(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも1種の(a)及び不透明なポリマー粒子と、(b)ポリマー又は複数のポリマーの乳化液であって、該ポリマーの表面上に結合又は吸着した顔料を有する前記乳化液と、を含む、請求項7に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願において用いられる「a」、「an」、「the」、「少なくとも1種」、及び「1種又は複数種」は、同義として用いられる。用語「含む」、「含有する」及びこれらの派生語は、それらが明細書及び特許請求の範囲にある場合に、限定の意味をもたない。従って、例えば、「a」疎水性ポリマーの粒子を含有する水性組成物は、当該組成物が、「1種又は複数種」の疎水性ポリマーの粒子を含有することを意味するものと解することができる。
【0012】
また、本願において、端点による数値範囲の記載は、当該範囲に包含される全ての数字(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等)を含む。本発明の目的に対し、数値範囲は、当該範囲に含まれる全ての可能な部分範囲を含有及び支持することが意図されることが理解されるべきであり、これは当業者が理解するであろうこととも整合する。例えば、1〜100の範囲は、1.01〜100、1〜99.99、1.01〜99.99、40〜60、1〜55等を伝えることが意図される。また、本願において、数値範囲及び/又は数値の記載(特許請求の範囲におけるかかる記載を含む。)は、用語「約」を含むと読むことができる。かかる場合においては、用語「約」は、本願において記載される数値範囲及び/又は数値と実質的に同等の数値範囲及び/又は数値をいう。
【0013】
本発明は、特に、少なくとも1種の、次式
【化1】
(式中、R1は少なくとも3の炭素原子のアルキル基であり、nは4〜6の平均値を有する。)に示すように描くこともできる、式R1(O−CH
2−CH(CH
3))
n−OHのグリコールエーテルを含むグリコールエーテル造膜助剤組成物であって、該グリコールエーテルの少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%に対してn=4であり、該グリコールエーテルの15重量%以下が3以下のnの値を有する、上記組成物に関する。本発明の一実施形態において、R1は3〜7の炭素原子のアルキル基である。上記造膜助剤組成物中に存在し得るグリコールエーテルの例としては、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ペンタプロピレングリコールn−ブチルエーテル及びより高分子量のグリコールエーテルが挙げられる。本発明の一実施形態において、グリコールエーテル組成物のR1は、主として4〜6の炭素原子のアルキル部分からなる。本発明の一実施形態において、R1はブチルであり、他の実施形態においては、R1はn−ブチルである。本発明の一実施形態において、上記組成物の上記グリコールエーテルの少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも70重量%に対してn=4である。テトラプロピレングリコールn−ブチルエーテルが、本発明の一実施形態における上記組成物中の上記グリコールエーテルの少なくとも70重量%である。上記グリコールエーテルの15重量%以下、好ましくは10重量%以下が、3以下のnの値を有することが有利である。
【0014】
本発明のグリコールエーテル組成物は、有利には280℃を超える、好ましくは286℃を超える、より好ましくは290℃を超える、760mmHg(101,324kPa)での沸点を有する特定のグリコールエーテル造膜助剤を含む。本発明は、水性高分子分散液と本発明の低VOC造膜助剤とを含む組成物、及び塗装の形成方法を包含する。本発明のグリコールエーテルは、一般的には、造膜助剤としての使用を容易にするために、0〜25℃の温度範囲において液体である。
【0015】
本発明のグリコールエーテルは、アルコールをプロピレンオキシドと反応させることにより得ることができる。ポリプロピレングリコールモノブチルエーテルなどの好ましいグリコールエーテルは、n−ブタノールをプロピレンオキシドと反応させることにより調製される。いくつかの当業者に公知の合成方法の内の任意の方法を用いて、上述のグリコールエーテルを調製することができる。一つの方法は、化学両論量のプロピレンオキシドとn−ブタノールとを反応させることを伴う。上述の任意の方法によって得られるグリコールエーテルは、蒸留によるなどの当業者に公知の方法に従って精製して、所望の留分を生成することができる。本発明の一実施形態において、蒸留は減圧下で行われ、例えばフラッシュ蒸留による。
【0016】
上記反応は、回文式方法又は連続式方法で行うことができる。アルカリ触媒を用いて反応を促進することができる。過剰なブタノール、及びモノ−、ジ−及び/又はトリプロピレングルコールモノブチルエーテルは、蒸留などの公知のプロセス技術によって、実質的に除去及び分離される。反応混合物が実質的に触媒を含まない状態となるように、触媒を反応混合物から除去することが可能であり、本発明の一実施形態において、触媒が反応混合物から除去される。蒸留プロセスの滞留時間は、生成物の分解を回避するために、最小限とすることが有利である。
【0017】
本発明の一態様において、水性高分子分散液、及び水性高分子分散液の固形分の重量を基準として0.1重量%〜40重量%の、本願中上述のグリコールエーテル造膜助剤を含む水性塗装剤組成物が提供される。
【0018】
「造膜助剤組成物」は、水性高分子分散液、特に、例えば乳化重合技法によって調製されるポリマーなどの、水性媒体中のポリマー分散液を始めとする水性塗装剤組成物の成膜を容易にする組成物を意味する。成膜の円滑化の指標は、当該造膜助剤の添加により、上記水性高分子分散液を始めとする組成物の最低成膜温度(minimun film forming temperature)(「MFFT」)が測定可能に低下することである。
【0019】
本発明の水性塗装剤組成物は、水性高分子分散液、及び水性高分子分散液の固形分の重量を基準として0.1重量%〜40重量%の本発明の造膜助剤を含む。一実施形態において、水性高分子分散液のMFFTが−5℃〜100℃である場合、水性高分子分散液の固形分の重量を基準として0.1重量%〜30重量%の造膜助剤を用い得る。あるいは、水性高分子分散液のMFFTが−20℃〜30℃である場合、水性高分子分散液の固形分の重量を基準として0.1重量%〜5重量%の造膜助剤を用い得る。本願における水性高分子分散液のMFFTとは、ASTM D2354及び5ミルのMFFTバーを用いて測定されるMFFTである。MFFT値は、所与の水性高分子分散液に対して、造膜助剤がどの程度効率的であるかの指標であり、最小量の造膜助剤によって最低可能MFFTを達成することが望ましい。水性高分子分散液は、水性媒体中にポリマー、オリゴマー、プレポリマー、又はそれらの組み合わせを含む分散液とし得る。一部の実施形態において、水性高分子分散液は、成膜の前、最中、又はその後において反応性とし得る。本願において、「水性媒体」とは、当該媒体の重量を基準として少なくとも50重量%の水を含む媒体を意味する。一般的な水性高分子分散液は、エポキシ、ウレタン、アクリル性ポリオール、ポリエステル、及びこれらと他の化学とのハイブリッドの水性分散液、並びに乳化ポリマーである。本発明の一実施形態において、本発明の造膜助剤組成物は、用いられる造膜助剤の全体量のVOCの15重量%以下、好ましくは10重量%以下を占める。
【0020】
一部の実施形態において、水性高分子分散液は反応システムの一部である。例えば、エポキシ分散液システムなどの2kシステムにおいて、造膜助剤は、エポキシ分散液を含む成分、あるいは硬化剤成分のいずれかに添加するか、又は当該システムの両成分に分配することができる。
【0021】
バインダーの選択は特に重要ではなく、バインダーは、例えば、スチレン−アクリル、全てアクリル、及びビニルアクリル高分子バインダーを始めとする本技術分野で公知の全ての種類のバインダーから選択することができる。本発明の一実施形態において、バインダーは内装壁用塗料への使用に好適なバインダーである。
【0022】
上記乳化ポリマー粒子の平均粒子径は、特に重要ではないが、有利には40nmから1000nmであり、好ましくは40nm〜300nmである。本願における粒子径とは、Brookhaven BI−90 Plus粒径分析器上で動的光散乱によって測定される粒子径である。
【0023】
本発明は、(a)高分子バインダーと、(b)任意選択で、顔料と、(c)水と、(d)本願に上述したような造膜助剤組成物と、を含む水性塗装剤組成物を包含する。上記塗装剤組成物は、例えば、壁用塗料、床塗装剤、天井用塗料、及び窓枠塗装剤などへの使用に用いることができる。
【0024】
本発明の水性塗装剤組成物は、塗装剤技術分野において周知の技法によって調製することができる。まず、用いる場合は、顔料(複数可)が、COWLES(商標)混合機により賦課されるような高いせん断下で水性媒体中によく分散されるか、あるいは予め分散された着色剤(複数可)又はそれらの混合物が用いられる。次に、低せん断の撹拌下で、乳化ポリマーが、造膜助剤及び所望ならば他の塗装剤補助剤と共に添加される。該水性塗装剤組成物は、水性高分子分散液及び任意選択の顔料(複数可)に加えて、例えば、エクステンダー、乳化剤、本発明の造膜助剤組成物以外の造膜助剤、可塑剤、不凍剤、硬化剤、緩衝材、中和剤、増粘剤、粘弾性改質剤、保水材、湿潤剤、殺生物剤、可塑剤、消泡剤、UV吸収剤、蛍光増白剤、光及び/又は熱安定剤、殺生物剤、キレート剤、分散剤、着色剤、ワックス、及び撥水剤などの、従来からの塗装剤補助剤を含み得る。
【0025】
顔料は、例えば有機及び無機の有色顔料を始めとする、塗装剤の技術分野の当業者に公知の広範な材料から選択することができる。好適な顔料及びエクステンダーの例としては、アナターゼ及びルチル二酸化チタンなどの二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化鉄、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、シリカ、カオリン及び離層クレーなどの種々のクレー、及び酸化鉛が挙げられる。上記水性塗装剤組成物は、例えばROPAQUE(商標)Opaque Polymers(The Dow Chemical Companyより入手可)などの不透明ポリマー粒子を含むこともできることもまた企図される。カプセル化された又は部分的にカプセル化された隠ぺい性顔料粒子、及び、例えばEVOQUE(商標)ポリマー(The Dow Chemical Companyより入手可)などの、二酸化チタンなどの顔料の表面に吸着又は結合したポリマー又はポリマー乳化液、及び1又は複数の空隙を有する顔料を始めとする中空顔料もまた企図される。
【0026】
二酸化チタンは、建築用塗料において隠ぺいを得るために用いられる主たる顔料である。この顔料は高価であり、供給不足にある。TiO
2の量を低減しつつ隠ぺいを得るための一つの方法は、一般に「不透明ポリマー」として知られ、塗膜に隠ぺい性を付与する、多段階乳化ポリマーを含有せしめることである。これらのポリマーは、主モノマーとしてスチレンを用いて重合した粒子などの、高いT
gを有する水充填乳化ポリマー粒子である。これらの粒子は、成膜の間に空気で満たされ、光を散乱し、それにより隠ぺい性を生み出す。
【0027】
上記水性塗装剤組成物中の顔料及びエクステンダーの量は、0〜85の顔料容積濃度(PVC)で変化し、それにより、本技術分野で、例えば、クリアー塗装、ステイン、フラット塗装、サテン塗装、半光沢塗装、光沢塗装、プライマー、テクスチャー塗装などと別途に記載される塗装を包含する。本願において、上記水性塗装組成物は、建築用塗装剤、補修用塗装剤、及び工業用塗装剤、コーキング剤、封止材、及び接訳剤を明示的に包含する。顔料体積濃度は、以下の式により算出される。
PVC(%)=(顔料(複数可)の体積+エクステンダー(複数可)の体積×100)/(塗料の全乾燥体積)
【0028】
上記水性塗装剤組成物の固形分含有量は、10体積%〜70体積%とし得る。水性塗装剤組成物の粘度は、ブルックフィールド粘度計を用いて測定したものとして、50センチポイズ〜50,000センチポイズとすることができ、当業者に公知の通り、異なる塗工方法に対して適する粘度は顕著に変化する。
【0029】
本発明の塗装の形成方法において、上記水性塗装剤組成物は、一般的には、例えば、木材、金属、プラスチック、海洋及び土木基材、予め塗装された、すなわち下塗りされた表面、風化した表面、及び、例えばコンクリート、スタッコ、及びモルタルなどのセメント系基材などの基材に塗布される。水性塗装剤組成物は、例えば、刷毛、ローラー、コーキング塗布器、ロール塗工、グラビアロール、カーテンコーター及び、例えば、エアアトマイズ噴霧、エアアシスト噴霧、エアレス噴霧、高容積低圧噴霧、及びエアアシストエアレス噴霧などの噴霧方法などの、従来の塗工方法を用いて基材に塗布し得る。
【0030】
塗装を提供するための上記水性塗装剤組成物の乾燥は、例えば5℃〜35℃のような周囲条件下で進行させてもよく、また該塗装は、例えば35℃を超え150℃までなどの加熱温度で乾燥されてもよい。
【0031】
本発明の具体的な実施形態
以下の例は本発明を例証するために提示されたのであり、本発明の範囲を限定するものと理解されるべきではない。全ての部及びパセンテージは、別段の表示がない限りにおいて重量による。
【0032】
例1 造膜助剤Aの調製
プロピレングルコールモノブチルエーテルのオリゴマー(nが少なくとも3)を含む粗ポリプロピレングルコールモノブチルエーテルを、薄膜蒸発器中、約10ミリバールの圧力下で精製することにより、テトラプロピレングリコールモノブチルエーテルを含む造膜助剤組成物を製造する。生成物の分解を最小化するために、薄膜蒸発器中の滞留時間を短くする。
【0033】
蒸留すべき原料が蒸発器に入り、直ちに分配される。これにより蒸発器の器壁上に薄膜が形成される。400℃程度に高い大気圧相当沸点を示す揮発性物質を蒸発させ、凝縮させ、これを収取する。蒸発しない物質を残渣として、装置の底部で収取する。蒸発させた物質がテトラプロピレングルコールモノブチルエーテルを含む造膜助剤組成物であり、造膜助剤Aと名付ける。
【0034】
造膜助剤Aの特性を、広く使用されている市販の造膜助剤、UCAR(商標)FILMER IBT(Dow Chemical Companyより入手可)と比較し、その結果を表1に示す。以下の実験においては、UCAR(商標)Filmer IBTが比較対照の造膜助剤である。
【0035】
造膜助剤の物性
【表1】
*UCAR(商標)FILMER IBT:2,2,4トリメチル1,3ペンタンジオールモノイソブチレート(TMB)、ISO16000−6に準拠してn−ヘキサンとn−ヘキサデカンの間で留出。
【0036】
バインダーの特性
造膜助剤の評価の焦点を、内装の壁、床、天井及び窓枠用塗料における使用に当てるため、2種の適当なバインダーを選択する。
UCAR(商標)Latex DL−420G銘柄のスチレン−アクリルバインダー、Dow Chemical Companyより入手可。
PRIMAR(商標)AC−337ER銘柄の純粋なアクリルバインダー、Dow Chemical Companyより入手可。
スチレン−アクリレートは、艶消し塗料及びサテン塗料向けに販売されるより大きな販売量のバインダーを代表し、一方純粋なアクリルはより高品質の塗料に用いられる。これらのバインダーの主要な特性を表2にまとめる。
【0037】
バインダーの物性
【表2】
*最低成膜温度
【0038】
例2 造膜助剤のMFFT低下効能
乾燥固形分を基準として、0〜15重量%の造膜助剤濃度を用いて、ラテックス−造膜助剤配合物を調製する。MFFTは、MFFTバー「60 Minimum Film Forming Temperature Rhopoint Instrument」上で、0〜18℃の温度範囲を用いて測定する。次に、最低成膜温度の低下における効率を評価する。
【0039】
前の段落の方法に従って、それぞれのバインダーに関する最適な造膜助剤濃度を、乾燥固形分基準で規定した。
・UCAR(商標)Latex DL−420G(固形分49%)に関しては10%
・PRIMAR(商標)AC−337ER(固形分45.5%)に関しては8%
【0040】
バインダーのみと、規定した濃度でのバインダー−造膜助剤との間のMFFTデルタを測定することにより、固定した濃度で、MFFT低下効率を比較対照であるUCAR(商標)Filmer IBTと比較すると、造膜助剤AはUCAR(商標)Filmer IBTと類似した特性を示すことを見て取ることができる。
【0041】
固定した造膜助剤濃度におけるデルタMFFT
【表3】
【0042】
例3 塗料の形成
表4に記載するような2種の35重量%PVC配合物を製造する。
【0044】
上記グラインドは二酸化チタン、炭酸カルシウム(粒径2μm)及び超微細粒子径焼成ケイ酸アルミニウムから構成され、ポリアクリレート分散剤と共にセルロース系増粘剤が用いられる。上記レットダウンは、バインダー及び、目標を1とするICI粘度を得るための非イオン性ウレタン粘弾性改質剤から構成される。ROPAQUE(商標)Ultra Eを不透明ポリマーとして用いる。最後に、缶内防腐性及び膜保護性を付与するための2種の殺生物剤の配合物を選択する。
【0045】
造膜助剤の濃度は、UCAR(商標)Latex DL−420Gに関しては乾燥バインダーを基準として10重量%、PRIMAR(商標)AC−337ERに関しては乾燥バインダーを基準として8重量%である。この文脈における「乾燥」は、液体が存在しないことを意味する。
【0046】
全てのラテックス配合物の膜及び塗料の膜は、制御温度室(CTR)中にて25℃で乾燥する。
【0047】
例4 UCAR(商標)Latex DL−420Gに基づく塗料
UCAR(商標)Latex DL−420Gに基づく塗料の硬度の進展
UCAR(商標)Latex DL−420Gに基づく塗料の、100μmの湿潤厚さの膜をガラス板上に塗布し、次にこの板を制御温度室(CTR)中に格納し、その硬度の進展を、ケーニッヒ振り子を用いて測定する。
【0048】
時間に対するUCAR(商標)DL−420Gに基づく10wt%塗料の硬度
【表5】
【0049】
表5のデータは、時間に対する、UCAR(商標)DL−420Gを用いて作製した10重量%塗料の硬度に関する結果を示し、造膜助剤Aを用いて作製した塗料はより低い硬度値を与えることを表し、造膜助剤Aは、UCAR(商標)Filmer IBTを用いて調製した塗料に比較して、硬度をより緩慢に進展させることを表している。
【0050】
粘弾性及び塗料安定性
表4の塗料の粘弾性プロファイルを測定する。ICI粘度の目標は1であり、0.8と1.2との間の値が観測される。
【0052】
クレブス単位ストーマー粘度も測定し、相当に類似する目標とするICI値において、造膜助剤Aに関してクレブス単位における顕著な低下が観測される。
【0053】
クレブス単位ストーマー粘度
【表7】
【0054】
60℃で10日間の塗料のエイジング後に、上記塗料の熱老化安定性を確認する。そして、ブルックフィールド粘度を測定する。安定性比を(10日目の粘度/初期粘度)として定義する。30rpm及び60rpmの両方について、1と1.2との間の値が観測される。上記塗料はむしろ安定であり、熱老化の後に、30rpm及び60rpmの両方について、それぞれ、粘度の非常に小さな差異しか示さない。
【0055】
安定性比(30及び60rpmでのブルックフィールド粘度)
【表8】
【0056】
隠ぺい性
UCAR(商標)Latex DL−420Gに基づく塗料の隠ぺい性能を確認する。Lenetaチャート上に100μmの湿潤フィルム厚さで塗料を塗布し、一定の温度で約4日間(25℃)乾燥する。乾燥した塗膜に関し、UCAR(商標)Filmer IBTに基づく塗料を比較対照として用いて、隠ぺい率を測定する。
【0057】
異なる造膜助剤を用いたUCAR(商標)DL−420Gに基づく塗料の隠ぺい性能
【表9】
造膜助剤A塗料の隠ぺい性は、実質的に比較対象塗料と同等である。
【0058】
光沢度の測定
塗料の光沢度は、ガラス板上、100μmの湿潤厚さのフィルムを塗布し、CTR中で約4日間乾燥した後に測定する。光沢度は3つの角度、20、60及び85度で測定し、60度光沢度は半光沢塗料及びサテン塗料を占め、85度光沢度は高光沢高輝性塗料を占める。
【0059】
異なる造膜助剤を配合したDL420G塗料の光沢度
【表10】
造膜助剤A塗料は、比較対照よりもより高い60度及び85度光沢度値を示す。
【0060】
着色塗料
塗料の彩色のために、200mlの塗料当たり2.52gのCOLORTREND Plus 802−907ランプブラック着色剤を用いる。彩色ペーストの添加後、約24時間平衡化を行う。その後粘度プロファイルを確認すると、大きな差は示さず全ての塗料について着色剤受容性は申し分なく、擦り取れる問題は認められない。全ての造膜助剤に関して、顔料分散は良好である。
【0061】
接触角の測定
接触角は、検討する造膜助剤を用いたDL420G塗料について、ガラス板上に100μmの湿潤塗料を塗布し、これらをCTR中で約1週間乾燥した後に、その乾燥膜上で測定する。水滴を基剤の異なる位置に置いた後に写真を撮影する。測定は各塗料について3点の異なる箇所で行う。
造膜助剤A塗料は、UCAR(商標)Filmer IBT塗料よりもより大きな接触角を有する。
【0063】
DL−420G塗料中でのUCAR(商標)Filmer対比での低VOC造膜助剤の比較評価のまとめ
【表12】
造膜助剤A塗料は、表12に示すように、優れた光沢度及び隠ぺい性能を示す。
【0064】
例5 Primal(商標)AC−337ERに基づく塗料及びバインダー−造膜助剤配合物
バイダーとしてPrimal(商標)AC−337ERバインダーを用いた以外は例4と同様の評価経路を繰り返す。
【0065】
Primal(商標)AC−337ERに基づく塗料の硬度評価
UCAR(商標)Filmer IBTは造膜助剤Aよりもより速やかに硬度を進展せる。
【0066】
Primal(商標)AC−337−ERに基づく塗膜の硬度の進展
【表13】
【0067】
粘弾性及び塗料安定性
表4のPRIMAL塗料の粘弾性プロファイルを測定する。ICI粘度の目標は1であり、両方のICI値は目標を超える。
クレブス単位ストーマー粘度は、UCAR(商標)Latex DL−420Gに基づく塗料に関して見られる値に比較して、より高い値が観測される。
上記の、観測されるより高い粘度は、おそらくPrimal(商標)AC−337ERバインダーが、より小さな平均粒径、115〜125nm、に起因する、化学結合性の増粘剤PM2020とのより高い反応性に関連する。
【0069】
クレブス単位ストーマー粘度
【表15】
【0070】
60℃で10日間の塗料のエイジング後に、上記塗料の熱老化安定性を確認する。そして、ブルックフィールド粘度を測定する。全ての塗料に関して熱老化安定性は良好であり、表16には粘度の小さな差異が示される。
【0071】
安定性比(60rpmでのブルックフィールド粘度)
【表16】
【0072】
隠ぺい性
異なる塗料の隠ぺい性能を評価する。100μmの厚さで塗料を塗布し、CTR中で約4日間乾燥し、その後UCAR(商標)Filmer IBTを比較対照として用いて隠ぺい率を測定する。
【0073】
異なる造膜助剤を用いたPrimal(商標)AC−337ERに基づく塗料の隠ぺい性能
【表17】
Primal(商標)AC−337ERに基づく塗料に関して、スチレン−アクリルバインダーUCAR(商標)Latex DL−420Gに基づく塗料に関する隠ぺい性能に関する値に比較して、より高い隠ぺい率の値が得られる。
UCAR(商標)Filmer IBTを用いて作製された塗料は、造膜助剤Aを用いて調製された塗料よりもより良好な隠ぺいを達成する。
【0074】
光沢度の測定
塗料の光沢度は、塗料をガラス板上に100μmの湿潤厚さで塗布し、一定の室温で約4日間乾燥した後に測定する。光沢度は3つの角度、20、60及び85度で測定する。造膜助剤A膜は、UCAR(商標)Filmer IBT塗料膜に比較して、20度、60度及び85度において、より高い光沢度値を示す。
【0075】
AC−337ER塗料の光沢度測定
【表18】
【0076】
着色塗料
UCAR(商標)Latex DL−420Gに基づく塗料と同様に、PRIMAL(商標)AC−337ERに基づく塗料は、全ての塗料について良好な着色剤受容性を示し、擦り取れる問題は認められない。全ての造膜助剤に関して良好な顔料分散が観察される。彩色の後に約24時間平衡化を行い、次に粘度プロファイルを確認すると、大きな差は示さない。
【0077】
接触角の測定
接触角は、AC−337ER塗料について、ガラス板上に100μmの湿潤塗料膜を塗布し、板を一定温度(25℃)で1週間乾燥した後に、その乾燥膜上で測定する。水滴を基剤の異なる位置に置いた後に写真を撮影する。測定は各塗料について3点の異なる箇所で行う。
【0078】
接触角の測定
【表19】
UCAR(商標)Filmer IBT膜は、造膜助剤A膜よりもより大きな接触角を有する。
【0079】
純粋なアクリルPRIMALバインダーは性能の向上を示し、全ての測定値はDL−420G塗料を用いたものよりも高い。造膜助剤Aを用いて調製した塗料は、優れた光沢値及び隠ぺいを示す。
【0080】
PRIMAL(商標)AC−337ERに基づく塗料に関するUCAR(商標)Filmer対比での比較評価のまとめ
【表20】
【0081】
結論
35%PVC塗料に対してなされる本検討は、造膜助剤Aが、塗料配合者が、フランス法令321/2011によるA+評価を有する良好な品質の塗料を配合することを可能ならしめることができる。
【0082】
参考文献
参考文献1:ISO試験
ISO16000−3:2001−屋内空気――第3部:ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物の測定――能動的サンプリング方法。
ISO16000−6:2001−屋内空気――第6部:Tenax TA吸着剤上での能動的サンプリング、熱脱着及びMS/FIDを用いるガスクロマトグラフィーによる屋内及び試験室内の揮発性有機化合物の測定。
EN ISO16000−9:2006−屋内空気――第9部:建築製品及び家具からの揮発性有機化合物排出の測定――排出試験室法。
EN ISO16000−10:2006−屋内空気――第10部:建築製品及び家具からの揮発性有機化合物排出の測定――排出試験セル法。
EN ISO16000−11:2006−屋内空気――第11部:建築製品及び家具からの揮発性有機化合物排出の測定――サンプリング、試料の保管及び試験片の調製。