特許第6190053号(P6190053)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6190053導電性金属層若しくはパターンの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190053
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】導電性金属層若しくはパターンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/00 20060101AFI20170821BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20170821BHJP
   B05D 3/10 20060101ALI20170821BHJP
   B05D 5/12 20060101ALI20170821BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20170821BHJP
【FI】
   H01B13/00 503D
   H05K3/00 R
   B05D3/10 K
   B05D5/12 B
   B05D7/24 303C
【請求項の数】2
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-522588(P2016-522588)
(86)(22)【出願日】2014年7月2日
(65)【公表番号】特表2016-525266(P2016-525266A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】EP2014064015
(87)【国際公開番号】WO2015000932
(87)【国際公開日】20150108
【審査請求日】2015年12月28日
(31)【優先権主張番号】13175030.9
(32)【優先日】2013年7月4日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504376795
【氏名又は名称】アグフア−ゲヴエルト
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボレン,デイルク
(72)【発明者】
【氏名】ブリアモント,ニコラス
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−044709(JP,A)
【文献】 特表2006−517606(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
B05D 3/10
B05D 5/12
B05D 7/24
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−銀ナノ粒子分散物を支持体上に塗布して銀層若しくはパターンを得る段階、
−銀層のパターンを、HCl、HBr、HI、HF、H2SO4、HNO3、H3PO2およびH3PO4よりなる群から選択される酸若しくは銀層のパターンの硬化中に酸を遊離することが可能な酸前駆体を含有する溶液と接触させる段階
を含んでなり、銀層若しくはパターンが、30と90℃の間の温度で酸若しくは酸前駆体を含有する溶液中に浸漬される、導電性銀層若しくはパターンの製造方法。
【請求項2】
硬化が150℃若しくは未満の温度で30分若しくは未満の間実施される、請求項1に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子分散物からの中程度の硬化条件での高度に導電性のパターン若しくはコーティングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ナノ粒子を含有する印刷液若しくはコーティング液における興味は、所定の金属のバルク特性と比較した場合のこうした金属ナノ粒子の独特の特性によりこの10年間に増大した。例えば、金属ナノ粒子の融点は減少する粒子径とともに低下し、プリンテッド・エレクトロニクス、電気化学、光学、磁気および生物学的応用についてそれらを興味深くしている。
【0003】
例えばインクジェット印刷若しくはスクリーン印刷により印刷または高速で被覆され得る安定かつ濃縮された金属含有印刷液若しくはコーティング液の製造は、それが低費用での電子装置の製造を可能にするため、非常に興味深い。
【0004】
典型的に、金属ナノ粒子は、非特許文献1に開示されるところの多価アルコール合成の方法論により、多価アルコール合成の方法論の派生物により、若しくは多様な還元剤の存在下の金属塩のin situ還元により製造される。こうした方法は、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13および特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17ならびに特許文献18に開示されている。
【0005】
こうした多価アルコール合成において、いわゆるキャッピング剤が金属前駆体若しくは金属ナノ粒子を安定化するためにしばしば使用される。こうしたキャッピング剤は通常、チオール(−SH)、カルボキシル(−COOH)若しくはアミン(−NH)基のような官能基を含有する。例えば特許文献19は、ナノ粒子がポリビニルピロリドン(PVP)のようなキャッピング物質によりキャッピングされる多価アルコール合成により作成される金属ナノ粒子を含んでなる金属含有インクを開示する。
【0006】
金属含有印刷液若しくはコーティング液を支持体上に塗布した後に、上昇された温度での硬化段階ともまた称される焼結段階が、適用されるパターンの層の導電性を誘導する/高めるために実施される。金属含有印刷液若しくはコーティング液の有機成分例えばポリマー分散剤若しくはキャッピング剤は、適用されるパターンの層の焼結効率および従って導電性を低下させうる。この理由上、より高い焼結温度およびより長い焼結時間が、有機成分を分解するためにしばしば必要とされる。
【0007】
こうした高い焼結温度は、比較的低いガラス転移温度を有するポリエチレンテレフタレート(PET)若しくはポリカーボネートのような普遍的ポリマー箔と適合しない。従って、導電性の層若しくはパターンを得るのに必要とされる焼結温度を低下させることにおける興味が存在する。
【0008】
特許文献20は、熱重量分析により測定されるところの300℃より下の温度で95wt%分解を有するポリマー分散剤を開示する。こうしたポリマー分散剤を含んでなる金属含有印刷液若しくはコーティング液を使用することにより、焼結温度および時間を低減し得る。双方2011年12月21に出願された特許文献21および特許文献22において、いわゆる焼結添加物が、焼結温度をさらに低下させるために特許文献20のポリマー分
散剤とともに使用される。焼結添加物すなわち特殊なカルボン酸若しくはスルホン酸の量は分散物の総重量に基づき2wt%以上である。
【0009】
2012年6月5日に出願された特許文献23は、分散媒が特殊な溶媒例えば2−ピロリドンを含んでなることを特徴とする分散媒を含んでなる金属ナノ粒子分散物を開示する。こうした溶媒を分散媒として使用する場合、ポリマー分散剤は安定な金属ナノ粒子分散物を得るために必要でない。
【0010】
しかしながら、金属コーティングおよびパターンの硬化時間および温度をさらに低減させることの必要性がなお存在する。例えば安定性の理由上、硬化の効率を高める化合物が金属ナノ粒子分散物中に存在しないがしかし硬化段階の直前に金属層若しくはパターンと接触される方法を使用することが有利でありうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】第US2010143591号明細書
【特許文献2】第US2009142482号明細書
【特許文献3】第US20060264518号明細書
【特許文献4】第US20080220155号明細書
【特許文献5】第EP2147733号明細書
【特許文献6】第EP2139007号明細書
【特許文献7】第EP803551号明細書
【特許文献8】第EP2012952号明細書
【特許文献9】第EP2030706号明細書
【特許文献10】第EP1683592号明細書
【特許文献11】第EP166617号明細書
【特許文献12】第EP2119747号明細書
【特許文献13】第EP2087490号明細書
【特許文献14】第EP2010314号明細書
【特許文献15】第WO2008/151066号明細書
【特許文献16】第WO2006/076603号明細書
【特許文献17】第WO2009/152388号明細書
【特許文献18】第WO2009/157393号明細書
【特許文献19】第US8197717号明細書
【特許文献20】第EP−A 2468827号明細書
【特許文献21】第EP−A 11194791.7号明細書
【特許文献22】第EP−A 11194790.9号明細書
【特許文献23】第EP−A 12170774.9号明細書
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Mat.Chem.Phys.114、549−555
【発明の概要】
【0013】
[発明の要約]
中程度の硬化条件での金属ナノ粒子分散物からの高度に導電性のコーティング若しくはパターンの製造方法を提供することが本発明の一目的である。
【0014】
この目的は請求項1および6に定義されるところの方法により実現される。双方の方法は、特定の問題すなわち金属層若しくはパターンの導電性を増大させることに対する代替の一解決策とみなしうる。
【0015】
酸若しくは硬化中に酸を遊離することが可能な酸前駆体を含有する溶液と金属層若しくはパターンを接触させることが、金属層若しくはパターンの導電性の実質的増大をもたらすことが見出された。
【0016】
本発明のさらなる利点および態様は以下の記述および従属する請求項から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[発明の詳細な記述]
本発明の第一の態様の導電性金属層若しくはパターンの製造方法は:
−金属ナノ粒子分散物を支持体上に塗布して金属層若しくはパターンを得る段階、
−金属層若しくはパターンを、酸または金属層若しくはパターンの硬化中に酸を遊離することが可能な酸前駆体を含有する溶液と接触させる段階
を含んでなる。
【0018】
好ましくは、該方法は、金属層若しくはパターンを酸若しくは前駆体を含有する溶液と接触させた後に硬化段階をさらに含んでなる。
【0019】
金属層若しくはパターンは、該金属層若しくはパターンを酸若しくは酸前駆体を含有する溶液中に浸漬することにより、または酸若しくは前駆体を含有する溶液を金属層若しくはパターン上に被覆することにより、酸若しくは酸前駆体を含有する溶液と接触させうる。
【0020】
酸若しくは酸前駆体を含有する溶液は、水性溶液若しくは非水性溶液、好ましくは水性溶液でありうる。溶液の濃度は0.1と50.0wt%の間、好ましくは0.5と25wt%の間、より好ましくは1.0と10.0wt%との間でありうる。
【0021】
酸若しくは酸前駆体を含有する溶液中に金属層若しくはパターンを浸漬することは該溶液を含有するタンク中で実施しうる。これは手作業で行い得るか、若しくは金属層を搬送手段により溶液を通して搬送しうる。
【0022】
浸漬することは室温で実施し得る。浸漬時間は、最適の結果を得るために溶液の濃度の関数として変化されうる。非常に短い浸漬時間すなわち数秒が硬化効率および従って導電性を今すぐ改良しうることが観察されている。
【0023】
好ましい一態様において、パターンの金属層を、より高温例えば30と90℃の間、より好ましくは40と80℃の間で酸を含有する溶液中に浸漬する。より高温での浸漬が、追加の硬化若しくは焼鈍段階を伴わずに金属層若しくはパターンの高導電性につながったことが観察された。追加の硬化段階が必要でないという事実はもちろん一利点である。
【0024】
使用される酸は好ましくは無機酸である。鉱酸ともまた称される無機酸は1以上の無機化合物由来の酸である。好ましくは、無機酸は4.5未満、好ましくは3未満のpKaを有する。
【0025】
使用しうる無機酸は、例えばHCl、HBr、HI、HF、H2S04、H3P04、HPO3、H3P02、H427、HNO3、H3B03、HCl04、HCl03S、H2FO3P、HPF6、H2Se03、H3NO3S、H2S03およびHBF4である。
【0026】
好ましい無機酸は、XがF、Br、Cl若しくはIであるヒドロハライドHX、H2
4、H3P04、H3P02およびHNO3である。とりわけ好ましい無機酸はHClおよびHBrである。
【0027】
分散物から形成される金属層若しくはパターンの硬化中に酸を生成することが可能な酸前駆体を、上で挙げられた酸の代わりに若しくはそれに加えて使用しうる。
【0028】
前駆体は、好ましくは、XがF、Br、Cl若しくはIであるヒドロハライドHX、より好ましくはHCl若しくはHBrを生成する。
【0029】
本発明で使用しうる酸前駆体の数例を表1に列挙する。
【0030】
【表1】
【0031】
硬化効率に対する十分な影響を有するため、無機酸は硬化が実施される時間および温度窓(window)で、少なくとも部分的に、生成されなければならない。
【0032】
硬化時間は好ましくは60分未満、より好ましくは30分未満、最も好ましくは15分未満である。硬化温度は好ましくは250℃未満、より好ましくは200℃未満、最も好ましくは160℃未満である。
【0033】
酸前駆体の最適濃度は硬化時間および温度の関数として調節しうる。例えば、より高い濃度は、むしろ硬化時間が短く温度が低い場合に、十分な酸が硬化中に遊離されることを
確実にするために採用されうる。
【0034】
金属層若しくはパターンを、硬化段階の直前すなわち好ましくは1時間未満前、より好ましくは30分未満前、最も好ましくは10分未満前に酸若しくは酸前駆体を含有する溶液と接触させることが有利でありうる。
【0035】
金属層若しくはパターンは、酸若しくは酸前駆体を含有する溶液とそれらを接触させる前に乾燥させうる。
【0036】
本発明の第二の態様の導電性金属層若しくはパターンの製造方法は、
−支持体の少なくとも一つのサイドにプライマー層を有する支持体を提供する段階、
−金属ナノ粒子分散物を該プライマー層上に塗布して金属層若しくはパターンを得る段階、
−金属層若しくはパターンを硬化する段階
を含んでなり、
プライマーが、金属層若しくはパターンの硬化中に酸を生成することが可能な化合物を含んでなることを特徴とする。
【0037】
遊離される酸は好ましくはHClである。硬化中にHClを生成することが可能なとりわけ好ましい化合物は、塩化ビニリデン、アクリル酸エステルおよびイタコン酸のコポリマーである。
【0038】
3成分コポリマー中のモノマーの相対比率は、塩化ビニリデンについて好ましくは35ないし96mol%、より好ましくは60ないし94mol%;アクリル酸エステルについて好ましくは3.5ないし40、より好ましくは5ないし35;およびイタコン酸について好ましくは0.5ないし25、より好ましくは1ないし5である。
【0039】
コポリマーを製造するのに使用しうる好ましいアクリル酸エステルは、アルキル基中に1から18個までの炭素原子を有するアクリル酸およびメタクリル酸のアルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、n−ドデシルメタクリレート、n−クタデシル(ctadecyl)メタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレートおよびプロピルアクリレート)である。
【0040】
該コポリマーは多様な共重合法、例えば第EP465726号明細書に開示されるところの共重合法により製造しうる。
【0041】
該コポリマーはいずれかの適する技術により支持体に被覆し得る。それらは有機溶媒溶液として若しくは水性分散物から塗布しうる。
【0042】
塩化ビニリデンコポリマーを含有する他の好ましいプライマーは第EP343642号明細書に開示されるものである。
【0043】
該プライマーは、少なくとも、パターンの金属層がその上に提供されることができる支持体のサイドに提供される。
【0044】
硬化中に酸を生成することが可能な化合物を含有するプライマー、およびとりわけ、上で開示される塩化ビニリデンコポリマーを含んでなるプライマーを使用することの付加的な一利点は、導電性金属層若しくはパターンの支持体への付着の実質的改良である。
【0045】
双方の方法を組合せうる。硬化中に酸を生成することが可能な化合物を含有するプライマー層上に塗布された金属層若しくはパターンを、酸若しくは硬化中に酸を遊離することが可能な酸前駆体を含有する溶液と接触させうる。
【0046】
金属ナノ粒子分散物
金属ナノ粒子分散物は、金属ナノ粒子、分散媒、および場合によっては1種若しくはそれ以上の添加物を含んでなる。
【0047】
金属ナノ粒子
金属ナノ粒子は元素若しくは合金の形態の1種若しくはそれ以上の金属を含んでなる。金属は好ましくは銀、金、銅、ニッケル、コバルト、モリブデン、パラジウム、白金、スズ、亜鉛、チタン、クロム、タンタル、タングステン、鉄、ロジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、アルミニウムおよび鉛よりなる群から選択される。銀、銅、モリブデン、アルミニウム、金、銅若しくはそれらの組合せに基づく金属ナノ粒子がとりわけ好ましい。銀ナノ粒子が最も好ましい。
【0048】
「ナノ粒子」という用語は、分散物製造の終了時に200nmより下の平均粒子径を有する分散された粒子を指す。金属ナノ粒子は、200nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満、最も好ましくは30nm未満の分散物製造の終了時の平均粒子径を有する。
【0049】
分散媒
分散媒は好ましくは式I、
【0050】
【化1】
【0051】
式中
1およびR2は場合によっては置換されているアルキル基を表し、ならびに
1およびR2は環を形成することができ、
の溶媒を含んでなる。
【0052】
式Iにおける「アルキル」という用語は、アルキル基中の炭素原子のそれぞれの数について可能な全部のバリアント、すなわち3個の炭素原子について:n−プロピルおよびイソプロピル;4個の炭素原子について:n−ブチル、イソブチルおよび三級ブチル;5個の炭素原子について:n−ペンチル、1,1−ジメチル−プロピル、2,2−ジメチルプロピルおよび2−メチル−ブチルなどを意味している。
【0053】
好ましい一態様において、分散媒は式II、
【0054】
【化2】
【0055】
式中
Lは場合によっては置換されている直鎖状若しくは分枝状C2−C11アルキレン基であり、
の溶媒を含んでなる。
【0056】
より好ましい一態様において、分散媒は、場合によっては置換されている2−ピロリドン、β−ラクタム、γ−ラクタム、δ−ラクタム若しくはε−ラクタムから選択される溶媒を含んでなる。
【0057】
なおより好ましい一態様において、金属ナノ粒子分散物は、分散媒として、2−ピロリドン、4−ヒドロキシ−2−ピロリドン、δ−バレロラクタム若しくはε−カプロラクタムから選択される溶媒を含んでなる。最も好ましい一態様において、分散媒は2−ピロリドンを含んでなる。
【0058】
金属ナノ粒子分散物は、分散物の総重量に関して1と75wt%の間、好ましくは2.5と50wt%の間、より好ましくは5と25wt%の間の量の上で定義されたところの溶媒を含んでなる。
【0059】
金属ナノ粒子分散物の分散媒は、式Iの溶媒に加えて補助溶媒好ましくはアルコール若しくはケトンを含みうる。補助溶媒はより好ましくはエタノール若しくはメチルエチルケトン(MEK)である。補助溶媒は、金属ナノ粒子分散物の製造の開始から存在しうるか、または製造中若しくはその終了時に添加しうる。
【0060】
ポリマー分散剤
分散媒は分散剤、典型的にはポリマー分散剤を含有しうる。しかしながら、こうしたポリマー分散剤(若しくは他の添加物)は低焼結温度で金属ナノ粒子分散物を用いて製造されてコーティングの導電性を低下させうるため、それらを使用しないことが好ましい。
【0061】
ポリマー分散剤は、典型的には、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルピロリドン、ビニルブチラール、ビニルアセテート若しくはビニルアルコールモノマーから製造されるホモ若しくはコポリマーである。
【0062】
熱重量分析により測定されるところの300℃より下の温度で95wt%分解を有する第EP−A 2468827号明細書に開示されるポリマー分散剤もまた使用しうる。
【0063】
しかしながら、好ましい一態様において、本発明の金属ナノ粒子分散物は、分散物の総重量に関して5wt%未満、より好ましくは1wt%未満、最も好ましくは0.1wt%未満のポリマー分散剤を含んでなる。とりわけ好ましい一態様において、分散物はポリマー分散剤を全く含まない。
【0064】
印刷液若しくはコーティング液
それぞれ金属含有インク若しくは金属含有コーティング溶液ともまた称される金属含有印刷液若しくはコーティング液を金属ナノ粒子分散物から製造しうる。
【0065】
金属ナノ粒子分散物は金属含有印刷液若しくはコーティング液として直接使用しうる。しかしながら、コーティング若しくは印刷特性を最適化するため、およびまたそれが使用される応用にも依存して、還元剤、湿潤(wetting)/均染剤、はんだはじき(dewetting)剤、レオロジー調整剤、接着剤、粘着剤、湿潤剤(humectant)、噴射剤(jetting agent)、硬化剤、殺生物剤若しくは抗酸化剤のような添加物を金属ナノ粒子分散物に添加しうる。
【0066】
好ましくは、無機酸若しくはこうした酸を生成する酸前駆体は、金属含有印刷液若しくはコーティング液を製造している間に添加しうる。
【0067】
添加物の総量は、金属含有印刷液若しくはコーティング液の総重量に関して好ましくは20wt%未満、より好ましくは10wt%未満、およびなおより好ましくは5wt%未満である。
【0068】
増粘剤を、印刷液若しくはコーティング液の粘度を増大させるために添加しうる。好ましい増粘剤は、非晶質シリカ、多様な分子量を有するポリビニルピロリドン、およびセルロースに基づく増粘剤から選択しうる。とりわけ好ましい増粘剤はヒドロキシプロピルセルロースである。
【0069】
高沸点溶媒が、印刷中のインクの乾燥を予防するためにインクに好ましくは添加される。さらに、こうした高沸点溶媒はインクの導電性に対する正の影響もまた有しうる。好ましい高沸点溶媒は、ジエチレングリコール(DEG)、2−ブトキシエタノールおよび1−メトキシ−2−プロパノールである。
【0070】
また、希釈剤も、金属含有印刷液若しくはコーティング液を製造する場合に金属分散物に添加しうる。これら任意の希釈剤の量は、インクの総重量に関して好ましくは75wt%未満、より好ましくは60wt%未満である。希釈剤は、アルコール、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、脂肪族炭化水素、高級脂肪酸、カルビトール、セロソルブ(cellosolve)類および高級脂肪酸エステルから選択しうる。適するアルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、2−ブタノール、t−ブタノールを包含する。適する芳香族炭化水素はトルエンおよびキシレンを包含する。適するケトンはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2,4−ペンタンジオンおよびヘキサフルオロアセトンを包含する。またグリコール、グリコールエーテル、N,N−ジメチル−アセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドも使用しうる。
【0071】
金属含有印刷液若しくはコーティング液の製造は、撹拌、高剪断混合、超音波処理のような均質化技術若しくはそれらの組合せを使用することによる、任意の添加物および/若しくは希釈剤の金属ナノ粒子分散物への添加を含んでなる。均質化段階は100℃までの上昇された温度で実施し得る。好ましい一態様において、均質化段階は60℃に等しい若しくはそれより下の温度で実施する。
【0072】
好ましい一態様において、金属含有スクリーン印刷インクが製造される。こうしたスクリーン印刷インクは、3000と400000mPa.sの間、好ましくは5000と100000mPa.sの間、より好ましくは10000と50000mPa.sの間の粘度を有する。とりわけ好ましい一態様により、銀含有スクリーン印刷インクが製造される。
【0073】
別の好ましい態様において、金属含有フレキソ印刷インク若しくはグラビア印刷インクが製造される。こうしたインクは、50と3000mPa.sの間、好ましくは200と1000mPa.sの間、最も好ましくは300と500mPas.sの間の粘度を有する。とりわけ好ましい一態様により、銀含有フレキソ印刷インクが製造される。
【0074】
別の好ましい態様において、金属含有インクジェットインクが製造される。こうしたインクジェットインクは、1と50mPa.sの間、好ましくは5と30mPa.sの間、より好ましくは7と15mPa.sの間の粘度を有する。とりわけ好ましい一態様により、銀含有インクジェットインクが製造される。
【0075】
上で言及される粘度は20と25℃の間の温度で1/sの剪断速度で(例えばTexas InstrumentsからのAR2000レオメーターで)測定される。
【0076】
金属層若しくはパターン
金属層若しくはパターンは、上で定義されたところの印刷液若しくはコーティング液を支持体上に塗布する段階を含んでなる方法により製造する。
【0077】
複数の金属層若しくはパターン、すなわちパターン化された若しくはパターン化されない層の積み重ねを支持体上に塗布しうる。金属層若しくはパターンの製造方法にて言及される支持体は、従って、以前に塗布された金属層若しくはパターンもまた包含する。
【0078】
金属層若しくはパターンは、インクジェット印刷により、またはフレキソ印刷、オフセット印刷、グラビア印刷若しくはスクリーン印刷のようないずれかの従来の印刷技術により、あるいはスプレー塗装、ブレード塗工、スロットダイ塗布のようないずれかの従来の被覆技術によってもまた実現しうる。
【0079】
層若しくはパターンが支持体上に塗布された後に、硬化段階ともまた称される焼結段階を実施しうる。この焼結段階中に溶媒が蒸発しかつ金属粒子が一緒に焼結する。連続的浸透ネットワークが金属粒子間で一旦形成されれば、層若しくはパターンが導電性になる。従来の硬化は熱を適用することにより実施する。硬化温度および時間は使用される支持体および金属層若しくはパターンの組成に依存する。金属層を硬化するための硬化段階は、250℃より下、好ましくは200℃より下、より好ましくは180℃より下、最も好ましくは160℃より下の温度で実施しうる。
【0080】
硬化時間は、選択された温度、支持体、および金属層の組成に依存して好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、および最も好ましくは15分以下である。
【0081】
しかしながら、熱を適用することによる従来の硬化の代わりに若しくはそれに加えて、アルゴンレーザー、マイクロ波照射、UV照射若しくは低圧アルゴンプラズマへの曝露、光(photonic)硬化、プラズマ若しくはプラズマ強化電子線焼結またはパルス電流焼結のような代替の硬化方法を使用しうる。
【0082】
本発明の金属層は、例えばPETのような高温での熱処理に耐え得ないポリマー支持体を使用することを可能にする十分に低い硬化温度を可能にする。短い硬化時間は高生産性を可能にする。
【0083】
上述されたとおり、硬化段階は、金属層若しくはパターンがより高温例えば30と90℃の間で酸を含有する溶液中に浸漬される場合に、高導電性を得るために必要でない。
【0084】
硬化後のかつ(金属の)バルク導電率の%として表される金属層若しくはパターンの導
電率は、好ましくは10以上、より好ましくは20%以上、最も好ましくは30%以上である。
【0085】
金属層若しくはパターンは、多様な電子装置、または例えば有機光起電物質(photo−voltaics)(OPV)、無機光起電物質(c−Si、a−Si、CdTe、CIGS)、OLEDディスプレイ、OLED照明、無機照明、RFID、有機トランジスタ、薄膜電池、タッチスクリーン、電子ペーパー、LCD、プラズマ、センサー、膜スイッチ若しくは電磁遮蔽のような電子装置の部品で使用しうる。
【0086】
金属ナノ粒子分散物の製造方法
金属ナノ粒子分散物はこうした分散物のいずれの既知の製造方法によっても製造し得る。
【0087】
金属ナノ粒子分散物の好ましい一製造方法は:
−金属前駆体粒子を、式I
【0088】
【化3】
【0089】
式中
1およびR2は場合によっては置換されているアルキル基を表し、ならびに
1およびR2は環を形成することができる、
の溶媒を含んでなる分散媒中に分散させる段階;ならびに
−金属前駆体を還元剤で還元して金属ナノ粒子を形成する段階
を含んでなる。
【0090】
金属前駆体分散物は、式Iの溶媒を含有する分散媒に金属前駆体を添加することにより製造する。
【0091】
金属前駆体粒子は、典型的には、粉末、フレーク、粒子若しくは凝集された粒子として入手可能である。分散物の製造前に、フレーク若しくは粉末は、乾式摩砕、湿式磨砕、高剪断分散法若しくは篩過技術によって小型化しうる。
【0092】
金属前駆体分散物を製造するために、沈殿、混合、粉砕、in situ合成のような典型的分散法若しくはそれらの組合せを使用しうる。温度、加工時間、エネルギー入力などのような実験条件は選ばれた方法論に依存する。分散工程は連続、回分若しくは半回分様式で実施し得る。
【0093】
混合装置は、圧力捏和機、開放捏和機、遊星混合機、溶解装置、高剪断置き型混合機およびDalton万能混合機を包含しうる。適する粉砕および分散装置は、ボールミル、パールミル、コロイドミル、高速ディスペンサー、複式ローラー、ビーズミル、ペイントコンディショナーおよび三本組ローラーである。ガラス、セラミック、金属およびプラスチックのような多くの異なる種類の素材を粉砕媒として使用しうる。分散物は超音波エネルギーを使用してもまた製造しうる。
【0094】
wt%金属で表現される金属前駆体分散物の濃度は、好ましくは1と50wt%の間、より好ましくは2と25wt%の間、最も好ましくは3と15wt%の間である。
【0095】
金属ナノ粒子は、還元段階例えば金属酸化物の金属への還元によって金属前駆体粒子から製造される。
【0096】
金属前駆体粒子は、金属酸化物、金属塩、金属水酸化物および金属錯体よりなる群から選択しうる。
【0097】
好ましい金属酸化物粒子は、酸化銀、酸化スズ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ウォルフラム、酸化モリブデン、酸化カドミウム、酸化銅(cupper)若しくは酸化亜鉛粒子である。
【0098】
ZnO:Al、SnO2:F若しくはSnO2:Sb粒子のようなドープ金属酸化物粒子もまた使用しうる。
【0099】
好ましい金属水酸化物粒子は、水酸化銅、水酸化チタン、水酸化ジルコニウム、水酸化ウォルフラム、水酸化モリブデン、水酸化カドミウム若しくは水酸化亜鉛粒子である。
【0100】
好ましい金属塩は、硝酸塩、炭酸塩、塩化物、リン酸塩、ホウ酸塩、スルホン酸塩および硫酸塩のような無機酸の塩、ならびにステアリン酸塩、ミリスチン酸塩若しくは酢酸塩のような有機酸の塩を包含する。
【0101】
上で挙げられたとおり、とりわけ好ましい金属ナノ粒子は銀ナノ粒子である。これらは例えば酸化銀、硝酸銀若しくは酢酸銀の還元により製造しうる。
【0102】
この還元段階で使用される還元剤は好ましくは分散媒に可溶性である。還元剤は、ヒドロキシルアミンおよびその誘導体、ギ酸、シュウ酸、アスコルビン酸、ヒドラジンおよびその誘導体、ジチオスレイトール、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、リン酸およびその誘導体、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、ホウ水素化ナトリウム、亜硫酸塩、スズ(II)錯体、鉄(II)錯体、亜鉛水銀アマルガム、ナトリウムアマルガム、原子水素若しくはリンドラー触媒よりなる群から選択しうる。
【0103】
好ましい還元剤は、その誘導体のヒドロキシルアミンであり、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンがとりわけ好ましい。別の好ましい還元剤はギ酸である。
【0104】
金属に対する還元剤のモル比として表現される使用される還元剤の量は、好ましくは0.6と10の間、より好ましくは0.8と8の間、最も好ましくは1と6の間である。
【0105】
金属前駆体の金属ナノ粒子への還元の程度は好ましくは60%と100%の間である。
【0106】
還元剤は、好ましくは、前駆体の速すぎる還元を予防するように制御された方法で分散物に添加する。
【0107】
本発明の金属ナノ粒子分散物の別の好ましい製造方法は:
−金属前駆体を、
(a)式I
【0108】
【化4】
【0109】
式中
1およびR2は場合によっては置換されているアルキル基を表し、
1およびR2は環を形成することができる、
の溶媒、ならびに
(b)式III
R−COOH
式III
式中
Rは場合によっては置換されているC2−C7アルキル、アルケニル、アルキニル若しくはシクロアルキル基である、
のカルボン酸
を含んでなる分散媒に添加することにより金属前駆体分散物若しくは溶液を形成する段階;
−金属前駆体を還元剤で還元して金属ナノ粒子を形成する段階;
−金属ナノ粒子を沈降させて、最低15wt%の金属ナノ粒子を含んでなる濃縮された金属ナノ粒子分散物を得る段階
を含んでなる。
【0110】
式Iの溶媒および式IIIのカルボン酸の組合せを使用することにより、容易に再分散されかつそれを用いて高度に導電性の層を製造しうる金属ナノ粒子の微細かつ均質な沈降物を得ることができることが観察されている。可能な一説明は、式Iの溶媒および式IIIのカルボン酸の双方が金属前駆体粒子および/若しくは金属ナノ粒子を安定化して、それが粒子の凝集物の非存在をもたらしうることでありうる。式Iの溶媒は金属ナノ粒子をとりわけ安定化する一方、カルボン酸は金属前駆体粒子を安定化するという徴候が存在する。
【0111】
金属ナノ粒子分散物の好ましい製造方法で使用される反応若しくは分散媒は、式IIIのカルボン酸、
R−COOH
式III
式中、
Rは場合によっては置換されているC2−C7アルキル、アルケニル、アルキニル若しくはシクロアルキル基である、
を含有する。
【0112】
2−C7アルキル、アルケニル、アルキニル若しくはシクロアルキル基は2と7個の間の炭素原子を含有する。
【0113】
Rは好ましくは場合によっては置換されているC2−C7アルキル基である。「アルキル」という用語は、該アルキル基中の炭素原子のそれぞれの数について可能な全部のバリアント、すなわち3個の炭素原子について:n−プロピルおよびイソプロピル;4個の炭素
原子について:n−ブチル、イソブチルおよび三級ブチル;5個の炭素原子について:n−ペンチル、1,1−ジメチル−プロピル、2,2−ジメチルプロピルおよび2−メチル−ブチルなどを意味している。
【0114】
好ましくはRはn−アルキル基である。アルキル基の鎖長が増大する場合、反応混合物の粘度の増大が観察されている。他方、より短いアルキル基を伴う酸は許容できない臭いを有する。式IIIのR基は最も好ましくはC4−C6 n−アルキル基である。
【0115】
式IIIのとりわけ好ましいカルボン酸は、ペンタン酸、ヘキサン酸およびヘプタン酸である。
【0116】
金属に対するカルボン酸のモル比として表現される本発明の方法で使用される式IIIのカルボン酸の量は、好ましくは1と10の間、より好ましくは2と8の間、最も好ましくは3と6の間である。
【0117】
金属前駆体分散物は、金属前駆体を、上で開示された分散方法について記述されるところの分散媒に添加することにより製造する。該分散媒は、しかしながら今や式Iの溶媒および式IIIのカルボン酸を含有する。
【0118】
金属ナノ粒子は還元段階例えば金属酸化物の金属への還元によって金属前駆体粒子から製造される。還元は上で開示されたとおり実施しうる。
【0119】
最低15wt%の金属ナノ粒子を含んでなる高度に濃縮された金属ナノ粒子分散物を実現するために、沈降段階を還元段階の後で実施する。
【0120】
沈降段階の後に金属ナノ粒子の微細な均質な沈降物が得られる。沈降段階および任意の洗浄段階は、分散物からのコーティングの導電性に対する負の影響を有しうる有機成分(溶媒、カルボン酸、還元剤、結合剤)の除去もまたもたらす。
【0121】
好ましくは、還元段階後に、分散物を、上清を除去するため攪拌機およびチューブを含有する沈降容器に移す。しかしながら上清からの沈降物の他の分離方法もまた使用しうる。
【0122】
沈降は、好ましくは、混合物を撹拌することなくしばらくの間例えば一夜静置させることにより実施する。
【0123】
沈降は、しかしながら、溶媒蒸発により、溶媒以外を添加することにより、遠心分離により、若しくは超遠心分離により誘発若しくは促進しうる。
【0124】
沈降が完了した場合に上清を沈降物から除去する。沈降物からの上清の分離中に沈降物を撹乱しないことが非常に重要である。
【0125】
好ましくは、1若しくはそれ以上の洗浄段階を、沈降物中になお存在する不要な成分を少なくとも部分的にさらに除去するため、得られた沈降物で実施する。
【0126】
洗浄段階では、溶媒を沈降物に添加し、そして生じる分散物をしばらくの間例えば1時間若しくは半時間撹拌する。
【0127】
その後、混合物を撹拌することなくしばらくの間例えば1時間静置させ、沈降物および上清をもたらす。上清をその後除去する。
【0128】
数回の洗浄段階を、同一若しくは異なる溶媒を使用して実施しうる。
【0129】
溶媒は、沈降物からの不要な成分の除去およびその溶媒中の金属ナノ粒子の沈降を考慮に入れて選ぶ。金属ナノ粒子の可逆的凝集が沈降を促進しうる。本発明の方法によりすなわち式Iの溶媒および式IIIのカルボン酸の存在下で製造された金属ナノ粒子は、事実こうした可逆的凝集物を特徴とし、かように沈降を促進するがしかし容易に再分散可能な沈降物を形成することが観察されている。
【0130】
最後の洗浄段階で使用される溶媒は、分散物から作成される印刷液若しくはコーティング液の導電性および印刷特性もまた考慮に入れて選ぶ。
【0131】
好ましい一態様において4洗浄段階を実施する。1−メトキシ−2−プロパノールを用いる最初の2洗浄段階、DOW CHEMICALSからのブチルグリコールエーテルButylcellosolveTMを用いる最後の2段階。
【0132】
本発明の方法により得られる高度に濃縮された金属ナノ粒子分散物は、分散物の総重量に関して最低15wt%、より好ましくは最低30wt%、最も好ましくは最低50wt%の金属ナノ粒子を含有する。とりわけ好ましい、金属ナノ粒子分散物は、分散物の総重量に関して60と80wt%の間の金属ナノ粒子を含有する。
【実施例】
【0133】
材料
以下の実施例で使用される全部の物質は、別の方法で明記されない限りALDRICH
CHEMICAL Co.(ベルギー)およびACROS(ベルギー)のような標準的供給源から容易に入手可能であった。全部の物質は別の方法で明記されない限りさらなる精製を伴わず使用した。
・ButylcellosolveTMはDOW CHEMICALSからのブチルグリコールエーテルである。
・Dowanol PMTMはDOW CHEMICALSからの1−メトキシ−2−プロパノールである。
・KlucelTMJはHERCULESからのヒドロキシプロピルセルロースである。
・ELEMENTISからの消泡剤(疎水性に修飾されたシリカを含有するポリシロキサン)DAPRO DF 6800。
・BYK Additives & Instrumentsからの湿潤添加物Disperbyk(登録商標)−2025。
・IPAはイソプロピルアルコールである。
・EtOAcは酢酸エチルである。
・AcOHは酢酸である。
・THFはテトラヒドロフランである。
・MEKはメチルエチルケトンである。
・DMAはN,N−ジメチルアセトアミドである。
・NMPはN−メチルピロリドンである。
・UMICOREからの酸化銀。
・Agfa Gevaertからの塩化ビニリデン−メタクリル酸およびイタコン酸のコポリマーCopol(ViCl2−MA−IA)。
・Lanxessからの界面活性剤Mersolat H40。
・BayerからのシリカKieselsol 100F。
【実施例1】
【0134】
銀ナノ粒子分散物NPD−01の製造
576.0gの2−ピロリドン、576.0gのエタノールおよび1728.0gのYTZパールを2リットルPE容器に添加した。この混合物に320.0gの酸化銀(Umicoreから)を添加した。閉鎖された容器をその後「ローラーミル」上に24時間置いた。YTZパールを除去した後に前分散物を得る。
【0135】
44.26mlのギ酸を前分散物(1.25ml/min)に22℃で添加した。該混合物をその後22℃で夜にわたり攪拌した。該混合物をその後60μm濾布を使用して濾過した。濾液をその後40℃で最初の60minは110mbarで、その後30min60mbarで濃縮した。
【0136】
得られた銀ナノ粒子分散物NPD−01は分散物の総重量に関して±20wt%の銀を有した。
【実施例2】
【0137】
銀ナノ粒子分散物NPD−01、および該分散物を2−フェノキシエタノール(fenoxyethanol)/2−メチルピロリドンの50/50wt%混合物で最初に希釈することにより得られた分散物をその後、ポリエステル上に被覆して(ブレードコーター、コーティング厚は10μmであった)、被覆層CL−01およびCL−02を得た。
【0138】
CL−01およびCL−02をその後、数種の処理すなわち乾燥、被覆層上に1%HCl溶液の保護膜を塗布すること、および硬化に、表2に示される順序でかけた。
【0139】
それらを多様な処理にかけた後の被覆層の表面抵抗(SER)を4点コリニアプローブ(collinear probe)を使用して測定した。表面若しくはシート抵抗を以下の式:
SER=(π/ln2)*(V/I)
式中
SERはΩ/□で表現される層の表面抵抗であり;
πは3.14におよそ等しい数学的定数であり;
ln2は、0.693におよそ等しい、値2の自然対数に等しい数学的定数であり;
Vは4点プローブ測定装置の電圧計により測定される電圧であり;
Iは4点プローブ測定装置により測定されるソース電流であり、
により計算した。
【0140】
各サンプルについて、3回の測定をコーティングの異なる位置で実施しそして平均値を計算した。
【0141】
コーティングの銀含量MAg(g/m2)をWD−XRFにより決定した。
【0142】
被覆層の導電率を、以下の式:
【0143】
【数1】
【0144】
式中
ρAgは銀の密度(10.49g・cm−3)、およびσAgは銀の比導電率(6.3 105
S/cmに等しい)であり、
を使用して導電率を銀のバルク導電率のパーセンテージとして計算することにより決定した。
【0145】
被覆金属層の導電率を表2に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
HClの保護膜が塗布された発明の実施例が最高の導電率を有することが表2の結果から明確である。
【実施例3】
【0148】
銀ナノ粒子分散物NPD−02の製造
78.0gの酸化銀を、275.0gのペンタン酸および401.0gの2−ピロリドンを含有する1l反応槽に撹拌しながらゆっくりと添加した。混合物の温度を25℃で保った。
【0149】
酸化銀の完全な添加後に該懸濁液を25℃で一夜攪拌した。
【0150】
その後、300.0gのN,N−ジエチルヒドロキシルアミンを1.5時間の時間の期間に該懸濁液に添加した。反応混合物の温度を25℃で保った。全部の還元剤を添加した場合に該反応混合物を別の1時間攪拌しながら25℃で保った。
【0151】
該反応混合物をその後沈降容器にフィードし、そこでそれを撹拌することなく一夜保管した。上清を沈降物から慎重に除去した。
【0152】
得られた沈降物を4回すなわちDowanol PMTM(547g)で2回およびbutylcellosolveTM(547g)で2回洗浄した。各洗浄段階において、溶媒を沈降物に添加し、そして生じる懸濁液を300rpmで0.5時間攪拌した。その後、撹拌されない懸濁液を別の1時間保管し、そして上清を慎重に除去した。
【0153】
butylcellosolveTMでの最後の洗浄段階後に、沈降物をRousselet Robatel(仏国)からの遠心デカンター中0.5時間の間3000rpmで遠心分離した。
【0154】
得られた銀ナノ粒子分散物NPD−02は分散物の総重量に関して±41wt%の銀を
有した。
【実施例4】
【0155】
銀ナノ粒子分散物NPD−01およびNPD−02をポリエステル上に被覆し(ブレードコーター、コーティング厚は10μmであった)、そして3分の間120℃で乾燥してコーティング層CL−03およびCL−04を得た。その後HCl保護膜(HCl OC)を銀層上に塗布し(湿コーティング厚は20μmであった)そして表3に示される条件で乾燥した。2種の異なるHCl保護膜を使用した。すなわち、OC−01はbutylcellosolve中5wt%HCL溶液から被覆し、OC−02はエタノール中5wt%HCl溶液から被覆した。
【0156】
導電率を実施例2でのとおり測定しかつ表3に示した。
【0157】
【表3】
【0158】
導電率はHCl保護膜を銀層上に塗布した場合に増大することが表3から明確である。HCl保護膜の存在下で、高導電率を、硬化を室温で実施した場合に得た。
【実施例5】
【0159】
コーティング溶液を、Klucel J(12.6wt%)、butylcellosolve(1.4wt%)を銀ナノ粒子分散物NPD−02(86wt%)に添加することにより製造した。該コーティング溶液をその後、支持体の一側を提供されたプライマーを伴う若しくは伴わないポリエステル支持体上に被覆し(ブレードコーター、コーティング厚は10μmであった)、そして3分の間120℃で乾燥した。
【0160】
プライマーは水性コーティング溶液から被覆した。プライマーの組成を表4に示す。
【0161】
【表4】
【0162】
硬化を表5に示されるとおり実施した。導電率を実施例2でのとおり測定しかつ表5に示した。
【0163】
【表5】
【0164】
より高い導電率は金属層が表4のプライマー上に提供される場合に観察されることが表5から明確である。
【実施例6】
【0165】
銀ナノ粒子分散物NPD−01からペーストを分散溶媒の蒸発により製造した。該ペーストは分散物の総重量に関して±47wt%の銀含量を有した。
【0166】
該ペーストをその後、支持体の一側を提供されたプライマーを伴う若しくは伴わないポリエステル支持体上に被覆し(ブレードコーター、コーティング厚は10μmであった)、そして3分の間120℃で乾燥した。
【0167】
実施例5のプライマーを使用する。
【0168】
硬化を150℃で20分間実施した。導電率を実施例2でのとおり測定しかつ表6に示した。
【0169】
【表6】
【0170】
より高い導電率は金属層が表4のプライマー上に提供される場合に観察されることが表6から明確である。
【実施例7】
【0171】
本実施例において第WO2003/038002号明細書に開示される方法を実施した。本方法において、銀層はいわゆる凝集剤すなわちポリ塩化ジアリルジメチルアンモニウム(PDAC)を含有する溶液と接触される。
【0172】
銀ナノ粒子分散物NPD−01を2−フェノキシエタノール/2−メチルピロリドンの50/50wt%混合物で希釈し、そしてその後ポリエステル上に被覆して(ブレードコーター、コーティング厚は10μmであった)被覆層CL−05を得た。
【0173】
その後PDAC保護膜(PDAC OC)を銀層上に塗布した(湿コーティング厚は40μmであった)。2種の異なるPDAC保護膜を使用した。すなわち、OC−03は水中1wt%PDAC溶液から被覆し、OC−02は水中5wt%PDAC溶液から被覆し
た。
【0174】
保護膜を塗布した後に被覆層を表7に示されるとおり洗浄した。その後硬化を30分の間120℃で実施した。
【0175】
表7に示される導電率は実施例2でのとおり測定した。
【0176】
【表7】
【0177】
硬化前に銀層をPDACと接触させることは、例えばHCl保護膜を銀層上に塗布した場合に観察された(実施例2を参照されたい)ところの硬化された銀層の導電率を増大させないことが、表7から明確である。
【実施例8】
【0178】
実施例6の硬化された銀層の付着を、クロスハッチ試験(ASTM D3359に従って、スケール0Bないし5B、ここで付着は0Bから5Bまで増大するにより評価した。
【0179】
結果を表8に示す。
【0180】
【表8】
【0181】
プライマーの存在が銀層の導電率のみならずしかしまた支持体への銀層の付着も増大させることが、表8から明確である。
【実施例9】
【0182】
実施例2で製造された銀ナノ粒子分散物NPD−02を、およそ4mmの厚さを有するpMMA支持体上にスクリーン印刷した(ポリエステルP180篩、Ulano CDFマトリックスUV薄膜、ドクター角度=70°、スキージ角度=50°、全体被覆(full coverage))。
【0183】
表9に示されるところの順序の多様な処理にかけられた後の印刷された銀の導電率をその後評価した。
【0184】
【表9】
【0185】
HCl溶液中への銀印刷の浸漬(全部の発明の実施例)が印刷された銀の導電率の増大をもたらしたことが明確である。
【0186】
最高の導電率は、HCl溶液中の浸漬および乾燥後に追加の硬化段階(15min/150℃)を実施するINV−21で観察される。
【0187】
INV−22ないしINV−24は、しかしながら、銀印刷をより高温(70℃)でHCl溶液中に浸漬することにより高導電率がこうした追加の硬化段階なしに得られることを示す。