(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6190007
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】縦ルーバーの設置構造
(51)【国際特許分類】
E06B 9/01 20060101AFI20170821BHJP
E06B 9/36 20060101ALN20170821BHJP
E06B 7/084 20060101ALN20170821BHJP
E04B 1/00 20060101ALN20170821BHJP
E04B 2/74 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
E06B9/01 E
E06B9/01 G
!E06B9/36 B
!E06B7/084
!E04B1/00 501J
!E04B2/74 561A
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-132214(P2016-132214)
(22)【出願日】2016年7月4日
【審査請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000107985
【氏名又は名称】セイコー産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】特許業務法人あーく特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秦 智博
(72)【発明者】
【氏名】鏡 由実
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 早紀
(72)【発明者】
【氏名】戸川 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】久田 晴彦
【審査官】
藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−328810(JP,A)
【文献】
特開2009−264043(JP,A)
【文献】
特開2003−268869(JP,A)
【文献】
特開2008−075286(JP,A)
【文献】
実開昭60−004189(JP,U)
【文献】
国際公開第88/02431(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/01
E06B 9/36
E06B 7/00−7/10
E04B 1/00−1/99
E04B 2/74
E04F 11/18
E04H 17/00−17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面視矩形の枠体の内側に縦長の羽根板が複数枚、等間隔で並列配置され、それら羽根板の上端部が前記枠体の上辺部を構成する支持レールから吊持されて鉛直軸回りに回動し得るように構成された縦ルーバーを、H形鋼からなる梁材の屋内外両面に外壁パネルが張設されてなる梁形構造体の直下に設置するに際し、
長さ方向に直交する断面が横長の矩形をなすように形成された前記支持レールを、前記梁材よりも下方まで延び出した屋内外両面の外壁パネルの下縁部の間から取付プレートを介して前記梁材に結合する縦ルーバーの設置構造であって、
前記取付プレートは、平坦な上部取付片と、前記上部取付片の屋外側の側縁から下方に延びる垂下片と、前記垂下片の下縁から屋内側に向けて水平に張り出した下部取付片と、からなる溝形の側面形状を有し、前記上部取付片が前記梁材の下フランジの下面にボルト・ナットを介して綴着されるとともに、
前記支持レールの下側から上向きに挿着されたメンテナンスボルトの先端が該支持レールを貫通して該支持レールの上方に突き出され、前記取付プレートの下部取付片に形成された取付孔に挿入されてナット綴着されることにより、
前記支持レールが前記梁材に結合された、
ことを特徴とする縦ルーバーの設置構造。
【請求項2】
正面視矩形の枠体の内側に縦長の羽根板が複数枚、等間隔で並列配置され、それら羽根板の上端部が前記枠体の上辺部を構成する支持レールから吊持されて鉛直軸回りに回動し得るように構成された縦ルーバーを、H形鋼からなる梁材の屋内外両面に外壁パネルが張設されてなる梁形構造体の直下に設置するに際し、
長さ方向に直交する断面が横長の矩形をなすように形成された前記支持レールを、前記梁材よりも下方まで延び出した屋内外両面の外壁パネルの下縁部の間から取付プレートを介して前記梁材に結合する縦ルーバーの設置構造であって、
前記取付プレートは、平坦な上部取付片と、前記上部取付片から下方に延びる垂下片と、前記垂下片の下縁から屋内側へ斜め下向きに張り出した下部取付片と、を有し、前記上部取付片が前記梁材の下フランジの下面にボルト・ナットを介して綴着される一方、
前記支持レールの上面には、平坦な基片と、該基片の屋外側の側縁から屋外側へ斜め上向きに延びる斜立片とを有するブラケットが重ねられて、前記支持レールの下側から上向きに挿着されたメンテナンスボルトの先端が該支持レールを貫通して該支持レールの上方に突き出され、前記ブラケットの基片に形成された雌ねじ孔に締結されることにより、前記支持レールに前記ブラケットが結合され、
前記ブラケットの斜立片が前記取付プレートの下部取付片の下面に重ねられて、屋外側の外壁パネルと前記支持レールとの間から斜め上向きに挿し込まれた連結ボルトが、前記ブラケットの斜立片に形成された取付孔に挿通されて、前記取付プレートの下部取付片に形成された雌ねじ孔に締結されることにより、前記支持レールが前記梁材に結合された、
ことを特徴とする縦ルーバーの設置構造。
【請求項3】
請求項2に記載された縦ルーバーの設置構造において、
前記取付プレートの垂下片と下部取付片とが別体に形成され、ヒンジ部を介して回動自在に軸着されることにより、前記下部取付片の傾斜角が調整可能となされた、
ことを特徴とする縦ルーバーの設置構造。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載された縦ルーバーの設置構造において、
前記取付プレートは、梁材の材軸方向に沿う下部取付片および上部取付片の長さが、垂下片の見付けよりも大きくなるように形成されている
ことを特徴とする縦ルーバーの設置構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載された縦ルーバーの設置構造において、
前記梁材の下フランジと前記取付プレートの上部取付片とを綴着するためのナットは、下フランジの上面に固着されるか、または、下フランジを挟着するクリップと一体化されて、共回りしないように下フランジの上面に保持されている
ことを特徴とする縦ルーバーの設置構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載された縦ルーバーの設置構造において、
屋外側の外壁パネルの下端部に、下方から屋外側の化粧回り縁が取り付けられ、
前記支持レールの屋外側見付面と前記屋外側の化粧回り縁との隙間、および前記化粧回り縁と屋外側の外壁パネルの下縁部との隙間が、それぞれシーリング処理された
ことを特徴とする縦ルーバーの設置構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載された縦ルーバーの設置構造において、
前記支持レールの屋内側見付面に、該支持レールと底面を揃えて屋内側から化粧回り縁が取り付けられ、
前記屋内側の化粧回り縁と屋内側の外壁パネルの下縁部との隙間がシーリング処理された
ことを特徴とする縦ルーバーの設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物外壁の開口部に縦ルーバーユニットを設置する場合の設置構造に関する。より詳細には、H形鋼からなる梁材の屋内外両面に外壁パネルを張設して形成される梁形構造体の下縁部に沿って、縦ルーバーユニットの上部レールを組み付けるのに好適な設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物外壁の開口部に可動式のルーバーを設置して、屋外からの視線を遮蔽したり、屋内への採光や通風を調整したりすることがよく行われる。その種のルーバーの例として、縦長の羽根板を複数枚、等間隔で横方向に並列配置し、それらを鉛直軸回りに回転させるように構成した縦ルーバーが公知である(例えば、特許文献1、2等)。
【0003】
図1〜
図3は、鉄骨造建物の1階のアルコーブに、1階の階高に近い高さを有する大型の縦ルーバーを設置する場合の納まりを示している。例示形態では、1階のアルコーブ11の上方に、2階のオーバーハング部12がせり出しており、そのオーバーハング部12を支持する2階の梁材2の下方に縦ルーバー3が設置される。
【0004】
縦ルーバー3は、梁材2の直下に、梁材2に沿って水平に取り付けられる支持レール31と、縦向きの姿勢で支持レール31に吊持され鉛直軸回りに回転する複数枚の羽根板32と、地盤面に設けられた基台13上に水平に取り付けられて羽根板32の下端部を回転可能に保持する保持レール33とを具備し、支持レール31の内部に羽根板32を回転させる連動機構が組付けられる。
【0005】
支持レール31は、長さ方向に直交する断面が横長の矩形をなす中空の部材で、支持レール本体311と蓋体312とを組み合わせて形成されている。支持レール31の内部は、本体の中間部分から立ち上がる内壁313によって、屋外側の連動室314と、屋内側の調整室315とに仕切られている。連動室314には、ラック34とピニオン35とからなる連動機構が組付けられる。ラック34は、支持レール31の長手方向に沿って延びる略角棒状の部材で、支持レール31の長手方向に移動し得るように組付けられ、側面に形成されたラック歯をピニオン35に係合させている。ピニオン35は、略円筒状の部材で、支持レール31の長手方向に沿って羽根板32の間隔に対応する間隔で複数個配置され、周面に形成されたピニオン歯をラック歯に係合させて、複数個が連動して鉛直軸回りに回転するように組付けられている。このピニオン35には、羽根板32の上端部から上向きに突設された連結軸36が、支持レール31の下方から支持レール31の底面部を貫通して連結される。
【0006】
連動機構に羽根板32が連結された支持レール31の上面は、平坦な上面を有する蓋体312によって塞がれる。その蓋体312の上面に、支持レール31と略同幅の、防火性を有する硬質木片セメント板41が重ねられる。さらに、その上にL字形の側面形状を有するブラケット5が重ねられる。ブラケット5の基片51には雌ねじ孔52がタッピングされている。そして、羽根板32の間から支持レール31を上向きに貫通するように挿入されたメンテナンスボルト37が、ブラケット5の基片51に形成された雌ねじ孔52に締結されて、支持レール31と硬質木片セメント板41とブラケット5とが一体的に結合される。なお、支持レール31の内部にてメンテナンスボルト37が挿通されている符号38の部材は、メンテナンスボルト37のねじ込み長さを適正に保持するためのスペーサーである。
【0007】
こうして組上げられた縦ルーバー3が、梁材2の直下に建て込まれる。梁材2はH形鋼からなり、その屋外側に、あらかじめ外壁パネル6が張設されている。外壁パネル6は、外装材61と、その裏面に添設された鋼製のパネル枠材62とからなり、パネル枠材62が、専用の外壁取付具63を介して、梁材2の上フランジ21および下フランジ22の屋外側半部に保持されている。外壁パネル6の下端部には、軒下の水切りを兼ねる化粧回り縁64が取り付けられている。
【0008】
梁材2の下フランジ22には、側面視L字形に屈曲された取付プレート7が取り付けられている。取付プレート7の水平片71は、梁材2の下フランジ22の屋内側半部の下面に、ボルト81・ナット82を介して綴着されている。取付プレート7の垂下片72は、梁材2のウェブ23の略直下に配置されている。そして、縦ルーバー3に取り付けられたブラケット5の直立片53が、梁材2に取り付けられた取付プレート7の垂下片72に屋内側から添設され、ボルト83・ナット84を介して綴着される。
【0009】
こうして、縦ルーバー3が梁材2の直下に設置された後、外壁パネル6の化粧回り縁64と縦ルーバー3の支持レール31との間にシーリング材65を充填して防水処理が施される。また、取付プレート7の水平片71が梁材2の屋内側に延設され、その延設縁から吊りボルト42を介して軒天野縁43が吊持され、この軒天野縁に軒裏サイディング44が取り付けられて、支持レール31の屋内側に軒天井4が仕上げられる。
【0010】
このように、例えば1階のアルコーブ11の上方に2階のオーバーハング部12がせり出す鉄骨造建物において、そのオーバーハング部12を支持する2階の梁材2の下方に縦ルーバー3を設置する場合は、それに先行して梁材2の屋外側に外壁パネル6が張設されていても、軒天井4が未施工であれば、梁材2の屋内側に十分な施工空間がある。したがって、梁材2の下方に取付プレート7とブラケット5とをボルト83・ナット84で綴着する作業を、該綴着部位の屋内側から特に無理なく行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−25095号公報
【特許文献2】特開2009−197562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
広いテラスやピロティを有する比較的規模の大きい戸建住宅等においては、
図4に示すような半屋外空間が設けられることがある。例示の半屋外空間は、建物の1階部分に付設されたテラス14の外周部分を壁15で囲み、テラスの上方には屋根を設けず、あるいは開閉式の簡易な屋根(図示せず)を設けるなどして開放感を高めた空間で、ロジアとも称される。このような半屋外空間においても、それを囲む壁15の一部に大型の縦ルーバー3を設置して、外部からの視線や採光、通風を調整することは、居住性を高める上できわめて有効である。
【0013】
しかしながら、ロジアを囲む壁15は通常、その屋外側だけでなく屋内側も外壁として仕上げられるので、その面内に前述のような納まりで縦ルーバー3を設置するのは物理的に難しい。つまり、
図5に示すように、壁15の内部に架設される梁材2の屋内外両面に、外壁パネル6、6が先行して張設されるため、両外壁パネル6、6間に挟まれた空間の幅が、せいぜい十数cmほどしかなく、その狭い空間に向けて、上面にブラケット5を突出させた縦ルーバー3を建て起こすのは、高さ寸法的に無理がある。また、縦ルーバーを建て起こせたとしても、外壁パネル6のパネル枠材62と支持レール31が邪魔になって、両外壁パネル6、6の隙間に手が入らないので、取付プレート7の垂下片72とブラケット5とをボルト83・ナット84で綴着するのは実質的に不可能である。
【0014】
ロジアに設置されるような大型の縦ルーバー3は、羽根板32自体が重くなり、それを吊持する枠体や羽根板32を回転させる機構部品も大がかりなものになる。したがって、縦ルーバー3を梁材2の直下に精度よく位置決めして建て込むのが大変で、梁材2に結合するための納まりにも相応の強度が求められる。本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、ロジアを囲む壁15のように、H形鋼からなる梁材2の屋内外両面にあらかじめ外壁パネル6、6が張設されている梁形構造体16に対しても、その直下に大型の縦ルーバー3を、合理的な納まりで容易に後施工することのできる縦ルーバーの設置構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の縦ルーバーの設置構造は、正面視矩形の枠体の内側に縦長の羽根板が複数枚、等間隔で並列配置され、それら羽根板の上端部が前記枠体の上辺部を構成する支持レールから吊持されて鉛直軸回りに回動し得るように構成された縦ルーバーを、H形鋼からなる梁材の屋内外両面に外壁パネルが張設されてなる梁形構造体の直下に設置するに際し、
長さ方向に直交する断面が横長の矩形をなすように形成された前記支持レールを、前記梁材よりも下方まで延び出した屋内外両面の外壁パネルの下縁部の間から取付プレートを介して前記梁材に結合することを前提とするものである。
【0016】
そして、前述の目的を達成するための第1の基本的構成として、前記取付プレートが、平坦な上部取付片と、前記上部取付片の屋外側の側縁から下方に延びる垂下片と、前記垂下片の下縁から屋内側に向けて水平に張り出した下部取付片と、からなる溝形の側面形状を有し、前記上部取付片が前記梁材の下フランジの下面にボルト・ナットを介して綴着されるとともに、前記支持レールの下側から上向きに挿着されたメンテナンスボルトの先端が該支持レールを貫通して該支持レールの上方に突き出され、前記取付プレートの下部取付片に形成された取付孔に挿入されてナット綴着されることにより、前記支持レールが前記梁材に結合された、との構成を採用する。
【0017】
また、前述の目的を達成するための第2の基本的構成として、前記取付プレートが、平坦な上部取付片と、前記上部取付片から下方に延びる垂下片と、前記垂下片の下縁から屋内側へ斜め下向きに張り出した下部取付片と、を有し、前記上部取付片が前記梁材の下フランジの下面にボルト・ナットを介して綴着される一方、前記支持レールの上面には、平坦な基片と、該基片の屋外側の側縁から屋外側へ斜め上向きに延びる斜立片とを有するブラケットが重ねられて、前記支持レールの下側から上向きに挿着されたメンテナンスボルトの先端が該支持レールを貫通して該支持レールの上方に突き出され、前記ブラケットの基片に形成された雌ねじ孔に締結されることにより、前記支持レールに前記ブラケットが結合され、前記ブラケットの斜立片が前記取付プレートの下部取付片の下面に重ねられて、屋外側の外壁パネルと前記支持レールとの間から斜め上向きに挿し込まれた連結ボルトが、前記ブラケットの斜立片に形成された取付孔に挿通されて、前記取付プレートの下部取付片に形成された雌ねじ孔に締結されることにより、前記支持レールが前記梁材に結合された、との構成を採用する。
【0018】
さらに、前記第2の基本的構成に加えて、前記取付プレートの垂下片と下部取付片とが別体に形成され、ヒンジ部を介して回動自在に軸着されることにより、前記下部取付片の傾斜角が調整可能となされた、との構成を採用する。
【0019】
これらの基本的構成を採用することにより、H形鋼からなる梁材の屋内外両面にあらかじめ外壁パネルが張設されている梁形構造体に対して、その直下に大型の縦ルーバーを、合理的な納まりで容易に後施工することが可能になる。
【0020】
前記各構成においては、前記取付プレートの、梁材の材軸方向に沿う下部取付片および上部取付片の長さが、垂下片の見付けよりも大きくなるように形成されていると、前記垂下片の両脇に手を差し入れることのできる施工空間が確保されて、より好ましい。
【0021】
また、前記各構成においては、前記梁材の下フランジと前記取付プレートの上部取付片とを綴着するためのナットが、下フランジの上面に固着されるか、または、下フランジを挟着するクリップと一体化されて、共回りしないように下フランジの上面に保持されているようにすると、梁材の下フランジに取付プレートを取り付ける際の作業性が一層、向上する。
【0022】
また、前記各構成においては、屋外側の外壁パネルの下端部に、下方から屋外側の化粧回り縁が取り付けられ、前記支持レールの屋外側見付面と前記屋外側の化粧回り縁との隙間、および前記化粧回り縁と屋外側の外壁パネルの下縁部との隙間が、それぞれシーリング処理されるようにすることで、屋外側の外壁パネルと縦ルーバーとの取合い箇所周辺を好適に防水処理することができる。
【0023】
また、前記支持レールの屋内側見付面に、該支持レールと底面を揃えて屋内側から化粧回り縁が取り付けられ、前記屋内側の化粧回り縁と屋内側の外壁パネルの下縁部との隙間がシーリング処理されるようにすることで、屋内側の外壁パネルと縦ルーバーとの取合い箇所周辺も好適に防水処理することができる。
【発明の効果】
【0024】
前述のように構成される本発明の縦ルーバーの設置構造によれば、H形鋼からなる梁材の屋内外両面に外壁パネルが先行して張設される梁形構造体に対しても、その梁材の直下に、縦ルーバーの支持レールを合理的な納まりで容易に、かつ強固に結合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】建物1階のアルコーブに縦ルーバーを設置する形態を例示する断面略図である。
【
図2】
図1の形態における縦ルーバーの設置構造を示す断面図である。
【
図4】ロジアと称される半屋外空間の例を示す斜視図である。
【
図5】ロジアに設けられる梁形構造体と縦ルーバーとの納まりの問題点を示す断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る縦ルーバーの設置構造を示す断面図である。
【
図7】前記第1実施形態に採用されている取付プレートの斜視図である。
【
図8】前記第1の実施形態において、支持レールの屋外側および屋内側に化粧回り縁を取り付けた状態の断面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る縦ルーバーの設置構造を示す断面図である。
【
図10】前記第2実施形態に採用されている取付プレートの斜視図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る縦ルーバーの設置構造を示す断面図である。
【
図12】前記第3実施形態に採用されている取付プレートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する複数の実施形態において、
図1〜
図5に示した従来の縦ルーバーの設置構造と実質的に同一の構成要素には共通の符号を付して、それらの詳細な説明は省略する。また、複数の実施形態に共通する特定の構成要素のうち、先述の実施形態におけるそれと後述の実施形態におけるそれとを特に区別する必要がある場合には、必要に応じて、当該構成要素に対応する同一の数字符号にアルファベット(A,B,…)を付記するが、数字符号が同一の構成要素についての基本的概念は、各実施形態を通じて共通である。
【0027】
(第1実施形態)
図6〜
図8は本発明の第1実施形態を示す。この実施形態における縦ルーバー3の構成は、「背景技術」欄において説明した構成(
図2)と同一である。ロジアに設置される梁形構造体16も、「発明が解決しようとする課題」に説明したもの(
図5)と同様に、H形鋼からなる梁材2の屋内外両面にあらかじめ外壁パネル6、6を張設して形成されている。外壁パネル6、6を梁材2に保持する外壁取付具63も、前記従来のものと同一である。例示形態において想定されている梁材2のフランジ幅は約125mm、梁材2を挟んで相対する屋内外の外壁パネル6、6の間隔は、パネル枠材62、62間で約150mm、外装材61、61の裏面間で約300mmであり、外壁パネル6、6の下端部は梁材2の下フランジ22よりも約150mm下方に延び出している。
【0028】
この梁形構造体16の下方に縦ルーバー3を設置するに際し、第1実施形態では、
図7に示すような取付プレート70Aを利用して、梁材2の下フランジ22に縦ルーバー3の支持レール31を結合する。
【0029】
取付プレート70は、平坦な上部取付片73と、上部取付片73の屋外側の側縁から下方に延びる垂下片74Aと、垂下片74Aの下縁から屋内側に向けて水平に張り出した下部取付片75と、からなる溝形の側面形状を有している。上部取付片73は、梁材2の材軸方向を長手とする上面視矩形の形状をなし、その長手両端近傍2か所に取付孔731が形成されている。垂下片74Aは、高さ方向を長手とする正面視矩形の形状をなし、その見付け(梁材2の材軸方向に沿う寸法、開口部の正面から見た幅)が上部取付片73の長手寸法よりも十分に小さくなるように形成されている。下部取付片75は、梁材2の材軸方向を長手とする上面視矩形の形状をなし、その長手両端近傍2か所に取付孔751が形成されている。取付孔751の間隔は、縦ルーバー3の支持レール31に挿着されるメンテナンスボルト37の配置間隔に対応している。なお、その取付孔751の一方または両方は、梁材2の材軸方向に延びる長孔であってもよい。
【0030】
この取付プレート70が、縦ルーバー3を建て込む前に、梁材2の下フランジ22に取り付けられる。その取り付けは、取付プレート70の上部取付片73を梁材2の下フランジ22の下面に当てがい、下方からボルト81・ナット82で綴着することにより行われる。例示形態では、側面視略コ字形に屈曲させたばね鋼板からなるクリップ85にナット82を一体化したクリップナット(ナットクリップ)を、ナット82が下フランジ22の上側になるようにして下フランジ22に挟着することで、ナット82の共回りを防止している。なお、このナット82は、あらかじめ下フランジ22の上面に溶接等によって固着されていてもよい。ボルト81は、垂下片74Aの両脇の空間から上向きに挿し込まれてナット82に締結される。ボルト81を締結する際には、垂下片74Aの両脇の空間に電動工具等(図示せず)を差し入れることも可能である。
【0031】
このようにして取り付けられた取付プレート70の直下に、縦ルーバー3が建て込まれる。このとき、縦ルーバー3の支持レール31の上面には何も突出物が取り付けられていないので、縦ルーバー3は取付予定位置の屋内外どちら側からでも建て込むことができる。なお、この第1実施形態では、縦ルーバー3の建て込みに先立って、支持レール31の屋内側見付面にあらかじめ化粧回り縁66が取り付けられている。この化粧回り縁66は、上面の一部が開口した略矩形の断面を有し、その底面を支持レール31の底面と面一に揃えるようにして屋内側から支持レール31にねじ止めされているが、縦ルーバー3の建て込みには干渉しない。
【0032】
縦ルーバー3が適正に位置決めされた後、羽根板32の間から支持レール31を上向きに貫通するように挿着されたメンテナンスボルト37が、取付プレート70の下部取付片75の取付孔751に挿通され、下部取付片75の上面に当てがわれたナット86に締結される。このナット86は、支持レール31の屋外側から手を入れて押さえることができる。また、下部取付片75に形成される取付孔751が長孔であれば、縦ルーバー3を建て込む際の位置調整も容易になる。
【0033】
こうして、縦ルーバー3の支持レール31が取付プレート70に結合された後、化粧回り縁66の両側面と、これに重なる支持レール31の屋内側見付面に形成された調整用通孔(図示せず)に屋内側から工具を挿入して調整ねじ39を操作し、羽根板32の回転固さ等を調整する。この調整用通孔は、調整作業の終了後、屋内側見付面にカバー板67をねじ止めして塞がれる。
【0034】
そして、
図8に示すように、屋外側の外壁パネル6の下端部に水切りを兼ねる化粧回り縁64が取り付けられる。屋外側の化粧回り縁64には、支持レール31の屋外側見付面との隙間を埋めるための見切材68があらかじめねじ止めされており、それらがまとめて、屋外側の外壁パネル6のパネル枠材62に対して下方からねじ止めされる。
【0035】
最後に、屋外側の外壁パネル6の下縁部と屋外側の化粧回り縁64との隙間、見切材68と支持レール31の屋外側見付面との隙間、屋内側の外壁パネル6の下縁部と屋内側の化粧回り縁66との隙間に、それぞれシーリング材65が充填されて防水処理が施される。
【0036】
(第2実施形態)
図9および
図10は本発明の第2実施形態を示す。この実施形態における縦ルーバー3および梁形構造体16の構成は、前述の第1実施形態と同一である。この第2実施形態では、梁形構造体16の下フランジ22に縦ルーバー3の支持レール31を結合するに際し、
図10に示したような取付プレート70Bとブラケット50とを利用する。
【0037】
取付プレート70Bは、平坦な上部取付片73と、上部取付片73の屋外側の側縁から下方に延びる垂下片74Bと、垂下片74Bの下縁から屋内側へ斜め下向きに張り出した下部取付片76と、を有している。
【0038】
上部取付片73は、梁材2の材軸方向を長手とする上面視矩形の形状をなし、その長手両端近傍2か所に取付孔731が形成されている。この上部取付片73は、第1実施形態に係る取付プレート70Aの上部取付片73と基本的機能において同等であるが、形状的には第1実施形態に係る取付プレート70Aの上部取付片73ほど細長くはない。
【0039】
垂下片74Bは、上部取付片73の長手寸法と略同寸の見付けを有する上半部741と、それよりも見付けの大きい下半部742とが同一面で連続する、正面視逆T字型の形状をなしている。
【0040】
下部取付片76は、垂下片74Bの下縁から一旦、屋外側へ斜め下向きに張り出した後、側面視く字形に反転屈曲して、屋内側へ斜め下向きに張り出す形状をなしている。それら各部の見付けは一様であり、斜面の傾斜角は約45度である。屋内側へ斜め下向きに張り出した部分には、1か所ないし2か所の雌ねじ孔761が、タッピングまたは図示しないナット溶接によって形成されている。
【0041】
この取付プレート70Bが、縦ルーバー3を建て込む前に、梁材2の下フランジ22に取り付けられる。取付プレート70Bの上部取付片73を梁材2の下フランジ22にボルト81・ナット82で綴着する取付構造および取付方法は、前述した第1実施形態と同じである。
【0042】
一方、ブラケット50は、縦ルーバー3の建て込み作業に先立って、あらかじめ支持レール31の上面に取り付けられる。ブラケット50は、平坦な基片51と、基片51の屋外側の側縁から屋外側へ斜め上向きに延びる斜立片54とを有する、側面視く字形の部材である。基片51には、1ないし2か所の雌ねじ孔52が、タッピングまたは図示しないナット溶接によって形成されている。そして、この基片51が支持レール31の上面に重ねられ、羽根板32の間から支持レール31を上向きに貫通するように挿着されたメンテナンスボルト37が、基片51の雌ねじ孔52に締結されて、支持レール31にブラケット50が結合される。
【0043】
ブラケット50の斜立片54には、取付プレート70Bの下部取付片76に形成された雌ねじ孔761に対応する取付孔55が形成されている。この取付孔55は、支持レール31の材軸方向に延びる長孔になっている。
【0044】
支持レール31にこのようなブラケット50を取り付けた縦ルーバー3が、取付プレート70Bの直下に建て込まれる。このとき、縦ルーバー3の支持レール31の上面には既にブラケット50の斜立片54が突出しているので、斜立片54と外壁パネル6との干渉を避けるために、縦ルーバー3は取付予定位置の屋外側から建て起こすようにして位置決めされる。そして、ブラケット50の斜立片54が取付プレート70Bの下部取付片76の下面に重ねられた状態で縦ルーバー3が適正に位置決めされた後、屋外側の外壁パネル6と支持レール31との間に形成される空間から連結ボルト87が斜め上向きに挿し込まれ、ブラケット50の取付孔55に挿通されて取付プレート70Bの雌ねじ孔761に締結される。これにより、縦ルーバー3の支持レール31がブラケット50および取付プレート70Bを介して梁材2に結合される。このように、支持レール31の屋外側から斜め上向きに連結ボルト87を締結する納まりを採用することで、縦ルーバー3を梁材2に対して容易に、かつ強固に結合することができる。
【0045】
続いて、屋外側の外壁パネル6の下端部に水切りを兼ねる化粧回り縁64が取り付けられて、シーリング処理が施されることは、前述の第1実施形態と同様である。
【0046】
(第3実施形態)
図11および
図12は本発明の第3実施形態を示す。この実施形態における縦ルーバー3および梁形構造体16の構成も、前述の第1実施形態および第2実施形態と同一である。この第3実施形態では、梁形構造体16の下フランジ22に縦ルーバー3の支持レール31を結合するに際し、
図12に示したような取付プレート70Cとブラケット50とを利用する。
【0047】
取付プレート70Cは、第2実施形態に係る取付プレート70Bの垂下片74Bと下部取付片76とが別体に形成され、それらがヒンジ部を介して回動自在に軸着された構成を有している。上部取付片73は、梁材2の材軸方向を長手とする上面視矩形の形状をなし、その長手両端近傍2か所に取付孔731が形成されている。垂下片74Cは、高さ方向を長手とする矩形の板片であるが、第2実施形態とは異なり、梁材2の材軸と直交する姿勢で、上部取付片73の中央付近から下方に延び出している。垂下片74Cの下端近傍には円形のヒンジ孔(図示せず)が形成されている。
【0048】
下部取付片76は、下部回動部材77の一部分として設けられる。下部回動部材77は、下部取付片76と下部直立片78とヒンジアーム片79とを有する。下部取付片76および下部直立片78は、梁材2の材軸方向を長手とする矩形の板体を側面視く字状に屈曲して形成されている。下部取付片76には、1か所ないし2か所の雌ねじ孔761が、タッピングまたは図示しないナット溶接によって形成されている。ヒンジアーム片79は、下部取付片76および下部直立片78の長手中間付近に、両片に対して直交するように添設されている。このヒンジアーム片79の中間付近にヒンジ孔(図示せず)が形成され、このヒンジ孔と垂下片74Cのヒンジ孔とが重ねられて、ボルト・ナット88で軸着される。これにより、下部回動部材77が垂下片74Cに対して回動し得るように保持され、下部取付片76の傾斜角を微調整することが可能になる。
【0049】
この取付プレート70Cが、縦ルーバー3を建て込む前に、梁材2の下フランジ22に取り付けられる。取付プレート70Cの上部取付片73を梁材2の下フランジ22にボルト81・ナット82で綴着する取付構造および取付方法は、前述した第1実施形態および第2実施形態と同じである。
【0050】
一方、縦ルーバー3には、その建て込み作業に先立って、あらかじめ支持レール31の上面にブラケット50が取り付けられる。このブラケット50は、第2実施形態のブラケット50と同じものであり、支持レール31との結合構造も第2実施形態と同一である。
【0051】
この縦ルーバー3が、第2実施形態と同様にして取付プレート70の直下に建て込まれる。ブラケット50の斜立片54が取付プレート70Cの下部取付片76の下面に重ねられた状態で、屋外側の外壁パネル6と支持レール31との間に形成される空間から連結ボルト87が斜め上向きに締結されることで、縦ルーバー3の支持レール31が梁材2に結合される。このように、支持レール31の屋外側から斜め上向きに連結ボルト87を締結する納まりを採用することで、縦ルーバー3を梁材2に対して容易に、かつ強固に結合することができる。さらに、取付プレート70Cの下部取付片76の傾斜角を調整できるように構成することで、縦ルーバー3を建て込む際の位置決め精度を高めることができる。
【0052】
続いて、第1実施形態および第2実施形態と同様に、屋外側の外壁パネル6の下端部に水切りを兼ねる化粧回り縁64が取り付けられて、シーリング処理が施される。
【0053】
前述の各実施形態に示したような縦ルーバーの設置構造を採用することにより、住宅その他の建物において、ロジア等の半屋外空間を設けた空間デザインの自由度を拡張することができ、光や風を有効に活用する居住空間を実現しやすくなる。
【0054】
なお、本発明の技術的範囲は、例示した実施の形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。本発明の実施に際しては、例示形態と実質的に同様の作用効果が得られる範囲において、構成部材の細部の形状や寸法、部材同士の組付け順序等を多少、改変することはもちろん可能である。
【符号の説明】
【0055】
11 アルコーブ
12 オーバーハング部
13 基台
14 テラス
15 壁
16 梁形構造体
2 梁材
21 上フランジ
22 下フランジ
23 ウェブ
3 縦ルーバー
31 支持レール
311 支持レール本体
312 蓋体
313 内壁
314 連動室
315 調整室
32 羽根板
33 保持レール
34 ラック
35 ピニオン
36 連結軸
37 メンテナンスボルト
38 スペーサー
39 調整ねじ
4 軒天井
41 硬質木片セメント板
42 吊りボルト
43 軒天野縁
44 軒裏サイディング
5 ブラケット
50 ブラケット
51 基片
52 雌ねじ孔
53 直立片
54 斜立片
55 取付孔(長孔)
6 外壁パネル
61 外装材
62 パネル枠材
63 外壁取付具
64 化粧回り縁(屋外側)
65 シーリング材
66 化粧回り縁(屋内側)
67 カバー板
68 見切材
7 取付プレート
70A 取付プレート
70B 取付プレート
70C 取付プレート
71 水平片
72 垂下片
73 上部取付片
731 取付孔
74A 垂下片
74B 垂下片
74C 垂下片
741 上半部
742下半部
75 下部取付片
751 取付孔
76 下部取付片
761 雌ねじ孔
77 下部回動部材
78 下部直立片
79 ヒンジアーム片
81 ボルト
82 ナット
83 ボルト
84 ナット
85 クリップ
86 ナット
87 連結ボルト
88 ボルト・ナット
【要約】
【課題】 梁材の屋内外両面に外壁パネルが張設されている梁形構造体に対して、その直下に縦ルーバーを合理的な納まりで容易に後施工できる設置構造を提供する。
【解決手段】 溝形の側面形状を有する取付プレート70Aの上部取付片73を、梁材2の下フランジの下面にボルト・ナットを介して綴着しておき、その直下に縦ルーバー3を建て込んで、支持レール31の下側から上向きに挿着したメンテナンスボルト37の先端を支持レール31の上方に突出させ、取付プレート70Aの下部取付片75に形成した取付孔751に挿入してナットで綴着する。
【選択図】
図8