【文献】
WALD et al. ,Relationships between Peak Ground Acceleration, Peak Ground Velocity, and Modified Mercalli Intensity in California,Earthquake Spectra,1999年 8月,Vol. 15, No.3,P.557-564
【文献】
MM震度階(改正メルカリ震度階)と気象庁震度階級はどのように対応するのですか?,気象庁 よくある質問集 震度・マグニチュード、その他,2011年,URL,http://web.archive.org/web/20111020001051/http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq27.html
【文献】
SHABESTARI et al.,Relations of USGS MM Intensity Versus Earthquake Ground Motion Indices Using the Three Recent California Earthquakes,土木学会第55回年次学術講演会講演概要集,2000年 9月,I-B327,P.654,655
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
地震動を検出するセンサが地震動の検出を始めると、前記地震動の上下方向の加速度成分を示す上下加速度情報を、前記センサから順次取得する上下加速度取得部(10、S10)と、
前記上下加速度取得部が取得した前記上下加速度情報から、前記地震動の上下方向の速度成分を順次算出する上下速度算出部(12、S12)と、
前記上下速度算出部で順次算出された前記速度成分の絶対値のうち、最大の絶対値を最大速度値(Vumax)とし、下記の予測式を用いて、地震の揺れの大きさを改正メルカリ震度階の指標値で示した予測値(MMIvp)を算出する予測値算出部(16、S12)と
調整係数(γv)を調整する調整係数設定部(22)と
を備え、
前記予測式は、
MMIvp=αvlog10(Vumax)+βv+γv
であり、但し、αv及びβvは、回帰分析により予め算出された回帰係数であり、
前記調整係数設定部は、ユーザからの操作に応じて、調整係数(γv)を調整可能であることを特徴とする地震予測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、いずれの提案も、地震動指標としてMMIを用いてはいるものの、地震の揺れの大きさを予測するには至っていない。
また、盛土等の土構造物や木造建築物等の比較的固有周期が長い構造物に対する地震による被害の大きさは、地震動の速度との相関性が高いと考えられている。
【0011】
そのため、警戒が必要な大きさの地震の発生を早期に予測するとしても、盛土等の土構造物を多く用いる鉄道などでは、地震動の速度を考慮した予測が行われることが望まれるが、このようなことが可能か明らかではない。
【0012】
そこで、本発明の第1局面の地震予測装置では、地震動指標としてMMIを用い、地震動の初動部分において、地震動の速度を考慮し、地震の揺れの大きさを早期に予測する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1局面の地震予測装置は、上下加速度取得部(10、S10)と、上下速度算出部(12、S14)と、予測値算出部(16、S14)とを備えるものである。
上下加速度取得部(10、S10)は、地震動を検出するセンサが地震動の検出を始めると、地震動の上下方向の加速度成分を示す上下加速度情報を、センサから順次取得するものである。
【0014】
上下速度算出部(12、S14)は、上下加速度取得部が取得した上下加速度情報から、地震動の上下方向の速度成分を順次算出するものである。
予測値算出部(16、S14)は、上下速度算出部で順次算出された速度成分の絶対値のうち、最大の絶対値を最大速度値(Vumax)とし、下記の予測式を用いて、地震の揺れの大きさを改正メルカリ震度階の指標値で示した予測値(MMIvp)を算出するものである。
【0015】
予測式は、MMIvp=αvlog
10(Vumax)+βvである。
但し、αv及びβvは、過去に発生した複数の地震について、各地震の地震動が示す上下方向の速度成分の絶対値のうち、最大の絶対値を説明変数(X)とし、各地震の揺れの大きさを改正メルカリ震動階で示した指標値を従属変数(Y)として、回帰分析により予め算出された回帰係数である。
【0016】
例えば、過去に発生した地震を記録したデータベースとしてK−NETを用いて回帰分析を行うと(
図2参照)、Y=3.67log
10X+3.72となるので、上記予測式のαvは3.67、βvは3.72としてもよい。
【0017】
また、Waldらの非特許文献1の提案によると、地震動の速度の絶対値のうち、最大の絶対値をVmaxとした場合、下記の計算式を用いることで、その地震の揺れの大きさを改正メルカリ震度階で示した計算値(MMIv)を求めることができるとしている。
【0018】
計算式 MMIv=αlog
10(Vmax)+β
この計算式におけるαは3.47、βは2.35である。
そして、これら予測式と計算式とから導かれる予測値(MMIvp)と計算値(MMIv)とを比較すると、
図5Bに示すように、地震の初動の部分では、予測値(MMIvp)のほうが計算値(MMIv)よりも早く、上昇することが分かった。
【0019】
従って、本発明の地震予測装置を用いると、地震動指標としてMMIを用い、地震の初動部分において、その地震の揺れの大きさを早期に予測することができる。
また、本発明の地震予測装置は、地震動の速度を考慮し、その地震の揺れの大きさを予測している。
【0020】
そのため、本発明の地震予測装置は、例えば盛土等の土構築物が多い鉄道などでの地震動の予測装置として最適である。
従って、本発明の地震予測装置を用いると、地震発生時に、自動列車停止装置を用いて早期に列車を止め、盛土等の崩壊により列車が転覆等する事故を抑制することができる。
【0021】
さらに、本発明の地震予測装置では、地震動指標としてMMIを用いているので、国際的にもわかりやすい地震の予測が可能である。
次に、本発明の第2局面の地震予測装置のように、第1局面の地震予測装置の構成に加え、調整係数(γv)を調整する調整係数設定部(22)を備え、且つ、予測式としては、この調整係数(γv)を加えた下記の予測式を用いてもよい。
【0022】
予測式は、MMIvp=αvlog
10(Vumax)+βv+γvである。
本発明の地震予測装置を用いて地震の揺れの大きさを予測して警報する場合、ユーザ側の要求としては、例えば、次の二つの要求が予想される。
【0023】
一つは、予測ははずれてもよいから、警戒が必要な大きさの揺れを引き起こす地震が発生したことを予測したとき、警戒が必要な大きさの揺れを引き起こす地震が本当に発生しているか否かにかかわらず、すべて警報して欲しいと望む場合、すなわち、警報成功率を高めたい場合、が考えられる。
【0024】
もう一つは、警戒が必要な大きさの揺れを引き起こす地震が発生しているときに警報がなされない場合があってもよいから、警戒が必要な大きさの揺れを引き起こす地震が発生していないときに警報がなされないようにして欲しいと望む場合、すなわち空振警報比率を低くしたい場合、とが考えられる。ここで、空振警報とは、小さな揺れに対する過敏警報のことを意味する。
【0025】
そのため、本発明の地震予測装置では、予測式内にγvを加えて、算出される予測値(MMIvp)の大きさを調整し、上述の二つの要求に対応できるようにしている。
例えば、警報基準値をMMIの5.5段階とし、γvを−1とした場合、
図8に示すように、空振警報比率は0%に近くなり、逆に、γvを1とした場合は、警報成功率は100%に近くなる。
【0026】
すなわち、γvを1とした場合、警戒が必要な大きさの揺れを引き起こす地震が発生したことを予測すると、警戒が必要な大きさの揺れを引き起こす地震が本当に発生しているか否かにかかわらず必ず警報がなされる。
【0027】
一方、γvを−1とした場合、警戒が必要な大きさの揺れを引き起こす地震が発生しているときに警報がなされない場合があるが、警戒が必要な大きさの揺れを引き起こす地震が発生していないときに警報がなされることはない。
【0028】
従って、本発明の地震予測装置を用いると、本発明の第1局面の地震予測装置の効果に加え、ユーザの要求に応じた予測が可能となる。
次に、本発明の第3局面の地震予測装置のように、予測値算出部で算出された予測値(MMIvp)と予め定められた警報基準値とを比較して、予測値(MMIvp)が警報基準値を越えた場合、警報を行う警報部(18、S22〜S24)を備えてもよい。
【0029】
この地震予測装置では、予め定められた警報基準値を予測値(MMIvp)が超えた場合にのみ警報がなされるので、警報が不要な地震が発生した場合に警報がなされる無駄を抑制することができる。
【0030】
尚、本発明の第4局面の地震予測装置のように、地震動の有無により地震の発生を判定する地震発生判定部(20)を備え、警報部は、地震発生判定部により、地震が発生していると判定されているときに警報を行うようにしてもよい。
【0031】
因みに、上記各部等の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の機能ブロック等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記各部等の括弧内の符号に示された機能ブロック等に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(第1実施形態)
1.地震予測装置1
第1実施形態の地震予測装置1について、
図1を用いて説明する。尚、第1実施形態について説明する以下の欄では、第1実施形態を本実施形態と言う。
【0035】
本実施形態の地震予測装置1は、CPU、ROM1a、RAM等を備えるコンピュータ装置である。尚、
図1ではCPU及びRAMの図示はしていない。
また、この地震予測装置1には、加速度センサ装置3と、外部警報装置5とが接続されている。
【0036】
このうち加速度センサ装置3は、地震動を、互いに直交する3方向(上下、東西、南北)の加速度成分として検出するための3つの加速度センサ(上下加速度センサ30、東西加速度センサ32、南北加速度センサ34)を備えている。
【0037】
本実施形態では、地震を警戒する区域に観測点が散点的に設定され、各観測点に地震予測装置1及び加速度センサ装置3が設置される。
この加速度センサ装置3は、その観測点に地震波が到達すると、各センサ30〜34が各観測点での地震動の加速度成分の検出をそれぞれ開始し、各加速度成分を示すアナログ信号の出力を開始する。
【0038】
外部警報装置5は、各観測点から離れた場所に設置されており、各観測点に設置された複数の地震予測装置1と公衆回線を介して通信可能に接続されている。
そして、この外部警報装置5は、いずれかの地震予測装置1から警報信号を受信すると、警報音を出力したり、警報情報を表示するなどの警報動作を実行する。
【0039】
また、この外部警報装置5は、例えば、列車制御装置と連動している場合、警報信号を受信したら、列車制御装置に列車を止めるよう指示を出す警報動作を実行することもできる。
【0040】
地震予測装置1は、
図1に示すように、加速度取得部10、上下速度算出部12、速度記録部14、予測値算出部16、第1警報部18、地震発生判定部20を有している。
これら各部10〜20の機能は、地震予測装置1が、ROM1aに記憶された後述する地震警報処理Aを実行することにより実現される。
【0041】
加速度取得部10は、加速度センサ装置3の各センサ30〜34が地震動を検出したときに出力する3方向(東西、南北、上下)の加速度成分を示すアナログ信号を順次入力し、これらアナログ信号を予め定められたサンプリング周期ごとにサンプリングする。
【0042】
そして、この加速度取得部10は、地震動の上下方向の加速度成分を示すアナログ信号をサンプリングしたデジタル信号を、上下速度算出部12及び地震発生判定部20に順次出力する。
【0043】
また、この加速度取得部10は、東西方向の加速度成分及び南北方向の加速度成分を示すアナログ信号をサンプリングしたデジタル信号を地震発生判定部20に順次出力する。
尚、本実施形態では、サンプリング周期は100Hzに設定されているが、これに限られるものではない。(加速度取得部10を加速度センサ装置3に配置し、加速度センサ装置3から地震予測装置1へデジタル信号を伝送する形態でもよい。)
上下速度算出部12は、加速度取得部10から地震動の上下方向の加速度成分を示すデジタル信号をサンプリング周期ごとに入力するたびに、その加速度成分をサンプリング時間(1/100秒)で積分して、地震動の上下方向の速度成分(単位はkine)を順次算出する処理を実行する。
【0044】
そして速度記録部14は、この上下速度算出部12が、地震動の上下方向の速度成分を算出するごとに、その速度成分に関する情報(以下「上下速度情報」という)を記憶する処理を実行する。
【0045】
予測値算出部16は、上下速度算出部12が、地震動の上下方向の速度成分を算出するごとに、速度記録部14に記録された上下速度情報中から、上下方向の速度成分の絶対値のうち最大の絶対値である最大速度値(Vumax)を用いて、後述する予測式に基づき、地震の揺れの大きさをMMIによって表した予測値(MMIvp)を順次算出する。
【0046】
第1警報部18は、地震発生判定部20で地震が発生していると判定されているときに、予測値算出部16において算出された予測値(MMIvp)が、予め定められた警報基準値(MMIで5.5段階)を越えたと判定された場合に、外部警報装置5に警報信号を出力する。
【0047】
地震発生判定部20は、後述する地震警報処理A(
図6参照)で用いるフラグ情報であって、観測点において地震動を検出しているか否か、すなわち、地震が現在発生しているか否かを示すフラグ情報を記憶するフラグ記憶領域20aを備えている。
【0048】
この地震発生判定部20は、加速度取得部10から地震動の直交する3方向の加速度成分を示すサンプリング周期毎にデジタル信号を入力するたびに、これら3方向の加速度成分をベクトル合成した加速度の絶対値を算出する。
【0049】
そして、地震発生判定部20は、この加速度の絶対値が、地震が発生しているか否かを判断するため予め定められた地震発生基準値を超えている場合は、フラグ記憶領域20aに記憶されたフラグ情報を「1」とする処理を実行する。
【0050】
一方、地震発生判定部20は、この加速度の絶対値が地震発生基準値以下の場合は、フラグ記憶領域20aに記憶されたフラグ情報を「0」とする処理を実行する。
そして、地震発生判定部20は、フラグ記憶領域20aに記憶されたフラグ情報を第1警報部18に出力する。
【0051】
2.MMIvpの算出方法について
次に、本実施形態で用いられている下記の予測式について説明する。
予測式 MMIvp=αvlog
10(Vumax)+βv
この予測式は、地震の揺れの大きさを改正メルカリ震度階の指標値で示した予測値(MMIvp)を求めるものである。
【0052】
Vumaxは、速度記録部14に記憶された地震動の上下方向の速度成分についての絶対値の中で、その最大の絶対値である。
上述のように、上下加速度センサ30が地震動の検出を始めると、加速度取得部10が、上下加速度センサ30から出力される地震動の上下方向の加速度成分を示すアナログ信号を順次入力する。
【0053】
すると、上下速度算出部12が地震動の上下方向の速度成分を順次算出し、その算出結果が速度記録部14に順次記憶される。
そのため、予測値算出部16は、上記予測式を用いて予測値(MMIvp)を算出するとき、この速度記録部14から最大速度値(Vumax)を得ている。
【0054】
一方、αv及びβvは、防災科学技術研究所が運用している地震観測ネットワークであるK−NETの記録波形データを用いて予め算出した係数値である。
過去に発生した13回の地震時にK−NETで記録された2323個の記録波形データについて、各記録波形の上下方向速度成分の絶対値の最大値(kine)とMMIの指標値を求め、それぞれを横軸、縦軸にとった片対数グラフ上にプロットすると、
図2に示すような関係を示す。
【0055】
αv及びβvは、
図2における上下方向速度成分の絶対値の最大値を説明変数(X)とし、MMIの指標値を従属変数(Y)として、回帰分析により回帰係数として算出される。
【0056】
このK−NETに記録された地震の地震動のデータを用いて回帰分析を行った場合、その結果は、Y=3.67log
10X+3.72となるので、上記予測式のαvは3.67、βvは3.72とした。
【0057】
尚、各地震の揺れの大きさをMMIの指標値で示すため、この指標値(以下「計算値(MMIv)という」)の算出には、Waldらの非特許文献1による提案による計算式を用いた。
【0058】
計算式 MMIv=αlog
10(Vmax)+β
ここで、Vmaxは、地震動の最大速度の絶対値である。
また、αは3.47、βは2.35である。
【0059】
次に、K−NETに記録された地震波形データと上記予測式及び計算式を用いて、時間に対する予測値(MMIvp)及び計算値(MMIv)の時刻歴変化をシミュレーションし、そのシミュレーションによる結果を比較したので、その比較結果を説明する。
【0060】
図3に示すように、今回検討対象とした2323例の地震波形データのうち、予測値(MMIvp)及び計算値(MMIv)がいずれもMMIの指標値で5.5段階以上を示すものは299例ある。
【0061】
このうち、上記シミュレーションにより、予測値(MMIvp)が計算値(MMIv)より先にMMIの指標値で5.5段階に到達する例が173例あり、逆に、計算値(MMIv)が先に達する例が126例あった。
【0062】
そして、上記299例の地震波形データついてさらに検討すると、
図4に示すように、予測値(MMIvp)が計算値(MMIv)よりも0秒以上2秒未満の範囲内で、MMIの指標値で5.5段階に到達する地震波形データが92例あることなどが分かった。
【0063】
また、平均では、予測値(MMIvp)は、計算値(MMIv)よりも約4秒早く改正メルカリ震度階の5.5段階に達することが分かった。
ここで、予測値(MMIvp)と計算値(MMIv)が共にMMIの指標値で5.5段階に達する地震波形であって、2011年の東北地方太平洋沖地震で最大震度がMMIの指標値で9.5段階となる地震波形についてみると、
図5Bに示すように、地震動の初期段階では、予測値(MMIvp)が計算値(MMIv)よりも、約8秒先行して、MMIの指標値で5.5段階に達していた。
【0064】
一方、このような地震でも、地震発生から100秒以上経過すると、
図5Aに示すように、予測値(MMIvp)も計算値(MMIv)もほぼ同じ値を示すようになる。
つまり、本実施形態の地震予測装置1は、地震動指標としてMMIを用い、地震動の初動部分において、警報が必要な大きさの揺れとなるかどうかを早期に予測することができる。
【0065】
3.地震警報処理
次に、本実施形態の地震予測装置1で実行される地震警報処理Aについて、
図6を用いて説明する。
【0066】
本実施形態の地震警報処理Aは、地震予測装置1の図示しない電源スイッチを入れると開始され、その後、サンプリング周期毎に電源スイッチが切られるまで繰り返し実行される。
【0067】
この地震警報処理Aでは、最初に、S10の加速度取得処理が実行される。
このS10では、加速度取得部10で実行される処理であって、加速度センサ装置3から、この加速度センサ装置3で検出された地震動の3方向(東西、南北、上下)の加速度成分を示すアナログ信号を順次入力して、サンプリングする処理が実行される。
【0068】
そして、このS10では、サンプリングした地震動の上下方向の加速度成分を示すデジタル信号を、上下速度算出部12及び地震発生判定部20に出力し、東西方向の加速度成分及び南北方向の加速度成分を示すデジタル信号を地震発生判定部20に出力する処理が実行される。
【0069】
次に、S12の速度、MMIvp算出処理が実行される。
このS12では、上下速度算出部12で実行される処理であって、加速度取得部10からデジタル信号が示す地震動の上下方向の加速度成分から、地震動の上下方向の速度成分を算出する処理が実行される。
【0070】
また、このS12では、予測値算出部16で実行される処理であって、速度記録部14に記録された上下速度情報の中から、上下方向の速度成分の絶対値のうち最大の絶対値である最大速度値(Vumax)を用いて、予測値(MMIvp)を算出する処理が実行される。
【0071】
次に、S14では、地震発生判定部20で実行される処理であって、加速度取得部10がデジタル信号に変換した地震動の3方向の加速度成分から、観測点の地震動の加速度を算出する処理が実行される。
【0072】
次に、S16の処理が実行される。
このS16では、地震が発生しているか判定する処理が実行される。
このS16は、第1警報部18で行われる処理であって、具体的には、フラグ記憶領域20aに記憶されたフラグが、地震発生中を示す「1」であるか、地震が発生していない通常状態を示す「0」であるかを判定する処理が実行される。
【0073】
このS16で、フラグが「0」、すなわち「通常状態」であると判定されると(S16:YES)、次にS18の処理が実行される。S16において、フラグが「1」、すなわち「地震発生中」であると判定されると(S16:NO)、次にS22の処理が実行される。
【0074】
S18では、観測点の地震動の加速度について、その加速度の絶対値が、前述した地震発生基準値よりも大きいか否かを判定する処理が実行される。
このS18は、地震発生判定部20で実行される。
【0075】
このS18では、地震動の加速度の絶対値が地震発生基準値よりも大きい場合、すなわち地震が発生している場合(S18:YES)、フラグ記憶領域20aに記憶されたフラグを「0」から「1」に変更する処理が実行される(S20)。その後、本地震警報処理Aが終了して、再び、S10以下の処理が実行される。
【0076】
一方、地震動の加速度の絶対値が地震発生基準値よりも小さい場合、すなわち地震が発生していない場合(S18:NO)、直ちに本地震警報処理Aが終了し、再び、S10以下の処理が実行される。
【0077】
次に、S16で、フラグが「1」、すなわち「地震発生中」であると判定された場合(S16:NO)に実行されるS22の処理について説明する。
このS22は、第1警報部18で実行される処理であって、S12で算出された予測値(MMIvp)が、警報の基準となる警報基準値以上、すなわち、MMIで5.5段階以上であるか判定する処理が実行される。
【0078】
このS22において、予測値(MMIvp)が警報基準値よりも大きいと判定されると、上述したように、平均では、地震予測装置1が設置された観測点で、実際にMMIで5.5段階以上の揺れが生じる4秒前であることが分かる。
【0079】
そのため、S22において、予測値(MMIvp)がMMIで5.5段階以上であると判定された場合(S22:YES)、次にS24の処理が実行され、第1警報部18から外部警報装置5に警報信号を発信する処理が実行される。そして、このS24の後、S27の処理が実行される。
【0080】
一方、S22において、予測値(MMIvp)がMMIで5.5段階未満であると判定された場合(S22:NO)、次にS27の処理が実行される。
S27では、S18と反対に、観測点の地震動の加速度の大きさが、予め定めた地震発生基準値よりも小さいか否かを判定する処理が実行される。
【0081】
このS27は、地震発生判定部20で実行される。このS27では、S18と同様、観測点の地震動の加速度について、その加速度の絶対値が、前述した地震発生基準値以下であるか否かを判定する処理が実行される。
【0082】
このS27により、地震動の加速度の絶対値が基準値以下の場合(S27:YES)、フラグ記憶領域20aに記憶されたフラグを「1」から「0」に変更する処理が実行される(S28)。その後、本地震警報処理Aが終了し、再び、S10以下の処理が実行される。
【0083】
一方、地震動の加速度の大きさが基準値よりも大きい場合(S27:NO)、直ちに本地震警報処理Aが終了し、再び、S10以下の処理が実行される。
4.本実施形態の地震予測装置の特徴的な作用効果
上述したように、過去に発生した地震の地震動の予測値(MMIvp)と計算値(MMIv)とを比較すると、
図5Bに示すように、地震の初動の部分では、予測値(MMIvp)のほうが計算値(MMIv)よりも早く警報基準値に達することが分かった。
【0084】
従って、本実施形態の地震予測装置1を用いると、地震動指標としてMMIを用い、地震動の初動部分において、警報が必要な地震の発生を早期に予測することができる。
また、本実施形態の地震予測装置1は、地震動の速度を考慮し、その地震の揺れの大きさを予測している。
【0085】
そのため、本実施形態の地震予測装置1は、例えば盛土等の土構築物が多い鉄道等に対する地震の予測装置として最適である。
つまり、本実施形態の地震予測装置1は、例えば盛土等の土構築物が多い鉄道等に対する地震の予測装置として用いれば、地震発生時に、自動列車停止装置を用いて早期に列車を止め、盛土等の崩壊により列車が転覆等する事故を抑制することができる。
【0086】
他に、エレベータを止めたり、テレビ等を通じて人に対して地震の発生を告知することもできる。
さらに、本実施形態の地震予測装置1では、警報が必要な地震の発生を、MMIを用いて早期に予測しているので、国際的にもわかりやすい地震の予測が可能である。
【0087】
また、本実施形態の地震予測装置1では、予め定められた地震発生基準値を予測値(MMIvp)が超えた場合にのみ警報がなされるので(S22→S24)、警報が不要な地震が発生した場合に警報がなされる無駄を抑制することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0088】
本実施形態では、第1実施形態と異なる点のみ説明する。尚、第2実施形態について説明する以下の欄では、第2実施形態を本実施形態と呼んで説明する。
1.地震予測装置1
本実施形態の地震予測装置1は、
図7に示すように、調整係数設定部22を備えている点が、第1実施形態の地震予測装置1とは異なる。
【0089】
また、本実施形態では、予測値算出部16で用いる予測値(MMIvp)を算出する予測式中に調整値γvが加えられている点が、第1実施形態とは異なる。
予測式 MMIvp=αvlog
10(Vumax)+βv+γv
本実施形態では、γvは−1〜1まで調整することができ、調整係数設定部22としては、例えば回転式の調整ツマミが用いられ、その回転量等を変えることで人の操作によりγvの値を調整することができるものが備えられる。
【0090】
予測値算出部16は、この調整係数設定部22で設定された調整値γvとして設定した値を用いて、このγvを加えた予測式を用いて予測値(MMIvp)を算出する。
尚、本実施形態の地震予測装置1で実行される地震警報処理AのS22でも、予測値(MMIvp)の算出は、上述のγvを加えた予測式を用いて行われる。
【0091】
2.調整値γvについて
次に、警報成功率、及び、空振警報比率について
図8を用いて説明する。
この警報成功率、及び、空振警報比率は、K−NETに記録された地震の地震動のデータを用いて算出したものである。
【0092】
警報成功率は、計算値(MMIv)が5.5以上になるものの総数のうち、予測値(MMIvp)が5.5以上になるものの割合である
空振警報比率は、予測値(MMIvp)が5.5以上になるものの総数のうち、計算値(MMIv)が5.5未満となる地震の割合である。
【0093】
この
図8に示すように、警報成功率は、γvが1に近いほど高くなって、γvを1とするとほぼ100%となる。逆に、警報成功率は、γvが−1に近いほど低くなって、γvを−1とすると約40%となる。
【0094】
一方、空振警報比率は、γvが−1に近いほど低くなり、γvを−1とするとほぼ0%となる。逆に、空振警報比率は、γvが1に近いほど高くなり、γvを1とする約40%となる。
3.本実施形態の地震予測装置の特徴的な作用効果
本実施形態の地震予測装置1は、第1実施形態の地震予測装置1が奏する効果に加え、下記のような効果も奏する。
【0095】
本実施形態の地震予測装置1を用いて地震の発生を早期に予測して警報する場合、ユーザ側の要求としては、例えば、次の二つの要求が予想される。
一つは、予測ははずれてもよいから、警戒が必要な地震の発生を予測したとき、警戒が必要な地震が本当に発生しているか否かにかかわらず、すべて警報して欲しいと望む場合すなわち、警報成功率を高めたい場合、が考えられる。
【0096】
もう一つは、警戒が必要な地震が発生しているときに警報がなされない場合があってもよいから、警戒が必要な地震が発生していないときに警報がなされることがないようにして欲しいと望む場合、すなわち空振警報比率を低くしたい場合、とが考えられる。
【0097】
そのため、本実施形態の地震予測装置1では、予測式内にγvを加えて、算出される予測値(MMIvp)の大きさを調整し、上述の二つの要求に対応できるようにしている。
例えば、警報基準値をMMIの5.5段階とし、γvを−1とした場合、
図8に示すように、空振警報比率は0%に近くなり、逆に、γvを1とした場合は、警報成功率は100%に近くなる。
【0098】
すなわち、γvを1とした場合、警戒が必要な地震の発生を予測すると、警戒が必要な地震が本当に発生しているか否かにかかわらず必ず警報がなされる。
一方、γvを−1とした場合、警戒が必要な地震が発生しているときに警報がなされない場合があるが、警戒が必要な地震が発生していないときに警報がなされることはない。
【0099】
従って、本実施形態の地震予測装置1を用いると、ユーザの要求に応じた予測が可能となる。
(対応関係)
上述の実施形態の上下加速度センサ30から出力されたアナログ信号が示す地震動の上下方向の加速度成分に関する情報が、本発明の上下加速度情報の一例に相当する。
【0100】
上述の実施形態のS10の処理において加速度取得部10が実行する処理が、特許請求の範囲に記載された上下加速度取得部の一例に相当する。
上述の実施形態のS14の処理において上下速度算出部12が実行する処理が、特許請求の範囲に記載された上下速度算出部の一例に相当する。
【0101】
上述の実施形態のS14の処理において予測値算出部16が実行する処理が、特許請求の範囲に記載された予測値算出部の一例に相当する。
上述の実施形態のS22〜S24の処理において、第1警報部18が外部警報装置5に対して警報信号を送信する処理が、特許請求の範囲に記載された警報部が警報を行う処理の一例に相当する。
(その他の実施形態)
上記実施形態では、加速度センサ装置3は、地震予測装置1とは別装置として説明したが、地震予測装置1に組み込まれていてもよい。
【0102】
上記実施形態では、外部警報装置5は、地震予測装置1と公衆回線を介して通信可能な装置として説明したが、地震予測装置1に備えられた警報音を発する警報装置でもよい。
また、
図9に示すように、地震予測装置1には、従来の判定方法により地震を判定し、警報する一般地震判定部24と第2警報部26とを備えるようにしてもよい。
【0103】
この場合、第2警報部26は、一般地震判定部24で地震が発生したと判定されたら、外部警報装置5に警報を発する処理を実行する。
このため、本実施形態の地震予測装置1では、第1警報部18または第2警報部26のいずれかで地震が発生したと判定されたら、外部警報装置5において警報がなされることとなる。
【0104】
尚、この場合、調整係数設定部22は備えていても備えていなくてもよい。
そして、これら一般地震判定部24と第2警報部26とを備える場合、
図10に示すように、S24からS27の間で、S25及びS26の処理を実行するようにしてもよい。
【0105】
この場合、S25では、従来の方法で地震が発生しているか判定され、地震が発生していると判定されたら(S25:YES)、S26において、上記実施形態の早期警報とは別の第2の警報を実行する処理が実行される。
【0106】
尚、本実施形態の地震予測装置1を構成する各部の機能10〜26は、ROM1aに記憶されたプログラムにより、加速度センサ装置3と外部警報装置5が接続されたコンピュータに実現させることができるが、このプログラムは、ROM1aやバックアップRAMからコンピュータにロードされて用いられてもよいし、ネットワークを介してコンピュータにロードされて用いられてもよい。
【0107】
また、このプログラムは、コンピュータにて読み取り可能なあらゆる形態の記録媒体に記録されて用いられてもよい。記録媒体としては、例えば、持ち運び可能な半導体メモリ(例えばUSBメモリ、メモリカード(登録商標)など)などが含まれる。
【0108】
本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。