(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロセッサ回路は、被検者のエピソードに応答して前記入院イベントを識別するように構成されており、前記プロセッサ回路は、1つまたは複数の生理センサを使用して取得した前記生理信号特性にそれぞれ対応するプレエピソード生理信号特性を含むプレホスピタル生理信号特性を識別するように構成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のシステム。
前記プロセッサ回路は、被検者の心不全代償不全エピソードに応答して、入院イベントを識別するように構成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のシステム。
前記被検者に結合した埋め込み型電気刺激デバイスを備え、前記プロセッサ回路は、前記埋め込み型電気刺激デバイスによって前記被検者に提供された療法の療法パラメータを、特定された前記心不全パラメータに基づいて特定するように構成されており、前記療法パラメータは、AV遅延、VV遅延、上限レート、下限レート、電気刺激パルスの大きさ、電気刺激パルスの持続期間、電気刺激パルスの形状、電気刺激パルスが被検者に送達された位置のうちの1つを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシステム。
心音信号を提供するように構成された心音センサを備えており、前記プロセッサ回路は、前記心音信号を使用してプレホスピタル心音振幅を識別するため、および、対応するプレホスピタル振幅とは異なるポストホスピタル心音振幅を識別するために、前記心音信号をモニタするように構成されており、前記プロセッサ回路は、前記心音センサを使用して、後続の心音振幅を前記1つの後続の生理信号としてモニタするように構成されており、前記プロセッサ回路は、前記後続の心音振幅が前記プレホスピタル心音振幅に向かう傾向を示すかどうかに関する情報を使用して、前記心不全パラメータを特定するように構成されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシステム。
心音信号を提供するように構成された心音センサを備え、前記プロセッサ回路は、前記心音信号を使用して、前記プレホスピタル生理信号特性のうちの少なくとも1つとしてプレホスピタル心音タイミング特性を識別するために、心音信号をモニタするように構成されており、前記プロセッサ回路は、対応するプレホスピタルタイミング特性とは異なるポストホスピタル心音タイミング特性を、1つまたは複数のポストホスピタル生理信号特性のうち少なくとも1つとして識別するように構成されており、前記プロセッサ回路は、前記心音センサを使用して、後続の心音タイミング特性を前記後続の生理信号としてモニタするように構成されており、前記プロセッサ回路は、前記後続の心音タイミング特性がプレホスピタル心音タイミング特性に向かう傾向を示すかどうかに関する情報を使用して、前記心不全パラメータを特定するように構成されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステム。
前記プロセッサ回路は、被検者の心不全の未治療部分を示す1つまたは複数のポストホスピタル生理信号特性を、対応する1つまたは複数のプレホスピタル生理信号特性とは異なる1つまたは複数のポストホスピタル生理信号特性として識別するように構成されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシステム。
前記プロセッサ回路は、前記1つまたは複数の生理センサを使用して取得した前記複数の生理信号に対応しているベースライン生理信号特性を、前記プレホスピタル生理信号特性として識別するように構成されている、請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載のシステム。
前記プロセッサ回路は、対応するベースライン生理信号特性に対する前記後続の生理信号特性に関する情報を自動的に処理することにより、前記心不全パラメータを特定するように構成されている、請求項12に記載のシステム。
前記プロセッサ回路は、特定された前記心不全パラメータを使用して、前記被検者の療法パラメータを更新するように構成されている、請求項1〜14のいずれか一項に記載のシステム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一般に、心不全被検者は、退院後または治療イベント後の最初の数日間または数週間に、有害心イベントの有害転帰を最も生じやすい。退院後の指定期間(例えば、30日間)における被検者の再入院について保険供給者の支払いを削減するという最近の傾向を考えれば、退院後、またはそれ以外の時に健康状態が低下している被検者を識別すること、さらに、埋め込み型医療デバイスの動作特性を更新(例えば、変更)するなどのその被検者が利用できる1つまたは複数の療法を、任意選択的に開始、調整、あるいは最適化することが望ましい。
【0012】
一例では、健康状態が減退している、または不変の被検者を識別することができる。例えば、心不全増悪の症状を呈している被検者の識別が可能である。一例では、こうした被検者を識別する1つのアプローチは、被検者の療法期中に他よりも変化が大きい被検者の臨床状態または生理機能のこれらの局面を追跡することで、例えば、このような局面が逆戻りあるいは変化するかどうかを特定することを含む。
【0013】
一例では、被検者は、療法イベント(例えば、入院イベント、臨床治療、投薬など)の前、最中、後などに、複数のセンサによってモニタされる。識別された有害イベント(エピソード発症または入院期間など)と退院との間に、いくつかのセンサからの信号の変化が他よりも大きくなることがある。このような変化は被検者への治療の効果を示す。例えば、心不全で入院した被検者は利尿剤で治療することができる。治療が効果的であれば、治療期間中に被検者の体重が減少する。したがって、被検者の体重変化はその被検者への治療の効果を示す指標である。
【0014】
一例では、いくつかのセンサ(体重センサ、酸素測定センサ、心拍センサ、ECG(心電図:Electrocardiogram)センサ、血管圧センサなどの第1タイプのセンサ)から受信された被検者に関する特性情報が、例えば同じ治療または期間に応答して、他のセンサ(第1タイプと異なる第2タイプのセンサ)からの被検者に関する特性情報よりも大きく変化し得る。一例では、利用可能な被検者のセンサのサブセットに対応するなどして、より大きく変化する特性情報は、治療に最も影響されるまたは反応する被検者の臨床状態または生理機能の或る局面を表し得る(つまり、治療効果を表す)。一例では、最も変化が大きい特性情報を受信または提供するセンサのサブセットを、被検者の退院後などにおいてもさらにモニタすることができる。例えば、被検者の治療レジメンが効果を消失している、または患者に再発が生じているので再入院が必要であるかもしれないと示すなど、センサのサブセットによって受信した特性情報が、入院値へなど所定量で変化した場合、被検者の健康状態の増悪の指標が提供される。このような指標を使用して、埋め込み型医療デバイスやその他の医療デバイスが提供する被検者の療法を自動的に変更することができる。
【0015】
一例では、被検者が心不全または他の健康増悪イベントに近づくにつれ、心不全増悪を表すなど、複数の各種センサからの被検者の特性情報が心不全増悪を表すように変化する傾向にある。被検者が病院や他所などで治療を受けると、センサからの被検者の特性情報は一般に退院時のベースライン水準に戻ることが予想される。しかしながら、被検者が受ける治療の適切性、または治療に反応しているセンサ測定の時間経過に応じてなど、いくつかのセンサに対応した被検者特性情報がベースライン値に戻る(あるいは傾く)一方で、他のセンサに対応した他の被検者特性情報はベースライン値に戻らないこともある。一例では、ベースラインに戻る被検者特性情報自体を退院基準として使用することができる。一例では、センサのサブセットに対応した被検者特性情報が退院時のベースラインに戻らない場合には(例えば、最適以下の退院シナリオ)、この情報は、被検者の心不全の残りの部分、または未治療部分を表している可能性がある。一例では、センサのサブセットからの情報は、退院または治療後に、徐々にベースラインに傾くまたは戻ることが予想される。しかし、センサのサブセットからの情報が増悪状態の入院レベル(例えば、ベースラインと入院レベルとの間の所定量の差異)に留まっている場合には、情報は、被検者が十分に回復しておらず、再入院が必要であるかもしれないことを示している可能性がある。
【0016】
一例では、被検者の療法を、被検者の再入院の回避を試みるように提供または更新す
ることができる。例えば、上述した治療の漸減によって再入院の警告がトリガされた場合に、被検者のさらなる逆戻りを停止または禁止するべく最適化されたパラメータのセットを識別するために、プログラミングパラメータを繰り返すようにデバイスを構成することができる。例えば、被検者の生理的センサセットを使用して治療効果を識別した場合センサセットからの情報は入院と退院の間で最も大きく変化するので、そのセンサセットは治療への被検者の反応を表す。センサセットからの情報が、過去の入院レベルへ所定量で変化すると、デバイス療法が、増悪した被検者の健康状態傾向を好転させるべくデバイスパラメータを選択するなど、自動的に更新または最適化される。一例は、例えば一時的に、急性の水分過負荷を緩和させるなど、CRT(心臓再同期療法:Cardiac Resynchronization Therapy)デバイスの下限レートを引き上げることを含む。
【0017】
一例では、入院レベルに留まっている被検者の生理的特徴情報によって再入院警告をトリガし、デバイス特性の調整により療法が同様に更新または最適化される。一例では、被検者の療法の更新には、AV(心房心室:Atrio−Ventricular)遅延インターバル、VV(左心室右心室:Left Ventricular−Right Ventricular)遅延インターバル、ペーシング下限レート、電気刺激振幅閾値、LV(左心室:Left Ventricle)ペーシング電極構成(つまり、4極リードを使用する)のうちの1つまたは複数を調整すること、あるいは速度応答性または活動応答性のモードに変更したりそこから変更したりまたは強制心房ペーシングモードに変更したりそこから変更したりといった、ペーシングモードを変更することを含む。最適化できるその他のデバイスパラメータのいくつかの例には、とりわけペーシング電圧、ペーシングパルス幅が含まれる。
【0018】
一例では、心音センサからの情報を使用して、1つまたは複数のデバイスパラメータを更新または調整することができる。一例では、心音に関する情報、例えば心音インターバルまたはその他の特性を使用して、迷走神経または神経刺激を調整することができる。迷走神経刺激の必要性を示す心音のいくつかの特性には、S1振幅の減少、S3振幅の増加、R−S2インターバルの減少、R−S1インターバルの増加(駆出前期間、またはPEP(Pre−Ejection Period))、S1−S2インターバル(心音駆出時間)の減少、PEP/HSET(心音駆出時間:Heart Sound Ejection Time)比の増加が含まれる。
【0019】
様々な埋め込み型または外部のシステムは、1つまたは複数の被検者生理信号をモニタするために使用できる被検者生理センサを設けることができる。例えば、
図1は、埋め込み型システムを装着している被検者101の一例100を概略的に示す。埋め込み型システムは、被検者の療法を提供し、また、インピーダンス情報、心音情報、生理的な拍動信号情報、または被検者に関するその他の情報を含む被検者の生理信号情報を検出または受信するために使用できる。
図1の例では、埋め込み型システムは埋め込み型医療デバイス(IMD:Implantable Medical Device)105を含んでいる。埋め込み型医療デバイス105は、1つまたは複数の第1埋め込み型リードシステム108Aおよび第2埋め込み型リードシステム108Bに結合するように構成されることができる。一例では、第1埋め込み型リードシステム108Aは、被検者身体101内の神経組織または頚部血管と相互作用するように構成され、第2埋め込み型リードシステム108Bは心臓組織と相互作用するように構成されている。一例では、IMD105は、複数の被検者センサから受信したような被検者生理情報を使用して、増悪健康イベントおよび治療の後の被検者の健康状態を識別するように構成されることができる。心臓デバイスと神経調整デバイスの組み合わせについては、アマサー(Amurthur)らによる米国特許第7664548号明細書「DISTRIBUTED NEUROMODULATION SYSTEM FOR TREATMENT OF CARDIOVASCULAR DISEASE」、リバス(Libbus)らによる米国特許第7647114号明細書「BAROREFLEX MODULATION BASED ON MONITOREDCARDIOVASCULAR PARAMETER」、リバス(Libbu
s)らによる米国特許第8005543号明細書「HEART FAILURE MANAGEMENT SYSTEM」にてさらに記載されており、上記特許は引用によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0020】
IMD105は、1つまたは複数の刺激回路または感知回路に動作可能に接続した導電性ハウジング107およびプロセッサ回路110を含む。IMD105は、IMD105内に設置された全ての回路と自律的に動作するように構成され、且つ1つまたは複数のその他のデバイス(例えば、他のIMDおよびプログラミングデバイスや分析回路のような外部デバイス、あるいは他のIMDまたはプログラミングデバイスや分析回路のような外部デバイス)と協働するように構成されることができる、あるいはIMD105内に設置された全ての回路と自律的に動作するように構成されるかもしくは1つまたは複数のその他のデバイスと協働するように構成されることができる。IMD105は、神経刺激療法を送達し、ペースメーカや除細動デバイスといった異なる心律動管理(CRM:Cardiac Rhythm Management)デバイスと通信するように構成されることができる。CRMデバイスは、生理パラメータまたは応答を感知したり、心律動管理療法を提供したりするように構成されることができる。
【0021】
一例では、IMD105は、外部システム125または他のデバイスと無線通信するために使用できるような、通信回路およびアンテナ、または遠隔測定コイルを含むことができる。システム100は、IMD105のハウジングに配置できるような、1つまたは複数のリードレスECG(心電図)電極109またはその他の電極を含むことができる。これらの電極は、他の心周期の特性の中でもとりわけ心拍数または心臓不整脈を検知するために使用できる。例えば、QRS波群の起点または関心点を識別するためなどに、リードレスECG電極109から受信した情報をプロセッサ回路110で分析して、被検者の電位図の特徴を識別することができる。一例では、心不全分析モジュールはIMD105と外部システム125を含んでいる。一例では、心不全分析モジュールは、例えばIMD105内のプロセッサ回路110、あるいは外部システム125内の1つまたは複数のその他のプロセッサ回路のように、生理センサから情報を受信し、心不全パラメータなどの被検者健康状態の指標を提供することが可能な、1つまたは複数のプロセッサ回路を含むことができる。
【0022】
外部システム125は、遠隔医療デバイスプログラミングデバイスまたは1つまたは複数のその他の遠隔外部モジュール(例えば、IMD105アンテナの無線通信範囲外にあるが、リピータまたはネットワーク・アクセスポイントのような外部デバイスを使用してIMD105に結合している)を含むことができる。外部システム125は、IMD105へ送信、またはIMD105から受信可能な情報を処理するように構成された専用プロセッサ回路を含むことができる。この情報に医療デバイスプログラミング情報、サブジェクトデータ、デバイスデータ、命令、警告、その他の情報を含むことができる。一例では、外部システム125は、情報(IMD105から受信した情報など)をユーザに表示するように構成された外部デバイス120を含む。さらに、ローカルのプログラミングデバイスまたはリモートのプログラミングデバイスは、送信または受信された情報を、被検者101またはシステム100の状態の警告を(電子メールなどで)送ることにより、ユーザまたは医師に通信するように構成されることができる。一例では、IMD105内のプロセッサ回路110、または外部システム125内の別のプロセッサ回路は、心不全分析モジュールの一部であるものと考えられる。
【0023】
一例では、IMD105は、第1埋め込み型リードシステム108Aに結合することができる。第1埋め込み型リードシステム108Aは、被検者身体101の頚部(例えば、首またはその付近の領域)の神経ターゲットを刺激するべく電極を位置決めするために皮下に埋め込むことができる、少なくとも1つの神経刺激リードを含むことができる。頚部
神経ターゲットの例には、迷走神経、頚動脈洞神経、舌下神経、舌咽神経、横隔膜神経、さらに、圧受容器およびこれを刺激しこれに近接している神経、化学受容器およびこれを刺激しこれに近接している神経が含まれる。神経ターゲットは、左側(例えば、左迷走神経)または右側(例えば、右迷走神経)にあってよい。さらに、左右両側の神経ターゲットを刺激することもできる。その他の神経刺激リードは、頚部領域外の神経ターゲットを刺激するように構成された電極を含むことができる。例えば、電極は、腹部付近の迷走神経を刺激するように構成されてよい。
【0024】
神経ターゲットの近位に、またはこれと接触して配置された埋め込み型電極を使用して、神経電気刺激を提供することができる。第1神経カフ電極のような第1電極111を、神経刺激リードの端部に配置できる。一例では、第1電極111は、迷走神経103の周囲に配置されサイズ、形状にできる、あるいはそのように構成できる神経カフ電極を含むことができる。1つまたは複数の追加の神経カフ電極、例えば第2電極112も同様に設けることができる。一例では、神経刺激は、第1電極111および第2電極112を双極構成にて使用することで提供してもよい。一例では、第1電極111および第2電極112を使用して、神経または筋肉の電気的活動を検出する、あるいは、電気応答信号を提供および検出または提供もしくは検出することができる。
【0025】
その他のいくつかの迷走神経刺激の例には、例えば神経ターゲットを血管内で刺激するために血管内に位置決めした電極を使用できるように、迷走神経103付近の血管内に供給できるサイズ、形状にできる、あるいはそのように構成できる1つまたは複数の電極を含むことができる。例えば、頚静脈102または頚動脈104内部に位置決めした少なくとも1つの電極を使用して、神経ターゲットを刺激することができる。神経刺激は、IMD105の導電性ハウジング107が電極として機能する場合のような、双極刺激または単極刺激であってよい。
【0026】
図1に示すような一例では、IMD105を第2埋め込み型リードシステム108Bに結合できる。第2埋め込み型リードシステム108Bは、心筋または神経の心臓組織などの心臓組織を刺激するために、1つまたは複数の電極を位置決めするように皮下に埋め込んで配置することができる心臓電気刺激用刺激リードを含むことができる。一例では、第2埋め込み型リードシステム108Bは、ペーシングおよびカルディオバージョン/除細動のための1つもしくは複数の電極、またはペーシングもしくはカルディオバージョン/除細動のための1つもしくは複数の電極をそれぞれ設けた複数の心房リードおよび心室リードを含むことができる。
【0027】
図1の例は、外部システム125、およびIMD105と外部システム125との間の双方向通信を提供するテレメトリリンク115をさらに含む。一例では、外部システム125はプログラミングデバイスを含む。
図1に示すように別の例では、外部システム125は、IMD105の付近の外部デバイス120と、IMD105から比較的離れた場所にある遠隔デバイス124と、外部デバイス120を遠隔デバイス124とつなぐ電気通信ネットワーク122とを含んだ被検者管理システムであり得る。一例では、外部システム125は、例えば被検者の状態をモニタする、または被検者の療法またはデバイスパラメータを調整するなどの目的で、遠隔位置からIMD105へのアクセスを可能にする被検者管理システムである。
【0028】
一例では、テレメトリリンク115は誘導性テレメトリリンクである。別の実施形態では、テレメトリリンク115はファーフィールド無線周波数(RF)テレメトリリンクである。テレメトリリンク115は、IMD105から外部システム125へのデータ送信を提供する。これには、例えば、IMD105が取得したリアルタイム生理データを送信すること、IMD105が取得し、IMD105に記憶されている生理データを抽出する
こと、IMD105記録されている、不整脈の発生、代償不全の発生、療法送達を示すデータのような被検者履歴データを抽出すること、IMD105の動作状態を示すデータ(バッテリ状態、リードインピーダンスなど)を抽出することを含んでいてよい。テレメトリリンク115は、さらに、外部システム125からIMD105へのデータ送信を提供する。これには、例えば、1つまたは複数の被検者センサを使用して生理データを取得するようにIMD105をプログラムすること、少なくとも1つの自己診断テスト(デバイスの動作状態を識別または決定するためなどのもの)を行うようにIMD105をプログラムすること、少なくとも1つの療法を送達するようにIMD105をプログラムすること、または心不全に関連したデータを分析するようにIMD105に命令することとを含んでよい。
【0029】
一例では、IMD105および外部システム125のうち少なくとも一方が、少なくともIMD105が取得した診断データを使用して、心不全被検者の入院管理を提供できる心不全分析デバイスを含んでいる。心不全分析デバイスは、心不全被検者の療法モニタリング、リスク階層化、入院中における退院計画のため、また、被検者の入院後のモニタリングおよび介入のために(例えば、ポストホスピタルモードまたはポストエピソードモードで)、被検者の診断データを分析することができる。いくつかの例では、心不全分析デバイスの少なくとも一部が、IMD105と外部システム125の両方に設けられている。心不全分析デバイスは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせを使用して実現できる。いくつかの例では、心不全分析デバイスの各素子でその特定の実施形態を含むものは、1つまたは複数の特定の機能を実行するように構成されたアプリケーション固有の回路、またはこのような機能を果たすようにプログラムされた汎用回路を使用して実現されている。このような汎用回路は、1つまたは複数のセンサから受信した被検者に関する情報を受信または保存するように構成できる、マイクロプロセッサまたはその一部、マイクロコントローラまたはその各部、プログラマブル論理回路またはその一部を非限定的に含む。
【0030】
図2は、IMD105の例を概略的に示す。IMD105はプロセッサ回路110を含む。IMD105は電気エネルギー送達回路250をさらに含み、この電気エネルギー送達回路250は、定電流源または定電圧源を使用して、例えば、頚部、胸部、心臓領域、またはその他の身体領域内に配置された2つ以上の電極間において(例えば、第1埋め込み型リードシステム108Aまたは第2埋め込み型リードシステム内の1つまたは複数の電極を使用して)電気信号を送達するように構成できる。一例では、電気送達回路250は、神経ターゲットに電気刺激を提供するように構成された埋め込み型および/または外部電極251を備えた神経電気刺激回路に結合している。一例では、電気送達回路250は、被検者の心臓または心臓付近に電気刺激を提供するように構成された埋め込み型および/または外部電極251を備えた心臓電気刺激回路に結合している。
図2の例では、テレメトリ回路235がプロセッサ回路110に接続している。テレメトリ回路235は、IMD105から外部デバイス120のような隣接したシステムにデータを送信することができる。送信されたデータは、とりわけ、IMD105に結合している1つまたは複数のセンサからのデータ、またはIMD105が生成した診断情報、IMD105に関するデバイス構成もしくはプログラム情報を含むことができる。
【0031】
一例では、プロセッサ回路110は、例えば複数のセンサデータ入力を使用する1つまたは複数の生理センサに結合している。例えば、プロセッサ回路110のデータ入力部は、音響センサ201、デバイスベースのまたはその他のECGセンサ202、振動センサ203、血行動態センサ204、インピーダンスセンサ205、呼吸センサ206、化学センサ207、姿勢センサ208、またはその他の生理センサ209のうちの1つまたは複数に結合できる。一例では、プロセッサ回路110は、1つまたは複数の生理センサから受信した情報を用いて、被検者生理情報(例えば、駆出率、駆出前期間など)を計算ま
たは導出するように構成されている。一例では、プロセッサ回路110は、被検者の増悪または改善している健康状態の定量化を含む、被検者に関する心不全パラメータを提供するように構成されたデータ出力部を含む。
【0032】
一例では、音響センサ201はプロセッサ回路110に結合している。音響センサ201は、マイクロホンや加速度計といった埋め込み型または外部のトランスデューサであり得る。音響センサ201は、被検者から可聴スペクトルでのような振動エネルギーを受信するように構成できる。一例では、プロセッサ回路110の一部は、音響センサ201からの情報を受信し、心音情報、呼吸情報、あるいはその他の生理情報のうちの1つまたは複数を識別するように構成できる。例えば、音響センサ201からの情報を使用して、S1心音タイミングまたは振幅特性を識別したり、S3心音またはS4心音の存在を識別したりすることができる。
【0033】
一例では、ECGセンサ202はプロセッサ回路110に結合している。ECGセンサ202は埋め込み型または外部のセンサであり得る。例えば、ECGセンサ202は、被検者の身体101内または身体上に配置され、被検者身体101からの電気的活動を検出するように構成された、少なくとも2つの電極を含むことができる。一例では、ECGセンサ202は、被検者身体101内に2つの埋め込み型電極(例えば、第2埋め込み型リードシステム108B内に含まれているような、心臓106内または心臓106上に配置された缶電極および遠隔電極)を含んでいる。プロセッサ回路110は、ECGセンサ202から電位図情報を受信するように構成されることができる。一例では、プロセッサ回路110は、受信した電位図情報を使用して、被検者のQRS波群の形態特性(例えば、タイミング、振幅、形状など)を識別できる。
【0034】
一例では、振動センサ203はプロセッサ回路110に結合している。振動センサ203は、加速度計のような埋め込み型または外部のトランスデューサであり得る。振動センサ203は、心臓活動レベル、呼吸活動レベル、あるいは、相対的な運動または労作レベルのようなその他の被検者身体活動レベルのうちの1つまたは複数を識別するために使用できる振動エネルギーを被検者から受信するように構成されることができる。一例では、プロセッサ回路110の一部は、振動センサ203から情報を受信し、心音情報、呼吸情報、その他の生理情報のうちの1つまたは複数を識別するように構成されることができる。
【0035】
一例では、血液動態センサ204がプロセッサ回路110に結合している。血行動態センサ204は、心内圧または血管圧を連続または断続的にモニタするように構成された埋め込み型センサのような、埋め込み型または外部の圧力センサであり得る。一例では、血行動態センサ204は、RV(右心室:Right Ventricle)またはIMD105の心房リードに結合した圧力センサを含むことができ、あるいは血行動態センサ204は、肺動脈内に配置された圧力センサを代替的または追加的に含むことができる。プロセッサ回路110は、血行動態センサ204から圧力情報を受信するように構成されることができる。
【0036】
一例では、インピーダンスセンサ205はプロセッサ回路110に結合している。インピーダンスセンサ205は、被検者の身体101に埋め込み可能またはその外部に配置でき、あるいは、埋め込み型の部分と外部部分の両方を含んでいてもよい。一例では、インピーダンスセンサ205は、被検者の身体101内または身体101上に配置された少なくとも2つの電極を含んでおり、また、例えば、同じまたは異なる少なくとも2つの電極を使用して被検者身体101に提供された非組織刺激性の電気刺激に応答して、被検者身体101からの応答性電気信号を検出するように構成されている。一例では、インピーダンスセンサ205は、被検者身体101内に2つの埋め込み型電極(例えば、第2埋め込
み型リードシステム108Bに含まれているような、心臓106内または心臓106上に配置された缶電極と遠隔電極)を含む。プロセッサ回路110は、2つ以上の電極間で検出または測定されたインピーダンスを識別するために、インピーダンスセンサ205から電気信号情報を受信するように構成されることができる。一例では、プロセッサ回路110は、受信したインピーダンス情報を使用して、心臓活動、呼吸活動、筋肉活動、胸郭内水分レベル、血管寸法の変化(例えば、インピーダンス・プレチスモグラフィ技術を使用)、または被検者生理状態に関するその他の情報を識別することができる。
【0037】
一例では、呼吸センサ206はプロセッサ回路110に結合している。呼吸センサ206は、被検者の胸部拡大および収縮をモニタするように構成された埋め込み型センサなどの、埋め込み型または外部の呼吸センサであり得る。一例では、呼吸センサ206は、被検者の1回換気量または毎分換気量に関する情報を提供するように構成されることができる。プロセッサ回路110は、呼吸センサ206から呼吸情報を受信するように構成されることができる。
【0038】
一例では、化学センサ207はプロセッサ回路110に結合している。化学センサ207は、1つまたは複数のバイオマーカを識別するように構成された、埋め込み型または外部のセンサであり得る。例えば、化学センサ207は、被検者の化学情報、例えば、とりわけ、被検者血液化学(例えば、電解質、グルコース、pH、酸素レベル、二酸化炭素レベルなど)、ナトリウム利尿ペプチド(すなわち、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、N末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド、心房性ナトリウム利尿ペプチドなど)、炎症マーカ、酸化ストレスマーカ、あるいはコラーゲン・ターンオーバもしくは細胞外基質ペプチド、のうちの1つまたは複数に関する情報を含むような化学情報を検出するように構成されることができる。プロセッサ回路110は、被検者化学センサ207から化学情報を受信するように構成されることができる。
【0039】
一例では、姿勢センサ208がプロセッサ回路110に結合している。姿勢センサ208は、被検者の姿勢を検出、特定、区別するように構成された、埋め込み型または外部の姿勢センサであり得る。例えば、姿勢センサ208は、センサ(例えば、被検者の体内に設置されているか、あるいは被検者に結合している)が垂直に向いているか、水平に向いているかに関する情報を提供するように構成された加速度計を含むことができる。一例では、姿勢センサ208は、被検者の向きを特定するための胸部または血管インピーダンスを測定するように構成されたような、インピーダンスセンサを含む。プロセッサ回路110は、姿勢センサ208から被検者の姿勢情報を受信するように構成されることができる。
【0040】
一例では、その他の生理センサ209は、被検者の生理状態または健康状態に関する情報を受信するために、プロセッサ回路110に結合できる。
メモリ回路235は、例えば、被検者生理情報を経時的に記録するために、プロセッサ回路110および生理センサ201〜209の1つまたは複数、あるいはプロセッサ回路110または生理センサ201〜209の1つまたは複数に結合できる。一例では、プロセッサ回路110は、例えば被検者生理情報における経時的な変化または傾向を識別するために、メモリ回路240に記憶された被検者生理情報にアクセスできる。例えば、心音振幅の増減を経時的に識別するなどのために、音響センサ201を使用して受信した心音振幅情報をメモリ回路240に記憶し、プロセッサ回路110を使用して経時的にトレンド(傾向)を取ることができる。プロセッサ回路110は、1つまたは複数の生理信号を変換するなどのために、メモリ回路240に記憶された情報を修正または処理することができる。例えば、プロセッサ回路110は、例えば、インピーダンスセンサ205で感知されたインピーダンス信号の、微分波形、フィルタリングされた波形、積分波形のうちの1つまたは複数を生成するように構成できる。このような変換は、例えばプロセッサ回路
110とそれに統合または結合することが可能な、とりわけ微分器、フィルタ(例えば、線形フィルタ、高域フィルタ、低域フィルタ、帯域フィルタ)、微分回路、集積回路などによって実現できる。
【0041】
一例では、
図1、
図2の説明において上述した、外部システム125とIMD105をとりわけ含んでいるシステムは、1つまたは複数の被検者生理センサを用いて被検者からの生理信号をモニタまたは受信するために使用することができる。外部システム125またはIMD105は、入院イベントの指標、または被検者の他の何らかの健康エピソードの増悪の指標(ここでは、概して「入院イベント」と呼ぶ)を識別または受信するように構成できる。プロセッサ回路110(または外部システム125の一部内の類似のプロセッサ)は、入院イベントに応答して、または入院イベントの前に、1つまたは複数の受信した生理信号において、プレホスピタル生理信号特性を識別するように構成されることができる。いくつかの例では、入院は入院イベントへの「到達」をもさらに含むことができる。いくつかの状況では、プレホスピタル期の情報は、被検者が心不全増悪として識別された時、あるいはその他の状態、例えば、被検者が最初に介護者に連絡した時、もしくは最初に病院または他の治療施設に到着した時を識別された時に利用可能であったデータに限定されてよい。この例では、入院時の初回の測定値を、プレホスピタル期に対応した情報と考え、使用できる。
【0042】
一例では、プロセッサ回路110は、入院イベントの前にインピーダンスセンサ205からインピーダンス信号を受信するように構成でき、プロセッサ回路110はまた、プレホスピタル期におけるインピーダンス信号の1つまたは複数の特性(例えば、ピーク振幅、ピークタイミング、ピーク変化タイミング、心周期内の特定の時点における振幅、所定の期間にわたる平均インピーダンス、胸郭内水分レベル推定値など)を識別するように構成できる。この例では、プロセッサ回路110は、「ポストホスピタル」期間中に同じまたは異なるインピーダンス信号を(例えば、同じ電極を使用して)受信するように構成できる。一例では、ポストホスピタル期は、被検者が病院にいる、または治療を受けている時などの、入院イベント後の期間を含む。ポストホスピタル期中の治療の後の後続期間には、被検者が病院から退院した後の期間、あるいは被検者が特定の療法またはデバイス修正を受けた後の期間を含むことができる。例えば、ポストホスピタル期中には、被検者のIMDの1つまたは複数の動作特性を調整でき(例えば、CRTデバイスのAV遅延の短縮、または下限レートの引き上げ)、後続期間中には、IMD調整に応答して変化する(または変化しない)被検者特性を識別するために、被検者からの1つまたは複数の生理信号をモニタできる。
【0043】
一例では、変化したおよび不変の被検者特性の関する情報は、プロセッサ回路110(または、外部システム125に実装された別のプロセッサ回路)を用いるなどして被検者の心不全パラメータを特定するために使用できる。一例では、心不全パラメータは、対応するプレホスピタル生理信号特性に対する後続の生理信号特性に関する情報を使用して提供される。一例では、心不全パラメータは被検者健康状態全体を示すものであり、例えば退院奨励を提供するために使用できる。
【0044】
一例では、心不全パラメータを、心不全増悪を識別するために使用でき、心不全パラメータを特定するために使用されたセンサに応じて、様々な被検者治療を、例えばプロセッサ回路110によって自動的に実行または変更することができる。一例では、心不全増悪を示す心不全パラメータに応答し、MD105の下限レートを例えば、症状を緩和するために一時的に引き上げることができる。一例では、心不全増悪に応答し、ペーシング振幅またはペーシング波形形状を変更できる。例えば、振幅を増加させる、または二相波形の一方または両方の部分の持続期間を増減することができる。一例では、心不全増悪に応答して、電気刺激を付与する位置を変更できる。例えば、多極リードを使用して、電極の(
例えば、左心室に対応したなどの)多様な組み合わせを選択できる。
【0045】
次に、
図3を参照すると、IMD105に結合したいくつかの生理センサが装着された被検者の身体101を示している。一例では、IMD105は第1センサ301(符号S
1)、第2センサ(符号S
2)302、第3センサ303(符号S
3)、第4センサ304(符号S
4)に結合している。別の例では、IMD105はわずか1つのセンサに結合し、さらに別の例では、IMD105は2つ以上のセンサに結合している。
【0046】
図3の例では、第1センサ301は心音センサであり(例えば、音響センサ201または振動センサ203を使用して実現されている)、第2センサ302は胸部インピーダンスセンサであり(例えば、インピーダンスセンサ205を使用して実現されている)、第3センサ303は肺動脈圧センサである(例えば、被検者の肺動脈内に配置された血行動態センサ204を使用して実現されるか、とりわけ被検者の肺動脈の寸法の変化を測定するように構成されたインピーダンスセンサ205を使用して実現されている)。一例では、第4センサ404は、例えばECGセンサ202から一部取得した情報を使用して駆出率を計算するために、プロセッサ回路110を使用して実現された左心室駆出率センサである。
【0047】
図4は、
図3のセンサから受信した生理情報を示したチャートの例を概略的に示す。
図4の例は、第1センサ301、第2センサ302、第3センサ303、第4センサ304からそれぞれ受信した生理信号情報に対応した第1チャート401、第2チャート402、第3チャート403、第4チャート404を含む。
図4の例では、第1チャート401、第2チャート402、第3チャート403、第4チャート404の各々に表されたセンサ情報は、x軸に沿った同じ時間インターバルに対応している。時間インターバルにはプレホスピタル期411(例えば、被検者の入院または健康イベントの前の期間)と、その次のポストホスピタル期412(例えば、被検者が病院などにおいて治療を受けている期間)、その次の後続期間413(例えば、病院からの退院後などのポストホスピタル期412における治療の後の期間)を含む。
【0048】
第1チャート401は、被検者の心音振幅(例えば、S1心音振幅)に、所定のベースライン心音振幅に対するパーセンテージ(例えば、100%を基準として正規化された、被検者固有または集団固有のベースライン)として経時的に対応した第1生理信号421を概略的に示す。第1チャート401では、y軸を、第1生理信号421情報から推測された被検者の健康状態に対応したいくつかの領域に分割することができる。第1チャートは、健康な被検者を表すS1心音振幅に対応した第1領域S
1Hと、の境界線、増悪、中立の被検者健康状態を表すS1心音振幅に対応した第2領域S
1Nと、被検者の悪い健康状態を表すS1心音振幅に対応した第3領域S
1Zとを含んでいる。一例では、第1生理信号421からのデータが第3領域S
1Zに対応する場合は、治療または入院の必要性を示すことができる。
図4では、第1領域S
1Hはベースラインの95%以上の心音振幅に対応し、第2領域S
1Nはベースラインの75〜95%の心音振幅に対応し、第3領域S
1Zはベースラインの75%未満の心音振幅に対応している。様々な領域は、例えばプロセッサ回路110が実行するアルゴリズムを使用して自動的に特定された、または介護者が手動で特定した、被検者固有の領域であり得る。いくつかの例では、領域は集団固有のものであり、あるいは領域は事前定義されている。
【0049】
第1チャート401の一例では、第1生理信号421が、ベースライン心音振幅(例えば、ベースラインは100%を基準として正規化されている)から第3領域S
1Zに対応した約69%の最小の心音振幅まで、プレホスピタル期411にわたって急速に下降している。一例では、第1生理信号421が第3領域S
1Zの心音振幅を示す場合には、IMD105を使用して(例えば、可聴警告を使用する)、あるいは外部システム125を使
用する(例えば、遠隔被検者ケア管理システムを含むような外部インターフェースを使用する)などして、被検者または介護者に対して警告を例えば自動的に提供することができる。
【0050】
第2チャート402、第3チャート403、第4チャート404は、第2生理信号422、第3生理信号423、第4生理信号424をそれぞれ含む。第1チャート401に関する上記の説明と同様に、第2チャート402、第3チャート403、第4チャート404の各々は、y軸に沿った異なる被検者健康状態を表す各領域を含む(例えば、第2チャート402の領域S
2H、S
2N、S
2Zなどを参照)。
図4の例では、第1生理信号421、第2生理信号422、第3生理信号423、第4生理信号424の各々は、プレホスピタル期411の最後における被検者の入院または治療を示す。
【0051】
図4の例では、ポストホスピタル期412の始まりにおける被検者の健康状態は、第1生理信号421、第2生理信号422、第3生理信号423、第4生理信号424のいずれによっても悪い状態を示している。一例では、ポストホスピタル期412は治療イベント(ポストホスピタル期の開始時またはその近く)を含む。ポストホスピタル期412の期間にわたり、例えば対応する被検者の生理信号がベースラインに傾くまたは戻る箇所では、1つまたは複数のセンサからの情報が、改善する被検者の健康状態を示し得る。
【0052】
図4の例では、ポストホスピタル期412中に、第1生理信号421と第3生理信号423が、さらなる治療または入院の継続の指標に対応したS
1Z、S
3Z領域内にそれぞれ留まる。第2生理信号422、第4生理信号424は、改善する被検者の健康状態に対応、同一のインターバルにわたってそれぞれのベースラインS
2H領域、S
4H領域に戻る。一例では、被検者の健康状態が十分に改善または安定した(第2生理信号422、第4生理シング424がベースラインに戻ることにより示されるように)と特定することができ(例えば、医療デバイスにより自動的に、または介護者により手動で)、被検者は退院できる、あるいは治療を終了できる。例えば、治療イベントが薬理利尿剤の投薬を示す場合では、利尿剤を中止することができる。被検者の病院からの退院または療法終了は、ポストホスピタル期412の終わりを示す。いくつかの例では、例えば被検者の健康状態のあらゆる未解決の問題を扱うその他の治療を提供することができ、これは、例えばポストホスピタル期412の最後で最適レベル未満に留まっている第1生理信号421および第3生理信号423で示されている。
【0053】
図4の例では、ポストホスピタル期412の終わりで、(例えば、増悪している被検者健康状態を示すことで)被検者の生理機能の治療に反応しなかった、または治療に負の反応を示した各局面を示す生理信号に対応しているセンサを識別できる。同様に、被検者の生理機能の治療に反応した局面を示す生理信号に対応するセンサも識別される。これらのセンサは、被検者の生理信号情報を分析するために、プロセッサ回路110を使用するなどして自動的に識別されることが可能である。治療に反応した生理信号に対応するセンサは、例えば後続期413にて、その後の被検者の健康状態の評価に使用することができる。
【0054】
図4の例では、後続期413中に、例えばプロセッサ回路110を使用して、第2生理信号422および第4生理信号424をモニタすることができる。第2チャート402、第4チャート404の例では、第2生理信号422および第4生理信号424が、S
2Hベースライン領域およびS
4Hベースライン領域からそれぞれ下降している。この例では、第2生理信号422および第4生理信号424はS
2N領域およびS
4N領域へそれぞれ下降している。信号の各ベースライン領域から離れるこの傾向は、被検者の健康状態が減退していることを示す。一例では、第2生理信号422と第4生理信号424の一方または両方が所定の閾値量よりも大きく変化した場合には、例えば切迫した再入院の可能性
、または別の療法や療法の調整の必要性を示すために、被検者または介護者に警告を提供することができる。
【0055】
一例では、ポストホスピタル期412に特定の治療レジメンを開始し、後続期413を通してこれを継続した場合、後続期413にわたる第2生理信号422および第4生理信号424によって表される健康状態の減退は、特定の療法レジメンがその効力を失っていることを表している可能性がある。一例では、特定の療法レジメンは、1つまたは複数の生理信号の変化に応答して自動的または手動で更新することが可能なデバイス療法(例えば、ペーシング療法)を含むことができる。一例では、第2生理信号422および第4生理信号424が示す被検者の健康状態の減退に応答して、例えばこれらの信号がS
2Z領域およびS
4Z領域にそれぞれ到達する前に再入院を指示することが可能である。
【0056】
一例では、後続期413中に、S2およびS4でモニタされている状態を扱うように構成された治療を、第2生理信号422および第4生理信号424が示す被検者の健康状態の減退に応答して開始することができる。例えば、
図4では、第2生理信号422は、ベースライン・インピーダンスに対する被検者の胸部インピーダンスを表し、また、これは被検者の胸郭内水分レベルを示す。第2生理信号422の、後続期413の開始時におけるベースラインの約91%から、後の後続期413におけるベースラインの約71%までの下降に応答して(これは例えば、胸郭内水分レベルの増加を示す)、IMD105の動作特性を、胸郭内水分レベルを減少させるように調整する(例えば、下限レートを上げる)ことができる。一例では、このような療法の調整は、IMD105によって自動的に行われる、または臨床医や介護者によって手動で行うことができる。一例では、療法調整は、外部システム125を使用し、例えば、外部システム125が被検者の生理信号に応答して生成した警告に応答して、遠隔的に行うことができる。
【0057】
図5は、第1センサ301より受信した生理信号情報に対応した第5チャート405の例を概略的に示す。第5チャート405は、第5生理信号425と第6生理信号426を含む。
図5の例では、第5生理信号425および第6生理信号426は、共通の期間にわたり(例えば、ポストホスピタル期にわたり)、被検者についての異なる論理的な被検者健康状態に対応している代替信号である。この例では、期間を、t
1、t
2、t
3で示す等しい時間長インターバルにさらに分割している。
【0058】
一例では、第5チャート405は、被検者の治療イベント(例えば、薬理的治療、デバイスベースの治療、その他の療法または治療)を含んだポストホスピタル期を示している。一例では、ポストホスピタル期にわたる被検者の生理信号は、第5生理信号425によって表されている。この例では、被検者の心音振幅が、ポストホスピタル期にわたり、同期の開始時でのベースラインの約64%から同期終わりでのベースラインの約75%にまで改善している。そのため、この例では、被検者の心音振幅は、心音振幅特性が望ましいベースラインの100%に向かって傾くに従い、被検者の健康状態の改善を示すことになる。
【0059】
一例では、第5チャート405は、後続期(例えば、ポストホスピタル期に続く、退院後あるいは治療後などの期間)を示し、第5生理信号425は、被検者が後続期に受けた療法またはレジメンの下で被検者の健康状態が改善していることを示す。例えば、先行の期間(例えば、ポストホスピタル期中)でIMD105の下限レートが上昇した場合、後続期にわたる第5生理信号425の傾向は、下限レート調整が有効であり、これが維持されるべきであることを示し得る。
【0060】
一例では、ポストホスピタル期にわたる被検者の生理信号は、第6生理信号426で表されている。この例では、被検者の心音振幅はポストホスピタル期にわたり比較的変化が
ない。つまり、第6生理信号426は、ベースラインの約65%以下で、ポストホスピタル期を開始し、さらにポストホスピタル期を終えている。被検者の生理状態は、概して、ポストホスピタル期にわたって改善することが予想されるので、信号の不変特性は被検者の生理機能の残りのまたは未治療の部分を表している可能性があり、再入院または療法調整が示される可能性がある。被検者の心不全の未治療部分を示すいくつかの被検者特性には、とりわけ不変の心音信号特性、不変の呼吸速度、不変の1回換気量が含まれ得る。
【0061】
一例では、被検者の生理信号を、例えば特定の期間にわたって少なくとも所定の閾値量で大きさの変化についてモニタすることができる。概して、特定の生理センサから受信した情報は、被検者の状態が改善するに従ってそのベースライン値へと傾くと予想される。しかし、特定のセンサからの情報に変化がほとんどない(例えば、特定のセンサでモニタされている被検者の生理特性が、例えば、特定の時間長にわたり入院範囲内に留まっている)場合には、被検者は適切に回復しいなちと考えられ、被検者の再入院の恐れが見積もられる。
【0062】
図5の例では、特定の期間にわたって被検者の生理信号が閾値量だけ改善しない時には、再入院の警告を提供することができる。一例では、第1インターバルt
1において被検者の生理信号が70%を超えない場合には、再入院またはその他の警告を提供できる。この例では、第1インターバルt
1において第5生理信号425、第6生理信号426のいずれも70%を超えていないので、再入院またはその他の警告を提供できる。一例では、被検者の生理信号が第2インターバルt
2の終わりに70%を超えない場合、再入院またはその他の警告を提供できる。この例では、第5生理信号425は、第2インターバルt
2の終わりより前に70%閾値量を超えている。したがって、警告が回避される、あるいは警告を保留してさらにモニタリングを継続することができる。第6生理信号426は、第2インターバルt
2の終わりより前に閾値70を超えていないため、警告を提供することができる。
【0063】
次に
図6を参照すると、例600は、心不全パラメータを特定することと、再入院の指標を提供することとを含む。610において、例600は、プレホスピタル期にわたり、被検者からの複数の生理信号をそれぞれ対応する複数のセンサを使用してモニタリングすることを含む。例えば、610において、モニタされる生理信号は、とりわけ、例えば音響センサ、埋め込み型電極、圧力トランスデューサをそれぞれ使用して被検者から受信した心音信号、電気生理信号、または血行動態信号を含むことができる。一例では、IMD105または外部システム125はメモリ回路を含んでおり、このメモリ回路は、例えば連続的な生理信号を周期的にサンプリングすることにより、あるいは、サンプリングされた生理信号に関する情報を記憶するためにヒストグラムベースの記憶技術を用いることにより、モニタされた複数の生理信号に関する情報を記憶するように構成されている。
【0064】
615において、入院イベントを識別できる。本明細書全体を通して、入院イベントとは、任意の増悪している被検者健康イベント、例えば、心不全代償不全エピソード、あるいは、被検者の健康状態が減退していることを示すその他のイベント、エピソード、症状、傾向を指すものである。例えば、入院イベントは、心不全被検者が溜まった胸水の治療を求める時を意味することができる。いくつかの例では、入院イベントは被検者の病院または別の治療施設への入院を意味する。いくつかの例では、入院イベントは、胸の痛みや呼吸困難といった、急性の、さらには一時的な症状を意味する。
【0065】
620において、プレホスピタル生理信号特性を識別することができる。一例では、IMD105または外部システム125はメモリ回路を含み、このメモリ回路は、複数の被検者センサから送信された、最近の被検者の生理信号活性に関する情報を記憶するように構成されている。例えば、IMD105は、心音センサ、およびECGセンサのそれぞれ
から(例えば、同一または異なるサンプルレートで)送られた過去7日間(またはそれ以上)の被検者の生理信号活性を記録するように構成されたメモリ回路を含むことができる。615にて識別された入院イベントに応答して、プロセッサ回路110は、信号の様々な特性を識別するために、記録された被検者の生理信号を分析することができる。例えば、プロセッサ回路110(または、外部システム125に装備されているようなその他の処理モジュール)は、記録された心音信号を分析し、記録期間にわたりS1振幅特性を識別することができる。プロセッサ回路110は、特性情報のトレンドを取り、特性を入院イベントまたは被検者の健康状態と相関させられるかどうかを決定できる。同様に、プロセッサ回路110は、記録されたECG信号を分析して、記録期間にわたりQRS幅特性を識別することができる。QRS幅を分析して(例えば、プロセッサ回路によって自動的に、または介護者によって)、QRS幅特性を入院イベントまたは被検者の健康状態と相関させられるかどうかを決定できる。
【0066】
630において、ポストホスピタル生理信号特性を、ポストホスピタル期にわたり識別することができる。ポストホスピタル期は、入院イベントに続く期間に対応している。いくつかの例では、ポストホスピタル期は、被検者が病院またはその他のケア施設にいる期間を含み、いくつかの例では、ポストホスピタル期は、被検者が治療レジメン(例えば、615にて識別された入院イベントに応答してIMD105によって自動的に実施された治療レジメン)を受けている期間を含む。
【0067】
630において、プロセッサ回路110は、プレホスピタル生理信号を受信するために使用したのと同じセンサを使用して、被検者の生理信号のモニタリングを継続することができる。プレホスピタル生理信号の特性と同一または異なるタイプの特性といった、ポストホスピタル生理信号の特性を識別することができる。例えば、ポストホスピタル生理信号は、ポストホスピタル期にわたりS1振幅特性を識別するために分析される心音信号を含むことができる。同様に、ポストホスピタル生理信号は、ポストホスピタル期にわたってQRS幅情報を分析するために識別されることができるECG信号を含むことができる。
【0068】
640において、例えば610にて複数の生理信号をモニタするために使用したのと同じ複数のセンサを使用して、1つまたは複数の後続の生理信号を後続期にわたってモニタすることができる。後続の生理信号は、ポストホスピタル期後にモニタされた信号であり得る。いくつかの例では、後続期は、被検者が病院またはその他のケア施設を退院した後の期間を含み、あるいは後続期は、被検者の療法が更新された後の期間を含む。例えば、後続期は、被検者のペースメーカデバイスの下限レートを引き上げた後の期間を含むことができる。
【0069】
一例では、利用可能な被検者センサの一部からの生理信号情報を、640でのモニタリングに使用する。例えば、特定のセンサから受信した生理信号のモニタされた特性が、ポストホスピタル期にわたって(例えば、プレホスピタル期と比べて)変化する場合には、その同じセンサからの後続の生理信号情報にフラグ付けし、さらにモニタすることができる。一例では、ポストホスピタル期にわたり変化する信号特性は、治療の効果を示す可能性がある。
【0070】
650において、後続の生理信号特性は、後続期にわたって受信した1つまたは複数の後続の生理信号を使用して識別できる。被検者の心音振幅がポストホスピタル期にわたって変化している一例では、被検者の心音信号を、後続期にわたってさらにモニタおよび分析するべく示すことができる。被検者のQRS時間長が、ポストホスピタル期にわたってプレホスピタル期よりも短い一例では、被検者のECG信号を、後続期にわたってさらにモニタおよび分析するべく示すことができる。例えば後続期にわたってモニタされる心音
信号およびECG信号の後続の特性を、650にて識別することができる。
【0071】
660において、650で識別された後続の生理信号特性に関する情報を、対応するプレホスピタル生理信号特性と、または対応するポストホスピタル生理信号特性と比較することができる。例えば、S1心音振幅が使用されている場合には、後続期にわたるS1心音振幅に関する特性情報(例えば、平均ピーク振幅)を、プレホスピタル期からのS1心音振幅、およびポストホスピタル期からのS1心音振幅のうちの一方または両方と比較できる。
【0072】
一例では、670において、心不全パラメータを特定できる。心不全パラメータは、生理信号特性の経時的な比較を用いて特定することができる被検者の健康状態の絶対または相対的な指標であり得る。例えば、660にて比較した特性がS1心音振幅である場合には、心不全パラメータは、以下において被検者の心不全の増悪を示す。すなわち、ポストホスピタルS1振幅特性が被検者の悪い健康状態を示す時(例えば、S1振幅がベースラインの60%にある)、例えば、被検者が治療を受けた後、または被検者が療法調整を受信した後などで、後続のS1振幅特性がポストホスピタル期から変化を示さない時(例えば、S1振幅がベースラインの約60%に留まっている)。
【0073】
672において、670で特定された心不全パラメータを使用して、被検者退院奨励を提供できる。例えば、後続期に、医療処置を受けた後またはデバイス療法の更新を受信した後などに被検者がケア施設に逗留する期間が含まれる場合には、670で特定された心不全パラメータに関する情報を使用して、退院判定を特定したり、これに影響を及ぼしたりすることができる。一例では、例えば、特定された心不全パラメータに関する情報に応答して、IMD105または外部システム125を使用して退院警告を自動的に提供する、または介護者が退院奨励を手動で特定することができる。
【0074】
674にて、例えば670で特定された心不全パラメータを使用して、被検者の療法パラメータを更新することができる。療法パラメータの更新は、プロセッサ回路110を使用して自動的に行うか、外部システム125と介護者が相互作用して手動で行うことができる。670にて特定された心不全パラメータが心不全増悪を示す例では、674にて更新することが可能な療法パラメータは、とりわけ、ペーシング下限レートまたは上限レート、利尿剤投薬レジメン、VV遅延、AV遅延、神経調節療法の開始または終了、電気刺激振幅への調整を含むことができる。
【0075】
一例では、680において、被検者の生理信号または信号特性の傾向を識別できる。
図5の説明で上述したように、例えば、後続の生理信号、またはその特性のトレンドを取ることで、信号または特性が被検者のプレホスピタル特性へ傾いているかどうかを特定することができる。一例では、後続の生理信号または特性のトレンドを取ることで、その特性が、615にて入院イベントが識別された時に測定されたものと同じレベルまたは量に近づいているかどうかを識別する。一例では、後続の生理信号または特性が被検者のプレホスピタル特性へ傾いている場合には、682において、被検者の再入院指標を提供することができる。被検者の再入院指標は、被検者または介護者への警告を提供するために、IMD105を使用して(例えば、可聴警告を使用して)、または外部システム125を使用して提供できる。再入院指標は、被検者が再入院を必要としている、または再入院を必要とするであろうという、トレンドの取られた生理信号特性に基づいた被検者のリスク因子を含み得る。
【0076】
様々な記載および例
例1は、主題(装置、システム、分散システム、方法、行為を実行する手段、あるいは、デバイスによって実行されるとそのデバイスに行為を行わせることができる命令を含ん
だデバイス読み取り可能な媒体)を含むまたは使用することができ、例えば、被検者からのそれぞれの生理信号を感知するように構成された複数の生理センサ、および心不全分析モジュールを含むまたは使用することができる。例1では、心不全分析モジュールが複数の生理センサに結合している。例1では、心不全分析モジュールは、入院イベントを識別し、入院イベントに応答して1つまたは複数のタスクを実行するように構成されたプロセッサ回路を含む。例えば、入院イベントに応答して、プロセッサ回路は、1つまたは複数の生理センサを使用して取得したそれぞれの生理信号に対応したプレホスピタル生理信号特性を識別することと、対応する1つまたは複数のプレホスピタル生理信号特性とは異なる1つまたは複数のポストホスピタル生理信号特性を識別することであって、この1つまたは複数のポストホスピタル生理信号特性は、プレホスピタル生理信号特性と同じ1つまたは複数のそれぞれの生理センサを使用して取得されている、識別することと、入院イベント後に後続の生理信号をモニタすることであって、この後続の生理信号は、対応する1つまたは複数のプレホスピタル生理信号特性とは異なる1つまたは複数のポストホスピタル生理信号特性のうちの1つに対応しており、後続の生理信号は、プレホスピタル生理信号特性およびポストホスピタル生理信号特性と同じ1つまたは複数の生理センサを使用して取得されている、モニタすることと、上記後続の生理信号を使用して後続の生理信号特性を識別することと、を実行するように構成されることができる。一例では、プロセッサ回路は、対応するプレホスピタル生理信号特性に対する後続の生理信号特性に関する情報を使用して、被検者に対し心不全パラメータを特定するように構成されることができる。
【0077】
例2は、例1の主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、特定された心不全パラメータを使用して、被検者に対し療法パラメータを更新するように構成されたプロセッサ回路を任意選択的に含む。
【0078】
例3は、例1または2のうちの1つまたは任意の組み合わせの主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、後続の生理信号特性がそれに対応するプレホスピタル生理信号特性へ傾いている場合、心不全増悪を示すパラメータを特定するように構成されたプロセッサ回路を任意選択的に含む。
【0079】
例4は、例1〜3のうちの1つまたは任意の組み合わせの主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、検者のエピソードに応答して入院イベントを識別するように構成されたプロセッサ回路を任意選択的に含む。例4では、プロセッサ回路は、1つまたは複数の生理センサを使用して取得した生理信号にそれぞれ対応するプレエピソード生理信号特性を含むプレホスピタル生理信号特性を識別するように任意選択的に構成されている。
【0080】
例5は、例1〜4のうちの1つまたは任意の組み合わせの主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、被検者の心不全代償不全エピソードに応答して入院イベントを識別するように構成されたプロセッサ回路を任意で含む。
【0081】
例6は、例1〜5のうちの1つまたは任意の組み合わせの主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、後続の生理信号特性がそれに対応するプレホスピタル生理信号特性へ傾いている場合に、再入院指標を提供するように構成されたプロセッサ回路を任意選択的に含む。
【0082】
例7は、例1〜6のうちの1つまたは任意の組み合わせの主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、 被検者に結合した埋め込み型電気刺激デバイスを任意選択的に含み、ここで、プロセッサ回路は、埋め込み型デバイスによって被検者に提供された療法の療法パラメータを、特定された心不全パラメータに基づいて特定するように構成されており、療法パラメータはAV遅延、VV遅延、上限レート、下限レート、電気刺激
パルスの大きさ、電気刺激パルスの持続期間、電気刺激パルスの形状、電気刺激パルスが被検者に送達された位置のうちの1つを含む。
【0083】
例8は、例1〜7のうちの1つまたは任意の組み合わせの主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、生理センサのうちの1つとして、心音信号を提供するように構成された心音センサを任意選択的に含む。例8では、プロセッサ回路は、心音信号をモニタするように任意選択的に構成されており、また、心音信号を使用してプレホスピタル心音振幅を識別することと、対応するプレホスピタル振幅とは異なるポストホスピタル心音振幅を識別することとを含み、プロセッサ回路は、心音センサを使用して、後続の心音振幅を、後続の生理信号としてモニタするように任意選択的に構成されており、また、プロセッサ回路は、後続の心音振幅がプレホスピタル心音振幅へ傾いているかどうかに関する情報を使用して、心不全パラメータを特定するように任意選択的に構成されている。
【0084】
例9は、例1〜8のうちの1つまたは任意の組み合わせの主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、心音信号を提供するように構成された心音センサを任意選択的に含む。例9では、プロセッサ回路は、心音信号をモニタするように任意選択的に構成されており、心音信号を使用して、プレホスピタル生理信号特性のうち少なくとも1つとして、プレホスピタル心音タイミング特性を識別することを含み、プロセッサ回路は、対応するプレホスピタルタイミング特性とは異なるポストホスピタル心音タイミング特性を、1つまたは複数のポストホスピタル生理信号特性のうち少なくとも1つとして識別するように任意選択的に構成されており、プロセッサ回路は、心音センサを使用して、後続の心音タイミング特性を、後続の生理信号としてモニタするように任意選択的に構成されておりプロセッサ回路は、後続の心音タイミング特性がプレホスピタル心音タイミング特性へ傾いているかどうかに関する情報を使用して、心不全パラメータを特定するように任意選択的に構成されている。
【0085】
例10は、例1〜9のうちの1つまたは任意の組み合わせの主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、特定された心不全パラメータを使用して、退院奨励を提供するように構成されたプロセッサ回路を任意選択的に含む。
【0086】
例11は、例1〜10のうちの1つまたは任意の組み合わせの主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、被検者の心不全の未治療部分を示す1つまたは複数のポストホスピタル生理信号特性を、対応する1つまたは複数のプレホスピタル生理信号特性とは異なる1つまたは複数のポストホスピタル生理信号特性として識別するように構成されたプロセッサ回路を任意選択的に含む。
【0087】
例12は、例1〜11のうちの1つまたは任意の組み合わせの主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、1つまたは複数の生理センサを使用して取得した複数の生理信号に対応しているベースライン生理信号特性を、プレホスピタル生理信号特性として識別するように構成されたプロセッサ回路を任意選択的に含む。
【0088】
例13は、例12の主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、対応するベースライン生理信号特性に対する後続の生理信号特性に関する情報を自動的に処理することにより、心不全パラメータを特定するように構成されたプロセッサ回路を任意選択的に含む。
【0089】
例14は、例13の主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、後続の生理信号特性が対応するベースライン生理信号特性から略不変である、またはこれから離れるように傾いている場合に、心不全増悪の指標を提供するように構成されたプロセッサ回路を任意選択的に含む。
【0090】
例15は、例14の主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、心不全増悪の指標を使用して再入院警告を生成するように構成されたプロセッサ回路を任意選択的に含む。
【0091】
例16は、例1〜15のうちの1つまたは任意の組み合わせの主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、指定されたポストホスピタルインターバル中に、対応するプレホスピタル生理信号特性に対する後続の生理信号特性に関する情報を自動的に処理するように構成されたプロセッサ回路を任意選択的に含む。
【0092】
例17は、例1〜16のうちの1つまたは任意の組み合わせの主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、プレホスピタル生理信号特性、ポストホスピタル生理信号特性、後続の生理信号特性のうちの1つまたは複数を、複数の生理信号の、同一タイプのそれぞれの形態信号特徴として識別するように構成されたプロセッサ回路を任意選択的に含む。
【0093】
例18は、例1〜17のうちの1つまたは任意の組み合わせの主題を含むまたは任意選択的に組み合わせることができ、埋め込み型医療デバイスと、埋め込み型医療デバイスに結合したメモリ回路とを任意選択的に含み、複数の生理センサはメモリ回路に結合しており、メモリ回路は、複数の生理センサを使用して感知された、被検者からのそれぞれの生理信号に関する情報を記憶するように構成されており、さらに、プロセッサ回路は、メモリ回路に記憶された情報を使用して心不全パラメータを特定するように構成されており、プレホスピタル生理信号特性に関する情報を使用することを含む。
【0094】
例19は、例1〜18のうちの1つまたは任意の組み合わせの主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、例えば、対応する生理センサを使用して取得した複数の生理信号をモニタすることと、生理センサを使用して取得した生理信号にそれぞれ対応した被検者固有のベースライン特性を識別することと、入院インベントを識別することとを含むことができる主題(装置、デバイス、システム、分散システム、方法、行為を実行する手段、または、マシンによって実行されると、そのマシンに行為を実行させることができる命令を含んだマシン読み取り可能な媒体など)を含む。例19は、入院イベントに応答して、対応するベースライン特性とは異なる1つまたは複数のポストホスピタル生理信号特性を識別することであって、この1つまたは複数のポストホスピタル生理信号特性は、ベースライン特性と同じ1つまたは複数のそれぞれの生理センサを使用して取得されている、識別することと、入院イベント後に、ベースライン特性およびポストホスピタル生理信号特性用と同じ1つまたは複数の生理センサを使用して、1つまたは複数のポストホスピタル生理信号特性のうちの1つに対応した後続の生理信号をモニタすることと、後続の生理信号を使用して、後続の生理信号特性を識別することと、対応するポストホスピタル生理信号特性および対応するベースライン特性に対する後続の生理信号特性に関する情報を自動的に処理するプロセッサ回路を使用して、被検者に対し心不全パラメータを特定することと、のうちの1つまたは複数を任意選択的に含む。
【0095】
例20は、例19の主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、後続の生理信号特性が、所定のインターバル後に、対応するポストホスピタル生理信号から略不変である場合に、デバイス療法パラメータを更新することを任意選択的に含む。
【0096】
例21は、例1〜20のうちの1つまたは任意の組み合わせの主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、例えば、埋め込み型医療デバイスに結合しており、それぞれの生理信号を感知するように構成された複数の生理センサと、複数の生理センサに結合した心不全分析モジュールとを含むことができる主題(装置、デバイス、システム、
分散システム、方法、行為を実行する手段、または、マシンによって実行されると、そのマシンに行為を実行させることができる命令を含んだマシン読み取り可能な媒体など)を含む。例21では、心不全分析モジュールは1つまたは複数のプロセッサ回路を任意選択的に含んでおり、このプロセッサ回路は、個別または集合的に、1つまたは複数の生理センサを使用して取得した複数の生理信号に対応したプレエピソード生理信号特性を受信することと、同一タイプであり、対応する1つまたは複数のプレエピソード生理信号特性とは異なる1つまたは複数のポスト治療生理信号特性を受信することであって、この1つまたは複数のポスト治療生理信号特性は、プレエピソード生理信号特性と同じ1つまたは複数の生理センサを使用して取得されている、受信することと、被検者の治療を含む入院期の後に、後続の生理信号を受信することであって、後続の生理信号は1つまたは複数のポスト治療生理信号特性のうちの1つに対応しており、後続の生理信号は、プレエピソード生理信号特性およびポスト治療生理信号特性と同じ1つまたは複数の生理センサを使用して取得されている、受信することと、後続の生理信号を使用して、後続の生理信号特性を識別することと、対応するプレエピソード生理信号特性に対する後続の生理信号特性に関する情報を使用して、埋め込み型医療デバイスによって提供される療法を更新することと、を実行するように構成されている。
【0097】
例22は、例1〜20のうちの1つまたは任意の組み合わせの主題を含む、または任意選択的に組み合わせることができ、例えば、複数の対応する生理センサを使用して被検者に関する生理情報を受信するように構成されたデータ入力部と、被検者に心不全パラメータを提供するように構成されたデータ出力部とを備えたプロセッサ回路を含むことができる主題(装置、デバイス、システム、分散システム、方法、行為を実行する手段、または、マシンによって実行されると、そのマシンに行為を実行させることができる命令を含んだマシン読み取り可能な媒体など)を含む。例22では、プロセッサは、データ入力部および対応する生理センサを使用して取得した、複数の生理信号をモニタし、入院イベントの指標を受信し、さらに、プロセッサは、この入院イベントに応答して、1つまたは複数の生理センサを使用して取得したそれぞれの生理信号に対応するプレホスピタル生理信号特性を識別することと、対応する1つまたは複数のプレホスピタル生理信号特性とは異なる1つまたは複数のポストホスピタル生理信号特性を識別することであって、この1つまたは複数のポストホスピタル生理信号特性は、プレホスピタル生理信号特性と同じ1つまたは複数のそれぞれの生理センサを使用して取得されている、識別することと、入院イベントの後に、後続の生理信号をモニタすることであって、この後続の生理信号は、対応する1つまたは複数のプレホスピタル生理信号特性とは異なる1つまたは複数のポストホスピタル生理信号特性のうちの1つに対応しており、また、後続の生理信号は、プレホスピタル生理信号特性およびポストホスピタル生理信号特性と同じ1つまたは複数の生理センサを使用して取得されている、モニタすることと、後続の生理信号を使用して後続の生理信号特性を識別することと、心不全パラメータを提供するために、後続の生理信号特性の、それに対応するプレホスピタル生理信号特性に対する関係を特定することと、を実行するように任意選択的に構成されている。
【0098】
これら非限定的な例の各々は、独自で成立することも、または、様々な置き換えまたは組み合わせにおいて1つまたは複数の他の例と組み合わせることも可能である。
上記の詳細な説明には添付図面を参照することが含まれており、これらの添付図面は詳細な説明の一部をなす。図面は、図示を目的として、本発明が実施され得る特定の実施形態を示す。これらの実施形態は本明細書では「例」とも呼ばれる。そのような例には、示されまたは説明された以外の要素も含まれ得る。しかしながら、本発明者らは、示されまたは説明された要素のみが提供される例も検討する。さらに、本発明者らは、特定の例(またはその1つあるいは複数の態様)に関して、あるいは本明細書中に示された、または説明された他の例(またはその1つあるいは複数の態様)に関して、これらの示された要素または説明された要素(あるいはその1つまたは複数の態様)の任意の組み合わせまた
は置き換えを用いる例をも考えている。
【0099】
本明細書と本明細書に組み込まれた任意の明細書との間で用語使用の齟齬がある場合には、本明細書での用語使用が優先するものとする。
本明細書中で、用語「1つ(a)」または「1つ(an)」が用いられているが、特許文献では一般的であるように、「少なくとも1つ(at least one)」または「1つまたは複数(one or more)」の任意の他の例または使用法とは無関係に、これらには1または1よりも多いことが含まれている。本明細書中、用語「または(or)」は、非排他的ORであることに言及し、別段の指示がない限り、「AまたはB」は「AだがBではない」、「BだがAではない」、および「AおよびB」を含む。本明細書では、「含む(including)」および「ここで(in which)」は、用語「備える(comprising)」および「ここで(wherein)」のそれぞれの平易な英語の等価物として使用される。また、以下の請求項では、用語「含む(including)」および「備える(comprising)」はオープンエンド形式であり、すなわち、システム、デバイス、物品、組成、調合物、または処理は、請求項におけるそのような用語の後に列挙されたもの以外の要素を含むものでも、依然としてその特許請求の範囲内にあるとみなされる。さらに、以下の請求項において、用語「第1(first)」、「第2(second)」、「第3(third)」などは単に標識として使用され、それらの対象物に数的必要条件を課することを意図していない。
【0100】
本明細書で述べている方法例は、少なくとも一部においてマシンまたはコンピュータ実装可能である。いくつかの例は、方法を上述の例で述べたとおり実行するために、電子デバイスを構成する動作可能命令で暗号化されたコンピュータ読み取り可能な媒体またはマシン読み取り可能な媒体を含むことができる。こうした方法の実装は、マイクロコード、アセンブリ言語コード、高水準言語コードなどのようなコードを含むことができる。こうしたコードは、様々な方法を実行するためのコンピュータ読み取り可能な命令を含むことができる。コードは、コンピュータプログラム製品の各部分を形成し得る。さらに、1つの例において、コードは、実行中またはその他の時において、1つまたは複数の揮発性、非一時的、または不揮発性で有形のコンピュータ読み取り可能な媒体に有形に記憶することができる。これらの有形のコンピュータ読み取り可能な媒体の例は、ハードディスク、リムーバブル磁気ディスク、リムーバブル光学ディスク(例えば、コンパクトディスクやデジタルビデオディスク)、磁気カセット、メモリカードまたはメモリスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)などを非限定的に含む。
【0101】
上述の説明は限定ではなく例証であることを意図する。例えば、上で述べた例(またはその1つまたは複数の態様)は、互いに組み合わせて使用することが可能である。その他の実施形態は、例えば上述の説明を検討した当業者によって使用されることができる。要約は、読み手が技術的開示の本質を素早く確認することが可能となるよう、米国特許法施行規則第1.72(b)条に準拠して提供される。要約書は、特許請求の範囲の技術的範囲または意味を解釈または限定するためには使用されないとの理解に基づいて提出される。また、上述の「発明を実施するための形態」では、本開示を効率化するために、様々な特徴をまとめていることがある。しかし、これは、未請求の開示された特徴が任意の請求項にとって不可欠であることを意図するものとして解釈されるべきではない。むしろ、発明の主題は、開示された特定の一実施形態の全ての特徴よりも少なくてもよい。したがって、以下の特許請求の範囲は、各々の請求項が別個の実施形態として独立して、例または実施形態として本明細書によって「発明を実施するための形態」に組み込まれており、また、このような実施形態を様々な組み合わせまたは置き換えを用いて互いに組み合わせることができると考えられる。本発明の範囲は、そのような請求項が権利を与えられる等価物の全範囲と共に、添付の特許請求の範囲を参照して決定されるべきである。