(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6190055
(24)【登録日】2017年8月10日
(45)【発行日】2017年8月30日
(54)【発明の名称】ゲル化用添加剤としてのカプロラクタム主体型脂肪族アミド
(51)【国際特許分類】
C09K 3/00 20060101AFI20170821BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20170821BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20170821BHJP
C09D 11/03 20140101ALI20170821BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20170821BHJP
C11D 3/32 20060101ALI20170821BHJP
D06M 15/59 20060101ALI20170821BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20170821BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20170821BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20170821BHJP
C07C 237/06 20060101ALN20170821BHJP
C07C 231/08 20060101ALN20170821BHJP
【FI】
C09K3/00 103M
C09D201/00
C09D7/12
C09D11/03
C09J201/00
C11D3/32
D06M15/59
A61K8/42
A61K8/02
C09J11/06
!C07C237/06
!C07C231/08
【請求項の数】19
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-522697(P2016-522697)
(86)(22)【出願日】2014年6月16日
(65)【公表番号】特表2016-529344(P2016-529344A)
(43)【公表日】2016年9月23日
(86)【国際出願番号】FR2014051472
(87)【国際公開番号】WO2014207344
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2016年2月16日
(31)【優先権主張番号】1356319
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルナール,ミシェル・イグレク
【審査官】
上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭50−071827(JP,A)
【文献】
特開昭47−002731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
A61K 8/02
A61K 8/42
C09D 7/12
C09D 11/03
C09D 201/00
C09J 11/06
C09J 201/00
C11D 3/32
D06M 15/59
C07C 231/08
C07C 237/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族アミンR1NH2と、カプロラクタムとの付加反応における生成物である脂肪族アミドを主体とするヒドロゲル化添加剤であって、R1はC10−C24アルキルであり、
末端アミン官能基は、中和剤による前記アミン官能基の中和による塩化されたアンモニウム塩形態であり、前記反応から生じ、導入されたカプロラクタム単位の数nによって特徴付けられ、前記数nがそれぞれ1、2および3である、相異なる3つのアミド化合物の混合物からなり、またはこうした混合物を含み、ここで、単位の平均数n(分子当たりの平均数)が、0.8から3までの範囲である、ヒドロゲル化剤添加剤であって、
前記アミン官能基は、有機酸または無機酸から選択される中和剤により塩化される、ヒドロゲル化剤添加剤。
【請求項2】
前記3つのアミド化合物が、下記の式(I)に従って規定され、それぞれn=1、n=2およびn=3に相当し、
R1−NH−[−C(=O)(CH2)5NH]n−1−C(=O)(CH2)5−Y (I)
ここで、Yが、アミンが塩化された形態である、−NH3+X−であり、X−が、使用された酸中和剤X−Hに関連する有機対アニオンまたは無機対アニオンであり、R1はC10−C24アルキルである、請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
前記脂肪族アミンが、10個から24個までの範囲である、幾つかの炭素原子を含む、請求項1または2に記載の添加剤。
【請求項4】
前記添加剤が、50μm未満の体積平均サイズを有する、微粒子化された粉末の形態である、請求項1から3の一項に記載の添加剤。
【請求項5】
水中におけるゲル形態であり、5重量%未満の含量である請求項1から4の一項に記載の添加剤。
【請求項6】
前記脂肪族アミンに対する前記カプロラクタムのモル比が、0.8から3までの範囲である、脂肪族アミンR1NH2とカプロラクタムとの付加反応の段階を含み、いかなる分離段階または精製段階も含まないことを特徴とする、請求項1から5の一項に従って規定される添加剤の調製のための方法。
【請求項7】
請求項1から5の一項に従って規定される少なくとも1つの添加剤を、ゲル化剤として含む、水性組成物。
【請求項8】
水性組成物であり、5未満の酸性pHを有する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
水性界面活性剤、剥離剤組成物、汚染除去剤組成物または凝集剤組成物である、請求項7または8に記載の組成物。
【請求項10】
コーティング組成物、接着剤組成物もしくは化粧品組成物、または繊維処理用もしくはテキスタイル処理用水性組成物であり、ヒドロゲル化剤が、レオロジー添加剤である、請求項7または8に記載の水性組成物。
【請求項11】
ワニス、塗料またはインクから選択されるコーティング組成物である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
ヒドロゲル化剤としての水性組成物中の組成物用のゲル化剤添加剤としての、請求項1から5の一項に記載の脂肪族アミドの使用。
【請求項13】
前記添加剤が、ヒドロゲルを得るために水中でヒドロゲル化剤として使用され、または、水性の洗剤組成物、汚染除去剤組成物、剥離剤組成物もしくは凝集剤組成物、または水性コーティング組成物、特に水性の塗料組成物、ワニス組成物もしくはインク組成物、または接着剤組成物または化粧品組成物または、繊維処理用もしくはテキスタイル処理用組成物中のヒドロゲル化剤として使用される、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
請求項1から5の一項に従って規定される添加剤の、請求項12または13に従って規定される使用から生じる生成物であることを特徴とする、ヒドロゲル。
【請求項15】
水性媒体中におけるヒドロゲル化剤としての、請求項1から5の一項に従って規定される少なくとも1つの添加剤の使用から生じ、コーティングまたは接着剤または化粧品または洗剤または剥離剤または汚染除去剤または処理済み繊維または処理済みテキスタイルから選択される、最終生成物。
【請求項16】
単位の平均数nが、0.9から2.75までの範囲である請求項1に記載のゲル化剤添加剤。
【請求項17】
単位の平均数nが、0.9から2.5までの範囲である請求項1に記載のゲル化剤添加剤。
【請求項18】
1重量%を超えない含量で、水中におけるゲル形態のヒドロゲル化剤として使用される請求項5に記載の添加剤。
【請求項19】
添加剤が、レオロジー添加剤であるヒドロゲル化剤として使用される、請求項15に記載の最終生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミン末端部または塩化されたアミン末端部を有し、有機媒体または水性媒体用のゲル化剤として使用され、特に、コーティングもしくは接着剤、または繊維処理もしくはテキスタイル処理、または洗剤用、剥離剤(stripping agent)用、汚染除去剤用もしくは凝集剤用等、水性媒体用のヒドロゲル化剤として使用される、脂肪族アミド添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
水中または有機溶剤中でそれぞれヒドロゲル化剤添加剤および有機ゲル化剤添加剤によってゲル化し得る様々な系が、すでに公知となっており、様々な用途で使用されている。
【0003】
FR2976948では、様々な用途、特に洗浄力に関する用途用の(含塩型)水性媒体中のゲルを得るための、ホウ酸等といったホウ素の酸と、N−アルキルアルドンアミド、特にN−ドデシル−D−グルコンアミドと、NaCl等の一価塩との三成分による組合せが記述されている。
【0004】
公知のヒドロゲル化剤には、例えばM.SuzukiらによりChem.Soc.Rev.,2009,38,967−975で記述されている、リシン誘導体を主体とするヒドロゲル化剤が挙げられ、上記の記述では、有機ゲル化剤として使用される誘導体についても記述されている。リシンから出発するジ尿素−エステル、アミド−エステルまたはアミド−尿素−エステルについては、上記の誘導体の中でも特に記述されている。
【0005】
ヒドロゲル化剤の検討については、キャラクタリゼーション方法および既知の構造の一覧表が含まれているChemical Reviews,2004,104,3,1201−1217において、L.A.Estroffらが実施している。親水性頭部および1つまたは2つの疎水性鎖を有する慣例的な両方新媒性誘導体と、疎水性鎖を介して結合し合った2つの親水性頭部を有する双頭型両親媒性物質と、柔軟な2つの末端鎖を備えた剛直なスペーサーによって隔てられている二重のイオン性頭部を有する界面活性剤と、糖に由来した系は、特に選出に値するものである。分子の親水性と疎水性との満足できる折り合いの発見を見出すために適用可能な一般規則は存在しないと認識されており、従って、水性媒体中でゲルを形成する能力と、繊維沈殿の予防し易さとの間にも一般規則は存在しないと認識されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】仏国特許第2976948号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】M.Suzukiら,Chem.Soc.Rev.,2009,38,967−975
【非特許文献2】L.A.Estroffら,Chemical Reviews,2004,104,3,1201−1217
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記ヒドロゲル化剤または有機ゲル化剤の欠点は、アミノ酸を主体とする点であり、アミノ酸には、前記ゲル化剤の調製用の条件によっては副反応が起きる可能性があり、特に、制御を受けていない鎖伸長が起きる可能性があり、従って、アミノ酸の微細構造に影響が及ぼされ、この結果、ゲル化剤に関するアミノ酸の性能にも影響が及ぼされる可能性がある。さらに、引用した文献のいずれにおいても、カプロラクタムによって改質され、本発明の主題である、現行技術の欠点を克服するための改良された性能を有する、アミド添加剤をどのように得るかについては、記述または教示がない。
【0009】
特に、本発明は、アミノ酸に依拠することなく、または、塩化アシルを必要とする幾つかの段階において重縮合によって反応する酸およびアミンに依拠することなく、(C
6アミノ酸と等価な)カプロラクタム構造によって改質された新規なアミド添加剤を開発しようとするものである。
【0010】
こうした新規なアミドは、回避困難である等価なアミノ酸との副反応または酸/アミン縮合による副反応をも防止するためにカプロラクタムの開環が制御を受け、最終生成物の分離段階および/または精製段階を必要としない、実施が簡便で実用的な調製方法の使用を可能にしなければならない。前記新規なアミドは、このアミドと結びつけて使用され得る結合剤、特に水性結合剤の特異的な性能に影響することなく、有機媒体中または水性媒体中、特に水性媒体中で満足なゲル化剤レオロジー性能を示さなければならない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1の主題は、特定の組成になるように制御を受けた特定の比における、脂肪族アミンとカプロラクタムとの付加反応(副生成物の排除は存在しない。)の生成物である、脂肪族アミドを主体とするゲル化剤添加剤である。
【0012】
従って、本発明の第1の主題は、脂肪族アミンR
1NH
2と、アミン形態または塩化されたアンモニウム塩形態の末端アミン官能基を有するカプロラクタムとの付加反応における、中和剤による前記アミン官能基の中和による生成物である、脂肪族アミドを主体とするゲル化剤添加剤であって、(前記添加剤)が、前記反応(縮合)から生じ、導入されたカプロラクタム単位の数nによって特徴付けられ、数nがそれぞれ1、2および3である、相異なる3つのアミド化合物の混合物からなり、またはこうした混合物を含み、ここで、単位の平均数n(分子当たりの平均)は、0.8から3までの範囲、好ましくは0.9から2.75までの範囲、より好ましくは0.9から2.5までの範囲である、ゲル化剤添加剤である。より詳細には、前記3つのアミド化合物は、式(I)に従って規定することができ、それぞれn=1、n=2およびn=3に相当し、
R
1−NH−[−C(=O)C(=O)(CH
2)
5NH]
n−1−C(=O)(CH
2)
5−Y (I)
ここで、アミンが塩化された形態である場合、Yが、−NH
2または−NH
3+X
−であり、X
−が、使用された酸中和剤に関連する有機対アニオンまたは無機対アニオンX−Hである。
【0013】
好ましくは、前記脂肪族アミンR
1NH
2は、10個から24個までの範囲である、幾つかの炭素原子を含み、これは、R
1が、C
10からC
24までのアルキルであり、R
1が、好ましくは線形であることを意味する。
【0014】
適切な例としては、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン(またはラウリルアミン)、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン(またはステアリルアミン)、イコサンアミン、ドイコサンアミンもしくはテトライコサンアミン、またはこれらの異性体およびこれらの混合物等、R
1NH
2の脂肪族モノアミンを挙げることができる。より詳細には、前記アミン官能基は、特にヒドロゲル化剤としての使用のための塩化された形態であってよく、使用される前記中和剤は、有機酸または無機酸から選択される。
【0015】
無機酸の適切な例としては特に、塩酸、硫酸、リン酸、ホウ酸または硝酸を挙げることができる。
【0016】
有機酸の適切な例としては、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸およびホスフィン酸を挙げることができる。
【0017】
本発明の前記添加剤は特に、水に溶かしたゲル形態において使用してもよいし、または有機溶剤に溶かしたゲル形態において使用してもよく、好ましくは5重量%未満の含量になっており、より好ましくは1重量%を超えない含量になっており、この百分率は、水+添加剤の重量を基準として規定されたものであり、さらにより好ましくは、前記添加剤は、水に溶かしたゲル形態、言い換えると即ち、ヒドロゲル形態のヒドロゲル化剤として使用される。
【0018】
前記添加剤は、好ましくは50μm未満、好ましくは25μm未満という体積平均サイズを有する、微粒子化された粉末の形態であり得る。この粒径分布は、レーザー回折によれば、乾燥粉末について直接測定することができる。こうした測定技法は、レーザービームを通過する粒子が、これらの粒子のサイズに応じた異なる角度に従って光を回折させることという原理に基づいており、ここで、小さなサイズを有する粒子は、大きな角度で回折する一方、より大きなサイズを有する粒子は、小さな角度で回折する。
【0019】
前記有機溶剤は好ましくは、相分離が存在しない均一な混合物であり、C
1からC
4までのアルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)もしくはジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−エチルピロリドン(NEP)または極性有機可塑剤等の極性有機溶剤を含む、極性有機溶剤または有機溶剤である。
【0020】
本発明の第2の主題は、脂肪族アミンR
1NH
2とカプロラクタムとの付加反応の段階を含み、いかなる分離段階または精製段階も含まない、本発明によるゲル化剤添加剤の調製のための方法であって、前記脂肪族アミンに対する前記カプロラクタムのモル比が、0.8から3までの範囲、好ましくは0.9から2.75までの範囲、より好ましくは0.9から2.5までの範囲である、方法である。上記付加反応は、不活性雰囲気下、200℃から300℃までの範囲の温度で起き得る、溶融状態におけるバルク付加反応である。冷却後、得られた生成物は、機械的粉砕または空気ジェットによって微粒子化される。ふるい分けは、例えばMalvern製のMastersizer(R)S等を用いたレーザー回折によって測定して50μm未満、好ましくは25μm未満という体積平均サイズになるように制御を受けた、微細な粒径分布の達成を可能にするものであり得る。例えばルイス酸またはルイス塩基等の触媒が、上記付加反応のために使用されてもよい。
【0021】
本発明の別の主題は、ゲル化剤として、特に水性組成物用のヒドロゲル化剤として、より詳細にはレオロジー添加剤として使用される、上記で規定されている少なくとも1つの添加剤または上記で規定された本発明による方法によって得られる少なくとも1つの添加剤を含む、水性組成物、または有機溶剤媒体中の組成物、好ましくは水性組成物である。好ましくは、前記組成物は水性であり、好ましくは5未満、より好ましくは4未満の酸性pHを有する。
【0022】
このpHは、水中におけるゲル形態(ヒドロゲル)において存在する添加剤に関しても同様に有効である。
【0023】
このpHは、過剰にした前記有機酸または前記無機酸の添加によって、調整することができる。
【0024】
より特定的な選択肢によれば、前記組成物は、水性有機結合剤組成物、特にコーティング組成物であり、より詳細には、ワニス、塗料またはインクから選択されるコーティング組成物、または接着剤組成物もしくは化粧品組成物、または繊維処理用もしくはテキスタイル処理用水性組成物に関しては、前記ヒドロゲル化剤添加剤は、レオロジー添加剤である。こうした組成物に関する選択肢において、前記水性組成物は、有機結合剤組成物であり、従って、前記添加剤の他に、目的とする用途に関連した少なくとも1つの有機結合剤も含む。別の水性組成物に関する選択肢によれば、上記水性組成物は、有機結合剤を含まなくてもよく、ヒドロゲル形態になっている水に溶かした前記添加剤の組成物であってもよく、または、上記水性組成物は、界面活性剤、特に洗剤または剥離剤または汚染除去剤または凝集剤組成物であってよい。
【0025】
前記添加剤が、有機溶剤媒体(または有機媒体)、好ましくは極性媒体中の有機ゲル化剤として使用される場合、こうした使用から生じる有機媒体中の前記組成物は、有機ゲル形態になっている前記溶剤中の前記添加剤の組成物であってもよく、または、特に塗料、ワニス、インクもしくはゲルコートから選択されるコーティング組成物、または接着剤組成物、またはマスチック剤もしくは漏出防止剤、または剥離剤組成物または成型加工用組成物であってもよい。
【0026】
前記添加剤をヒドロゲル化剤として含む水性組成物は、さらに特段に好ましい。
【0027】
本発明はまた、有機ゲル化剤としての有機溶剤媒体中の組成物用、またはヒドロゲル化剤としての水性組成物用のゲル化剤添加剤としての、上記で規定された本発明による脂肪族アミド添加剤の使用にも関する。より詳細には、前記添加剤は、ヒドロゲルを得るために水中でヒドロゲル化剤として使用され、または、水性の洗剤組成物、汚染除去剤組成物、剥離剤組成物もしくは凝集剤組成物、または水性のコーティング組成物または接着剤組成物または化粧品組成物、または繊維処理用もしくはテキスタイル処理用水性組成物中でヒドロゲル化剤として使用される。水性コーティング組成物は、前記ヒドロゲル化剤添加剤がレオロジー添加剤として使用される場合、特に好ましい。
【0028】
塩化されていない形態の場合は特に、前記添加剤は、有機ゲルを得るために有機溶剤、好ましくは極性溶剤中の有機ゲル化剤として使用してもよく、または、有機溶剤媒体中の組成物、特に塗料、ワニス、インクもしくはゲルコートから選択されるコーティング組成物、または接着剤組成物または化粧品組成物または成型加工用組成物、またはマスチック剤もしくは漏出防止剤、または剥離剤組成物において有機ゲル化剤として使用してもよい。
【0029】
ゲル強度またはゲル化の度合いは、目的とする用途および使用される媒体に依存し、こうした用途および媒体に応じて調整することができる。
【0030】
本発明はまた、前記添加剤の使用から生じる生成物である、有機ゲルまたはヒドロゲルから選択されるゲル、特にヒドロゲルも包摂する。こうしたゲルは、有機溶剤もしくは有機媒体中に有機ゲルであり、または、水もしくは水性媒体中のヒドロゲルである。
【0031】
最後に、水性媒体中におけるヒドロゲル化剤としての、より詳細にはレオロジー添加剤としての、上記で規定されている少なくとも1つの添加剤または上記で規定された本発明による方法によって得られる少なくとも1つの添加剤の使用から生じ、特にコーティングまたは接着剤または化粧品または洗剤または剥離剤または汚染除去剤または処理済み繊維または処理済みテキスタイルから選択される、最終生成物もまた、本発明に包含される。
【0032】
下記の例は、本発明および本発明の性能に関する説明用として提供しており、このため、いかなる観点においても包含範囲を限定することはない。
【実施例】
【0033】
実験の部
I
使用する出発材料
【0034】
【表1】
【0035】
II
カプロラクタム主体型ヒドロゲル化剤アミドの調製の例
[
実施例1]
1molのオクタデシルアミンと1molのカプロラクタムとの反応によるアミドA1の調製
113.16gのカプロラクタム(1mol)、274.84gのオクタデシルアミン(1mol)および1.95gのBorchikat(R)22を窒素流下において、温度計、凝縮器および撹拌器を備え付けた1リットル反応器内に導入する。
【0036】
混合物を、窒素流下にしたままで250℃に加熱する。反応は、粘度によって制御する。15時間後、粘度値が不変(Brookfield(R)CAP1000により100℃で測定して、>0.23Pまたは>23mPa.s)になったら、反応混合物を150℃に冷却し、シリコーン製の型内に流し込む。周囲温度に冷却したらすぐに、生成物を粉砕によって機械的に微粒子化する。得られる平均サイズが7μmになるように制御を受けた微細な粒径分布を達成するために、ふるい分けを実施する。
【0037】
[
実施例2]
1molのオクタデシルアミンと2molのカプロラクタムとの反応によるアミドA2の調製
226.32gのカプロラクタム(即ち、2mol)、274.84gのオクタデシルアミン(即ち、1mol)および1.95gのBorchikat(R)22を窒素流下において、温度計、凝縮器および撹拌器を備え付けた1リットル反応器内に導入する。
【0038】
手順の残り部分は、実施例1に関して記述したようにして実施する。
【0039】
III
ゲル化性能の評価
1.
ヒドロゲル化剤としてのアミド添加剤の評価用の配合物
99グラムの脱塩水、試験対象である1gの粉砕済みまたは微粒子化済みヒドロゲル化剤アミド添加剤、および次いで、試験対象であるヒドロゲル化剤アミドのアミン当量の4倍超に相当する過剰量になった数滴の塩酸を、棒磁石を備え付けた三角フラスコ内に導入する。続いて、三角フラスコを閉鎖する。ヒドロゲル化剤を完全に溶解させて乳濁色だが沈殿物を含まない混合物を得るために、次いで混合物を85℃において5時間超撹拌する。最後に、混合物を試験管内に導入した後、25℃で24時間静置しておく。
【0040】
上記調製条件下、3つの配合物を、それぞれ調製実施例1および調製実施例2において記述されているアミドA1およびアミドA2と、さらには比較用参考物としてのオクタデシルアミンとを用いて調製した。こうした3回の試験については、下記表2に要約している。
【0041】
【表2】
【0042】
2.
ゲルの評価
配合物についての上記3回の試験は、2つの方法によって評価しており、即ち、最初に、24時間後の試験管内における調製した配合物の外観(表3を参照されたい。)に従って評価し、続いてBrookfield(R)粘度計による相異なるせん断速度における粘度に従って評価した(表4を参照されたい。)。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
オクタデシルアミンとは対照的に、本発明によるアミドA1またはアミドA2を含んだ配合物は、ヒドロゲル化剤において特徴的なゲル形態になって存在する。
【0046】
粘度の結果に関しては、アミドA1を含む配合物(試験2)が、チキソトロピー性であるが、水に比べてまたはオクタデシルアミンを含む配合物に比べてより粘性でもあることが、示されている。