特許第6189974号(P6189974)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6189974圧力調整弁における弁ハウジングの製造方法、及びその製造方法に使用される金型装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6189974
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】圧力調整弁における弁ハウジングの製造方法、及びその製造方法に使用される金型装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/02 20060101AFI20170821BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   F16K27/02
   B29C45/27
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-550898(P2015-550898)
(86)(22)【出願日】2014年11月21日
(86)【国際出願番号】JP2014080877
(87)【国際公開番号】WO2015080038
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2016年9月2日
(31)【優先権主張番号】特願2013-248125(P2013-248125)
(32)【優先日】2013年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100071870
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 健
(74)【代理人】
【識別番号】100097618
【弁理士】
【氏名又は名称】仁木 一明
(74)【代理人】
【識別番号】100152227
【弁理士】
【氏名又は名称】▲ぬで▼島 愼二
(72)【発明者】
【氏名】田村 伸二
(72)【発明者】
【氏名】相楽 晃次
(72)【発明者】
【氏名】阿保 陽介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 保浩
(72)【発明者】
【氏名】瀧 健二朗
(72)【発明者】
【氏名】牧野 智規
【審査官】 関 義彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/104058(WO,A1)
【文献】 特開2010−77823(JP,A)
【文献】 特開2010−253856(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/069532(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/02
B29C 45/26 − B29C 45/27
F16K 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の円筒部(36a)、及びこの円筒部(36a)の一端に一体に形成される端壁部(36b)よりなる弁ハウジング(36)と、高圧ポート(37)、及びこの高圧ポート(37)に連なる弁座(38)を有して、前記円筒部(36a)の開放端部に圧入される弁座部材(39)と、前記円筒部(36a)内で前記弁座(38)と協働して前記高圧ポート(37)を開閉する弁体(41)と、前記端壁部(36b)及び前記弁体(41)間に縮設されて該弁体(41)を前記弁座(38)との着座方向に所定のセット荷重で付勢する調圧ばね(40)とで構成される圧力調圧弁(R)において、前記弁ハウジング(36)を製造するに当たり、
前記弁ハウジング(36)に対応するキャビティ(64)を画成する金型装置(61)に、前記端壁部(36b)に対応するキャビティ(64)の外端面(64a)に開口すると共に、同内端面(64b)に指向する環状ゲート(67)を設け、この環状ゲート(67)からキャビティ(64)に短繊維(69)を複合させた合成樹脂(70)を射出することにより、その合成樹脂(70)を前記内端面(64b)に衝突させてからキャビティ(64)の各部に充填することを特徴とする、弁ハウジングの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の弁ハウジングの製造方法に使用される金型装置(61)であって、
前記弁ハウジング(36)に対応するキャビティ(64)と、前記弁ハウジング(36)の端壁部(36b)に対応するキャビティ(64)の外端面(64a)に開口すると共に、同内端面(64b)に指向する環状ゲート(67)とを備えており、
前記環状ゲート(67)から前記キャビティ(64)に、短繊維(69)を複合させた合成樹脂(70)を射出することにより、その合成樹脂(70)を前記内端面(64b)に衝突させてからキャビティ(64)の各部に充填することにより、前記弁ハウジング(36)を製造することを特徴とする、弁ハウジングの金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空の円筒部、及びこの円筒部の一端に一体に形成される端壁部よりなる弁ハウジングと、高圧ポート、及びこの高圧ポートに連なる弁座を有して、前記円筒部の開放端部に圧入される弁座部材と、前記円筒部内で前記弁座と協働して前記高圧ポートを開閉する弁体と、前記端壁部及び前記弁体間に縮設されて該弁体を前記弁座との着座方向に所定のセット荷重で付勢する調圧ばねとで構成される圧力調圧弁における弁ハウジングの製造方法、及びその製造方法に使用される金型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かゝる圧力調整弁において、弁ハウジングを合成樹脂で成形することが下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際出願公開第WO2010/104058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、弁ハウジングが中空円筒形であることから、これをピンポイントゲートより射出成形した場合には、その円筒部に軸方向のウエルドライン(溶融樹脂の合流部に発生する接合跡)が発生し、これが弁ハウジングの拡径方向の強度を低下させて、弁座部材の圧入不良を生じる原因となることが本発明者等によって究明された。
【0005】
本発明は、かゝる事情に鑑みてなされたもので、弁ハウジングを射出成形する際、ウエルドラインが発生しないようにした、圧力調整弁における弁ハウジングの製造方法、及びその製造方法に使用される金型装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、中空の円筒部、及びこの円筒部の一端に一体に形成される端壁部よりなる弁ハウジングと、高圧ポート、及びこの高圧ポートに連なる弁座を有して、前記円筒部の開放端部に圧入される弁座部材と、前記円筒部内で前記弁座と協働して前記高圧ポートを開閉する弁体と、前記端壁部及び前記弁体間に縮設されて該弁体を前記弁座との着座方向に所定のセット荷重で付勢する調圧ばねとで構成される圧力調圧弁において、前記弁ハウジングを製造するに当たり、前記弁ハウジングに対応するキャビティを画成する金型装置に、前記端壁部に対応するキャビティの外端面に開口すると共に、同内端面に指向する環状ゲートを設け、この環状ゲートからキャビティに短繊維を複合させた合成樹脂を射出することにより、その合成樹脂を前記内端面に衝突させてからキャビティの各部に充填することを第1の特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、前記弁ハウジングの製造方法に使用される金型装置であって、前記弁ハウジングに対応するキャビティと、前記弁ハウジングの端壁部に対応するキャビティの外端面に開口すると共に、同内端面に指向する環状ゲートとを備えており、前記環状ゲートから前記キャビティに、短繊維を複合させた合成樹脂を射出することにより、その合成樹脂を前記内端面に衝突させてからキャビティの各部に充填することにより、前記弁ハウジングを製造することを第2の特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の第1及び第2の特徴によれば、短繊維を複合させた合成樹脂を環状ゲートからキャビティに射出するので、その合成樹脂は、環状の流れを形成しながら前記端壁部に対応するキャビティの内端面に衝突して、円盤状に広がり、次いで円筒状の流れを形成しながら、キャビティに充填されることになり、成形される弁ハウジングにウエルドラインが発生することを防ぐことができる。したがって、この弁ハウジングの開口端部の内周面への弁座部材の圧入代を充分に設定して、その圧入荷重を高めることが可能となり、弁ハウジングに弁座部材を強固に圧入結合することができ、これにより、一旦調整した調圧ばねのセット荷重が外乱等により狂わされるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の圧力調整弁を備える燃料供給モジュールを、自動二輪車の燃料タンクへの取り付け状態で示す縦断面図である。(第1の実施の形態)
図2図2図1の2部拡大図である。(第1の実施の形態)
図3図3は弁ハウジングの射出成形説明図である。(第1の実施の形態)
【符号の説明】
【0010】
R・・・・・圧力調整弁
36・・・・弁ハウジング
36a・・・円筒部
36b・・・端壁部
37・・・・高圧ポート
38・・・・弁座
39・・・・弁座部材
40・・・・調圧ばね
41・・・・弁体
61・・・・金型装置
64・・・・キャビティ
67・・・・環状ゲート
69・・・・短繊維
70・・・・合成樹脂
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【第1の実施の形態】
【0012】
先ず、図1において、自動二輪車に搭載される燃料タンクTの天井壁1には、燃料タンクT内の燃料をエンジンの燃料噴射弁Iに供給する燃料供給モジュールMが取り付けられる。この燃料供給モジュールMは、取り付けベース部材2と、この取り付けベース部材2の直下に、軸方向を上下に向けて配置される電動ポンプEpと、取り付けベース部材2に一体に形成される上部ポンプホルダ3Aと、この上部ポンプホルダ3Aに着脱可能に結合されると共に、この取り付けベース部材2と協働して電動ポンプEpを収容、保持する下部ポンプホルダ3Bと、電動ポンプEpの下端に取り付けられる燃料ストレーナ4とを備えている。
【0013】
燃料タンクTの天井壁1には、その内部に電動ポンプEpを挿入するための開口部5が設けられると共に、この開口部5を囲繞する取り付けリング6が固設される。この取り付けリング6には、その上面から突出する複数本の取り付けボルト7が固設されている。
【0014】
前記取り付けベース部材2は、上記開口部5を塞ぐように取り付けリング6の上面に重ねられ、そして複数の取り付けボルト7と、これらに螺締される複数のナット8とにより取り付けリング6に固定される。その際、取り付けベース部材2と燃料タンクTの天井壁1との間には、開口部5をシールする環状のシール部材9が介装される。
【0015】
この取り付けベース部材2は合成樹脂製であり、取り付けベース部材2の上部には、燃料タンクT外で水平方向に突出する燃料取り出し管12が一体成形され、この燃料取り出し管12の外端部には、エンジンの燃料噴射弁Iに連なる燃料供給導管33が接続されるようになっている。
【0016】
また取り付けベース部材2の下面に一体に成形される上部ポンプホルダ3Aは、燃料タンクT内に突出して電動ポンプEpの上半部外周面に嵌合するよう円筒状をなしている。下部ポンプホルダ3Bは、電動ポンプEpの下半部を収容、保持するよう、合成樹脂により円筒状に成形される。これら上部及び下部ポンプホルダ3A、3Bの対向端部には、係止爪(図示せず)が形成されており、これら係止爪の係合により両ポンプホルダ3A、3Bは相互に分離可能に結合され、電動ポンプEpは上部ポンプホルダ3A及び下部ポンプホルダ3B間に収容保持されることになる。
【0017】
電動ポンプEpは、ロータ20を鉛直方向に向けた電動モータEと、この電動モータEにより駆動される燃料ポンプPとからなっている。電動モータEは、内周面に周方向に並ぶ複数の磁石17aを固設した円筒状のステータ17と、このステータ17の上端にカシメ結合される上部軸受ブラケット18と、同下端部に結合される下部軸受ブラケット19と、上部及び下部軸受ブラケット18、19によりロータ軸20aが支承されるロータ20とから構成される。
【0018】
燃料ポンプPは、下部軸受ブラケット19下面との間にポンプ室22を画成すべく下部軸受ブラケット19と共にステータ17にカシメ結合されるポンプケース23と、ポンプ室22に回転自在に収容されてロータ軸20aの下端部に連結されるポンプインペラ24とで、ウエスコ型に構成される。
【0019】
ポンプケース23には、ポンプ室22に開口する吸入ポート25が設けられ、この吸入ポート25に、燃料タンクT内の底部に配置される前記燃料ストレーナ4が接続され、この燃料ストレーナ4は、ポンプケース23の下面に突設された支軸26に取り付けられる。また前記下部軸受ブラケット19には、ポンプ室22及びステータ17内を連通する吐出ポート27が設けられる。
【0020】
前記上部軸受ブラケット18には、その上方に突出すると共に、ステータ17内と連通した最終吐出ポート34を有する燃料吐出管30が一体に形成され、その内部には最終吐出ポート34への燃料の逆流を阻止する逆止弁31が設けられる。この燃料吐出管30は、取り付けベース部材2の下面に開口する嵌合孔29にシール部材32を介して嵌合される。
【0021】
取り付けベース部材2には、燃料取り出し管12及び燃料吐出管30の内部を走る一連のL字状の燃料通路28と、この燃料通路28の途中から分岐する調圧路35とが形成される。その調圧路35には、燃料通路28内の圧力を、前記燃料噴射弁Iからの燃料噴射に適した所定圧力に調整するための圧力調整弁Rが接続される。
【0022】
図2において、取り付けベース部材2には、中空部を保持孔44とする保持筒43が一体に形成され、保持孔44の天井面44aには前記調圧路35に連なる開口部35aが設けられる。圧力調整弁Rは、保持孔44に圧入される合成樹脂製の弁ハウジング36と、前記開口部35aに連通する高圧ポート37、及びこの高圧ポート37に連なる円錐状の弁座38を有して、弁ハウジング36に圧入される金属製の弁座部材39と、弁ハウジング36内で弁座38と協働して高圧ポート37を開閉する、鋼球よりなる弁体41と、この弁体41を弁座38と反対側で支承する傘形の弁リテーナ45と、この弁リテーナ45を介して弁体41を弁座38との着座方向に所定のセット荷重をもって付勢する調圧ばね40とで構成される。弁ハウジング36の下端壁には、弁リテーナ45の杆部45aを摺動自在に支持するガイド孔58と、弁ハウジング36内を低圧部、即ち燃料タンクT内に開放する開放ポート57とが設けられる。
【0023】
弁ハウジング36は合成樹脂製であって、射出成形により形成される成形品である。この弁ハウジング36は、中空の円筒部36a、及びこの円筒部36aの一端に一体に形成される端壁部36bよりなっており、その端壁部36bに前記ガイド孔58及び開放ポート57が設けられる。そして円筒部36a内に調圧ばね40、弁リテーナ45及び弁体41を収容した後、円筒部36aの開口端部内周に弁座部材39を圧入し、その圧入量を調節することにより、調圧ばね40のセット荷重が所定値に調整される。
【0024】
弁座部材39は、弁ハウジング36から上方へ突出する突出部39aを有しており、この突出部39aの外周に、前記保持孔44の内周面に密接するシール部材42が装着される。
【0025】
保持筒43及び弁ハウジング36間には、弁ハウジング36の保持孔44への嵌合深さを規制する嵌合規制手段52が設けられる。この嵌合規制手段52は、弁ハウジング36の、保持孔44への嵌合方向後方側の端部、即ち下端部の外周に形成されて等間隔に並ぶ複数(図示例では一対)の鍔部53と、保持筒43の下端部に形成され、上記鍔部53が当接することで弁ハウジング36の保持孔44への嵌合深さを規制するストッパ面54とで構成され、上記規制によれば、前記天井面44a及び弁ハウジング36間を、そこに間隙gが存在する非当接状態とするようになっている。
【0026】
再び図1において、前記燃料吐出管30は上部軸受ブラケット18の上端面片側に配置され、他方の片側には、電動モータEの給電端子47が突設される。一方、取り付けベース部材2には、その上面から突出する給電用カプラ48が一体に形成され、このカプラ48内の接続端子49と前記給電端子47とが中継導線50を介して接続される。
【0027】
前記圧力調整弁Rの下面は、前記給電端子47が突設される上部軸受ブラケット18の上面18a、即ち電動ポンプEpの上面に対向するように配置され、開放ポート57から排出される燃料が、給電端子47周りの上部軸受ブラケット18の上面18aに落下するようになっている。その落下した燃料を、燃料タンクT内に還流させるために、前記上部ポンプホルダ3Aの周壁に切欠き窓51が設けられる。
【0028】
而して、電動モータEを作動すれば、そのロータ軸20aによりポンプインペラ24が回転駆動される。これに伴い燃料タンクT内の燃料が燃料ストレーナ4で濾過されながら吸入ポート25からポンプ室22に吸入され、ポンプインペラ24により昇圧されて吐出ポート27からステータ17内へ圧送され、最終吐出ポート34から燃料吐出管30及び燃料取り出し管12、即ち燃料通路28を経て燃料噴射弁Iに供給される。
【0029】
その間、燃料通路28の圧力、即ち電動ポンプEpの吐出圧力は調圧路35を経て圧力調整弁Rの弁体41に作用するので、電動ポンプEpの吐出圧力が所定値を超えると、弁体41が調圧ばね40のセット荷重に抗して開弁し、燃料通路28内の燃料の一部が調圧路35、高圧ポート37及び弁座38を経て弁ハウジング36内に流出し、さらに開放ポート57から燃料タンクT内へと排出され、これに伴ない燃料通路28の圧力が所定値に戻ると、弁体41は調圧ばね40のセット荷重により再び閉弁する。こうして燃料通路28の圧力は所定値に自動的に調整されるので、燃料噴射弁Iからの燃料の噴射圧力が適正に制御される。
【0030】
さて、図3を参照しながら、前記弁ハウジング36の製造方法について説明する。
【0031】
弁ハウジング36の射出成形に使用する金型装置61は、上型62及び下型63よりなっており、これら上、下型62、63を閉じたとき、上、下型62、63間に、端壁部36bを上向きにした弁ハウジング36に対応するキャビティ64が画成されるようになっている。また上型62は、下型63に対向する第1型62aと、その上方にあって第1型62aと開閉する第2型62bとよりなっており、これら第1及び第2型62a、62b間には、ランナ通路65、及びこのランナ通路65の下流端に連なる分配室66が画成され、この分配室66から下方に延びて前記キャビティ64に開口する環状ゲート67が第1型62aに設けられる。その際、環状ゲート67は、弁ハウジング36の環状配列の前記開放ポート57の外側において、前記端壁部36bに対応するキャビティ64の外端面64aに開口すると共に、同内端面64bに指向するように配置される。
【0032】
而して、第1及び第2型62a、62bを閉じると共に、上、下型62、63を閉じて、ガラス等の強化短繊維69を複合させた溶融樹脂70をランナ通路65に注入し、分配室66を通して環状ゲート67からキャビティ64に射出すると、その溶融樹脂70は、環状の流れAを形成しながら前記端壁部36bに対応するキャビティ64の内端面64bに衝突して、溶融樹脂70の流動方向が、環状ゲート67からの溶融樹脂70の射出方向に対して直交する方向に変換されるとともに、溶融樹脂70の速度が調整されることにより、溶融樹脂70の流動面先端部が同心円を描くように円盤状に広がる。この円盤状に広がる溶融樹脂70は、その流動面先端部が、キャビティ64における円筒部36aを画成する部位に到達すると、キャビティ64に沿って下方(環状ゲート67からの溶融樹脂70の射出方向と同一の方向)に向かう円筒状の流れBを形成し、キャビティ64に充填される。この円筒状の流れBにより、キャビティ64に溶融樹脂70が全て充填されることにより、弁ハウジング36の円筒部36aが形成される。
【0033】
ここで、円筒状の流れBは、環状の流動面先端の位置(高さ)が、全周にわたって同一となっている。そして、この円筒状の流れBの流動面先端は、円筒部36aの開口端部を画成するキャビティ64の最終充填面(部)に、その全周にわたって同時に到達する。これにより、弁ハウジング36を画成するキャビティ64に、溶融樹脂70をウエルドラインを形成することなく、充填することができ。
【0034】
また、溶融樹脂70が、キャビティ64内の空気をまきこむこともないので、ボイドの発生を確実に防ぐことができる。さらに、円筒部36の開口端部内周面などの寸法精度の向上にも寄与する。
【0035】
上記溶融樹脂70が凝固した後、上、下型62、63を開けば、成形された弁ハウジング36を取り出すことができ、また上型62を構成する第1及び第2型62a、62bを開けば、環状ゲート67、分配室66及びランナ通路65を埋めた樹脂を取り出すことができる。
【0036】
かくして、合成樹脂70より成形された弁ハウジング36には、ウエルドラインが発生せず、弁ハウジング36の、特に拡径方向の強度を効果的に強化することができる。したがって、この弁ハウジング36の開口端部の内周面への前記弁座部材39の圧入代を充分に設定して、その圧入荷重を高めることが可能となり、弁ハウジング36に弁座部材39を強固に圧入結合することができる。これにより、一旦調整した調圧ばね40のセット荷重が外乱等により狂わされることを防ぐことができる。
【0037】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
図1
図2
図3