(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189957
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】バッテリー複合素材及びその前駆体の調製方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20170821BHJP
C01B 25/45 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
H01M4/58
C01B25/45 Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-528861(P2015-528861)
(86)(22)【出願日】2013年8月28日
(65)【公表番号】特表2015-531970(P2015-531970A)
(43)【公表日】2015年11月5日
(86)【国際出願番号】CN2013082451
(87)【国際公開番号】WO2014032588
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2015年4月15日
(31)【優先権主張番号】61/694,034
(32)【優先日】2012年8月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508015782
【氏名又は名称】台湾立凱電能科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】李文超
(72)【発明者】
【氏名】林翔斌
(72)【発明者】
【氏名】謝瀚緯
【審査官】
冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−213587(JP,A)
【文献】
特開2004−359538(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/039687(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/58
C01B 25/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリー複合素材の調製方法であって、
(a) リン酸、炭酸マンガン、水及び第一反応物を提供するステップと、
(b) リン酸、炭酸マンガン及び水を反応処理して第一製品を生産するステップと、
(c) 前記第一製品を焼成して前駆体を生産するステップと、
(d) 前記前駆体及び少なくとも前記第一反応物を反応処理して反応混合物を取得して、前記反応混合物を焼成して前記バッテリー複合素材を生産するステップと、を有し、
前記リン酸の化学式は、H3PO4で表され、
前記前駆体の化学式は、Mn2P2O7で表され、
前記第一反応物は、炭酸リチウムであり、前記炭酸リチウムの化学式は、Li2CO3で表され、
前記ステップ(d)は、
(d1) 前記前駆体及び少なくとも前記第一反応物を混合するステップと、
(d2) 粉砕するために水又は溶媒を加えて前記水又は溶媒を除くように乾燥させるステップと、
(d3) 高温焼成を実施するステップと、
(d4) 前記バッテリー複合素材を生産するステップと、を更に有し、
前記高温焼成は、窒素雰囲気中にて少なくとも8〜12時間、550℃から750℃の温度で実施される、調製方法。
【請求項2】
前記ステップ(d)は、前記前駆体、前記第一反応物及び第二反応物を反応処理して前記反応混合物を取得し、前記反応混合物を焼成して前記バッテリー複合素材を生産することによって実施され、
前記第二反応物は、リン酸(III)二水和物であり、前記第二反応物の化学式は、FePO4・2H2Oで表される、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)は、
(b1) 前記第一製品を生産するために、第二量のリン酸及び第三量の炭酸マンガンを第一量の水に溶解して、第一期間撹拌するステップを更に有し、
前記第一量は、3.2リットルであり、
前記第二量は、462.7グラムであり、
前記第三量は、460グラムであり、
前記第一期間は、24時間である、請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
前記第三量に対する前記第二量の重量比は、1:1である、請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
前記ステップ(c)は、
(c1) 分散剤を前記第一製品に加えるステップと、
(c2) 第二期間、第一回転速度で前記第一製品を粉砕して前駆体溶液を取得するステップと、
(c3) 前記前駆体溶液に対して噴霧乾燥処理及び温度処理を実施するステップと、を更に有し、
前記第一回転速度は、水平サンダーの450回転数/分又は450回転数/分超及び650回転数/分又は650回転数/分未満であり、
前記第二期間は、1時間であり、
前記温度処理は、窒素雰囲気中にて少なくとも2時間、380℃超の温度で実施される、
請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
前記分散剤は、ポリエチレングリコールtert-オクチルフェニルエーテルである、請求項5に記載の調製方法。
【請求項7】
バッテリー複合素材の調製方法であって、
化学式Mn2P2O7で表される前駆体及び少なくとも第一反応物を反応処理し、前記反応での反応混合物を焼成して前記バッテリー複合素材を生産するステップを少なくとも有し、
前記ステップは、
前記前駆体及び少なくとも前記第一反応物を混合するステップと、
粉砕するために水又は溶媒を加えて前記水又は溶媒を除くように乾燥させるステップと、
高温焼成を実施するステップと、
前記バッテリー複合素材を生産するステップと、を有し、
前記高温焼成は、窒素雰囲気中にて少なくとも8〜12時間、550℃から750℃の温度で実施され、
前記第一反応物は、炭酸リチウムであり、前記炭酸リチウムの化学式は、Li2CO3で表される、バッテリー複合素材の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、調製方法に関するものであり、より詳しくは、本開示は、バッテリー複合素材及びその前駆体の調製方法に関する。
【0002】
背景
世界的にエネルギー不足が続いていることから、原油価格がより高くなっており環境に対する意識は日に日に増している。エネルギー産業において最も関心のあることは、どのようにクリーンで且つ効率的にエネルギーを提供するかということである。様々な代替エネルギーにおいて、化学バッテリーが最も活発に開発されている技術である。継続的に関連産業の研究開発に投資しているものとして、化学バッテリー技術は、継続的に進歩及び向上しているだけでなく、我々の日常生活(例えば、家庭用電化製品、医療用装置、電動オートバイ、二輪電気自動車、電気自動車及び電気バス)においても広く使われている。
【0003】
特に、リン酸金属リチウム(LiMPO
4、Mは任意の金属(例えば、Fe、Co、Mn)であってもよい)化合物バッテリーは、大電流でありライフサイクルが長いため、市場に広く受け入れられている。また、リン酸金属リチウム化合物バッテリーは、爆発のリスクがなく、出力効率が高く汚染性が低い利点があるため、従来型の鉛酸、ニッケル水素及びニッケルカドミウムバッテリーの代替として用いられている。長年の研究の末、リン酸金属リチウムナノ-コ-結晶オリビン(以下、「LMP-NCO」と称する)バッテリーが開発されてきた。LMP-NCOバッテリーは、Li、P及び金属又は金属成分の前駆体からなる単一化合物であり、非コート及び非ドープ素材であるため、LMP-NCOバッテリーは、大幅に電力伝導率を向上させ、不純物を除くことができる。更に、LMP-NCOバッテリーの価格は、従来型のリン酸金属リチウム素材よりも低く、LMP-NCOバッテリーは、市場競争力がより高く産業の主産物になる。
【0004】
一般に、リン酸鉄(III)(FePO
4)、水酸化リチウム(LiOH)及び炭酸リチウム(Li
2CO
3)を用いて、LMP-NCOを調製するの従来型の方法により反応処理を行なう。水酸化リチウムの原料高、非常に多くのリン酸鉄(III)の必要量及びより長い粉砕時間に起因して、単位時間及び費用当たりのコストが増加している。更に、調製方法には、酸塩基中和反応を含むため、この処理は、素材の粘性や処理パイプの閉塞を引き起こすpHの値に非常に敏感である。また、処理温度は、中和反応の吸熱及び放熱現象のために、安定して制御することができないことから、操作が増々困難になる。
【0005】
ある製造工程において、マンガン(Mn)が鉄(Fe)の代わりに利用されている。それにもかかわらず、製造工程における安定性の欠如は、酸化還元反応によって引き起こされ、pHの値は、リン酸マンガンリチウムの調製に水酸化リチウムを使用することによって増加する。その結果、製品の性能は、低炭素-コーティングの結果によって影響を受ける。加えて、上述した調製方法の進行中に、素材を数回動かさなければならない。これによって汚染リスクが引き起こされ、製品品質が低下する。
【0006】
バッテリー複合材料及びその前駆体の調製方法を提供して、先行技術に見られる欠点を取り除く必要性がある。
【0007】
概要
本発明の目的は、従来型のバッテリーを作成する素材コスト及び時間コストが高いという欠点、中和反応によって引き起こされるプロセスでのpH値の感受性が高いという欠点、処理パイプが閉塞するという欠点、温度が不安定になるという欠点並びに素材の移動中に汚染されるという欠点を除くために、バッテリー複合素材及びその前駆体の調製方法を提供することである。
【0008】
本発明の目的は、反応を経て生産された前駆体からバッテリー複合素材を調製する方法において、単位時間及び費用当たりの粉砕時間及びコストを低減するバッテリー複合素材及びその前駆体の調製方法を提供する。このプロセスでのpH値の感受性が低下しつつ、素材の粘性及び処理パイプの閉塞が回避され、処理温度は安定して制御され、プロセスの操作困難性が低下する。
【0009】
本発明の他の目的は、バッテリー複合素材及びその前駆体の調製方法を提供することである。水酸化リチウムの代わりに炭酸リチウムを利用することによって、このプロセスでのpH値はより安定になることから、炭素-コーティング結果及び製品性能の両方が向上する。
【0010】
本開示の態様に従って、バッテリー複合素材の調製方法が提供される。上記調製方法は、
リン酸、炭酸マンガン、水及び第一反応物を提供するステップと、
リン酸、炭酸マンガン及び水を反応処理して第一製品を生産するステップと、
第一製品を焼成して、前駆体を生産するステップと、
前駆体と少なくとも第一反応物を反応処理して反応混合物を取得して、反応混合物を焼成してバッテリー複合素材を生産するステップと、を有し、
上記前駆体の化学式は、Mn
2P
2O
7で表される。
【0011】
本開示の他の態様に従って、バッテリー複合素材の前駆体の調製方法が提供される。上記調製方法は、溶液中においてリン酸イオンを放出する化合物とマンガンを反応処理して第一製品を生産するステップと、前駆体を生産するために第一製品に温度処理を実施するステップと、を有し、前駆体の化学式は、Mn
2P
2O
7で表される。
【0012】
本開示の更に別の態様に従って、バッテリー複合素材の調製方法が提供される。上記調製方法は、前駆体及び少なくとも第一反応物を反応処理し、上記反応での反応混合物を焼成してバッテリー複合素材(リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガンリチウムナノ-コ-結晶オリビン又はリン酸マンガン鉄リチウムナノ-コ-結晶オリビン)を生産するステップと、を少なくとも有する。
【0013】
本開示の上記内容は、以下の詳細な説明及び添付の図面を見ることによって当業者にとってより容易に明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による、バッテリー複合素材の調製方法の流れ図を概略的に示している。
【0015】
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態による、バッテリー複合素材の調製方法の詳細な流れ図を概略的に示している。
【0016】
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態による、バッテリー複合素材の調製方法の別の詳細な流れ図を概略的に示している。
【0017】
【
図4】
図4は、本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調製された前駆体のX線回折解析のダイヤグラムを概略的に示している。
【0018】
【
図5】
図5は、本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調製された前駆体のSEM分析のダイヤグラムを概略的に示している。
【0019】
【
図6】
図6は、本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調製されたバッテリー複合素材のX線回折解析のダイヤグラムを概略的に示している。
【0020】
【
図7】
図7は、本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調製されたバッテリー複合素材のSEM分析のダイヤグラムを概略的に示している。
【0021】
【
図8】
図8は、本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調製されたバッテリー複合素材でできている電池の充放電特性のダイヤグラムを概略的に示している。
【0022】
【
図9】
図9は、本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調製された別のバッテリー複合素材のX線回折解析のダイヤグラムを概略的に示している。
【0023】
【
図10】
図10は、本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調製された別のバッテリー複合素材のSEM分析のダイヤグラムを概略的に示している。
【0024】
【
図11】
図11は、本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調製された別のバッテリー複合素材でできている電池の充放電特性のダイヤグラムを概略的に示している。
【0025】
【
図12A】
図12Aは、本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調製されたリン酸マンガンリチウムナノ-コ-結晶オリビンのSEM分析のダイヤグラムを概略的に示している。
【
図12B】
図12Bは、本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調製されたリン酸マンガンリチウムナノ-コ-結晶オリビンのSEM分析のダイヤグラムを概略的に示している。
【
図12C】
図12Cは、本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調製されたリン酸マンガンリチウムナノ-コ-結晶オリビンのSEM分析のダイヤグラムを概略的に示している。
【0026】
【
図13A】
図13Aは、本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調製されたリン酸マンガン鉄リチウムナノ-コ-結晶オリビンのSEM分析のダイヤグラムを概略的に示している。
【
図13B】
図13Bは、本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調製されたリン酸マンガン鉄リチウムナノ-コ-結晶オリビンのSEM分析のダイヤグラムを概略的に示している。
【
図13C】
図13Cは、本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調製されたリン酸マンガン鉄リチウムナノ-コ-結晶オリビンのSEM分析のダイヤグラムを概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
好ましい実施態様の詳細な説明
本開示は、以下の実施形態を参照してより詳しく記載する。この開示にかかる以下の好適な実施形態の説明は、図示及び記述のためだけに本願明細書に示されている点に留意する必要がある。それは、網羅的であることを意図するものではなく、開示された厳密な形態に限定されることを意図するものでもない。
【0028】
図1を参照する。
図1は、本発明の一実施形態によるバッテリー複合素材の調製方法の流れ図を概略的に示している。本発明のバッテリー複合素材の調製方法には、以下のステップが含まれる。最初に、リン酸、炭酸マンガン、水及び第一反応物を提供する(ステップS100)。上記リン酸の化学式は、H
3PO
4で表される。ある実施形態において、第一反応物は、炭酸リチウム(Li
2CO
3)、リチウムからなる化合物又はリチウムからなるいくつかの化合物の混合物であるが、それらに限定されるものではない。
【0029】
次に、リン酸、炭酸マンガン及び水を反応処理して第一製品を生産する(ステップS200)。ある実施形態において、ステップS200は、第一製品を生産するために、第二量のリン酸及び第三量の炭酸マンガンを第一量の水に溶解して、第一期間撹拌するステップを好ましくは有する。上記第一期間は、24時間に限定されるものではない。第三量に対する第二量の重量比は、実質的に1:1である。例えば、第二量は462.7グラムであり、第三量は460グラムである。そうすると、第一量は好ましくは3.2リットルである。言い換えれば、ステップS200は、第一製品を生産するために、462.7グラムのリン酸及び460グラムの炭酸マンガンを3.2リットルの水に溶解して、24時間撹拌するステップを有していてもよい。加えて、第一製品は、溶液中においてリン酸イオンを放出する化合物とマンガンを反応処理するステップを通じて得ることも可能であるが、これに限定されるものではない。
【0030】
そして、ステップS200において得られた第一製品を焼成して前駆体を生産する(ステップS300)。上記前駆体の化学式は、Mn
2P
2O
7で表される。
【0031】
最後に、前駆体と少なくとも第一反応物を反応処理して反応混合物を取得し、反応混合物を焼成して例えばLiMnPO
4であるバッテリー複合素材を生産する(ステップS400)。上記前駆体は、ステップS400において「少なくとも」第一反応物と反応する点に留意する必要がある。確実なこととして、上記前駆体は、第一反応物と反応することに限定されず、第一反応物及び第二反応物と反応することに限定されることもない。例えば、第一反応物は炭酸リチウムであり、第二反応物はリン酸鉄(III)二水和物である。第二反応物の化学式はFePO
4・2H
2Oである。反応混合物を焼成した後に、バッテリー複合素材(例えば、リン酸マンガン鉄リチウム)が生産される。上記リン酸マンガン鉄リチウムの化学式は、LiMn
xFe
1-xPO
4(x>0)で表される。
【0032】
ステップS200又はステップS400において、金属酸化物(例えば、V
2O
5、TiO
2又はMgO)を反応に加えることができる。それによって、金属酸化物からなるLiMnPO
4様素材(「リン酸マンガンリチウムナノ-コ-結晶オリビン(LMP-NCO)と命名又は称することができる)、又は金属酸化物からなるLiMn
xFe
1-xPO
4様素材(「リン酸マンガン鉄リチウムナノ-コ-結晶オリビン(LFMP-NCO)と命名又は称することができる)が生産される。
【0033】
この状況下において、本発明は、反応を経て生産された前駆体と炭酸リチウムの反応を通じてバッテリー複合素材を調製する方法において、リチウム塩を加えつつ酸化還元反応の時間を短くするバッテリー複合素材の調製方法を提供する。このプロセスでの安定性が向上し、プロセスの困難性が低下する。一方、粉砕時間は著しく短くなっており、更に、単位時間及び費用当たりのコストが下がる。このプロセスでのpH値の感受性が低下し、素材の粘性及び処理パイプの閉塞が回避され、処理温度は安定して制御される。加えて、水酸化リチウムの代わりに炭酸リチウムを利用することによって、このプロセスでのpH値はより安定になることから、炭素-コーティング結果及び製品性能の両方が向上する。
【0034】
図1及び
図2を参照。
図2は、本発明の一実施形態によるバッテリー複合素材の調製方法の詳細な流れ図を概略的に示している。
図1及び
図2に示すように、本発明のバッテリー複合素材の調製方法に関するステップS300の詳細な流れ図には、以下のステップが含まれる。ステップS301に示す通り、分散剤を第一製品に加える。次に、ステップS302に示す通り、第二期間、第一回転速度で第一製品を粉砕して前駆体溶液を取得する。第一回転速度は450回転数/分又は450回転数/分超及び650回転数/分又は650回転数/分未満であり、第二期間は1時間である。
【0035】
言い換えれば、ステップS302の好適な実施形態は、1時間、450-650回転数/分で第一製品を粉砕して前駆体溶液を取得するステップであるが、これに限定されるものではない。そして、ステップS303に示す通り、乾燥前駆体(即ちMn
2P
2O
7)を得るために前駆体溶液に対して噴霧乾燥処理及び温度処理を実施するステップが示されている。一実施形態において、温度処理は、窒素雰囲気中にて少なくとも2時間、380℃超の温度で実施される。
【0036】
本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって前駆体が完全に調製される。ステップS400の詳細な流れ図は、以下の通りである。
図3を参照。
図3は、本発明の一実施形態によるバッテリー複合素材の調製方法の別の詳細な流れ図を概略的に示している。
図3に示すように、ステップS400の詳細な流れ図には、前駆体(即ちMn
2P
2O
7)及び第一反応物(限定するものではないが、炭酸リチウム(Li
2CO
3)、リチウムからなる化合物又はリチウムからなるいくつかの化合物の混合物を混合するステップ(ステップS401)と、分散剤(例えば、ポリエチレングリコールtert-オクチルフェニルエーテル(即ちTritonX-100))を加えてスプレー造粒を実施するステップ(ステップS402)と、窒素雰囲気中にて少なくとも8〜12時間、高温焼成を実施(好ましくは、550℃から750℃の温度で実施)するステップ(ステップS403)と、バッテリー複合素材(例えば、リン酸マンガンリチウム、リン酸マンガン鉄リチウム、リン酸マンガン鉄リチウムナノ-コ-結晶オリビン又はリン酸マンガン鉄リチウムナノ-コ-結晶オリビン)を生産するステップ(ステップS404)が含まれる。
【0037】
以下の実施形態は、本開示のバッテリー複合素材の調製方法の説明及び記述のために本願明細書に示している。
【0039】
最初に、460グラムの炭酸マンガン(純度>99%)、462.7グラムのリン酸(純度>85%、3.2リットルの脱イオン水及び147.76グラムの炭酸リチウムを提供して、炭酸マンガン、リン酸及び脱イオン水を混合して反応処理し、24時間撹拌する。次に、分散剤を加えて、1時間、混合物を粉砕(450-650回転数/分)してMn
2P
2O
7前駆体溶液を取得する。そして、前駆体溶液に対して噴霧乾燥処理を実施して、製品をセラミック性容器に入れ、上記製品に対する焼成を実施(焼成温度は、窒素雰囲気中にて少なくとも2時間、380℃超で実施)する。焼成された化合物は、X線回折において分析する。分析ダイヤグラムは、
図4に示している。ダイヤグラムとJCPDSカードとを比較することによって、化合物は、Mn
2P
2O
7であることが確認される。外表面をSEMで分析する。SEM分析のダイヤグラムは、
図5に示している。
【0040】
次に、水平サンダーによる粉砕のために、前述のステップで得られた283.84グラムのMn
2P
2O
7、147.76グラムの炭酸リチウム、30グラムのフルクトース及び0.06グラムのTriton X-100(登録商標)を純水へ加える。粉砕後、LiMnPO
4前駆体溶液が得られる。そして、この前駆体溶液に対して噴霧乾燥処理を実施して、上記製品をセラミック性容器に入れ、製品に対する焼成を実施(焼成は、窒素雰囲気中にて8-12時間、550℃-750℃で実施)する。焼成した化合物をX線回折において分析する。分析ダイヤグラムは、
図6に示している。ダイヤグラムとJCPDSカードとを比較することによって、化合物は、LiMnPO
4であることが確認される。外表面をSEMで分析する。SEM分析のダイヤグラムは、
図7に示している。
【0041】
次に、前述のステップで得られたLiMnPO
4、導電性カーボンブラック(Super P(登録商標))及び4重量パーセントの結合剤(PVDF+NMP)を8:1:1の比率にて混合する。最初に、1グラムの導電性カーボンブラック及び25グラムの結合剤(PVDF:NMP=40:960)を10分間混合する。回転速度は、1200回転数/分である。そして、8グラムのLiMnPO
4を加えて、更に10分間混合する。次に、ブレードコーターを用いてアルミニウム基板上に分散スラリーをコーティング(コーティング厚は0.3ミリメートル)する。そして、コートアルミニウム基板をオーブンに入れて、100℃で1時間、コートアルミニウム基板を焼く。最後は、アルミニウム基板を直径が1.3センチメートルの円板に形成して、この円板、(負極としての)リチウム金属、1モル濃度のLiPF
6並びにEC及びDMC(体積比=1:1)の混合電解質を用いてボタン電池を作製する。ボタン電池の充放電電気特性は、充放電装置にて試験及び分析する。試験及び分析は、0.1クーロンで2サイクル、2クーロンで2サイクル実施する。充放電特性のダイヤグラムを
図8に示している。ボタン電池のカットオフ電圧は、2〜4.5ボルトである。
【0043】
第一実施形態のステップS200又はステップS400において金属酸化物(例えば、V
2O
5、TiO
2又はMgO)を加えることで、リン酸マンガンリチウムナノ-コ-結晶質オリビンを生産する。この実施形態の残り部分は、第一実施形態と類似しており、本願明細書において重複して記載していない。
【0045】
第一実施形態の30グラムのフルクトースの代わりに炭素源として12重量パーセントのラクトースを利用する。この実施形態の残り部分は、第一実施形態と類似しており、本願明細書において重複して記載していない。
【0047】
最初に、460グラムの炭酸マンガン(純度>99%)、462.7グラムのリン酸(純度>85%、3.2リットルの脱イオン水、147.76グラムの炭酸リチウム及び74.7グラムのリン酸鉄(III)二水和物(FePO
4・2H
2O)を提供し、炭酸マンガン、リン酸及び脱イオン水を混合して反応処理し、24時間撹拌する。次に、分散剤を加えて1時間混合物を粉砕(450-650回転数/分)し、Mn
2P
2O
7前駆体溶液を取得する。そして、前駆体溶液に対して噴霧乾燥処理を実施して、製品をセラミック性容器に入れ、製品に対して焼成(焼成は、窒素雰囲気中にて少なくとも2時間、380℃超の温度で実施)を実施する。焼成した化合物は、Mn
2P
2O
7であることが確認される。
【0048】
次
に、水平サンダーによる粉砕のために、前述のステップで得られた227.1グラムのMn
2P
2O
7、147.76グラムの炭酸リチウム、74.7グラムのFePO
4・2H
2O、30グラムのフルクトース及び0.06グラムのTriton X-100(登録商標)を純水へ加える。粉砕後、LiMn
0.8Fe
0.2PO
4前駆体溶液が得られる。そして、この前駆体溶液に対して噴霧乾燥処理を実施して、製品をセラミック性容器に入れ、製品に対して焼成(焼成は、窒素雰囲気中にて8-12時間、550℃-750℃で実施)を実施する。焼成した化合物は、X線回折において分析する。分析ダイヤグラムは、
図9に示している。ダイヤグラムとJCPDSカードとを比較することによって、化合物は、LiMn
0.8Fe
0.2PO
4であることが確認される。外表面をSEMで分析する。SEM分析のダイヤグラムは、
図10に示している。
【0049】
次に、混合前述のステップで得られたLiMn
0.8Fe
0.2PO
4、導電性カーボンブラック(Super P(登録商標))及び4重量パーセントの結合剤(PVDF+NMP)を8.5:0.5:1の比率にて混合する。最初に、0.5グラムの導電性カーボンブラック及び25グラムの結合剤(PVDF:NMP=40:960)を10分間混合する。回転速度は、1200回転数/分である。そして、8.5グラムのLiMn
0.8Fe
0.2PO
4を加えて、更に10分間混合する。次に、ブレードコーターを用いてアルミニウム基板上に分散スラリーをコーティング(コーティング厚は0.3ミリメートル)する。そして、コートアルミニウム基板をオーブンに入れて、100℃で1時間、コートアルミニウム基板を焼く。最後に、アルミニウム基板を直径が1.3センチメートルの円板に形成して、この円板、(負極としての)リチウム金属、1モル濃度のLiPF
6並びにEC及びDMC(体積比=3:7)の混合電解質を用いてボタン電池を作製する。ボタン電池の充放電電気特性は、充放電装置にて試験及び分析する。試験及び分析は、0.1クーロンで2サイクル、2クーロンで2サイクル実施する。充放電特性のダイヤグラムを
図11に示している。ボタン電池のカットオフ電圧は、2〜4.5ボルトである。
【0051】
第四実施態様のステップS200又はステップS400において金属酸化物(例えば、V
2O
5、TiO
2又はMgO)を加えることで、リン酸マンガン鉄リチウムナノ-コ-結晶オリビンを生産する。この実施形態の残り部分は、第四実施形態と類似しており、本願明細書において重複して記載していない。
【0053】
第四実施形態の30グラムのフルクトースの代わりに炭素源として12重量パーセントのラクトースを利用する。この実施形態の残り部分は、第四実施形態と類似しており、本願明細書において重複して記載していない。
【0055】
種々の特徴を成し遂げるために、第四実施形態のMnとFeとの比を調整する。言い換えれば、化合物LiMn
0.8Fe
0.2PO
4をLiMn
xFe
1-xPO
4(x>0及びxは好ましくは0.2-0.8)として調整する。この実施形態の残り部分は、第四実施形態と類似しており、本願明細書において重複して記載していない。
【0056】
図12A、
図12B及び
図12Cを参照。
図12A、
図12B及び
図12Cは、本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調整したリン酸マンガンリチウムナノ-コ-結晶オリビンのSEM分析のダイヤグラムを概略的に示している。本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調整したリン酸マンガンリチウムナノ-コ-結晶オリビンをSEMで分析する。50000x、10000x及び1000xの倍率でキャプチャーしたSEMダイヤグラムを、それぞれ
図12A、
図12B及び
図12Cに示している。
【0057】
図13A、
図13B及び
図13Cを参照。
図13A、
図13B及び
図13Cは、本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調整したリン酸マンガン鉄リチウムナノ-コ-結晶オリビンのSEM分析のダイヤグラムを概略的に示している。本発明のバッテリー複合素材の調製方法によって調整したリン酸マンガン鉄リチウムナノ-コ-結晶オリビンをSEMで分析する。50000x、10000x及び1000xの倍率でキャプチャーしたSEMダイヤグラムを、それぞれ
図13A、
図13B及び
図13Cに示している。
【0058】
上記記載から、本発明は、反応を経て生産された前駆体からバッテリー複合素材を調製する方法において、単位時間及び費用当たりの粉砕時間及びコストを低減するバッテリー複合素材及びその前駆体の調製方法を提供する。このプロセスでのpH値の感受性が低下しつつ、素材の粘性及び処理パイプの閉塞が回避され、処理温度は安定して制御され、プロセスの操作困難性が低下する。更に、水酸化リチウムの代わりに炭酸リチウムを利用することによって、このプロセスでのpH値はより安定になることから、炭素-コーティング結果及び製品性能の両方が向上する。
【0059】
本開示は、現在最も実用的で好ましい実施形態であると考えられるものに関して説明してきたが、本開示は、開示された実施形態に限定される必要はないことが理解されるべきである。それどころか、様々な修正及び全てのそのような修正及び類似の構造を包含するように最も広い解釈を与えられるべきであり、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲内に含まれる類似の構成を包含することが意図される。