特許第6190009号(P6190009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭コンクリート工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6190009-トンネルの内部構造物 図000002
  • 特許6190009-トンネルの内部構造物 図000003
  • 特許6190009-トンネルの内部構造物 図000004
  • 特許6190009-トンネルの内部構造物 図000005
  • 特許6190009-トンネルの内部構造物 図000006
  • 特許6190009-トンネルの内部構造物 図000007
  • 特許6190009-トンネルの内部構造物 図000008
  • 特許6190009-トンネルの内部構造物 図000009
  • 特許6190009-トンネルの内部構造物 図000010
  • 特許6190009-トンネルの内部構造物 図000011
  • 特許6190009-トンネルの内部構造物 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6190009
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】トンネルの内部構造物
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/04 20060101AFI20170821BHJP
   E21F 11/00 20060101ALI20170821BHJP
   A62B 3/00 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   E21D11/04 Z
   E21F11/00
   A62B3/00 C
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-137902(P2016-137902)
(22)【出願日】2016年7月12日
【審査請求日】2016年7月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116769
【氏名又は名称】旭コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【弁理士】
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】狩野 堅太郎
(72)【発明者】
【氏名】内田 和彦
【審査官】 亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平03−005599(JP,A)
【文献】 特開2008−127834(JP,A)
【文献】 特開2006−299512(JP,A)
【文献】 特開2002−004786(JP,A)
【文献】 特開平03−066899(JP,A)
【文献】 特開2001−280059(JP,A)
【文献】 特開平02−252897(JP,A)
【文献】 特開2005−344323(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/00,29/045、29/063
E21D 11/00−19/06
E21D 23/00−23/26
E01C 1/00
E01F 15/08
A62B 3/00
E21F 11/00
E04B 2/56、2/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内に構築され、内側の主通路から独立した空間を形成する内部構造物であって、複数のブロック版と、これらブロック版同士を接続するヒンジ構造をなす第一のジョイント部とを具備してなり、
前記複数のブロック版における一部の前記ブロック版が、前記トンネルの外郭構造体に対して、ヒンジ構造をなす第二のジョイント部を介して接続されているものであり、
前記トンネルの外郭構造体の内面と、一部の前記ブロック版における前記外郭構造体側を向く端縁との間に、可撓性を有した緩衝材が介設されているトンネルの内部構造物。
【請求項2】
前記第一のジョイント部が、
一方のブロック版に直接的に止着されるベースプレートとこのベースプレートの一方の側端縁から起立した起立プレートとを一体に備えた一方のジョイント部構成部材と、他方のブロック版に直接的に止着されるベースプレートとこのベースプレートの一方の側端縁から起立した起立プレートとを一体に備えた他方のジョイント部構成部材とを備えたものであり、
これら一方、他方のジョイント部構成部材の起立プレート同士が軸を介して回動可能に連結されている請求項1記載のトンネルの内部構造物。
【請求項3】
前記一方のブロック版が略水平姿勢に配されたものであり、前記他方のブロック版が前記一方のブロック版に対して略直交する起立姿勢に配されたものである請求項2記載のトンネルの内部構造物。
【請求項4】
前記第二のジョイント部が、
前記ブロック版に直接的に止着されるベースプレートとこのベースプレートの一方の側端縁から起立した起立プレートとを一体に備えた一方のジョイント部構成部材と、前記トンネルの外郭構造体に直接的に止着されるベースプレートとこのベースプレートの一方の側端縁から起立した起立プレートとを一体に備えた他方のジョイント部構成部材とを備えたものであり、
これら一方、他方のジョイント部構成部材の起立プレート同士が軸を介して回動可能に連結されている請求項1、2又は3記載のトンネルの内部構造物。
【請求項5】
前記トンネル内のベース上に、対向配置された起立壁を備えた支持部材が配設されており、前記支持部材の起立壁間に前記複数のブロック版における一部の前記ブロック版の下端部が配設されており、且つ、当該ブロック版と前記起立壁との間に可撓性を有した緩衝材が介設されている請求項1、2、3又は4記載のトンネルの内部構造物。
【請求項6】
前記複数のブロック版が、トンネル内のベース上に立設された下部壁ブロック版と、この下部壁ブロック版の上端から上方に延出するように連設された上部壁ブロック版と、一端部が前記下部壁ブロック版の上部に第一のジョイント部を介して連結するとともに他端部が前記第二のジョイント部を介して外郭構造体の内面に連結された中床ブロック版と、一端部が前記上部壁ブロック版の上部に第一のジョイント部を介して連結するとともに他端部が前記第二のジョイント部を介して外郭構造体の内面に連結された上床ブロック版とを備えている請求項1、2、3、4又は5記載のトンネルの内部構造物。
【請求項7】
前記トンネルのベース、前記下部壁ブロック版、前記中床ブロック版、及び、前記外郭構造体とによって囲まれた前記空間が、避難通路を構成している請求項記載のトンネルの内部構造物。
【請求項8】
前記外郭構造体と前記ブロック版との間に、前記ブロック版の前記主通路側への転倒を防止するための転倒防止手段を設けている請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のトンネルの内部構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルの内部構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、トンネル内において、避難用の通路等を設けるための構造物が種々存在する。この種の構造物は、一般的に自動車用の道路の下や自動車用の道路の側部に設けられている(例えば、特許文献1を参照)。構造物には、例えば、現場打ちコンクリートを主体に構築されたものや、ボックスカルバートを主体に構成されたもの等がある。
【0003】
ところが、従来のものは、地震発生時においてトンネルにおける外郭構造体等の変位に耐え得る構造にするため、構造物に適用される部材の厚み寸法が比較的大きく設定されたものとなっていた。かかる事情から、従来の構造物は、その施工に多くの手間や労力がかかるものとなっており、結果として、安全上必要な構造物であるにもかかわらずその整備が進みにくいものとなっていた。
【0004】
なお、以上の事情は、道路を形成するトンネル内における避難用の通路に限られるものではなく、主通路から独立した空間を形成し得るすべての構造物において該当し得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−35147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に着目してなされたもので、地震による揺れに対して好適に対応し得る構成を備えたトンネルの内部構造物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は次の構成をなしている。
【0008】
請求項1に記載の発明は、トンネル内に構築され、内側の主通路から独立した空間を形成する内部構造物であって、複数のブロック版と、これらブロック版同士を接続するヒンジ構造をなす第一のジョイント部とを具備してなるトンネルの内部構造物である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記第一のジョイント部が、一方のブロック版に直接的に止着されるベースプレートとこのベースプレートの一方の側端縁から起立した起立プレートとを一体に備えた一方のジョイント部構成部材と、他方のブロック版に直接的に止着されるベースプレートとこのベースプレートの一方の側端縁から起立した起立プレートとを一体に備えた他方のジョイント部構成部材とを備えたものであり、これら一方、他方のジョイント部構成部材の起立プレート同士が軸を介して回動可能に連結されている請求項1記載のトンネルの内部構造物である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記一方のブロック版が略水平姿勢に配されたものであり、前記他方のブロック版が前記一方のブロック版に対して略直交する起立姿勢に配されたものである請求項2記載のトンネルの内部構造物である。
【0012】
請求項に記載の発明は、前記第二のジョイント部が、前記ブロック版に直接的に止着されるベースプレートとこのベースプレートの一方の側端縁から起立した起立プレートとを一体に備えた一方のジョイント部構成部材と、前記トンネルの外郭構造体に直接的に止着されるベースプレートとこのベースプレートの一方の側端縁から起立した起立プレートとを一体に備えた他方のジョイント部構成部材とを備えたものであり、これら一方、他方のジョイント部構成部材の起立プレート同士が軸を介して回動可能に連結されている請求項1、2又は3記載のトンネルの内部構造物である。
【0014】
請求項に記載の発明は、前記トンネル内のベース上に、対向配置された起立壁を備えた支持部材が配設されており、前記支持部材の起立壁間に前記複数のブロック版における一部の前記ブロック版の下端部が配設されており、且つ、当該ブロック版と前記起立壁との間に可撓性を有した緩衝材が介設されている請求項1、2、3又は4記載のトンネルの内部構造物である。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記複数のブロック版が、トンネル内のベース上に立設された下部壁ブロック版と、この下部壁ブロック版の上端から上方に延出するように連設された上部壁ブロック版と、一端部が前記下部壁ブロック版の上部に第一のジョイント部を介して連結するとともに他端部が前記第二のジョイント部を介して外郭構造体の内面に連結された中床ブロック版と、一端部が前記上部壁ブロック版の上部に第一のジョイント部を介して連結するとともに他端部が前記第二のジョイント部を介して外郭構造体の内面に連結された上床ブロック版とを備えている請求項1、2、3、4又は5記載のトンネルの内部構造物である。
【0016】
請求項に記載の発明は、前記トンネルのベース、前記下部壁ブロック版、前記中床ブロック版、及び、前記外郭構造体とによって囲まれた前記空間が、避難通路を構成している請求項記載のトンネルの内部構造物である。
【0017】
請求項に記載の発明は、前記外郭構造体と前記ブロック版との間に、前記ブロック版の前記主通路側への転倒を防止するための転倒防止手段を設けている請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のトンネルの内部構造物である。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明によれば、地震による揺れに対して好適に対応し得る構成を備えたトンネルの内部構造物を提供することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態を示す概略斜視図。
図2図1におけるA方向矢視図。
図3】ブロック版の連結態様を説明するための説明図。
図4】同実施形態における概略断面図。
図5】同実施形態における部分拡大断面図。
図6】同実施形態における部分拡大断面図。
図7】同実施形態における部分拡大断面図。
図8】同実施形態における概略断面図。
図9】同実施形態における概略断面図。
図10】他の実施形態である図7対応の概略断面図。
図11】他の実施形態である図5対応の概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜9を参照して説明する。
【0021】
この実施形態は、本発明を、高速道路や幹線道路(以下、単に「道路W」という)のトンネルT内において、避難通路E、及び、通気ダクトDを構成するための内部構造物Nに適用したものである。避難通路E、及び、通気ダクトDは、主通路である自動車用の道路Wの側部に設けられている。通気ダクトDは、避難通路Eの上に位置させてある。
【0022】
トンネルTは、円筒状をなす外郭構造体Sを主体に構成されたものである。トンネルTの外郭構造体Sは、例えば、主として現場打ちコンクリートにより形成されるものや、プレキャストコンクリート製の複数の円筒部材を縦連結させることにより形成されるもの等がある。外郭構造体Sの内部における下部分には、土砂やコンクリート等が敷設されることにより、ベースBが形成されている。そして、ベースBの幅方向中間部が主に自動車が通過するための自動車用の道路Wとなっている。
【0023】
以下、内部構造物Nについて詳述する。
【0024】
内部構造物Nは、道路Wを形成するトンネルT内に構築され、内側の道路Wから独立した空間sp1、sp2を形成するものである。内部構造物Nは、複数のブロック版すなわち下部壁ブロック版1、上部壁ブロック版2、中床ブロック版3、及び、上床ブロック版4を備えている。
【0025】
内部構造物Nは、隣接するブロック版同士、すなわち、上床ブロック版4と上部壁ブロック版2とを接続するヒンジ構造をなす第一のジョイント部5を具備するとともに中床ブロック版3と下部壁ブロック版1とを接続するヒンジ構造をなす第一のジョイント部5を具備している。
【0026】
また、内部構造物Nは、中床ブロック版3、及び、上床ブロック版4が、トンネルTの外郭構造体Sに対して、それぞれヒンジ構造をなす第二のジョイント部6を介して接続されている。
【0027】
下部壁ブロック版1は、プレキャストコンクリート製のものであり、トンネルT内のベースB上に立設されたものである。下部壁ブロック版1は、板状をなしたものであり、略鉛直な起立姿勢をなしている。下部壁ブロック版1は、中床ブロック版3に対して略直交する姿勢すなわち起立姿勢をなしている。
【0028】
下部壁ブロック版1は、図3に示すように、一方の側縁部に凹部11を有しており他方の側縁部に凸部12を有している。そして、これら凹部11と凸部12とを係合させることにより複数の下部壁ブロック版1が連結されている。なお、凹部11と凸部12との間には、緩衝材Qが配されるとともに耐火性を有した目地材13が設けられている。
【0029】
この実施形態では、トンネルT内のベースB上に、対向配置された起立壁h1を備えた支持部材Hが配設されている。支持部材Hは、ベースB上に配された底板h2と、この底板h2の内縁から立設された起立壁h1を備えたL型鋼材を対向配置させることにより構成されている。支持部材Hは、図示しないボルト等によりベースBに剛結されている。そして、下部壁ブロック版1の下端部が、支持部材Hの起立壁h1間に配設されている。下部壁ブロック版1と支持部材Hの起立壁h1との間、及び、下部壁ブロック版1とベースBとの間には、それぞれ可撓性を有した緩衝材h3が介設されている。すなわち、支持部材Hの起立壁h1と下部壁ブロック版1との間には、一定幅の隙間が形成されるように設定されており、その隙間に緩衝材h3が配設されている。下部壁ブロック版1は、ベースB上に配設された緩衝材h3の上に載設されている。また、下部壁ブロック版1と起立壁h1との間には、耐火性を有した目地材mzが設けられている。
【0030】
上部壁ブロック版2は、プレキャストコンクリート製のものであり、下部壁ブロック版1の上端から上方に延出するように連設されたものである。上部壁ブロック版2は、板状をなしたものであり、略鉛直な起立姿勢をなしている。上部壁ブロック版2は、上床ブロック版4に対して略直交する姿勢すなわち起立姿勢をなしている。上部壁ブロック版2の下端部と下部壁ブロック版1の上端部とは、図示しない連結ボルト等を用いて強固に接続されている。
【0031】
上部壁ブロック版2は、図3に示す下部壁ブロック版1の例と同様に、一方の側縁部に図示しない凹部を有しており他方の側縁部に図示しない凸部を有している。そして、これら凹部と凸部とを係合させることにより複数の上部壁ブロック版2が連結されている。
【0032】
中床ブロック版3は、プレキャストコンクリート製のものであり、略水平姿勢をなす板状のものであり、道路W側の端部である一端部が下部壁ブロック版1の上部に第一のジョイント部5を介して連結するとともに外郭構造体S側の端部である他端部が第二のジョイント部6を介して外郭構造体Sの内面に連結されている。中床ブロック版3は、板状をなしたものであり、起立姿勢をなす下部壁ブロック版1に対して略直交する姿勢すなわち略水平姿勢をなしている。
【0033】
なお、この実施形態では、トンネルTの外郭構造体Sの内面と、中床ブロック版3における外郭構造体S側を向く他端部の端縁との間に、可撓性を有した緩衝材Qが介設されている。また、中床ブロック版3における一端部の端縁と、下部壁ブロック版1との間には、可撓性を有した緩衝材Qが介設されている。
【0034】
上床ブロック版4は、プレキャストコンクリート製のものであり、略水平姿勢をなす板状のものであり、道路W側の端部である一端部が上部壁ブロック版2の上部に第一のジョイント部5を介して連結するとともに外郭構造体S側の端部である他端部が第二のジョイント部6を介して外郭構造体Sの内面に連結されている。上床ブロック版4は、板状をなしたものであり、起立姿勢をなす上部壁ブロック版2に対して略直交する姿勢すなわち略水平姿勢をなしている。
【0035】
なお、この実施形態では、トンネルTの外郭構造体Sの内面と、上床ブロック版4における外郭構造体S側を向く他端部の端縁との間に、可撓性を有した緩衝材Qが介設されている。また、上床ブロック版4における一端部の下端縁と、上部壁ブロック版2の上端縁との間には、可撓性を有した緩衝材Qが介設されている。
【0036】
また、この実施形態では、外郭構造体Sにおける上床ブロック版4よりも上側に位置する部位と上床ブロック版4との間に、転倒防止手段Fが設けられている。転倒防止手段Fは、上床ブロック版4、及び、当該上床ブロック版4に直接的又は間接的に接続している他のブロック版(すなわち、上部壁ブロック版2、下部壁ブロック版1、中床ブロック版3)の道路W側への転倒を防止するためのものである。転倒防止手段Fは、外郭構造体Sに取り付けられた第一のアンカー部材f1と、上床ブロック版4に取り付けられた第二のアンカー部材f2と、これら第一、第二のアンカー部材f1、f2同士を連結するワイヤー部材wiとを主体に構成されたものである。
【0037】
第一のジョイント部5は、いわゆるヒンジ的な機能を発揮し得るものであり、この実施形態では、上下二カ所に設けられている。すなわち、第一のジョイント部5は、中床ブロック版3と下部壁ブロック版1とを回動可能に連結するとともに上床ブロック版4と上部壁ブロック版2とを回動可能に連結し得るものである。
【0038】
下側に位置している第一のジョイント部5は、一方のブロック版たる中床ブロック版3に連結ボルトv1を介して直接的に止着されるベースプレート511とこのベースプレート511の一方の側端縁から起立した起立プレート512とを一体に備えた一方のジョイント部構成部材51と、他方のブロック版たる下部壁ブロック版1に連結ボルトv2を介して直接的に止着されるベースプレート521とこのベースプレート521の一方の側端縁から起立した起立プレート522とを一体に備えた他方のジョイント部構成部材52とを備えている。第一のジョイント部5を構成する一方、他方のジョイント部構成部材51、52の起立プレート512、522同士は、軸たるヒンジピン53を介して回動可能に連結されている。
【0039】
上側に位置している第一のジョイント部5は、一方のブロック版たる上床ブロック版4に連結ボルトv3を介して直接的に止着されるベースプレート511とこのベースプレート511の一方の側端縁から起立した起立プレート512とを一体に備えた一方のジョイント部構成部材51と、他方のブロック版たる上部壁ブロック版2に連結ボルトv4を介して直接的に止着されるベースプレート521とこのベースプレート521の一方の側端縁から起立した起立プレート522とを一体に備えた他方のジョイント部構成部材52とを備えている。一方、他方のジョイント部構成部材51、52の起立プレート512、522同士は、軸たるヒンジピン53を介して回動可能に連結されている。
【0040】
この実施形態では、一方、他方のジョイント部構成部材51、52は、それぞれ略L字状をなす金属製のものである。
【0041】
第二のジョイント部6は、いわゆるヒンジ的な機能を発揮し得るものであり、この実施形態では、上下二カ所に設けられている。すなわち、第二のジョイント部6は、中床ブロック版3とトンネルTの外郭構造体Sとを相対回動可能に連結するとともに上床ブロック版4とトンネルTの外郭構造体Sとを相対回動可能に連結し得るものである。
【0042】
下側に位置している第二のジョイント部6は、中床ブロック版3に連結ボルトv5を介して直接的に止着されるベースプレート611とこのベースプレート611の一方の側端縁から起立した起立プレート612とを一体に備えた一方のジョイント部構成部材61と、トンネルTの外郭構造体Sに連結ボルトv6を介して直接的に止着されるベースプレート621とこのベースプレート621の一方の側端縁から起立した起立プレート622とを一体に備えた他方のジョイント部構成部材62とを備えている。第二のジョイント部6を構成する一方、他方のジョイント部構成部材61、62の起立プレート612、622同士は、軸たるヒンジピン63を介して回動可能に連結されている。
【0043】
上側に位置している第二のジョイント部6は、上床ブロック版4に連結ボルトv7を介して直接的に止着されるベースプレート611とこのベースプレート611の一方の側端縁から起立した起立プレート612とを一体に備えた一方のジョイント部構成部材61と、トンネルTの外郭構造体Sに連結ボルトv8を介して直接的に止着されるベースプレート621とこのベースプレート621の一方の側端縁から起立した起立プレート622とを一体に備えた他方のジョイント部構成部材62とを備えている。第二のジョイント部6を構成する一方、他方のジョイント部構成部材61、62の起立プレート612、622同士は、軸たるヒンジピン63を介して回動可能に連結されている。
【0044】
以上に述べた内部構造物Nは、トンネルTのベースB、下部壁ブロック版1、中床ブロック版3、及び、外郭構造体Sによって囲まれた空間sp1が、避難通路Eを構成しているものとなっている。下部壁ブロック版1の所定箇所には、道路W側の空間swと避難通路E側の空間sp1とを連通する図示しない連通路が設けられている。
【0045】
また、内部構造物Nは、中床ブロック版3、上部壁ブロック版2、上床ブロック版4、及び、外郭構造体Sによって囲まれた空間sp2が、通気ダクトDを構成しているものとなっている。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係るトンネルTの内部構造物Nは、道路Wを形成するトンネルT内に構築されるものである。内部構造物Nは、内側の道路Wから独立した空間sp1、sp2を形成するものである。そして、複数のブロック版である下部壁ブロック版1、上部壁ブロック版2、中床ブロック版3、上床ブロック版4と、隣接するブロック版同士すなわち中床ブロック版3と下部壁ブロック版1とを接続するとともに上床ブロック版4と上部壁ブロック版2とを接続するヒンジ構造をなす第一のジョイント部5とを具備している。このため、地震による揺れに対して好適に対応し得る構成を備えたトンネルTの内部構造物Nを提供することができるものとなる。
【0047】
つまり、地震が生じた際にトンネルTの外郭構造体Sに大きな変位が起きた場合であっても、第一、第二のジョイント部5、6がヒンジ構造をなしているものであるため、図8、及び、図9に示すように、変位荷重の力が特定のブロック版に集中し難いものとなる。換言すれば、地震に伴って各ブロック版に負荷され得る変位荷重を、第一、第二のジョイント部5、6の作用によって、好適に低減させ得るものとなっている。このため、各ブロック版の厚み寸法を必要以上に厚く確保する必要がないものとなる。
【0048】
なお、内部構造物Nは、避難通路Eを構築することができるものであり、道路Wの道路面と避難通路Eの通路面とを滑らかに連続させ得ることができるため、車いすの利用者であっても無理なく利用することが可能なものとなる。
【0049】
第一のジョイント部5が、一方のブロック版(中床ブロック版3、上床ブロック版4)に直接的に止着されるベースプレート511とこのベースプレート511の一方の側端縁から起立した起立プレート512とを一体に備えた一方のジョイント部構成部材51と、他方のブロック版(下部壁ブロック版1、上部壁ブロック版2)に直接的に止着されるベースプレート521とこのベースプレート521の一方の側端縁から起立した起立プレート522とを一体に備えた他方のジョイント部構成部材52とを備えたものである。そして、これら一方、他方のジョイント部構成部材51、52の起立プレート512、522同士が軸たるヒンジピン53を介して回動可能に連結されている。このため、隣り合うブロック版同士を好適にヒンジ結合することができるものとなっている。
【0050】
一方のブロック版(中床ブロック版3、上床ブロック版4)が略水平姿勢に配されたものであり、他方のブロック版(下部壁ブロック版1、上部壁ブロック版2)が一方のブロック版に対して略直交する起立姿勢に配されたものである。このため、地震に伴って、各部材の変位が生じたものであっても、第一、第二のジョイント部5、6が柔軟に回動し得るものとなるため、各ブロック版に好適に追従しつつ、変位荷重の力を低減させ得るものとなっている。
【0051】
一部のブロック版(中床ブロック版3、上床ブロック版4)が、トンネルTの外郭構造体Sに対して、ヒンジ構造をなす第二のジョイント部6を介して接続されている。このため、中床ブロック版3、及び、上床ブロック版4が、トンネルTの外郭構造体Sに対して第二のジョイント部6を介して相対回動し得るものとなり、地震による外郭構造体Sの変位に対して好適に追従し得るものとなる。
【0052】
第二のジョイント部6が、一部のブロック版(中床ブロック版3、上床ブロック版4)に直接的に止着されるベースプレート611とこのベースプレート611の一方の側端縁から起立した起立プレート612とを一体に備えた一方のジョイント部構成部材61と、トンネルTの外郭構造体Sに直接的に止着されるベースプレート621とこのベースプレート621の一方の側端縁から起立した起立プレート622とを一体に備えた他方のジョイント部構成部材62とを備えている。そして、一方、他方のジョイント部構成部材61、62の起立プレート612、622同士が軸たるヒンジピン63を介して回動可能に連結されている。このため、水平姿勢をなす中床ブロック版3、及び、上床ブロック版4と外郭構造体Sとを好適にヒンジ結合することができるものとなっている。
【0053】
トンネルTの外郭構造体Sの内面と、一部のブロック版(中床ブロック版3、上床ブロック版4)における外郭構造体S側を向く端縁との間に、可撓性を有した緩衝材Qが介設されている。このため、地震が発生していないときには、トンネルTの外郭構造体Sの内面と、中床ブロック版3、及び、上床ブロック版4における外郭構造体S側を向く端縁との間を好適に塞ぎ得るものとなっており、地震が発生した場合には、ヒンジ結合に伴ってトンネルTの外郭構造体Sの内面と、中床ブロック版3、及び、上床ブロック版4における外郭構造体S側を向く端縁との間の隙間形状が変化しても好適に追従し得るものとなっている。
【0054】
トンネルT内のベースB上に、対向配置された起立壁h1を備えた支持部材Hが配設されている。そして、支持部材Hの起立壁h1間に下部壁ブロック版1の下端部が配設されており、且つ、当該下部壁ブロック版1と起立壁h1との間に可撓性を有した緩衝材Qが介設されている。このため、地震が発生した場合でも、支持部材Hや下部壁ブロック版1が破壊されにくく、緩衝材Qが下部壁ブロック版1の揺れ動きに対して好適に追従し得るものとなっている。
【0055】
内部構造物Nが、トンネルT内のベースB上に立設された下部壁ブロック版1と、この下部壁ブロック版1の上端から上方に延出するように連設された上部壁ブロック版2と、一端部が下部壁ブロック版1の上部に第一のジョイント部5を介して連結するとともに他端部が第二のジョイント部6を介して外郭構造体Sの内面に連結された中床ブロック版3と、一端部が上部壁ブロック版2の上部に第一のジョイント部5を介して連結するとともに他端部が第二のジョイント部6を介して外郭構造体Sの内面に連結された上床ブロック版4とを備えている。このため、第一、第二のジョイント部5、6によって各ブロック版が連結された構成を備えたものとなり、地震に対する柔軟性に優れた内部構造物Nを提供することができるものとなっている。
【0056】
トンネルTのベースB、下部壁ブロック版1、中床ブロック版3、及び、外郭構造体Sによって囲まれた空間sp1が、避難通路Eを構成している。このため、トンネルT内において事故や火災が発生した場合においても避難者を円滑に避難させ得るものとなる。
【0057】
中床ブロック版3、上部壁ブロック版2、上床ブロック版4、及び、外郭構造体Sによって囲まれた空間sp2が、通気ダクトDを構成している。このため、通気ダクトDとしての種々の機能を発揮し得るものとなっている。例えば、通気ダクトDによって、クリーンな空気を当該通気ダクトD内に溜めおくことができるだけでなく、使用態様によっては自動車によって生じた排気ガスや火災時の煙等を、通気ダクトDを通過させて外部に排出させ得ることも可能になる。
【0058】
外郭構造体Sと上床ブロック版4との間に、各ブロック版の道路W側への転倒を防止するための転倒防止手段Fを設けている。このため、巨大地震等による各ブロック版の道路W側への転倒を確実に防止することができるものとなっている。
【0059】
以上に述べた内部構造物Nであれば、プレキャストコンクリート製のブロック版(下部壁ブロック版1、上部壁ブロック版2、中床ブロック版3、上床ブロック版4)を主体に構成され得るものであるため、既設のトンネルにおいても、柔軟に構築可能なものとなっている。
【0060】
なお、本発明は、以上に詳述した実施形態に限られるものではない。
【0061】
トンネルの主通路は、自動車が走行し得る道路に限られるものではなく、何らかのものが通過し得るものであればよい。他のトンネルの主通路としては、例えば、水路や、物品搬送路や、電車や機関車の通路であってもよい。
【0062】
外郭構造体は、種々の形状のものを適用することができるものであり、上述した実施形態に示したものに限られるものではない。すなわち、外郭構造体は、曲線的な形状部分を備えたものに限られるものではなく、ボックスカルバートのような平板状の部分が繋がって形成されたものであってもよい。
【0063】
内部構造物は、上述した実施形態に示されたものに限定されるものではないのはもちろんのことである。例えば、内部構造物は、種々の物品を常時又は一時的に保管しておくための物品保管室を構成するものであってもよい。
【0064】
起立状態にあるブロック版、すなわち、上部壁ブロック版と下部壁ブロック版とは、必ずしも別個独立に構成されたものでなくてもよい。例えば、上部壁ブロック版と下部壁ブロック版とが一体に構成されたものであってもよい。上述した実施形態に示すように、上部壁ブロック版と下部壁ブロック版とを別個独立に形成したものとすれば、搬送や据付において便宜なものとなる。
【0065】
支持部材は、対向配置された起立壁を備えたものであればよく、上述した実施形態に示されたものには限定されるものではない。他の支持部材としては、例えば、図10に示すようなものが考えられる。
【0066】
図10の説明>
図10に示す支持部材Hは、チャンネル状の鋼材を主体に構成されたものである。すなわち、この支持部材Hは、底板h2とこの底板h2の両側縁から立設され対向配置された起立壁h1とを備えている。底板h2はボルトv9によりベースBに止着されている。下部壁ブロック1と起立壁h1との間、及び、下部壁ブロック1と底板h2との間には、緩衝材h3が配設されている。また、支持部材Hと下部壁ブロック1との間には、耐火性を有した目地材mzが配設されている。このようなものであっても、所期の目的を達成し得るものとなっている。
【0067】
転倒防止手段は、上述した実施形態に示されたものには限定されるものではない。他の転倒防止手段の態様としては、例えば、図11に示すようなものが考えられる。
【0068】
図11の説明>
図11に示す転倒防止手段Fは、外郭構造体Sにおける上床ブロック版4よりも下側に位置する部位と上床ブロック版4との間、及び、上床ブロック版4と上部壁ブロック版2との間に設けられている。転倒防止手段Fは、外郭構造体Sに取り付けられた第一のアンカー部材f1と、上床ブロック版4に取り付けられた第二のアンカー部材f2と、上部壁ブロック版2に取り付けられた第三のアンカー部材f3これら第一、第二、第三のアンカー部材f1、f2、f3同士を連結するワイヤー部材wiとを主体に構成されたものである。このようなものであっても所期の目的を達成することができるものとなる。
【0069】
また、上述した各実施形態における緩衝材や目地材としては、種々のものを適用することができることはもちろんである。例えば、緩衝材や目地材として可撓性に優れた高弾性接着剤を使用してもよい。
【0070】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…下部壁ブロック版(ブロック版)
2…上部壁ブロック版(ブロック版)
3…中床ブロック版(ブロック版)
4…上床ブロック版(ブロック版)
5…第一のジョイント部
6…第二のジョイント部
F…転倒防止手段
H…支持部材
N…内部構造物
Q…緩衝材
T…トンネル
W…道路
sp1、sp2…空間
【要約】
【課題】地震発生時等に生じ得るトンネルの外郭構造体の変位に好適に対応し得る構成を備えたトンネルの内部構造物を提供する。
【解決手段】トンネルの内部構造物は、トンネル内に構築され、内側の主通路から独立した空間を形成するものであり、複数のブロック版と、これらブロック版同士を接続するヒンジ構造をなす第一のジョイント部とを具備してなるものとした。このようなものであれば、地震発生時等に生じ得るトンネルの外郭構造体の変位に好適に対応し得る構成を備えたトンネルの内部構造物を提供することができる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11