【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、船舶用内燃機関、バーナー、又はボイラーからの排ガス中のSOx及び粒子状物質を減少させるための洗浄システムであって、
第1スクラバ及び第1水循環タンクを備える第1スクラバ処理ループであって、
第1水循環タンクからの水が、第1スクラバ処理ループを循環するように構成されており、
第1スクラバが、内燃機関、バーナー、又はボイラーからの排ガス及び第1水循環タンクからの水を受け取るように構成されており、
第1水循環タンクからの水が、少なくとも部分的に、排ガスとの接触により、第1スクラバ内部で蒸発して水蒸気となるように構成されており、これにより、水蒸気及び排ガスが湿った排ガスを形成する、第1スクラバ処理ループと;
第2スクラバ及び第2水循環タンクを備える第2スクラバ処理ループであって、
第2水循環タンクからの水が、第2スクラバ処理ループを循環するように構成されており、
第1スクラバと第2スクラバとの間の連絡路により、湿った排ガスが第1スクラバから第2スクラバへ移動することが可能となっており、
第2スクラバが、第2循環タンクからの水を受け取るように構成されており、
第2循環タンクからの水が、第2スクラバ内部で、湿った排ガス中の水蒸気を少なくとも部分的に凝縮させるように構成されている、第2スクラバ処理ループと;
第1スクラバ処理ループと第2スクラバ処理ループとの間の連絡路であって、第2スクラバ処理ループから第1スクラバ処理ループへの水の逆流を可能にする連絡路と、
を備え、
少なくとも第2スクラバ処理ループへアルカリ剤を供給するための装置であって、洗浄システムへ供給されるアルカリ剤の全量の少なくとも60%、より好ましくは少なくとも90%が第2スクラバ処理ループへ供給される、アルカリ剤供給用装置をさらに備える、洗浄システムによって達成される。
【0012】
本発明に係る洗浄システムは、二つのセクション、即ち第1スクラバ処理ループと第2スクラバ処理ループとを有する。第1スクラバ処理ループは、高温の排ガスと接触するため温かく、これにより大量の水が蒸発する。従って、第1スクラバ処理ループは、蒸発ループとみなすことができる。第1スクラバ処理ループでは、以下で更に説明するように、排ガスが粒子状物質から洗浄される。
【0013】
第2スクラバ処理ループは、第1スクラバ処理ループと比較するとより低温であり、これにより蒸発水が少なくとも部分的に凝縮し、液体状態に戻る。蒸発により、塩及び粒子状物質等の不純物は分離されて残存するため、結果として第1スクラバ処理ループから第2スクラバ処理ループへの純水蒸気の正味の移動が起こる。「純、純粋な(pure)」との語は、本明細書中で使用する場合、硫酸塩及び粒子状物質を本質的に含まない、との意味で解釈されるべきものである。
【0014】
更に、洗浄システムへ供給されるアルカリ剤の全量の少なくとも60%、より好ましくは少なくとも90%が第2スクラバ処理ループに供給され、この第2スクラバ処理ループにより、第2スクラバへ供給される湿った温排ガス中に含まれているSOxが当該排ガスから洗い出され、酸化されて亜硫酸塩及び硫酸塩の水溶液となる。従って、第2スクラバ処理ループは、排ガスをSOxから洗浄する洗浄ループとみなすことができる。
【0015】
逆流により、上述のSOx洗浄により生じる汚水は、第1スクラバ処理ループに戻る。これにより、第1スクラバ処理において塩及び粒子状物質が蓄積し、濃度が上昇することになる。シミュレーションによると、塩及び粒子状物質の濃度が、第1スクラバ処理ループにおいて、最大で第2スクラバ処理ループの20倍まで大きくなるであろうことが示された。以下で更に説明するように、これは当該洗浄システムにおいて蒸発、濃縮、及び逆流が起こる結果である。
【0016】
第2スクラバ処理ループは、第2スクラバ処理ループを循環するように構成された水を冷却するように適合された第1熱交換器を備えることができる。
【0017】
当該洗浄システムは、第2スクラバにより受け取られるように構成された水の温度を0〜35℃の範囲で維持するように適合され得る。水をこの温度まで冷却するには、冷媒として例えば海水を使用する熱交換器を用いてもよい。海水の温度は地理及び時季に応じて変動するということが理解されるであろう。一般に、温度が低いほど、より多くの水が湿った排ガスから凝縮することになる。海水以外の冷媒を使用してもよいということが理解されるであろう。
【0018】
当該洗浄システムは、第1スクラバにより受け取られるように構成された水の温度を40〜70℃の範囲で維持するように適合され得る。この温度範囲は、第1スクラバ処理ループを循環する水が高温の排ガスと接触することによるバランス効果により得られるようになる。
【0019】
当該洗浄システムは、第2スクラバにより受け取られるように構成された水のpH値が6〜10の範囲、より好ましくは7〜8の範囲となるように、第2スクラバ処理ループへのアルカリ剤の供給を調節するように適合され得る。pH値がこの範囲内であれば、排ガスからの最適なSOx除去が可能となる。従来式の(例えば特許文献1に開示されているような)スクラバにおける、流入時のpH値が高い状態、例えば流入時のpH値が9以上の状態での稼働は、結果としてアルカリ剤も排出用水も過度に消費することになり、許容可能なpH排出制限を超過してしまうおそれがあるため、望ましくない。本発明によると、第2スクラバの段階で過剰なアルカリ性成分の排出が起こらず、このような過剰なアルカリ性成分は、第1スクラバの段階において消費される。
【0020】
当該洗浄システムは、第1スクラバにより受け取られるように構成された水のpH値を2〜8の範囲、より好ましくは2〜4の範囲で維持するように適合され得る。pH値が低いと、洗浄システムにおけるアルカリ剤の消費量を減少させることが可能になる。これについて、以下で更に説明する。
【0021】
一般に、スクラバにおけるスクラブ効果は、スクラブ用水のアルカリ度により決定される。第1スクラバ処理ループの目的は、主として、第2スクラバ処理ループへ移動させる湿った排ガスを得るために水を蒸発させることである。第2スクラバ処理ループでは、排ガスの湿気の凝縮と併せてSOxの洗浄が行われる。第1スクラバ処理ループにおける水のpH値は、蒸発プロセスには大きな影響を及ぼさないため、できる限り低く保つことが可能である。しかしながら、通常の排出基準はpH値6.5超とされているため、排出前にpH値の調節が必要となる場合があるということは理解されるべきである。
【0022】
第2スクラバループから逆流するアルカリ性の水は、第1スクラバへ供給される排ガス中に含まれているSOxの中和にはそれほど寄与せず、第1スクラバ処理ループにおける水と接触する際に希釈されることになる。一般に、第1スクラバ処理ループにおいて、水にアルカリ剤を添加する必要はない。
【0023】
当該洗浄システムは、第1スクラバ処理ループと連通する第1セパレータユニットを更に備えることができる。第1セパレータユニットは、第1スクラバ処理ループにおいて水の中で高濃度となった粒子状物質を除去するために使用される。
【0024】
当該洗浄システムは、第1セパレータユニットからの残余水が供給されるように適合された水洗浄装置であって、残余水に含まれる塩を沈殿させるために残余水を冷却するように適合された第2熱交換器と、冷却残余水から沈殿した塩を分離するように適合された第2セパレータユニットと、を備える水洗浄装置を更に備えることができる。沈殿した塩から洗浄された冷却残余水は、第2スクラバ処理ループに戻すことができる。
【0025】
別の態様によると、本発明は、
洗浄システムを使用することにより、船舶用内燃機関、バーナー、又はボイラーからの排ガス中のSOx及び粒子状物質を減少させる方法であって、
当該洗浄システムが、
第1スクラバ及び第1水循環タンクを備える第1スクラバ処理ループと;
第2スクラバ及び第2水循環タンクを備える第2スクラバ処理ループと;
第1スクラバと第2スクラバとの間の連絡路と;
第1スクラバ処理ループと第2スクラバ処理ループとの間の連絡路と;
少なくとも第2スクラバ処理ループへアルカリ剤を供給するための装置と;
を備えており、
−第1スクラバ処理ループにおいて、第1水循環タンクからの水を循環させるステップと;
−第2スクラバ処理ループにおいて、第2水循環タンクからの水を循環させるステップと;
−洗浄システムへ供給されるアルカリ剤の全量の少なくとも60%、より好ましくは少なくとも90%を、第2スクラバ処理ループへ供給するステップと;
−第1スクラバにおいて、内燃機関、バーナー、又はボイラーからの排ガス及び第1水循環タンクからの水を受け取るステップであって、第1水循環タンクからの水が、少なくとも部分的に、排ガスとの接触により、第1スクラバ内部で蒸発して水蒸気となり、これにより、水蒸気及び排ガスが湿った排ガスを形成するステップと;
−湿った排ガスを第1スクラバから第2スクラバへ移動させるステップと;
−第2スクラバにおいて、第2循環タンクからの水を受け取るステップであって、第2循環タンクからの水が、第2スクラバ内部で、湿った排ガス中の水蒸気を少なくとも部分的に凝縮させ、これにより、排ガス中に含まれているSOxが酸化されて硫酸塩になるステップと;
−第2スクラバ処理ループから第1スクラバ処理ループへ水を逆流させるステップと、
を含む方法に関するものである。
【0026】
当該方法は、上述の洗浄システムと本質的に同じ構成を有する洗浄システムに基づくものである。従って、同じ利点が得られる。必要以上の繰り返しを避けるために、上記のセクションを参照されたい。
【0027】
更に別の態様によると、本発明は、船舶用内燃機関、バーナー、又はボイラーからの排ガス中のSO
X及び粒子状物質を減少させることを目的とする、船上での上述の洗浄システムの使用に関するものである。
【0028】
更なる目的及び特徴が、詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0029】
以下、本発明の一実施形態について、一例として、添付の図面を参照して、より詳細に説明する。