(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6189991
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】燃料供給装置
(51)【国際特許分類】
F02M 37/00 20060101AFI20170821BHJP
【FI】
F02M37/00 R
F02M37/00 331D
F02M37/00 311A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-62636(P2016-62636)
(22)【出願日】2016年3月25日
【審査請求日】2017年2月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 聡
(72)【発明者】
【氏名】鵤木 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】堀底 伸一郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 直樹
【審査官】
櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−173228(JP,A)
【文献】
特開2008−138786(JP,A)
【文献】
特開2010−077823(JP,A)
【文献】
特開2005−147163(JP,A)
【文献】
特開昭57−177467(JP,A)
【文献】
実開昭57−081483(JP,U)
【文献】
特開昭49−046226(JP,A)
【文献】
特開2001−140733(JP,A)
【文献】
特開2003−239830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/00
F02M 69/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料流路で燃料噴射装置(22)に接続される吐出ポート(38)を有するフューエルフィードポンプ(31)と、
前記燃料流路から分岐して燃料タンク(18)に接続される戻し流路(54)内に配置されるプレッシャーレギュレーター(56)と、
前記プレッシャーレギュレーター(56)および前記燃料タンク(18)の間で前記戻し流路(54)内に配置され、前記プレッシャーレギュレーター(56)から前記燃料タンク(18)に向かって一方向に燃料の流れを規制するチェックバルブ(62)と
を備え、
前記吐出ポート(38)が形成される前記フューエルフィードポンプ(31)の接続管(39)と前記プレッシャーレギュレーター(56)とを、接続流路(41)で同軸状に接続するとともに、前記プレッシャーレギュレーター(56)と前記チェックバルブ(62)とを、前記戻し流路(54)内に同軸状に配置したことを特徴とする燃料供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料供給装置において、前記チェックバルブ(62)と前記燃料タンク(18)との間で前記戻し流路(54)にはダストフィルター(66)が配置されることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料供給装置において、前記フューエルフィードポンプ(31)は、吸入流路で前記燃料タンク(18)に接続される吸込ポート(34)と、ポンプ内部で発生したベーパーを前記戻し流路に排出する脱気ポート(48)とを有するウエスコポンプであって、前記吸入流路には燃料を濾過する燃料フィルター(67)が配置されることを特徴とする燃料供給装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料供給装置において、前記フューエルフィードポンプ(31)、前記プレッシャーレギュレーター(56)および前記チェックバルブ(62)はフューエルポンプモジュール(12)を形成することを特徴とする燃料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は二輪車用の燃料供給装置を開示する。燃料供給装置は、燃料タンクに接続される戻し流路内に配置されるプレッシャーレギュレーターを備える。プレッシャーレギュレーターは燃料噴射弁への燃料の供給圧を調整する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−348946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
戻し流路が燃料タンクの底面で開口すると、燃料に混入したダストが戻し流路からプレッシャーレギュレーターに辿り着き、プレッシャーレギュレーターの弁座などにダストが付着すると、プレッシャーレギュレーターの動作不良を誘引することが懸念される。したがって、燃料タンク内で戻し流路の開口は燃料の液面よりも上方に配置される。こうした戻し流路の実現にあたって燃料タンク内には戻し管が立ち上がる。とはいえ、燃料タンクは確実に密閉されなければならず、燃料タンク内の戻し管の組み付け作業は難しかった。戻し管の組み付け作業に手間がかかり、燃料タンクの製造コストの低減を妨げていた。
【0005】
本発明は、燃料タンクの構造の簡素化に寄与することができる燃料供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面によれば、燃料流路で燃料噴射装置に接続される吐出ポートを有するフューエルフィードポンプと、前記燃料流路から分岐して燃料タンクに接続される戻し流路内に配置されるプレッシャーレギュレーターと、前記プレッシャーレギュレーターおよび前記燃料タンクの間で前記戻し流路内に配置され、前記プレッシャーレギュレーターから前記燃料タンクに向かって一方向に燃料の流れを規制するチェックバルブとを備え
、前記吐出ポートが形成される前記フューエルフィードポンプの接続管と前記プレッシャーレギュレーターとを、接続流路で同軸状に接続するとともに、前記プレッシャーレギュレーターと前記チェックバルブとを、前記戻し流路内に同軸状に配置した燃料供給装置
が提供される。
【0007】
第2側面によれば、第1側面の構成に加えて、前記チェックバルブと前記燃料タンクとの間で前記戻し流路にはダストフィルターが配置される。
【0008】
第3側面によれば、第1または第2側面の構成に加えて、前記フューエルフィードポンプは、吸入流路で前記燃料タンクに接続される吸込ポートと、ポンプ内部で発生したベーパーを前記戻し流路に排出する脱気ポートとを有するウエスコポンプであって、前記吸入流路には燃料を濾過する燃料フィルターが配置される。
【0009】
第4側面によれば、第1〜第3側面のいずれかの構成に加えて、前記フューエルフィードポンプ、前記プレッシャーレギュレーターおよび前記チェックバルブはフューエルポンプモジュールを形成する。
【発明の効果】
【0010】
第1側面によれば、戻し流路内に燃料タンクからダストが流入しても、チェックバルブはプレッシャーレギュレーターから燃料タンクに向けて一方向だけに燃料の流れを許容することから、ダストは燃料の流れに押し戻されてチェックバルブを通過することができない。ダストはプレッシャーレギュレーターまで辿り着かない。したがって、ダストの付着に基づくプレッシャーレギュレーターの作動不良は確実に防止されることができる。こうして戻し流路は燃料タンクの底面に開口することができる。燃料タンク内の構造は簡素化されることができる。
【0011】
第2側面によれば、ダストフィルターは燃料タンクとチェックバルブとの間でダストを捕獲する。したがって、チェックバルブの動作不良は概ね防止されることができる。
【0012】
第3側面によれば、ダストの蓄積に応じて燃料フィルターが閉塞し始めると、フューエルフィードポンプは脱気ポートから燃料を吸引する。このとき、チェックバルブは戻し流路からの逆流を妨げるので、フューエルフィードポンプは脱気ポートから燃料に代わって空気または気化した燃料を吸引し始める。その結果、内燃機関は不調をきたす。こうして利用者は燃料フィルターの閉塞を知ることができる。
【0013】
第4側面によれば、フューエルフィードポンプ、プレッシャーレギュレーターおよびチェックバルブが1つにユニット化されることで、車体への取り付け作業は著しく軽減される。しかも、それらを相互に接続する配管が省略されるので、シール性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両用燃料供給システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1は車両用燃料供給システム11の全体構成を概略的に示す。燃料供給システム11は本発明の一実施形態に係るフューエルポンプモジュール(燃料供給装置)12を備える。フューエルポンプモジュール12のポンプケース13は中心軸線Cnを有する円筒形に形作られる。円筒形の軸方向で一端には入口14が区画される。円筒形の軸方向で他端には出口15および戻し口16が区画される。入口14はニップル17で形成される。ニップル17には燃料タンク18に繋がる燃料管19が結合される。出口15は同様にニップル21で形成される。ニップル21には例えば燃料噴射装置22に接続される燃料管23が結合される。燃料噴射装置22は例えば内燃機関25の吸気路に繋がる吸気道26に臨む。戻し口16は同様にニップル27で形成される。ニップル27には燃料タンク18に繋がる戻し管28が結合される。戻し口16から燃料タンク18に燃料は送り出される。燃料供給システム11は例えば自動二輪車といった鞍乗り型車両に搭載される。燃料管19や戻し管28は燃料タンク18の底板18aに接続される。
【0017】
フューエルポンプモジュール12ではポンプケース13にフューエルフィードポンプ31が収容される。フューエルフィードポンプ31は金属製の筒体32を有する。筒体32の第1端に第1端面部材33が嵌め込まれる。第1端面部材33には吸込ポート34を区画する接続管35が一体に形成される。第1端面部材33は例えばアルミニウムの精密鋳造品として成型されればよい。接続管35はポンプケース13に区画される接続流路36に固定される。こうして吸込ポート34はニップル17および燃料管19によって区画される吸入流路で燃料タンク18に接続される。
【0018】
筒体32の第2端に第2端面部材37が嵌め込まれる。第2端面部材37には吐出ポート38を区画する接続管39が一体に形成される。第2端面部材37は例えば硬質の樹脂材料から成型されればよい。接続管39はポンプケース13に区画される接続流路41に受け入れられる。接続管39は接続流路41に固定される。こうして吐出ポート38はニップル21および燃料管23によって区画される燃料流路で燃料噴射装置22に接続される。
【0019】
フューエルフィードポンプ31はウエスコポンプであってインペラー43を備える。インペラー43は第1端面部材33に接するインペラー室44に収容される。インペラー43は回転軸45に連結される。回転軸45には電動モーターのローター46が接続される。ローター46はステーター47で囲まれる。ローター46およびステーター47の相互作用で回転軸45の回転は引き起こされる。回転軸45の回転時、インペラー43は回転軸45の軸心回りで回転する。インペラー43の回転に基づき吐出圧は生成される。
【0020】
第1端面部材33には脱気ポート48が形成される。脱気ポート48はインペラー室44とフューエルフィードポンプ31外側の空間とを接続する。フューエルフィードポンプ31に取り込まれる燃料中に混在する気体は脱気ポート48から排出される。
【0021】
ローター46は回転軸45回りで円筒形の軌道を描く。ステーター47はローター46の軌道に倣って円筒形に沿って配置される。こうして筒体32は回転軸45に同軸の円筒形に形作られる。接続管35および接続管39はそれぞれ回転軸45に平行な中心軸線を有する。接続管35の接続流路36は接続管35に同軸に円筒形空間で形成される。接続管39の接続流路41は同様に接続管39に同軸に円筒形空間で形成される。
【0022】
ポンプケース13には接続流路41および出口15の間で接続流路41から分岐する調圧路51が形成される。調圧路51は開放端でポンプケース13内の収容空間52に開放される。収容空間52は、ポンプケース13の内側とフューエルフィードポンプ31の外周との間に通路53を形成する。通路53にはフューエルフィードポンプ31の脱気ポート48が接続される。収容空間52はニップル27および戻し管28によって区画される戻し流路54で燃料タンク18に接続される。収容空間52はニップル27内の戻し流路54を介して戻し口16に接続される。
【0023】
収容空間52に開放される開放端と接続流路41との間で調圧路51にはプレッシャーレギュレーター56が組み込まれる。
プレッシャーレギュレーター56と前記接続管39とは接続流路41で同軸状に接続される。プレッシャーレギュレーター56は、開放端から調圧路51に嵌め込まれるユニットとして構成される。ユニットは、通路を囲む弁座57と、弁座57に着座する球体の弁体58と、弁座57に向かって弁体58を押し込む力を発揮する弾性体59とを備える。接続流路41内の圧力が上昇し、弾性体59の押し圧を上回ると、接続流路41から燃料はプレッシャーレギュレーター56を通過して収容空間53内に流れ込む。
【0024】
プレッシャーレギュレーター56および燃料タンク18の間で戻し流路54内にはチェックバルブ62が配置される。チェックバルブ62は、戻し流路54を囲む弁座63と、弁座63に着座する球体の弁体64と、弁座63に向かって弁体64を押し込む力を発揮する弾性体65とを備える。収容空間52側の圧力が高まって弾性体65の弾性力に打ち勝つと、弁体64は弁座63から離れる。このとき、プレッシャーレギュレーター56から燃料タンク18に向けて燃料は流れる。反対に、チェックバルブ62は燃料タンク18からプレッシャーレギュレーター56に向かって燃料の流れを阻止する。チェックバルブ62は、プレッシャーレギュレーター56から燃料タンク18に向かって一方向に燃料の流れを規制する。
プレッシャーレギュレーター56が組み込まれた調圧路51は、チェックバルブ62が組み込まれた戻し流路54
と同軸に配置され
て戻し流路54の一部を構成する。
【0025】
チェックバルブ62と燃料タンク18との間で戻し流路54にはダストフィルター66が配置される。ダストフィルター66は例えばカゴ型に形成される網体で構成される。ダストフィルター66は樹脂材料から一体成型されればよい。ダストフィルター66は戻し口16からニップル27に差し込まれる。
【0026】
燃料タンク18と入口14との間で吸入流路には燃料フィルター67が配置される。燃料フィルター67は吸入流路を通過する燃料を濾過する。燃料フィルター67は、ハウジング68に収容されるフィルターユニット69を備える。フィルターユニット69は、中心軸線に沿って線形の通路71を区画する円筒形状のフィルターエレメント72を含む。フィルターエレメント72は例えば中心軸線に平行な山折り線および谷折り線で交互に折り畳まれる不織布で構成されることができる。フィルターエレメント72の外周とハウジング68の内面との間に燃料溜まり73が形成される。流入管74から流入する燃料は燃料溜まり73に流れ込む。燃料は燃料溜まり73からフィルターエレメント72を通過し濾過されて通路71に流入し、流出管75を通って燃料管19内の吸入流路に流れ込む。
【0027】
戻し流路54内に燃料タンク18からダストが流入しても、チェックバルブ62はプレッシャーレギュレーター56から燃料タンク18に向けて一方向だけに燃料の流れを許容することから、ダストは燃料の流れに押し戻されてチェックバルブ62を通過することができない。戻し流路54が調圧路51に同軸であって直線的に連なっても、ダストはプレッシャーレギュレーター56まで辿り着かない。したがって、ダストの付着に基づくプレッシャーレギュレーター56の作動不良は確実に防止される。こうして戻し流路54は燃料タンク18の底面に開口することができる。燃料タンク18内の構造は簡素化されることができる。特に、仮にプレッシャーレギュレーター56が戻し流路54の重力方向に下方に配置されても、プレッシャーレギュレーター56はダストから保護されることができる。
【0028】
チェックバルブ62と燃料タンク18との間で戻し流路54にはダストフィルター66が配置される。ダストフィルター66は燃料タンク18とチェックバルブ62との間でダストを捕獲する。したがって、チェックバルブ62の動作不良は概ね防止されることができる。
【0029】
燃料フィルター67は、吸入流路から入口14に流入する燃料を濾過する。ダストの蓄積に応じて燃料フィルター67が閉塞し始めると、フューエルフィードポンプ31は脱気ポート48から収容空間52内の燃料を吸引する。このとき、チェックバルブ62は戻し流路54からの逆流を妨げるので、収容空間52内で燃料は増加することができず、フューエルフィードポンプ31は脱気ポート48から燃料に代わって空気または気化した燃料を吸引し始める。その結果、内燃機関25は不調をきたす。こうして利用者は燃料フィルター67の閉塞を知ることができる。
【0030】
フューエルフィードポンプ31、プレッシャーレギュレーター56およびチェックバルブ62はフューエルポンプモジュール12を形成する。フューエルフィードポンプ31、プレッシャーレギュレーター56およびチェックバルブ62が1つにユニット化されることで、車体への取り付け作業は著しく軽減される。しかも、それらを相互に接続する配管が省略されるので、シール性能を高めることができる。
【0031】
なお、燃料フィルター67はフューエルポンプモジュール12に組み込まれてもよく、チェックバルブ62はフューエルポンプモジュール12から分離されて単独で戻し流路54に組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0032】
12…燃料供給装置(フューエルポンプモジュール)、18…燃料タンク、22…燃料噴射装置、31…フューエルフィードポンプ、34…吸込ポート、38…吐出ポート、48…脱気ポート、54…戻し流路、56…プレッシャーレギュレーター、62…チェックバルブ、66…ダストフィルター、67…燃料フィルター。
【要約】
【課題】燃料タンクの構造の簡素化に寄与することができる燃料供給装置を提供する。
【解決手段】燃料供給装置12は、燃料流路で燃料噴射装置22に接続される吐出ポート38を有するフューエルフィードポンプ31と、燃料流路から分岐して燃料タンク18に接続される戻し流路54内に配置されるプレッシャーレギュレーター56と、プレッシャーレギュレーター56および燃料タンク18の間で戻し流路54内に配置され、プレッシャーレギュレーター56から燃料タンク18に向かって一方向に燃料の流れを規制するチェックバルブ62とを備える。
【選択図】
図1