4600の模式図である。
図47は、例示的な装置4600の上面図である。例示的な自動注入装置4600は、1回分の治療薬を収容するバレル部4602を含む。バレル部4602の遠位末端は、針カバー4604によって保護的に覆われているシリンジ針(針カバー4604によって隠れている)の近傍に設けられるか、またはこれに結合されている。装置4600は、隔膜を含んで注射針(図示せず)を担持する、注入ボタンを含む。一例示的実施形態において、装置4600は、注射針を保持するための注射針キャリア4606を含んでもよい。一例示的実施形態において、注射針は、図示されるように装置の平面に対して実質的に直角に延在してもよく、針キャリア4606によって所定位置に保持されてもよい。針ロック4608は、一旦係合したら注射針が筐体から脱出するのを防止するために設けられてもよく、注射針の付近で筐体内に位置してもよい。
【0347】
一例示的実施形態において、シリンジまたはカートリッジアクチュエータ4610は、隔膜に向かって筐体内でバレル部4602を前進させるために設けられてもよい。トリガは、たとえば注入ボタンが押下されたとき、または針カバー4604が取り外されたときに、シリンジまたはカートリッジアクチュエータ4610を起動するために設けられてもよい。
【0348】
この例示的実施形態において、作動流体を収容するマスタシリンダ4612は、バレル部4602内で栓4614を作動するための流体圧力を提供するために設けられる。マスタシリンダ4612は、始動すると、栓4614と流体連絡するように作動流体を解放し、流体圧力にバレル部4602内で栓4614を前進させる、送達トリガ4616に結合されてもよい。
【0349】
例示的実施形態はまた、患者接触領域において装置の筐体の外側の垂直下降位置(あるいは伸長または展開位置)から装置の筐体内の垂直上昇位置(または後退位置)まで注射針を後退させるための、針後退システムも提供する。装着型自動注入装置4600は、注入状態で注入中の筐体内の垂直上昇位置から注入の後の注入後状態の筐体内の垂直上昇位置まで注入ボタンを自動的に持ち上げる、後退機構を含む。一例示的実施形態において、後退機構は伸縮自在要素であってもよい。マスタシリンダ4612は、始動すると、後退トリガと流体連絡するように作動流体を解放し、流体圧力に後退機構を始動させる、後退トリガに結合されてもよい。
【0350】
図48は、マスタシリンダ4612を流量制限器4804に結合させる導管4802、流量制限器4804を装置のバレル部内の栓に結合させる導管4806、およびたとえば逆止弁などの弁4812を通じてマスタシリンダ4612を後退機構4810に結合させる導管4808を示す、装置4600の上面図を示す。
図49は、装置4600の回路図を示す。
【0351】
逆止弁4812は、それ以上で逆止弁4812が後退機構4810に結合された導管4808内に流体を流すようになる、適切なクラッキング圧を有してもよい。一例示的実施形態において、クラッキング圧は、注入状態で注入中に栓を駆動するのに必要とされる導管4806内の最大流体圧力よりも高い。さもなければ、望ましくないことに、針後退プロセスは、注入中または注入前にも開始する可能性がある。一例示的実施形態において、注入状態で注入中の栓の運動の終わりでの導管4806内の圧力は、クラッキング圧よりも高い。さもなければ、栓の運動の終わりで、導管4808内の圧力は、後退機構4810を始動するには不十分であるかも知れない。マスタシリンダ4612内の作動流体の量は、1回分の治療薬全体を送達して後退機構4810を始動するのに十分である。
【0352】
一例示的実施形態において、後退機構4810および逆止弁4812は個別に設けられてもよい。別の例示的実施形態において、後退機構4810および逆止弁4812は、たとえば反転膜など、単一要素として設けられてもよい。
【0353】
図50は、一例示的実施形態における、逆止弁の後および栓の裏の圧力(psi単位)対時間(秒単位)のグラフを示す。一例示的実施形態において、逆止弁のクラッキング圧は約7.5psiであってもよく、流量制限器オリフィスの直径は約0.008インチであってもよい。
【0354】
注入状態で注入中に、流量制限器4804は、導管4802内の圧力を約10から約15psiにしてもよく、その一方で導管4806内の圧力は約5から約6psiであってもよい。逆止弁4812はこのようにして、注入中に栓が移動している間に作動流体のいかなる流れも導管4808に進入するのを防止する。注入の終わり、すなわち投与量がバレル部から完全に放出されてしまったときに、一旦栓が移動を停止すると、導管4806内の圧力は7.5psiを超えて増加する。これは逆止弁4812を開放して、後退機構4810を始動させる導管4808内に作動流体を流入させる。こうして後退機構4810は針ロックを解除し、注射針を担持する注入ボタン/キャリア4606を後退させる。これは液圧回路内の均圧に基づいているので、針後退プロセスは、注射針が後退させられる前に全投与量が送達されることを保証し、治療薬の利用度を最大にし、バレル部4602内で必要とされる過剰充填を最小限に抑える。
【0355】
針後退システムを起動するために、いずれの適切なトリガ機構が使用されてもよい。一例示的実施形態において、トリガ機構は、装着型自動注入装置が注入状態から注入後状態に移動するときに、針後退システムを自動的に起動してもよい。一例示的実施形態において、治療有効投与量の治療薬の送達の完了が、針後退システムを起動してもよい。別の例示的実施形態において、治療有効投与量の治療薬の送達の完了前の患者からの装置の抜去が、針後退システムを起動してもよい。別の例示的実施形態において、針後退システムは、ユーザによって手動で起動されてもよい。
【0356】
図51は、装着型自動注入装置5100の筐体5102が皮膚センサ足部5104を含む、例示的な自動注入装置5100の側面図を示し、これは注入部位の近位の筐体5102の一部の下または内部に収納された、一例示的実施形態における構造である。一例示的実施形態において、治療薬の注入に先立って、および注入中に、皮膚センサ足部5104は、筐体5102の下側の部分に保持されるかまたはその部分を形成する。装着型自動注入装置5100が注入部位に取り付けられて始動されると、皮膚センサ足部5104は自由に動いてもよいが、しかし注入部位によって拘束されてもよい。一例示的実施形態において、装着型自動注入装置5100が注入部位から取り外されると、薬物送達が完了したか否かにかかわらず、皮膚センサ足部5104はもはや拘束されず、筐体5102の周囲の外側に延在および突起する。これはひいては後退トリガをトリップさせる。後退トリガが始動させられると、後退機構は注射針を後退させ、これは注入ボタンが筐体5102の上部から突起して注射針が筐体5102内に後退させられるように、やはり注入ボタンを垂直下降位置から垂直上昇位置まで引き上げてもよい。
【0357】
V.例示的な針保護システム
例示的実施形態は、注入後の注入後状態で装着型自動注入装置内に注射針を保持するための異なる例示的な針保護システムを提供する。針の保護は、偶発的な針刺しによって患者または装着型自動注入装置の近傍にいるその他いずれかの人物が負傷するのを防止する。
【0358】
図52Aおよび
図52Bは、自動注入システムの筐体5204内で注射針5202を後退位置に保持する、例示的な針保護システム5200を示す。注射針5202は、患者の皮膚から離れるかまたはそこに向かう方向に、筐体5204に対して移動可能である。針5202が患者の皮膚からより遠い筐体5204内の位置にあるとき、針5202は後退位置にあり、筐体5204の外側に突起していない。針5202が患者の皮膚により近い筐体5204内の位置にあるとき、針5202は挿入または展開位置にあり、筐体5204から完全にまたは部分的に突起している。筐体5204には、そこを通じて針5202が筐体5204の外側に突起する、開口5206が設けられていてもよい。
【0359】
針保護システム5200は、針5202が後退位置にある、注入前の注入前状態または注入後の注入後状態で針5202が筐体5204から突起するのを防止する、障壁機構5208を採用している。
図52Aは、たとえば注入状態で注入中に、針5202が挿入または展開位置にあり、開口5206を通じて筐体5204の外側に完全にまたは部分的に突起している、システム5200を示す。この場合、障壁機構5208は、開口5206が筐体5204の外側に対して開放されるように、開口5206からずらされており、針5202は、開口5206を通じて筐体5204の外側に自由に突起することができる。
図52Bは、たとえば注入前状態および注入後状態で、針5202が後退位置にあり筐体5204から突起していない、システム5200を示す。この場合、障壁機構5208は、開口5206がもはや筐体5204の外側に対して開放されないように、開口5206に位置合わせされてこれを覆っており、針5202は開口5206を通じて筐体5204の外側に自由に突起できない。一例示的実施形態において、障壁機構5208は、開口5206を露出させる第一位置(
図52A)と開口5206を覆う第二位置(
図52B)までの間で、回転点の上を回転可能に移動させられてもよい。
【0360】
図53Aおよび
図53Bは、自動注入システムの筐体5302内に設けられた別の例示的な針保護システム5300を示す。自動注入システムは、患者の皮膚から離れるかまたはそこに向かう方向に、筐体5302に対して移動可能な、注射針5304を含む。針5304が患者の皮膚からより遠い筐体5302内の位置にあるとき、針5304は後退位置にあり、筐体5302の外側に突起していない。針5304が患者の皮膚により近い筐体5302内の位置にあるとき、針5304は挿入または展開位置にあり、筐体5302から完全にまたは部分的に突起している。
【0361】
針保護システム5300は、注入前状態または注入後状態の後退位置に注射針を係止するための、注射針5304の近傍に設けられた、針ロックアウトスリーブ5306を含む。針ロックアウトスリーブ5306は、スロット5310内に設けられたピン5308と結合されてもよい。ピン5308は、針ロックアウトスリーブ5306が筐体5302内の後退位置に注射針5304を係止する、スロット5310に対する第一位置(
図53Aに示す)にあってもよい。ピン5308は、針ロックアウトスリーブ5306が筐体5302の外側に注射針5304を突起させる、スロット5310に対する第二位置(
図53Bに示す)にあってもよい。
【0362】
一例示的実施形態において、トリップすると、注射針5304を筐体5302内に後退させる後退機構を起動する、早期抜去後退トリガ5312。早期抜去後退トリガ5312は、治療有効投与量の治療薬が完全に送達される前に装着型自動注入装置5300が注入部位から抜去されるときに、トリップされてもよい。一例示的実施形態において、早期抜去後退トリガ5312は、装着型自動注入装置5300の注入部位からの抜去時に解放される、たとえば可撓性プラスチックフックなどの、ラッチ5314を含んでもよい。
図53Aは、装着型自動注入装置が注入部位に結合されているときにラッチ5314がロックアウトスリーブ5306の一部に係合されている、早期抜去後退トリガ5312を示す。
図53Bは、装着型自動注入装置が注入装置から抜去されるときにラッチ5314がロックアウトスリーブ5306の部分から解放されている、早期抜去後退トリガ5312を示す。ロックアウトスリーブ5306の部分からのラッチ5314の解放は、後退機構を起動する。例示的な後退機構は、注射針5304を注入部位から自動的に後退させるために、投与終了後退トリガに反応してもよく、早期抜去後退トリガ5310に反応してもよい。
【0363】
図54は、自動注入システムの筐体5404内の後退位置に注入キャリア5402によって保持される注射針を維持する、例示的な針保護システム5400を示す。注射針は、患者の皮膚から離れるかまたはそこに向かう方向に、筐体5404に対して移動可能である。注射針が患者の皮膚からより遠い筐体5404内の位置にあるとき、針は後退位置にあり、筐体5404の外側に突起していない。針が患者の皮膚により近い筐体5404内の位置にあるとき、針は挿入または展開位置にあり、筐体5404から完全にまたは部分的に突起している。筐体5404には、そこを通じて針が筐体5404の外側に突起してもよい、開口が設けられていてもよい。
【0364】
針保護システム5400は、針キャリア5402の近傍にまたはこれと接触して設けられた、針ロック5408を含む。一例示的実施形態において、針ロック5408は、旋回点またはインターフェースを中心に旋回または回転してもよい、旋回または回転部材であってもよい。針ロック解放機構5410は、針ロック5408の近傍に、またはこれと接触して、設けられてもよい。針ロック解放機構5410は、注射針が垂直下降位置にあって筐体5404の外側に突起している(注入状態にある)ときに第一位置にあってもよく、注射針が筐体5404内の垂直上昇または後退位置にある(注入前状態または注入後状態にある)ときに第二位置にあってもよい。
【0365】
針ロック解放機構5410が第一位置にあるとき(つまり、注射針が垂直下降した注入位置にあるとき)、針ロック5408は、筐体5404内の垂直上昇位置に注射針を係止しない、解除位置にあってもよい。あるいは、針ロック5408は、筐体5404内の垂直下降位置に注射針5408を係止する、係止位置にあってもよい。一例示的実施形態において(つまり、注射針が垂直下降した注入位置にあるとき)、筐体5404内の垂直上昇位置への注射針および/または針キャリア5402の後退は、針ロック解放機構5410を起動してもよく、すなわち解放機構を第一位置から第二位置に移動させてもよい。針ロック解放機構5410が第二位置に移動させられるとき、針ロック5408は旋回または回転し、それによって筐体5404内の垂直上昇位置に注射針および/または針キャリア5402を係止してもよい。
【0366】
図55は、自動注入システムの筐体5504内の後退位置に注入キャリア5502によって保持される注射針を維持する、例示的な針保護システム5500を示す。注射針は、患者の皮膚から離れるかまたはそこに向かう方向に、筐体5504に対して移動可能である。注射針が患者の皮膚からより遠い筐体5504内の位置にあるとき、針は後退位置にあり、筐体5504の外側に突起していない。針が患者の皮膚により近い筐体5504内の位置にあるとき、針は挿入または展開位置にあり、筐体5504から完全にまたは部分的に突起している。筐体5504は、そこを通じて針が筐体5504の外側に突起してもよい、開口が設けられていてもよい。
【0367】
針保護システム5500は、針キャリア5502の近傍にまたはこれと接触して設けられた、針ロック5508を含む。一例示的実施形態において、針ロック5508は、旋回点またはインターフェースを中心に旋回または回転してもよい、旋回または回転部材であってもよい。針ロック5508は、付勢機構の長手軸を中心に針キャリア5502に回転バネ力を印加する付勢機構5506を含んでもよい。一例示的実施形態において、針ロック5508は、針キャリア5502を中心に実質的に対称的に回転力が付勢機構5506によって印加されるように、針キャリア5502を中心に対称的に設けられてもよい。
【0368】
針ロック解放機構5510は、針ロック5508の近傍に、またはこれと接触して、設けられてもよい。針ロック解放機構5510は、注射針が垂直下降位置にあって筐体5504の外側に突起している(注入状態にある)ときに第一位置にあってもよく、注射針が筐体5504内の垂直上昇または後退位置にある(注入前状態または注入後状態にある)ときに第二位置にあってもよい。
【0369】
針ロック解放機構5510が第一位置にあるとき(つまり、注射針が垂直下降した注入位置にあるとき)、付勢機構5506は、針キャリア5502が垂直下降位置に保持されるように、患者の身体に向かう方へ時計回りの方向に、針キャリア5502にバネ力を印加してもよい。針ロック解放機構5510が第二位置にあるとき(つまり、注射針が垂直上昇した注入前または注入後状態にあるとき)、付勢機構5506は、針キャリア5502が垂直上昇位置に持ち上げられて保持されるように、患者の身体から離れる方へ反時計回りの方向に、針キャリア5502にバネ力を印加してもよい。
【0370】
一例示的実施形態において、筐体5504内の垂直上昇位置への注射針および/または針キャリアの後退は、針ロック解放機構5510を起動してもよく、すなわち解放機構を第一位置から第二位置に移動させてもよい。針ロック解放機構5510が第二位置に移動させられるとき、針ロック5508は、患者の身体から離れる方へ反時計回りの方向に付勢部材5506の力の下で旋回または回転し、それによって筐体5504内の垂直上昇位置に注射針および/または針キャリア5502を係止してもよい。
【0371】
VI.例示的な自動注入装置で使用される治療薬
例示的な自動注入装置は、本質的に注入による投与に適したいずれかの物質または治療薬を投与するために使用されてもよい。通常、物質または治療薬は、流体、たとえば液体の形態となるが、ただし装着型自動注入装置がそのような形態の薬剤の投与を許容するように設計されていれば、ゲルまたは半固体、スラリ、微粒子溶液など、その他の形態の薬剤もまた使用に適しているだろう。
【0372】
好適な薬剤は、抗体、サイトカイン、ワクチン、融合タンパク質、および成長因子などの生物学的薬剤である。抗体を作る方法は、先に記載されている。
【0373】
自動注入装置での薬剤として使用されることが可能なその他の生物学的薬剤の非限定例は、たとえばTNF、LT、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−15、IL−16、IL−18、IL−21、IL−23、インターフェロン、EMAP−II、GM−CSF、FGF、およびPDGFなど、ヒトサイトカインまたは成長因子に対する抗体またはこれらの対抗物質;CD2、CD3、CD4、CD8、CD25、CD28、CD30、CD40、CD45、CD69、CD80(B7.1)、CD86(B7.2)、CD90、CTLA、またはCD154(gp39またはCD40L)を含むこれらのリガンドなど、細胞表面分子に対する抗体;TNFα変換酵素(TACE)阻害剤;IL−1阻害剤(インターロイキン−1−変換酵素阻害剤、IL−1RAなど);インターロイキン11;IL−18抗体または可溶性IL−18受容体を含むIL−18対抗物質、またはIL−18結合タンパク質;非枯渇抗CD4阻害剤;抗体、可溶性受容体、または対抗リガンドを含む、共刺激経路CD80(B7.1)またはCD86(B7.2)の対抗物質;TNFαまたはIL−1などの炎症性サイトカインによるシグナル伝達に干渉する薬剤(たとえばIRAK、NIK、IKK、p38、またはMAPキナーゼ阻害剤);IL−1変換酵素(ICE)阻害剤;キナーゼ阻害剤などのT細胞シグナル伝達阻害剤;メタロプロテイナーゼ阻害剤;アンジオテンシン変換酵素阻害剤;可溶性サイトカイン受容体およびその誘導体(たとえば可溶性p55またはp75TNF受容体および誘導体p75TNFRIgG(エンブレル(TM)およびp55TNFRIgG(レネルセプト))、sIL−1RI、sIL−1RII、sIL−6R);抗炎症性サイトカイン(たとえばIL−4、IL−10、IL−11、IL−13、およびTGFベータ);リツキシマブ;IL−1 TRAP;MRA;CTLA4−Ig;IL−18 BP;抗IL−18;抗IL15;IDEC−CE9.1/SB 210396(非枯渇霊長類化抗CD4抗体;アイデック/スミスクライン、たとえばArthritis&Rheumatism(1995)Vol.38;S185参照);DAB486−IL−2および/またはDAB389−IL−2(IL−2融合タンパク質;Seragen;たとえばArthritis&Rheumatism(1993)Vol.36;1223参照);Anti−Tac(ヒト化抗IL−2Ra;Protein Design Labs/Roche);IL−4(抗炎症性サイトカイン;DNAX/Schering);IL−10(SCH52000;組換えIL−10,抗炎症性サイトカイン;DNAX/Schering);IL−10および/またはIL−4アゴニスト(たとえば、アゴニスト抗体);IL−1RA(IL−1受容体対抗物質;Synergen/アムジェン);アナキンラ(キネレット(R)/アムジェン);TNF−bp/s−TNF(可溶性TNF結合タンパク質;たとえば、Arthritis&Rheumatism(1996)39(9,補遺);S284;Amer.J.Physiol.−Heart and Circulatory Physiology(1995)268:37−42参照);R973401(ホスホジエステラーゼ型IV阻害剤;たとえば、Arthritis&Rheumatism(1996)39(9,補遺);S282参照);MK−966(COX−2阻害剤;たとえば、Arthritis&Rheumatism(1996)39(9,補遺);S81参照);イロプロスト(たとえば、Arthritis&Rheumatism(1996)39(9,補遺);S82参照);zap−70および/またはlck阻害剤(チロシンキナーゼ型zap−70またはlckの阻害剤);VEGF阻害剤および/またはVEGF−R阻害剤(血管内皮細胞成長因子または血管内皮細胞成長因子受容体の阻害剤;血管形成の阻害剤);TNF−転換酵素阻害剤;抗IL−12抗体;抗IL−18抗体;インターロイキン−11(たとえば、Arthritis&Rheumatism(1996)39(9,補遺),S296参照);インターロイキン−13(たとえば、Arthritis&Rheumatism(1996)39(9,補遺),S308参照);インターロイキン−17阻害剤(たとえば、Arthritis&Rheumatism(1996)39(9,補遺),S120参照);抗胸腺細胞グロブリン;抗CD−4抗体;CD5毒素;ICAM−1アンチセンスホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチド(ISIS2302;Isis Pharmaceuticals,Inc.);可溶性補体受容体1(TP10;T Cell Sciences,Inc.);および抗IL2R抗体を含むが、これらに限定されない。
【0374】
VII.例示的な自動注入装置で使用するためのTNFα阻害剤
本発明の一実施形態によれば、図示される自動注入装置は、関節炎およびその他の病気を治療するために使用される1回分のTNF阻害剤を送達するために使用されてもよい。一実施形態において、シリンジに収容された溶液は、pHを約5.2に調整するために必要に応じてUSP水酸化ナトリウムが添加された、注入のための、たとえば40または80mgのアダリムマブ、4.93mgの塩化ナトリウム、0.69mgの無水リン酸一ナトリウム、1.22mgの無水リン酸二ナトリウム、0.24mgのクエン酸ナトリウム、1.04mgのクエン酸一水和物、9.6mgのマンニトール、0.8mgのポリソルベート50、および水など、40または80ミリグラムの製剤(TNFα遮断剤または阻害剤)/1mLを含有する。
【0375】
本発明は、たとえばTNFα阻害剤のような液剤などの1回分の物質を患者に投与するために、使用されることが可能である。一実施形態において、本発明の自動注入装置によって送達される投与量は、ヒトTNFα抗体、またはその抗原結合部を含む。
【0376】
一実施形態において、本発明の方法および組成物に用いられるTNH阻害剤は、高親和性および低解離速度をもってヒトTNFαに結合し、高中和能を有する、単離されたヒト抗体、またはその抗原結合部を含む。好ましくは、本発明のヒト抗体は、たとえばD2E7と称され、ヒュミラまたはアダリムマブとも称される、組換え型の中和抗体など、組換え型で中和性のヒト抗hTNFα抗体である(アボット・ラボラトリーズ;D2E7 VL領域のアミノ酸配列は米国特許第6,090,382号明細書のSEQ ID NO:1に示され、D2E7 VH領域のアミノ酸配列は米国特許第6,090,382号明細書のSEQ ID NO:2に示される)。D2E7の特性は、Salfeldらによる米国特許第6,090,382号明細書、米国特許第6,258,562号明細書、および米国特許第6,509,015号明細書に記載されている。TNFα阻害剤のその他の例は、リウマチ性関節炎の治療のための臨床試験を受けた、キメラ性ヒト化マウス抗hTNFα抗体である(たとえば、Elliottら(1994)Lancet 344:1125−1127;Elliotら(1994)Lancet 344:1105−1110;およびRankinら(1995)Br.J.Rheumatol.34:334−342参照)。
【0377】
抗TNFα抗体(本明細書においてTNFα抗体とも称される)、またはその抗原結合断片は、キメラ性の、ヒト化された、およびヒト抗体を含む。本発明において使用されてもよいTNFα抗体の例は、インフリキシマブ(レミケード(R)、ジョンソンエンドジョンソン;参照により本願に組み込まれる米国特許第5,656,272号明細書に記載)、CDP571(ヒト化モノクローナル抗TNF−アルファIgG4抗体)、CDP870(ヒト化モノクローナル抗TNF−アルファ抗体断片)、抗TNF dAb(Peptech)、およびCNTO148(ゴリムマブ;Medarexおよびセントコア、国際公開第02/12502号参照)を含むが、これらに限定されない。本発明において使用されてもよい付加的なTNF抗体は、米国特許第6,593,458号明細書、米国特許第6,498,237号明細書、米国特許第6,451,983号明細書、および米国特許第6,448,380号明細書に記載されている。
【0378】
本発明の方法および組成物に用いられてもよいTNFα阻害剤のその他の例は、エタネルセプト(エンブレル、国際公開第91/03553号および国際公開第09/406476号に記載)、可溶性TNF受容体タイプI、ペグ可溶性TNF受容体タイプI(PEGs TNF−R1)、p55TNFR1gG(レネルセプト)、および組換えTNF結合タンパク質(r−TBP−I)(Serono)を含む。
【0379】
一実施形態において、例示的実施形態は、TNFαが有害となる、たとえばリウマチ性関節炎などの疾患を、装着型自動注入装置を通じてたとえばヒトTNFα抗体またはその抗原結合部などのTNFα阻害剤を用いて治療するための、改良された使用法および組成物を提供する。
【0380】
TNFα阻害剤は、TNFα活性に干渉するいずれかの薬剤(または物質)を含む。好適な実施形態において、TNFα阻害剤は、TNFα活性、特に、リウマチ性関節炎、若年性リウマチ性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病、乾癬、および乾癬性関節炎を含むがこれらに限定されない、TNFα活性が有害となる疾患に関わる有害なTNFα活性を、中和することができる。
【0381】
VIII.例示的な自動注入装置で使用するための医薬組成物
医薬組成物は、患者への送達のために本発明の自動注入装置に装填されてもよい。一実施形態において、抗体、抗体部分、ならびにその他のTNFα阻害剤は、本発明の装置を用いる患者への投与に適した医薬組成物に組み込まれることが可能である。通常、医薬組成物は、抗体、抗体部分、またはその他のTNFα阻害剤、および製薬上許容可能な担体を含む。「製薬上許容可能な担体」は、生理学的に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、被膜、抗菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含む。製薬上許容可能な担体の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールなどのうちの1つ以上、ならびにこれらの組み合わせを含む。多くの場合、組成物中に、糖類、マンニトールのような多価アルコール、ソルビトール、または塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことが、好ましい。製薬上許容可能な担体は、湿潤または乳化剤、防腐剤、または緩衝剤など、少量の補助物質をさらに含んでもよく、これらは抗体、抗体部分、またはその他のTNFα阻害剤の保管寿命または有効性を強化する。
【0382】
本発明の方法および組成物で使用するための組成物は、たとえば溶液(たとえば注入可能または滴下可能な溶液)、分散液または懸濁液を含む、本発明の装置を通じての投与に応じた様々な形態であってもよい。好適な実施形態において、抗体またはその他のTNFα阻害剤は、本発明の装置を用いて皮下注射によって投与される。一実施形態において、患者は、本発明の装置を用いて、TNFα抗体またはその抗原結合部を含むがこれらに限定されないTNFα阻害剤を、自身に投与する。
【0383】
治療用組成物は通常、製造および保管条件の下で、滅菌され、安定していなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、分散液、リポソーム、または高薬物濃度に適したその他の指定された構造として、処方されることが可能である。滅菌注入可能溶液は、必要に応じて、上記に挙げられた含有物の1つまたは組み合わせを含む必要量の適切な溶媒中に活性化合物(すなわち、抗体、抗体部分、またはその他のTNFα阻害剤)を組み込み、その後濾過滅菌することによって、調製されることが可能である。一般的に、分散液は、塩基性分散媒および上記に挙げられたもののうち必要とされるその他の含有物を含む滅菌賦形剤に活性化合物を組み込むことによって、調製される。滅菌注入可能溶液の調製に無菌粉体を使用する場合には、好適な調製方法は、先に滅菌濾過されたその溶液から活性含有物およびいずれか付加的な所望の含有物の粉体を生成する、真空乾燥および凍結乾燥である。溶液の適切な流動性は、たとえば、レシチンなどの被膜の使用によって、分散液の場合に必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持されることが可能である。注入可能な組成物の長期間の吸収は、たとえばモノステアレート塩およびゼラチンなど、吸収を遅れさせる物質を組成物中に含ませることによって、もたらされることが可能である。
【0384】
一実施形態において、例示的実施形態は、有効なTNFα阻害剤および製薬上許容可能な担体を含む、たとえば自動注入器ペンなどの装着型自動注入装置を提供する。このように、本発明は、TNFα阻害剤を含む、予備充填可能および/または予備充填済みの自動注入装置を提供する。
【0385】
一実施形態において、本発明の方法で使用するための抗体または抗体部分は、PCT国際出願第PCT/IB03/04502号明細書および米国特許出願公開第2004/0033228号明細書に記載されるような、医薬製剤に組み込まれる。この製剤は、濃度50mg/mlの抗体D2E7(アダリムマブ)を含み、装着型自動注入装置は皮下注射のために40mgの抗体を収容する。一実施形態において、本発明の自動注入装置(またはより具体的には装置のシリンジ)は、以下の処方を有するアダリムマブの製剤を含む:アダリムマブ、塩化ナトリウム、無水リン酸一ナトリウム、無水リン酸二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸一水和物、マンニトール、ポリソルベート80、および水、たとえば注入用の水。別の実施形態において、自動注入装置は、40mgのアダリムマブ、4.93mgの塩化ナトリウム、0.69mgの無水リン酸一ナトリウム、1.22mgの無水リン酸二ナトリウム、0.24mgのクエン酸ナトリウム、1.04mgのクエン酸一水和物、9.6mgのマンニトール、0.8mgのポリソルベート80、および水、たとえば注入用の水を含む、一定量のアダリムマブを含む。一実施形態において、pHを調整するために、必要に応じて水酸化ナトリウムが添加される。
【0386】
自動注入装置内のTNFα阻害剤の投与量は、TNFα阻害剤が治療のために使用される疾患に応じて異なってもよい。一実施形態において、本発明は、約20mgのアダリムマブ;40mgのアダリムマブ;80mgのアダリムマブ;および160mgのアダリムマブの、1回分のアダリムマブを含む装着型自動注入装置を含む。投与量範囲を含む、本明細書に記載されるすべての範囲について、たとえば36mgのアダリムマブ、48mgのアダリムマブなど、引用値の中間のすべての数値が本発明に含まれることに、留意すべきである。加えて、たとえば40から80mgのアダリムマブなど、前記数値を用いて引用された範囲もまた含まれる。本明細書において引用される数値は、本発明の範囲を限定するように意図されるものではない。
【0387】
本発明で使用されるTNFα抗体および阻害剤はまた、被覆粒子を形成するためにポリマ担体中に封入されたタンパク質結晶の組み合わせを含む、タンパク質結晶製剤の形態で投与されてもよい。タンパク質結晶製剤の被覆粒子は、球状形態を有し、直径が500マイクロメートルまでの微小球体であってもよく、あるいはこれらは何らかの別の形態を有して微粒子であってもよい。高濃度のタンパク質結晶は、本発明の抗体が皮下的に送達されることを可能にする。一実施形態において、本発明のTNFα抗体は、タンパク質送達システムを通じて送達され、ここでタンパク質結晶製剤または組成物はのうちの1つ以上は、TNFα関連疾患を罹患した患者に投与される。抗体結晶全体または抗体断片結晶の安定した製剤を調製する組成物および方法は、参照により本願に組み込まれる、国際公開第02/072636号にも記載されている。一実施形態において、PCT国際出願第PCT/IB03/04502号明細書および米国特許出願公開第2004/0033228号明細書に記載された結晶化抗体断片を含む製剤は、本発明の方法を用いてリウマチ性関節炎を治療するために使用される。
【0388】
補助的な活性化合物が組成物に組み込まれることも、可能である。特定の実施形態において、本発明の方法で使用するための抗体または抗体部分は、リウマチ性関節炎阻害剤または対抗物質を含む、1つ以上の付加的な治療薬とともに、併用処方および/または併用投与される。たとえば、抗hTNFα抗体または抗体部分は、TNFα関連疾患に関わるその他の標的を結合する1つ以上の追加抗体(たとえば、その他のサイトカインを結合するかまたは細胞表面分子を結合する抗体)、1つ以上のサイトカイン、可溶性TNFα受容体(たとえばPCT国際公開第94/06476号参照)、および/またはhTNFα生成または活性を阻害する1つ以上の化学物質(PCT国際公開第93/19751号に記載されるシクロヘキサンイリデン誘導体など)、またはこれらのいずれかの組み合わせとともに、併用処方および/または併用投与されてもよい。さらに、本発明の1つ以上の抗体は、先述の治療薬のうちの2つ以上と組み合わせて使用されてもよい。このような併用療法は、有利なことにより少ない投与量の投与治療薬を利用してもよく、こうして様々な単剤療法に関わる、可能性のある副作用、合併症、または患者による低レベル反応を回避する。TNFα抗体または抗体部分と組み合わせて使用されてもよい付加的な薬剤は、参照によりその全体が明らかに本願に組み込まれる、米国特許出願第11/800531号明細書に記載されている。
【0389】
IX.参考文献
本明細書全体を通じて引用された、特許および特許出願を含む、すべての参考文献の内容は、参照によりその全体が本願に組み込まれる。これら参考文献の適切な構成要素および方法は、本発明およびその実施形態のために選択されてもよい。さらにまた、背景技術の章で特定された構成要素および方法は、本開示に不可欠であり、本発明の範囲内で本開示のいずれかの箇所に記載された構成要素および方法と組み合わせて使用されるか、またはこれに代えて使用されることが、可能である。
【0390】
X.同等物
例示的実施形態の記載において、明確さのために特定の専門用語が使用されている。説明目的のため、各々の特定用語は、類似の目的を達成するために類似の方式で動作するすべての技術的および機能的同等物を、少なくとも含むように意図されている。加えて、特定の例示的実施形態が複数のシステム要素または方法ステップを含むいくつかの例において、これらの要素またはステップは、単一の要素またはステップに置き換えられてもよい。同様に、単一の要素またはステップは、同じ目的に役立つ複数の要素またはステップに置き換えられてもよい。さらに、様々な特性のパラメータが例示的実施形態のために本明細書において指定されている場合、これらのパラメータは、別途指定のない限り、1/20、1/10、1/5、1/3、1/2などだけ、またはその四捨五入された近似値に、切り上げまたは切り捨てられてもよい。また、例示的実施形態はその特定の実施形態を参照して提示および記載されてきたが、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、その形態および詳細において様々な代替例および変形例がなされてもよいことを、理解するだろう。さらにまた、その他の態様、機能、および利点もまた本発明の範囲に含まれる。
【0391】
例示的なフローチャートは、説明目的のために本明細書に提供され、これらは方法の非限定例である。当業者は、例示的な方法が、例示的なフローチャートに示されるよりも多いかまたは少ないステップを含んでもよいこと、ならびに例示的なフローチャートステップが図示されるのとは異なる順序で実行されてもよいことを、認識するだろう。