【課題を解決するための手段】
【0006】
レンズの製造、特に、少なくとも1つのレンズ面に特に回折微細構造部を有する眼鏡レンズの製造を簡略化することが、本発明の目的である。この目的は、請求項1に開示される特徴を有する方法によって達成される。好ましい実施形態が、従属請求項の主題である。
【0007】
したがって、本発明は、レンズ、特に、少なくとも1つのレンズ面に微細構造部を有する眼鏡レンズを製造する方法を提供する。微細構造部は、好ましくは眼鏡レンズのカラーフリンジ補正のために、詳細には、可視光用の回折格子としての役割を果たす。眼鏡レンズの場合、微細構造部が、眼鏡レンズの前面に設けられることが特に好ましい。本発明によれば、まず、表面に微細構造部を有する(構造部保持フィルムとも表される)構造部保持層が設けられる。この微細構造部は、詳細には、レンズ表面、又はレンズ内の、形成すべき微細構造部の凹部に該当する。レンズ本体、詳細には、実際に製造すべきレンズ、又は、後にさらに処理され実際のレンズを形成するレンズブランクが、その後、構造部保持層の微細構造部において、注入成形される。
【0008】
構造部保持層は、少なくともレンズ、又はレンズ本体が硬化するまで、レンズ、又はレンズ本体に留まることができる。レンズ本体の注入成形中、構造部保持層は、微細構造部から離れた方を向いている面が、支持基板に接した状態で、配置され得る。したがって、支持基板は、構造部保持層と共に、レンズ本体を注入成形するための、注入成形モールドとしての役割を果たす。ここで、支持基板は、好ましくは支持基板より薄い、非常に柔らかい構造部保持層を支持するために特に役立つ。したがって、構造部保持層は、支持基板よりも、厚さが小さく、及び/又は、支持基板よりも材料強度が低いか、もしくは材料硬度が低いことが好ましい。
【0009】
概して、構造部保持層は、支持基板と共に、レンズ用の注入成形モールドとして使用されることが好ましい。構造部保持層は、例えば、モールド内での注入成形、浸漬成形、へら絞り、スパッタリング、又はエンボス加工により、従来の固形の注入成形モールドよりもかなり容易に、したがってまた、コストに対する効果もより高く、詳細には微細構造化された状態に、製造され得る。このために、詳細には、モールド内での注入成形により、並びに/又は浸漬成形、及び/もしくはへら絞り、及び/もしくはスパッタリング、もしくは蒸着によるコーティングにより、並びに/又は形成もしくはエンボス加工により、容易に微細構造化できるそのような材料が、使用され得る。構造部保持層を微細構造化するために必要な工具は、製造が比較的複雑で、そのためコストがかかることがあるが、このような工具は、構造部保持層を比較的容易に製造した後、さらなる製造工程において再度使用することができる。
【0010】
したがって、これらの工具のサイクルタイムは、レンズを注入成形するための、同様に高価な恐れがある従来の注入成形モールドと比較して、どの場合にも比較的短い。従来の注入成形モールドは、レンズが硬化するまで、製造すべきレンズに留まらなければならない。この処理には、通常、数時間から数日かかることがあり、従来の微細構造化された注入成形モールドの、これに応じた長いサイクルタイムが必要である。
【0011】
対照的に、本発明による方法の構造部保持層は、少なくとも製造すべきレンズが硬化するまで、より高価な工具を固定しておくことなく、レンズ本体に留まることができる。微細構造化されていない支持基板が使用され、レンズ本体が硬化するまで、製造すべきレンズの表面に同様に留まる場合であっても、微細構造部を有さない支持基板は、コストに対する効果が非常に高く製造でき、したがって、より大量に製造できるため、この支持基板により、従来の方法に対して、コストがかなり減少する。構造部保持層は同様に、従来の微細構造化された注入成形モールドと比較して、コストに対する効果が非常に高く、廃棄される場合さえあり、又は数回の注入成形サイクルを経た後、摩耗する場合もある。どの場合にも、構造部保持層を一回のみ使用し、その後に構造部保持層を処分することも可能であろう。損傷又は汚染から微細構造部を保護するために、少なくともレンズの次の加工中、又は、後に使用する間にさえも、構造部保持層が、保護層としてレンズの表面に留まることが特に好ましい。その寸法(通常軸方向に0.3μm〜5μm、側面方向に1μm〜500μm)により、上記の微細構造部は、汚染、又は引っ掻き傷を受けやすい。後者は、構造部が比較的軟質の有機材料の表面に設けられた場合に、特に当てはまる。したがって、製造中も、この構造部を完成品(レンズ)の中に保護することが有効である。
【0012】
詳細には、構造部保持層を支持するための支持基板が、レンズ本体の注入成形中に使用される場合、本方法は、好ましくは注入成形後、詳細には少なくともレンズ本体の部分硬化後に、構造部保持層から支持基板を取り除くことを含み、一方で、構造部保持層は、レンズ本体の表面に留まる。
【0013】
構造部保持層は、最大厚さが約1mm以下であることが好ましく、約0.5mm以下であることが特に好ましく、約0.25mm以下であることが最も好ましい。構造部保持層は、層厚が、実質的に一定であることが特に好ましい。他の好ましい実施形態において、厚さが数十マイクロメートル(例えば、約20μm〜40μm)である、さらに薄い層が使用され得る。この層は、詳細には、例えば、スピンコーティング、又は浸漬成形等の方法によって製造され得る。
【0014】
特に好ましい実施形態において、構造部保持層は、(最大)厚さが、レンズ本体の(最小)厚さより小さい。構造部保持層が、(従来の)注入成形モールドを利用して、注入成形によって製造される場合であっても、構造部保持層は、厚みが小さいため、製造すべきレンズの厚さを有するレンズ、又はレンズ本体の厚さを有するレンズより、かなり速く硬化する。したがって、コストがかかる(従来の)注入成形モールドのサイクルタイムが、非常に短いままである。その上、構造部保持層を製造するための他の処理がまた、後に説明されるように、本発明で使用され得る。この処理により、微細構造化された工具のサイクルタイムを、さらに減少させることができる。
【0015】
好ましい実施形態において、構造部保持層は、レンズ本体の屈折率とは異なる屈折率を有する。この形態において、構造部保持層は、保護層として、レンズ本体に留まることができ、(詳細には、回折格子の形態の)微細構造部が、レンズ製造の次の処理工程によって損傷したり、又はこれらの処理中に汚染したりすることを防ぐことができる。屈折率の違いにより、微細構造部は、光学的に有効なままである。詳細には、微細構造部は、(詳細には、可視光に対する)回折格子として作用することができる。
【0016】
構造部保持層には、特に、例えば、構造部保持層を有するレンズを、眼鏡レンズとして使用できるように、十分な光透過性が付与される。この場合、構造部保持層は、眼鏡レンズの表面に、保護層として留まることが好ましい。これにより、構造部保持層はまた、眼鏡店での次の作業工程(例えば、眼鏡レンズの縁付け)の間、並びに完成した眼鏡を着用する際、損傷及び汚染から微細構造部を保護することができる。
【0017】
微細構造部から離れた方を向いている、構造部保持層の片面に、構造部保持層は、おおむね平滑な表面を有することが好ましい。この表面は、詳細には微細構造部の輪郭に沿っておらず、単に、製造すべきレンズ、特に眼鏡レンズの全体的な湾曲に沿っている。したがって、構造部保持層の、この実質的に平滑な表面は、損傷又は汚染にほとんど影響されない。その上、これにより、微細構造部の平坦でない表面には(容易に)設けられない可能性があるか、又は層の効果に悪影響を与える可能性があるさらなる層(例えば、反射防止層、トップコーティング、ハードコーティング)を、容易に設ける見込みが生じる。
【0018】
構造部保持層が、保護層としてレンズに留まる場合、構造部保持層、及び構造部保持層の光学的特性−詳細には屈折率−は、微細構造部の設計中に、既に考慮されている。構造部保持層の屈折率と、(可視光用の)レンズ本体の屈折率との差は、少なくとも約0.05であることが好ましく、少なくとも約0.1であることが好ましく、少なくとも約0.15であることがより好ましく、少なくとも約0.2であることが最も好ましい。したがって、例えば、構造部保持層は、屈折率が約1.5である一方で、レンズ本体は、屈折率が約1.6であるという場合がある。別の例では、構造部保持層は、屈折率が約1.6である一方で、レンズ本体の屈折率は、約1.67であるという場合がある。より大きな屈折率の差を得るために、構造部保持層は、屈折率が約1.5である一方で、レンズ本体は、例えば、屈折率が1.67であってもよい。さらに大きな屈折率の差を得るために、レンズ本体に対する約1.74の屈折率と、構造部保持層に対する約1.5の屈折率との、例示的な組み合わせも可能である。
【0019】
また、構造部保持層の材料が、光の可視範囲において、光学的に澄んでおり、かつ、−逆を望んでいない限り−均一に透明であれば好ましい。さらなるハードコーティングを塗布することができるため、構造部保持層自体は、特別硬質でなくてもよい。しかしながら、構造部保持層は、それでもやはり、さらなる処理に対する、十分な接着力、及び耐摩耗性を確実に有することが好ましい。構造部保持層の硬度が低いと、微細構造部の製造の簡略化が促進される。材料強度は、微細構造部を損傷することなく、レンズ本体を注入成形することができるように、十分に高くなければならない。
【0020】
(例えば、フォトクロミックを有する/有さないTransshadeを使用する場合)硬度が高い必要はないが、好ましい実施形態(例えば、TS56Tを使用する場合)においては、保持層はまた、ハードコーティングとなる。
【0021】
構造部保持層は、レンズ本体の方を向いている表面において、微細構造部の輪郭に沿っているが、この微細構造部は、レンズ本体から離れた方を向いている構造部保持層の面には再現されないことが好ましい。レンズ本体から離れた方を向いている構造部保持層の表面は、構造部保持層が、製造すべきレンズの対応する表面(したがって、例えば、球面、非球面であるが回転対称な表面、又は自由形状の表面)の形状に、構造部を再現することなく、実質的に(特に好ましくは等距離に)沿う幾何学的形状を有することが好ましい。また、微細構造部から離れた方を向いている面においては、平滑な構造部保持層、又は特別な要求(例えば、次の層の接着を向上させるための、規定された粗さ)を満たす構造部保持層が好ましい。
【0022】
層の厚さは、使用される光の波長より大きくなるように選択されることが好ましい。しかしながら、他の(光学的な)効果が、(例えば、効果的な屈折率を生み出す)微細構造部によって得られるべき場合には、厚みは、これらの要求に従って設計され得る。構造部保持層は、厚さが、少なくとも約5μmであることが特に好ましく、少なくとも約20μmであることが好ましく、少なくとも約100μmであることが特に好ましく、少なくとも約200μmであることが最も好ましい。したがって、特に、構造部保持層内の干渉現象(主にファブリペロー干渉)が、効果的に抑制されるか、又は防止される。このことは、これらの層厚では、一般的な周囲光の通常のコヒーレンス長が、(少なくとも部分的に)層厚よりも短くなり、その結果として、干渉効果が、無視できるほどになるという事実によって説明できる。厚みを指定する場合、材料の安定性、並びに処理に関連する状況を考慮しなければならない。この結果、厚みが、500μmまで、又は、さらに1mm超といった、非常に大きなものとなる可能性がある。
【0023】
既に述べたように、構造部保持層を準備することは、対応して微細構造化された注入成形モールド表面を有する注入成形モールドにより、構造部保持層を注入成形することを含むことが好ましい。したがって、構造部保持層は、2つの注入成形モールド間で、注入成形されることが好ましい。2つの注入成形モールドのうち1つは、構造部を有する。この方法の利点は、この方法により、幾何学的形状を、非常に正確に制御することが可能になることである。構造部保持層の厚みが十分に小さい場合、構造部保持層は、厚みのあるレンズより、かなり速く硬化する。このため、微細構造化された注入成形モールド表面を有する注入成形モールドの部分は、より早くに、再度使用できる。したがって、この結果、レンズのための従来の注入成形方法における、一般的な場合よりも、サイクルタイムがかなり短くなる。
【0024】
潜在的に繊細な構造部保持層(フィルム)を保護するために、好ましい一実施形態において、構造部から離れた方を向いている構造部保持層の面に配置された注入成形モールドは、上述の支持基板として、構造部保持層の表面に留まる。その後、注入成形型(即ち支持基板)と、構造部保持フィルム(構造部保持層)とから作られるパケット(packet)は、ボリューム材料(レンズ本体)を注入成形するための注入成形モールドとして使用される。十分な安定性(又は厚さ)がある場合、構造部保持フィルムを、直接注入成形モールドとして、使用することもできる。
【0025】
微細構造部を有する上述の注入成形モールドパケットから、及び、微細構造部から離れた方を向いている、製造すべきレンズの面の形状、又は製造すべきブランクの面の形状を再現する、従来の注入成形モールドから、注入成形パケットが作製されることが好ましい。その後、最初は液体のボリューム材料が、注入成形パケット、又は注入成形に適した装置に導入され、(例えば、モノマーの重合によって)硬化される。
【0026】
硬化処理中の気泡の発生を避けるためには、ボリューム材料の注入成形パケットを、硬化中、水平位置に保つことが有効である場合がある。
【0027】
さらに好ましい実施形態において、構造部保持層を準備することは、構造部保持層がパンチに付着するように、対応して微細構造化されたパンチが浸漬槽に入れられる浸漬処理を含む。さらに好ましい実施形態において、構造部保持層を準備することは、微細構造化された基板上に構造部保持層をへら絞り(spinning)すること及び/もしくはスパッタリングすること、並びに/又は、蒸着により、微細構造化された基板をコーティングすることを含む。構造部保持層の注入成形方法と同様に、構造部保持層は、詳細には、構造部保持層の厚みが十分に小さい場合に、厚みのあるレンズより、かなり速く硬化し得る。この結果、対応する微細構造化された工具(パンチ又は基板)のサイクルタイムが、その分短くなる。
【0028】
さらに好ましい実施形態において、構造部保持層を準備することは、成形、詳細にはエンボス加工、及び/もしくは穿孔により、並びに/又は材料除去加工処理(例えば、ダイヤモンド切削)により、並びに/又はレーザアブレーションにより、並びに/又は射出成形により、微細構造部を形成することを含む。構造部保持層の硬度、又は材料強度に関して出される要求が、従来の微細構造化された注入成形モールドに関して出される要求より、全く厳しくないため、構造部保持層のための、十分に形成可能な材料を用いて、構造部保持層は、特にエンボス加工、射出成形、又は穿孔により、かなり容易に、かつコストに対する効果を高く、製造され得る。成形はまた、詳細には、熱により補助され得る。レーザ技術を利用する加工の場合(例えば、レーザアブレーション)には、構造部は、第2の処理において、平滑にされ得る。これは、レーザシステムによる溶融によって行われることが好ましい。
【0029】
特に、構造部保持層が、保護層として、レンズ本体に留まる場合、本方法は、好ましくは注入成形後、詳細には、少なくともレンズ本体の部分硬化後に、微細構造部から離れた方を向いている構造部保持層の表面を機械加工(例えば、研削、研磨、粗面化)することを含む。
【0030】
一態様において、本発明は、詳細には、構造部(例えば、回折微細構造部)が、製造すべきレンズのボリューム材料内に直接注入成形されず、その代わり、まず、スピーシ保持層(構造化された支持層)内に、凹部として注入成形され、ボリューム材料(レンズ本体)が、この層に面して、第2の工程で注入成形される際の、長いサイクルタイムに関する問題を解決する。構造部保持層が、特に、別個の材料システムを有するため、又はこれとは別の材料システムを、ボリューム材料に対しては他に使用できるため、かつボリューム材料にとってはおそらく適切ではない特別な方法(例えば、熱アシストによる重合、又はUVアシストによる重合)を、構造部保持層を硬化するために使用できるため、かつこの構造部保持層は、特に、ボリューム材料(通常数ミリメートル)よりかなり薄く(好ましくは1μm〜200μm)することができるため、それゆえに、構造部の注入成形中の硬化処理を、ボリューム材料内に直接注入成形するよりも、かなり速く(数時間から数日というよりむしろ数分)行うことができる。
【0031】
好ましい実施形態において、構造部保持層は、ボリューム材料の注入成形後、保護層として維持される。したがって、構造部保持層は、(例えば、回折効果を生み出すために構造部を使用する場合に)屈折率の変化を起こすという仕事を実行でき、損傷及び/又は汚染から、構造部を保護するという仕事を実行することもできる。この手法の利点は、ボリューム材料(レンズ本体)を硬化させることが、2つの要素の、非常に強く、かつ光学的に無傷な接続という結果につながるということである。これは、特に、添加剤を投入できるという事実によって促進される。促進しなくても、添加剤は、構造化された注入成形モールドから製品を離すために必要である。また、2つの要素のうち、1つの要素における構造部の汚染、又は境界に沿った汚染を、直接つながっている配置によって、効果的に避けることができる。さらに、必要な処理工程が減少するため、この方法は、非常に経済的である。その後、構造部保持層は、個別のさらなる処理工程、又はすべての処理工程の間、保護部としての役割を果たすことができ、一連の処理において、適切なときに、取り除くことができる。代替形態として、構造部保持層はまた、例えば、眼鏡着用者によって使用されている間、製品の保護に必須の部分として、眼鏡レンズ内に一体化され得る。
【0032】
好ましい実施形態において、微細構造化されたレンズを製造する方法は、微細構造部から離れた方を向いているボリューム材料(レンズ)の表面を加工することを含む。この工程では、微細構造部から離れた方を向いている面には、所望の表面の幾何学的形状、及び表面品質が付与される。この工程は、この面がさらなる処理を必要としない場合、詳細には省略され得る。これは、例えば、この面が、注入成形後に、所望の幾何学的形状及び品質を、既に有している場合である。
【0033】
加工が行われる場合、ミリング−研削−研磨(従来のRGF)、又は「切断研磨」、又は旋削−研磨等の技法が、ここで使用されることが好ましい。このために、ブランクは、通常、固定される。このために、低融点金属合金と組み合わせた、接着フィルム又は特別なラッカー層、並びに接着フィルム、又は接着剤と組み合わせたベース支持体を使用できる。接着剤、又はラッカーを選択する場合、接着剤、又はラッカーが、ブランクをしっかりと保持するために、一方で、加工後、ブランクを、これらの層、又はボリューム材料を破壊することなく、構造部保持層から取り外すことができるように、十分な強度で、構造部保持層(又はボリューム材料、又は一時的な保護層)に接着することが、確認されるべきである。固定を解除した後、さらなる処理の前に、構造部保持層、又はボリューム材料は、必要に応じて、洗浄されるべき、かつ/又は、平滑にされるべきである。
【0034】
別の好ましい実施形態において、構造部保持層は、固定を解除した後、レンズ本体から離される(取り外される)。このことは、ブロックと、構造部保持層との間の、非常に良好な機械的接続、したがって、レンズ全体、又はブランクの非常に良好な固着が、構造部保持層に対する永続的な損傷を避けることを気にする必要なく、固定のために達成され得る際に、特に有効である。詳細には、このことは、機構を接続すること、又は残留物なしに取り外すことができる材料を接続することに限定されない。
【0035】
上述の好ましい実施形態のいくつかにおいては、構造部保持層は、いくつかの又はすべての、後続の処理工程の間、又は完成品に対してであっても、保護層として使用され得るが、他の好ましい実施形態においては、構造部保持層はまた、取り除かれる場合があり、したがって、レンズ本体を注入成形した直後(又は、レンズ本体が少なくとも部分的に硬化した後)に、レンズ本体から離される場合がある。構造部保持層を取り除くために、機械的方法(例えば、剥離)に加えて、化学的方法(例えば、酸性媒体又はアルカリ性媒体内での溶解、有機溶剤の使用、超音波による補助等)も使用できる。
【0036】
特に、構造部保持層が、完成品(例えば、眼鏡レンズ)に留まることがなお意図されている場合、構造部層が、微細構造部から離れた方を向いている面における、レンズ本体(つまりレンズ本体)の注入成形後、直接的、又は間接的に、加工されることが好ましい。構造部保持層が、取り外されるべきか、又は維持されるべきかにかかわらず、代替的又は付加的に、微細構造部から離れた方を向いている、レンズ本体の面はまた、好ましくは類似した方式で、加工され得る。詳細には、さらなる層(例えば、接着剤層、ハードコーティング、AR層、撥水層、又は防汚層)を設けることができる。又は、レンズ(眼鏡レンズ)を、着色することができる。この工程は、さらなる層が所望されない場合、省略することができる。
【0037】
特に、構造部保持層が、少なくとも一時的に、又は完成品にさえも、維持されるべき場合、微細構造部から離れた方を向いている、構造部保持層の面は、レンズ体の注入成形後の加工により、所望の表面の幾何学的形状、及び所望の表面品質を獲得する。この工程は、ボリューム材料の注入成形後、又は構造部から離れた方を向いているボリューム材料の表面の加工後に行われることが好ましい。以下の態様及び処理が、このための例として挙げられる。
【0038】
表面品質(例えば、粗度)
これは、例えば、構造部保持層の上述の面における、表面の粗度に関するものである。したがって、表面は、所望の表面性状を獲得するために、機械的に、又は化学的に処理され得る(例えば、研磨される)。このような表面性状は、例えば、光学品質、設けるべき層を向上させるための固有の性質、又は硬度に関する場合がある。
【0039】
幾何学的形状(形状及び厚さ)
ボリューム材料の、生成、構造化、注入成形、又は加工後の、構造部保持層の上述の面における幾何学的形状は、完成品における支持層の所望の表面と一致していなくてもよい。この場合、所望の幾何学的形状が、機械的処理、又は化学処理(例えば、研削、又はエッチング)により、個別の処理工程として、処理全体における適切な局面(例えば、支持層からモールドを外した後)で、実現されなければならない。このための例には、(構造部保持層を製造する場合の)へら絞り後に存在し得るような、輪郭の不明確な幾何学的形状が挙げられるであろう。また、構造部保持層は、注入成形の工程(ボリューム材料の注入成形)の間、又はモールドを外す間の安定性を高めるために、意図的に、厚さをより大きく製造され得る。製品用の、所望の注入成形モールドの他に、湾曲した注入成形モールド、又は平坦な注入成形モールドを使用することもまた、可能である。
【0040】
本発明を、以下に、好ましい実施形態により、添付の図面を参照して説明する。