(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
火花点火式内燃機関から排出される排気ガスから粒子状物質を濾過するための触媒化フィルタであって、全基体長を有し、且つ入口表面及び出口表面を有する多孔質基体であって、入口表面が第1の平均細孔寸法の孔を含有する多孔質構造により出口表面から分離されている多孔質基体を備えており、多孔質基体は、(i)プラチナ及びロジウム;(ii)パラジウム及びロジウム;並びに(iii)プラチナ、パラジウム、及びロジウムから成る群より選択される貴金属の組合せを含む、高表面積酸化物、及び酸素貯蔵成分上に支持された三元触媒ウォッシュコート組成物でコーティングされており、ウォッシュコートされた多孔質基体の多孔質構造は、第1の平均細孔寸法より小さい第2の平均細孔寸法の孔を含有し、その三元触媒ウォッシュコートは、多孔質基体上において、全基体長より短い第1の基体長の入口表面を含む第1のゾーンと、全基体長より短い第2の基体長の出口表面を含む第2のゾーンとして軸方向に沿って配置されており、第1のゾーンの基体長と第2のゾーンの基体長との和は≧110%であり、第1のゾーンの基体長<第2のゾーンの基体長であり、第2のゾーンがウォッシュコートを含有し、
(i)全貴金属負荷が、第1のゾーン>第2のゾーンであり、第一のゾーンの全貴金属負荷が>50gft−3(1.77g/L)であるか;或いは
(ii)ウォッシュコート負荷及び全貴金属負荷の両方が、第1のゾーン>第2のゾーンであり、第一のゾーンの全貴金属負荷が>50gft−3(1.77g/L)である、
触媒化フィルタ。
請求項1から11のいずれか一項に記載の触媒化フィルタを備える火花点火式内燃機関用排気システムであって、第1のゾーンが第2のゾーンの上流に配置されている、排気システム。
火花点火式内燃機関の排気ガス中の一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、及び粒子状物質を同時に転換する方法であって、請求項1から11のいずれか一項に記載の触媒化フィルタにガスを接触させるステップを含む方法。
【背景技術】
【0002】
火花点火式エンジンは、スパーク点火を用いて炭化水素と空気の混合物の燃焼を生じさせる。対照的に、圧縮点火式エンジンは、圧縮空気中に炭化水素を注入することにより炭化水素の燃焼を生じさせる。火花点火式エンジンは、ガソリン燃料、メタノール及び/又はエタノールを含むオキシジェネートと混合されたガソリン燃料、液化石油ガス、或いは圧縮された天然ガスにより燃料補給される。
【0003】
三元触媒(TWC)は、一般に一又は複数の白金族金属、特に白金、パラジウム、及びロジウムからなる群より選択されるものを含有する。
【0004】
TWCは、三つの並発反応、すなわち(i)一酸化炭素の二酸化炭素への酸化、(ii)未燃炭化水素の二酸化炭素への酸化、及び(iii)窒素酸化物の窒素及び酸素への還元を触媒することを意図している。これら三つの反応は、TWCが理論空燃比点又は理論空燃比点付近で動作しているエンジンから排気ガスを受け取るとき最も効率よく起こる。当技術分野において周知であるように、ガソリン燃料が火花点火式(例えば、スパーク点火式)内燃機関において燃焼するときに排出される一酸化炭素(CO)、未燃炭化水素(HC)、及び窒素酸化物(NO
x)の量は、主に燃焼シリンダ内の空気燃料混合比の影響強を受ける。理論空燃比の点で組成のバランスがとれた排気ガスは、酸化ガス(NO
x及びO
2)と還元ガス(HC及びCO)の濃度が実質的に一致しているものである。このような理論空燃比の点でバランスのとれた排気ガス組成物を生み出す空気燃料混合比は、一般に14:7:1である。
【0005】
理論的に、理論空燃比の点でバランスのとれた排気ガス組成物に含まれるO
2、NO
x、CO、及びHCを、CO
2、H
2O、及びN
2(並びに残りのO
2)への完全な変換を達成することは可能であるはずで、これはTWCの責務である。したがって、理想的には、エンジンは、燃焼混合物の空気燃料混合比により理論空燃比の点でバランスのとれた排気ガス組成物が発生するような方式で動作しなければならない。
【0006】
排気ガスの酸化ガスと還元ガスとの組成的均衡を規定する一の方式は、排気ガスのラムダ(λ)値であり、これは以下の式(1)に従って規定することができる。
実際のエンジンの空気燃料混合比/理論空燃比を有するエンジンの空気燃料混合比 (1)
【0007】
上の式において、=1のλ値は、理論空燃比の点でバランスのとれた(又はストイキオメトリな)排気ガス組成を表し、>1のλ値は、O
2及びNO
xが過剰であり、組成が「リーン(lean)」と表現されることを表し、<1のλ値は、HC及びCOが過剰であり、組成が「リッチ(rich)」と表現されることを表す。また、当技術分野では、空気燃料混合比が生成する排気ガス組成に応じて、エンジンが「理論空燃比」、「リーン」、又は「リッチ」で動作する空気燃料混合比(すなわち、理論空燃比で運転されるガソリンエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジン)に言及することが一般的である。
【0008】
TWCを用いたNO
xからN
2への還元は、排気ガス組成物が理論空燃比よりリーンであるとき、効率が低下する。同等に、排気ガス組成物がリッチであるとき、TWCの、CO及びHCを酸化する能力は低下する。したがって、目指すところは、TWC中に流入する排気ガスの組成を可能な限り理論空燃比組成の近くに維持することである。
【0009】
言うまでもなく、エンジンが定常状態にあるとき、空気燃料混合比を確実に理論空燃比にすることは比較的簡単である。しかしながら、エンジンが車両の推進に使用される時、必要となる燃料の量は、運転者がエンジンにかける負荷需要に応じて過渡的に変化する。このため、三元変換のために理論空燃比の排気ガスが生成されるように空気燃料混合比を制御することは特に難しい。実際には、空気燃料混合比は、エンジン制御ユニットにより制御される。この場合、エンジン制御ユニットは排気ガス組成に関する情報を排気ガス酸素(EGO)(又はλ)センサ(いわゆる閉ループフィードバックシステム)から受け取る。このようなシステムの特徴は、空気燃料混合比を調整することに関連づけられるタイムラグの存在により、理論空燃比(又は制御設定)点をはさんでややリッチからややリーンまでの間で空気燃料混合比が振動する(又は摂動する)ことである。このような摂動は、空気燃料混合比の振幅と応答周波数(Hz)とを特徴とする。
【0010】
典型的なTWCに含まれる有効成分は、高表面積酸化物、及び酸素貯蔵成分上に支持された、ロジウムと共に白金及びパラジウムの一方又は両方を含むか、或いは場合によってパラジウムのみを含む(ロジウムを含まない)。
【0011】
排気ガス組成が設定点よりややリッチであるとき、未反応のCO及びHCを消費するため、すなわち反応を理論空燃比に近づけるために、少量の酸素が必要である。逆に、排気ガスがややリーンであるとき、過剰な酸素を消費する必要がある。これは、摂動の間に酸素を遊離させる、又は吸収する酸素貯蔵成分の生成により達成された。現代のTWCに最も多く使用される酸素貯蔵成分(OSC)は、酸化セリウム(CeO
2)又はセリウムを含有する混合酸化物、例えばCe/Zr混合酸化物である。
【0012】
NO環境PMは、その空気動力学的直径(空気動力学的直径は、測定される粒子と同じ沈降速度の1g/cm
3の密度球の直径と定義される)に基づいて、大部分の著者により以下のカテゴリに分割される。
(i)PM10−空気動力学的直径が10μm未満である粒子
(ii)直径が2.5μmを下回る微小粒子(PM2.5)
(iii)直径が0.1μm(又は100nm)を下回る超微小粒子、及び
(iv)50nm未満の直径を特徴とするナノ粒子
【0013】
1990年代半ば以降、内燃機関から排出される粒子の粒子サイズ分布は、微小粒子及び超微小粒子が健康に及ぼしうる悪影響により、急激に注目を集めている。環境空気中のPM10微粒子の濃度は、米国において法により規制されている。人の死亡率と2.5μmを下回る微小粒子濃度との強い相関関係を示す健康調査の結果として、米国においてPM2.5に関する新しい追加的環境空気品質基準が1997年に導入された。
【0014】
現在では、2.5〜10.0μmの範囲の微粒子の研究結果に基づく推定により、それよりも大きい粒子よりも人の肺に深く入り込む結果、大きな粒子より有害であると考えられるため、ディーゼル及びガソリンエンジンにより生成されるナノ粒子に興味が移っている。
【0015】
ディーゼル微粒子のサイズ分布は、粒子核生成及び凝集機構に対応する十分に確立された二峰性の特徴を有し、これに対応する粒子の種類はそれぞれ核形成モード(nuclei mode)及び蓄積モード(accumulation mode)と呼ばれる(
図1参照)。
図1に見られるように、核形成モードでは、ディーゼルPMは、きわめて小さな質量を保持する多数の小さな粒子からなっている。ほとんどすべてのディーゼル微粒子のサイズは1μmよりもずっと小さく、すなわちそれらは微小粒子(すなわち1997年の米国法の分類に入る)、超微小粒子、及びナノ粒子である。
【0016】
核形成モード粒子は、大部分が揮発性凝縮物(炭化水素、硫酸、硝酸など)からなり、灰分及び炭素などの固形物質を殆ど含まない。蓄積モード粒子は、凝縮物と混合された固形物(炭素、金属灰など)、並びに吸収された物質(重い炭化水素、硫黄種、窒化酸化物誘導体など)を含むと理解される。粗大粒子モード粒子は、ディーゼル燃焼プロセスで生成されるとは考えられておらず、沈着後の、エンジンシリンダ、排気システム、又は微粒子サンプリングシステムの壁からの粒子状物質の再飛散現象といったメカニズムにより形成される。これらのモード間の関係を
図1に示す。
【0017】
核粒子の組成は、エンジンの運転条件、環境条件(特に温度及び湿度)、希釈度、並びにサンプリングシステムの条件により変化する。実験室的研究及び理論により、核形成モードの形成及び成長の大部分は低い希釈率範囲で起こることが示されている。この範囲では、揮発性粒子前駆体の気体から粒子への変換は、重炭化水素及び硫酸のように、核形成モードの核形成及び成長と、蓄積モードにおける既存粒子への吸収とを同時に引き起こす。実験室での試験(例えば、SAE 980525及びSAE 2001−01−0201参照)によれば、空気希釈温度の低下により核形成モードの形成が著しく増大することが分かっているが、湿度が影響するかどうかについては相反する証拠が存在する。
【0018】
一般に、低温、低希釈率、高湿度、及び長い滞留時間がナノ粒子形成と成長に有利に働く。研究により、極めて高荷重でのみの固体断片を証拠として、ナノ粒子は主に揮発性物質様重炭化水素及び硫酸からなることが分かっている。
【0019】
対照的に、定常運転におけるガソリン微粒子の、エンジンから排出されるときのサイズ分布は、約60〜80nmにピークを持つ単峰型分布を示している(例えば、SAE 1999−01−3530の
図4参照)。ディーゼルサイズ分布との比較によれば、ガソリンPMは主に超微小であり、蓄積モード及び粗大粒子モードは無視できる範囲である。
【0020】
ディーゼル微粒子フィルタ内でのディーゼル微粒子の微粒子収集は、多孔質バリアを用いて気体中微粒子を気相から分離するという原理に基づいている。ディーゼルフィルタは、深層フィルタ及び/又は表面型フィルタと定義することができる。深層フィルタでは、濾過媒体の平均細孔寸法は収集される粒子の平均径より大きい。粒子は、拡散沈着(ブラウン運動)、慣性沈着(固着)、及び流線遮断(ブラウン運動又は慣性)を含む深層濾過メカニズムの組合せにより媒質上に沈着する。
【0021】
表面型フィルタでは、濾過媒体の孔径はPMの径より小さいので、PMはふるい分けにより分離される。分離は、収集されたディーゼルPM自体の集積により行われる。このような集積は、一般に「濾過ケーキ」と呼ばれ、プロセスは「ケーキ濾過」と呼ばれる。
【0022】
セラミックウォールフローモノリスのようなディーゼル微粒子フィルタは、深層及び表面濾過の組合せにより機能すると考えられる。濾過ケーキは、深層濾過能が飽和して微粒子層が濾過表面を覆い始めると、より高いスートロード(soot load)で蓄積する。深層濾過の特徴は、濾過効率がやや低いこと、及びケーキ濾過より圧降下が小さいことである。
【0023】
当技術分野において示唆される、ガソリンPMを気相から分離するための他の技術には、渦回収が含まれる。
【0024】
2014年9月1日より、ヨーロッパにおける排ガス法(Euro6)の下に、ディーゼル及びガソリン(火花点火式)乗用車の両方から排出される粒子数を制御することが必要となった。ガソリンEU軽量自動車(light duty vehicle)に許容可能な限度は以下の通りである。一酸化炭素1000mg/kg;窒化酸化物(NO
x)60mg/km;全炭化水素100mg/km(そのうち68mg/km以下が非メタン炭化水素である);及び粒子状物質4.5mg/km(直噴エンジンについてのみ(PM))。Euro6のPM基準は、長年にわたって段階的に行われるもので、その基準は、2014年はじめには6.0×10
12/km(Euro6)に設定され、2017のはじめからは6.0×10
11/km(Euro6+)に設定される。
【0025】
米国の連邦低公害車(LEV)III基準は、2017年〜2021年の間に米国のFTPサイクルで3mg/マイルを質量の限度とするように設定されたと考えられている(現在は10mg/マイル)。このような限度は、次いで2025年以降は1mg/マイルへとさらに引き締められるが、この低基準の実施は2022年に前倒しされる可能性がある。
【0026】
新しいEuro6(Euro6及びEuro6+)の排出基準は、ガソリン車排出基準を満たすうえで困難な複数の設計上の問題を呈している。特に、PMガソリン(火花点火)排出の数を減少させると同時に、窒素の酸化物(NO
x)、一酸化炭素(CO)、及び未燃炭化水素(HC)のうちの一又は複数といった非PM汚染のための排出基準を、すべて許容可能な逆圧で(例えば、欧州ドライブサイクルの最大サイクル逆圧により測定した場合の)満たすために、フィルタ、又はフィルタを含む排気システムをどのように設計するか。
【0027】
同等の流通式触媒に対するEuro6のPM数基準を満たすために三元触媒化微粒子フィルタの粒子の減少は最小でも50%以上であると考えられる。加えて、三元触媒化ウォールフローフィルタの逆圧が、同等の流通式触媒に対していくらか増加することは避けがたいが、本発明者の経験では、大多数の乗用車のMVEG−Bドライブサイクル上のピーク逆圧(「フレッシュ(fresh)」に基づく三回の試験の平均)は、200mbar未満、例えば180mbar未満、150mbar未満、及び好ましくは120mbar未満、例えば100mbar未満に制限されるべきである。
【0028】
Euro6の排出基準を満たすために、最近ではTWCとフィルタとを組み合わせようとする複数の取り組みが行われている。
【0029】
US2009/0193796には、炭化水素、一酸化炭素、窒素酸化物、及び微粒子を含む排気ガスを処理するための、ガソリン直噴エンジンの下流の排出処理システムが開示されており、この排出処理システムは、任意で、白金及びパラジウムからなる白金族金属を含む酸化触媒でゾーンコーティングされた微粒子トラップを備える。
【0030】
US2010/0275579には、フィルタ要素と二つの層からなる触媒活性コーティングとを含む触媒活性微粒子フィルタが開示されている。第1の層は流入する排気ガスに接触しており、第2の層は流出する排気ガスに接触している。二つの層はともに酸化アルミニウムを含有する。ロジウムに加えて第2の相は酸素貯蔵混合セリウム/酸化ジルコニウムを含有し、第1の層はパラジウムを含有する。
【0031】
WO2010/097634には、火花点火式エンジンから排出される排気ガスから粒子状物質(PM)を濾過するためのフィルタが開示されている。このフィルタは、入口表面と出口表面とを有する多孔質基体を含み、入口表面は第1の平均細孔寸法の孔を含有する多孔質構造により出口表面から分離されており、多孔質基体は複数の固形粒子を含むウォッシュコートによりコーティングされており、ウォッシュコートされた多孔質基体の多孔質構造は、第1の平均細孔寸法より小さい第2の平均細孔寸法の孔を含有する。実施態様では、ウォッシュコートは触媒化され、特定の一実施態様において触媒はTWCである。
【0032】
EP1136115A1には、上流側触媒と下流側触媒とを含む排気ガス浄化用三元触媒が開示されている。
【0033】
本発明者はこれまで、非常に驚くべきことに、中性の全貴金属含有量に関し、上流ゾーンと下流ゾーンとの間で三元触媒の組成を再構成することにより、三元触媒の組成で均一にウォッシュコートしたフィルタ基体と比較して、逆圧が低減され、炭化水素の変換が改善され、さらには微粒子数の低減が維持されることを発見した。
【0034】
一態様によれば、本発明により、火花点火式内燃機関から排出される排気ガスから粒子状物質を濾過するための触媒化フィルタが提供される。このフィルタは、全基体長を有し、且つ入口表面及び出口表面を有する多孔質基体を含み、入口表面は第1の平均細孔寸法の孔を含有する多孔質
構造により出口表面から分離されており、多孔質基体は、(i)プラチナ及びロジウム;(ii)パラジウム及びロジウム;並びに(iii)プラチナ、パラジウム、及びロジウムから成る群より選択された少なくとも一つの貴質金属を含む三元触媒ウォッシュコート組成物であって、高表面積酸化物、及び酸素貯蔵組成物上に支持された三元触媒ウォッシュコート組成物でコーティングされており、ウォッシュコートされた多孔質基体の多孔質構造は、第1の平均細孔寸法より小さい第2の平均細孔寸法の孔を含有し、その三元触媒ウォッシュコートは、全基体長より短い第1の基体長を有する、入口表面を含む第1のゾーンと、全基体長より短い第2の基体長を有する、出口表面を含む第2のゾーンとの間で多孔質基体上に軸方向に沿って配置されており、第1のゾーンの基体長と第2のゾーンの基体長との和は≧100%であり、
(i)ウォッシュコート負荷が、第1のゾーン>第2のゾーンであるか;
(ii)全貴金属負荷が、第1のゾーン>第2のゾーンであるか;或いは
(iii)ウォッシュコート負荷及び全貴金属負荷の両方が、第1のゾーン>第2のゾーンである。
【0035】
特徴(i)及び(ii)のウォッシュコート負荷及び全貴金属負荷の、特徴(i)又は(ii)の規定に特に明記されていないものに関して、このような特徴は、入口表面と出口表面との間に均一に適用される。したがって、例えば特徴(i)はウォッシュコート負荷のみを規定しているため、第1のゾーンと第2のゾーンの両方において、全貴金属負荷は実質的に同じである。同様に、特徴(ii)では、全貴金属負荷が規定される。したがって、第1のゾーンと第2のゾーンとの間において、ウォッシュコート負荷は均一に適用される。
【0036】
平均細孔寸法は、水銀ポロシメトリによって決定することができる。
【0037】
多孔質基体は、好ましくはモノリス基体であり、焼結金属のような金属、或いはセラミック、例えば炭化ケイ素、コージェライト、窒化アルミニウム、窒化シリコン、チタン酸アルミニウム、アルミナ、ムライト、例えば針状ムライト(例えばWO01/16050参照)、ポルサイト、Al
2O
3/Fe、Al
2O
3/Ni、又はB
4C/Feのようなサーメット、或いはこれらのうちいずれか二つ以上のセグメントを含む複合物とすることができる。好ましい一実施態様では、フィルタは、複数の入口チャネルと複数の出口チャネルとを有するセラミックの多孔質フィルタ基体を含むウォールフローフィルタであり、各入口チャネル及び各出口チャネルは、多孔質構造のセラミック壁によって部分的に画定されており、各入口チャネルは多孔質
構造のセラミック壁によって出口チャネルから分離されている。このフィルタ構成は、SAE810114にも開示されており、さらなる詳細についてはこの文献を参照することができる。代替的に、フィルタは、発泡体、或いはEP1057519又はWO01/080978に開示されているもののような、いわゆるパーシャルフィルタとすることができる。
【0038】
本発明の特定の特徴として、上流側の第1のゾーンに使用されるウォッシュコート負荷を、以前に最高とされていたウォッシュコート負荷(例えば、WO2010/097634の実施例に開示されるもの)より高くすることができる。特定の一実施態様では、第1のゾーンのウォッシュコート負荷は>1.60gインチ
−3であり、好ましい実施態様では、第1のゾーンのウォッシュコート負荷は>2.4g
−3である。しかしながら、好ましくは、第1のゾーンのウォッシュコート負荷は3.0g
−3以下である。
【0039】
本発明の第1の態様による特徴(i)又は(iii)による好ましい一実施態様では、第2のゾーンのウォッシュコート負荷はゼロである。第1のゾーンにおける比較的高い貴金属負荷及び/又は第1のゾーンにおける>1.6gインチ
−3という比較的高いウォッシュコート負荷の組合せでは、このような好ましい実施態様は、有利には、良好な三元触媒活性を低い逆圧と組み合わせる。このような好ましい実施態様によれば、第1のゾーンのTWCウォッシュコート組成は、高表面積酸化物(例えば、ガンマアルミナ)、及び酸素貯蔵組成物(例えば、セリウムを含む混合酸化物を含む)上に支持された、プラチナ及びパラジウムの一方又は両方を、ロジウム、パラジウムのみ(プラチナ又はロジウムを含まない)、又はロジウムのみ(プラチナ又はパラジウムを含まない)と組み合わせて含むことができる。
【0040】
本発明による触媒化フィルタでは、第1のゾーン内の基体長と第2のゾーン内の基体長との和は≧100%であり、すなわち軸方向に間隙がないか、或いは入口表面上の第1のゾーンと出口表面上の第2のゾーンとの間に軸方向の重複がある。
【0041】
入口及び出口表面間の軸方向の重複の長さは、>10%(例えば10〜30%)とすることができ、すなわち第1のゾーン内の基体長と第2のゾーン内の基体長との和は>110%(例えば、110〜130%)とすることができる。
【0042】
第1のゾーン内の基体長は、第2のゾーンの基体長と同じでも異なっていてもよい。したがって、第1のゾーンの長さが第2のゾーンの長さと同じである場合、多孔質基体は入口表面と出口表面との比が1:1のコーティングで覆われる。しかしながら、一実施態様では、第1のゾーンの基体長<第2のゾーンの基体長である。
【0043】
実施態様では、第1のゾーンの基体長<第2のゾーンの基体長であり、例えば<45%である。好ましい実施態様では、第1のゾーン内の基質のゾーン長は<40%であり、例えば全基体長の<35%である。
【0044】
特徴(ii)又は(iii)の触媒化フィルタでは、第1のゾーン内の全貴金属負荷>第2のゾーン内の全貴金属負荷である。特定の好ましい実施態様では、第1のゾーン内の全貴金属負荷は>50gフィート
−3であるが、好ましくは60〜250gフィート
−3であり、典型的には70〜150gフィート
−3である。第2のゾーン内の前記金属負荷は、例えば<50gフィート
−3、例えば<30gフィート
−3、例えば<20gフィート
−3である。
【0045】
好ましい実施形態では、第1及び第2のゾーンは表面ウォッシュコートを含み、ウォッシュコート層は多孔質構造の表面の孔を実質的に覆い、ウォッシュコートされた多孔質基体の孔は、ウォッシュコート中の粒子間の空間(粒子間孔)により部分的に画定される。表面コーティングされた多孔質フィルタ基体の作製方法は、多孔質構造にポリマー(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)を導入すること、ポリマーを含む多孔質フィルタ基体にウォッシュコートを適用すること、並びに、乾燥させ、その後コーティングされた基体を焼成してポリマーを焼き尽くすことを含む。第1の実施態様の概略図を
図2に示す。
【0046】
多孔質フィルタ基体をコーティングする方法は、当業者には既知であり、限定しないが、WO99/47260に開示されている方法、すなわち、モノリス支持体をコーティングする方法であって、(a)支持体上に閉じ込め手段を位置決めすること、(b)所定量の液体成分を前記閉じ込め手段中に投与することを、(a)次いで(b)、又は(b)次いで(a)の順序で行うこと、並びに(c)圧力又は真空を印加することにより、前記液体成分を基体の少なくとも一部に前記液体成分を引き込み、支持体内部に前記量の実質的にすべてを保持することを含む方法を含む。このようなプロセスのステップは、任意選択の燃焼/焼成を伴う第1のコーティングの乾燥後、モノリス支持体の他端から繰り返すことができる。
【0047】
代替的に、WO2011/080525に開示される方法を使用することができ、すなわち、この方法は:(i)ハニカムモノリス基体を実質的に垂直に保持するステップ、(ii)基体の下端においてチャネルの開放端から所定の体積の液体を基体に導入するステップ、(iii)導入された液体を基体内部に密封保持するステップ、(iv)保持された液体を含有する基体を反転させるステップ、並びに(v)反転された基体の下端において基体のチャネルの開放端に真空を印加することにより、基体のチャネルに沿って液体を引き込むステップを含む。
【0048】
この好ましい実施態様では、多孔質ウォッシュコートの平均粒子間細孔寸法は、5.0nm〜5.0μmであり、例えば0.1〜1.0μmである。
【0049】
上述のように、本発明の第1の態様において使用されるTWC組成物は、通常、高表面積酸化物(例えば、ガンマアルミナ)、及び酸素貯蔵成分(例えば、セリウムを含む混合酸化物を含むもの)上に支持されたロジウムと組み合わせたプラチナ及びパラジウムの一方又は両方を含む。実施態様では、固形ウォッシュコート粒子の平均径(D50)は1〜40μmである。実際には、酸素貯蔵成分は、高表面積酸化物とは異なる粒径を有しうる。したがって、OSCは1〜10μm、例えば4〜6μmのD50を有し、高表面積酸化物は1〜10μm、例えば4〜6μmのD50を有しうる。
【0050】
さらなる実施態様では、固形ウォッシュコート粒子のD90は、0.1〜20μmである。この場合も、OSCのD90は高表面積酸化物のD90とは異なっていてよい。したがって、OSCのD90は、<18μmであり、高表面積酸化物のD90は<20μmでありうる。
【0051】
D50及びD90の測定は、体積に基づく技術(すなわち、D50及びD90はD
V50及びD
V90(或いはD(v,0.50)及びD(v,0.90))とも呼ばれる)であり、粒径分布を決定するために数学的ミー理論モデルを適用する、マルバーンマスターサイザー2000を用いたレーザ回折法による粒子径分析により行われた。界面活性剤なしで蒸留水中での超音波処理により、35ワットで30秒間、希釈されたウォッシュコートサンプルが調製された。
【0052】
好ましくは、多孔質基体はモノリス基体である。特定の好ましい実施態様では、本発明に使用される多孔質基体は、例えば、コージェライト、炭化ケイ素、又は上述した他の材料のいずれかから作製されるセラミックウォールフローフィルタである。しかしながら、例えばパーシャルフィルタ(例えば、WO01/080978又はEP1057519参照)、金属発泡体基体などの、流通モノリス以外の基体モノリスを必要に応じて使用することができる。
【0053】
実際に使用されるディーゼルウォールフローフィルタのセル密度は、本発明に使用されるウォールフローフィルタとは異なってよい。すなわち、ディーゼルウォールフローフィルタのセル密度は通常300セル/平方インチ(cpsi)以下、例えば100又は200cpsiであるので、比較的大きなディーゼルPM成分は、ディーゼル微粒子フィルタの固体前面面積に埋伏せずにフィルタの入口チャネルに入ることがあり、開放チャネルへのアクセスにケーキング及び汚れを生じるが、本発明に使用されるウォールフローフィルタは300cpsi以上、例えば350cpsi、400cpsi、600cpsi、900cpsi、又は場合によっては1200cpsiとすることができる。
【0054】
高いセル密度を使用することの利点は、フィルタがディーゼル微粒子フィルタより小さな表面積、例えば直径を有することができることで、これは車両上に排気システムを位置決めする際の設計オプションを増大させるという有用な実用上の利点である。
【0055】
本発明に使用されるフィルタの利益は、未コーティング多孔質基体の多孔率から実質的に独立していると理解される。多孔率は、多孔質基体の隙間のパーセンテージの度合いであり、排気システムの逆圧に関連している。通常、多孔率が低い程逆圧が高い。しかしながら、本発明に使用されるフィルタの多孔率は、典型的に>40%又は>50%であり、45〜75%の多孔率、例えば50〜65%又は55〜60%を使用することが有利である。ウォッシュコートされた多孔質基体の平均細孔寸法は、濾過作業にとって重要である。したがって、平均細孔寸法も比較的大きいために不良なフィルタである、比較的高い多孔率の多孔質基体を使用することが可能である。
【0056】
実施態様において、例えば多孔質フィルタ基体の多孔質構造の表面細孔の、第1の平均細孔寸法は、8〜45μm、例えば8〜25μm、10〜20μm、又は10〜15μmである。特定の実施態様では、第1の平均細孔寸法は、>18μm、例えば15〜45μm、20〜45μm、例えば20〜30μm、又は25〜45μmである。
【0057】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の第1の態様による触媒化フィルタを備え、第1のゾーンが第2のゾーンの上流に配置されている火花点火式内燃機関用排気システムを提供する。
【0058】
好ましい実施形態では、排気システムは、触媒化フィルタの上流に配置された三元触媒組成物を含む流通式モノリス基体を備える。
【0059】
第3の態様によれば、本発明は、本発明の第2の態様による排気システムを備えた火花点火式エンジンを提供する。
【0060】
スパーク点火式内燃機関などの、本発明のこの態様に使用される火花点火式内燃機機関は、ガソリン燃料、メタノール及び/又はエタノールを含む酸素化物と混合されたガソリン燃料、液化石油ガス、或いは圧縮された天然ガスにより燃料供給することができる。
【0061】
本発明によるフィルタを他の排気システムの後処理成分と組み合わせて使用することができることは明らかであり、これにより、特定の要件に従って、完全排気システム後処理装置、例えば、フィルタ上流の低熱量TWC及び/又は下流の触媒要素、例えばNO
xトラップ又はSCR触媒が提供される。したがって、比較的低温のオンドライブ(on−drive)サイクル排気ガス温度を生み出す車両の火花点火用途では、本発明者らは、本発明によるフィルタの上流に配置される低熱量TWCを使用することを検討した。車両のリーン燃焼火花点火用途に関し、本発明者らは、NO
xトラップの上流又は下流に本発明によるフィルタを使用することを考えた。車両の理論空燃比で動作する火花点火式エンジンでは、単独の触媒的排気システム後処理コンポーネントとして本発明によるフィルタを使用することができると考えられた。すなわち、特定の用途では、本発明によるフィルタは、間に位置する触媒に干渉することなく、エンジンに隣接してエンジンと直接流体連通する、及び/又は排気ガス後処理システムから大気への出口は、間に位置する触媒に干渉することなく、本発明によるフィルタに隣接して本発明によるフィルタと直接流体連通する。
【0062】
TWCのもう一つの要件は、それ自体の耐用年数の診断機能、いわゆる「自己故障診断」又はOBDを提供する必要があることである。TWCの酸素貯蔵能が不十分である場合、TWCのOBDプロセスは残りの酸素貯蔵能を残りの触媒機能の診断に使用するため、OBDに問題が生じる。しかしながら、US2009/0193796及びWO2009/043390に開示される特定の実施例におけるように、フィルタ上のウォッシュコート負荷が不十分である場合、OBDのために正確なOSC「デルタ」を提供するために存在するOSCが十分でない可能性がある。本発明によりウォッシュコート負荷は現在の最新式TWCに近づくので、本発明に使用されるフィルタは現在のOBDプロセスに有利に使用することができる。
【0063】
第4の態様によれば、本発明は、火花点火式内燃機関の排気ガス中の一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物、及び粒子状物質を同時に転換する方法を提供し、この方法は、本発明の第1の態様による触媒化フィルタにガスを接触させるステップを含む。
【0064】
本発明の完全な理解を促すために、添付図面を参照する。
【発明を実施するための形態】
【0066】
図2は、表面細孔12を含む多孔質フィルタ基体10の断面図を示している。
図2に示す一実施形態は、固形ウォッシュコート粒子からなる多孔質表面ウォッシュコート層14を特徴とし、そのような粒子間の空間によって細孔が画定されている(粒子間細孔)。図示のように、ウォッシュコート層14は多孔質構造の細孔12を実質的に覆っており、粒子間細孔16の平均細孔寸法は多孔質フィルタ基体10の平均細孔寸法12より小さい。
【0067】
図3は、車両の火花点火エンジン13とその排気システム15とを備える、本発明による装置11を示す。排気システム15は、触媒後処理コンポーネント、すなわち、エンジンの排気マニホルドの近く(いわゆる近位連結位置)に配置された不活性コージェライト流通基体18上にコーティングされたPd−RhベースのTWCをリンクするコンジット17を備える。次いで近位連結触媒18の下流には、コージェライトウォールフローフィルタ20上にコーティングされたPd−Rhベースのゾーン式TWCがあり、このTWCの全長のうち、ウォールフローフィルタの上流又は入口端から測定して全長の3分の1の長さには、85gフィート
−3という比較的高い貴金属負荷を含む2.8gインチ
−3のウォッシュコーティング負荷(80Pd:5Rh)でコーティングされた入口チャネルがあり、このコーティングは第1のゾーン22を画定している。出口チャネルは、ウォールフローフィルタの下流又は出口端から測定してウォールフローフィルタの全長の3分の2にコーティングされたPd−RhベースのTWCであり、そのウォッシュコート負荷は、18gフィート
−3という比較的低い貴金属負荷を含む1.0gインチ
−3である(16Pd:2Rh)。このコーティングは第2のゾーン24を画定している。
【0068】
本発明のさらに完全な理解を促すために、例示のみを目的として以下に実施例を提示する。実施例において引用されるウォッシュコート負荷は、WO2011/080525に記載の方法を用いて得られた。
【実施例】
【0069】
実施例1
寸法4.66×5.5インチ、300セル/平方インチ、壁厚1000分の12インチで、平均細孔寸法20μm及び多孔率65%を有する二つのコージェライトウォールフローフィルタの各々を、互いに異なる構成のTWC組成物でコーティングした。いずれも、適用時にコーティングがウォールフローフィルタ壁の表面(「壁上(on−wall)」に優先的に位置するように、TWC組成物をD90<17μmまで粉砕した。
【0070】
第1のフィルタ(表1で「均一な」ウォッシュコート負荷を有するとして示されているもの)は、フィルタの入口側として意図されたチャネル内の、開放チャネル端から測定してフィルタ基体の全長の33.3%を標的として延びるTWCウォッシュコートゾーンにおいて、ウォッシュコートでコーティングされた。ウォッシュコートは、85g/フィート
3の貴金属負荷を含み(80Pd:5Rh)、ウォッシュコート負荷は2.4g/インチ
3であった。出口チャネルは、開放チャネル端から測定してフィルタ基体の全長の66.6%の長さにコーティングされ、ウォッシュコートは18g/フィート
3の貴金属負荷を含み(16Pd:2Rh)、ウォッシュコート負荷はこちらも2.4g/インチ
3であった。X線画像化を使用して、入口チャネルゾーンと出口チャネルゾーンとの間に長軸方向の平面内に重複が発生していることを確認した。したがって、ウォッシュコート負荷は第1のゾーンと第2のゾーンとの間で均一であるが、白金族属負荷は第1のゾーン>第2のゾーンであった。すなわち、第1のフィルタは請求項1の特徴(ii)によるものである。
【0071】
第2のフィルタ(表1で「ゾーン式」ウォッシュコート負荷を有するとして示されているもの)は、入口チャネル内の、開放チャネル端から測定してフィルタ基体の全長の33.33%を標的として延びるTWCウォッシュコートゾーンにおいて、ウォッシュコートでコーティングされた。ウォッシュコートは85g/フィート
3の貴金属負荷を含み(80Pd:5Rh)、ウォッシュコート負荷は2.8g/インチ
3であった。出口チャネルは、開放チャネル端から測定してフィルタ基体の全長の66.66%の長さにウォッシュコートでコーティングされた。ウォッシュコートは18g/フィート
3の貴金属負荷を含み(16Pd:2Rh)、ウォッシュコート負荷は1.0g/インチ
3であった。X線画像化を使用して、入口チャネルゾーンと出口チャネルゾーンとの間に長軸方向の平面内に重複が発生していることを確認した。したがって、ウォッシュコート負荷及び白金族金属負荷の両方は、第1のゾーン>第2のゾーンであった。すなわち、第2のフィルタは請求項1の特徴(iii)によるものである。
【0072】
第1のフィルタ及び第2のフィルタの全貴金属含有量は同一である。
【0073】
各フィルタを1100℃で4時間にわたり熱水的にオーブン老化させ、2.0Lの直接噴射式ガソリンエンジンを有するEuro5乗用車の近位連結位置に取り付けた。各フィルタを最低三回のMVEG−Bドライブサイクルで評価し、標準触媒と比較した場合の粒子数排出の低減を測定した。標準触媒は、第1及び第2のフィルタと同じ寸法を有する600セル/平方インチのコーディライト流通基体モノリスに均一にコーティングしたTWCであった。このTWCのウォッシュコート負荷は3gインチ
−3であり、貴金属負荷は33gフィート
−3(30Pd:3Rh)であった。逆圧の差異は、フィルタ(又は標準触媒)の上流と下流とに取り付けられたセンサ間で決定された。
【0074】
ヨーロッパでは、2000年より(Euro3排出基準)、排出はNEDC(New European Driving Cycle)によって試験されている。この試験は、以前のECE15ドライビングサイクルを四回繰り返すことに加え、EUDC(Extra Urban Driving Cycle)を一回行うことからなり、排出サンプリングを開始する前に40秒のウォームアップ期間を設けない。この修正版コールドスタート試験は「MVEG−B」ドライブサイクルとも呼ばれる。全ての排出はg/kmで表される。
【0075】
法律を施行するEuro5/6により、UN/ECEのPMP(Particulate Measurement Programme)により開発された新しいPM体積排出測定法が導入されている。PMPは、旧方法と新方法を使用して結果に生じる差異を考慮してPM体積排出限度を調節する。Euro5/6法により、体積に基づく限度に加えて粒子数排出限度(PMP法)も導入されている。
【0076】
試験の結果を表1に示す。表では、ゾーン式構造でウォッシュコートされたフィルタに逆圧の改善が見られ、且つ均一にウォッシュコートされたフィルタより粒子数低減レベルが良好であることが分かる。低い粒子数低減に中程度の低減があるものの、第2のフィルタは依然として完全なEuro6+(2017)基準の限度を満たしている。
【0077】
【0078】
実施例2
寸法4.66×4.5インチ、300セル/平方インチ、壁厚1000分の12インチで、平均細孔寸法20μm及び多孔率65%を有する二つのコージェライトウォールフローフィルタの各々を、互いに異なる構成のTWC組成物でコーティングした。いずれも、適用時にコーティングがウォールフローフィルタ壁の表面(「壁上(on−wall)」に優先的に位置するように、TWC組成物をD90<17μmまで粉砕した。
【0079】
第3のフィルタ(表2で「均一な」白金族金属負荷(比較例)を有するとして示されているもの)は、フィルタの入口側及びフィルタの出口側として意図されたチャネル内の、開放チャネル端から測定してフィルタ基体の全長の50%を標的として延びるTWCウォッシュコートゾーンにおいて、ウォッシュコートでコーティングされた。ウォッシュコートは60g/フィート
−3の貴金属負荷を含み(57Pd:3Rh)、ウォッシュコート負荷は2.4g/インチ
3であった。
【0080】
第4のフィルタ(表2で「「ゾーン式」PGM負荷を有するとして示されているもの)は、フィルタの入口側として意図されたチャネル内の、開放チャネル端から測定してフィルタ基体の全長の50%を標的として延びるTWCウォッシュコートゾーンにおいて、ウォッシュコートでコーティングされた。ウォッシュコートは100g/フィート
−3の貴金属を含み(97Pd:3Rh)、ウォッシュコート負荷は2.4g/インチ
3であった。出口チャネルは、開放チャネル端から測定してフィルタ基体の全長の50%を標的として延びるTWCウォッシュコートゾーンにおいて、ウォッシュコートでコーティングした。ウォッシュコートは20g/フィート
−3の貴金属を含み(17Pd:3Rh)、ウォッシュコート負荷はこの場合も2.4g/インチ
3であった。すなわち、第4のフィルタは請求項1の特徴(ii)によるものである。
【0081】
第3のフィルタ及び第4のフィルタの全貴金属含有量は同一である。
【0082】
各フィルタを1100℃で4時間にわたり熱水的にオーブン老化させ、1.4Lの直接噴射式ガソリンエンジンを有するEuro5の乗用車の近位連結位置に取り付けた。各フィルタを最低三回のMVEG−Bドライブサイクルで評価し、標準触媒と比較した場合の粒子数排出の低減を測定した。実施例1に記載されたものと同じ方法でピーク逆圧(BP)も評価した。
【0083】
実験室試験のセル内に装着された単独のエンジンで、炭化水素着火温度(触媒が、供給ガス中の炭化水素の変換を50%以上の効率で触媒する際の温度)を評価した。このエンジンは2.0リットルのターボチャージ式直接噴射式ガソリン機関であった。排気ガスの温度を注意深く調節し、温度ヒートシンクとスロットル位置の上昇とを組み合わせて使用することにより、所定の期間で250〜450℃から上昇させ、その間に触媒の変換効率を測定して記録した。
【0084】
フィルタ基体中の貴金属をゾーンコーティングした結果を表2に示す。この表からは、二つのフィルタのウォッシュコート負荷が同一であることから予想できるように、流通式標準触媒と比較した場合の粒子数の低減(%)が同一であることが分かる(第3及び第4フィルタと同じ寸法を有する600セル/平方インチのコーディライトモノリス基体上において、3gインチ
−3の均一なウォッシュコート負荷で、均一な60gフィート
−3貴金属含有量(57Pd:3Rh))。しかしながら、炭化水素着火は、ゾーン式構造より均一なPGM構成で高い。これは、入口側のPGMの濃度が高いことに帰することができる。
【0085】
【0086】
実施例3
寸法4.66×5.5インチ、300セル/平方インチ、壁厚1000分の12インチで、平均細孔寸法20μm及び多孔率65%を有する二つのコージェライトウォールフローフィルタの各々を、互いに異なる構成のTWC組成物でコーティングした。第1の、標準フィルタは、全白金族金属1フィート
3につき40gの同じ三元触媒ウォッシュコートを用いて、及び全部で1.6g/インチ
3のウォッシュコート負荷で、入口端からフィルタ全長の50%の長さと、出口端からフィルタ全長の50%の長さとに、ゾーン式に均一にコーティングされた。本発明によれば、第2のフィルタは、標準実施例に使用されたものと同一の三元触媒ウォッシュコートを用いて、入口端からフィルタの全長の50%の長さまで、ゾーンコーティングされた。出口端ゾーンはいずれのウォッシュコートも施さずに裸のまま残した。第1の、入口ゾーンにおける全白金族金属負荷は、2.4g/インチ
−3のウォッシュコート負荷で80g/フィート
−3であり、すなわち白金族金属負荷は、標準実施例と本発明によるフィルタとで同一であった。
【0087】
コーティングされたフィルタの各々を、10%の水/空気で5時間にわたり950℃で熱水的にオーブン老化させた。各パーツの低温流れの逆圧を、室温及び室圧で空気を引き込むSuperFlow(登録商標)逆圧実験室試験装置を用いて、室温で測定した。結果を以下の表に示す。この表から、試験された流速の範囲に関し、標準実施例により生成された逆圧は、同じ貴金属負荷の本発明によるフィルタより有意に高いことが分かる。
【0088】
【0089】
いかなる疑義も生じないように、本明細書に引用したすべての先行技術文献の内容全体を、参考として本明細書に包含する。