(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189916
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】斜めの端面を有する光ファイバを含む照明顕微手術器具
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20170821BHJP
A61B 90/30 20160101ALI20170821BHJP
【FI】
A61F9/007 200C
A61F9/007 130F
A61F9/007 200Z
A61B90/30
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-241183(P2015-241183)
(22)【出願日】2015年12月10日
(62)【分割の表示】特願2014-509335(P2014-509335)の分割
【原出願日】2012年4月30日
(65)【公開番号】特開2016-73685(P2016-73685A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2016年1月8日
(31)【優先権主張番号】61/483,224
(32)【優先日】2011年5月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508185074
【氏名又は名称】アルコン リサーチ, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジェイ.ヤドロウスキ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジェイムズ パパック
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ ラッサラス
【審査官】
伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0221991(US,A1)
【文献】
特開2002−245821(JP,A)
【文献】
特開2007−260192(JP,A)
【文献】
特表2011−509740(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第00651981(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61B 90/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内の切開創を通して眼の硝子体領域内に挿入されるように大きさが定められ且つ形成された遠位先端を有する顕微手術器具と、
前記顕微手術器具に結合された、光のビームを前記眼の手術部位に送達するための光ファイバであって、光源からの光ビームを受容するための近位端部と、前記光ビームを発するための、前記顕微手術器具の前記遠位先端に近接した遠位端部とを含み、該遠位端部が、当該光ファイバの光軸に対して斜角で前記顕微手術器具の遠位先端に向かって方向付けられた斜めの端面を含む、光ファイバと
を具備し、
前記光ファイバの屈折率は、前記斜めの端面に対する前記光ビームの伝播角度が前記光ファイバ内よりも前記硝子体領域内において大きくなるように、前記硝子体領域の屈折率よりも大きく、このことによって、発せられた前記光ビームの角度分布が前記光ファイバの光軸及び前記顕微手術器具から離れる、照明顕微手術器具。
【請求項2】
前記斜めの端面が前記光ファイバの光軸と交差する、請求項1に記載の照明顕微手術器具。
【請求項3】
前記斜めの端面が平面を含む、請求項1に記載の照明顕微手術器具。
【請求項4】
前記斜めの端面が凸面を含む、請求項1に記載の照明顕微手術器具。
【請求項5】
前記斜めの端面が凹面を含む、請求項1に記載の照明顕微手術器具。
【請求項6】
前記光ファイバが100ミクロン未満の外径を有する、請求項1に記載の照明顕微手術器具。
【請求項7】
前記顕微手術器具が、硝子体茎切除プローブ、注入カニューレ及び吸引プローブから成る群から選択される、請求項1に記載の照明顕微手術器具。
【請求項8】
光源と、
眼内の切開創を通して眼の硝子体領域内に挿入されるように大きさが定められ且つ形成された遠位先端を有する顕微手術器具と、
前記顕微手術器具に結合された、光のビームを前記眼の手術部位に送達するための光ファイバであって、前記光源からの光ビームを受容するための近位端部と、前記光ビームを発するための、前記顕微手術器具の前記遠位先端に近接した遠位端部とを含み、該遠位端部が、当該光ファイバの光軸に対して斜角で前記顕微手術器具の遠位先端に向かって方向付けられた斜めの端面を含む、光ファイバと
を具備し、
前記光ファイバの屈折率は、前記斜めの端面に対する前記光ビームの伝播角度が前記光ファイバ内よりも前記硝子体領域内において大きくなるように、前記硝子体領域の屈折率よりも大きく、このことによって、発せられた前記光ビームの角度分布が前記光ファイバの光軸及び前記顕微手術器具から離れる、顕微手術システム。
【請求項9】
前記光源が、ランプに基づく光源、発光ダイオード(LED)光源又はレーザ光源のうちの少なくとも一つを含む、請求項8に記載の顕微手術システム。
【請求項10】
前記顕微手術器具に接続されたサービス源を更に含む、請求項8に記載の顕微手術システム。
【請求項11】
前記サービス源が、圧力源、真空源又は流体源のうちの少なくとも一つを含む、請求項10に記載の顕微手術システム。
【請求項12】
前記光ファイバが第1光ファイバであり、当該照明顕微手術器具が少なくとも一つの追加の光ファイバを更に具備し、追加の各光ファイバの遠位端部が、それぞれの光ファイバの光軸に対して斜角で配置された斜めの端面を含む、請求項1に記載の照明顕微手術器具。
【請求項13】
前記第1光ファイバ及び追加の光ファイバが前記顕微手術器具の遠位先端の周りに配置される、請求項12に記載の照明顕微手術器具。
【請求項14】
前記光ファイバが中央の光ファイバの周りの光ファイバの束のうちの一つである、請求項1に記載の照明顕微手術器具。
【請求項15】
前記光ファイバの遠位端部がテーパ状である、請求項1に記載の照明顕微手術器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2011年5月6日に出願された米国仮特許出願番号第61/483224号に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
硝子体網膜処置と呼ばれる様々な手術処置が眼の後部において一般的に行われている。硝子体網膜処置は後部の多くの深刻な疾患を治療するのに適する。硝子体網膜処置は、加齢黄斑変性症(AMD)、糖尿病性網膜症及び糖尿病性硝子体出血、黄斑円孔、網膜剥離、網膜上膜、CMV網膜炎、及び他の多くの眼科疾患のような疾患を治療する。
【0003】
外科医は、後部の鮮明な画像を提供するように設計された顕微鏡及び専用レンズを用いて、硝子体網膜処置を行う。ほんの数ミリメートルの長さのいくつかの微小な切開創が毛様体扁平部において強膜上に作られる。外科医は、眼の内側を照明すべく切開創を通して光ファイバ光源のような顕微手術器具を挿入し、手術中に眼の形状を維持すべく灌流ラインを挿入し、且つ硝子体を切断して除去するための器具を挿入する。複数の器具を同時に使用するとき、別個の切開創には各顕微手術器具が提供されうる。
【0004】
斯かる手術処置の間、眼の内側を適切に照明することは重要である。典型的には、細い光ファイバを眼内に挿入して照明を提供する。ハロゲンタングステンランプ又は高圧アークランプ(メタルハライド、キセノン)のような光源を使用して、光ファイバによって眼内に運ばれる光を生成することできる。光は、いくつかの光学要素(典型的にはレンズ、ミラー及び減衰器)を通過して、光を眼内に運ぶ光ファイバに送られる。
【0005】
大抵の手術処置と同様に、硝子体網膜処置を行うのに必要とされる切開創の数及びサイズを最小にする利点が存在する。切開創は、典型的には、眼の内部に挿入される顕微手術器具のサイズに適応すべく十分大きく作られる。切開創のサイズを最小にする取り組みには、概して、顕微手術器具のサイズを減少させることが含まれる。用いられる顕微手術器具のサイズに応じて、切開創は、結果として生じる傷口を実質的に自己回復させるべく十分小さくされることができ、このことによって、縫合のような切開創を閉じるための追加の処置を用いる必要がなくなる。切開創の数を減少させることは、様々な顕微手術器具を統合することによって達成されうる。例えば、光ファイバは顕微手術器具の作業端部に取り込まれうる。このことは、別個の照明用切開創の必要性をなくすことができ、強膜における共通の開口を通して、顕微手術器具と共に光ビームを標的部位上に方向付けるという利点を与える。残念なことに、照明光ファイバを顕微手術器具に統合する少なくともいくつかの従来の試みは、照明効率の低下をもたらし、然もなければ、光ファイバから発せられた光の分布に負の影響を与えてきた。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、模範的な統合された光ファイバ照明器を用いる模範的な顕微手術器具の概略的な実例であり、眼の内部領域を照明することが示される。
【
図2】
図2は、顕微手術器具及び統合された光ファイバ照明器の概略部分断面図である。
【
図3】
図3は、
図2に示された顕微手術器具及び統合された光ファイバ照明器の遠位端部の概略部分断面図である。
【
図4】
図4は、斜めの端面を含むように構成された光ファイバ照明器の遠位端部の概略部分断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示される光ファイバ照明器の概略平面図である。
【
図6】
図6は、実質的に平面的な斜めの端面を用いる、
図4に示された光ファイバ照明器の概略部分断面図である。
【
図7】
図7は、概して凸状の斜めの端面を用いる、
図4に示される光ファイバ照明器の部分断面図である。
【
図8】
図8は、概して凸状の斜めの端面を用いる、
図4に示される光ファイバ照明器の部分断面図である。
【
図9】
図9は、顕微手術器具から概して離れて面するように構成された斜めの端面を有する光ファイバ照明器の遠位端部の概略部分断面図である。
【
図10】
図10は、複数の光ファイバを用いて交互に構成された光ファイバ照明器の概略端面図である。
【
図12】
図12は、複数の光ファイバを用いて交互に構成された光ファイバ照明器の概略端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、後の論考及び図面を参照して、開示されるシステム及び方法への例証的なアプローチが詳細に記載される。図面がいくつかの可能なアプローチを表すが、図面は必ずしも寸法が合わされてなく、所定の特徴が、本開示をより良く示して説明すべく、誇張され、除去され、又は部分的に断面にされうる。さらに、本明細書において説明される記載は、網羅的であることが意図されてなく、あるいはその反対に、図に示され且つ以下の詳細な説明に開示されたた正確な形状及び形態に請求項を限定し又は制限することも意図されていない。
【0008】
図1は眼20の生体構造を示し、眼20は、角膜22、虹彩24、瞳孔26、水晶体28、水晶体嚢30、小帯32、毛様体34、強膜36、硝子体領域38、網膜40、黄斑42及び視神経44を含む。角膜22は、眼20の表面上の透明なドーム形状の構造体であり、窓として作用して光を眼内に通す。眼の着色部分に相当する虹彩24は、瞳孔26を囲む筋肉であり、弛緩し且つ収縮して、眼20に入る光の量を制御する。瞳孔26は虹彩24の円形の中心開口である。水晶体28は、眼20の内側の構造体であり、網膜40上に光の焦点を合わせることを補助する。水晶体嚢30は、水晶体30を包む弾性の袋であり、眼が種々の距離における物体上に焦点を合わせるとき、水晶体28の形状を制御することを補助する。小帯32は、眼20の内側に水晶体嚢30を取り付ける細長い帯であり、水晶体28を所定位置に保持する。毛様体34は、水晶体28に取り付けられた筋肉範囲であり、焦点を合わせるために収縮し且つ弛緩して水晶体のサイズを制御する。強膜36は、眼20の強靱な最外層であり、眼の形状を維持する。硝子体領域38は、眼20の背面に向かって配設されたゲルが充填された大きな区域であり、眼の曲率を維持することを補助する。網膜40は、眼20の背面における感光性の神経層であり、光を受容し、その光を信号に変換して脳に送る。黄斑42は、眼20の背面における範囲であり、眺められた画像において細かい詳細部を検出するための受容体を含む。視神経44は眼20から脳へ信号を送る。
【0009】
図1を続けて参照すると、様々な顕微手術器具46は、硝子体網膜処置のような眼科手術処置を行うとき、強膜36を通して硝子体領域38内に挿入されうる。本明細書の意図について、顕微手術器具46は、切開創を通した挿入のためのサイズで作られた任意の工具を意味し、眼組織の物理的な操作又は電磁的な操作を行うようになっている。これらは、例えば硝子体茎切除プローブ48、注入カニューレ50及び吸引プローブ51のような様々な外科器具を含むことができる。顕微手術器具46は、眼20の内部を照明するための統合された光ファイバ照明器52を含むことができる。
【0010】
図2を参照すると、光ファイバ照明器48は、光を生成するための照明器54に光学的に連結され、硝子体網膜手術のような様々な内部光学処置(intra-optical procedure)の間、眼20の硝子体領域38を照明するのに使用されうる。照明器54によって生成された光は光ファイバ56を通して眼の内部領域に送られうる。光ファイバ56は、光ファイバ56の近位端部60を照明器54に光学的に連結するための光ファイバコネクタ58を含んでもよい。光ファイバコネクタ58は、対応して構成された照明器光コネクタに解放可能に連結するように構成され、照明器光コネクタは照明器54に動作可能に関連付けられている。
【0011】
図2を続けて参照すると、光ファイバ56は任意の様々な形態を有することができる。
図2に示される模範的な形態では、光ファイバ56は光透過性の光ファイバコア62を含み、光ファイバコア62は、コア62に対して低い屈折率を有するクラッド材64によって囲まれる。光ファイバコア62は、限定されるものではないが、ガラス及びプラスチックを含む様々な材料から作られうる。光ファイバ56は、特定の用途の必要条件に応じて、追加の層を含んでもよい。例えば、光ファイバ56は、ケーブルの内部部品を損傷から保護するために、クラッド材64を覆う緩衝材と、外側保護ジャケットとを含んでもよい。光ファイバ56の遠位端部66は、照明器54によって生成された光70を発するための開口68を含むことができる。
【0012】
図2を続けて参照すると、照明器54は、特定の光束及び色度で光を発生させるために光源72を用いることができる。光は、用いられる光源のタイプに応じて、比較的広い範囲の波長又は比較的狭い範囲の波長に亘って発せられうる。光源72は、技術を生み出す様々な光を用いることができ、これら光は、限定されるものではないが、ハロゲンタングステンランプ及び高圧アークランプ(メタルハライド及びキセノン)のようなランプベースの光源を含む。発光ダイオード(LED)が光源72として用いられてもよい。レーザが光源72として用いられてもよい。レーザは、概して、LED及びランプベースの光源のような他の光源と比べて、比較的高度のコヒーレンス性を有する光を生成することができる。高コヒーレンス性によって、発せられた光が、光ファイバ56へのより効率的な伝送のために、より小さなスポットサイズに集束されることが可能となる。発せられた光を小さなスポットサイズに集束する能力によって、ナノスケールの光学部品(ファイバ)のようなより小さな光ファイバの使用が可能となり、このことは、次いで、眼20内に顕微手術器具46を挿入するのに必要とされる切開創のサイズを制限しうる。ナノスケールの光ファイバは、概して、100ミクロン未満の直径(又は他の最大断面寸法)を有する。
【0013】
ナノスケールの光ファイバの小さなサイズのおかげで、硝子体網膜処置の間、手術器具を挿入するために必要な外科的な切開創の数を減少すべく、光ファイバ照明器52を顕微手術器具46のような別の手術器具と統合することができる。
図2を続けて参照すると、顕微手術器具46は、例えば導管74を介して、サービス源(service source)72に適切に連結されうる。サービス源72は、顕微手術器具46の操作に関連して使用される様々なサービスを提供するように構成されうる。例えば、サービス源72は、顕微手術器具46を操作するために、圧力及び/又は真空を提供することができる。真空は、眼20の内部から流体及び物質を吸引するために提供されてもよい。サービス源72は、手術処置と関連して使用される流体の源を提供してもよい。
【0014】
顕微手術器具46は、行われる手術処置に応じて、様々な形態を有することができる。例えば、所定の眼科手術処置は、眼20の後部を満たすゼリー状の透明な物質である硝子体領域38の切断及び/又は除去を必要とすることがある。硝子体茎切除プローブ48は硝子体領域を切除して除去するのに使用されうる。一つの模範的な形態では、硝子体プローブ48は、中空の外側切断部材と、中空の外側切断部材と同軸に構成され且つ中空の外側切断部材内に移動可能に配置された中空の内側切断部材と、硝子体プローブ48の遠位端部76の近くの外側切断部材を通って径方向に延在するポートとを含むことができる。硝子体領域38は開いたポート内に吸引され、内側部材はポートを閉じて硝子体物質を断つように作動され、その後、硝子体物質は導管74を通して吸引されうる。中空の内側部材を作動させるための機構はハウジング78内に封入されることができ、ハウジング78は、顕微手術器具46を掴むためのハンドルとしても機能することもできる。顕微手術器具46は、眼20の内部に流体を送達するための注入カニューレ50として構成されてもよい。流体は導管74を通して注入カニューレ50に送達されうる。導管74は、例えば顕微手術器具46が吸引プローブ51として構成されるとき、顕微手術器具46を真空源に連結するのに使用されてもよい。
【0015】
図3を参照すると、所定の用途では、眼20内の対応する広い手術野の照明を可能とすべく、光ファイバ照明器52から発せられた光ビーム70が比較的広い角度分布を有することが概して望ましい。しかしながら、光ファイバから発せられた光ビーム70の一部は、顕微手術器具46の遠位端部76に対する光ファイバ56の遠位端部66の位置決めに応じて、顕微手術器具46の隣接外面80に吸収され又は隣接外面80から反射されうる。しかしながら、光ファイバ56の遠位端部66を顕微手術器具46の端部76に近接して位置付けることが常に望ましいわけではない。しかしながら、光ファイバ56の遠位端部66を顕微手術器具46の遠位端部76から距離「D」のところに位置付けることは、特に、発せられた光のある程度の部分が顕微手術器具46の外面80によって吸収される場合、光ファイバ照明器52の照明効率に悪影響を及ぼしうる。
【0016】
図4及び
図5を参照すると、光ファイバ56から発せられた光ビーム70の伝播を顕微手術器具46の遠位先端が妨げるのを回避することを補助すべく、遠位端部66には、光ファイバ56の光軸84に対して斜角で構成された斜めの端面82が設けられうる。本明細書の意図について、「斜めの端面」は、平らな斜面を厳密に意味する必要はなく、むしろ任意の形態を含むことができ、任意の形態では、最遠位端面が、表面法線すなわち表面に垂直な軸線が端面の大部分に渡って光軸84の一方の側に逸らされるように構成され、最遠位端面は光軸に対して非対称にされる。斜めの端面82が所定の方向に向かって「向く(point)」又は「方向付けられる(oriented)」と言われるとき、これは、斜めの端面82が非対称に逸らされている光軸84の側について言及している。光軸84に対して端面82を傾けることによって、概して、光ビーム70は、入射点において、表面法線に対する斜めの入射角度で斜めの端面82に近付くようになる。異なる二つの屈折率の間の移行部によって、光は、光ファイバ56と眼20の硝子体領域38との間の界面を移行するとき、屈折するようになり、このことによって、光ビーム70の伝播路86が光ファイバ56の光軸84から離れるように偏向される。スネルの法則を使用して屈折の量を近似することができ、スネルの法則は、
n1×Sin(θ
1)=n2×Sin(θ
2)
を与え、ここで、
n1は光ファイバコア62の屈折率であり、
n2は硝子体領域38の屈折率であり、
θ
1は光ファイバコア62内の光ビーム70の伝播角度であり、
θ
2は硝子体領域38内の光ビーム70の伝播角度であり、
ここで、θ
1及びθ
2は両方とも斜めの端面82の表面法線に対して測定される。
【0017】
硝子体領域の屈折率が光ファイバコアの屈折率よりも低いので、光ビーム70は斜めの端面82の表面法線から離れる(すなわちθ
2>θ
1)ように屈折する傾向があるだろう。光線が光ファイバ56を通って進むときの光ビーム70の光線の角度分布は、ひいては、光ファイバ56の光軸84から離れるように優先的にシフトされる、発せられる光ビーム70における角度分布を生成するだろう。
【0018】
斜めの端面82が一様な直径の光ファイバ56上に示されるが、斜めの端面82は、テーパー状の遠位先端を有する光ファイバ上に使用されてもよく、テーパー状の遠位先端は、光ファイバが遠位先端に向かって延在するとき、通路に沿ってより小さな幅に狭くなり、その通路は湾曲部分又は直線部分を含んでもよい。テーパー状の遠位先端の特定の実施形態では、クラッドは除去されてもよい。テーパー状の遠位端部はより広い角度分布を提供し、広い角度分布が、手術器具の先端の周りの特定の方向に選択的に向けられた光ファイバからより広い照明ビームを生成すべく、斜めの端面82によって生成される偏向と組み合わされることは有利である。
【0019】
顕微手術器具46に対する光ビーム70の偏向は、顕微手術器具46に対する斜めの端面82の方向付けに少なくとも部分的に依存する。例えば、
図4に示されるように、斜めの端面82を顕微手術器具46に向かって向くように方向付けることによって、光ビームの伝播路86は顕微手術器具46から離れるようにシフトされる傾向がある。一方、
図9に示されるように、斜めの端面82を顕微手術器具46から離れて向くように方向付けることによって、光ビーム70の伝播路86は顕微手術器具46に向かってシフトされる傾向がある。
図9を参照すると、示される光ファイバ照明器52が、顕微手術器具46から概して離れて面するように方向付けられた斜めの端面82を有する。この構成によって、概して、光ビーム70の伝播路86が顕微手術器具46に向かってシフトされるようになる。このため、この構成は、顕微手術器具46から反射される光の量を減少させるよりもむしろ増大させる。光ファイバから発せられる光のより広い分散を、顕微手術器具46の外面80の反射性を高めることによって得ることができる。光ファイバ56から発せられた光は、眼20の内部領域内の光のより広範な分布を提供すべく、顕微手術器具46の表面80から反射されうる。
【0020】
図6〜
図8は、端面82に概して平行な眺め(perspective)に沿って、斜めの端面82(
図4参照)を横切る部分断面図である。斜めの端面82は様々な表面輪郭を含むことができる。例えば、
図6は、平面を含むように構成された斜めの端面82を示す。代替的に、斜めの端面82は、
図7に示されるような概して凸状の表面輪郭を含むように構成されてもよい。斜めの端面82は、
図8に示されるような概して凹状の輪郭を有してもよい。これらは、単に、斜めの端面82で用いられうる様々な表面輪郭のいくつかの例にすぎない。実際、特定の用途の設計及び性能の必要条件に適応すべく、他の輪郭も用いることができる。
【0021】
図10〜
図13を参照すると、光ファイバ照明器52は、顕微手術器具46の遠位先端を囲む複数の束ねられた光ファイバ56を含むように構成されてもよい。
図10は、互いに束ねられた4つの光ファイバ56を含む模範的な構成を示す。各光ファイバは、発せられる光の伝播路を選択的に制御するために、斜めの端面82を含むことができる。
図10及び
図11に示された模範的な構成では、ケーブル束の反対側の角(opposite corner)に位置付けられた光ファイバ56の斜めの端面82は、概して互いに面するように方向付けられて示される。この特定の構成は、光ビーム70の伝播路86をケーブル束の中心軸線88から外側にシフトさせることによって、発せられる光の分散を増大する傾向がある。
【0022】
図12及び
図13は、7つの光ファイバ56を含む模範的な光ファイバ束を示す。示される光ファイバは、中央光ファイバの周りに位置付けられた6つの光ファイバを有する概して六角形パターンで構成される。外側光ファイバ56の各々は、発せられる光の伝播路を選択的に制御するために、斜めの端面82を含むことができる。この模範的な形態における単一の中央光ファイバ56は斜めの端面を含まない。外側光ファイバ56の斜めの端面82は、光ファイバ束の中央に向かって概して径方向内側に向くように方向付けられうる。この特定の構成は、光ビーム70の伝播路86を光ファイバ束の中央から外側にシフトさせることによって、外側光ファイバから発せられる光の分散を増大する傾向がある。
【0023】
束全体の遠位端部は顕微手術器具46の遠位先端に近接して設置される。顕微手術器具46の遠位先端からより遠い中央光ファイバケーブル及び/又は光ファイバは、中央光ファイバから発せられる光の伝播路が光ファイバの光軸と一致する傾向があるように、平らな表面を有することができる。斯かる実施形態では、中央光ファイバ56から発せられた光は、周囲の外側光ファイバ56から発せられた光ビーム間に存在しうる光の空所を満たし、一方、それでもなお、最も近い光ファイバ56の方向付けによって顕微手術器具46の遠位先端からの反射光の全体的な量を減少させることを可能とするだろう。例えば、顕微手術器具46の遠位先端が反射性を有する場合、斜めの端面82の描かれた方向付けによって、
図9に予め示されたような反射による追加の照明が提供されることは有利である。代替的に、顕微手術器具46の反射性を有しない先端の場合、斜めの端面82は、顕微手術器具46の遠位先端に向かって向くように逆にされ、
図4に示されるように、顕微手術器具46の遠位先端から離れるように照明を優先的にシフトさせる。更に別の代替的に実施形態では、光ファイバ56は、
図10〜
図13に示される形態と同様の形態で設置されうるが、顕微手術器具56の周りに複数の光ファイバ56から照明を生成するように、顕微手術器具56の遠位先端の周りに中心が合わされてもよい。
【0024】
本明細書において記載された模範的な手術照明システムが広範な用途を有することが理解されるだろう。上述の形態は、方法及び装置の原理並びにいくつかの実用的な用途を示すべく、選択されて記載された。前述の記載によって、当業者は、様々な形態において、考えられる特定の使用に適した様々な修正と共に、方法及び装置を利用することができる。特許法の規定に従って、開示された手術照明システムの原理及び動作モードが模範的な形態において説明されて示されてきた。
【0025】
本方法及び本装置の範囲は以下の請求項によって定義されることが意図されている。しかしながら、開示された手術照明システムが、その範囲から逸脱することなく、具体的に説明されて示されたものとは違って実施されうることが理解されなければならない。本明細書に記載された形態の様々な代替形態が、以下の請求項の範囲に定義されるような範囲から逸脱することなく、請求項を実施するのに用いられうることが当業者によって理解されるべきである。開示された手術照明システムの範囲は、上記の記載を参照することなく決定されるべきであるが、代わりに、斯かる請求項が権利化される全範囲の均等範囲と共に、添付の請求項を参照して決定されるべきである。本明細書において論じられた技術分野において将来的に進歩が生じ、開示されたシステム及び方法が斯かる将来の例に取り込まれることが予期され且つ意図されている。さらに、請求項中に使用される全ての用語は、本明細書において明確な反対の指示がなされない限り、これらの最も広範且つ妥当な構成と、当業者によって理解されるようなこれらの通常の意味とが与えられることが意図されている。特に「一つの」、「その」、「前記」等のような単数の冠詞の使用は、請求項が明確な反対の限定について言及しない限り、一つ以上の指示された要素について言及しているように読まれるべきである。以下の請求項は、これら請求項の範囲及びこれらによって保護対象とされるこれらの均等物の範囲内で、デバイスの範囲並びに方法及び装置の範囲を定義することが意図されている。要するに、デバイスが修正及び変形可能であり以下の請求項によってのみ限定されることが理解されるべきである。