(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
反応前駆体は、タングステン化合物を含むスラリーを調製する第一工程、次いで該スラリーにリン酸と、水酸化ジルコニウム及び炭酸ジルコニウムから選ばれるジルコニウム化合物を添加する第二工程、次いで第二工程後のスラリーを全量乾燥する第三工程を施して得られるものであることを特徴とする請求項1又は2の何れか一項に記載のリン酸タングステン酸ジルコニウムの製造方法。
第一工程は、タングステン化合物を含むスラリーをメディアミルで湿式粉砕処理する工程を含むことを特徴とする請求項3記載のリン酸タングステン酸ジルコニウムの製造方法。
第一工程は、固形分の平均粒子径が5μm以下のスラリーを調製することを特徴とする請求項3又は4の何れか1項に記載のリン酸タングステン酸ジルコニウムの製造方法。
第一工程は、固形分の平均粒子径が1μm以下のスラリーを調製することを特徴とする請求項3又は4の何れか1項に記載のリン酸タングステン酸ジルコニウムの製造方法。
反応前駆体は、水酸化ジルコニウム及び炭酸ジルコニウムから選ばれるジルコニウム化合物、リン酸及びタングステン化合物を含むスラリーを加熱処理する第A工程、次いで、第A工程後のスラリーをメディアミルで湿式粉砕処理する第B工程、次いで第B工程後のスラリーを全量乾燥する第C工程を施して得られるものであることを特徴とする請求項1又は2の何れか一項に記載のリン酸タングステン酸ジルコニウムの製造方法。
焼結助剤成分が、Mg、Zn、Cu、Fe、Cr、Mn、Ni、V、Li、Al、B、Na、K、F、Cl、Br、I、Ca、Sr、Ba,Ti、Hf,Nb、Ta、Y、Yb、Si、S、Mo、Co、Bi、Te、Pb、Ag,Cd,In,Sn、Sb,Te,Ga、Ge、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb及びDy、Hoから選ばれる1種又は2種以上の元素であることを特徴とする請求項11に記載のリン酸タングステン酸ジルコニウムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づいて説明する。
本発明のリン酸タングステン酸ジルコニウムの製造方法は、タングステン化合物と、リンとジルコニウムを含む不定形の化合物との混合物を反応前駆体として、該反応前駆体を焼成することを特徴とするものである。
【0015】
本発明者らは、リン酸とジルコニウム化合物との反応により得られるリンとジルコニウムを含む無定形の化合物は、微細な一次粒子であり、所望のモル比でリン原子とジルコニウム原子を含むものであること。また、タングステン化合物が均一に分散したスラリー中で、かかる反応を行うことで、タングステン化合物と、リンとジルコニウムを含む無定形の化合物とが均一分散したスラリーが得られること。更に、これを乾燥処理すると各原料が均一に分散し、所望のモル比でZr、W、Pを含んだ反応性に優れた反応前駆体になることを見出した。
【0016】
例えば、ジルコニウム化合物として水酸化ジルコニウムを用いた場合、得られる反応前駆体をX線回折分析したときに、タングステン化合物のみの回折ピークが確認され(
図1参照。)、水酸化ジルコニウムの回折ピークは観察されない。また、該反応前駆体をFT−IR分析したときに、水酸化ジルコニウムとリン酸とは異なる赤外線吸収ピークのパターンを示す(
図2参照。)ことから、スラリーへ添加した水酸化ジルコニウムとリン酸は、反応していることが確認できる。
【0017】
なお、本発明者らは、リン酸とジルコニウム化合物との反応により得られるリンとジルコニウムを含む無定形の化合物は、無定形のリン酸ジルコニウムであると推測している。
【0018】
本製造方法において、前記反応前駆体は、少なくとも950〜1150cm
-1に赤外線吸収ピークを有し、この範囲での赤外線吸収ピークの極大値が1030(±20)cm
-1にあるものが好ましい。
【0019】
また、前記反応前駆体中のZr、W、Pのモル比は、Zr/W=1.7〜2.3、好ましくは1.9〜2.1であり、P/W=1.7〜2.3、好ましくは1.9〜2.1である。
【0020】
本発明において、前記反応前駆体は、下記の2つの方法で得られるものが好ましい。
(1)タングステン化合物を含むスラリーを調製する第一工程、次いで該スラリーにリン酸と、水酸化ジルコニウム及び炭酸ジルコニウムから選ばれるジルコニウム化合物を添加する第二工程、次いで得られるスラリーを全量乾燥する第3工程を含む方法(以下、「第1の方法」と言う)。
(2)タングステン化合物、リン源及びジルコニウム源を含むスラリーを加熱処理する第A工程、次いで、該スラリーをメディアミルで湿式粉砕処理する第B工程、次いで得られるスラリーを全量乾燥する第C工程を含む方法(以下、「第2の方法」と言う)。
【0021】
<第1の方法>
以下、第1の方法で前記反応前駆体を製造する方法について説明する。
【0022】
第1の方法に係る第一工程は、タングステン化合物が分散媒体となる水溶媒に均一に分散したスラリーを調製する工程である。
【0023】
第一工程に係るタングステン化合物は、水に対して不溶性ないし難溶性の化合物が好ましく、例えば、三酸化タングステン、タングステン酸アンモニウム、塩化タングステン等のタングステン化合物が挙げられる。これらのうち、三酸化タングステンが純度が高いものが工業的に容易に入手でき、また取扱いも容易であるという観点から好ましい。
【0024】
用いることが出来るタングステン化合物の好ましい物性は、レーザー回折・散乱法に求められる平均粒子径が100μm以下、好ましくは0.1〜50μmであることが、反応性が優れた反応前駆体を得る観点から好ましい。
【0025】
第一工程に係るタングステン化合物を分散させる溶媒は、水だけに限らず水と親水性溶媒との混合溶媒であってもよい。
第一工程に係るスラリー濃度は5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%とすることが操作性と取扱いが容易な粘度のスラリーとなる観点から好ましい。
【0026】
第一工程は、レーザー回折・散乱法により求められる固形分の平均粒子径が5μm以下、好ましくは2μm以下のスラリーを調製することが反応性に優れた反応前駆体を得る観点から好ましい。
【0027】
第一工程において、タングステン化合物を水溶媒に均一分散させる方法としては、タングステン化合物を水溶媒中に均一分散できる手段であれば特に制限なく用いることが出来るが、タングステン化合物の粒子は、凝集性が特に強いことから、分散剤をスラリーに添加する方法であってもよいが、固形分の平均粒子径が上記範囲となるように粉砕と分散を同時に行えるメディアミルによる湿式粉砕処理により行うことが一層反応性に優れた反応前駆体を得る観点から特に好ましい。
【0028】
使用する分散剤は、分散媒の種類に応じて適切なものを選択すればよい。分散媒が例えば水である場合には、分散剤として各種の界面活性剤、ポリカルボン酸アンモニウム塩等を用いることができる。スラリーにおける分散剤の濃度は0.01〜10重量%、特に0.1〜5重量%とすることが、分散効果が高くなる観点で好ましい。
【0029】
メディアミルとしては、ビーズミル、ボールミル、ペイントシェーカー、アトライタ、サンドミル等を用いることができる。特にビーズミルを用いることが好ましい。その場合、運転条件やビーズの種類及び大きさは、装置のサイズや処理量に応じて適切に選択すればよい。
【0030】
メディアミルを用いた処理を一層効率的に行う観点から、スラリーに、分散剤を加えてもよい。使用する分散剤は、分散媒の種類に応じて適切なものを選択すればよい。分散媒が例えば水である場合には、分散剤として各種の界面活性剤、ポリカルボン酸アンモニウム塩等を用いることができる。スラリーにおける分散剤の濃度は0.01〜10重量%、特に0.1〜5重量%とすることが、分散効果が高くなる観点で好ましい。
【0031】
メディアミルを用いた粉砕処理は、レーザー回折・散乱法により求められる固形分の平均粒子径が1μm以下、好ましくは0.1〜1μmとなるまで行うと一層反応性に優れた反応前駆体を得ることができる観点から好ましい。
かくすることにより、タングステン化合物が水溶媒中に均一分散したスラリーを調製することができる。
【0032】
次いで、第二工程で、第一工程で得られたスラリーにリン酸と、水酸化ジルコニウム及び炭酸ジルコニウムから選ばれるジルコニウム化合物(以下、単に「ジルコニウム化合物」と言うことがある)を添加して反応前駆体を調製する。
【0033】
第二工程では、タングステン化合物の存在下に、リン酸とジルコニウム化合物との反応を行うことにより、タングステン化合物と、リンとジルコニウムを含む無定形の化合物との混合物を含むスラリーを得る。
【0034】
第二工程に係るリン酸は、工業的に入手できるものであれば、特に制限なく用いることができ、また、リン酸はリン酸水溶液として第一工程で得られるスラリーに添加することができる。
【0035】
第二工程に係るジルコニウム化合物は、水酸化ジルコニウム及び/又は炭酸ジルコニウムである。
炭酸ジルコニウムは、塩基性塩であってもよく、アンモニアやナトリウム、カリウムなどの複塩であってもよい。
ジルコニウム化合物は、工業的に入手できるものであれば、特に制限なく用いることができ、また、ジルコニウム化合物は無水塩又は含水塩であってもよい。
ジルコニウム化合物は、そのまま粉体として第一工程で得られるスラリーに添加することができるが、水溶媒に分散させた懸濁液もしくは溶解させた溶液として添加してもよい。
【0036】
リン酸のスラリーへの添加量は、スラリー中のタングステン化合物中のW元素に対するリン酸中のP元素のモル比(P/W)で1.7〜2.3、好ましくは1.9〜2.1とすることが負の熱膨張が大きなものが得られるという観点から好ましい。
【0037】
ジルコニウム化合物のスラリーへの添加量は、スラリー中のタングステン化合物中のW元素に対するジルコニウム化合物中のZr元素のモル比(Zr/W)で1.7〜2.3、好ましくは1.9〜2.1とすることが負の熱膨張が大きなものが得られるという観点から好ましい。
【0038】
また、スラリーに添加するタングステン化合物とリン酸の配合割合は、タングステン化合物中のW元素に対するリン酸中のP元素のモル比(P/W)で1.7〜2.3、好まし
くは1.9〜2.1とすることが負の熱膨張が大きなものが得られるという観点から好ましい。
【0039】
スラリー中でのリン酸とジルコニウム化合物との反応条件は、反応温度が5〜100℃、好ましくは10〜50℃とすることが操作性と取扱いが容易な粘度のスラリーとなる観点から好ましい。
【0040】
第二工程での反応時間は本製造方法において臨界的ではなく、リンとジルコニウムを含む無定形の化合物が生成するまで十分な時間反応を行えばよい。多くの場合、0.5時間以上、好ましくは1〜4時間で、満足の行く諸物性のタングステン化合物と、リンとジルコニウムを含む無定形の化合物が均一分散したスラリーを生成させることが出来る。
【0041】
反応終了後、第2工程後のスラリーは固液分離せずに、第3工程で該スラリーを全量乾燥することで、第1の方法で本発明で使用する反応前駆体を得ることができる。スラリーを全量乾燥する方法として、特に制限されるものではないが、噴霧乾燥により乾燥処理を行うと原料粒子が密に詰まった状態の造粒物が得られることから、より一層粉末X線回折的には単相のリン酸タングステン酸ジルコニウムが得やすくなる観点から好ましい。
【0042】
噴霧乾燥法においては、所定手段によってスラリーを霧化し、それによって生じた微細な液滴を乾燥させることで反応前駆体を得る。スラリーの霧化には、例えば回転円盤を用いる方法と、圧力ノズルを用いる方法がある。第3工程においてはいずれの方法も用いることもできる。
【0043】
噴霧乾燥法において、霧化された液滴の大きさは特に限定されないが、1〜40μmが好ましく、5〜30μmが特に好ましい。噴霧乾燥装置へのスラリーの供給量は、この観点を考慮して決定することが望ましい。
【0044】
なお、噴霧乾燥装置における熱風温度は、100〜270℃、好ましくは150〜230℃に調整することが粉体の吸湿を防ぎ粉体の回収が容易になることから好ましい。
【0045】
<第2の方法>
以下、第2の方法で前記反応前駆体を製造する方法について説明する。
【0046】
第2の方法に係る第A工程は、水酸化ジルコニウム及び炭酸ジルコニウムから選ばれるジルコニウム化合物、リン酸及びタングステン化合物を含むスラリーを加熱処理する工程である。
【0047】
タングステン化合物を予め均一分散させたスラリーを調製した後に、リン酸及びジルコニウム化合物を添加しないと、タングステン化合物に起因してスラリーの粘性が高くなり、各原料を均一混合処理することが難しい傾向があるが、本発明者らは、タングステン化合物、リン酸及びジルコニウム化合物を含むスラリーを加熱処理することで、粘性が低くなり、メディアミルによる湿式粉砕処理が可能なスラリーが得られることを見出した。従って、第2の方法において、第A工程を施すことにより、リン酸とジルコニウム化合物との反応を行いつつ、タングステン化合物と、リンとジルコニウムを含む無定形の化合物が均一分散したスラリーを一気に得ることが出来る。
【0048】
第A工程に係るタングステン化合物、リン酸及びジルコニウム化合物は、前記第1の方法の第1工程及び第2工程と同じものを用いることが出来る。
【0049】
ジルコニウム化合物のスラリーへの添加量は、スラリー中のタングステン化合物中のW元素に対するジルコニウム化合物中のZr元素のモル比(Zr/W)で1.7〜2.3、好ましくは1.9〜2.1とすることが負の熱膨張が大きなものが得られるという観点から好ましい。
【0050】
リン酸のスラリーへの添加量は、スラリー中のタングステン化合物中のW元素に対するリン酸中のP元素のモル比(P/W)で1.7〜2.3、好ましくは1.9〜2.1とすることが負の熱膨張が大きなものが得られるという観点から好ましい。
【0051】
第A工程に係るタングステン化合物、リン酸及びジルコニウム化合物を分散させる溶媒は、水だけに限らず水と親水性溶媒との混合溶媒であってもよい。
第A工程に係るスラリー濃度は5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%とすることが操作性と取扱いが容易な粘度のスラリーとなる観点から好ましい。
【0052】
なお、第A工程において、各原料の添加順序は特に制限なく、反応装置等を考慮して行うことが好ましいが、タングステン化合物を含むスラリーを調製した後に、該スラリーにリン酸及びジルコニウム化合物を添加することが、より操作性が容易になると言う観点から好ましい。
【0053】
第A工程のスラリー加熱処理温度は、40〜110℃、好ましくは60〜90℃とすることがリン酸とジルコニウム化合物との反応を行いつつ、操作性と取扱いが容易な粘度のスラリーとなる観点から好ましい。
【0054】
第A工程での加熱処理時間は本製造方法において臨界的ではなく、リンとジルコニウムを含む無定形の化合物が生成し、またスラリー粘度が適度に下がるまで十分な時間反応を行えばよい。多くの場合、0.5時間以上、好ましくは1〜4時間で、満足の行く諸物性のタングステン化合物と、リンとジルコニウムを含む無定形の化合物が均一分散した粘性の低いスラリーを生成させることが出来る。
【0055】
次いで、第B工程で、第A工程で得られたスラリーをメディアミルで湿式粉砕処理する。
【0056】
第B工程は、第A工程後のスラリーをメディアミルで湿式粉砕処理して、微細で、且つ均一に各原料が分散されたスラリーを得る工程である。
【0057】
メディアミルとしては、ビーズミル、ボールミル、ペイントシェーカー、アトライタ、サンドミル等を用いることができる。特にビーズミルを用いることが好ましい。その場合、運転条件やビーズの種類及び大きさは、装置のサイズや処理量に応じて適切に選択すればよい。
【0058】
メディアミルを用いた処理を一層効率的に行う観点から、スラリーに、分散剤を加えてもよい。使用する分散剤は、分散媒の種類に応じて適切なものを選択すればよい。分散媒が例えば水である場合には、分散剤として各種の界面活性剤、ポリカルボン酸アンモニウム塩等を用いることができる。スラリーにおける分散剤の濃度は0.01〜10重量%、特に0.1〜5重量%とすることが、分散効果が高くなる観点で好ましい。
【0059】
メディアミルを用いた粉砕処理は、レーザー回折・散乱法により求められる固形分の平均粒子径が2μm以下、好ましくは1μm以下、特に好ましくは0.1〜0.5μmとなるまで行うと一層反応性に優れた反応前駆体を得ることができる観点から好ましい。
【0060】
かくすることにより、微細なタングステン化合物と、リンとジルコニウムを含む無定形の化合物が均一分散した粘性の低いスラリーを調製することができる。
【0061】
反応終了後、第B工程後のスラリーは固液分離せずに、第C工程で該スラリーを全量乾燥することで、第2の方法で本発明で使用する反応前駆体を得ることができる。スラリーを全量乾燥する方法として、特に制限されるものではないが、噴霧乾燥により乾燥処理を行うと原料粒子が密に詰まった状態の造粒物が得られることから、より一層X線回折的には単相のリン酸タングステン酸ジルコニウムが得やすくなる観点から好ましい。
【0062】
噴霧乾燥法においては、所定手段によってスラリーを霧化し、それによって生じた微細な液滴を乾燥させることで反応前駆体を得る。スラリーの霧化には、例えば回転円盤を用いる方法と、圧力ノズルを用いる方法がある。第C工程においてはいずれの方法も用いることもできる。
【0063】
噴霧乾燥法において、霧化された液滴の大きさは特に限定されないが、1〜40μmが好ましく、5〜30μmが特に好ましい。噴霧乾燥装置へのスラリーの供給量は、この観点を考慮して決定することが望ましい。
【0064】
なお、噴霧乾燥装置における熱風温度は、100〜270℃、好ましくは150〜230℃に調整することが粉体の吸湿を防ぎ粉体の回収が容易になることから好ましい。
【0065】
本製造方法では、第1の方法及び第2の方法で得られる反応前駆体に焼結助剤成分を含有させることが出来る。
【0066】
焼結助剤成分としては、例えば、Mg、Zn、Cu、Fe、Cr、Mn、Ni、V、(Li、Al、B、Na、K、F、Cl、Br、I、Ca、Sr、Ba,Ti、Hf,Nb、Ta、Y、Yb、Si、S、Mo、Co、Bi、Te、Pb、Ag,Cd,In,Sn、Sb,Te,Ga、Ge、La、Ce、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy及びHo等から選ばれる元素が挙げられ、これらは1種又は2種以上で用いることが出来る。これらの中、Mg及び/又はVから選ばれる元素が好ましい。
【0067】
前記焼結助剤成分は、該焼結助剤成分を含有する化合物として、第1の方法では、第二工程〜第三工程前のスラリーに、添加することが好ましい。
また、第2の方法では、第A工程〜第B工程前のスラリー、具体的には、第A工程を行う前、第A工程を行っている最中、第A工程の完了後、第B工程を行う前、及び第B工程を行っている最中のうちの少なくとも一つの場面において、該焼結助剤成分を含有する化合物を添加することが好ましい。
【0068】
焼結助剤成分を含有する化合物としては、前記焼結助剤成分を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、アンモニウム塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物等が挙げられ、これらの中、焼結助剤成分を含む酸化物、水酸化物が製品の純度を制御しやすく、高純度品を得やすいという観点から好ましく用いられる。
【0069】
なお、第1の方法及び第2の方法では、添加した焼結助剤成分を含有する化合物がスラリー中に溶解もしくは析出するように、必要によりアルカリや酸でpHを調整することが出来る。
【0070】
焼結助剤成分を含有する化合物のスラリーへの添加量は、得られる反応前駆体に焼結助剤成分として0.05〜5.0質量%、好ましくは0.1〜3.0質量%となるように添加することが好ましい。
【0071】
焼結助剤成分は、反応前駆体中に、添加した焼結助剤成分を含有する化合物としてそのまま含有されていてもよく、添加した焼結助剤成分を含有する化合物がスラリー中で反応して他の焼結助剤成分を含有する化合物に転換して含有されていてもよい。
例えば、焼結助剤成分を含有する化合物として、水酸化物を用いた場合は、スラリー中でリン酸と反応し、焼結助剤成分を含有するリン酸塩に転換して反応前駆体中に含有される場合がある。
なお、反応前駆体中に含有される焼結助剤成分を含有する化合物は結晶質或いは不定形のものであってもよい。
【0072】
本発明では、前記反応前駆体を焼成する焼成工程を設けることにより目的とするリン酸タングステン酸ジルコニウムを得ることが出来る。
【0073】
焼成工程において、反応前駆体を焼成する焼成温度は900〜1300℃である。この理由は焼成温度が900℃未満では未反応の酸化物等が残存しX線回折的に単相のリン酸タングステン酸ジルコニウムを得ることが難しくなる傾向があり、一方、焼成温度が1300℃より高くなると粒子同士が固結した状態の塊になり粉末が得られにくい傾向があるからである。
なお、本製造方法では、低温でX線回折的に単相のリン酸タングステン酸ジルコニウムを得ることが可能なので、この利点を生かすため焼成温度を900〜1100℃として行うことが好ましい。
【0074】
焼成時間は、本製造方法において臨界的ではなく、X線回折的に単相のリン酸タングステン酸ジルコニウムが生成するまで十分な時間反応を行う。多くの場合、1時間以上、好ましくは2〜20時間で、満足の行く諸物性のリン酸タングステン酸ジルコニウムを生成させることが出来る。また、焼成雰囲気は、特に制限されず、不活性ガス雰囲気下、真空雰囲気下、酸化性ガス雰囲気下、大気中のいずれであってもよい。
【0075】
焼成は所望により何度行ってもよい。或いは、粉体特性を均一にする目的で、一度焼成したものを粉砕し、次いで再焼成を行ってもよい。
【0076】
焼成後、適宜冷却し、必要に応じ粉砕、解砕、分級等を行って目的とするX線回折的に単相のリン酸タングステン酸ジルコニウムを得ることができる。
【0077】
本製造方法で得られるリン酸タングステン酸ジルコニウムは、Zr
2(WO
4)(PO
4)
2で表され、X線回折的に単相のリン酸タングステン酸ジルコニウムであることに加えて、走査型電子顕微鏡観察により求められる平均一次粒子径が5μm以下、好ましくは0.1〜4μm、平均二次粒子径が1〜40μm、好ましくは4〜30μmであり、BET比表面積は0.1〜20m
2/g、好ましくは0.1〜10m
2/gであることが、該リン酸タングステン酸ジルコニウムを樹脂やガラス等へのフィラー用として用いる際に、取り扱いが容易になる観点から好ましい。
【0078】
本製造方法で得られるリン酸タングステン酸ジルコニウムは、特に負の熱膨張を示す負熱膨張材として有用であり、本製造方法で得られるリン酸タングステン酸ジルコニウムは0〜400℃の温度範囲における線膨張係数は−3.4〜−2.6ppm/℃、好ましくは−3.4〜−2.8ppm/℃である。
【0079】
本製造方法で得られるリン酸タングステン酸ジルコニウムは、粉体又はペーストとして用いることが出来る。ペーストとして用いる場合には、粘性の低い液状樹脂とのペーストの状態で用いることができる。あるいは、溶解、更に必要によりバインダー、フラックス材及び分散剤等を含有させたペーストの状態で用いても良い。
【0080】
本製造方法で得られるリン酸タングステン酸ジルコニウムは各種有機化合物または無機化合物と併用して複合材料として用いることが出来る。上記有機化合物または無機化合物は特に限定されないが、有機化合物としては、ゴム、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、ABS、ポリアクリレート、ポリフェニレンスルファイド、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂(PET樹脂)およびポリ塩化ビニル樹脂などを挙げることができる。また、無機化合物としては、二酸化ケイ素、グラファイト、サファイア、各種のガラス材料、コンクリート材料、各種のセラミック材料などを挙げることができる。
【0081】
上記複合材料は、本発明に係る負熱膨張材となるリン酸タングステン酸ジルコニウムを含んでいるため、他の化合物との配合比率によって、負熱膨張率、零熱膨張率または低熱膨張率を実現することが可能である。
【実施例】
【0082】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<評価装置>
1.X線回折分析:リン酸タングステン酸ジルコニウムと反応前駆体のX線回折分析は、リガク社 UltimaIVを用いた。線源としてCu−Kαを用いた。測定条件は、管電圧40kV、管電流40mA、走査速度0.1°/secとした。
2.赤外吸収スペクトル(FT−IR)分析:反応前駆体の赤外吸収スペクトル分析は、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製NICOLET6700により、分解能:4cm
-1、積算数:256回、測定波数領域:400cm
-1〜4000cm
-1の条件にて測定した。ATR法により測定し、ATR補正及びスペクトルのスムージング処理を行った。
3.平均粒子径;各原料及びスラリー中の固形分の平均粒子径はレーザー回折・散乱法により、マイクロトラックMT3300EXII粒度分析計(マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定した。
【0083】
{実施例1}
市販の三酸化タングステン(WO
3;平均粒子径1.2μm)15質量部をビーカーに入れ、更に純水84重量部を添加し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を1重量部、仕込んだ。
室温(25℃)でスリーワンモーター攪拌機を用いて120分間撹拌して、三酸化タングステンを含む15質量%スラリーを調製した。スラリー中の固形分の平均粒子径は1.2μmであった。
次いで、このスラリーに水酸化ジルコニウムと、85質量%リン酸水溶液とを、スラリー中のZr:W:Pのモル比が2.00:1.00:2.00となるように室温(25℃)で添加し、2時間撹拌下に反応を行った。
反応終了後、スラリーの全量を200℃で大気下に24時間乾燥を行って、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体についてX線回折を行った結果、三酸化タングステンの回折ピークのみが観察された(図
1参照)。また、FT−IRで分析を行ったところ、950〜1150cm
-1に赤外線吸収ピークを持ち、この間の赤外線吸収ピークの極大値は1027cm
-1に現れた(
図2参照)。
次いで、得られた反応前駆体を950℃で2時間大気中で焼成反応を行い、白色の焼成品を得た。
得られた焼成品をX線回折分析したところ、焼成品は単相のZr
2(WO
4)(PO
4)
2であった(
図3参照)。
【0084】
{実施例2}
市販の三酸化タングステン(WO
3;平均粒子径25μm)15質量部を秤量しタンクに仕込んだ。タンクに純水84重量部、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を1重量部、仕込んだ。
次いで、スラリーを攪拌しながら、直径0.5mmのジルコニアビーズを仕込んだメディア攪拌型ビーズミルに供給し、15分間混合して湿式粉砕を行った。湿式粉砕後のスラリー中の固形分の平均粒子径は0.3μmであった。
次いで、このスラリーに水酸化ジルコニウムと、85質量%リン酸水溶液とを、スラリー中のZr:W:Pのモル比が2.00:1.00:2.00となるように室温(25℃)で添加し、2時間撹拌下に反応を行った。
反応終了後、220℃に設定したスプレードライヤーに、2.4L/hの供給速度でスラリーを供給し、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体について、X線回折を行った結果、三酸化タングステンの回折ピークのみが観察された。また、FT−IRで分析を行ったところ、950〜1150cm
-1に赤外線吸収ピークを持ち、この間の赤外線吸収ピークの極大値は1030cm
-1に現れた。
次いで、得られた反応前駆体を950℃で2時間大気中、焼成反応を行い、白色の焼成品を得た。
得られた焼成品をX線回折分析したところ、焼成品は単相のZr
2(WO
4)(PO
4)
2であった。
【0085】
{比較例1}
市販の三酸化タングステン(WO
3;平均粒子径25μm)7質量部と市販の酸化ジルコニウム(ZrO
2;平均粒子径6.5μm)とを秤量しW:Zrのモル比が2.00:1.00となるようにタンクに仕込んだ。タンクに純水84重量部、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を1重量部を加え、固形分濃度が15%のスラリーを調製した。
次いで、スラリーを攪拌しながら、直径0.5mmのジルコニアビーズを仕込んだメディア攪拌型ビーズミルに供給し、15分間混合して湿式粉砕を行った。湿式粉砕後のスラリー中の固形分の平均粒子径は0.3μmであった。
次いで、このスラリーに85質量%リン酸水溶液を、スラリー中のZr:W:Pのモル比が2.00:1.00:2.00となるように添加し、室温(25℃)で2時間撹拌を行った。
反応終了後、スラリーの全量を200℃で大気下に24時間乾燥を行って、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体についてX線回折を行った結果、三酸化タングステンと酸化ジルコニウムの回折ピークが観察された(
図4参照)。
次いで、得られた反応前駆体を950℃で2時間大気中で焼成反応を行い、緑白色の焼成品を得た。
得られた焼成品をX線回折分析したところ、焼成品は異相を多く含むものでZr
2(WO
4)(PO
4)
2の生成は僅かであった(
図5参照)。
【0086】
<物性評価>
実施例1〜2及び比較例1で得られたリン酸タングステン酸ジルコニウムについて、平均一次粒子径、平均二次粒子径、BET比表面積及び熱膨張係数を測定した。その結果を表1に示す。また、実施例2で得られたリン酸タングステン酸ジルコニウムのSEM写真を
図6に示す。
【0087】
(平均一次粒子径の評価)
リン酸タングステン酸ジルコニウムの平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡観察において倍率5千倍で任意に抽出した粒子50個以上の平均値により求めた。
(平均二次粒子径の評価)
リン酸タングステン酸ジルコニウムの平均二次粒子径は、走査型電子顕微鏡観察において倍率400倍で任意に抽出した粒子50個以上の平均値により求めた。
(線膨張係数の評価)
昇温機能が付いたXRD装置(リガク社 UltimaIV)にて、昇温速度20℃/minで、目標温度に到達してから10分後に試料のa軸、b軸、c軸に対する格子定数を測定し、格子体積変化(直方体)を線換算して線膨張係数を求めた(J. Mat. Sci.,35(2000)2451−2454参照)。
【0088】
【表1】
注)表中の「−」は未測定を示す。
【0089】
{実施例3}
市販の三酸化タングステン(WO
3;平均粒子径1.2μm)15質量部をビーカーに入れ、更に純水84重量部を添加した。
室温(25℃)で120分間撹拌して、三酸化タングステンを含む15質量%スラリーを調製した。スラリー中の固形分の平均粒子径は1.2μmであった。
次いで、このスラリーに水酸化ジルコニウムと、85質量%リン酸水溶液と水酸化マグネシウムとを、スラリー中のZr:W:P:Mgのモル比が2.00:1.00:2.00:0.1となるように室温(25℃)で添加した後、80℃に昇温して4時間撹拌下に反応を行った。
反応終了後、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を1重量部、仕込み、スラリーを攪拌しながら、直径0.5mmのジルコニアビーズを仕込んだメディア攪拌型ビーズミルに供給し、15分間混合して湿式粉砕を行った。湿式粉砕後のスラリー中の固形分の平均粒子径は0.3μmであった。
次いで、220℃に設定したスプレードライヤーに、2.4L/hの供給速度でスラリーを供給し、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体について、X線回折を行った結果、三酸化タングステンの回折ピークのみが観察された(
図7参照)。また、FT−IRで分析を行ったところ、950〜1150cm
−1に赤外線吸収ピークを持ち、この間の赤外線吸収ピークの極大値は1042cm
−1に現れた(
図8参照)。
なお、焼結助剤成分のMgは、スラリー中でのリン酸と水酸化マグネシウムとの反応により、反応前駆体中で不定形のリン酸マグネシウムとして存在しているものと推測される。
次いで、得られた反応前駆体を1050℃で2時間大気中で焼成反応を行い、白色の焼成品を得た。
得られた焼成品をX線回折分析したところ、焼成品は単相のZr
2(WO
4)(PO
4)
2であった(
図9参照)。
【0090】
{実施例4}
市販の三酸化タングステン(WO
3;平均粒子径1.2μm)15質量部をビーカーに入れ、更に純水84重量部を添加し、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を1重量部、仕込んだ。
室温(25℃)で120分間撹拌して、三酸化タングステンを含む15質量%スラリーを調製した。スラリー中の固形分の平均粒子径は1.2μmであった。
次いで、このスラリーに水酸化ジルコニウムと、85質量%リン酸水溶液と水酸化マグネシウムと五酸化二バナジウムとを、スラリー中のZr:W:P:Mg:Vのモル比が2.00:1.00:2.00:0.1:0.05となるように室温(25℃)で添加した後、80℃に昇温して4時間撹拌下に反応を行った。
反応終了後、スラリーを攪拌しながら、直径0.5mmのジルコニアビーズを仕込んだメディア攪拌型ビーズミルに供給し、15分間混合して湿式粉砕を行った。湿式粉砕後のスラリー中の固形分の平均粒子径は0.3μmであった。
次いで、220℃に設定したスプレードライヤーに、2.4L/hの供給速度でスラリーを供給し、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体について、X線回折を行った結果、三酸化タングステンの回折ピークのみが観察された。また、FT−IRで分析を行ったところ、950〜1150cm
−1に赤外線吸収ピークを持ち、この間の赤外線吸収ピークの極大値は1030cm
−1に現れた。
なお、焼結助剤成分のMgは、スラリー中でのリン酸と水酸化マグネシウムとの反応により、反応前駆体中で不定形のリン酸マグネシウムとして存在しているものと推測される。一方、焼結助剤成分のVは、X線回折では、検出限界以下であるため回折ピークは検出されなかったが、五酸化二バナジウムとして反応前駆体中に存在しているものと推測される。
次いで、得られた反応前駆体を1050℃で2時間大気中で焼成反応を行い、白色の焼成品を得た。
得られた焼成品をX線回折分析したところ、焼成品は単相のZr
2(WO
4)(PO
4)
2であった。
【0091】
{実施例5}
市販の三酸化タングステン(WO
3;平均粒子径1.2μm)15質量部をビーカーに入れ、更に純水84重量部を添加した。
室温(25℃)で120分間撹拌して、三酸化タングステンを含む15質量%スラリーを調製した。スラリー中の固形分の平均粒子径は1.2μmであった。
次いで、このスラリーに水酸化ジルコニウムと、85質量%リン酸水溶液と水酸化マグネシウムとを、スラリー中のZr:W:P:Mgのモル比が2.00:1.00:2.00:0.1となるように室温(25℃)で添加した後、80℃に昇温して4時間撹拌下に反応を行った。
反応終了後、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を1重量部、仕込み、スラリーを攪拌しながら、直径0.5mmのジルコニアビーズを仕込んだメディア攪拌型ビーズミルに供給し、15分間混合して湿式粉砕を行った。湿式粉砕後のスラリー中の固形分の平均粒子径は0.3μmであった。
次いで、220℃に設定したスプレードライヤーに、2.4L/hの供給速度でスラリーを供給し、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体について、X線回折を行った結果、三酸化タングステンの回折ピークのみが観察された。また、FT−IRで分析を行ったところ、950〜1150cm
−1に赤外線吸収ピークを持ち、この間の赤外線吸収ピークの極大値は1030cm
−1に現れた。
なお、焼結助剤成分のMgは、スラリー中でのリン酸と水酸化マグネシウムとの反応により、反応前駆体中で不定形のリン酸マグネシウムとして存在しているものと推測される。
次いで、得られた反応前駆体を960℃で2時間大気中で焼成反応を行い、白色の焼成品を得た。これを気流式粉砕機で粉砕して粉砕品を得た。
得られた焼成品をX線回折分析したところ、焼成品は単相のZr
2(WO
4)(PO
4)
2であった。
【0092】
{実施例6}
市販の三酸化タングステン(WO
3;平均粒子径1.2μm)15質量部をビーカーに入れ、更に純水84質量部を添加した。
室温(25℃)で120分間撹拌して、三酸化タングステンを含む15質量%スラリーを調製した。スラリー中の固形分の平均粒子径は1.2μmであった。
次いで、このスラリーに水酸化ジルコニウムと、85質量%リン酸水溶液とを、スラリー中のZr:W:Pのモル比が2.00:1.00:2.00となるように室温(25℃)で添加した後、80℃に昇温して4時間撹拌下に反応を行った。
反応終了後、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム塩を1質量部、仕込み、スラリーを撹拌しながら、直径0.5mmのジルコニアビーズを仕込んだメディア撹拌型ビーズミルに供給し、15分間混合して湿式粉砕を行った。湿式粉砕後のスラリー中の固形分の平均粒子径は0.3μmであった。
次いで、220℃に設定したスプレードライヤーに、2.4L/hの供給速度でスラリーを供給し、反応前駆体を得た。得られた反応前駆体について、X線回折を行った結果、三酸化タングステンの回折ピークのみが観察された。また、FT−IRで分析を行ったところ、950〜1150cm
−1に赤外線吸収ピークを持ち、この間の赤外線吸収ピークの極大値は1042cm
−1に現れた。
次いで、得られた反応前駆体を1220℃で8時間にわたり大気中で焼成反応を行い、白色の焼成品を得た。
得られた焼成品をX線回折分析したところ、焼成品は単相のZr
2(WO
4)(PO
4)
2であった。
【0093】
<物性評価>
実施例3〜6で得られたリン酸タングステン酸ジルコニウムについて、実施例1〜2及び比較例1と同様にして平均一次粒子径、平均二次粒子径、BET比表面積及び線熱膨張係数を測定した。その結果を表2に示す。また、実施例3で得られたリン酸タングステン酸ジルコニウムのSEM写真を
図10(上;30000倍、下;400倍)に示す。
【0094】
【表2】
注);1)実施例5の平均二次粒子径は明確な二次粒子は観察されず、ほとんどが一次粒子として観察された。
【解決手段】タングステン化合物、リン、ジルコニウムを含む不定形化合物の混合物を反応前駆体とし、該反応前駆体を焼成することを特徴とする。前記反応前駆体は、少なくとも950〜1150cm