(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の第2の壁断熱システムをさらに含み、前記2つの壁システムが、少なくとも1つの前記当接壁断熱システムの前記高さまで伸びる前記溶融物バリヤ材の柱に当接する請求項1〜7のいずれか1項に記載の壁断熱システム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
試験方法番号と共に日付が示されていない場合、試験方法はこの文書の優先日付時点の最新のものである。試験方法への言及は、試験協会および試験方法番号の両方を含む。本明細書では次の試験方法での省略と識別名を使用する。ASTM:米国材料試験協会(American Society for Testing and Materials);EN:欧州規格(European Norm);DIN:ドイツ工業規格(Deutsches Institut fur Normung);およびISO:国際標準化機構(International Organization for Standards)。
【0013】
「複数の」は、2つ以上を意味する。「および/または」は、「および、または別の方法として」を意味する。特に指示がない限り、全ての範囲は端点を含む。
【0014】
特に指示がない限り、「ポリマー」は、ホモポリマーおよび共重合体の両方を意味する。特に指示がない限り、「共重合体」は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体およびランダム共重合体を含む。
【0015】
「主面」は、他のいずれかの表面と同じまたはそれより大きい平面領域を有する物品の表面を意味する。平面領域は、表面への輪郭(尖塔部と谷部)の寄与を排除するために平面上に投影された表面の領域である。
【0016】
「垂直の」は、言及される物品の部位で地球の重力場に平行に位置合わせした状態を意味する。「水平の」は、言及される物品の部位で地球の重力場に垂直に位置合わせした状態を意味する。「垂直に配列された」および「非水平の」は、同義で、垂直成分、好ましくは、完全な垂直方位を意味する。例えば、完全に水平ではないものは、垂直方向を向いている。
【0017】
「高さ」、「幅」および「厚さ」は、相互に垂直な物品の寸法である。「高さ」は、垂直方向の寸法を意味する。対向する主面を有するシート、ボード、および他の物品では、「厚さ」は、対向する主面の間で垂直に伸びる寸法を意味し、物品の高さ、幅および厚さの内の最小の大きさに等しい。
【0018】
本発明の壁断熱システムでは、垂直、水平および高さなどの用語は、壁およびEN13823に準拠した試験で使われる方向に配置された壁断熱システムに対応する。システムは、壁への取付けの前に、実質的にどのような方向にでも向きを変えることが可能であるが、目的とすることは、システムが設置されるか、または設置が意図され、本明細書で記載される向きで防火性能が試験される場合、このような方位が本発明の範囲内にあることである。
【0019】
本発明の壁断熱システムは、熱可塑性ポリマー発泡ボード、すなわち、ボードの形状の熱可塑性ポリマー発泡体を含む。
【0020】
熱可塑性ポリマー発泡体は、複数の気泡(cell)または空隙を画定する熱可塑性ポリマー連続相マトリックスを含む。ポリマー発泡体は、連続気泡発泡体であっても、独立気泡発泡体であってもよい。連続気泡発泡体は、30パーセント(%)以上の連続気泡含量を有し、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上の連続気泡含量であってもよく、さらに、100%の連続気泡含量であってもよい。独立気泡発泡体は、30%以下の連続気泡含量を有し、20%以下、10%以下、5%以下の連続気泡含量であってもよく、さらに、ゼロパーセントの連続気泡含量であってもよい。米国材料試験協会(ASTM)の方法D6226−05に準拠してパーセント連続気泡含量が決定される。熱可塑性ポリマー発泡体は、より高い断熱性となるように、独立気泡発泡体であるのが望ましい。熱可塑性ポリマー発泡体は、25キログラム/立方メートル(kg/m
3)以上、好ましくは、30kg/m
3以上の密度であるのが望ましく、また同時に、望ましくは90kg/m
3以下、好ましくは、60kg/m
3以下、およびさらに好ましくは、40kg/m
3以下の密度であるのが望ましい。発泡体密度は、ASTM D1622−08に準拠して測定される。
【0021】
熱可塑性ポリマー発泡体の連続相マトリックスを形成可能な適切な熱可塑性ポリマーには、2種以上の熱可塑性ポリマーの内のいずれか1種または任意の組み合わせが含まれる。オレフィン系ポリマー、オレフィン系およびアルケニル芳香族成分の両方を含むアルケニル芳香族ホモポリマーおよび共重合体が好適する。適切なオレフィン系ポリマーの例には、エチレンおよびプロピレンのホモポリマーおよび共重合体が含まれる。
【0022】
望ましくは、フォームコアは、1種または2種以上のアルケニル芳香族ポリマーを含むか、またはそれから構成されるポリマーマトリックスを有する高分子フォームコアである。アルケニル芳香族ポリマーは、ポリマー構造に重合されたアルケニル芳香族モノマーを含むポリマーである。アルケニル芳香族ポリマーは、ホモポリマーでも、共重合体でも、ホモポリマーと共重合体のブレンドであってもよい。アルケニル芳香族共重合体は、ランダム共重合体でも、交互共重合体でも、ブロック共重合体でも、これらの任意の組み合わせであってもよく、また、直鎖でも、分岐でも、これらの混合物であってもよい。
【0023】
スチレン系ポリマーは、アルケニル芳香族ポリマーであるのが特に望ましい。スチレン系ポリマーは、ポリマー骨格へと重合されたスチレンモノマーを有し、スチレンホモポリマー、共重合体およびこれらのブレンドを含む。
【0024】
本発明に適するスチレン系共重合体の例には、スチレンと1種または複数種の下記のものとの共重合体が含まれる:アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、メチルアクリラート、エチルアクリラート、イソブチルアクリラート、n−ブチルアクリラート、メチルメタクリラート、酢酸ビニル、およびブタジエン。
【0025】
スチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)は、本発明での使用に特に望ましいアルケニル芳香族ポリマーである。理由は、製造の容易さと、モノマー入手可能性にある。SAN共重合体は、ブロック共重合体であっても、またはランダム共重合体であってもよく、また、直鎖でも、分岐であってもよい。SANは、ポリスチレンホモポリマーより高い熱変形温度を有し、この結果、ポリスチレンホモポリマー発泡体より高い使用温度を有する発泡体が得られる。このプロセスの望ましい実施形態は、SANを含む、というよりさらに適切に言えば、SANから構成されるポリマー組成物を採用する。1種または複数種のアルケニル芳香族ポリマー、というよりさらに適切に言えば、ポリマー組成物それ自体が、SANとポリスチレンホモポリマーなどの別のポリマーとのポリマーブレンドを含むか、またはそれらから構成できる。
【0026】
ポリマー組成物がSANのみを含むか、または、SANと他のポリマーを一緒に含むかのいずれにしても、SANのアクリロニトリル(AN)成分は、望ましくは、熱可塑性ポリマーマトリックス中に、全熱可塑性ポリマーの重量をベースにして、1重量パーセント(wt%)以上、好ましくは、5wt%以上、より好ましくは、10wt%以上の濃度で存在する。SANのAN成分は、望ましくは、熱可塑性ポリマーマトリックス中に、全熱可塑性ポリマーの重量をベースにして、50wt%以下、典型的な例では、30wt%以下の濃度で存在する。
【0027】
本発明の最も広い範囲では、熱可塑性ポリマー発泡体は、押出および膨張発泡体の両方を含むいずれのタイプの熱可塑性ポリマー発泡体であってもよいが、押出発泡体が最も望ましい。膨張ポリスチレン(EPS)発泡体などの膨張発泡体は、ビーズまたはストランドなどの膨張可能な発泡体の複数の発泡体要素を含み、これらは、通常、拘束体内で(例えば、型内、または拘束板の間で)膨張させられて、膨張している発泡構造体が一体化されるように力を受け、それにより、それらが相互に融着して複合発泡体構造を形成する。膨張発泡体は、ポリマー発泡体全体に伸び、発泡体気泡群を取り囲むポリマーの表皮を有することを特徴とする。これらの表皮は、生ずる発泡複合体の膨張と成形との間に接触し、一緒に融着する膨張している発泡体要素の表面に相当する。ポリマーの表皮は、平均的気泡壁または生じた平均的発泡体構造よりも大きい密度および/または厚さを有する。膨張ビーズ発泡体およびストランド発泡体は、2種のタイプの膨張ポリマー発泡体である。膨張ビーズ発泡体は、膨張して一緒に融着し、個別ビーズの表面に対応するポリマー表皮の殻内に閉じ込められてグループ分けされた気泡を有する発泡体構造を形成する複数の発泡体ビーズを含む。ストランド発泡体は、膨張するポリマー発泡体の複数のストランドを含み、相互に接触して一緒に融着し、通常、生じた発泡体の1区間中に伸びるポリマー表皮内含有単位でグループ分けされた気泡を有する発泡体構造を生ずる。
【0028】
膨張ポリマー発泡体とは対照的に、押出ポリスチレン(XPS)発泡体などの押出ポリマー発泡体は、ポリマーの単一膨張塊を押出して、膨張させ、平均気泡壁または発泡体密度より大きい密度または厚さを有し、ポリマー発泡体全体に伸びて気泡群を閉じ込めるポリマー表皮ネットワークを有さないポリマー発泡体を形成することにより作られる。押出ポリマー発泡体は、複数の膨張発泡体塊を一緒に融着することによる帰結ではなく、単一ポリマー塊から膨張させる。それぞれの膨張塊は、その周辺に相対的に厚いまたは高い密度表皮を有する。従って、膨張ポリマー発泡体は、発泡体全体にわたりこの表皮のネットワークを有するが、一方、押出ポリマー発泡体は、その外表面の回りのみにこのような表皮を有する。
【0029】
押出ポリマー発泡体は、膨張ポリマー発泡体より良い断熱材となり、また、より高い耐湿性である傾向がある。比較的高い密度のポリマー表皮のネットワークは、ポリマー発泡体全体にわたり熱短絡を生ずる場合があり、これは、押出発泡体では起こらない。湿気が膨張発泡体全体にネットワークを形成する融着表皮に沿って空隙を通り抜けて、望ましくない断熱の低下および湿気に関連する他の問題の両方を生ずる場合もある。従って、耐湿性および最適断熱が最重要である場合、押出ポリマー発泡体が、本発明の熱可塑性ポリマー発泡体としての使用に望ましい可能性がある。このような場合には、熱可塑性ポリマー発泡体は、独立気泡の押出ポリスチレン発泡体が最も望ましい。
【0030】
熱可塑性ポリマー発泡体は、ボードの形状であり、相互に垂直な高さ、幅および厚さの寸法、ならびに、対向する内側および外側主面を有する。対抗する内側および外側主面は、実質的に相互に平行である。
【0031】
壁断熱システムは、溶融物バリヤ材であるリブをさらに含む。本明細書では、「リブ」は、帯状の板または長いものを意味する。従って、溶融物バリヤ材のリブは、リブバリヤ材の帯状の板または長いものを意味する。溶融物バリヤ材のリブは、本発明の壁断熱システムが火炎にさらされる場合、少なくとも次の2種の機能を果たす:(1)壁断熱体内の火炎源への溶融熱可塑性ポリマー発泡体の自由流を抑制または防ぐ;および(2)壁断熱システム内、特に、密閉領域内で上昇気流が強力な火炎を押し上げる場合に煙突効果とされる場所での火炎の上昇を抑制または防ぐ。従って、壁断熱システムが熱および火炎にさらされる場合、溶融物バリヤ材のリブが熱可塑性ポリマー発泡ボードより長期間無傷でのままで残ることが望ましい。溶融物バリヤ材のリブが火炎への全暴露期間中、少なくともEN13501−1等級で指定された試験の間、無傷のまま残るのが好ましい。これに関しては、溶融物バリヤ材は、溶融ではなく分解するか、または、800セ氏温度(℃)以上、好ましくは、1000℃以上の溶融温度を有する。
【0032】
本発明の最も広い範囲では、溶融物バリヤ材は、例えば、ポリマー、金属または鉱物から選択される材料のいずれか、またはこれらの組み合わせから作ることができる。同時に、溶融物バリヤ材は、固形物、繊維状または多孔性であってもよい。望ましくは、バリヤ材は、ポリマー、金属、鉱物またはこれらのいずれかの組み合わせから作られる発泡体(すなわち、内部で複数の気泡を画定する材料の連続マトリックスを有する多孔性材料)である。断熱システムの重量を最小限にするために、および壁断熱システム全体の最大限可能な耐熱性を達成するために、溶融物バリヤ材は、発泡体であることが望ましい。特に、耐熱性を最大化するために、溶融物バリヤ材は、高分子発泡体、ガラス発泡体または鉱物(シリカなど)発泡体などの不十分な断熱性の材料の発泡体形態の材料であるのが望ましい。例えば、望ましい一溶融物バリヤ材は、フェノール性発泡体のポリイソシアヌラート発泡体、発泡ガラス、またはエアロゲルなどのケイ酸塩発泡体から選択される。溶融物バリヤ材は、ミネラルウール(岩綿またはストーンウール等)などの鉱物繊維もしくは金属不含であっても、または鉱物繊維と金属の両方不含であってもよい。
【0033】
望ましくは、溶融物バリヤ材は、ポリイソシアヌラート発泡体などの高分子発泡体であり、これは、溶融物バリヤ材の断熱特性を最適化するために、ASTM D6226−05により測定して、30パーセント(%)未満、好ましくは、20%未満、より好ましくは、10%以下、さらにより好ましくは、5%以下、および最も好ましくは、2%以下の連続気泡含量である。また、壁断熱システムの重量を最小限に保つために、溶融物バリヤ材が50キログラム/立方メートル(kg/m
3)以下、好ましくは、45kg/m
3以下の密度であるのが望ましく、40kg/m
3以下であってもよい。同時に、火炎に暴露した場合の構造的健全性を最適化するために、溶融物バリヤ材は、望ましくは、30kg/m
3以上、より望ましくは、35kg/m
3以上の密度であり、40kg/m
3以上、または、さらに45kg/m
3以上の密度であってもよい。発泡体密度は、ASTM D1622−08に準拠して測定される。
【0034】
溶融物バリヤ材のリブは、熱可塑性ポリマー発泡ボードの幅を横切って水平に伸びる。典型的な例では、溶融物バリヤ材のリブは、個別熱可塑性ポリマー発泡ボードの間にあるが、個別熱可塑性ポリマー発泡ボードの内部まで伸びることができる。「熱可塑性ポリマー発泡ボードの幅を横切って伸びる」は、熱可塑性ポリマー発泡ボードの幅の少なくとも75パーセント(%)、好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上を意味する。望ましくは、溶融物バリヤ材のリブは、熱可塑性ポリマー発泡ボードの全幅を横切って伸びる。溶融物バリヤ材のリブは、熱可塑性ポリマー発泡ボードの幅を連続的に、または不連続的に横切って伸びてもよい。すなわち、溶融物バリヤ材のリブが発泡ボードの幅を横切って存在する場合、熱可塑性ポリマー発泡ボードを横切って伸びる複数のリブが集合体として熱可塑性ポリマー発泡ボードを横切る指定幅に広がるという条件下で、単一リブとして、または複数のリブとして、相互に隣接して間隔をあけて、もしくは相互に離れて伸びてもよい。
【0035】
溶融物バリヤ材のリブは、熱可塑性ポリマー発泡ボードの厚さの少なくとも75パーセント(%)、好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上にわたり伸びる。溶融物バリヤ材のリブは、熱可塑性ポリマー発泡ボードの全体厚さにまで伸びてもよい。
【0036】
それぞれの溶融物バリヤ材のリブは、熱可塑性ポリマー発泡ボードの高さの寸法(垂直に伸びる寸法)で、少なくとも30ミリメートル(mm)伸び、好ましくは、少なくとも50mm伸び、また、75mm以上、さらには、100mm以上伸びてもよい。同時に、それぞれの溶融物バリヤ材のリブは、通常、熱可塑性ポリマー発泡ボードの高さの寸法で、300mm以下、好ましくは、100mm以下伸び、また、75mm以下まで伸びてもよい。
【0037】
発泡ボードの高さに沿って、任意の50センチメートルの距離に熱可塑性ポリマー発泡ボードの幅を横切るリブが存在する。熱可塑性ポリマー発泡ボードの高さの寸法中の溶融物バリヤ材のリブ間の中心間で測定した間隔は、望ましくは、50センチメートル以下であり、また、40センチメートル以下、さらには、30センチメートル以下であってもよい。壁断熱システムは、壁断熱システムの頂部に存在して底部に存在しない、底部に存在して頂部に存在しない、頂部と底部の両方に存在する、または頂部にも底部にも存在しない溶融物バリヤ材のリブを含むことができる。「頂部」は、壁断熱システムの最高端を意味する。「底部」は、壁断熱システムの最低端を意味する。
【0038】
溶融物バリヤ材のリブは、横切ってリブが伸びる熱可塑性ポリマー発泡ボードまたは複数ボードに固定してもよい。あるいは、リブは、取り付けないで、リブが横切って伸びる熱可塑性ポリマー発泡ボードまたは複数ボードから独立して固定された状態にしてもよい。
【0039】
本発明の熱可塑性ポリマー発泡ボードは、特に、壁上に設置される場合には、事実上単一集合体として一緒に配列された複数の個別熱可塑性ポリマー発泡ボードを含んでもよい。溶融物バリヤ材のリブは、個別熱可塑性発泡ボード内、個別熱可塑性発泡ボード間、または個別熱可塑性ポリマー発泡ボード間および個別熱可塑性発泡ボード内の両方に存在してもよい。溶融物バリヤ材のリブは、リブに隣接する発泡ボードまたは複数ボードに当接する。溶融物バリヤ材のリブは、それらが当接する熱可塑性ポリマー発泡体に接着されても、または独立していても(すなわち、接着されていなくても)よい。
【0040】
壁断熱システムは、熱可塑性ポリマー発泡ボードの任意の露出リブを含む外側主面を覆う金属上張りをさらに含む。熱可塑性ポリマー発泡ボードが複数の熱可塑性ポリマー発泡ボードの集合体を含む場合には、金属上張りは、熱可塑性ポリマー発泡ボードおよび熱可塑性ポリマー発泡ボードの集合体内または間の任意のリブの外側主面を覆う。金属上張りは、望ましくは、アルミニウム(例えば、アルミニウムシート)から作られる。しかし、本発明の最も広い範囲では、任意の金属から作ることができる。金属上張りは、少なくとも0.45ミリメートルの厚さであり、0.5ミリメートル以上、0.75ミリメートル以上、1.0ミリメートル以上、さらには、1.5ミリメートル以上の厚さであってもよい。同時に、金属上張りは、通常、3ミリメートル以下の厚さであり、また、2ミリメートル以下、1ミリメートル以下、0.75ミリメートル以下、さらには、0.5ミリメートル以下の厚さであってもよい。
【0041】
金属上張り材料は、熱可塑性ポリマー発泡ボードに接合される。望ましくは、金属上張り材料は、接着剤を使って熱可塑性ポリマー発泡ボードの外側表面に接合される。適切な接着剤には、エポキシ接着剤およびポリウレタン接着剤が含まれる。
【0042】
金属上張り材料と、熱可塑性ポリマー発泡ボード、および/または、1種または2種以上の溶融物バリヤ材との間で主に水平に伸びる空間または通路を画定するような形状に金属上張り材料をするのが望ましい。「主に水平に」は、水平の30度以内、好ましくは、15度以内、より好ましくは、5度以内、また、最も好ましくは、水平に、を意味する。このような空間または通路は、溶融ポリマー発泡体を集め、溶融ポリマー発泡体がより低い上部源に向かって流れ、火炎用の燃料として機能するのを防ぐことができる。
【0043】
金属上張り材料は、望ましくは、溶融物バリヤ材のリブとの接触部から間隙をあけて配置され、好ましくは、接触がなく、それにより、リブが加熱時に膨張する場合、膨張リブが金属上張り材料を押出すか、または変形させることがなくなる。リブと金属上張り材料との間の間隔は、望ましくは、0.5ミリメートル(mm)以上、好ましくは、1mm以上、さらにより好ましくは、2mm以上、さらにより好ましくは、3mm以上である。同時に、通常、リブと金属上張り材料との間の間隔は、20mm以下、典型的な例では、10mm以下であり、また、5mm以下であってもよい。
【0044】
そのボード内に伸びる溶融物バリヤ材のリブおよび熱可塑性発泡ボードの主面に広がる金属上張りを有する単一ユニットの熱可塑性発泡ボードとして含む要素、さらには、これを含む全体壁システムを調製し、提供することが想定でき、また、本発明の最も広い範囲内に入る。
【0045】
金属上張り材料は、溶融物バリヤ材のリブを含むシステムを組み立てる前に、熱可塑性ポリマー発泡ボードに対する積層体として提供してもよい。このような実施形態での組立を容易にするために、金属上張り材料は、通常、熱可塑性ポリマー発泡体の主面を超えて伸び、この材料が積層されて金属上張り材料のフラップを形成する。このような金属上張り材料のフラップを含む壁断熱システムの設置時には、金属上張り材料のフラップがフラップに近接する高分子発泡ボードに当接する溶融物バリヤ材のリブ上に配置され、次の高分子発泡ボードに積層される金属上張り材料と重なり合う。フラップは、重なり合う金属上張り材料と接着されるのが望ましい。フラップは、例えば、リベットまたはねじを使って、重なり合う金属上張り材料に、またはそれを介して機械的に固定してもよい。リベットおよび/またはねじは、フラップを通して、金属上張り材料中に、またはそれを通してフラップ重ね合わせ部に伸びてもよく、また、重ね合わせられた金属上張りが覆う熱可塑性ポリマー発泡体中にさらに伸びてもよい。リベットおよび/またはねじの使用は、金属上張りを一緒に取り付けるための望ましい方法である。任意選択で、フラップは、フラップとフラップが重なり合う金属上張りとの間に適用して、例えば、エポキシ接着剤などの接着剤により重ね合わされている金属上張り材料にさらに固定してもよい。
【0046】
金属上張り材料は、シートのような平坦であってもよい。あるいは、金属上張り材料は、下見板構造などの非平坦形状または建築業における外部金属クラッドとして望ましいか、もしくは有用ないずれか他の想定可能な形状であってもよい。金属上張り材料が非フラット形状である場合、熱可塑性ポリマー発泡体が金属上張りの非フラット形状に密着して金属上張りと熱可塑性ポリマー発泡体との間の空隙の発生を回避することができる。
【0047】
本発明の壁断熱システムをコーナー部、特に、内側コーナー部用の壁断熱システムとして使用でき、この用途もまた、本発明の範囲内にある。コーナー部では、本明細書で記載の2つの壁断熱システムがコーナー部で相互に当接し、その場所では、壁の方向が変化する。このような実施形態では、当接壁中の溶融物バリヤ材のリブが、コーナー部の1つの壁からコーナー部を形成するもう一方の壁まで連続リブを形成するように並べられるのが望ましい。
【0048】
好ましい実施形態では、コーナー部用の壁断熱システムは、コーナー部に沿って垂直に伸びる溶融物バリヤ材の柱を含み、本明細書で記載の2つの壁断熱システムが溶融物バリヤ材の柱に相互に当接し、さらに、溶融物バリヤ材の柱が少なくとも1つの当接壁断熱システムの全高さに伸びる。溶融物バリヤ材の柱に当接する壁断熱システムは、溶融物バリヤ材に接着しても、または溶融物バリヤ材とは独立していてもよい。溶融物バリヤ材の柱は、壁のコーナー部で発生する煙突効果を防ぐ役割をする。内側コーナー部は、煙突効果が最も激しい可能性がある場所である。
【0049】
溶融物バリヤ材の柱を有するコーナー部を形成するために、溶融物バリヤ材の柱に当接する2つの壁断熱システムは、相互に対し180度(壁断熱システムの主面を横切って水平に測定して)以外の角度を形成する。コーナー部用の壁断熱システムは、壁断熱システムの主面、好ましくは、壁断熱システムの外側主面(すなわち、金属上張りを含む主面)を横切って水平に、最小角度から測定して、望ましくは、135度以下、120度以下、100度以下の角度を形成し、また、90度以下であってもよい。同時に、コーナー部用の壁断熱システムは、壁断熱システムの主面、好ましくは、外側主面を横切って水平に測定して、望ましくは、30度以上、好ましくは、45度以上の角度を形成する。誤解を避けるために付け加えると、壁断熱システムの外側主面は、壁断熱システムの熱可塑性ポリマー発泡ボードの外側主面に最も近接した主面である。
【0050】
本発明の壁断熱システムは、建築壁支持構造に取り付けて建造物の断熱壁の少なくとも一部として機能させてもよい。壁支持構造への設置のためには、壁断熱システム(または熱可塑性ポリマー発泡ボード)の内側主面は、壁断熱システムの外側主面(または熱可塑性ポリマー発泡ボード)に比べて、壁支持構造に最も近接して(例えば、支持構造に対し直接に)取り付けられる。
【0051】
最も広い本発明の範囲では、いずれの壁支持構造でも好適する。例えば、本発明の壁断熱システムは、石造ブロック壁、現場打ちセメント、木製壁構造、および金属壁構造などの任意のタイプの既存の建築壁上に取り付けできる。適切な壁支持構造の一例には、相互に空隙をあけて配置され、ヘッダ(または上板)およびフッタ(または底板)に取り付けられた一連の間柱を含む「スティック」構造が含まれる。この例では、壁断熱システムは、一連の間柱に直接取り付けできる。あるいは、被覆材料(例えば、合板または配向性ストランドボード)で一連の間柱を覆うことができ、壁断熱システムをその被覆材料に取り付けることができる。壁断熱システムは、例えば、化学接着剤およびクギ、ねじ、ステープル、リベットなどの機械的な留め具の1つまたは2つ以上の任意の組み合わせを含む方法を使って建築業に適する任意の方法で壁支持構造に取り付けることができる。
【0052】
実施例
図1は、壁断熱システムおよび要素の高さと厚さの寸法を示す本発明の壁断熱システム(実施例1)を真正面から見た図である(正確な縮尺ではない)。壁断熱システム10は、熱可塑性ポリマー発泡ボード20、溶融物バリヤ材のリブ30および金属上張り40を含む。熱可塑性ポリマー発泡ボード20は、35〜40kg/m
3の密度、および80ミリメートルの厚さを有する押出ポリスチレン発泡ボードである(例えば、STYROFOAM(商標)LB−X銘柄の押出ポリスチレン発泡体。STYROFOAMは、The Dow Chemical Companyの商標である)。溶融物バリヤ材のリブ30は、45kg/m
3の密度の独立気泡ポリイソシアヌラート発泡体である(例えば、TARECPIR(商標)M1−CR銘柄の発泡体。TARCPIRは、Kingspan Tarecの商標である)。溶融物バリヤ材のリブは、80ミリメートルの厚さと高さを有し、熱可塑性ポリマー発泡体の全幅に伸びる。金属上張り40は、0.45ミリメートルの厚さの平坦なアルミニウムシートである。金属上張り40は、ポリウレタン接着剤(図示せず)を使って熱可塑性ポリマー発泡ボード20に接着されている。金属上張り40は、熱可塑性ポリマー発泡ボード20の底部から伸びて、隣接溶融物バリヤ材のリブ30および次の熱可塑性ポリマー発泡ボード20の重なり合う金属上張り40にまで及ぶフラップ45を含む。フラップ45は、フラップ45に沿って伸びるリベット47により次の熱可塑性ポリマー発泡ボード20の金属上張り40に固定される。溶融物バリヤ材のリブ30間の、壁断熱システム10の高さ寸法Hに沿った間隔は、約450ミリメートルである。溶融物バリヤ材のリブ30は、熱可塑性ポリマー発泡ボード20より厚さが小さいため、金属上張り40と溶融物バリヤ材のリブ30との間に空間35を生ずる。
【0053】
前の試験結果に基づいて、壁断熱システム10は、EN13501−1格付けによるD以上の等級を達成することが期待される。
【0054】
比較として、溶融物バリヤ材30のないこと以外は
図1と同じ壁断熱システムは、EN13501−1によるE以下の格付けとなることが予測される。
【0055】
図2は、壁断熱システム頂部から見た内側コーナー部の形状の本発明の壁断熱システム(実施例2)を示す(正確な縮尺ではない)。内側コーナー部壁断熱システム100は、壁断熱システム10および10’(両方共、
図1で記載のものと同様)、溶融物バリヤ材のリブ30と同じ材料から作られている当接溶融物バリヤ材の柱50を含む。溶融物バリヤ材の柱は、コーナー部壁断熱システム100の全高さに伸び、90ミリメートルの厚さおよび幅を有する。
図2には、壁支持構造200(頂部板のみが見えている)が含まれ、この構造に内側コーナー部壁断熱システム100が取り付けられている。壁断熱システムの10および10’は、それぞれ、熱可塑性ポリマー発泡ボード20および20’、ならびに、それぞれ、金属上張り40および40’を含む。溶融物バリヤリブは、
図2では明確には見えない。理由は、それらが水平に配置され、熱可塑性ポリマー発泡ボード20および20’により視界から遮られているためである。
【0056】
前の試験結果に基づいて、内側コーナー部壁断熱システム100は、EN13501−1格付けによるD以上の等級が達成されることが期待される。
【0057】
実施例3
図3は、類似の壁システム10ユニットを組み合わせて壁を覆う単一ユニットの形態である壁断熱システム10(実施例3)の高さと厚さの寸法の側面図を示す(正確な縮尺ではない)。壁断熱システム10は、熱可塑性ポリマー発泡ボード片25を受ける溝21を画定する形状に成形される熱可塑性ポリマー発泡ボード20を含む。片25がボード20に挿入されると、アセンブリの輪郭は類似になり、ラップサイディングのアセンブリとなる。ボード20の端部22および27は、さらに輪郭を形成されて、端部22は、リブ30の脚32が発泡ボード20を超えて上方に伸びるように配置された「L」形状の溶融物バリヤ材のリブ30を受ける。壁システム10の複数のユニットが互いの上に配置されて壁を断熱する場合、端部27は、脚32を溝29に受けるような形状にされる。ボード20は、その厚さの位置で、406ミリメートル(mm)の高さH、および80ミリメートルの厚さTを有する。金属上張り40は、ボード20の表面およびボード片25上に伸び、ボード20および片25のラップサイディング輪郭と同じになる。金属上張り40は、発泡ボード20および片25を超えて伸びて、張り板の輪郭重なりの底部に現れるものに対応する位置で壁断熱システム10に沿って水平に伸びる通路43を形成するような形状にされる。金属上張り40は、リブ30に接触することなく、金属上張り40とリブ30との間に空間46を残して、リブ30を部分的に超えてさらに上に伸びる。金属上張り40は、リブ30の上部に配置された第2の断熱壁ユニット10の通路44により重ね合わされるようにリブ30の上に十分な距離まで伸びる。
【0058】
熱可塑性発泡ボード20は、約35キログラム/立方メートルの密度を有するSTYROFOAM(商標)LB銘柄押出ポリスチレン発泡断熱体である。
【0059】
リブ30は、45キログラム/立方メートルの密度を有する独立気泡ポリイソシアヌラート発泡体(TARCPI M1−CR45銘柄発泡体:Kingspan Tarec Industrial Insulationから入手可能)である。リブ30は、40mmの脚高さL
H、20mmの脚幅L
Wおよび55mmの脚厚さL
Tである。
【0060】
金属上張り40は、0.8mmの厚さのアルミニウムである。金属上張り40は、2液型ポリウレタン接着剤を使って発泡ボード20および片25に接着されている。
【0061】
実施例4
図4は、各壁支持構造200に沿って互いに頂部に組み上げられた実施例3の複数の断熱壁システム10を含む内側コーナー部壁アセンブリ1(実施例4)の図を示す(正確な縮尺ではない)。断熱壁システム10は、壁アセンブリ1のコーナー部で溶融物バリヤ材の柱50に当接する。柱50は、90mm×90mmの正方形断面であり、壁アセンブリの全高さにわたり伸びる。壁アセンブリ1は、1500mmの高さH、495mmの脚Aの長さL
Aおよび1000mmの脚Bの長さL
Bを有する。断熱壁システム10の金属上張り40は、内側コーナー部表面に露出している。内側コーナー部上張り48は、壁アセンブリ1の高さまで、および柱50に当接する断熱壁システム10の金属上張り40上に伸び、さらに、脚L
AとL
Bのそれぞれに沿って約80mmの距離にわたり伸びる。内側コーナー部上張り48は、それぞれの脚L
AおよびL
B上で、金属上張り40にねじ止めされるか、またはリベットで止められる。
【0062】
壁支持構造200は、規格EN13823により規定される木製構造である。
【0063】
柱50は、リブ30と同じ独立気泡ポリイソシアヌラート発泡体である。
【0064】
驚くべきことに、実施例4は、EN13501−1のB−s1−d0等級を達成する。EN13823試験による実施例4の具体的燃焼特性を表1に示す。
【0065】
比較例A
実施例3で記載の断熱パネル30を使う代わりに、溶融物バリヤ材のリブ30のない断熱パネルを使用すること以外は、実施例4と同様の方法で比較例Aを調製する。代わりに、熱可塑性ポリマーボードに余分の長さを持たせ、端部27を溶融物バリヤ材のリブ30に相当する形状に切断して使用する。このようにして、実施例3の溶融物バリヤ材が熱可塑性ポリマー発泡ボードで置換された。得られた構造は、実施例3と同じように見え、試験では、リブまたはコーナー柱の形として存在する溶融物バリヤ材がないこと以外は、全てが実施例4と同様に組み上げられる。
【0066】
比較例Aは、EN13501のE―s3―d2の等級のみ達成する。EN13823試験による比較例Aの具体的燃焼特性を表1に示す。
【表1】
【0067】
表1の結果は、本発明の構造の利益を示す。溶融物バリヤ材のリブは、EN13501−1等級の大きな改善をもたらす結果となった。
本開示は以下も包含する。
[1] 壁断熱システムであって、
a.相互に垂直の高さ、幅および厚さの寸法および対向する内側および外側主面を有する熱可塑性ポリマー発泡ボード、
b.前記熱可塑性ポリマー発泡ボードの前記幅を横切り水平に伸び、前記熱可塑性ポリマー発泡ボードの前記厚さの少なくとも75パーセントまで伸び、さらに、前記熱可塑性ポリマー発泡体の前記高さ寸法の少なくとも30ミリメートルまで伸びる溶融物バリヤ材のリブ、および
c.前記熱可塑性ポリマー発泡ボードの前記外側表面に接合され、前記熱可塑性ポリマー発泡ボードの前記外側主面に沿ったバリヤ材の任意のリブを含む前記外側主面を覆う、少なくとも0.45ミリメートルの厚さの金属上張り、
を含み、
前記発泡ボードの前記高さに沿って任意の50センチメートルの距離に前記熱可塑性ポリマー発泡ボードの前記幅全体に伸びる溶融物バリヤ材のリブが存在し、前記溶融物バリヤ材が800℃以上の溶融温度を有するか、または溶融ではなく分解する壁断熱システム。
[2] 前記熱可塑性ポリマー発泡ボードが、独立気泡押出ポリスチレン発泡体である上記態様1に記載の壁断熱システム。
[3] 前記金属上張りが、前記溶融物バリヤ材のリブから間隙をあけて配置される上記態様1〜2のいずれかに記載の壁断熱システム。
[4] 前記溶融物バリヤ材が発泡体である上記態様1〜3のいずれかに記載の壁断熱システム。
[5] 前記溶融物バリヤ材が、発泡ガラス、発泡鉱物、およびポリイソシアヌラート発泡体から選択される発泡体である上記態様1〜4のいずれかに記載の壁断熱システム。
[6] 前記溶融物バリヤ材が、ASTM D1622−08により測定して、少なくとも35キログラム/立方メートルの密度である上記態様1〜5のいずれかに記載の壁断熱システム。
[7] 前記溶融物バリヤ材が、前記熱可塑性ポリマー発泡ボードの前記内側表面の近傍に比べて、前記熱可塑性ポリマー発泡ボードの前記外側表面近傍で大きい高さを有する上記態様1〜6のいずれかに記載の壁断熱システム。
[8] 前記金属上張りがアルミニウムである上記態様1〜7のいずれかに記載の壁断熱システム。
[9] 上記態様1に記載の第2の壁断熱システムをさらに含み、前記2つの壁システムが、少なくとも1つの前記当接壁断熱システムの前記高さまで伸びる前記溶融物バリヤ材の柱に当接する上記態様1〜8のいずれかに記載の壁断熱システム。
[10] 前記熱可塑性ポリマー発泡ボードの前記外側主面に比べて、前記壁支持構造に最も近い前記熱可塑性ポリマー発泡ボードの前記内側主面で壁支持構造に取り付けられることにより特徴付けられる上記態様1〜9のいずれかに記載の壁断熱システム。