特許第6189958号(P6189958)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6189958ガスバリア層形成用ポリウレタンディスパージョン、ポリウレタン積層体、および、ガスバリア層形成用ポリウレタンディスパージョンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189958
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ガスバリア層形成用ポリウレタンディスパージョン、ポリウレタン積層体、および、ガスバリア層形成用ポリウレタンディスパージョンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/00 20060101AFI20170821BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20170821BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20170821BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20170821BHJP
   C08G 18/32 20060101ALI20170821BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20170821BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20170821BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20170821BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20170821BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   C08G18/00 C
   C08G18/10
   C08K3/00
   C08L75/04
   C08G18/32
   C08J7/04 PCEP
   C08J7/04CES
   C08J7/04CEZ
   B32B27/40
   B32B27/18 Z
   C09D175/04
   C09D7/12
【請求項の数】5
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-529511(P2015-529511)
(86)(22)【出願日】2014年7月16日
(86)【国際出願番号】JP2014068931
(87)【国際公開番号】WO2015016069
(87)【国際公開日】20150205
【審査請求日】2016年1月25日
(31)【優先権主張番号】特願2013-157791(P2013-157791)
(32)【優先日】2013年7月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2013-239493(P2013-239493)
(32)【優先日】2013年11月20日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(72)【発明者】
【氏名】内田 隆
(72)【発明者】
【氏名】甲田 千佳子
(72)【発明者】
【氏名】大石 晃弘
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−007665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタン樹脂が、水分散されてなるガスバリア層形成用ポリウレタンディスパージョンであって、
前記イソシアネート基末端プレポリマーが、
キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、
炭素数2〜6のアルカンジオール、3価以上の低分子量ポリオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含むポリオール成分と
を少なくとも反応させることにより得られ、
前記鎖伸長剤が、
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物を含み、
前記ポリオール成分中の水酸基の総モル100%に対する、前記3価以上の低分子量ポリオール中の水酸基のモル割合が、25%未満であることを特徴とする、ガスバリア層形成用ポリウレタンディスパージョン。
【請求項2】
前記アルカンジオールが、エチレングリコールであることを特徴とする、請求項1に記載のガスバリア層形成用ポリウレタンディスパージョン。
【請求項3】
基材と、
前記基材の上に積層され、ポリウレタン樹脂からなるポリウレタン層とを備え、
前記ポリウレタン層が、
請求項1または2に記載のポリウレタンディスパージョンを塗布および乾燥させることにより形成されていることを特徴とする、ポリウレタン積層体。
【請求項4】
前記ポリウレタン層に、層状無機化合物が分散されていることを特徴とする、請求項3に記載のポリウレタン積層体。
【請求項5】
イソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタン樹脂が、水分散されるガスバリア層形成用ポリウレタンディスパージョンの製造方法であって、
キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、
炭素数2〜6のアルカンジオール、3価以上の低分子量ポリオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含むポリオール成分と
を少なくとも反応させることにより、前記イソシアネート基末端プレポリマーを得、
前記鎖伸長剤が、
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物を含み、
前記ポリオール成分中の水酸基の総モル100%に対する、前記3価以上の低分子量ポリオール中の水酸基のモル割合が、25%未満であることを特徴とする、ガスバリア層形成用ポリウレタンディスパージョンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンディスパージョンおよびポリウレタン積層体、詳しくは、優れたガスバリア性を発現するポリウレタン積層体、および、そのポリウレタン積層体に用いられるポリウレタンディスパージョンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸素ガスバリア性に優れたフィルムとして、ポリ塩化ビニリデンまたは塩化ビニリデン共重合体(以下、PVDCと略する。)からなるフィルムが知られている。
【0003】
しかし、PVDCは燃焼により有害なガスを生じる。
【0004】
そのため、ポリビニルアルコールや、エチレン・ビニルアルコール共重合体からなるフィルムが知られている。しかし、これらのフィルムは、高湿度下でのガスバリア性に劣るという不具合がある。
【0005】
また、無機酸化物がフィルムに蒸着された蒸着フィルムも知られているが、それらは柔軟性が低く、二次加工時にクラックなどが生じてガスバリア性の低下を生じるという不具合がある。
【0006】
そこで、高湿度下においてもガスバリア性が良好なフィルムの開発が検討されており、具体的には、例えば、ジイソシアネート成分と、C2〜8のアルキルグリコールを含むジオール成分とを反応させて得られるガスバリア性ポリウレタン樹脂、さらに、そのポリウレタン樹脂を含む層と、基材フィルム層とを積層して得られるガスバリア性複合フィルムが、提案されている。また、ガスバリア性複合フィルムを形成する方法としては、ポリウレタン樹脂の水分散体を、基材フィルム上に塗布および乾燥させる方法が、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−98047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、このようなガスバリア性複合フィルムでは、通常、ポリウレタン樹脂を含む層の、基材フィルム層に対する密着性が要求される。
【0009】
この点、密着性を向上させるため、ポリウレタン樹脂の原料成分としてアルコキシシリル化合物を配合することが検討される。
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載されるような、ジイソシアネート成分と、C2〜8のアルキルグリコールを含むジオール成分とを反応させて得られるガスバリア性ポリウレタン樹脂において、原料成分としてアルコキシシリル化合物を配合すると、水分散体中においてポリウレタン樹脂が凝集し、均一な層を形成できないという不具合がある。
【0011】
本発明の目的は、分散状態に優れ、ガスバリア性および密着性に優れるポリウレタン層を良好に形成することができるポリウレタンディスパージョン、および、そのポリウレタンディスパージョンを用いて得られるポリウレタン積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のポリウレタンディスパージョンは、イソシアネート基末端プレポリマーと、鎖伸長剤との反応により得られるポリウレタン樹脂が、水分散されてなるポリウレタンディスパージョンであって、前記イソシアネート基末端プレポリマーが、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含むポリイソシアネート成分と、炭素数2〜6のジオール、3価以上の低分子量ポリオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含むポリオール成分とを少なくとも反応させることにより得られ、前記鎖伸長剤が、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物を含み、前記ポリオール成分中の水酸基の総モル100%に対する、前記3価以上の低分子量ポリオール中の水酸基のモル割合が、25%未満であることを特徴としている。
【0013】
また、本発明のポリウレタン積層体は、基材と、前記基材の上に積層され、ポリウレタン樹脂からなるポリウレタン層とを備え、前記ポリウレタン層が、上記のポリウレタンディスパージョンを塗布および乾燥させることにより形成されていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明のポリウレタン積層体では、前記ポリウレタン層に、層状無機化合物が分散されていることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリウレタンディスパージョンは、原料成分として3価以上の低分子量ポリオールを特定割合で含有するため、鎖伸長剤として第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物を配合しても、優れた分散性を確保することができる。そのため、ガスバリア性および密着性に優れるポリウレタン層を良好に形成することができる。
【0016】
また、本発明のポリウレタン積層体は、上記のポリウレタンディスパージョンを用いて得られるポリウレタン層を備えるため、ガスバリア性および密着性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明のポリウレタン積層体の一実施形態を示す概略構成図である。
図2図2は、本発明のポリウレタン積層体の他の実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のポリウレタンディスパージョンは、ポリウレタン樹脂(水性ポリウレタン樹脂)を水分散させることにより得られ、ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤との反応により得られる。
【0019】
イソシアネート基末端プレポリマーは、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との反応により得られる。
【0020】
ポリイソシアネート成分は、必須成分として、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含んでいる。
【0021】
キシリレンジイソシアネート(XDI)としては、1,2−キシリレンジイソシアネート(o−XDI)、1,3−キシリレンジイソシアネート(m−XDI)、1,4−キシリレンジイソシアネート(p−XDI)が、構造異性体として挙げられる。
【0022】
これらキシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、より好ましくは、1,3−キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0023】
また、水添キシリレンジイソシアネート(別名:ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン)(HXDI)としては、1,2−水添キシリレンジイソシアネート(o−HXDI)、1,3−水添キシリレンジイソシアネート(m−HXDI)、1,4−水添キシリレンジイソシアネート(p−HXDI)が、構造異性体として挙げられる。
【0024】
これら水添キシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。水添キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3−水添キシリレンジイソシアネート、1,4−水添キシリレンジイソシアネート、より好ましくは、1,3−水添キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0025】
また、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートとしては、それらの誘導体が含まれる。
【0026】
キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートの誘導体としては、例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートの多量体(例えば、2量体、3量体(例えば、イソシアヌレート変性体、イミノオキサジアジンジオン変性体)、5量体、7量体など)、アロファネート変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと、後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するアロファネート変性体など)、ポリオール変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと後述する低分子量ポリオールとの反応より生成するポリオール変性体(アルコール付加体)など)、ビウレット変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと、水やアミン類との反応により生成するビウレット変性体など)、ウレア変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートとジアミンとの反応により生成するウレア変性体など)、オキサジアジントリオン変性体(例えば、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートと炭酸ガスとの反応により生成するオキサジアジントリオンなど)、カルボジイミド変性体(キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートの脱炭酸縮合反応により生成するカルボジイミド変性体など)、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
【0027】
これらの誘導体は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0028】
また、ポリイソシアネート成分は、必要に応じて、その他のポリイソシアネートを含有することもできる。
【0029】
その他のポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く)、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを除く)などのポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0030】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(2,4−または2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TDI)、フェニレンジイソシアネート(m−、p−フェニレンジイソシアネートもしくはその混合物)、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジフェニルメタンジイソシネート(4,4’−、2,4’−または2,2’−ジフェニルメタンジイソシネートもしくはその混合物)(MDI)、4,4’−トルイジンジイソシアネート(TODI)、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0031】
芳香脂肪族ポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートを除く)としては、例えば、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3−または1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートもしくはその混合物)(TMXDI)、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼンなどの芳香脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0032】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート)、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:ヘキサメチレンジイソシアネート)(HDI)、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプエートなどの脂肪族ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0033】
脂環族ポリイソシアネート(水添キシリレンジイソシアネートを除く)としては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(別名:ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン)(4,4’−、2,4’−または2,2’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)これらのTrans,Trans−体、Trans,Cis−体、Cis,Cis−体、もしくはその混合物)(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート)、ノルボルナンジイソシアネート(各種異性体もしくはその混合物)(NBDI)、などの脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。好ましくは、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)が挙げられる。
【0034】
その他のポリイソシアネートには、上記と同種の誘導体が含まれる。
【0035】
これらその他のポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、脂環族ポリイソシアネート、さらに好ましくは、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンが挙げられる。
【0036】
その他のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートおよび水添キシリレンジイソシアネートを除く)が配合される場合には、その配合割合は、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネート(併用される場合にはそれらの総量)100質量部に対して、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下であり、通常、1質量部以上である。
【0037】
また、好ましくは、キシリレンジイソシアネートおよびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンの併用が挙げられる。
【0038】
キシリレンジイソシアネートおよびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンを併用することにより、分散性に優れ、平均粒子径の小さいポリウレタンディスパージョンが得られる。
【0039】
キシリレンジイソシアネートおよびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンを併用する場合、キシリレンジイソシアネートおよびビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンの総量100質量部に対して、キシリレンジイソシアネートが、例えば、60質量部以上、好ましくは、70質量部以上、より好ましくは、80質量部以上であり、例えば、95質量部以下、好ましくは、93質量部以下、より好ましくは、90質量部以下である。また、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタンが、例えば、5質量部以上、好ましくは、7質量部以上、より好ましくは、10質量部以上であり、例えば、40質量部以下、好ましくは、30質量部以下、より好ましくは、20質量部以下である。
【0040】
ポリオール成分は、必須成分として、炭素数2〜6のジオール、3価以上の低分子量ポリオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を含んでいる。
【0041】
炭素数2〜6のジオールは、水酸基を2つ有する炭素数2〜6の有機化合物であって、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオールなどの炭素数2〜6のアルカンジオール(炭素数2〜6のアルキレングリコール)などが挙げられる。
【0042】
これら炭素数2〜6のジオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0043】
炭素数2〜6のジオールとして、好ましくは、炭素数2〜6のアルカンジオール、より好ましくは、エチレングリコールが挙げられる。
【0044】
炭素数2〜6のジオールの配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、50質量部以上、好ましくは、55質量部以上であり、例えば、80質量部以下、好ましくは、75質量部以下である。
【0045】
また、ポリオール成分中の水酸基の総モル100%に対する、炭素数2〜6のジオール中の水酸基のモル割合が、例えば、90%以下、好ましくは、85%以下、より好ましくは、80%以下であり、例えば、50%以上、好ましくは、55%以上、より好ましくは、60%以上である。
【0046】
3価以上の低分子量ポリオールは、数平均分子量が400以下であり、1分子中に水酸基を3つ以上有する有機化合物であって、例えば、グリセリン、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジヒドロキシ−3−ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−3−ブタノールなどの3価アルコール(低分子量トリオール)、例えば、テトラメチロールメタン(ペンタエリスリトール)、ジグリセリンなどの4価アルコール、例えば、キシリトールなどの5価アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、アリトール、イジトール、ダルシトール、アルトリトール、イノシトール、ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール、例えば、ペルセイトールなどの7価アルコール、例えば、ショ糖などの8価アルコールなどが挙げられる。
【0047】
また、3価以上の低分子量ポリオールとしては、例えば、数平均分子量400以下の、3価以上のポリアルキレンオキサイドなども挙げられる。そのようなポリアルキレンオキサイドは、例えば、上記した3価以上の低分子量ポリオール、または、公知のポリアミンを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって、ポリエチレンポリコール、ポリプロピレンポリコール、ポリエチレンポリプロピレンポリコール(ランダムまたはブロック共重合体)などとして得ることができる。
【0048】
これら3価以上の低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0049】
3価以上の低分子量ポリオールとして、好ましくは、3価アルコール(低分子量トリオール)、4価アルコールが挙げられ、より好ましくは、3価アルコール(低分子量トリオール)が挙げられ、さらに好ましくは、トリメチロールプロパン、グリセリンが挙げられる。
【0050】
3価以上の低分子量ポリオールの配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、8質量部以上であり、例えば、25質量部以下、好ましくは、22質量部以下である。
【0051】
また、炭素数2〜6のジオールと3価以上の低分子量ポリオールとの併用割合は、炭素数2〜6のジオールと3価アルコールとの総量100質量部に対して、3価以上の低分子量ポリオールが、例えば、5質量部以上、好ましくは、8質量部以上であり、例えば、40質量部以下、好ましくは、35質量部以下である。
【0052】
また、ポリオール成分中の水酸基の総モル100%に対する、3価以上の低分子量ポリオール中の水酸基のモル割合が、25%未満、好ましくは、20%以下、より好ましくは、18%以下であり、例えば、1%以上、好ましくは、2%以上、より好ましくは、3%以上である。
【0053】
ポリオール成分中の水酸基の総モルに対する3価以上の低分子量ポリオール中の水酸基のモル割合が上記範囲であれば、鎖伸長剤(後述)として第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物を配合しても、優れた分散性を確保することができる。そのため、ガスバリア性および密着性に優れるポリウレタン層を良好に形成することができる。
【0054】
親水性基を含有する活性水素基含有化合物は、ノニオン性基またはイオン性基などの親水性基を含有し、アミノ基または水酸基などの活性水素基を含有する化合物であって、具体的には、例えば、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物、イオン性基を含有する活性水素基含有化合物が挙げられる。
【0055】
ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールなどが挙げられる。
【0056】
ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールは、側鎖にポリオキシエチレン基を含み、2つ以上の水酸基を有する有機化合物であって、次のように合成することができる。
【0057】
すなわち、まず、上記したジイソシアネートと、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコール(例えば、炭素数1〜4のアルキル基で片末端封鎖したアルコキシポリオキシエチレンモノオールであって、数平均分子量200〜6000、好ましくは300〜3000)とを、片末端封鎖ポリオキシエチレングリコールの水酸基に対して、ジイソシアネートのイソシアネート基が過剰となる割合でウレタン化反応させ、必要により未反応のジイソシアネートを除去することにより、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートを得る。
【0058】
次いで、ポリオキシエチレン鎖含有モノイソシアネートと、ジアルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミンなど)とを、ジアルカノールアミンの2級アミノ基に対して、ポリオキシエチレン基含有モノイソシアネートのイソシアネート基がほぼ等量となる割合でウレア化反応させる。
【0059】
なお、ノニオン性基を含有する活性水素基含有化合物において、ノニオン性基、具体的には、ポリオキシエチレン基の数平均分子量は、例えば、600〜6000である。
【0060】
ポリオキシエチレン側鎖を含有するポリオールを得るためのジイソシアネートとして、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ジイソシアネート、1,4−または1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、2,6−ビス(イソシアナトメチル)ノルボナン(NBDI)などの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。
【0061】
イオン性基を含有する活性水素基含有化合物は、例えば、カルボン酸などのアニオン性基や、4級アミンなどのカチオン性基と、2つ以上の水酸基またはアミノ基などの活性水素基とを併有する有機化合物であって、好ましくは、アニオン性基と2つ以上の水酸基とを併有する有機化合物、より好ましくは、カルボン酸と2つの水酸基とを併有する有機化合物(カルボキシ基を含有する活性水素基含有化合物(例えば、カルボキシ基含有ポリオールなど))が挙げられる。
【0062】
カルボキシ基含有ポリオールとしては、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸(別名:ジメチロールプロピオン酸)、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのポリヒドロキシアルカン酸などが挙げられ、好ましくは、2,2−ジメチロールプロピオン酸が挙げられる。
【0063】
これら親水性基を含有する活性水素基含有化合物は、単独使用または併用することができ、好ましくは、イオン性基を含有する活性水素基含有化合物、より好ましくは、カルボキシ基含有ポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、ポリヒドロキシアルカン酸が挙げられる。
【0064】
ポリヒドロキシアルカン酸を配合することにより、ガスバリア性、基材との密着性や、透明性のさらなる向上を図ることができる。
【0065】
親水性基を含有する活性水素基含有化合物の配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、20質量部以上、好ましくは、25質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下である。
【0066】
また、ポリオール成分中の水酸基の総モル100%に対する、親水性基を含有する活性水素基含有化合物中の水酸基のモル割合が、例えば、35%以下、好ましくは、30%以下、より好ましくは、25%以下であり、例えば、7%以上、好ましくは、10%以上、より好ましくは、12%以上である。
【0067】
また、ポリオール成分は、さらに、任意成分として、その他のポリオール化合物(上記した炭素数2〜6のジオール、3価以上の低分子量ポリオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く)を含有することもできる。
【0068】
そのようなポリオール化合物としては、例えば、上記した炭素数2〜6のジオール、3価以上の低分子量ポリオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く低分子量ポリオールが挙げられ、具体的には、例えば、炭素数7〜20のアルカン−1,2−ジオール、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAなどの炭素数7以上の2価アルコール(ジオール)などが挙げられる。
【0069】
また、低分子量ポリオール(上記した炭素数2〜6のジオール、3価以上の低分子量ポリオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く)としては、例えば、数平均分子量400以下の、2価のポリアルキレンオキサイドなども挙げられる。そのようなポリアルキレンオキサイドは、例えば、上記した2価アルコールを開始剤として、エチレンオキサイドおよび/またはプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加反応させることによって、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダムまたはブロック共重合体)などとして得ることができる。また、例えば、テトラヒドロフランの開環重合などによって得られる数平均分子量400以下のポリテトラメチレンエーテルグリコールなども挙げられる。
【0070】
これら低分子量ポリオール(上記した炭素数2〜6のジオール、3価以上の低分子量ポリオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0071】
低分子量ポリオール(上記した炭素数2〜6のジオール、3価以上の低分子量ポリオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物を除く)が配合される場合には、その配合割合は、ポリオール成分の総量100質量部に対して、例えば、90質量部以下、好ましくは、70質量部以下である。
【0072】
また、ポリオール成分は、好ましくは、炭素数2〜6のジオール、3価以上の低分子量ポリオール、および、親水性基を含有する活性水素基含有化合物からなる。
【0073】
そして、イソシアネート基末端プレポリマーを合成するには、上記各成分を、活性水素基(水酸基およびアミノ基)に対するイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/活性水素基)において、1を超える割合、好ましくは、1.1〜10の割合で配合する。そして、バルク重合や溶液重合などの公知の重合方法、好ましくは、反応性および粘度の調整がより容易な溶液重合によって、上記各成分を反応させる。
【0074】
バルク重合では、例えば、窒素雰囲気下、上記成分を配合して、反応温度75〜85℃で、1〜20時間程度反応させる。
【0075】
溶液重合では、例えば、窒素雰囲気下、有機溶媒(溶剤)に、上記成分を配合して、反応温度20〜80℃で、1〜20時間程度反応させる。
【0076】
有機溶媒としては、イソシアネート基に対して不活性で、かつ、親水性に富む、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなどが挙げられる。
【0077】
この重合反応は、反応溶液中のイソシアネート基含有率が15質量%以下、好ましくは、10質量%以下になるまで反応させる。
【0078】
また、上記重合では、必要に応じて、例えば、アミン系、スズ系、鉛系などの反応触媒を添加してもよく、また、得られるイソシアネート基末端プレポリマーから未反応のポリイソシアネート(キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートを含む)を、例えば、蒸留や抽出などの公知の方法により、除去することもできる。
【0079】
また、例えば、アニオン性基が含まれている場合には、好ましくは、中和剤を添加して中和し、アニオン性基の塩を形成させる。
【0080】
中和剤としては、慣用の塩基、例えば、有機塩基(例えば、第3級アミン類(トリメチルアミン、トリエチルアミンなどの炭素数1〜4のトリアルキルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどのアルカノールアミン、モルホリンなどの複素環式アミンなど))、無機塩基(アンモニア、アルカリ金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなど))が挙げられる。これらの塩基は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0081】
中和剤は、アニオン性基1当量あたり、0.4当量以上、好ましくは、0.6当量以上の割合で添加し、また、例えば、1.2当量以下、好ましくは、1当量以下の割合で添加する。
【0082】
このようにして得られるイソシアネート基末端プレポリマーは、その分子末端に、2つ以上の遊離のイソシアネート基を有するポリウレタンプレポリマーであって、そのイソシアネート基の含有量(溶剤を除いた固形分換算のイソシアネート基含量)が、例えば、0.3質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、より好ましくは、1.0質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、12質量%以下、より好ましくは、10質量%以下である。
【0083】
また、イソシアネート基の平均官能基数は、例えば、1.5以上、好ましくは1.9以上、より好ましくは、2.0以上であり、また、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。
【0084】
イソシアネート基の平均官能基数が上記範囲にあれば、安定した上記ポリウレタンディスパージョンを得ることができ、基材密着性、ガスバリア性などを確保することができる。
【0085】
また、その数平均分子量(標準ポリスチレンを検量線とするGPC測定による数平均分子量)が、例えば、500以上、好ましくは、800以上であり、また、例えば、10000以下、好ましくは、5000以下である。
【0086】
また、イソシアネート基末端プレポリマーの親水性基濃度は、例えば、0.1mmol/g以上、好ましくは、0.2mmol/g以上であり、また、例えば、1.2mmol/g以下、好ましくは、1.0mmol/g以下、より好ましくは、0.8mmol/g以下である。
【0087】
イソシアネート基末端プレポリマーの親水性基濃度が上記範囲にあれば、安定した上記ポリウレタンディスパージョンを得ることができる。
【0088】
次いで、この方法では、上記により得られたイソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを、例えば、水中で反応させ、ポリウレタン樹脂のポリウレタンディスパージョンを得る。
【0089】
鎖伸長剤は、必須成分として、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物を含有している。
【0090】
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物としては、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどの第1級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(別名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(別名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(別名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(別名:N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン)などの第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物などが挙げられる。
【0091】
これら第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0092】
また、鎖伸長剤は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で、任意成分として、その他のポリアミン(第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物を除くポリアミン)を含むことができる。
【0093】
その他のポリアミンとしては、例えば、芳香族ポリアミン、芳香脂肪族ポリアミン、脂環族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、アミノアルコール、ポリオキシエチレン基含有ポリアミンなどが挙げられる。
【0094】
芳香族ポリアミンとしては、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、トリレンジアミンなどが挙げられる。
【0095】
芳香脂肪族ポリアミンとしては、例えば、1,3−または1,4−キシリレンジアミンもしくはその混合物などが挙げられる。
【0096】
脂環族ポリアミンとしては、例えば、3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(別名:イソホロンジアミン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ジアミノシクロヘキサン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3−および1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびそれらの混合物などが挙げられる。
【0097】
脂肪族ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ヒドラジン(水和物を含む)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノペンタンなどが挙げられる。
【0098】
アミノアルコールとしては、例えば、2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノール(別名:N−(2−アミノエチル)エタノールアミン)、2−((2−アミノエチル)アミノ)−1−メチルプロパノール(別名:N−(2−アミノエチル)イソプロパノールアミン)などが挙げられる。
【0099】
ポリオキシエチレン基含有ポリアミンとしては、例えば、ポリオキシエチレンエーテルジアミンなどのポリオキシアルキレンエーテルジアミンが挙げられる。より具体的には、例えば、日本油脂製のPEG#1000ジアミンや、ハンツマン社製のジェファーミンED―2003、EDR−148、XTJ−512などが挙げられる。
【0100】
これらその他のポリアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0101】
その他のポリアミンとして、好ましくは、アミノアルコールが挙げられる。
【0102】
また、鎖伸長剤は、好ましくは、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物と、アミノアルコールとからなる。
【0103】
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物と、その他のポリアミンとを併用する場合、それらの総量100質量部に対して、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物が、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上であり、例えば、25質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。また、その他のポリアミンが、例えば、75質量部以上、好ましくは、80質量部以上であり、例えば、99質量部以下、好ましくは、98質量部以下である。
【0104】
そして、イソシアネート基末端プレポリマーと鎖伸長剤とを水中で反応させるには、例えば、まず、水にイソシアネート基末端プレポリマーを添加することにより、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長する。
【0105】
イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させるには、イソシアネート基末端プレポリマー100質量部に対して、水100〜1000質量部の割合において、水を攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーを添加する。
【0106】
その後、鎖伸長剤を、イソシアネート基末端プレポリマーが水分散された水中に、攪拌下、イソシアネート基末端プレポリマーのイソシアネート基に対する鎖伸長剤の活性水素基(アミノ基および水酸基)の当量比(活性水素基/イソシアネート基)が、例えば、0.6〜1.2の割合となるように、滴下する。
【0107】
鎖伸長剤は、滴下することで反応させ、滴下終了後は、さらに撹拌しつつ、例えば、常温にて反応を完結させる。反応完結までの反応時間は、例えば、0.1時間以上であり、また、例えば、10時間以下である。
【0108】
なお、上記とは逆に、水をイソシアネート基末端プレポリマー中に添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを水分散させ、次いで、それに鎖伸長剤を添加して、イソシアネート基末端プレポリマーを鎖伸長剤により鎖伸長することもできる。
【0109】
また、この方法では、必要に応じて、有機溶媒や水を除去することができ、さらには、水を添加して固形分濃度を調整することもできる。
【0110】
得られるポリウレタン樹脂のポリウレタンディスパージョンの固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、より好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、45質量%以下である。
【0111】
ポリウレタンディスパージョンのpHは、例えば、5以上、好ましくは、6以上、また、例えば、11以下、好ましくは、10以下である。
【0112】
ポリウレタンディスパージョンの25℃における粘度は、例えば、3mPa・s以上、好ましくは、5mPa・s以上であり、また、例えば、2000mPa・s以下、好ましくは、1000mPa・s以下である。
【0113】
ポリウレタンディスパージョンの平均粒子径は、例えば、10nm以上、好ましくは、20nm以上であり、また、例えば、500nm以下、好ましくは、300nm以下である。
【0114】
ポリウレタンディスパージョンのウレタン基濃度とウレア基濃度との合計値は、仕込み計算値で、例えば、20質量%以上、好ましくは、25質量%以上であり、また、例えば、50質量%以下、好ましくは、45質量%以下である。
【0115】
ポリウレタンディスパージョンのSi含有量は、仕込み計算値で、例えば、0.02質量%以上、好ましくは、0.05質量%以上であり、また、例えば、1.2質量%以下、好ましくは、1.0質量%以下である。
【0116】
また、必要に応じて、各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、アルコキシシラン化合物、安定剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など)、可塑剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、分散安定剤、着色剤(顔料、染料など)、フィラー、コロイダルシリカ、無機粒子、無機酸化物粒子、結晶核剤などが挙げられる。
【0117】
なお、添加剤は、上記各原料成分に予め配合してもよく、また、合成後のイソシアネート基末端プレポリマーや、ポリウレタン樹脂に配合してもよく、さらに、それら各成分の配合時に同時に配合してもよい。
【0118】
また、添加剤の配合割合は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0119】
また、必要に応じて、ガスバリア性が損なわれない範囲で、ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を配合してもよい。
【0120】
ガスバリア性を有する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデンまたは塩化ビニリデン共重合体、でんぷん、セルロースなどの多糖類などが挙げられる。
【0121】
そして、このようなポリウレタンディスパージョンは、原料成分として3価以上の低分子量ポリオールを特定割合で含有するため、鎖伸長剤として第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物を配合しても、優れた分散性を確保することができる。そのため、ガスバリア性および密着性に優れるポリウレタン層を良好に形成することができる。
【0122】
そのため、本発明のポリウレタンディスパージョンは、ガスバリア層としてポリウレタン層を備えるポリウレタン積層体の製造において、好適に用いることができる。
【0123】
図1において、ポリウレタン積層体1は、基材2と、基材2の上に積層されるポリウレタン層3とを備えている。
【0124】
基材2は、特に制限されず、例えば、プラスチック(例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂など)、紙、布、木、金属、セラミックスなどから形成され、好ましくは、プラスチック、より好ましくは、熱可塑性樹脂から形成される。
【0125】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体など)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、ポリアミド系樹脂(例えば、ナイロン6(登録商標)、ナイロン66(登録商標)、ポリメタキシリレンアジパミドなど)、ビニル系樹脂(例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニルなど)、アクリル系樹脂(例えば、ポリメチルメタアクリレート、ポリアクリロニトリルなど)、ポリカーボネート系樹脂(例えば、ビスフェノールA型ポリカーボネートなど)、セルロース系樹脂(例えば、セロファン、酢酸セルロースなど)などが挙げられる。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が挙げられる。より好ましくは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン6(登録商標)が挙げられる。
【0126】
基材2は、単層、または、同種または2種以上の積層体からなる。
【0127】
なお、基材2の形状は、特に制限されないが、例えば、フィルム状、シート状、ボトル状、カップ状などが挙げられる。好ましくは、フィルム状が挙げられる。
【0128】
基材2は、無延伸基材、一軸または二軸延伸基材のいずれでもよく、また、基材2には、表面処理(コロナ放電処理など)、アンカーコートまたはアンダーコート処理がなされていてもよく、さらに、アルミニウムなどの金属、シリカ、アルミナ、シリカとアルミナとの混合物などの金属酸化物の蒸着処理がなされていてもよい。
【0129】
基材2の厚みは、例えば、3μm以上、好ましくは、5μm以上であり、また、例えば、500μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0130】
ポリウレタン層3は、上記のポリウレタン樹脂から形成されており、製造効率の観点から、好ましくは、上記のポリウレタン樹脂を含むポリウレタンディスパージョンを、基材2に塗布および乾燥させることにより、形成されている。
【0131】
より具体的には、ポリウレタン層3を形成するには、上記方法により得られたポリウレタンディスパージョンの濃度を調整してコート剤を調製する。そして、得られたコート剤を、基材2の上に塗布し、乾燥させる。
【0132】
ポリウレタンディスパージョンの濃度を調整では、例えば、水や公知の有機溶媒などを添加、または、脱離させるなど、公知の方法を採用することができる。
【0133】
コート剤の固形分濃度は、例えば、0.5質量%以上、好ましくは、1質量%以上であり、また、例えば、30質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
【0134】
また、コート剤には、必要に応じて、硬化剤を配合することができる。
【0135】
硬化剤としては、例えば、エポキシ硬化剤、メラミン硬化剤、カルボジイミド硬化剤、アジリジン硬化剤、オキサゾリン硬化剤、イソシアネート硬化剤などが挙げられる。この中で、イソシアネート硬化剤については、より具体的には、水分散性のイソシアネート硬化剤(例えば、ブロックイソシアネート(例えば、トリレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート、キシリレンジイソシアネート系のブロックイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート系のブロックイソシアネートなど)、親水性基を含有する非ブロックポリイソシアネートなど)が挙げられる。
【0136】
硬化剤を配合する場合には、その配合割合は、ポリウレタン樹脂100質量部に対して、硬化剤が、固形分として、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0137】
また、コート剤の塗布方法としては、特に制限されず、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ロールコート法、バーコート法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ディッピング法などの公知のコーティング方法が挙げられる。
【0138】
また、基材2を作製するときに、インラインで塗布してもよい。
【0139】
具体的には、基材2がフィルム状の場合、フィルム製膜時の縦方向の一軸延伸処理後にグラビアコート法などにより、コート剤を塗布および乾燥した後、二軸延伸処理してポリウレタン層3を基材2上に設けることができる。
【0140】
また、基材2がボトル状の場合、ブロー成型前のプリフォームにディッピング法などによりコート剤を塗布および乾燥した後、ブロー成型してポリウレタン層3を基材2上に設けることができる。
【0141】
また、乾燥条件は、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、0.1分以上、好ましくは、0.2分以上であり、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0142】
これにより、基材2の上に、ポリウレタン樹脂からなるポリウレタン層3を形成することができ、これにより、基材2およびポリウレタン層3を備えるポリウレタン積層体1を得ることができる。
【0143】
ポリウレタン層3の厚みは、ポリウレタン樹脂(乾燥後)の積層量として、例えば、0.05g/m以上、好ましくは、0.1g/m以上、より好ましくは、0.2g/m以上であり、また、例えば、10g/m以下、好ましくは、7g/m以下、より好ましくは、5g/m以下、さらに好ましくは、3g/m以下である。
【0144】
そして、上記のように、基材2の上にポリウレタン層3を形成することにより、ポリウレタン積層体1を得ることができる。
【0145】
ポリウレタン積層体1の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下である。
【0146】
また、必要に応じて、得られたポリウレタン積層体1を、例えば、30〜50℃で、2〜5日間程度養生させてもよい。
【0147】
そして、このようなポリウレタン積層体1は、上記のポリウレタンディスパージョンを用いて得られるポリウレタン層3を備えるため、ガスバリア性および密着性に優れる。すなわち、ポリウレタン層3は、ガスバリア層であって、密着性に優れる。
【0148】
また、ポリウレタン積層体1では、ガスバリア性の向上を図るため、ポリウレタン層3に、層状無機化合物を分散させることもできる。
【0149】
具体的には、例えば、上記のポリウレタンディスパージョンと、層状無機化合物との混合物を、基材2に塗布および乾燥させることにより、層状無機化合物が分散されたポリウレタン層3を形成することができる。
【0150】
層状無機化合物としては、例えば、膨潤性の層状無機化合物、非膨潤性の層状無機化合物などが挙げられる。ガスバリア性の観点から、好ましくは、膨潤性の層状無機化合物が挙げられる。
【0151】
膨潤性の層状無機化合物は、極薄の単位結晶からなり、単位結晶層間に溶媒が配位または吸収・膨潤する性質を有する粘土鉱物である。
【0152】
膨潤性の層状無機化合物として、具体的には、例えば、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物など)、例えば、カオリナイト族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライトなど)、アンチゴライト族粘土鉱物(アンチゴライト、クリソタイルなど)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイトなど)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライトなど)、雲母またはマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母などの雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライトなど)、合成マイカなどが挙げられる。
【0153】
これら膨潤性の層状無機化合物は、天然粘土鉱物であってもよく、また、合成粘土鉱物であってもよい。また、単独または2種以上併用することができ、好ましくは、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイトなど)、マイカ族粘土鉱物(水膨潤性雲母など)、合成マイカなどが挙げられ、より好ましくは、合成マイカが挙げられる。
【0154】
層状無機化合物の平均粒径は、例えば、50nm以上、好ましくは、100nm以上であり、また、通常、100μm以下であり、例えば、75μm以下、好ましくは、50μm以下である。また、層状無機化合物のアスペクト比は、例えば、10以上、好ましくは20以上、より好ましくは、100以上であり、また、例えば、5000以下、好ましくは、4000以下、より好ましくは、3000以下である。
【0155】
そして、層状無機化合物が分散されたポリウレタン層3を形成するには、例えば、まず、上記のポリウレタンディスパージョンと、層状無機化合物とを混合し、混合物として、ハイブリッドコート剤を調製する。そして、得られたハイブリッドコート剤を基材2の上に塗布し、乾燥させる。
【0156】
混合物(ハイブリッドコート剤)を調製するには、まず、水に層状無機化合物を分散させ、次いで、その分散液に、ポリウレタンディスパージョン(ポリウレタン樹脂を含む)を添加する。
【0157】
ポリウレタン樹脂と層状無機化合物との配合割合は、ポリウレタン樹脂と層状無機化合物との質量の総量100質量部に対して、層状無機化合物が、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0158】
ポリウレタン樹脂と層状無機化合物との配合割合が上記範囲であれば、ガスバリア性を維持するとともに、基材との密着性、透明性および低コスト性の向上を図ることができる。
【0159】
得られる混合物(ハイブリッドコート剤)における、ポリウレタン樹脂および層状無機化合物の総濃度は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上であり、また、例えば、15質量%以下、好ましくは、12質量%以下である。
【0160】
なお、混合物(ハイブリッドコート剤)において、層状無機化合物は、2次凝集するおそれがあるため、好ましくは、層状無機化合物を溶媒に分散または混合した後、せん断力が作用する機械的な強制分散処理、例えば、ホモミキサー、コロイドミル、ジェットミル、ニーダー、ビーズミル、サンドミル、ボールミル、3本ロール、超音波分散装置などによる分散処理を利用して、分散させる。
【0161】
また、ハイブリッドコート剤には、必要に応じて、上記硬化剤を配合することもできる。
【0162】
上記硬化剤を配合する場合には、その配合割合は、ポリウレタン樹脂の総量の固形分100質量部に対して、上記硬化剤が、固形分換算で、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、また、例えば、50質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0163】
また、ハイブリッドコート剤の塗布方法としては、特に制限されず、上記した公知のコーティング方法が挙げられる。
【0164】
乾燥条件は、乾燥温度が、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、乾燥時間が、例えば、0.1分以上、好ましくは、0.2分以上であり、例えば、10分以下、好ましくは、5分以下である。
【0165】
これにより、基材2の上に、ポリウレタン樹脂および層状無機化合物からなるポリウレタン層3を形成することができる。
【0166】
ポリウレタン層3の厚みは、ポリウレタン樹脂および層状無機化合物(乾燥後)の積層量として、例えば、0.1g/m以上、好ましくは、0.2g/m以上、より好ましくは、0.6g/m以上であり、また、例えば、10g/m以下、好ましくは、7g/m以下、より好ましくは、5g/m以下である。
【0167】
そして、上記のように、基材2の上にポリウレタン層3を形成することにより、ポリウレタン積層体1を得ることができる。
【0168】
ポリウレタン積層体1の厚みは、例えば、5μm以上、好ましくは、10μm以上であり、また、例えば、1mm以下、好ましくは、0.5mm以下である。
【0169】
また、ポリウレタン積層体1において、層状無機化合物の質量割合は、ポリウレタン層3の総量100質量部に対して、層状無機化合物の質量が、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上、より好ましくは、1質量部以上であり、例えば、90質量部以下、好ましくは、70質量部以下、より好ましくは、50質量部以下である。
【0170】
層状無機化合物の質量割合が上記範囲であれば、基材との密着性や、透明性の向上を図るとともに、層状無機化合物の配合割合を少なくできるため、低コスト性の向上も図ることができる。
【0171】
また、必要に応じて、得られたポリウレタン積層体1を、例えば、30〜50℃で、2〜5日間程度養生させてもよい。
【0172】
このようなポリウレタン積層体1は、上記のポリウレタンディスパージョンを用いて得られるポリウレタン層3を備え、また、そのポリウレタン層3に層状無機化合物が分散されているため、とりわけガスバリア性に優れる。
【0173】
そして、このようにして得られるポリウレタン積層体1は、ガスバリア性のみならず、基材2に対する密着性、透明性および低コスト性に優れる。そのため、ガスバリア性フィルムの分野、具体的には、食品・医薬品などに用いられる包装用フィルムなどに使用され、ボイル殺菌、レトルト殺菌、加熱調理などの加熱処理が必要とされる内容物の包装用フィルムなどにも用いられる。また、光学フィルム、工業用フィルムなどの分野においても好適に使用される。
【0174】
また、上記したコート剤や、ハイブリッドコート剤に、顔料などの着色剤を含ませて印刷用インキとして調製し、これをプラスチックフィルム、紙、各種容器などへ塗装することで印刷フィルムや印刷体としても好適に使用することができる。
【0175】
なお、上記した説明では、ポリウレタン層3を単層としたが、例えば、図2に示すように、ポリウレタン層3を、基材2に積層される第1ポリウレタン層3aと、その第1ポリウレタン層3aに積層される第2ポリウレタン層3bとの2層とすることができ、さらには、図示しないが、ポリウレタン層3を3層以上の多層とすることもできる。
【0176】
また、そのようなポリウレタン積層体1において、ポリウレタン層3に層状無機化合物を分散させる場合には、少なくともいずれかの層に層状無機化合物が分散されていればよく、また、全ての層に層状無機化合物が分散されていてもよい。なお、いずれの層にも層状無機化合物が分散されていなくともよい。
【0177】
例えば、ポリウレタン層3を、基材2に積層される第1ポリウレタン層3aと、その第1ポリウレタン層3aに積層される第2ポリウレタン層3bとの2層とし、第2ポリウレタン層3bにのみ、層状無機化合物を分散させることができる。
【0178】
また、上記した説明では、ポリウレタン層3は、基材2の厚み方向一方面全面に積層されているが、これに限定されず、例えば、図示しないが、基材2の厚み方向両面、さらには、基材2を部分的に積層することができる。
【実施例】
【0179】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。また、以下の説明において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。なお、以下に示す実施例の数値は、実施形態において記載される対応する数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
<ポリウレタンディスパージョン(PUD)の調製>
実施例1(PUD1)
タケネート500(1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製)143.3g、VestanatH12MDI(4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、H12MDI)25.0g、エチレングリコール28.1g、トリメチロールプロパン5.5g、ジメチロールプロピオン酸13.1gおよび溶剤としてメチルエチルケトン121.0gを混合し(3価以上の低分子量ポリオールのOH量/全ポリオール成分のOH量;10/100当量比)、窒素雰囲気下65〜70℃で、NCO%が6.12%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
【0180】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン9.8gにて中和させた。
【0181】
次いで、反応液を839.9gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、46.5gのイオン交換水に23.2gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加した。
【0182】
次いで、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM−603、信越化学社製)2.1gを添加し、鎖伸長反応させた。
【0183】
その後、1時間熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン1(PUD1)を得た。
【0184】
得られたポリウレタンディスパージョン1(PUD1)は、pH8.6、粘度15mPa・s(25℃)、コールターカウンターN5(ベックマン社製)測定による平均粒子径は60nmであった。なお、仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は39.7質量%、Si含有量は0.10質量%であった。
【0185】
実施例2(PUD2)
タケネート500(1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製)142.4g、VestanatH12MDI(4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、H12MDI)24.8g、エチレングリコール27.9g、トリメチロールプロパン5.4g、ジメチロールプロピオン酸13.1gおよび溶剤としてメチルエチルケトン120.2gを混合し(3価以上の低分子量ポリオールのOH量/全ポリオール成分のOH量;10/100当量比)、窒素雰囲気下65〜70℃でNCO%が6.12%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
【0186】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン9.7gにて中和させた。
【0187】
次いで、反応液を842.9gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、43.5gのイオン交換水に21.7gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加した。
【0188】
次いで、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM−603、信越化学社製)5.0gを添加し、鎖伸長反応させた。
【0189】
その後、1時間熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン2(PUD2)を得た。
【0190】
得られたポリウレタンディスパージョン2(PUD2)は、pH8.6、粘度15mPa・s(25℃)、コールターカウンターN5(ベックマン社製)測定による平均粒子径は85nmであった。なお、仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は39.4質量%、Si含有量は0.25質量%であった。
【0191】
実施例3(PUD3)
タケネート500(1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製)144.0g、VestanatH12MDI(4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、H12MDI)25.1g、エチレングリコール30.1g、グリセリン1.5g、ジメチロールプロピオン酸14.0gおよび溶剤としてメチルエチルケトン121.2gを混合し(3価以上の低分子量ポリオールのOH量/全ポリオール成分のOH量;4/100当量比)、窒素雰囲気下65〜70℃でNCO%が6.15%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
【0192】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却した後、トリエチルアミン10.5gにて中和させた。
【0193】
次いで、反応液を838.7gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、47.7gのイオン交換水に23.8gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加した。
【0194】
次いで、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(商品名;KBM−602、信越化学社製)1.0gを添加し、鎖伸長反応させた。
【0195】
その後、1時間熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン3(PUD3)を得た。
【0196】
得られたポリウレタンディスパージョン3(PUD3)は、pH8.7、粘度12mPa・s(25℃)、コールターカウンターN5(ベックマン社製)測定による平均粒子径は65nmであった。なお、仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は39.9質量%、Si含有量は0.05質量%であった。
【0197】
実施例4(PUD4)
タケネート500(1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製)165.3g、エチレングリコール25.2g、トリメチロールプロパン1.6g、グリセリン4.5g、ジメチロールプロピオン酸14.6gおよび溶剤としてメチルエチルケトン119.6gを混合し(3価以上の低分子量ポリオールのOH量/全ポリオール成分のOH量;15/100当量比)、窒素雰囲気下65〜70℃でNCO%が6.92%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
【0198】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却した後、トリエチルアミン10.9gにて中和させた。
【0199】
次いで、反応液を834.3gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、52.1gのイオン交換水に26.0gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加した。
【0200】
次いで、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(商品名;KBM−602、信越化学社製)1.8gを添加し、鎖伸長反応させた。
【0201】
その後、1時間熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン4(PUD4)を得た。
【0202】
得られたポリウレタンディスパージョン4(PUD4)は、pH8.5、粘度15mPa・s(25℃)、コールターカウンターN5(ベックマン社製)測定による平均粒子径は105nmであった。なお、仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は40.6質量%、Si含有量は0.10質量%であった。
【0203】
実施例5(PUD5)
タケネート600(1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、HXDI、三井化学社製)168.2g、エチレングリコール29.7g、トリメチロールプロパン4.0g、ジメチロールプロピオン酸12.7gおよび溶剤としてメチルエチルケトン120.7gを混合し(3価以上の低分子量ポリオールのOH量/全ポリオール成分のOH量;7/100当量比)、窒素雰囲気下65〜70℃でNCO%が6.20%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
【0204】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン9.5gにて中和させた。
【0205】
次いで、反応液を839.8gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、46.5gのイオン交換水に23.3gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加した。
【0206】
次いで、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM−603、信越化学社製)2.6gを添加し、鎖伸長反応させた。
【0207】
その後、1時間熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン5(PUD5)を得た。
【0208】
得られたポリウレタンディスパージョン5(PUD5)は、pH8.7、粘度17mPa・s(25℃)、コールターカウンターN5(ベックマン社製)測定による平均粒子径は95nmであった。なお、仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は40.1質量%、Si含有量は0.13質量%であった。
【0209】
実施例6(PUD6)
タケネート600(1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、HXDI、三井化学社製)102.0g、タケネート500(1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製)65.9g、エチレングリコール29.2g、ペンタエリスリトール2.9g、ジメチロールプロピオン酸12.2gおよび溶剤としてメチルエチルケトン119.1gを混合し(3価以上の低分子量ポリオールのOH量/全ポリオール成分のOH量;7/100当量比)、窒素雰囲気下65〜70℃でNCO%が6.89%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
【0210】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン9.1gにて中和させた。
【0211】
次いで、反応液を836.3gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、50.1gのイオン交換水に25.0gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加した。
【0212】
次いで、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(商品名;KBM−602、信越化学社製)3.7gを添加し、鎖伸長反応させた。
【0213】
その後、1時間熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョン6(PUD6)を得た。
【0214】
得られたポリウレタンディスパージョン6(PUD6)は、pH8.8、粘度14mPa・s(25℃)、コールターカウンターN5(ベックマン社製)測定による平均粒子径は70nmであった。なお、仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は40.5質量%、Si含有量は0.20質量%であった。
【0215】
比較例1(PUD−H1)
タケネート500(1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製)143.0g、VestanatH12MDI(4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、H12MDI)24.9g、エチレングリコール31.0g、ジメチロールプロピオン酸14.7gおよび溶剤としてメチルエチルケトン121.0gを混合し(3価以上の低分子量ポリオールのOH量/全ポリオール成分のOH量;0/100当量比)、窒素雰囲気下65〜70℃でNCO%が6.13%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
【0216】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却した後、トリエチルアミン11.0gにて中和させた。
【0217】
次いで、反応液を840.0gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、46.9gのイオン交換水に23.2gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加した。
【0218】
次いで、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM−603、信越化学社製)2.1gを添加し、鎖伸長反応させたところ、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを入れた直後に、分散不良による凝集物が発生し、良好なポリウレタンディスパージョンを得ることはできなかった。
【0219】
比較例2(PUD−H2)
タケネート500(1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製)144.3g、VestanatH12MDI(4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、H12MDI)25.1g、エチレングリコール22.5g、グリセリン9.5g、ジメチロールプロピオン酸13.2gおよび溶剤としてメチルエチルケトン120.9gを混合し(3価以上の低分子量ポリオールのOH量/全ポリオール成分のOH量;25/100当量比)、窒素雰囲気下65〜70℃でNCO%が6.17%以下になるまで反応させた。
【0220】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却したところ、反応液が濁りながら増粘した。また、トリエチルアミン9.9gにて中和処理したが、濁りが残った。
【0221】
その後、濁った反応液を839.6gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、46.8gのイオン交換水に23.4gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加した。
【0222】
次いで、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名;KBM−603、信越化学社製)2.1gを添加し、鎖伸長反応させたが、濁ったウレタンプレポリマー由来の樹脂が分散不良となり、沈殿物が発生し、良好なポリウレタンディスパージョンを得ることはできなかった。
【0223】
比較例3(PUD−H3)
タケネート500(1,3−キシリレンジイソシアネート、m−XDI、三井化学社製)143.9g、VestanatH12MDI(4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、H12MDI)25.1g、エチレングリコール28.2g、トリメチロールプロパン5.5g、ジメチロールプロピオン酸13.2gおよび溶剤としてメチルエチルケトン121.5gを混合し(3価以上の低分子量ポリオールのOH量/全ポリオール成分のOH量;10/100当量比)、窒素雰囲気下65〜70℃で、NCO%が6.12%以下になるまで反応させ、透明なイソシアネート基末端プレポリマー反応液を得た。
【0224】
次いで、得られた反応液を40℃まで冷却し、その後、トリエチルアミン9.8gにて中和させた。
【0225】
次いで、反応液を837.7gのイオン交換水にホモディスパーにより分散させ、48.6gのイオン交換水に24.3gの2−((2−アミノエチル)アミノ)エタノールを溶解したアミン水溶液を添加し、鎖伸長反応させた。
【0226】
その後、1時間熟成反応させ、メチルエチルケトンとイオン交換水をエバポレーターにて留去し、固形分25質量%となるようにイオン交換水にて調整することにより、ポリウレタンディスパージョンH3(PUD−H3)を得た。
【0227】
得られたポリウレタンディスパージョンH3(PUD−H3)は、pH8.5、粘度12mPa・s(25℃)、コールターカウンターN5(ベックマン社製)測定による平均粒子径は45nmであった。なお、仕込み計算によるウレタン基濃度およびウレア基濃度の合計は39.8質量%で、Siは含んでいない。
【0228】
各実施例および各比較例における配合処方を、表1に示す。
【0229】
【表1】
【0230】
実施例6(ポリウレタン積層体)
40gのPUD1をマグネチックスターラーにて混合し、これに45gのイオン交換水、および15gの2−プロパノールを徐々に添加してコート液1を調製した。
【0231】
このコート液1を、基材としてのアルミナ蒸着PETフィルム(バリアロックス1011HG(#12)、東レフィルム加工社製)に乾燥厚み0.5g/mとなるようにバーコーターを用いてコーティングし、130℃に設定した乾燥オーブンに投入して1分間乾燥させ、基材の表面にポリウレタン層を形成した。これにより、積層体1を得た。
【0232】
実施例7〜11、比較例4
表2に示す配合処方とした以外は、実施例6と同様に、コート液2〜7を調製し、積層体2〜7を得た。
【0233】
実施例12
57.2gのイオン交換水に20gの水膨潤性無機層状化合物スラリー(MEB−3(固形分8質量%)、コープケミカル社製)を添加し、マグネチックスターラーにて10分間混合させた後、21.9gのPUD1を徐々に添加し、20分混合した。
【0234】
次いで、水分散ポリイソシアネートであるタケネートWD−725(三井化学社製)0.9gを添加し、さらに20分混合し、コート液8を得た。
【0235】
得られたコート液8を、基材としての2軸配向ポリプロピレンフィルム(パイレンフィルム−OT P2161(OPPフィルム、#20)、東洋紡社製)に乾燥厚み1.0g/mとなるようにバーコーターを用いてコーティングし、80℃に設定した乾燥オーブン投入して2分間乾燥させ、40℃で3日間養生し、基材の表面にポリウレタン層を形成した。これにより、積層体8を得た。
【0236】
実施例13〜16
表2に示す配合処方とした以外は、実施例12と同様に、コート液9〜12を調製し、積層体9〜12を得た。
(評価)
<酸素透過度の測定>
酸素透過測定装置(OX−TRAN2/20、MOCON社製)を用いて、各積層体それぞれの20℃における、相対湿度80%(80%RH)での1m、1日および1気圧当たりの酸素透過量を測定した。
【0237】
その結果を表2に示す。
【0238】
<密着性(ラミネート強度)の測定>
各積層体のコート面に、ドライラミネート用接着剤としてタケネートA−969V(三井化学社製)とタケネートA−5(三井化学社製)との混合物(タケネートA−969V/タケネートA−5=3/1(質量比))を、乾燥厚み3.0g/mとなるようにバーコーターにて塗布し、ドライヤーで乾燥させた。
【0239】
その後、未延伸ポリプロピレンフィルム(トーセロCP RXC−22(CPPフィルム、#60)、三井化学東セロ社製)をラミネートして、40℃で3日間養生した後、各積層体の基材とポリウレタン層との間のラミネート強度を、JIS K 6854に準拠したT字剥離試験(15mm幅)にて測定した。その結果を表2に示す。
【0240】
【表2】
【0241】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
タケネートWD−725:水分散ポリイソシアネート(硬化剤)、三井化学社製
タケネートXWD−HS7:水分散ポリイソシアネート(硬化剤)、三井化学社製
MEB−3:水膨潤性無機層状化合物スラリー、固形分8質量%、コープケミカル社製
PET:バリアロックス1011HG(#12)、東レフィルム加工社製
OPP:2軸配向ポリプロピレンフィルム、パイレンフィルム−OT P2161(OPPフィルム、#20)、東洋紡社製
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0242】
本発明のポリウレタンディスパージョンおよびポリウレタン積層体は、ガスバリア性フィルムの分野、具体的には、食品・医薬品などに用いられる包装用フィルムなどにおいて好適に使用され、また、ボイル殺菌、レトルト殺菌、加熱調理などの加熱処理が必要とされる内容物の包装用フィルムなどにも好適に用いられる。また、光学フィルム、工業用フィルムなどの分野においても好適に使用される。
【符号の説明】
【0243】
1 ポリウレタン積層体
2 基材
3 ポリウレタン層
図1
図2