【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 CES 2016 JANUARY 6−9 Las Vegas,Nevada(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー、2016年1月6日〜9日 米国 ネバダ州、ラス ベガス
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
[定義]
本明細書において、パワー・オン状態とは、CPUがインストラクションを実行するアクティブ状態をいい、ACPIが規定するC0ステートに相当する。パワー・オン状態での周辺デバイスは、ホストまたはそれぞれの周辺デバイスのパワー・マネジメント・ポリシーに基づいて、最大電力での動作、省電力状態での動作または停止のいずれかの状態にある。スリープ状態とは、CPUがインストラクションを実行しないでC0ステートよりも消費電力が小さいアイドル状態に遷移している状態で、ACPIが規定するCnステートに相当する。スリープ状態での周辺デバイスは、パワー・オン状態よりも消費電力が小さい状態に遷移している。
【0017】
スリープ状態は、CPUがC0ステートとCnステートの間を周期的に遷移して、メールやデータの受信などの限られた処理をする場合も含む。スリープ状態は、Bluetooth(BT:登録商標)モジュールがウェイクアップ・コマンドを受け取ったときにCPUをアクティブするために必要なウェイクアップ回路に電力が供給されている状態をいう。ウェイク・コマンドは、PCをスリープ状態からパワー・オン状態に遷移させるための信号またはデータに相当し、ウェイク・イベントということもできる。
【0018】
ウェイク・コマンドは直接的または間接的にCPUをCnステートからC0ステートに遷移させる。使用状態は、コンピュータがパワー・オン状態である場合に加えて、スリープ状態のコンピュータをユーザがただちにウェイクアップさせることができる状態に相当する。不使用状態は、コンピュータがスリープ状態に遷移し、かつただちにウェイクアップさせる状況にない状態に相当する。
【0019】
[携帯式電子機器]
図1は携帯式電子機器の一例であるラップトップ型のパーソナル・コンピュータ(PC)100の斜視図である。機械式のキーボード109およびタッチ・パッド111を表面に実装するシステム筐体105の端部に、支持部材107がヒンジ機構107a、107bで結合している。支持部材107にはタッチ・スクリーン103を収納するディスプレイ筐体101が着脱可能なように装着されている。
【0020】
ディスプレイ筐体101とシステム筐体105は、ヒンジ機構107a、107bを通過するリード線で電気的に接続されている。システム筐体105には、平面に対してX−Y軸を定義し、X−Y平面に垂直にZ軸を定義している。ディスプレイ筐体101にも同様に、平面に対してX−Y軸を定義し、X−Y平面に垂直にZ軸を定義している。
【0021】
システム筐体105とディスプレイ筐体101に定義した直交座標は、加速度センサが検出する筐体の姿勢に関連付けられる。システム筐体105の側面には電源ボタン117が取り付けられている。システム筐体105の側面には、長辺105aと短辺105bを定義し、ディスプレイ筐体101の側面には、長辺101aと短辺101bを定義している。ディスプレイ筐体101の表面とシステム筐体105の表面が形成する角度として開閉角度θを定義している。
【0022】
図2は、支持部材107から取り外されたディスプレイ筐体101が単独で存在する様子を示している。このときディスプレイ筐体101は、タブレット端末として動作しタッチ・スクリーン103だけが入力デバイスとなる。ディスプレイ筐体101が指示部材107に装着されているときにユーザは、ヒンジ機構107a、107bを回動させてPC100の姿勢を変化させ、さまざま使用モードで使用することができる。
【0023】
[PCの使用モード]
図3は、PC100の使用モードを説明するための図である。本発明が適用できる携帯式電子機器は、通常のタブレット端末のように単一の使用モードを備えているものでもよいが、以下においては、複数の使用モードを備えるPC100を例示して説明する。PC100は、ディスプレイ筐体101を開閉角度θが0度から360度までの間のいずれかまで回動させて、クローズ・モード、ラップトップ・モード、テント・モード、スタンド・モード、およびタブレット・モードのいずれかの使用モードで使用できる。
【0024】
図3(A)は、開閉角度θが0度に対応するクローズ・モードを示している。
図3(B)〜
図3(D)は、開閉角度θを所定の範囲にし、かつ、筐体の天地方向を変えて設定した3つの使用モードを示している。
図3(B)は
図1の状態に相当するラップトップ・モードを示し、
図3(C)はテント・モードを示し、
図3(D)はスタンド・モードを示している。
図3(E)は、開閉角度θが360度のタブレット・モードを示している。
【0025】
一例においてPC100は、開閉センサ223(
図5)がクローズ・モードを検出したときにサスペンド状態に遷移し、サスペンド状態からウェイクアップするときは電源ボタン117を操作するため、意図しないウェイクアップは発生しない。一例においてラップトップ・モードでは、キーボード109およびタッチ・スクリーン103がイネーブルになる。一例においてテント・モード、スタンド・モードおよびタブレット・モードでは、ワイヤレス・キーボード300(
図6)からの入力およびタッチ・スクリーン103からの入力が可能になる。
【0026】
ワイヤレス・キーボード300を使用するときは、通常、テント・モードまたはスタンド・モードにする。タブレット・モードではワイヤレス・キーボード300を使用しなくてもよいが、スリープ状態のPC100をテント・モードまたはスタンド・モードにしてから、ワイヤレス・キーボード300を操作するとただちにウェイクアップできるようにするために、本実施の形態ではタブレット・モードでもワイヤレス・キーボード300をイネーブルに設定する。
図4は、テント・モードのPC100にBTモジュール209で接続したワイヤレス・キーボード300から入力する様子を示している。
【0027】
[PCの構成]
図5は、ディスプレイ筐体101が装着されたPC100の概略のハードウェア構成を説明するための機能ブロック図である。I/Oコントローラ207には、CPU201、ビデオ・コントローラ205、BTモジュール209、ファームウェアROM210、HDD211、およびエンベデッド・コントローラ(EC)213が接続されている。
【0028】
I/Oコントローラ207は、BTモジュール209の動作を制御するBTホスト207aを含んでいる。BTホスト207aは、BTモジュール209からウェイク・コマンドを受け取ったときにCPU201をアクティブ状態に遷移させる。CPU201には、システム・メモリ203が接続され、ビデオ・コントローラ205にはタッチ・スクリーン103を構成するフラット・パネル型のディスプレイ103bが接続されている。
【0029】
BTモジュール209は、近距離無線通信を実現するハードウェアの一例であるが、本発明はワイヤレス・キーボード300との通信手段を近距離無線通信に限定する必要は無く、無線LANなどの他の規格の無線通信方式を採用してもよい。さらに、本発明はPC100とワイヤレス・キーボード300を有線で接続する場合も含む。ファームウェアROM210は、システム・ファームウェア251を格納する。システム・ファームウェア251は、本実施の形態の一態様においてスリープ状態の間にワイヤレス・キーボード300が出力したウェイク・コマンドを処理する。
【0030】
HDD211は、アプリケーション、OS、およびデバイス・ドライバなどのCPU201が実行するプログラムを格納する。HDD211はさらに、スリープ状態の間にワイヤレス・キーボード300が出力したウェイク・コマンドを処理するウェイクアップ・モジュール253を格納する。EC213は、CPU、ROM、RAM、およびプログラマブルなロジック回路などで構成されたマイクロ・コンピュータである。
【0031】
EC213には、3軸の加速度センサ217、219、3軸のジャイロ・センサ221、開閉センサ223、タッチ・スクリーン103を構成するタッチパネル103a、キーボード109、タッチ・パッド111、電源ボタン117、DC/DCコンバータ227の信号線および電源ユニット229の信号線などが接続されている。EC213は、スリープ状態の間も電力が供給されて、ウェイク・コマンドを処理するための動作をする。
【0032】
加速度センサ217はシステム筐体105に取り付けられ、加速度センサ219はディスプレイ筐体101に取り付けられている。加速度センサ217、219およびジャイロ・センサ221はそれぞれシステム筐体105およびディスプレイ筐体101に定義した3軸方向の加速度および角加速度を検出する。加速度センサ217、219およびジャイロ・センサ221はまた、筐体に発生する揺動を検出する。ここに揺動は、静止に対立する概念で運動する物体の振動数、変位、速度または加速度などの物理量で検出できる。揺動はまた、回転する物体の角速度または角加速度の物理量で検出できる。
【0033】
開閉センサ223は、ディスプレイ筐体101が閉じられたときに動作する。開閉センサ223は、相手方の磁石で反応するホール素子を利用したホール・センサで構成することができるが、機械スイッチのような他の方式のセンサを利用することもできる。EC213は、加速度センサ217、219と開閉センサ223の出力から使用モードを特定することができる。
【0034】
DC/DCコンバータ227は、EC213の指示で動作して各デバイスに所定の電圧の電力を供給する。電源ユニット229は、電池、充電器、AC/DCアダプタなどを含み、DC/DCコンバータ227に電力を供給する。EC213はROMにファームウェア213aを格納する。EC213は、制御レジスタ213bとタイマ213cを含む。
【0035】
EC213のMPUは、ファームウェア213aを実行して、加速度センサ217、219、およびジャイロ・センサ221の出力に基づいて、PC100の使用状態または不使用状態を認識する。EC213は、制御レジスタ213bに対して、不使用状態を認識したときは不使用フラグを設定し、使用状態を認識したときは不使用フラグを解除する。EC213は、加速度センサ217、219および開閉センサ223の出力から認識した使用モードに対応するモード・フラグを制御レジスタ213bに設定する。
【0036】
[ワイヤレス・キーボードの構成]
図6は、ワイヤレス・キーボード300の平面図で、
図7は概略の機能ブロック図である。ワイヤレス・キーボード300の表面には、キーの中央にトラック・ポイント301を配置し、さらに、タッチ・パッド303および電源ボタン302を配置している。トラック・ポイント301は、頂部を押圧してマウス・カーソルの移動や画面のスクロール操作をするために使用する。PC100がタブレット・モードの間もワイヤレス・キーボード300はイネーブルに設定されており、ユーザがトラック・ポイント301、タッチ・パッド303またはいずれかのキーを操作したときに、スリープ状態から短時間でウェイクアップする。
【0037】
ワイヤレス・キーボード300は薄型に構成されているため、タブレット・モードのPC100と一緒に鞄に入れたり重ねて保持されたりすることがある。トラック・ポイント301は頂部がキーの表面より突き出ているため、その際に不必要な入力が行われることがある。ただし、ウェイク・コマンドは任意のキーに対する不必要な入力でも生成されるため、ワイヤレス・キーボード300がトラック・ポイント301を含むことは本発明にとって必須ではない。同様にタッチ・パッド303および電源ボタン302も必須ではない。ワイヤレス・キーボード300には、筐体の端部に姿勢を判断するための長辺300aと短辺300bを定義している。
【0038】
図7において、キーボード・コントローラ307には、トラック・ポイント301、タッチ・パッド303、キー・マトリクス305およびBTモジュール309が接続されている。BTモジュール309は、PC100のBTモジュール209と通信することができる。BTモジュール309は、キーボード・コントローラ307が出力するキー・コードや座標データをPC100に送るとともに、PC100から受け取った制御コマンドをキーボード・コントローラ307に送る。
【0039】
キーボード・コントローラ307は、制御コマンドに応じてイネーブルまたはディスエーブルに遷移する。キーボード・コントローラ307は、制御コマンドを受け取ったときにスイッチ311をオフ状態に制御して、電源を停止することができる。電源ボタン302は、ユーザがオフ状態のスイッチ311をオン状態にするために操作する。バッテリィ313は、BTモジュール309とスイッチ311を経由してキーボード・コントローラ307に電力を供給する。BTモジュール309は、スイッチ311がオフ状態でも動作してPC100とのペアリングを維持することができる。
【0040】
[ウェイクアップの第1の抑制方法]
図8は、PC100のウェイクアップを抑制する動作手順を示すフローチャートである。ブロック401でBTモジュール209、309はキーを交換して相互認証を行ってペアリングを終了している。以後、以下の手順を実行する間、ペアリングは維持される。PC100は、所定時間アイドル状態が続くとスリープ状態に遷移する。制御レジスタ213bには、現在の使用モードを示すモード・フラグが設定されている。
【0041】
ブロック403で、ワイヤレス・キーボード300は、スイッチ311がオン状態でキーボード・コントローラ307が動作している。ブロック405でPC100がスリープ状態に遷移する。スリープ状態に遷移する典型的な例として、ユーザがPC100を一時的に使用していない状態と、タブレット・モードのPC100とワイヤレス・キーボード300を重ねて鞄に入れて持ち運んでいる状態を想定することができる。この時点でトラック・ポイント301、タッチ・パッド303またはキーから入力があると、BTモジュール309、209を通じてウェイク・コマンドが送られスリープ状態のPC100はウェイクアップする。
【0042】
ブロック407で、ワイヤレス・キーボード300がウェイク・コマンドを出力すると、BTホスト210がCPU201をウェイクアップさせる。鞄に入っている場合のようにユーザがPC100を使用しない場合はやがてスリープ状態に遷移するが、鞄の中のワイヤレス・キーボード300は再度ウェイク・コマンドを出力する可能性が高い。ウェイク・コマンドの出力が頻発すると、PC100はパワー・オン状態を継続するか、スリープ状態とパワー・オン状態の間のパワー・ステートの変化を頻発させる。
【0043】
ブロック409でCPU201はウェイクアップ・モジュール253を実行する。ウェイク・コマンドは、タッチパネル103aに対する操作でも生成される。ブロック410でウェイクアップ・モジュール253は、ウェイク・コマンドの出力元を調べて、ワイヤレス・キーボード300が出力元のときだけブロック411に移行する。ブロック411でウェイクアップ・モジュール253は、制御レジスタ213bにタブレット・モードを示すモード・フラグが設定されている場合だけブロック413に移行する。
【0044】
ブロック413でウェイクアップ・モジュール253は、制御レジスタ213bにPC100の不使用状態を示す不使用フラグが設定されているときだけブロック415に移行する。不使用フラグの設定方法は、
図9を参照して説明する。ブロック410、411、413において、ウェイク・コマンドをワイヤレス・キーボード300以外のデバイスが生成したとき、テント・モードまたはスタンド・モードのときおよび不使用フラグが解除されているときは、ブロック405に戻ってスリープ状態のPC100がウェイク・コマンドを受け取るとウェイクアップする。ブロック415でウェイクアップ・モジュール253が、BTモジュール209を通じてキーボード300を停止させるための制御コマンドを送ると、キーボード・コントローラ307はスイッチ311をオフ状態に制御する。
【0045】
キーボード・コントローラ307が動作を停止すると、それ以降、トラック・ポイント301、タッチ・パッド303またはキーから入力があってもキー・コードや座標データを出力しない。したがって、PC100がワイヤレス・キーボード300に対する誤入力でウェイクアップすることがなくなる。バッテリィ313は、BTモジュール309にだけ電力を供給するため、キーボード・コントローラ307の消費電力を低減することができる。キーボード・コントローラ307は、スイッチ311をオフ状態に遷移する前に、スイッチ311をオフ状態に制御することをPC100に通知する。
【0046】
ブロック417でワイヤレス・キーボード300が動作を停止したことを認識したウェイクアップ・モジュール253は、I/Oコントローラ207を通じてPC100をスリープ状態に遷移させる。ブロック419でユーザはタブレット・モードのPC100の使用を意図する。停止しているワイヤレス・キーボード300は、キーやトラック・ポイント301に対する操作で起動できないので、ユーザはPC100電源ボタン117やタッチパネル103aを操作してPC100をパワー・オン状態に遷移させる。
【0047】
ブロック421で、ユーザが電源ボタン302を操作してキーボード・コントローラ307に電力を供給することで、ワイヤレス・キーボード300からの入力が可能になる。ウェイクアップ・モジュール253がキーボード300に制御コマンドを送って必要のないウェイクアップを抑制する例を説明したが、ウェイク・コマンドを受け取ったときにシステム・ファームウェア251が、制御レジスタ213bにアクセスしてワイヤレス・キーボード300の動作を停止するようにしてもよい。
【0048】
上記の手順によれば、タブレット・モードのPC100とワイヤレス・キーボード300を鞄に入れて持ち運んでいる間に、意図しないウェイク・コマンドでPC100がウェイクアップしてバッテリィが消耗することを防ぐことができる。また不使用状態と判断するまでは、スリープ状態のPC100を、タブレット・モードからテント・モードまたはスタンド・モードにしたときに、ワイヤレス・キーボード300を操作するだけで、ウェイクアップさせることができる。さらに、PC100が不使用状態のためにワイヤレス・キーボード300を使用する可能性がないときに、電源ボタン302を操作しないでもワイヤレス・キーボード300の消費電力を低減することができる。
【0049】
図9は、
図8のブロック413の手順を説明するためのフローチャートである。ブロック511でPC100は、スリープ状態である。ブロック513でファームウェア213aは、一定時間観測した加速度センサ217、219またはジャイロ・センサ221のいずれかの検出軸の出力から所定の範囲の揺動を認識したときにブロック521に移行し、揺動を認識しないときにブロック515に移行する。
【0050】
ユーザがタブレット・モードのPC100を手に持って使用している場合は、筐体のいずれかの辺が水平に近いと想定できる。ブロック515でファームウェア213aは、一定時間観測した加速度センサ217または219の3軸の出力からPC100の筐体の長辺105a、101aおよび短辺105b、101bのいずれかが、水平に対して所定の範囲にあるか否かを判断する。
【0051】
水平に対する所定の範囲の角度から筐体の長辺105a、101aまたは短辺105b、101bが水平と見なせるときは、ブロック517でファームウェア213aは制御レジスタ213bの不使用フラグを解除する。いずれの辺も水平と見なせないときはブロック519でファームウェア213aは、制御レジスタ213bに不使用フラグを設定する。ブロック519は、ユーザがタブレット・モードのPC100を長辺105aおよび短辺105bが傾斜した状態で放置している状態を想定することができる。ブロック521でファームウェア213aは、加速度センサ217、219の出力から認識したPC100の姿勢に依存して人間の二足歩行がもたらす揺動が最も強く表れるジャイロ・センサ221の検出軸を選択する。
【0052】
ファームウェア213aは、一定時間観測したジャイロ・センサ221の出力波形を分析してPC100を抱えた、または鞄に入れたユーザが歩行していると認識したときにブロック523で制御レジスタ213bに不使用フラグを設定し、歩行していないと認識したときにブロック525で不使用フラグを解除する。ブロック525は、揺動を与える電車でタブレット・モードのPC100が使用されている状態を想定することができる。
【0053】
本発明は、ディスプレイ筐体101が支持部材107から取り外されてタブレット端末として動作する場合にも適用することができる。あるいは、システム筐体と結合しない専用のタブレット端末に適用することもできる。当業者は、その場合のハードウェアの構成を
図5から理解することが可能である。
図8、
図9の手順は本発明の一例を説明するためのもので、本発明の実現が可能な範囲で順番を入れ替えたり、不要な手順を省略したりすることができる。
【0054】
[ウェイクアップの第2の抑制方法]
第1の抑制方法では、PC100とワイヤレス・キーボード300の協働によりウェイクアップを抑制したが、本発明はPC100だけでウェイクアップを抑制することもできる。第2の抑制方法を実現するウェイクアップ回路の一例を
図10に示す。
図10では
図5と同一要素に同一の参照番号を付して説明を省略する。I/Oコントローラ207は、BTホスト207aとウェイクアップ・コントローラ271で構成するウェイクアップ回路270を含んでいる。
【0055】
BTホスト207aは、BTモジュール209からウェイク・コマンドのパケットを受け取ったときにウェイクアップ・コントローラ271を通じてCPU201をウェイクアップさせる。ウェイクアップ・コントローラ271は、BTホスト210の他にキーボード101およびタッチパネル103aからのウェイク・コマンドでもCPU201をウェイクアップさせる。
【0056】
PC100は、ワイヤレス・キーボード300以外のBTデバイスとも通信する。ウェイクアップ回路270は、BTモジュール209およびBTホスト207aが他のBTデバイスと通信する機能は停止させないで、ウェイクアップ・コントローラ271がワイヤレス・キーボード300から受け取ったウェイク・コマンドを認識する。
【0057】
このときの動作手順は、
図8のブロック415、421だけが変更になる。変更したブロック415では、ウェイクアップ・コントローラ271がワイヤレス・キーボード300からのウェイク・コマンドを無視する。また変更したブロック421では、ウェイクアップ・コントローラ271がワイヤレス・キーボード300から受け取ったウェイク・コマンドの処理を復帰させる。したがって、ワイヤレス・キーボード300は、PC100の使用状態または不使用状態とは無関係にウェイク・コマンドを送るが、PC100は不使用状態のときにウェイク・コマンドを受け取ってもウェイクアップしない。
【0058】
[ウェイクアップの第3の抑制方法]
図8の手順では、ウェイク・コマンドの種類の判断、使用モードの判断および使用状態の判断のためにウェイク・コマンドを受け取ったときに一度ウェイクアップしたが、本発明は、ウェイクアップしないで実現することもできる。第3の抑制方法を実現するウェイクアップ回路の一例を
図11に示す。
図11では
図5と同一要素に同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0059】
BTモジュール209とI/Oコントローラ207の間にウェイクアップ・コントローラ281が挿入されている。ウェイクアップ・コントローラ281は、BTモジュール209またはI/Oコントローラ207の中に組み込むこともできる。ウェイクアップ・コントローラ281には、EC213が含むファームウェア213a、制御レジスタ213bおよびタイマ213cの機能が組み込まれ、かつ、加速度センサ217、219、ジャイロ・センサ221、および開閉センサ223が接続されている。
【0060】
ウェイクアップ・コントローラ281は、PC100がスリープ状態のときも電源が供給されてウェイク・コマンドの種類の判断、使用モードの判断および使用状態の使用モードの判断をする。ファームウェア213aはPC100が不使用状態のときに、BTモジュール209から受け取ったパケットからワイヤレス・キーボード300のウェイク・コマンドを示すパケットを認識したときに、I/Oコントローラ207への当該パケットの転送を停止する。
【0061】
このときのPC100の動作手順を
図12に示す。ブロック701でPC100がパワー・オン状態に遷移している。ブロック703でユーザによる電源ボタン302の操作でワイヤレス・キーボード300が動作している。ブロック705でPC100がスリープ状態に遷移する。ブロック707でワイヤレス・キーボード300がウェイク・コマンドを出力する。ブロック709でウェイクアップ・コントローラ281は、ウェイク・コマンドの出力源を判断する。
【0062】
ウェイク・コマンドをワイヤレス・キーボード300以外のデバイスが出力したときは、ブロック721でPC100がウェイクアップする。ウェイク・コマンドをワイヤレス・キーボード300が出力したときは、ブロック711でファームウェア213aは、
図8のブロック411と同じ手順で使用モードを判断する。使用モードがタブレット・モード以外のときはブロック721でPC100はウェイクアップする。タブレット・モードのときはブロック713でウェイクアップ・コントローラ281は、
図8のブロック413および
図9と同じ手順でPC100の使用状態を判断する。PC100は、使用状態のときはブロック721でウェイクアップし、不使用状態のときはブロック715でウェイク・コマンドを無視してスリープ状態を維持する。
【0063】
図13は、PC100の他の動作手順を示すフローチャートである。
図13の手順において
図12と同一の要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。ブロック751では、ワイヤレス・キーボード300から受け取ったウェイク・コマンドでPC100がウェイクアップする。ブロック713で使用状態を判断したウェイクアップ・コントローラ281がブロック753でワイヤレス・キーボード300にBTモジュール209を通じてキーボード300を停止させるための制御コマンドを送ると、キーボード・コントローラ307はスイッチ311をオフ状態に制御する。
【0064】
その後、ワイヤレス・キーボード300からの偶発的なウェイク・コマンドの発行が停止するため、やがてブロック755でアイドル状態が継続したPC100はスリープ状態に移行する。ブロック701に戻ってユーザが電源ボタン117を操作するとPC100は起動し、ブロック703で電源ボタン302を操作するとワイヤレス・キーボード300が動作する。
【0065】
[ウェイクアップの第4の抑制方法]
本発明は、ワイヤレス・キーボード300だけでPC100のウェイクアップを抑制することもできる。
図14は第4の抑制方法を実現するワイヤレス・キーボード600の概略の機能ブロック図である。ワイヤレス・キーボード600は、
図7に示したワイヤレス・キーボード300に
図5に示したEC213、加速度センサ217、219、およびジャイロ・センサ221を追加して構成している。
図5および
図7と同一の要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0066】
EC213は、スイッチ311の制御端子に接続されている。EC213およびBTモジュール309には、バッテリィ313から常時電源が供給されるが、キーボード・コントローラ307には、スイッチ311を経由して電源が供給される。ワイヤレス・キーボード600は、使用状態で筐体の長辺300aが水平に近くなる。また、不使用状態では、歩行に特有の揺動が発生する。ワイヤレス・キーボード600は、PC100と一緒に鞄に入れて運ばれることがある。
【0067】
EC213は加速度センサ217、219、およびジャイロ・センサ221の出力により
図9の手順でワイヤレス・キーボード600が不使用状態だと判断したときにスイッチ311をオフ状態に制御する。PC100はワイヤレス・キーボード300が使用状態のときだけウェイク・コマンドを受け取ってウェイクアップする。その後ワイヤレス・キーボード600を使用するときはユーザが電源ボタン302を操作する。なお、EC213は、キーボード・コントローラ307の停止に代えてまたはキーボード・コントローラ307の停止に加えてBTモジュール309をディスエーブルに設定するようにしてもよい。
【0068】
[待受モードの制御への適用]
これまで、使用状態を判断してPC100のウェイクアップを抑制する方法について説明したが、本発明は、PCとスマートフォンの間で行う携帯電話の待受モードの切換制御に適用することもできる。
図15は、スマートフォン803とBTモジュール801dで通信してスマートフォン803が受信した電話の待受が可能なラップトップ型のPC801の構成を説明するための図である。
【0069】
PC801とスマートフォン803は、いずれか一方が待受モードになってスマートフォンに対する電話の受信および通話をすることができる。PC801を使用している間は、PC801を待受モードにし、PC801を使用しないときはスマートフォン803を待受モードにすると都合がよい。PC801を待受モードに設定すると、スマートフォン803を保持するユーザが、PC801を鞄に入れて移動するような場合に、その都度スマートフォン803を待受モードに切り換える必要があるが、設定は面倒で忘れることがある。
【0070】
切り換えを忘れると、ユーザは電話の受信に気づかないことがある。PC801が使用されないときのスリープ状態への遷移のタイミングでPC801が切換コマンドを送ってスマートフォン803を待受モードに設定する方法があるが、一時的な作業の中断でスリープ状態に移行するような場合はPC801での待受モードを継続する方が便利である。
【0071】
PC801は、ハードウェアとソフトウェアの協働により構成した待受設定部801a、切換コマンド出力部801bおよび使用状態判断部801cと、BTモジュール801dを含む。PC801とスマートフォン803の動作を
図16のフローチャートに基づいて説明する。
図16の手順では、PC801が不使用状態を認識してスマートフォン803に切換コマンドを送る。
【0072】
ブロック901でPC801とスマートフォン803がパワー・オン状態で、BTモジュール801dがスマートフォン803とペアリングを維持している。ブロック903でスマートフォン803が非待受モードで動作し、ブロック905でPC801が待受モードで動作している。ブロック907でPC100がスリープ状態に遷移する。
【0073】
ブロック911で使用状態判断部801cが、加速度センサおよびジャイロ・センサの出力から
図9の手順でPC801が使用状態または不使用状態のいずれであるかを判断する。PC100が使用状態と判断したときは、待受モードを維持する。したがって、PC801がスリープ状態に遷移していても、スマートフォン803への電話呼び出しは、BTモジュール801dを通じてPC801に転送される。
【0074】
ブロック913で使用状態判断部801cの出力からPC801が使用状態と判断した待受設定部801aは、切換コマンド出力部801bを通じてスマートフォン803に切換コマンドを送ると、スマートフォン803が待受モードで動作する。ブロック915で待受設定部801aは、PC801を非待受モードに設定する。使用状態判断部801cは、スリープ状態の間、PC100の使用状態を判断する。ブロック917でPC801が使用状態と判断したときは、ブロック903に移行する。
【0075】
ブロック903で待受設定部801aは、切換コマンド出力部801bを通じてスマートフォン803に切換コマンドを送ると、スマートフォン803が非待受モードで動作する。ブロック905で待受設定部801aは、PC801を待受モードに設定する。ブロック919でPC801がパワー・オン状態に遷移したときはブロック903に移行してブロック917からの移行と同様に動作する。このような手順によれば、スマートフォン803を保持するユーザが、机上に置かれたPC801を使用している間に一時的に操作を中断したことによりスリープ状態に遷移しても、PC801で電話を受信することができる。
【0076】
他方で、スマートフォン803を保持するユーザがスリープ状態に遷移したPC801を持ち運んでいるような場合は、使用状態判断部801cがPC801の不使用状態を判断してスマートフォン803を待受モードに移行させる。したがって、スマートフォン803への待受モードへの切り換えを忘れて鞄に入れたPC801が電話を受信するようなことがなくなる。
【0077】
PC801が使用状態の判断をして待受モードの切換制御をする方法を説明したが、本発明は、スマートフォン803がPC801の使用状態を推定して待受モードを切り換えることができる。このときの手順を
図17に基づいて説明する。
図17は、
図16と同一の要素には同一の参照番号を付して説明を省略する。ブロック951では、スマートフォン803が筐体の揺動からユーザの歩行を示す揺動を検出したときに、PC801は不使用状態と推定する。
【0078】
ブロック953で、スマートフォン803は待受モードに遷移する。ブロック955でスマートフォン803がPC801に切換コマンドを送って非待受モードに切り換える。ブロック957でスマートフォン957が筐体の揺動が停止してPC801の使用状態を推定したときにブロック903に移行する。ブロック903でスマートフォン803が非待受モードに遷移する。ブロック905でスマートフォン803はPC801に切換コマンドを送って待受モードに切り換える。
【0079】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【解決手段】ワイヤレス・キーボード300はラップトップ型のPC100に入力する。PCは、複数の使用モードを備える。タブレット・モードにしたPC100をワイヤレス・キーボード300と一緒に鞄に入れると、スリープ状態に遷移したPC100がワイヤレス・キーボード300に対する予期しない入力でウェイクアップしてバッテリィを消耗する。PC100の筐体の姿勢を検出してPCが使用していないと認識したときは、ワイヤレス・キーボードからのウェイク・コマンドでウェイクアップしないようにする。PC100は不使用状態を認識したときに、ウェイク・コマンドを無視したりワイヤレス・キーボードにウェイク・コマンドの出力を停止するように指示したりする。