(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記焼鈍温度を異なる温度レベルに従って制御するステップを備え、それによって前記多層基板が前記焼鈍滞留時間の所定の期間、それぞれの温度レベルに保持されることを可能にすることを特徴とする請求項2に記載の方法。
前記焼鈍温度を制御するステップを備え、それによって前記多層基板が前記滞留時間の間、所定の一定の温度レベルに保持されることを可能にすることを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
前記焼鈍するステップは、前記多層基板を、制御された前記焼鈍温度で作動されている複数の加熱ゾーンを通過させるステップを備え、それによって前記多層基板を対応する前記焼鈍温度に加熱することを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の方法。
酸性の溶液で前記銅層をエッチングするステップをさらに備え、前記錫層をメッキする前にエッチングされた銅層表面を作り、それによって前記錫層の付着力を前記エッチングされた銅層表面上で強化することを特徴とする請求項13に記載の方法。
前記銅層をメッキするステップは、非酸性の銅電解メッキ液で電解メッキするステップによって行われ、前記錫層をメッキするステップは、酸性の、シアン化合物を含む、シアン化合物を含まない、中性の、又はわずかにアルカリ性の溶液、或いはそれら溶液の混合物を備える錫電解メッキ液で電気メッキするステップによって行われることを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。
前記銅層は、第1の銅層厚を有するメッキされた第1の銅層と、前記第1の銅層と接触するとともに第2の銅層厚を有するメッキされた第2の銅層と、を備え、前記銅層厚は、前記第1の銅層厚と前記第2の銅層厚との合計であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、金色の青銅の改良された生産のための技法を提供することによって、上述の必要性に応える。金色の青銅が、金色に類似する黄色味を帯びた金色を有する、言い換えると金色の色調又は金の外観を有する青銅を包含するということが理解されるべきである。
【0012】
いくつかの面で、ここに記載される技法は、銅と相互拡散して金色の青銅を形成するための錫の可用性を改良する。改良された多数回電解メッキ法は、制御された条件下での錫の銅中への拡散による金色の青銅の生産を容易にする。
【0013】
銅及び錫の層でメッキされた基板を焼鈍することによる金色の青銅の生産において、基板のコアと銅層との間のニッケル層の存在が、所定の操業条件下において金属間化合物の形成によって錫が消費されてしまうことが発見された。ニッケルの存在によって、ニッケル、錫、及び銅を備える三元の金属間デンドライト相が、ニッケル層と銅層との境界に近接するとともに銅リッチな層中に延びる領域に形成される場合がある。この現象は、銅との相互拡散によって金色の青銅を形成するための外層中の錫の可用性を減少させる。また、そのような錫の消費は、電磁信号(EMS)特性のような生産用の基板に所定の特性を付与するために提供される場合のある厚い銅メッキ層の経費を削減するために望ましい場合がある、銅層の厚みが薄くされた場合の望ましい金色の青銅の生産における課題をもたらす場合がある。所定の焼鈍温度及び滞留時間もまた、ニッケルによる錫の消費に有利に働く。錫の過剰消費は銅との相互拡散に対する錫の可用性を減少させ、不十分な量の錫は、外側領域における望ましくない赤っぽい色の青銅をもたらす場合がある。外側錫層の厚みの増加は、銅との相互拡散のために使用可能な錫を増加させることはできるが、過剰な量の錫及び/又は所定の操業条件は、青銅の表面上の望ましくない錫
溜まり(puddles)をもたらす場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一つの特徴において、金色の青銅の外観を有する物品を生産する方法が提供される。この方法は、外側接触領域を有するコアと、前記コアの前記外側接触領域上にメッキされた、所定の銅層厚みを有する銅層と、前記銅層上にメッキされた錫層と、を有する多層基板を焼鈍するステップを備え、コアの接触領域は十分に低いニッケルの濃度を有して、焼鈍中の前記外側接触領域の近傍における錫とニッケルとを含む金属間化合物の形成を減少させるか、又は防止し、焼鈍するステップは、所定の焼鈍温度で、所定の焼鈍滞留時間行われ、前記焼鈍温度及び前記焼鈍滞留時間は互いに基づき制御されて、前記錫層の前記銅層の中への拡散を可能とするとともに、金色の外観を有する相互拡散した外側青銅層を備える焼鈍された基板を生産し、錫層は、前記相互拡散した外側青銅層が約8重量%〜約15.8重量%の錫含有量を有するように、前記銅層の厚みに基づく錫層の厚みでメッキされる。
【0015】
本方法の任意の特徴においては、錫層の厚みを、前記相互拡散した外側青銅層が約10重量%〜約15重量%の錫含有量を有するようであって良い。
【0016】
本方法の任意の特徴においては、本方法は、焼鈍温度を異なる温度レベルに基づいて制御して、多層基板が焼鈍滞留時間の所定の期間、それぞれのレベルに保持されることを可能にするステップを含むことができる。また、この方法は、焼鈍温度を制御して、多層基板が滞留時間の間、所定の一定の温度レベルに保持されることを可能にするステップを備えることができる。
【0017】
本方法の別の特徴において、焼鈍温度は、約425℃〜約815℃とすることができる。
【0018】
本方法の任意の特徴において、焼鈍するステップは、多層基板に、制御された焼鈍温度で作動されている複数の加熱ゾーンを通過させて、多層基板を対応する焼鈍温度に加熱するステップを含むことができる。焼鈍するステップは、複数の加熱ゾーンを備える焼鈍装置の中で行うことができる。任意に、焼鈍するステップは、回転レトルト式焼鈍炉又はベルトコンベア式炉の中で行うことができる。
【0019】
本方法の任意の特徴においては、焼鈍滞留時間は、約10分〜約90分とすることができる。任意に、焼鈍滞留時間は、約20分〜約30分とすることができる。
【0020】
本方法の任意の特徴において、焼鈍するステップは、制御された焼鈍組成を有する焼鈍雰囲気の下で行うことができる。任意に、焼鈍組成は、還元雰囲気を作るための少なくとも1つの成分を備えることができる。
【0021】
本方法の任意の特徴において、本方法は、コアを銅層でメッキして、銅メッキされた基板を作るステップと、銅メッキされた基板を錫層でメッキして、多層基板を作るステップと、をさらに備えることができる。
【0022】
本方法の任意の特徴において、酸性の溶液で前記銅層をエッチングして、錫層をメッキする前にエッチングされた銅層表面を作り、それによって錫層の付着力をエッチングされた銅層表面上で強化することができる。
【0023】
本方法の任意の特徴において、銅層をメッキするステップは、非酸性の銅電解メッキ液で電解メッキするステップによって行われ、錫層をメッキするステップは、酸性の、シアン化合物を含む、シアン化合物を含まない、中性の、又はわずかにアルカリ性の溶液、或いはそれら溶液の混合物を備える錫電解メッキ液で電気メッキするステップによって行われてもよい。
【0024】
本方法の任意の特徴において、銅層の厚みは、約5μm〜約45μmとすることができる。
【0025】
本方法の任意の特徴において、錫層の厚みは、約1μm〜約7μmとすることができる。
【0026】
本方法の任意の特徴において、相互拡散された外側青銅層は、約6μm〜約35μmの厚みを有することができる。
【0027】
本方法の任意の特徴において、銅層は、第1の銅層厚を有する第1の銅層と、この第1の銅層と接触するとともに第2の銅層厚を有する第2の銅層とを備えることができ、銅層の厚みは、第1の銅層厚と第2の銅層厚との合計である。任意に、第1の銅層厚は約3μm〜約10μmであり、第2の銅層厚は約10μm〜約35μmであってよい。
【0028】
本方法の任意の特徴においては、多層基板は、錫層に接する金属最上層をさらに有することができ、この金属最上層は銅及び/又は亜鉛を備えるとともに所定の最上層厚みを有する。任意に、最上層厚みは、金属最上層との錫の層の拡散を可能にして相互拡散した外側青銅層を作り、焼鈍中の外面上の錫
溜まりの形成を軽減するか、又は防止するのに十分なものとすることができる。任意に、最上層厚みは、約0.1μm〜約4μmとすることができる。
【0029】
本方法の任意の特徴において、多層基板は、硬貨のブランクとすることができる。
【0030】
本方法の任意の特徴において、コアは、鋼、アルミニウム、黄銅、銅、又はそれらの合金、或いはそれらの組み合わせとすることができる。
【0031】
本方法の任意の特徴において、外側接触領域はニッケルを有さなくてもよい。
【0032】
本方法の任意の特徴において、外側接触領域は、錫との組み合わせにおいて金属間デンドライト相を形成する可能性がある金属又は金属化合物を含まないようにすることができる。任意に、外側接触領域は、十分に少量のクロムを含むか、又はクロムを含まないようにすることができ、それによってクロムと錫とを含む金属間相の形成を回避する。
【0033】
本方法の任意の特徴において、本方法は、金属の相互拡散を急速に停止させるために、焼鈍された基板を焼入れするステップをさらに含むことができ、焼入れされた基板を作る。
【0034】
本方法の任意の特徴において、本方法は、焼入れされた基板の相互拡散した外側青銅層をバニシ仕上げするステップをさらに含むことができ、望ましくない表面化合物を取り除き、金色の外観を有するバニシ仕上げされた基板を作る。
【0035】
本方法の任意の特徴において、本方法は、青銅の金色の外観を明らかにするか、又は強めるために、バニシ仕上げされた基板を洗浄するステップと乾燥するステップとをさらに備えることができる。
【0036】
また別の特徴において、外側接触領域を有するコアと、前記コアの外側接触領域と接するとともに、焼鈍によって生じた相互拡散された銅及び錫を備えるピンク色の領域であって、このピンク色の領域が、約8重量%未満の錫含有量を有するとともに、十分に少ないニッケル含有量を有して、ニッケル及び錫を備える金属間相を実質的に有さない、ピンク色の領域と、このピンク色の領域に接するとともに焼鈍によって生じた相互拡散した銅及び錫を備える金色の青銅領域であって、錫は銅と完全に相互拡散して、約8重量%〜約15.8重量%の濃度で存在し、外側の金色の青銅領域が、錫
溜まりの無い、金色の青銅の外観を有する外面を有する、金色の青銅領域と、を含む金色の青銅の外観を有する物品が提供される。
【0037】
この物品の任意の特徴において、金色の青銅領域の外面は、バニシ仕上げすることができ、望ましくない表面化合物を有さない。
【0038】
この物品の任意の特徴において、金色の青銅領域とピンク色の領域とは、約8重量%〜約15.8重量%の錫濃度を得た前記金色の青銅領域を作るのに十分な錫‐銅の厚みの比を有する(i)銅、及び(ii)錫の2つの接するメッキ層の焼鈍によって作ることができる。
【0039】
本物品の任意の特徴において、金色の青銅領域とピンク色の領域とは、約8重量%〜約15.8重量%の錫濃度を有する金色の青銅領域を作るのに十分な厚みをそれぞれ有する第1の銅層、錫の中間層、及び銅及び/又は亜鉛の最上層の焼鈍によって作ることができる。
【0040】
本物品の任意の特徴において、銅及び/又は亜鉛の最上層は、約0.1μm〜約0.8μmの厚みを有することができる。
【0041】
本物品の任意の特徴において、物品は、コアとピンク色の領域との間の境界から、金色の青銅領域の外面まで変化する錫含有量を備えることができる。任意に、変化する錫含有量は、コアとピンク色の領域との間の境界から、金色の青銅領域の外面まで増加させることができる。さらに、任意には変化する錫含有量は、コアとピンク色の領域との間の境界から金色の青銅領域の中間領域まで増加し、金色の領域の中間領域から金色の青銅領域の外面まで減少させることができる。
【0042】
本物品の任意の特徴において、コアは、鋼、アルミニウム、黄銅、銅、又はそれらの合金、或いはそれらの組み合わせとすることができる。
【0043】
本物品の任意の特徴において、金色の青銅領域は、銅及び錫と相互拡散した亜鉛をさらに含んでもよい。
【0044】
本物品の任意の特徴において、物品は、硬貨の形状、ディスクの形状、平坦な物体の形状、又はそれらの類似物の形状を有することができる。
【0045】
また別の特徴において、金色の青銅の外観の物品の生産に使用するための多層基板が提供される。この多層基板は、外側接触領域を有するコアと、コアの外側接触領域上にメッキされた、所定の銅層厚みを有する銅層と、この銅層上にメッキされた錫層と、を有し、コアの外側接触領域は十分に低いニッケルの含有量を有して、焼鈍処理中の外側接触領域の近傍における、錫とニッケルとを含む金属間化合物の形成を減少させるか、又は防止し、錫層は銅層の厚みに基づく錫層厚みを有して、錫層と銅層とが焼鈍処理の際に相互拡散して、約8重量%〜約15.8重量%の錫含有量を有する青銅層を形成する。
【0046】
本基板の任意の特徴において、基板は、錫層上にメッキされた、銅及び/又は亜鉛を含む金属最上層をさらに備えることができる。
【0047】
また別の特徴において、硬貨のブランクを生産するための、上述に規定されたような方法の使用が提供される。
【0048】
また別の特徴において、硬貨としての、上述に規定されたような金色の青銅の外観を有する物品の使用が提供される。
【0049】
また別の特徴において、焼鈍によって、金色の青銅の外観を有する物品を生産するための、上述に規定されたような多層基板の使用が提供される。
【0050】
また別の特徴においては、金色の青銅の外観を有する物品の生産方法が提供される。この方法は、外側接触領域を有するコアと、このコアの外側接触領域上にメッキされた、所定の銅層厚みを有する銅層と、この銅層上にメッキされた、所定の錫層厚みを有する錫層と、この錫層上にメッキされた金属最上層であって、銅及び/又は亜鉛を含み、所定の最上層厚みを有する、金属最上層と、を備える多層基板を焼鈍するステップを備え、焼鈍するステップは、所定の焼鈍滞留時間の間、上昇する焼鈍温度で行われ、焼鈍温度と焼鈍滞留時間とは互いに基づいて制御されて、錫層の銅層中への拡散を可能として金色の外観を有する相互拡散した外側青銅層を備える焼鈍された基板を作り、錫層厚み及び最上層厚みは、銅層及び金属最上層との錫層の拡散を可能として、約8重量%〜約15.8重量%の錫濃度を有する相互拡散した外側青銅層を作るとともに、焼鈍中の錫
溜まりの形成を軽減するか、又は防止するのに十分とされている。
【0051】
また別の特徴において、赤い青銅の外観を有する物品を生産する方法が提供される。この方法は、外側接触領域を有するコアと、このコアの外側接触領域上にメッキされた、所定の銅層厚みを有する銅層と、この銅層上にメッキされた錫層と、を備える多層基板を焼鈍するステップを備え、コアの接触領域は、十分に少ないニッケルの含有量を有して、焼鈍中の外側接触領域近傍における、錫とニッケルとを含む金属間化合物の形成を軽減するか、又は防止し、焼鈍するステップは、所定の焼鈍滞留時間の間、所定の焼鈍温度で行われ、焼鈍温度と焼鈍滞留時間とは互いに基づいて制御されて、錫層の銅層中への拡散を可能とするとともに、金色の外観を有する相互拡散した外側青銅層を備える焼鈍された基板を作り、錫層は、相互拡散した外側青銅層が約8重量%未満の錫含有量を有するように、銅層厚みに基づく錫層厚みでメッキされる。
【0052】
また別の面では、上述の方法によって生産された青銅の物品が提供される。
【0053】
上述した方法のいずれのステップ又は特徴も、本発明の技術的範囲から乖離することなく、上述の青銅の物品及び多層の基板のいずれかの特徴に組み合わせる及び/又は適用することができることに注意すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明は、金色の青銅及び金色の青銅の外観を有する物品の改良された生産のための技法を提供する。後述される様々な例は、硬貨のブランク上の金色の層の生産に基づいて記載されるが、ここに記載される技法は、金色の外観を提供するように電気メッキされ、焼鈍することができる物品のような他の金属の物品にも関連する。
【0057】
青銅は銅と錫との合金である。青銅の層は、電気メッキによって基板上にメッキすることができ、それによって青銅の物品を形成することができる。金属の電気メッキを行うためには、電解セルが使用される。電解セルはカソードとアノードとからなる電極を含む。メッキされる基板はカソードであり、アノードは基板にメッキされる金属からなる。電極は、イオン、カチオン及びアニオン、及びメッキされる金属の、好ましくは対応するカチオンを含有する電気メッキ液に浸漬される。例えば、銅が電気メッキされる場合、電気メッキ液は、Cu2+カチオンを含有する。電解メッキ液は、電極に接続された電源によって供給された電流を伝導する。アノードの金属は酸化されて、対応する金属カチオンを放出し、この金属カチオンが電気メッキ液のアニオンと反応する。これらカチオンは次いで、カソードで還元されて、カソード上に望ましい金属堆積物を形成する。
【0058】
本発明の1つの観点においては、金色の外観を有する青銅を生産する多層メッキ法が提供される。青銅を得るために、基板は、少なくとも1つの銅層と、錫層とを含む複数の金属層をメッキされ、錫の銅への拡散と、金色の青銅の外層の形成とのために、焼鈍にかけられる。
【0059】
基板は、外側接触領域を有するコアを含み、この外側接触領域は、コアの残りの部分と同じ、又は異なる1つ又は複数の材料を含むことができる。例えば、コアとその外側接触領域とは、全体的に鋼から作ることができ、又は接触領域が、他の金属からなるようにこの他の金属でメッキされた鋼から作ることができる。接触領域は、鋼、亜鉛、銅、又はカートリッジ黄銅のような廉価な合金を含むことができる。基板のコアの接触領域は、十分に低い含有量を有して、焼鈍中の接触領域の近傍での錫とニッケルとを含む金属間ニッケル化合物の形成を減少させるか、又は防止する。任意に、コアの接触領域から、ニッケルは完全に除かれる。ニッケルの効果に関して、さらに後述される。
【0060】
別の観点では、方法はコアの接触領域に少なくとも1つの銅層をメッキするステップを有して、銅メッキされた基板を作る。したがって、基板の接触領域は、接触領域が銅層に接触するように、銅でメッキされる。任意に、銅でメッキされた基板は、異なる厚みを有することができる2つ以上の連続する銅層でコーティングされたコアを含むことができる。
【0061】
また別の観点においては、この方法は、銅メッキされた基板上に錫の層をメッキするステップを含む。錫層は、焼鈍にかけられる多層基板の外層とすることができる。また、錫層が錫層全体を作り上げる2つ以上の接触する錫メッキ層を含むこともできる。錫層に関して、さらに後述される。
【0062】
また別の観点では、錫層は、多層基板の外層でなくてもよい。例えば、また別の金属層を錫層の頂面上にメッキすることができ、頂面フラッシュ層と称することができる(また、ここでは金属最上層と称する)。頂面フラッシュ層は、銅及び/又は亜鉛からなってもよい。したがって、銅をメッキされた基板は、錫層でメッキすることができ、次いでその上に頂面フラッシュ層をメッキすることができる。
【0063】
図1を参照すると、この方法は、金属コイルから形成された硬貨のブランク上に銅と錫とを連続して堆積するステップを含むことができる。
図1に示されたステップ1〜14は、多層基板を生産するために使用することができる。この方法は、硬貨のブランク上にストライク(strike)金属層を電気メッキするステップを含むことができ、この金属層はニッケル以外の金属からなるか、又はニッケルが錫を消費して金属間化合物を形成するようには利用できない金属からなってもよい。ストライク層(strike layer)は、その上に銅層がメッキされる接触領域を形成することができる。代替的に、ストライク層は、銅層であってもよい。銅層と錫層とを有する多層基板は次いで、ステップ15で焼鈍にかけられる。次いで、バニシ仕上げのようなさらなるステップや、他の焼鈍後のステップを行って、最終製品を生産することができる。
【0064】
さらに
図1を参照すると、ステップ2〜8が行われて、ステップ9における銅の電解メッキに進む前に、洗浄されたブランクを得ることができる。次いで、錫がステップ12でメッキされる。メッキステップそれぞれの後に、メッキされたブランクが、ステップ8、10、及び13におけるように、好ましくはリンスされる。銅層は、ステップ11におけるようにエッチングされて、ステップ12の電気メッキ中の銅への錫の付着を促進し、付着に寄与することができる。多層基板は次いで、ステップ15において、錫の銅の中への拡散を可能にする焼鈍温度の下での熱処理にかけられて、ブランク上に相互拡散した青銅の外層を形成する。次いでブランクは、ステップ16において艶出しされ、乾燥される。ステップ15の拡散によって得られたメッキされた青銅は、洗浄と艶出しの後、素敵なきらびやかな黄色味を帯びた金色又は鈍い黄色を有する。さらに後述されるように、制御された条件を上述のステップとの関連で使用することができ、それによって銅‐錫合金の平衡を金色の青銅を生産するために行うことを容易化する。
【0065】
既知の銅の電気メッキ液は、酸性、非酸性、シアン化合物を含有する、シアン化合物を含有しない、中性の、又はわずかにアルカリ性の、銅メッキ液を含む。酸性かつシアン化合物を含有する銅の電気メッキ液が、その低いコストと効率との故に通常好ましい。しかし、シアン化合物を含有する電気メッキ液は、所定の条件下では毒性を有するシアン化物のアニオンCN−を含有する。また、銅メッキされる基板のコアの外側接触領域は鋼で作られる場合があり、鋼は酸性の条件下では腐食性である。基板の腐食のリスクに応えて、いくつかのメッキ法は、酸性の銅メッキを行う前に、鋼基板上にニッケルのような保護金属のストライク層をメッキするステップを含む。代替的に、本方法のいくつかの実施は、基板のコアの外側接触領域上に直接、銅をメッキするために、非酸性の、シアン化合物を含有しない、電気メッキ液を使用する。任意に、銅の電解メッキ液は、アルカリ性の銅の電解メッキ液とすることができる。任意に、本方法は増大した有効性と効率とのために、アルカリ性の電気メッキ液を使用して基板のコア上に銅の第1の層をメッキするステップと、酸性の電気メッキ液を使用して銅の第2の層をメッキするステップと、を含んでいる。好都合なことに、第1の銅層は、基板のコアの全ての腐食のリスクに関する保護的なストライク層として作用することができる。非酸性で、シアン化合物を含有しない銅の電気メッキ液は、ニッケルのような、高価で金色の青銅合金を形成するための錫の銅の中への拡散プロセスを妨害する可能性のある金属からなる、金属のストライク層で基板のコアをメッキしないことを可能にする。
【0066】
より正確には、銅層と錫層との間の拡散が、メッキされた銅層に接触するコアの外側接触領域中のニッケルの存在によって制限されることが発見された。より正確には、焼鈍の際に、錫とニッケルとを含有する、デンドライトの形状の金属間化合物が所定の条件の下で内部の銅リッチな領域及び外側接触領域の近傍で、特にメッキされた銅層が十分に厚くない場合に形成される場合がある。これら金属間化合物のデンドライト相は主に錫、銅、及びニッケルからなり、大量の錫が、焼鈍中にα相の青銅合金の形成のために銅と共に参加するよりはむしろ、そのような金属間化合物を形成することによって、ニッケル及び銅と共に相互拡散するということを示している。拡散プロセス中、及び所定の焼鈍条件下で、錫層の活性化された可動の錫原子は銅層中に拡散することができ、同時に幾らかの活性化された可動のニッケル原子は、銅層とコアの外側接触領域との間の境界を通じてメッキされた銅層中に拡散することができる。驚くべきことに、以下の例及び実験から理解できるように、ニッケル原子の移動(migration)は、中間の銅層が十分に厚くないときにはニッケル原子が拡散の境界で錫原子と会うので、優先的に促進されることが分かった。ニッケル原子は強度に錫原子によって偏析され、ニッケル及び銅を含有する組成中に非常に可溶である。結果として、錫及びニッケルを含有する金属間化合物は偏析する場合があり、したがって当初は銅と共に相互拡散して青銅を形成すると考えられていた大量の錫を消費する。錫とニッケルとの拡散の力学及び熱力学は、低温でさえ、又は室温においてさえ、錫とニッケルとの間の拡散を支持することができる。
【0067】
図2を参照すると、青銅合金の相状態図は、温度及び銅と錫との比率とに依存して、青銅が多くの組成の組み合わせに存在することを示している。色あせしない、均一な金色を有する青銅層を形成するためには、
図2の相状態図において円で囲まれた領域として強調されているように、Cu−Sn合金の単一α相が望ましい。Cu−Sn合金の単一α相を達成するために、十分な厚さの錫層と銅層とが、基板の接触領域上にメッキされる。さらに、様々な焼鈍の条件(焼鈍温度、焼鈍滞留時間、及び焼鈍雰囲気の組成)を、増加された量の錫がα相のCu−Sn合金の形成に参加するように、すなわち、α相中の錫の溶解度を改善し、錫の含有量が、
図2の相状態図に示されているように、α相における錫の最大溶解度(約15.8重量%)より高い第2の相を減少させることによって、制御することができる。さらに、ここに記載される様々な技法は、青銅の外面上及び/又は表面化の金属間デンドライト或いは三元相内の残留錫
溜まりの形態にある、α相のCu−Sn合金に使用されない錫の低減を容易にする。
【0068】
さらに
図2を参照すると、青銅に対する金のような色を得るために、この方法は、十分な厚みを有する錫の層をメッキして、焼鈍後に約8重量%〜約15.8重量%の錫含有量を有する青銅の層を得るステップを含む。錫の濃度が増加するにつれて、黄色味がかった金色の色調からの変化がある。色は、拡散した青銅の層中にβ相のような不要な錫リッチな相を形成する可能性があるので、錫濃度が約15.8重量%より高いと、錫の明るい「白っぽい」金属色に向かって変化する。色は、合金中の錫の含有量が約8重量%より低い場合にはピンクがかった金色である。
【0069】
図5及び6の相状態図を参照すると、異なる金属間化合物が、所定の組成及び温度で三元システム(Cu, Sn, Ni)の中に形成されている可能性がある。本方法によれば、錫及びニッケルを含む金属間化合物の形成は、コアの外側接触領域中のニッケル含有量を低減するか、又はコアの外側接触領域からニッケルを除去して、基板上の金色の青銅を形成する以外の目的のための錫の消費を低減又は防止することによって、低減又は回避することができる。
【0070】
錫の可用性を増加させて、望ましい合金の組成を有する青銅を形成することは、特に錫が焼鈍の条件及びコアの外側接触領域の組成によっては金属間化合物の形成によってさらに消費される可能性があるので、課題を有する可能性がある。したがって、本方法の一の特徴においては、コアの接触領域は十分に低いニッケルの含有量を有して、錫とニッケルとを含む金属間化合物の形成を低減するか、又は防止し、それによって焼鈍後に形成される青銅層の厚みを増加させる。これもまた、金属層の厚み、焼鈍温度、及び焼鈍滞留時間のような作業パラメータのより広い可使用範囲(window)を容易とする。
【0071】
十分に少ない量のニッケルは、コアの接触領域における分散された形の、又は基板上の非常に薄い層としての所定の量のニッケルを含み、銅と一緒の錫の拡散を妨げること及び/又は錫とニッケルとを含む金属間相を形成することなく、約8重量%〜約15.8重量%の錫濃度を有する青銅の形成を可能にすることを理解すべきである。さらに、所定の焼鈍条件の下で鋼基板とでは、コア上への十分に薄いニッケルの層のメッキは、鋼のコアとニッケルとの間の良好な拡散を促進する場合があり、それがメッキされた層の付着力に有益である場合がある。この任意のニッケルの層は、例えばニッケルが既に鋼中に拡散しているので、錫の拡散を妨げないほど十分に薄い。コア及び/又は接触領域が腐食性であるときには、コア上にストライク層がメッキされていない場合、又は鋼の腐食を避けるのに十分な厚みを有するストライク層がない場合に、後続の銅層を接触領域上にメッキするために酸性ではない銅メッキ液が使用される。
【0072】
基板のコアの接触領域は、十分に少ない量のニッケルしか含まないことができるだけでなく、十分に少ない量のいずれかの錫を消費させる化合物を含んで錫を含む金属間相の形成を軽減するか、又は防止することもできることが理解されるべきである。例えば、クロムもまた基板の接触領域から除くことができる。
【0073】
いくつかの観点では、焼鈍後に、基板上にメッキされた複数の層は、拡散層を含む焼鈍層になった(evolve into)。所定の焼鈍条件によれば、焼鈍された層は完全な拡散層とすることができ、別の焼鈍条件によれば、焼鈍された層は残余の銅の層を有し、この残余の銅の層は、基板のコアと拡散層とに隣接し、この拡散層は残余の銅の層に隣接している。また別の観点では、所定の焼鈍条件に従うと、拡散層は、その領域全体に亘って約8重量%〜約15.8重量%の、好ましくは約10重量%〜約15重量%の錫含有量を有する単一の金色の青銅領域である場合がある。代替的に、別の焼鈍条件に従えば、拡散層は外側の金色の青銅領域と様々な遷移領域とを含むことができ、これら遷移領域では、錫含有量は金色の青銅領域の外面に近似した、高い錫含有量(約15.8重量%)から、基板のコアとの境界に近似した、低い錫含有量まで変化する。例えば、拡散層は、約8重量%より低い錫含有量を有し、コアに近接する場合がある銅リッチな領域(また、ここではピンク領域とも称される)と、この銅リッチな領域に近接する金色の青銅領域と、を含むことができ、これら銅リッチな領域及び金色の青銅領域との両方は、錫の含有量がコアから金色の青銅領域の外面へと増加する状態で、焼鈍によって引き起こされた相互拡散した銅と錫とを有する。
【0074】
また別の観点では、焼鈍の条件によって、銅の層の厚みと錫の層の厚みとの間の有利な比率がある。焼鈍後に約8重量%〜約15.8重量%の錫含有量を有する青銅層を得るために、メッキされる銅層と錫層との相対的厚みを制御することができる。理論的には、銅層のどのような厚みも使用することができる。硬貨のブランクの分野では、銅層は好ましくは約20μm〜約25μmの厚みでメッキされる。しかし、硬貨のブランクの分野ではさらに、銅層の厚みは10μm程度まで薄く、30μm程度まで厚くすることができる。より一般的には、メッキされる銅層の厚みは、メッキされる層の合計厚みと望ましい焼鈍層の厚みに関連する。経済的理由で、錫の厚みは、それが銅層の厚みと両立し(compatible with)、実質的に二元のCu−Sn合金である完全な拡散層を形成するように、制御することができる。より正確には、錫層の厚みは、焼鈍された層のみが、望ましい厚みを有し、そこでは錫含有量が約8重量%〜約15.8重量%、好ましくは約10重量%〜約15重量%である金色の青銅領域を含むように、提供することができる。
【0075】
図2〜4を参照すると、銅層の厚みに対する錫層の厚みの比は、金色の青銅合金の形成を増加させるように提供される。理論的には、錫が銅層に対して薄すぎる厚みでメッキされる場合には、所定の焼鈍条件の下で「赤い青銅」(ここでは銅リッチな領域としても参照される)が形成されるように、十分ではない錫しか銅中に拡散しないので、形成される青銅層はピンク色を呈する場合がある。例えば、所定の焼鈍条件下では、約1.3μm/10μmより小さい厚さの比T(Sn)/T(Cu)を提供することは、最大でも約6重量%の錫含有量のような、比較的低い錫含有量を有する傾向がある拡散層を得ることとなる場合がある。さらに、銅層の厚みが不十分であるか、錫層の厚みが過剰である場合には、青銅は内部の相互拡散した層として形成されるが、過剰な錫が所定の焼鈍条件の下で拡散層の外表面上に錫
溜まりを形成する場合がある。
図3は、焼鈍後に拡散層の外表面上に残された残留錫
溜まりを図示している。例えば、所定の焼鈍条件の下では、約3.0μm/10μmより大きな厚さの比T(Sn)/T(Cu)は、錫
溜まりとともに、少なくとも約14重量%の錫含有量のような、比較的高い錫含有量を有する傾向がある拡散層を得ることとなる場合がある。焼鈍条件が、例えば下記の実施例に示したように、拡散した金色の青銅領域を得るために、様々な厚さの比T(Sn)/T(Cu)に従って提供され得ることに注意すべきである。
【0076】
図4は、本方法に従って1.5μmの錫でメッキされ、750℃で25分間焼鈍された硬貨のブランクの成功した結果を示す。高い錫の組成を有し、表面の錫
溜まりの無い、金色の青銅のブランクが得られる。この同じブランクの断面が
図8に示されており、そこでは複数の層が容易に観察される。
【0077】
別の観点では、焼鈍の炉中における滞留時間と焼鈍温度とが提供されるとともに制御され、それによって金色の青銅合金の形成が促進される。適切な焼鈍の滞留時間は、錫の実質的に完全な拡散が(
図1のステップ15におけるように)焼鈍温度の下で行われ、それによって多層基板上に相互拡散した青銅の外層を形成するのを可能にする。任意に、焼鈍の滞留時間は、必要とされる拡散層の厚みによって、10〜90分、又は20〜50分の範囲とすることができる。焼鈍の滞留時間が、大体5分の精度で設定され、制御され得ることを理解すべきである。
【0078】
例えば、本方法は軟鋼の基板上に少なくとも1つの銅層を電気メッキするステップと、約1.0〜約5.0μmの錫層厚みを有する錫の層を電気メッキするステップと、を含むことができる。この少なくとも1つの銅層は、コアと錫層との間に1つ以上の銅層を含むことができるとともに、錫層の頂面上に1つの銅層を含むこともまたできる。少なくとも1つの銅層は、所定の焼鈍条件下で金色の青銅を形成するための、約3.0〜約45.0μmの銅層厚を有する1つの銅層であってもよい。また、少なくとも1つの銅層は、所定の焼鈍条件下で金色の青銅を形成するための、約3.0〜約10.0μm、好ましくは5μmの銅層厚を有する第1の銅層と、約10〜約35μmの銅層厚を有する第2の銅層と、を有することもできる。好都合なことに、上述のように、銅の第1の層は、特にコア及び/又は接触領域が腐食性の材料である場合には、アルカリ性の銅メッキ液を使用してメッキすることができ、第2の銅層は、酸性の銅メッキ液でメッキすることができる。第1の銅層は、結果的に得られるメッキされた基板に望ましいEMSを与えるようにメッキして、プロセスの後続のステップを容易化することができる。
【0079】
本発明は、メッキされた銅及び錫の相対的な厚みに従う青銅合金の組成の改良された制御に貢献してもよい。
【0080】
別の観点では、メッキされた銅層及び錫層の相対的厚みの制御は、焼鈍炉中の焼鈍滞留時間の制御と関連させて行うことができる(
図1のステップ15)。
図7は、結果A、B、及びCに対応する、3つの異なる焼鈍滞留時間で焼鈍された3つのメッキされた基板を図的に示している。最初に、基板のそれぞれは銅層と錫層をメッキされる。任意に、基板それぞれは、低い含有量のニッケルを有するか、又はニッケルを含まない、ストライク層をメッキされてもよい。焼鈍滞留時間及び温度が適切である場合、及び約8重量%〜約15.8重量%の錫を有する青銅合金を与えるための正しい比率で十分な銅と錫とがある場合には、拡散層は、銅及び錫の変化する合金比で金色を有する単一の青銅領域となる(
図7のB)。焼鈍条件及びストライク層の性質によっては、ストライク層を、錫と銅との変化する比で単一の青銅領域の形成に参加させることもできる。銅の残存層は、銅が錫と完全には相互拡散していない場合に存在する場合があり、したがって拡散層はピンク色の領域から金色の青銅領域への遷移領域を含む(
図7のA)。滞留時間が比較的短い場合、及び銅に比べて錫が十分にない場合には、表面に形成される合金はわずかに黄色味が薄く、幾らかの残存する銅は錫とはまだ合金化していない場合がある(
図7のC)。
【0081】
また別の観点では、本方法は十分な焼鈍滞留期間中、多層基板を焼鈍して、焼鈍によって引き起こされた相互拡散された銅及び錫を含む金色の青銅層を作るステップを含む。バランスを、焼鈍温度、焼鈍滞留時間(拡散速度に関係する)、及び銅と錫との厚みの組み合わせとの間で達成することができ、それによって適正な黄色味のある金色を有する青銅合金を、焼鈍された基板の外表面上に残留錫
溜まりを生成することなく、形成することができる。
【0082】
別の観点では、焼鈍は焼鈍炉中で行うことができる。焼鈍炉が、熱処理の際に金属層間の拡散を可能にするいずれの炉も含むことが理解されるべきである。任意に、焼鈍炉は複数の加熱ゾーンを含むことができ、該加熱ゾーンでは焼鈍温度を設定するか制御して、錫の銅中への拡散を容易化して、金色の青銅を作る。異なる焼鈍温度の制御を使用して、加熱に使用可能なエネルギーの量を調整することができ、このことは異なる温度レベルを有する画定された加熱ゾーンを結果としてもたらす。加熱ゾーンそれぞれにおいて、焼鈍温度の制御は、基板が適正な拡散のための十分な焼鈍滞留時間に対する所定の焼鈍温度レベルで焼鈍されるように調整することができる。例えば、焼鈍温度は、第1加熱ゾーンから最終加熱ゾーンまで徐々に上昇するように制御することができる。緩やかな上昇は、線形的に行っても、段階的に行ってもよい。代替的に、焼鈍温度は、第1加熱ゾーンから最終加熱ゾーンまで実質的に一定とするように制御することができる。任意に、隣接する加熱ゾーンにおける焼鈍温度を同一にする、又は異ならせることができる。一例では、焼鈍炉は5つの加熱ゾーンを含み、それら加熱ゾーンはそれぞれ425℃、550℃、675℃、725℃、815℃の焼鈍温度を有する。任意に、焼鈍炉は複数の加熱ゾーンを含み、焼鈍温度は線形に425℃から815℃へ上昇する。任意に、焼鈍炉は複数の加熱ゾーンを含み、焼鈍温度は、実質的に一定で、すべてのゾーンで425℃〜810℃の範囲にあるように設定又は制御される。
【0083】
また別の観点では、焼鈍炉はベルトコンベア又は回転レトルト(rotary retort)を含むことができる。また、ベルトコンベア又は回転レトルトは、搬送速度又は回転速度を設定又は制御することができ、一定の搬送速度又は回転速度に設定することができる。任意に、コンベア又はレトルトは、一定の搬送速度又は回転速度に設定又は制御することができる。また、焼鈍炉は強制対流システムを含んで、均一な熱伝導及び分散を確実とすることができる。任意に、焼鈍炉は、最終加熱ゾーンの出口に配置された、コンベア又はレトルトに接続された焼入れ装置を含んで、それによって、瞬間的な急冷を行って、望ましい金色で拡散を停止させることもできる。任意に、本方法は、水冷式ベルトコンベア又はレトルトを使用して搬送されるブランクの乾燥状態での間接的冷却を確実にするような、代替的な冷却シナリオを含むこともできる。
【0084】
いくつかの観点では、多層基板の外表面全体が焼鈍条件を適用されるように、多層基板は回転によってかき混ぜられ、それによって青銅の実質的に均一な金色の外観を得ることを容易化するので、回転式レトルトが焼鈍ステップを実行するために好ましい場合がある。
【0085】
別の観点では、焼鈍雰囲気の組成は、使用可能な錫の錫酸化物への若しくは錫と錫酸化物との組み合わせへの変態に影響し、この変態が最終製品のバニシ仕上げ(
図1のステップ16のような)の有効性に影響を与える場合があるので、好ましくは制御されてもよい。
【0086】
例えば、焼鈍雰囲気の組成は好ましくは、H2が20重量%までの比率のH2及びN2のような混合ガスを含む還元性保護環境とすることができる。より一般的には、焼鈍雰囲気は、結果的に還元性を有する保護雰囲気となる様々な成分を含むことができる。還元性を有する保護雰囲気は、焼鈍された基板の明るい金色っぽい黄色の外観の作成を容易化し、焼鈍中の酸化を減少させるか、防止するために好ましい場合がある。保護雰囲気はさらに、発熱の保護雰囲気又は吸熱の保護雰囲気とすることができる。焼鈍炉は、任意に空気、窒素、又は窒素と水素との混合物を含む制御された焼鈍雰囲気組成を有することができる。
【0087】
本発明は、複数の加熱ゾーンであって、少なくとも3つのパラメータ、すなわち銅メッキ厚に対する相対的な錫メッキ厚、焼鈍温度、及び焼鈍滞留時間を設定するか制御して、金色の青銅の形成を可能にする、焼鈍炉を使用する方法をさらに提供する。この方法は、例えば焼鈍雰囲気組成を制御することをさらに含むことができる。
【0088】
別の観点では、この方法は、拡散によって形成された青銅をバニシ仕上げして、焼鈍ステップ中に形成する場合がある酸化物を除去するステップもまた含むことができる。残留する錫酸化物又は他の金属不純物の酸化物の存在は、例えば硬貨のブランクをさらに鋳貨する間に問題を生じさせる場合がある。バニシ仕上げのステップは、外側の青銅層の外面を研磨して、明るく輝きのある青銅の黄色味のある金色を露出させるステップを含むことができる
【0089】
電気メッキ中のドッグボーン効果(dog−bone effect)のために、硬貨のブランクのような基板の中心部における電気メッキされた層の厚みは、基板の縁部における厚みとは異なるということに注意するべきである。中心から端部まで実質的に一定の厚みを有する拡散された外側青銅層を得ることは大きな挑戦である。
【0090】
また別の観点では、本方法は、焼鈍中に使用可能な錫と相互拡散するために錫層上に金属最上層(ここではフラッシュ最上層として参照される)をメッキするステップを含むことができる。金属最上層は、外側青銅合金層の形成に参加するための銅層又は亜鉛層とすることができる。金属最上層のメッキは、物品の中心から端部までの実質的に一定の厚みを有する青銅層の形成に有利に貢献することができる。
【0091】
図9〜12を参照すると、銅又は亜鉛の金属最上層は錫層の上にメッキされて、所定の焼鈍条件下での焼鈍の後に青銅層上に残る場合がある錫の残留
溜まりを減少させるか排除することができることが発見された。金属最上層の使用は、焼鈍ステップ中の焼鈍条件の操業可使用範囲及び錫メッキ層と銅メッキ層との可能な厚み比率の範囲を拡げることができる。多層メッキされたブランク(基板)が焼鈍炉の加熱ゾーンを通過する焼鈍中に、錫層及び銅層は2つの矛盾する物理現象に関与し、これら物理現象は溶融と拡散である。この矛盾は、メッキされたブランクの焼鈍温度が錫の融点温度、すなわち231.15℃まで上昇するとすぐに始まる。この温度では、ほとんどの錫層は既に銅層中に拡散してしまっている。しかし、231.15℃より高い温度への焼鈍温度の上昇の際には、錫層の拡散せずに残存していた錫は溶融することができ、融合して相互拡散した青銅層上に錫の滴を形成する。冷却の際には、これら滴は加熱ゾーンを出るときに凝固して青銅層の外面上に残留錫
溜まりとして残る。たとえこれら
溜まりは小さくすることができても、見える場合があり、後続のバニシ仕上げ及び洗浄のステップ中には取り除くことはできない。実際には、外側青銅層の外面の錫
溜まりをバニシ仕上げで除去することは、挑戦的であるとともに不十分である場合がある。
【0092】
図9を参照すると、ブランクが、700℃の一定の焼鈍温度において、20分の焼鈍滞留時間、金属基板を焼鈍することによって得られ、この基板は既に23ミクロンのアルカリ性の銅層と3ミクロンの錫層でメッキされていた。残留錫
溜まりがブランクの青銅表面上に残っているのが見える。
【0093】
好都合なことに、銅のさらなる最上層のメッキは、焼鈍中の青銅外面上における溶融錫の形成を軽減するか、防止する。実際に、銅は錫より高い融点(1085℃)を有する。したがって、一方では銅の最上層は錫層内に拡散するために使用可能な銅原子を提供することができる。他方では、銅の最上層は、焼鈍条件の下では固体で残り、溶融した残留錫の層を保持することができ、したがって錫の滴の形成を最小化する。
【0094】
図10は、銅‐錫‐銅でメッキされ、0.3ミクロンの銅の最上層を有するブランクの例を示し、このブランクは
図9に示したブランクと全く同じ条件で焼鈍された。残留錫
溜まりは、錫層が完全に銅層中に拡散して外側青銅合金層を形成するので、ブランクの青銅の外面から除外される。さらに、メッキされた銅の最上層の存在は、形成された外側青銅層の増加した厚みを得ることを可能にすることができる。例えば、フラッシュ最上層を付け加えることによって、メッキされた錫の層の厚みは、約3μmから約4μmまで増加させることができ、それによって、錫
溜まりの形成を軽減するか、又は防止しつつ、
図9において得られた青銅層よりも厚い青銅層を形成することを可能にする。
【0095】
コアの外側接触領域からニッケルを減少させるか、又は取り除くこと、及び銅又は亜鉛の金属最上層を付け加えることによって、本方法は、金色の青銅合金の形成するための錫の可用性を上げる解決法を提供する。実際、金属間デンドライト相又は錫
溜まりの形成における使用可能な錫の望ましくない消費は、本方法によって、減少するか又は防止されている。
【0096】
本方法の多くの実施形態によれば、以下の方法シナリオに従ってブランク上の金色の青銅を生産することができる。
【0097】
上述の方法の多くのステップが、多くのさらなる洗浄、すすぎ、及び/又は乾燥のステップに関連する場合があることが理解されるに違いない。
【0098】
[例示的なシナリオ]
・シナリオ1
1)軟鋼のブランクの、徹底的な洗浄、酸洗い、及びエッチ洗浄;
2)アルカリ性の銅の溶液の使用による軟鋼ブランク上への直接的な銅(Cu)層の電気メッキ;
3)既にアルカリ性の銅でメッキされたブランク上の錫(Sn)の電解メッキ。錫の厚みは、必要とされる青銅層の厚みによって、約1.0μm〜約5.0μmの範囲にある;
4)次いで、銅メッキの非常に薄い層が、既にメッキされたSn/Cuの上にメッキされる。この銅の薄いフラッシュ最上層は、約0.2μm〜約0.8μmであり、残留錫
溜まりを軽減するか、又は除外するため、並びに焼鈍の際の均一な表面の色を達成するためにメッキされ、多層ブランクが得られる;
5)この多層ブランクは、所定の一式の焼鈍条件(焼鈍炉中にて還元雰囲気中で550℃〜750℃、20〜80分)で焼鈍される;
6)焼鈍されたブランクは、次いで適切に冷却される;及び
7)冷却されたブランクはバニシ仕上げされて、いつでもストライクできる(RTS)ブランクを生産する。
【0099】
・シナリオ2
1)軟鋼のブランクの、徹底的な洗浄、酸洗い、及びエッチ洗浄;
2)アルカリ性の銅の溶液の使用による軟鋼ブランク上への直接的な銅層の電気メッキ;
3)既にアルカリ性の銅でメッキされたブランク上の錫の電解メッキ。錫の厚みは、必要とされる青銅層の厚みによって、約1.0μm〜約5.0μmの範囲にある;
4)次いで、亜鉛メッキの非常に薄い層が、既にメッキされたSn/Cuの上にメッキされる。この亜鉛の薄い層は、約0.2μm〜約0.8μmであり、残留錫
溜まりを軽減するか、又は除外するため、並びに焼鈍の際の均一な表面の色を達成するためにメッキされ、多層ブランクが得られる;
5)この多層ブランクは、所定の一式の焼鈍条件(焼鈍炉中にて還元雰囲気中で550℃〜750℃、20〜80分)で焼鈍され、それによって、Sn、Zn、及びCuからなる三元の青銅が形成される;
6)焼鈍されたブランクは、次いで適切に冷却される;及び
7)冷却されたブランクはバニシ仕上げされて、いつでもストライクできる(RTS)ブランクを生産する。
【0100】
・シナリオ3
1)軟鋼のブランクの、徹底的な洗浄、酸洗い、及びエッチ洗浄;
2)アルカリ性の銅の溶液の使用による軟鋼ブランク上への直接的な銅層の電気メッキ;
3)既にアルカリ性の銅でメッキされたブランク上の錫の電解メッキ。錫の厚みは、必要とされる青銅層の厚みによって、約1.0μm〜約5.0μmの範囲にある;多層ブランクが得られる;
4)この多層ブランクは、所定の一式の焼鈍条件(炉中にて還元雰囲気中で550℃〜750℃、20〜80分)で焼鈍される;
5)焼鈍されたブランクは、次いで適切に冷却される;及び
6)冷却されたブランクはバニシ仕上げされて、いつでもストライクできる(RTS)ブランクを生産する。
【0101】
・シナリオ4
1)軟鋼のブランクの、徹底的な洗浄、酸洗い、及びエッチ洗浄;
2)アルカリ性の銅の溶液の使用による軟鋼ブランク上への直接的な銅層の電気メッキ。アルカリ性の銅層はストライク層のように作用し、その厚みは約3.0μm〜約8.0μmである;
3)次いで、厚い銅が既にメッキされたブランク上にメッキされる。この銅のメッキは、約10μm〜約35μmである。この銅のメッキは、アルカリ性、酸性、シアン化合物を含有する、シアン化合物を含有しない、等の、いずれかの種の銅メッキ液を使用、好ましくは酸性の銅の溶液を使用して行うことができる。
4)既にアルカリ性の銅でメッキされたブランク上の錫の電解メッキ。錫の厚みは、必要とされる青銅層の厚みによって、約1.0μm〜約5.0μmの範囲にある;
5)次いで、銅メッキの非常に薄い層が、既にメッキされたSn/Cuの上にメッキされる。この銅の薄い層は、約0.2μm〜約0.8μmであり、残留錫
溜まりを除外するため、並びに焼鈍の際の均一な表面の色を達成するためにメッキされ、多層ブランクが得られる;
6)この多層ブランクは、所定の一式の焼鈍条件(炉中にて還元雰囲気中で550℃〜750℃、20〜80分)で焼鈍される;
7)焼鈍されたブランクは、次いで適切に冷却される;及び
8)冷却されたブランクはバニシ仕上げされて、いつでもストライクできる(RTS)ブランクを生産する。
【0102】
・シナリオ5
1)軟鋼のブランクの、徹底的な洗浄、酸洗い、及びエッチ洗浄;
2)アルカリ性の銅の溶液の使用による軟鋼ブランク上への直接的な銅層の電気メッキ;
3)酸性の銅の溶液を使用することによる、既にあるアルカリ性の銅の上への約2μm〜約3μmの薄い銅の電解メッキ;
4)既に銅でメッキされたブランク上の錫の電解メッキ。錫の厚みは、必要とされる青銅層の厚みによって、約1.0μm〜約5.0μmの範囲にある;
5)次いで、亜鉛メッキの非常に薄い層が、既にメッキされたSn/Cuの上にメッキされる。この亜鉛の薄い層は、約0.2μm〜約0.8μmであり、残留錫
溜まりを除外するため、並びに焼鈍の際の均一な表面の色を達成するためにメッキされ、多層ブランクが得られる;
6)この多層ブランクは、所定の一式の焼鈍条件(炉中にて還元雰囲気中で550℃〜750℃、20〜80分)で焼鈍される;
7)焼鈍されたブランクは、次いで適切に冷却される;及び
8)冷却されたブランクはバニシ仕上げされて、いつでもストライクできる(RTS)ブランクを生産する。
【0103】
上記のシナリオそれぞれのステップ2において、アルカリ性銅メッキ液は、鋼基板用のシアン化合物の銅メッキ液又は非シアン化合物の銅メッキ液に置き換えることができることが理解されるに違いない。
【0104】
本方法の上述の作業用パラメータの影響が、以下の実施例を通じて明らかにされる。
【実施例】
【0105】
一連の実験が、銅と錫との相対的厚み、炉の焼鈍温度、焼鈍滞留時間、及び炉の内部の焼鈍雰囲気の組成を含む、効果的な作業可使用範囲を特定するために行われた。実施例1〜4は、基板のコアの外側接触領域からニッケルを取り除く利益と、銅又は亜鉛の金属最上層を付け加える利益とを示すために提供されている。
【0106】
使用されたブランクは、鋼のコアを有し、ブランクの中央部分における約4〜8μmのニッケルと、約14〜25μmの銅でメッキされていた。バレルメッキ法が実験に使用された。好ましくは、ブランクは鋼のコアを有し、鋼上に銅で直接メッキされ、次いで、異なる厚みの錫と最上部のフラッシュ銅でメッキすることができる。
【0107】
別様に記載されない限り、実施例の全体を通じて与えられた厚みの値は、多層基板(硬貨のブランク)の中央における値であることに注意すべきである。
【0108】
以下の条件を有するバレルメッキ技法が、ブランクを製造するために使用された。
【0109】
・アルカリ性銅メッキ
アルカリ性銅メッキ液の組成は以下のとおりである。
E−Brite Ultra Cu:40容量%
E−Brite Ultra Cu−E:10容量%
E−Brite Ultra Cu−pHA:10容量%
【0110】
銅の電気メッキは、以下の条件下で行われた。
pH値:9.8±0.2
温度:49℃±2℃
電流密度:0.2〜0.5A/dm2
【0111】
・錫メッキ
錫メッキ液の組成は以下のとおりである。
硫酸第1錫:20.0グラム/リットル
硫酸:8.0容量%
Stannolume NF Carrier:2.0容量%
Stannolume NF Additive:0.1容量%
【0112】
錫の電気メッキは、以下の条件下で行われた。
温度:20℃±2℃
電流密度:0.25A/dm2
【0113】
[実施例1]
1.1実験条件
5μmのニッケル層、20μmの銅層、及び2.5μmの錫層を含む複数のメッキを施された硬貨のブランクが、還元雰囲気で650℃、60分、焼鈍された。これら厚みはメッキされたブランクの中央で測定されたことに注意すべきである。電気メッキ中、ブランクの中央部と端部とにおける異なる電流分布によって、異なる層のメッキ厚はブランクの表面全体に亘って変化する。これはドッグボーン効果として参照されており、すなわちメッキは端部において中央部より厚い。
【0114】
1.2結果
図11及び
図12は、ブランクの中央部及び端部それぞれにおける断面の光学顕微鏡写真である。
図11において、拡散の際に、金色の青銅の色を有する拡散層が12.36μmの深さまで形成され、その下にはピンクの層が存在することが観察された。ピンクの層は、銅リッチな相とニッケルリッチな相とを含む。銅リッチな相は、少量の錫と大量の銅とを含む。ニッケルリッチな相は、コアからピンクの層を通じて金色の青銅層とピンクの層との間の境界まで延在する濃い灰色のデンドライト相として見ることができる。これらデンドライト相は、頂面から約12μm〜約20μmの深さに比較的均一に分散している。しかし、
図12における同じブランクの端部では、青銅の最上層とピンクの層とは明らかに存在するが、そのような濃い灰色のデンドライト相は観察されない。銅とニッケルとの境界にニッケルの銅の中へのわずかな相互拡散を示すいくつかの小さい灰色の分散した生成物が観察されたことに注目すべきである。
【0115】
[実施例2]
2.1実験条件
25μmの銅層及び2.5μmの錫層を含む複数のメッキを施された硬貨のブランクが、還元雰囲気で700℃の一定の焼鈍温度で、30分の焼鈍滞留時間、焼鈍された。これら厚みはメッキされたブランクの中央部で測定されたことに注意すべきである。
【0116】
2.2結果
エッチングされたブランクの中央部と端部とのそれぞれの断面が、
図13及び
図14に示されている。
図13及び
図14は、拡散層のピンクの領域には濃い灰色のデンドライト相が形成されなかったことを示している。メッキされたブランクの中央部及び端部の両方における金色の青銅層の厚みは比較的均一であり、拡散した金色の青銅層は、ブランクが最初にニッケルでメッキされた層(実施例1)の場合におけるより明らかに厚い。
【0117】
[実施例3]
3.1実験条件
25μmのアルカリ銅層、2.0μmの錫層、及び0.3μmの銅最上層を含む複数のメッキを施された硬貨のブランクが、15%のH2及び85%のN2からなる還元雰囲気で700℃の一定の焼鈍温度で、30分の焼鈍滞留時間、焼鈍された。
【0118】
3.2結果
図15は得られた焼鈍後のブランクを示す。ブランクは均一な金色の青銅層を有する。
図16は、
図15の焼鈍されたブランクの断面の光学顕微鏡写真を示す。ニッケル無しでは、濃い灰色のデンドライト相が形成されなかったことがここでもわかる。また、ピンクの層に対する金色の青銅層の厚みは、ブランクが銅の最上層(実施例2参照)でメッキされた場合におけるよりも厚いことに注意すべきである。ピンクの層の厚みに対する金色の青銅層の厚みの比は、1より大きく、銅の最上層が金色の青銅層における均一な拡散に十分に参加していることがわかる。すなわち、ニッケル層が無いこと及び銅の最上層の使用は、本方法の所定の焼鈍条件の下では、錫と銅との間の拡散を促進させる。
図16及び
図17に示す走査型電子顕微鏡分析から、均一な金色の青銅層を、
図18のEDS(エネルギー分散型X線分光計)分析によって図示されるように、青銅の最上層における11重量%の錫を含むブランク上に形成することができる。
【0119】
[実施例4]
4.1実験条件
5μmのニッケル層、20μmのアルカリ銅層、5.0μmの錫層、及び0.3μmの亜鉛最上層を含む複数のメッキを施された硬貨のブランクが、還元雰囲気で650℃の一定の焼鈍温度で、60分の焼鈍滞留時間、焼鈍された。これら厚みはメッキされたブランクの中央部で測定されたことに注意すべきである。
【0120】
4.2結果
図19に示す焼鈍されたブランクの中央部の後方散乱電子顕微鏡の断面写真は、ブランクの小領域にデンドライト相を含む。
図20に示すSEM分析は、これらデンドライト相が、ほんの少しのニッケルしか観察されない周囲の銅リッチの相とは対照的に、ニッケル層から10〜14μm離れていてさえ、非常に大量のニッケルを含むことを示している。より正確には、これらデンドライト相におけるニッケルの含有量は20重量%と高く、一方で周囲の銅リッチな領域におけるニッケルの含有量は2重量%よりずっと少ない。これら結果は、錫、ニッケル、及び銅を含む新しい相がこれら元素の間での拡散の結果として形成され得ること、大量のニッケル原子が上方に移動できること、及び大量の錫原子がNi−Cu−Snの三元金属間化合物の形成によって消費され得ること、を示唆している。したがって、これら結果は、錫は青銅層の形成に十分には参加しないことを暗示する。
【0121】
図21に見られるように、銅の中間層が、例えばブランクの端部において焼鈍前に十分厚い場合、ニッケル及び錫を含有する三元金属間化合物は焼鈍後には観察されない。
図21のEDS分析は、ニッケルが銅層中に拡散したことを示すが、ニッケル含有量は
図19のデンドライト相にみられる含有量より少ない。一般的に、銅がニッケル中に拡散することは難しい場合があり、このこともまたEDS分析によって確認されている。それが、銅が金のような他の金属中に拡散するのを防止するためにニッケルを使用することができる主な理由の1つである。
【0122】
上述した本方法の実施形態を適用して、すなわち拡散した赤い青銅が約8重量%より低い錫濃度を有するような錫層の厚みを有する錫のメッキによって、赤い青銅の拡散層を作ることができることが理解されるに違いない。